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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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退院サマリー作成に 関するガイダンス

退院時要約等の診療記録に関する標準化推進合同委員会

(日本医療情報学会・日本診療情報管理学会)

2019年 9月 25 日

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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目次

■■■■■■■■ <退院サマリーの意義> 3

■■■■■■■■ <退院サマリーの構造> 3

■■■■■■■■ <退院サマリーの構造の解説> 4

1) 〔基本情報〕 4

2) 〔退院時診断〕 5

3) 〔アレルギー・不適応反応〕 6

4) 〔デバイス情報〕 7

5) 〔主訴,または入院理由〕 8

6) 〔入院までの経過(現病歴・既往歴・入院時現症等)〕 8

7) 〔入院経過〕 9

8) 〔手術・処置情報〕 10

9) 〔退院時状況(身体状況,活動度,認知度等〕 10

10) 〔退院時使用薬剤情報〕 10

11) 〔退院時方針〕 10

★★ 退院サマリーの拡張性 11

■■■■■■■■ <退院サマリー記載心得> 13

■■■■■■■■ <退院サマリー監査について> 14

■■■■■■■■ <退院サマリーの例> 14

■■■■■■■■ 退院サマリーの活用例

(臨床研修医の「病歴要約」への転用) 27

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退院サマリー作成に関するガイダンス 2019年 9月

退院時要約等の診療記録に関する標準化推進合同委員会

(日本診療情報管理学会・日本医療情報学会合同委員会)

■■■■■■■■ <退院サマリーの意義>

退院時サマリー{退院時要約}は,入院患者の退院に際して,関与する他の診療科,他の医療機関ならびにケア施設

の間で効率的に情報を共有し,もって当該患者の診察,治療,ケアを適切に連携・継承できるよう,入院診療の主治医の

責任において作成されるものである.

退院サマリーは急性期病院において作成されるのが通常であるが,その場では,健康に関する問題が集約され,個々

について詳細な検討や正確な診断がなされ,また,影響の大きな介入が行われ,将来に向けてその効果ないし影響を残

すこととなるものである.

この重要性に鑑み,地域医療支援病院と特定機能病院には退院時要約を整備する法的義務も存在している(改正医

療法).また,急性期一般病床の約 8 割を占める DPC 対象病院はもとより,これ以外の病院でもデータ提出加算を得る

ために診療録管理体制加算届出が必須とされており,この中でも,全診療科・全退院患者について退院時要約の迅速な

作成が義務づけられ,国をあげてサマリー作成発行を促す体制となっている.さらに 2016年度の診療報酬改定で規定さ

れた電子的診療情報提供加算については,検歴情報,画像情報(ならびにレポート)伝達が算定要件とされたが,2018

年度よりは退院患者に関して退院サマリーを添付することが必須となった.

電子的な退院サマリーの標準的な構造を定め,迅速性に加えて質的にも十分な情報を提供できるような枠組みを呈示

することが急務となっているのである.すなわち,電子カルテがここまで普及した(2015 年度で 400 床以上の急性期病院

の 70%以上が電子カルテ化されている)時代において,医療の投入の内容を他科専門医間・異業種・多施設間において,

迅速かつ簡潔明瞭に伝達するツールとしての退院サマリーの一定の形式が存在せず,各施設,各診療科において思い

思いの形式や,あるいは極端には自由記載メモ程度で済ませている場合もある,という現状を早急に是正することが求め

られており,この意図から,本・退院サマリー規約が作成されたのである.

本規約においては,退院時サマリー記述に際し,日本国内(Realm=JP)の利用環境において,包括的な視点で,かつ

簡潔に記載できるようHL7 CDA R2(Clinical Document Architecture Release 2)に基づいて電子化され,標準化さ

れた形として提案されている.

退院時サマリーを標準化・規格化することは,一義的には上記の医療ケアの連携において,必要な情報を漏らさずにわ

かりやすく伝達継承するために重要であるが,さらに以下の二次利用に資する点でも意義深い.

