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職場の規律作りと 活用法 労務管理 職場規律の実態を把握するポイント 1.職場規律の実態 2.職場規律の乱れの分類 3.職場規律の乱れの要因と影響 職場規律を守るための就業規則作り 1.職場規律における就業規則の役割 2.懲戒処分実施の留意点 3.解服務規定・懲戒規定の定め方 職場ルールブックの作成と活用方法 1.職場ルールブックの役割 2.職場ルールブックの作成方法 3.職場ルールブックの活用方法

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職場の規律作りと活用法

労務管理

Ⅰ 職場規律の実態を把握するポイント1.職場規律の実態

2.職場規律の乱れの分類

3.職場規律の乱れの要因と影響

Ⅱ 職場規律を守るための就業規則作り1.職場規律における就業規則の役割

2.懲戒処分実施の留意点

3.解服務規定・懲戒規定の定め方

Ⅲ 職場ルールブックの作成と活用方法1.職場ルールブックの役割

2.職場ルールブックの作成方法

3.職場ルールブックの活用方法

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労務管理 職場の規律作りと活用法

(1)最近の労務トラブルの傾向

一部の従業員の問題行動により職場の規律が乱され、それが組織風土の悪化につながっ

ているという事例が増加しています。職場規律の乱れに関しては、その問題従業員だけを

責めてもなかなか問題解決に至らないというのが実態です。なぜなら、発端はある従業員

の問題行動であったとしても、そもそも規律の乱れに対する企業の対応が不十分であれば、

いつまで経っても本質的な問題解決にはつながらず、また別の問題行動が発生してくるこ

とが少なくないからです。職場の規律を確保し、職務に集中できる組織秩序を保つために

は、それを従業員だけに任せておくのではなく、企業自身が主体的に規律改善の対策を講

じていくことが求められます。

本稿では、就業規則を整備し、「職場のルールブック」というツールを用いた職場規律の

改善方法、職場規律改善の仕組みについて解説します。

(2)職場規律の実態

最近では、多くの企業で職場規律の低下が深刻な問題となりつつあります。まずは実際

に職場で発生している従業員の問題行動について、いくつか具体例を紹介します。

■ケース 1 遅刻をする

ある日、仕事のできる従業員が遅刻してきた。上司は「どうしたのだろう?」と思っ

たが、反省しているだろうと考え、注意をしなかった。しかし、これにより遅刻程度で

は注意されないということがわかった従業員は、しばしば遅刻を繰り返すようになった。

周りの従業員は、この状態を見て、遅刻についてきちんと注意しない上司の対応に不満

を持つようになった。当初は仲間内で「なぜきちんと注意をしないのか」と不満を言い

合うだけであったが、最近は、「遅刻程度では注意されないんだ」「まじめに始業時刻を

守るのは馬鹿らしい」と思うようになり、始業時間を軽視するようになった。

始業時刻から 10 分も経ってからようやく業務がスタートしている。業務に対する姿

勢がルーズになり、効率性・生産性にも悪影響を及ぼしている。

職場規律の実態を把握するポイント

職場規律の実態

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労務管理 職場の規律作りと活用法

■ケース2 セクシャル・ハラスメント

セクハラの被害を受けたと従業員が上司へ相談をした。上司が相談を放置している内

に、再びセクハラが発生。加害者からの謝罪がなく、上司(企業)が対策を行わなかっ

たことに腹を立て、被害を受けた従業員が出社を拒否する事態となった。被害者である

従業員は、このままでは埓があかないと考え、労働基準監督署に相談を持ちかけた。さ

らに、女性従業員全体が企業の対応に不満を持つなど、大きな問題に発展してしまった。

企業の対応に対する不信感が広がり、従業員の忠誠心やモチベーションに大きな悪影

響を及ぼす事態に至っている。

■ケース3 パワー・ハラスメント

中途採用で入社した従業員が職場になじめず、その影響でしばしばミスを起こしてい

た。能力的な問題に加え、職場のリーダーと性格が合わないこと、またリーダーが中途

採用された従業員を嫌っており、職場の同僚にも同様の態度をとるよう押し付けた。表

面上は何事もないかのように振る舞っているが、「(リーダーをはじめとする)職場全員対中