医療-法的な側面(医療・ケア機関の competency のチェック)

医療・ケアの質管理(quality management)

臨床研究および疫学調査のためのデータ集積源

保健教育や健康増進事業におけるデータ提供源

■■■■■■■■ <退院サマリーの構造>

1) 〔基本情報〕

2) 〔退院時診断〕 ---- 退院サマリー必須記載項目

3) 〔アレルギー・不適応反応〕 ---- 退院サマリー必須記載項目

4) 〔デバイス情報〕 ---- 退院サマリー推奨記載項目(デバイス装着がある場合)

5) 〔主訴,または入院理由〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

6) 〔入院までの経過(現病歴・既往歴・入院時現症等)〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

7) 〔入院経過〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

8) 〔手術・処置情報〕 ・・・退院サマリー推奨記載項目(手術・処置で記載すべきものがある場合)

9) 〔退院時状況(身体状況,活動度,認知度等〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

10) 〔退院時使用薬剤情報〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

11) 〔退院時方針〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

■■■■■■■■ <退院サマリーの構造の解説>

1) 〔基本情報〕・・・CDA(clinical document architecture)上,多くはヘッダー部分に収納される

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医療機関名(必須)---必ずしも表示画面に顕前させなくてよい

患者氏名 および フリガナ (必須)

患者 ID (必須)

性別(必須)

生年月日(退院時年齢)(必須)

入院日時ならびに退院日時(必須)

予定入院かあるいは予定外入院か(必須)

記載者情報(記載医・担当医・主治医) (必須)

サマリーの version情報 (必須)

承認サマリーか否か(必須)

その他 (任意)

住所 連絡先(電話番号) 保険情報 国籍 言語 宗教

婚姻状態 職業 保護者 advance directive (living will)

血液型 身長 体重 血圧 脈拍

※ 患者 IDは 3種類までを記載可能とする.

(例) 当該医療機関の特有 ID,地域医療ネットワークにおける ID, 医療 ID(全国統一の unique ID)

※ 氏名

患者氏名は,姓と名を別に記載することを原則とするが,システム上分離が困難な場合,姓の部分(family)に記載

してよい.また,外国人で漢字姓でない場合はアルファベットにて記載,さらに読みをフリガナにて記載する.

(例) ---- Johnsonは family name,Alfredは first name,T.はmiddle nameの略

※ 性別は男性,女性,および不明の 3種の中からの登録とする.

※ 生年月日を表記,退院日月日より自動計算で退院時年齢を算出し,表記する.

※ 予定入院か予定外か ---- 定例入院であるか緊急(≒予定外)入院であるかの区別.必須登録項目とする.

※ 当該医療機関において何回目の入院なのかを記載することもある(任意).過去の入院の事実を見て,以前の退院

サマリーを参照することが促され,より綿密な情報取得につながり得る.

※ 診療の責任者(主治医)の登録記載は必須.

※ 退院サマリーは研修医や若い医師によって記載されることが多く,その記載の正当性を判断できる承認者による認

証が authenticationのため必須である.したがって,承認サマリーであるかどうかの登録は必須.

※ 上記に関連して,サマリーが完成され,承認を受けるまで,場合によりいったん承認された後も,修正更新されること

があり得る.このため version情報が必要となる(必須記載項目).

※ 住所,電話番号は任意であるが,記載される場合が多い(伝達情報としての有用性が高いため).

※ 保険情報(国民健康保険,組合健康保険,後期高齢者保険,生活保護,etc.)の記載がなされることもある.

※ 小児例などでは,保護者名が連絡先とともに登録されることがある.婚姻状態や職業が基本情報内に記載されること

はまれ.(通常,患者のプロフィール情報として「入院までの経過」欄に free textの形で記載される.)

(例)

※ 国際的医療機関においては,国籍や言語,宗教の記載登録が行われ得るが,一般的ではなく,これらの情報も患者

プロフィール情報として「入院までの経過」欄に free textの形で記載されることが普通.

※ advance directiveについても,現段階では「患者基本情報」内に登録記載されることはほぼない.必要な患者につ

いては患者プロフィール情報として「入院までの経過」欄に free textの形で記載される.

※ 血液型,身長,体重,血圧,脈拍についても電子カルテにおける PPI に収納されている場合,これを「患者基本情

報」の枠内に流し込むことが可能であるが,通常「患者基本情報」にはこれらの情報は登録されず,「入院までの経過」

欄内の入院時現症記載部分等において free textの形で登録されることが通常である.

これらの基本情報は電子カルテにおける

プロファイル情報

( patient profile information; PPI )

において登録されたものから

退院サマリーに流し込みされることを

前提とする.

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2) 〔退院時診断〕 ---- 退院サマリー必須記載項目

#,病名(ICD code),登録日,転帰は必須; 発生時期,コメントは推奨記載項目)

・・・電子カルテの病名/プロブレム欄より流し込み可能

※ #には少なくとも 3 階層を準備する.階層の利用は上記の例のごとく,併発症などの relation の観点や

categorizationの観点から,主治医の判断によって利用される.

※ #(診断名番号)は当該入院中に主として対象とした疾病を先頭に,以下主治医の判断により順序をつけてゆくことが

通常であるが,その順序に拘泥する必要はない.のちの参照で,例えば外来管理においてこの診断名列を転用する

場合など,その外来診療科にとっての重要性から#をつけ直しすることも可能.

例えば,下記,泌尿器科入院時作成の診断名列に関して,これを循環器内科の外来カルテにおいて転用する場合,

#2以下をそれぞれ#1,#2,#3 とし,#1の前立腺肥大は#4 として順位を替えて表示し直せる.

(spreadsheet 構造のままで外来利用できる環境であれば,#での sort(並べ替え)により,主要対象疾を先頭に表

示できることとなる.)

※ ICD codeは必須登録アイテムであるが,必ずしも表示画面に顕前させなくてよい.(一般表示モード(印刷モード)で

は ICD codeは表示されないことが通常.)

※ 診断名(病名)は原則として ICD code が付番された名辞で記載される.標準病名マスター(MEDIS-DC)による表

記が原則である.例外的に free textでの状態記載を許容するが,この場合対応する ICD codeは”null”となる.

※ 病名登録日は当該医療機関において病名が登録された日.保健医療機関であれば電子カルテの病名列において

必須項目として記載登録されているものであり,これを退院サマリー内に流し込むことで記録される.

※ 注意すべきは,病名登録日は当該疾患の発生時期とは必ずしも一致しないことである.このため,当該患者の疾病

履歴を見る場合,各疾患の発生時期の登録が重要となる.慢性疾患などで明確な発生時期が確定できない場合で

もおおよその発生時期がわかるだけで,病歴俯瞰の観点や病悩期間の推定の観点等から貴重である.このために,

推奨項目として発生時期の記載登録を促すこととした.不詳な場合や未記載の場合は空白表記となるが,これは日

時形式の登録としては 0000/00/00(YYYY/MM/DD)となる.また,2008 年頃は 2008/00/00 の登録であり,2012

年 3月頃は 2012/03/00の登録となる.

※ 転帰については,各疾病について個々に記載する(必須記載).軽快・不変・悪化・死亡の中から選択登録すること

を原則とする.“軽快”は病状が軽くなった状態であり,治癒を含む.

※ 退院サマリーにおいて,退院時診断名列は要約情報の中のコアとも言える部分であり,最重要のエッセンスと位置づ

けて記載登録されるべきである.入院中には患者の健康等の問題についてさまざまな problem list が挙げられ,こ

れらについて検討や介入が行われ,退院時には収斂して最終の診断名列として固定する形となる.この病名列に発

生日を可及的にきちんと登録し,さらにコメントを適切に記載することにより,以下のごとく,発生日 sort(並べ替え)す

ることで,当該患者の簡潔な short summary を得ることとなり,退院後の慢性期医療・ケアにおけるエッセンス情報

取得源とできる.さらに言えば,当該患者の personal health record(PHR)の主要な一核となり得る.しかしそのた

めには,退院時において,主として取り扱った疾病名のみならず,主要な「既存症」(これまでに罹患し,現在の当該

患者の健康ならびに医療ケア介入に影響ならびに関連している疾患群)が整理・列記されていることが前提であり,

サマリー作成者の姿勢,ならびに臨床教育上の視座が要求されるのである.