途採用者」という構図になっており、実質的に仲間はずれ(いじめ)が行われていた。

この中途社員は退職することになった。そして、この従業員より少し前に入社した新

卒従業員は、仕事の覚えが早く能力も高かったことから、かなり期待されていたが、先

輩達のいじめを見て、次は自分かもしれないと恐怖を感じ、退職してしまった。

■ケース4 自己の主張のみを繰り返す

グループリーダーは、働きやすい職場の構築のために、部下の意見を汲み上げて仕事

の分担をしていこうと考えていた。しかし、職場全体のことを考えず、自らの主張だけ

を押し通そうとする従業員が一部におり、グループ全体をまとめきれなくなった。次第

に特定の従業員に仕事が集中するようになり、組織全体の仕事の効率が落ちてしまった。

グループリーダーは上司に相談したが埓があかず、もう自分では対応できないと考え、

退職してしまった。

これまで精進していた従業員もこのような状態に嫌気がさしてしまったようで、今で

は退職者が相次いでいる。業務に不熱心な従業員、効率性・生産性の低い従業員だけが

企業に残り、収拾がつかない事態に陥っている。

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労務管理 職場の規律作りと活用法

「職場規律の乱れ」とひとくちに言いますが、実際にはいくつかのタイプに分類するこ

とができます。ケース 1 のように遅刻する、勝手に休むなど、社内ルールに違反している

ことが明確なタイプは、注意指導を行ったり制裁を科したりするなど、企業としては比較

的対応しやすいといえます。

一方で、ルール違反かどうか、判断が難しいものも少なくありません。事例でいえば、

ケース 2、ケース 3 がこれに該当します。ケース 2 のセクハラはどちらともとれるタイプ

で、問題が表面化すればルール違反として対応しやすいのですが、現実には潜在化してい

ることが多く、対応は難しいでしょう。

「明確なルール違反」と「潜在化している職場規律の乱れ」、どちらも問題ですが、企業

にとってより恐ろしいのは後者のほうです。潜在的な規律の乱れは表面化しにくいため、

一見従業員が通常通りに業務をしているように見えても、巧妙に手を抜いたり、陰に隠れ

て一部の従業員に仕事を押し付けたりといった行為が行われていることがあります。これ

らは業務の質や効率性を低下させ、さらには職場環境を悪化させます。また、ケース 3 の

ように職場でのパワハラがあると、従業員の定着率は非常に悪くなります。

明確なルール違反に対してきちんと対応しているから問題ないと考えている企業は多い

のですが、より大きな問題である「潜在化している職場規律の乱れ」に目を向けて対策を

講じている企業は多くはありません。企業の労務管理に対する危機意識が低いといわれる

理由がここにあります。

ちなみに、ケース4のような従業員はクレーマータイプで、規則やルールをよく知って

おり、明らかなルール違反は見られません。しかし一方では、自己中心的な考え方に基づ

いて行動し、職場をかき乱すため、その問題行動は顕在化しています。対応に苦慮する特

殊なタイプといえます。

■職場規律の乱れの分類図

A:職場全体における潜在的な規律崩壊の状態

B:職場として統制の取れない秩序崩壊の状態

C:個別対応で可能な規律の乱れの状態

D:見逃されやすい規律の乱れの状態

少ない

不明確 明確

人数

ルール違反

A B

D C

多い

2 職場規律の乱れの分類

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(1)職場規律の乱れの要因

職場の規律に乱れが生じるのはなぜでしょうか。従業員側の要因や企業・管理職側の要

因などがありますが、そのいずれか 1 つが職場規律の乱れを引き起こしているのではなく、

複数の要因が複合的に重なり合って引き起こしていると考えることが重要です

職場規律の乱れは、基本的には従業員側の問題ですが、同時に企業や管理職側の対応にも

問題があって起こっていることがほとんどです。

若い従業員と話が合わないと言う管理職は少なくありません。文化や価値観の違い、い

わゆるジェネレーションギャップを認識している一方で、なぜか職場規律のことについて

は、いちいち教えなくてもわかるはずだと考えがちです。事実、入社後の新人教育で、職

場のルールをきちんと教えている企業はそう多くありません。本来、企業によって職場規