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※ 上記と同じ観点から,複数回の入院歴をもつ患者についての退院サマリーを記述する際においても,退院時診断名

列においては,当然のことながら,今回の入院における対象病名のみ列記するのではなく,患者の「既存症」につい

て,すべて列記しなおす姿勢が必須である.前回入院までに,この姿勢で診断名列が整備されていれば,このことは

容易に行われるが,以前の要約にて,既存症把握が不十分な場合には,当該入院中に全人的観点から患者の健康

問題を聴取ないし調査しなおし,列記を実践すべきである.

※ コメントは,各疾患について,今後の管理の観点から重要と考えられる事項を簡潔に記載したもの.病態について,

介入治療の内容,術式,病理組織診断,疾病の stage,当該疾患による障害程度などが記載される.全角 100字程

度までが限度であり,あまりに冗長では要約的ではなく,後利用で参照してもらえなくなる.

退院サマリー(消化器外科入院時)

発生時期で sortすると当該患者の主要既存症が時系列(下記の例では reverse chronological order)で俯瞰できる.

健康情報の一つの核的簡潔情報の表示である.(personal health record(PHR)の主要な一核)

3) 〔アレルギー・不適応反応〕 ---- 退院サマリー必須記載項目

記載を必須とする.食品や薬剤,処置材料などに対してアレルギーや不適応反応(adverse reaction)がない場合は,

“なし”,不詳な場合は”不詳“を必ず記載する.記載にあたっては登録者と登録日を明かにし,さらに”あり“の場合は,発

生時期,症状,および確認方法(本人ないし親族申告か,医師・看護師等医療従事者が確認した場合か)について記載

する.アレルギー・不適応反応が複数ある場合は,それぞれについて上記の記載を列記する.

※ 電子カルテシステムの患者プロフィール情報(PPI)テンプレート内に構造を作成し,この部分に以下の内容を盛り込

んだ項目を入力→この流し込みによって退院時要約内のアレルギー・不適応反応の情報が登録されることを前提と

する.(退院時要約のみに登録されると,電子カルテ閲覧の際,重要情報として検出されにくくなる懸念があるため.)

a. 病歴聴取,ならびに現病歴より,アレルギー・不適応反応が認められない場合は“なし”を選択.この場合はさらなる追

加情報の記載は不要 (下記 b.と同様でフリーコメントを追加記載することはできる).

b. 患者・家族はアレルギー・不適応があると主張するが,医療的見地よりそれがない,ないし不詳と判断される場合は,

“なし”ないし“不詳”と記載→ これ以上の記載は必須ではないが,フリーコメントに追加記載をすることは可能.

c. アレルギー・不適応があると医療的見地より判断される場合は“あり”と記載.この場合,患者・家族が認知している場

合とそうでない場合があり得る.医療現場での確認はなされないが,患者・家族の申告内容から,有意味と判断でき

る場合も“あり”として,登録する. “あり”の場合は,かならず以下のフレームに記載することを義務づける.ただし,こ

の中で“コメント”欄記載は任意であり,また“登録者”については電子カルテPPI内では必須登録表示項目ではある

が,サマリーへの流し込みの場合,表示画面上で顕前させる必要はない.

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実際の表示例 1

実際の表示例 2

実際の表示例 3

4) 〔デバイス情報〕 ---- 退院サマリー推奨記載項目(デバイス装着がある場合)

血管内 stent や他管腔内 stent,人工弁やペースメーカ,植込み型除細動器,人工関節や補強埋め込み具などの人

工臓器の存在は,患者管理にとって重要な意味を持つため,これらが体内に存在していることを明示するべきである.電

子カルテ内にデバイス情報が PPI (患者プロファイル情報)の一環で記載登録されている場合は,下記のごとく,これを

サマリー内に転用記載登録することが推奨される.

※ 〔デバイス情報〕としての特定枠をサマリー内に設けない場合には,デバイス情報は〔退院時診断〕内の病名,ないし,

関連病名のコメント欄において登録されることとなる.体内デバイスは,現在ならびに将来の当該患者の健康管理に

有意の影響を有すると考えられるので,“既往歴”ではなく“既存症”内に包摂されて表示されるのが原則であり,〔入

院までの経過〕欄において“既往歴”として記載されるべきではない.(“既存症”と“既往歴”の別については,

5)〔入院までの経過(現病歴・既往歴・入院時現症,等)〕内の記述を参照のこと.)

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5) 〔主訴,または入院理由〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

症状や愁訴に基づいて入院→検査ならびに治療が行われた場合は,患者の主観的な徴候を代表するものとして「主

訴」を記載する.

予定手術入院や異常検査値などに基づく検査/治療入院の場合や明らかな症候が見られない場合は,入院理由と

して「主訴なし(検査異常に対する精査目的)」 「検査入院」 「教育入院」 「内視鏡的ポリープ切除を受ける」等を記

載する.

6) 〔入院までの経過(現病歴・既往歴・入院時現症等)〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

コンテンツとしては以下の項目が必要性に応じて包含されていることが望ましいが,たとえば,

「右白内障手術(2011/5月)既往あり,今回左加齢性白内障についての治療目的で入院」

というような単純記載も許容される.

登録されるべき推奨項目(text形式での入力) ------

<患者プロフィール> ADL,社会での役割や key person,health caregiver情報,advance directive (living will)

literacy,非日本人の場合の国籍や言語,宗教ないし宗教観,特記すべき性格特性等

<現病歴> 当該入院にかかる主疾患,病態を中心とした,入院に至るまでの経過や入院適応の判断内容

<既往歴> “既存症”と“既往歴”を区別して登録すること.

〔退院時診断名〕列に記載すべきもの:現在も健康問題として介入を要している,ないし影響している傷病名.

入院の契機となった疾病のみならず,包括的観点から現在ならびに今後の診療・ケアに影響する“既存症”(現在完了

形)も記載する.

一方で過去完了の既往については,「入院までの経過」欄における “既往(歴)”として表記する.

text形式での記載が通常であるが,〔退院時診断〕の形式と同様,spread sheet形式での記載登録でもよい.

既往歴については複数回入院のある患者については,過去の退院サマリー歴から容易に振り返ることができる場合が

多い.この場合は単純な複写によって記載を完成できるが,この既往歴の記載は確実に行われるべきである.

<家族歴>

<嗜好> 特に喫煙歴は重要.Brinkman指数の記載が勧められる.他,飲酒歴など.

<感染症情報> 肝炎,STD,AIDSなど.下記の入院時検査所見内において記載されることが多い.

<免疫情報> (予防接種歴など)--小児科入院などで重要となり得る.

<常用薬情報> 薬品名,一回量,投与回数/日の形式が望ましい.必要な場合,処方医療機関の情報も記載する.

<入院時身体所見>

身長体重,血圧と脈拍(整・不整),呼吸数,体温,SpO2(末梢血酸素飽和度)などの vital signs情報

疼痛や主要症状,全身状態などの記載

頭頸部,胸部,腹部,四肢の所見,神経学的所見など(Review of Systemsに沿っての有意所見観察項目等)

当該入院の目的から判断して特筆すべき身体所見等

<入院時検査所見>

血液/尿検査所見,画像検査所見を当該入院対象疾患や介入の観点から重要と判断されるものについて抽出

記載する.既存症や常用薬内容を俯瞰し,必ずしも入院の主要対象となる疾患に関するデータではなくても,今後の

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健康管理について重要と判断されるデータについても抽出し,記載登録することが求められる.

1 週間以内程度の短期の入院では,入院後早期に実施した画像検査結果についても,この<入院時検査所見>内に

包含して記載した方が全体的な理解にとって好都合なことが多い.(下記 例 2 参照)

※ これらの記載は plain text 形式で行われるが,退院サマリー内に直接 de novo に記載するのではなく,通常は電子

カルテ内の「入院時初期記載」テンプレート内に入院時に記載され,その後の経過を踏まえて適宜修正更新しておい

た file から自動で〔入院までの経過(現病歴・既往歴・入院時現症,等)〕欄に流し込まれ,その後,これを適宜修正し

て体裁を整える,というような登録法が通常となる.