律に関するルールやその基準が違うため、それぞれの企業ごとに具体的に教育する必要が

ありますが、それを怠っているために両者の認識のギャップは埋まらず、問題が解消され

ないのです。また、最近は非正規雇用の従業員が急増し、就労形態が複雑化することによ

って、多様な価値観を持った従業員が職場に増えてきています。そのため、職場の規律に

関する認識のギャップは、さらに拡大しているのです。

【従業員側の要因】

●従業員の意識に甘えがあり、わがままな行動が見られる

●自らの言動には何ら問題な点はないと思っている

●社会人としての一般的なルールやマナーに関する教育や訓練を受けていない

●多少は問題だとわかっていても、自分がやっている程度なら許されると思っている

●周囲も同じような問題行動をとっているので,自分も構わないと考えている

●そもそも職場のルールやマナーそのものを知らない、理解していない

【企業・管理職側の要因】

●ルール違反があっても、管理職が注意や指導をしていない

●管理職が注意できない、もしくはどのように注意指導すればよいかわからない

●従業員の管理が現場の管理職に任せっぱなしで上層部に入ってこない

●管理職が部下に対して注意や指導を行うときに企業のフォローやバックアップがない

●職場のルールや服務心得は当たり前のことでわざわざ教える必要がないと考えている

●ルール違反が繰り返されても、企業として制裁処分をしていない、放置している

●従業員の就業意識の変化や就業形態の多様化に対応できていない

●従業員として守るべきルールや基準を企業が示していない

3 職場規律の乱れの要因と影響

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労務管理 職場の規律作りと活用法

職場を見回してみると、「規律の問題は仕事の上ではそうたいしたことではない、なんと

かなるだろう」と考えている管理職は意外に少なくありません。こうした上司は、従業員

にちょっとしたルール違反が見られたとしても、そのうち本人は気づくだろうと考え、そ

の都度、注意指導を行うことはありません。ケース1やケース4はまさにその典型ですが、

それは当該従業員の問題だけにとどまりません。周囲の従業員は、管理職の対応の仕方や

立居振舞いをよく観察しています。同じ程度のルール違反であれば許されるということを

知ってしまうと、ルールがルールとして機能しなくなり、次第に規律が緩んできます。

また、従業員が明らかなルール違反を起こした際、職場の同僚達の注意や働きかけなど

によって問題行動が改善されるはずだと期待する管理職もいます。しかし、従業員同士の

自浄作用により職場の規律が改善できるのは、非常に高いレベルにある職場であって、多

くの職場ではこのような仕組みはなかなか機能しません。同僚に対して注意をすることは

非常に勇気のいることですし、もしそこに意見の食い違いがあればケンカになり、人間関

係にまで影響を及ぼすことになることも考えられます。どちらかといえば人間関係で波風

を立てたくないと考えるタイプが多い日本では、大きな期待はできません。したがって、

職場規律の維持・向上は、管理職が職制を利用して図るべきですが、残念ながら企業や管

理職の意識が相当低いケースが見受けられるというのが現状です。

(2)職場規律の乱れの影響

職場の規律が乱れることで、どのような影響があるでしょうか。職場・従業員と企業に

分けて、その影響を解説します。

【職場・従業員への影響】

●ルールを無視する、軽視する

●陰でいじめやハラスメントが行われる

●一部の従業員がますます勝手なことを言い出し、さらに規律が乱れる

●組織内における上司のコントロールが効かなくなる

●優秀な従業員のモチベーションがダウンする、頑張ることがバカらしくなる

●企業や管理職を頼れなくなり、また、信用できなくなる

●業務そっちのけで、手抜きをしたり、上手く立ち回ることだけに意識が集中する

●退職を意識する、または実際に退職してしまう

【企業への影響】

●業務の生産性や質が低下する

●情報が隠されて、正しい情報が必要な部署に入ってこない、または情報が歪曲される

●顧客や得意先にも社内の規律の乱れが伝わり、企業の悪い噂が広がる

●優秀な人材が流出し、生産性の低い従業員や業務効率の悪い従業員ばかりが残る

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労務管理 職場の規律作りと活用法

就業規則とは、企業で働く従業員の労働条件や守るべき服務規律などを具体的に定めた

規則のことをいいます。従業員数が 10 人以上となったときに作成し、企業の所在地を管

轄する労働基準監督署に届け出ることになっています。また、変更した場合も同じように

届出が必要です。従業員数が 10 人以上と規定されているとはいえ、仮に従業員が 5 人だ

としても、すべての従業員の力を効率的に発揮させるため、また従業員同士のトラブルを

防止するために、守るべき一定のルールが必要です。

守るべきルールが明確になれば、そのルールを徹底させるためにも、これに違反した者

には「制裁」というペナルティを課す必要があります。どのようなペナルティが適用され

るのかも就業規則に書いてあれば、未然に違反を防止する効果も働きます。

(1)「服務」「懲戒」規程の役割と必要性

企業において、服務として守るべき事項を守らず、企業秩序を乱したときは、懲戒を行

います。しかし、企業に権限があるからといって、従業員の問題行動について制限なく懲

戒を行ってよいという訳ではありません。懲戒を行った際、手続に不備があったり妥当性

がなかったりすると、トラブルに発展する可能性があります。

懲戒を行うにあたっての必要な要件は、就業規則に「服務」と「懲戒」の定めをしてお

くことです。労働基準法上では、制裁の定めをする場合、「その種類および程度」を就業規

則に定める必要があるとされています。また、懲戒の種類と程度を就業規則に定めておく

だけでなく、その内容を従業員に周知させておく必要があります。労働基準法第 106 条

において、就業規則は「常時各事業場の見やすい場所へ掲示し、または備えつけること、

書面を交付することなどによって労働者に周知しなければならない」とされています。

(2)懲戒処分を行う際の留意点

懲戒を実施する際の留意する点は、以下のとおりです。

①懲戒の対象は当事者だけであること

②懲戒の事項と処分のバランスを考えること

③1 つの事案に対して 2 つ以上の懲戒を行っていないこと

④同じような懲戒の事由に該当する行為があった場合、前例に従った処分をすること

⑤懲戒を下すまでの手続きが規定に則して行われていること

職場規律を守るための就業規則作り

職場規律における就業規則の役割

2 懲戒処分実施の留意点

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労務管理 職場の規律作りと活用法

(3)懲戒処分の種類

懲戒処分自体は企業が定めるものですが、一般的には、次の5種類に分けられます。

①譴けん

責…始末書を提出させて将来を戒める処分。懲戒処分の中では一番軽い処分。

②減給…従業員の賃金から一定額を減額すること。

1 回の額が平均賃金の 1 日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金

の総額の 10 分の 1 を超えてはならない。

③出勤停止…制裁として従業員の労務提供を一定期間拒否すること。

労務提供が行われない期間については、賃金は発生しない。

④諭旨退職…退職願を提出するように勧告すること。

⑤懲戒解雇…通常は即日解雇され、退職金の一部または全額不支給となること。

懲戒処分の中では一番重い処分。

懲戒処分は、原則として就業規則に規定されている内容でなければ科すことができませ

ん。そのため、就業規則にどのように規定するかがポイントになります。就業規則には、

懲戒規定とは別に服務規定が存在しています。懲戒規定は、この服務規定と対の関係にな

っており、服務規定に書いてあることを守らなかったときに懲戒の対象になるという形に

しておく必要があります。

定める事項は次の 2 段階に分けて考えます。

【第1ステップ】

まずは社会常識的な事項で、どの企業であっても通常変わらないものを挙げていきま

す。たとえば、無断遅刻・無断欠勤を繰り返す、横領したときなどが当てはまります。

【第2ステップ】

業界や職務特有の遵守事項を挙げていきます。たとえば銀行など企業情報を扱う場合

には、不正に情報を入手して株式の売買を行うことの禁止、運送業の場合は、アルコー

ルが検知された場合の就業禁止などを設けることになります。

以下に、服務規定と懲戒規定の規定例を紹介します。なお、企業の実態に合わせて必要

な規定か否かを吟味し、追加すべき事項があれば加えた上で規定を整備すべきです。

3 服務規定・懲戒規定の定め方

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第○○条(服務の遵守事項)