これに関連して,退院サマリーの自動的作成の方策として,的確,かつ必要な項目を漏らさずに記載できるように,電子

カルテ内の「入院時初期記録」のテンプレートが整備されていることが求められる.「入院時初期記録」欄からの自動流し

込みの実例を下記に示す.(9頁:★★ 退院サマリーの拡張性 の項 参照)

例 1 比較的 simpleな〔入院までの経過〕の記載例 (左大脳出血)

例 2 詳細な〔入院までの経過〕の記載例 (右下腿蜂窩織炎)

例 2 詳細な〔入院までの経過〕の記載例 (右下腿蜂窩織炎)

7) 〔入院経過〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

入院中の経過を簡潔にまとめた text 文書.退院サマリーである以上,この部分に記載がなされないことはないが,例え

ば,「2018 年○月○日,予定通り,前立腺生検を実施した.合併症なく経過し,翌日退院.」といった簡略な記載は十分

にあり得る.

例 1 消化器内科入院 (大腸ポリープ癌に対する内視鏡的腫瘍切除) ※ ESD=endoscopic submucosal dissection)

8) 〔手術・処置情報〕 ・・・推奨(手術・処置で記載すべきものがある場合)

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8) 〔手術・処置情報〕 ・・・退院サマリー推奨記載項目(手術・処置で記載すべきものがある場合) 以下は電子カルテの手技・手術情報からの自動流し込みの例 (婦人科) ※ 手術・処置を別枠で流し込み登録しない場合には,入院経過内に textで記載されるべきである.

9) 〔退院時状況(身体状況,活動度,認知度等〕 ・・・退院サマリー必須記載項目 例 1 循環器内科(急性心筋梗塞の症例)

例 2 神経内科(小範囲脳出血の症例)

ADL の低下した患者について電子カルテ内の図の埋め込みをサマリー内に設置し,以下のような退院時状況の詳細

情報を記載することもできる.

例 3 リハビリテーション科(大腿骨頸部骨折術後リハ;陳旧性心筋梗塞を有する高血圧患者)

10) 〔退院時使用薬剤情報〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

de novo に記載するのではなく,電子カルテの退院時処方部分より流し込みをし,これを編集して登録する形となる.こ

の際,これまで常用薬として利用されていたものがある場合など,退院時ならびに以後当座利用されるすべての薬剤につ

いて情報を登録することが肝要である.サマリーが当該科の診療のまとめのために記載されるのではなく,あくまで診療・

ケアの継続のための情報であることを忘れてはならない.( 11)の項の例 1参照)

11) 〔退院時方針〕 ・・・退院サマリー必須記載項目

当該科の診療として,当座どうする予定であるのか,というにとどまらず,患者の既存症全体を俯瞰し,どのような管理を

今後受けてゆくことになるのかについての情報を登録する.退院後の自科外来の予定のみを記載するようなことであって

はならない.(下記例 1参照)

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例 1 (早期胃癌で内視鏡的切除入院を終えた段階でのサマリーから(高血圧,内頸動脈狭窄症あり))

★★ 退院サマリーの拡張性

たとえば「入院までの経過欄」は plain textbox として提供される枠であるが,以下のような XML 形式でのテンプレ

ート(text 型)を電子カルテ内の「入院時初期記載」欄に設定しておくことによって,入院までの経過(現病歴・既往

歴・入院時現症等)の詳細な必要事項を漏らすことなく,退院サマリーの「入院までの経過欄」に自動的に流し込みし,

必要に応じて編集することができる.(各テンプレート内に記載がない部分は流し込みされない.)