次の各号に掲げる服務事項は、企業の職場ルールの基本となる大事な約束事です。必ず遵守し、

規律ある職場作りを実現してください。

(1) 挨拶、礼儀は人間関係の基本です。毎日の挨拶、対人関係に関しての礼儀作法やマナーの

遵守を企業は最大限重視します。まず、挨拶など礼儀作法をきちんと遵守し紳士、淑女の

立ち振る舞い、行動を心がけてください。

(2) 常に健康には気をつけてください。プロとして体調には自ら気を使い、ベストのコンディ

ションで仕事に臨めるように心がけてください。

(3) 私たちの給料はすべてお客様から頂いています。お客様への活動こそがすべてに優先する

活動です。企業が定める「お客様への方針」を遵守し、常に感謝の心を持ってお客様に接

し誠意を持って最後まで対応します。

(4) 勤務中は所属長の指示に従い、同僚とも協力的な態度で業務に精励してください。また、

みだりに職場を離れたりせず職務に集中、専念してください。

(5) 始業時刻にはすぐに業務に取り掛かれるようにしておいてください。

(6) 職場は常に整理整頓に努め、常に清潔に保つようにしてください。

(7) 企業の備品類はお金と同じです。粗末に扱うと経費が余計にかかります。施設、車輌、機

械、器具などの備品は大切に取り扱い、材料、資材、燃料などの消耗品は節約に努め、商

品、製品、書類などは丁寧に取り扱ってください。

(8) 作業の安全や清潔感に留意した服装や頭髪、身だしなみを心がけてください。勤務中は企

業の定める制服の着用や、社章や名札、IC カードなどを常に携帯するなど身だしなみル

ールを守ってください。

(9) 職場の風紀秩序を乱す行動や粗暴な振る舞い、周りのひんしゅくを買う行動はしてはいけ

ません。また、社外においても常に企業の一員であることを心がけた行動をし、公共の場

所等でも他人に粗野または乱暴な言動で迷惑をかけてはいけません。

(10) 企業施設内で、賭けごと、賭博その他これに類似する行為を行ってはいけません。

(11) 暴力行為、詐欺行為、その他刑法など法を犯す行為を行ってはいけません。

(12) 自らの職務の権限を越えて専断的なことを行ってはいけません。

(13) セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントなどにあたる行為をして、他の従業員

に迷惑をかけてはいけません。社外においての従業員へのつきまといや酒席の強要なども

してはいけません。

(14) 従業員同士で金銭の貸借をしてはいけません。従業員同士で金銭貸借時の保証人になりあ

うこともしてはいけません。

(15) 企業の備品、施設、車輌、事務用品、製品、商品、金銭を無断で使用し、または貸与した

り、私事のために社外へ持ち出してはいけません。

(16) 取引先から、不正な金品の授与や飲食の接待を受けたり、要求したり、私事の理由で貸借

関係を結んではいけません。

(17) 企業の許可なく、私用に企業の名称を用いることを禁止します。

(18) 企業内で許可なく、政治活動、宗教の布教活動、演説、集会、物品の販売、印刷物の配布、

貼紙、掲示、募金、署名、特定団体への勧誘活動、その他これらに類する行為は一切禁止

します。

(19) 飲酒運転は絶対にしてはいけません。運転者に酒をすすめることも絶対にしてはいけませ

ん。運転する場合、取引先から飲酒をすすめられても断ってください。

(20) 運転において道路交通法違反にあたる行為を行わないこと。

(21) 過労や睡眠不足、薬物の影響などで、正常な運転ができない恐れがあるときは運転をしな

い、運転中においては中断し、直ちに所属長に連絡すること。

(22) 企業のパソコンや携帯電話を私的な目的で使うことを禁じます。企業は従業員が私的な目

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労務管理 職場の規律作りと活用法

的でインターネットや電話をしていないかどうか調べることができます。

(23) 業務上知り得た秘密には「守秘義務」があります。企業が定めた「個人情報秘密管理規程」

や「秘密情報管理規程」を遵守し、企業の業務で取り扱う個人情報、財務、人事、組織等

に関する情報、技術上の情報、営業上の情報、顧客情報、ノウハウ、その他企業が秘密保

持対象として取り扱う一切の企業情報を第三者に開示、漏えい、提供しないこと、また、

社外にも持ち出さないこと。また、退職後においても企業に帰属する秘密情報は他に漏ら

してはいけません。

(24) 企業の許可を受けず、企業に在職中のまま自ら事業を営んだり、企業を設立したり、他の

企業の役員に就任してはいけません。

(25) 企業の許可を受けず、企業に在職中のまま、他社の従業員として労働契約を結んだり、他

社の商品を販売したりする行為をしてはいけません。

(26) 企業の業務の範囲について、著作、講演などを行う場合は、企業の秘密情報の漏えいには

充分注意し、内容についてあらかじめ企業の許可を受けてください。

(27) 私的なインターネット上のブログや日記などに、技術上の情報、営業上の情報、顧客情報、

ノウハウ、その他企業が秘密保持対象として取扱う一切の企業の業務に関係する情報を掲

載してはいけません。

(28) 企業の信用や名誉を失墜させ、業務上の損害を与える行為をしてはいけません。

(29) その他、企業の掲げる方針や約束事、命令、注意、通知事項を必ず遵守してください。

第○○条(制裁の種類と程度)

この就業規則や関連する諸規程の禁止・制限事項に違反する従業員には以下のいずれかの制裁を

行います。制裁の種類は、その情状により次のとおりとします。

(1)譴けん

責 始末書を取り将来を戒める。

(2)減給 始末書を提出させたうえ減給する。減給は 1 回の額が平均賃金の1日分の半額、

総額が一賃金支払期における賃金総額の 10 分の 1 を超えない範囲で行う。

(3)出勤停止 始末書を提出させ、7 日を限度として出勤の停止を命じ、その期間の賃金は支

払わない。

(4)論旨解雇 懲戒事由に該当する場合、本人に退職届を提出するように勧告する。ただし、

勧告をした日から 7 日以内に退職届の提出がない場合は懲戒解雇処分とする。

(5)懲戒解雇 予告期間を設けることなく即時解雇する。この場合、所轄労働準監督署長の認

定を受けたときは、解雇予告手当を支給しない。

第○○条(懲戒の事由)

従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は、譴責、減給、出勤停止、論旨解雇または懲戒解

雇に処すことがあります。ただし、本人が懲戒行為を反省し、改善の余地があると企業が判断し

たときは処分を行わないこともあります。

(1) 企業の経営理念、方針、就業規則など諸規則や誓約書、職場の約束事などを理解せず、

守らず、従わないとき。

(2) 重要な経歴を偽り採用されたとき、および重大な虚偽の届出または申告を行ったとき。

(3) 再三の注意にもかかわらず、正当な理由なくしばしば遅刻、早退し、またはみだりに

私用外出をして業務から離れるなど、勤務状態が悪いとき。

(4) 就業規則に定める服務規程や出退勤の規定に違反したとき。

(5) 上司を尊重せず、同僚との協調性がなく、業務に支障をきたすとき。

(6) タイムカードなど出退勤の記録、日報、残業の申請や申告、営業報告など、すべての

企業への報告、連絡、提出物を疎かにしたときや虚偽の申告や届出を行ったとき。

(7) 企業に届出をせず、許可のない残業や休日勤務をしたとき事後においても同様とする。

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労務管理 職場の規律作りと活用法

(8) 企業への重大な報告を疎かにしたり、虚偽の報告を行い企業に損害を与え、企業の信

用を害したとき。

(9) 企業の秩序や風紀を乱す行為や言動があったとき。

(10) セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントと認められる行為があったとき。

(11) 企業のコンピューターを私用で使い、インターネットや電子メール等を無断で利用し

たとき。

(12) 企業の電話や携帯電話を私用で使ったとき。

(13) 企業内外を問わず、暴行、脅迫、傷害、暴言またはこれに類する行為をしたとき。

(14) 職務怠慢で業務に支障が及ぶと認められるとき、職務の怠慢または監督不行届きで災

害事故やその他の事故を発生させたとき。

(15) 窃盗、横領、背任または傷害等、刑罰法規の適用を受け、または刑罰法規の適用を受

けることが明らかとなったとき。

(16) 勤務中の飲酒、酒気帯び運転、飲酒運転をしたとき。酒席などで運転者のアルコール

類の飲酒を強要したり容認した者も同様とする。

(17) 道路交通法の違反行為があったとき。

(18) 故意または重大な過失によって企業の建物、施設、製品、商品、機会、器具、備品等

を汚損、破壊したときや使用不能の状態等にしたとき。

(19) コンピューター、カメラ、フロッピー、ハードディスク、レコーダー等の企業の重要

な情報を消去もしくは使用不能の状態にしたとき。

(20) 企業の機密情報や個人情報を企業の許可なく社外に持ち出したり、第三者に漏えいさ

せたときまたは漏らそうとしたとき。

(21) 取引先から、不正な金品の授与や飲食の接待を受けたり、要求したり、私事の理由で

貸借関係を結んだりしたとき。

(22) 企業および企業の従業員、または関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風

説を流布もしくは宣伝し、企業業務に支障を与えたとき。

(23) 企業の備品、施設、車輌、事務用品、製品、商品、金銭を無断で使用し、または貸与

したり、私事のために社外へ持ち出したとき。

(24) 企業の許可を受けず、企業に在職中のまま自ら事業を営んだり、企業を設立したり、

他の企業の役員に就任したりすることをしたとき。

(25) 管理職の者が部下に対して、必要な指示、注意、指導を怠ったとき。

(26) 監督下の部下の懲戒に該当する行為に対し、所属長としての監督責任があるとき。

(27) その他、故意または過失を問わずこの規則および諸規程に違反する行為があったと企

業が認めるとき。

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労務管理 職場の規律作りと活用法

職場の秩序を保ち、規律を乱す者が出て来ないようにするには、職場のルールをきちん

と守らせることが大切です。そのためには、そもそも職場のルールとは何なのか、どのよ

うな基準なのかを従業員に周知し、理解させておかなければなりません。

職場のルールや基準として、企業がまず整備すべきなのは、就業規則です。しかし、実

際の職場を見ると、就業規則がほとんど活用されておらず、管理職と従業員との認識のギ

ャップを埋めるものとして機能していません。そこで、管理職と従業員に職場規律の基準

やルールに関する共通認識を持たせるために、就業規則の欠点を改善する方法として、就

業規則を補填するために、「職場ルールブック」を作成しましょう。

職場ルールブックは、一般的には就業規則でいう服務心得を中心として従業員が守るべ

き事項等をわかりやすい言葉で表現したものです。就業規則と違い、職場のルールブック

は職場における重要なテーマを徹底するため、優先順位の高い内容について重点的かつ具