【プロフィール】 ケアホームに入居中,もともとの ADL 杖歩行 で外出 キーパーソン:長女(××××どの;当院循環器内科受診中) 【現病歴】 2018 年 1 月 2 日に娘さん夫婦と初詣に行った際に駐車場で転んで歩けなくなり,自宅で湿布と安静の後,1月 4日に○○整形外科受診.腰椎第 4 椎体圧迫骨折の診断にて 1 ヶ月間,安静療養入院となった.症状改善して同院を退院.しかし上記の主訴症状が再現し,日増しに増悪するため,2018年 2 月 28 日に当院整形外科外来を受診,○○整形外科と連絡をとりつつ,鎮静剤の使用や外来リハビリで経過を見たが,症状の改善が得られなかったため,精査加療目的で2018年 3 月 14 日入院となった. 【既往歴】【手術歴・輸血歴など】 既存症については退院時診断名列参照.この他の既往歴として,2000年頃に大腸ポリープ,18歳時の虫垂炎(虫垂切除術)あり. 輸血歴:なし 【嗜好】 喫煙 20 本×25年(20~55 歳;以後禁煙) 飲酒 なし 【家族歴】 父:前立腺癌 母:膵臓癌 父違いの兄:胃癌・食道癌 【常用薬・他】 ○○整形外科医院より カロナール 400mg/3 回 リカルボン 50mg/1回アサ(月 1回) アルファロール 0.5μg/1回アサ 以下は××クリニックより. チラーヂン S50μg/1 回アサ カルスロット5mg/1 回アサ セルベックス 50mg/3 回 パリエット 10mg/1回 HS マグミット 330mg/2回アサユウ レンドルミン 0.25mg/1回 HS 【入院時身体所見】 身長 141cm 体重 39kg 意識清明,全身状態良好. 血圧 144/86 mmHg 脈拍 74 整 体温 36,5℃ 呼吸数 16/分 SpO2 96% (room air) 【頭頸部所見】 咽頭発赤や扁桃腫大,頸部リンパ節触知なし,結膜黄染や貧血なし,頸静脈怒張なし,頸部 bruit なし. 【胸部所見】 呼吸音:清 心音: S1→S2→S3(-) S4(-) 心雑音なし 【腹部所見】 平坦軟, 肝脾を触知なし,腫瘤を触知しない,圧痛なし,腸蠕動音正常 右下腹部に術創あり. 【神経所見】 特記事項なし 【四肢_その他の所見】 末梢動脈触知良好 下腿浮腫なし 頸静脈怒張なし 【入院時検査所見】 ◆検査所見◆(血液検尿)BUN 12.6 mg/dL,Cr 0.68 mg/dL,T-Bil 0.6 mg/dL,ALP 163 IU/L,AST 22 IU/L,ALT 18 IU/L,LDH 159 IU/L,Na 133 mEq/L,K 3.6 mEq/L,Cl 99 mEq/L BS96 t-CHO196 CRP 0.33 mg/dL, WBC 6400/μL,Hb12.2 g/dL, Plt 25.2 万, 甲状腺機能(FT4, TSH)正常,PT-INR1.11 APTT28.4sec 尿糖(-) 尿蛋白(-) 尿潜血(-) 感染症:HBsAg(-) HCV-Ab(-) HIV (-) (画像) ・ Chest X-ray:CTR52% 肺欝血なし胸水なし ・ 心電図:SR HR72 QRS-T.config WNL ・ 脊椎 D,L-spine L4 椎体圧迫骨折あり.

L2-3 椎体の陳旧性圧迫骨折,L4/5, L5/S1 の椎間孔狭窄 あり

電子カルテ内の 「入院時初期記録」記載テンプレートの例: 各テンプレート枠内は text型での登録となるが, 例えば常用薬欄や検査所見欄などに関しては, 検査結果表からの必要部分選択流し込みを行い 適宜整理修正できるような仕組みを組み込むことも,記載の迅速性,正確性の観点から推奨される.