体的にその行動基準を明確にすることを主目的としています。

(1)作成時の視点

職場のルールブックを作成する際には、「現実にいま起きている規律の乱れ」「表面化し

ていない(潜在化している)が、確実に感じ取ることのできる規律の乱れ」「今後起こりそ

うな規律の乱れ」「絶対にされては困る問題行動」のどれについて記載するか優先順位をつ

け、徹底したい職場のルールを選択します。作成は人事部や総務部が中心となって進める

ことが一般的ですが、現場の管理職にも検討チームに入ってもらい、第一線の意見を踏ま

えながらルールを選択すると、よりリアルなものが作成でき、活用の頻度が上がります。

(2)作成時の注意事項

職場のルールブック作成時には、いくつかの注意事項が存在します。以下のような点に

配慮しながら作成するようにします。

①ルールの数は欲張らない

優先順位をつけて適度な分量に抑えておくことが必要です。

②問題従業員を特定できないようにする

過去に起きた問題の再発防止等をねらう場合には、問題を起こした個人が特定できる

職場ルールブックの作成と活用方法

職場ルールブックの役割

2 職場ルールブックの作成方法

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労務管理 職場の規律作りと活用法

ような表現は避けなければなりません。

③適法なものにする

職場のルールブックは自社のルールとして比較的自由にまとめることができます。し

かし、当然のことですが、法律に違反した内容をルールとして定めることは問題です。

そのほか、一般的な基準からかけ離れた条件の設定も問題となります。地域や同業種に

おける労働条件を踏まえ、さらに裁判例などを参考としたうえでルールを設定します。

(3)職場ルールブックのタイプ

職場のルールブックは、目的に応じていくつかのタイプに分けられます。

たとえば、始業時刻や終業時刻とはどのような状態にある時刻を

指しているのか、年次有給休暇の取得の仕方や手続きはどうなって

いるのかなど、就業における基本ルールを示し、周知徹底を図ります。

■勤務時間に関すること

イ)勤務時間・休憩時間

みなさんの勤務時間は,原則として次の通りです。

始業時刻 午前 8 時 30 分

終業時刻 午後 5 時 30 分

休憩時間 正午~午後 1 時

なお、業務の都合によって、始業時刻や終業時刻を変更することがありますが、その

ときは事前に連絡します。

ロ)始業時刻

始業の準備を整えたうえで、予定の始業時刻に受持ちの業務を開始できるよう、余裕

をもって出勤しましょう。

なお、当日急病などで遅刻や欠勤をする場合には、午前 8 時 15 分までに所属の上司

に電話(メール不可)で直接連絡してください。上司が不在のときは、代わりの者に

連絡先を伝えてください。折り返し、上司から連絡をするようにします。

ハ)終業時刻

予定の終業時刻まで、受持ちの業務を行ってください。その前に持ち場を離れた場合

は、早退扱いになりますので、注意してください。

ニ)残業

残業は、必要により上司から指示しますので、これに従ってください。

自己判断で勝手に残業をしても認められません。やむを得ない事情で残業する必要が

あると判断したときは、あらかじめ上司に相談・報告し、指示を受けてください。

基本ルール 周知徹底型

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労務管理 職場の規律作りと活用法

飲酒運転厳禁事例のほか、個人情報や営業機密情報の流出を防ぐ

こと、暴力行為や業務上の不正処理など法令に違反する行為を行っ

てはならないこと、企業の信頼を落とすようなことを絶対にやって

はならないことなどを示し、周知徹底を図ります。

■禁止していること

業務中はもちろんですが、休憩時間中であっても職場のパソコン端末を利用してイン

ターネットに接続し、業務に関係ない Web サイトにアクセスしたり、また私的なメール

の送受信を行ったりしてはいけません。

発見した場合は、企業の情報漏洩につながる可能性があるため、就業規則の制裁規定

に基づき厳重に処分を行います。

医療機関や福祉施設をはじめ、サービス業などで接遇の基本的な

あり方を示し、接遇の改善とレベルの向上を図ります。

■職員に期待する行動

医院として職員に期待する行動を次のように示します。患者さんやその家族、地域住

民から信頼が得られるよう、職員のみなさんは、ぜひ実践してください。

●私は、患者さんのお名前をお呼びし、挨拶をします。

●私は、患者さん一人ひとりが違うように、挨拶も一人ひとり違う挨拶を心がけます。

●私は、挨拶は必ず立ち止まり、その方の目を見て行います。

●私は、「お願いします」「はい」といった言葉を自然に気持ち良く発声します。

●私は、患者さんやご家族と話をする際はアイコンタクトと笑顔で対応します。

●私は、クッション言葉を使います。(例:「申しわけございませんが」、「恐れ入ります

が」、「あいにくでございますが」、「勝手ではございますが」、「失礼ですが」)

禁止行為型の部類に入りますが、要注意行動や要注意発言を示し、

セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)、パワー・ハラスメント(パ

ワハラ)、職場のいじめなどを特に取り上げて防ぐことを図ります。

接遇型

ハラスメント 防止型

禁止行為型

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■ハラスメントにつながる要注意発言

次のような発言は、職務と直接関係がなく、セクハラやパワハラになる可能性があり

ますので、控えてください。

●「結婚はまだ?」「子どもはまだ?」

●「彼氏はできた?」「今までに何人の男性と付き合ったの?」

●「ナイスバディだね」

●「ばばあ」「おやじ」「女のくせに」

●(断っているにもかかわらず)「今日は付き合え、俺の酒が飲めないのか」

●「何をさせてもお前はダメだな。身の振り方を考えたほうがいいぞ」

●「こんなこともできないのか。小学校からやり直せ」

(1)職場ルールブックの活用事例

職場のルールブックを作成することは重要ですが、それを配付するだけでは、規律の改

善にはつながりません。何よりも大切なことは、ルールブックを実際に職場で活用してい

くことです。そこで、その活用法について、いくつかご紹介します。

①現場における指導教育の基準として活用する

管理職の中には、部下の問題行動について十分に注意指導できない者もいます。ど

のように注意指導すればよいのかわからなかったり、自分の判断が正しいのか分から

なかったりと理由はさまざまです。このような場合、ルールブックで職場の基準が具

体的に明示されていれば、その基準に従った対応をすればよいので、管理職もきちん

と部下に注意指導ができるようになります。

②入社時の教育に活用する

新入社員入社の際に、わかりやすい具体的な表現が用いられているルールブックで

自社ルールを説明することは、新入社員の教育において非常に有効です。

③朝礼の時に読み上げて説明する

朝礼の時などに、ルールブックの内容を読み上げて、いろいろな角度からその内容

を説明するとよいでしょう。また、その項目について実際にあった事例を挙げて、ど

うすべきだったかの簡単なディスカッションを行うとさらに効果的です。

3 職場ルールブックの活用方法

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労務管理 職場の規律作りと活用法

④人事考課面談時のチェック項目として活用する

ルールブックの項目を人事評価基準の1つとして活用していくことをあらかじめ従

業員に説明しておくことで、評価項目として活用することができます。

⑤採用面接時に活用する

採用面接日の面接前にルールブックに目を通してもらい、面接時にその感想を聞い

たり反応を見たりすることで、人物評価にも役立てられます。入社後のミスマッチや

トラブルを抑制することにもつながります。

(2)職場ルールブックの周知方法

ルールブックをうまく活用していくためには、管理職・従業員への周知が欠かせません。

その周知方法を解説します。

①管理職への周知徹底

まず管理職に対し、そのルールの内容や基準を理解させるための研修会を実施しま

す。なお、研修会では、過去に社内で発生した具体的な事例などをもとにディスカッ

ションさせると、よりリアルに意識付けができます。

②従業員への周知・教育

次に、従業員にルールブックを配付し、研修会を開催します。職場のルールブック

は、職場の秩序を保つための身近な決まり事ですので、ルールブックをもとに決まり

事を確認するための研修であると考えてください。管理職から一方的に説明して終わ

りではなく、不明な点は質問させるなどして、全社員が同じ認識を持つことが重要です。

(3)職場ルールブックの見直し

ルールを周知して終わりとしてしまっては、その徹底はできません。定期的にチェック

を行い、課題の抽出と対応を行います。

職場のルールブックでルールを示した以上、それがきちんと守られていなければなりま

せん。とはいえ、ルールが示された直後は守られたとしても、次第にルーズになり、元の

状態に戻ってしまいがちです。そこで、繰り返し指導や教育をすることが必要になります。

ルールが守られていない場合、絶対にそれを放置してはいけません。放置するというこ

とは、ルール違反を黙認しているのと同じです。ルールが守られていないときはきちんと

注意指導を行い、軽微な違反であっても、それが繰り返されるときは制裁処分を行うこと

が大切です。注意指導から制裁までの手順を、あらかじめ仕組みとして持っておきましょう。