電子カルテ内の 「入院時初期記録」 記載テンプレートから退院サマリー内「入院までの経過」欄への 自動流し込み

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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各施設・各診療科において,たとえば,学会によって要求されている項目,特定のデータセットの登録,特定画像や

シェーマの取り込み,生活機能の詳細など,上記1)~11)の枠内に必ずしも内包するのは適当ではないアイテムに

ついても,規定のフレームに従属する形で,あるいはまったく別枠のフレームとして XMLの形で退院サマリー内に埋

め込むことができる.(下の例 1~3参照.上記 9)項の例 3や退院サマリー例 11 も参照のこと)

電子カルテシステム内の画像やレポートなどの外部ファイルを参照する tugを表示することもできる.

(例) → 入院時血液尿検査結果

→ キー画像

→ 手術記録(2018/4/24)

infrarenal Ao. aneurysm (max 58mmφ)

埋め込み例 2:(データセット)糖尿病ミニマム項目セット

埋め込み例 1:術前画像(腹部大動脈瘤)

埋め込み例 3:手術記録図からの流し込み)

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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■■■■■■■■ <退院サマリー記載心得>

1. 退院後迅速に作成→承認医の査読を経て承認サマリー(authorized summary)として登録すること. 診療録管理体制加算 1取得施設においては,全科においてサマリーを作成し,90%以上は退院後 2週間以内に完

成サマリー(承認サマリー)として登録されていることが求められている.入院期間の短縮化,ならびに連携医療で複

数医療機関・ケア機関で継承される現在の医療ケアの在り方からしても,迅速にコンサイスな患者情報を伝達する文

書の必要性が高いのであり,この点をまずもって達成できるようにする.

2. 内容に必要最低限の項目を盛り込むこと. <退院サマリーの構造の解説>にて詳述した11項目(必須項目9,推奨項目2)を含めた構造でサマリーを作成し,

どの施設においても標準的な形式,枠組みにおいてサマリーが参照され,利用されるようにすること.

3. 退院時診断名リストがサマリーの核である. i. この部分には入院の対象となった疾患ならびに状態のみならず,当該患者の有する(主要)既存症についても

列記することが肝要である.複数の疾患ならびに傷病・問題を有すること(comorbidity)が日常的である医療

の現場において,患者を包括的・適切に治療・ケアするために必須の情報だからである.現在の患者の健康状

態に有意の影響を有する既存症に対し,過去において罹患ないし介入を受けたが,現状では有意の影響を持

たない医療歴を既往歴と称する.この既往歴については「入院までの経過」欄に記載される. ii. それぞれの疾患に関して,それがいつ(頃)から発生して現在に至っているのか,についての情報(発生時期

情報)をできる限り確認して登録することが強く勧められる.各既存症について,その病悩期間を把握すること

が,健康管理からしても,またひろく疫学的検討のためにも重要だからである. iii. 各疾患について,退院時の転帰を登録する.(軽快(治癒を含む)・不変・増悪・死亡の 4択で登録) iv. 各疾患について,必要なショートコメントを記載することが勧められる.これは,各疾患について,今後の管理の

観点から重要と考えられる事項を簡潔に記載したものであり,具体的には,病態について,介入治療の内容,

術式,病理組織診断,疾病の stage,当該疾患による障害程度などが記載される.全角 100 字程度までが限

度であり,あまりに冗長では要約的ではなく,後利用で参照してもらえなくなる. 病名列に発生日を可及的にきちんと登録し,さらにコメントを適切に記載することにより,発生日 sort(並べ替え)

することで,当該患者の簡潔な short summaryを得ることとなり,退院後の慢性期医療・ケアにおけるエッセン

ス情報取得源とできる. 4. アレルギー・不適応反応の情報は必須である.医療安全上の観点から,これをサマリー文書の上部に記載し,注意

喚起できるような表示とすることが勧められる. この情報は退院サマリーにおいて de novoに記載するのではなく,電子カルテ内の患者プロファイル情報(PPI)とし

て記載し,これをサマリー内に自動流し込みする形で登録することが基本である.

5. 上記のアレルギー・不適応反応情報のみならず,患者基本情報はもちろん,入院までの経過や退院時投薬情報,デ

バイス情報や手術・処置情報などについても,電子カルテ内の当該 template からの自動流し込み(→必要な加筆

修正)の方式での登録が行われるようにするべきである.これによって,サマリーの 7 割以上の部分が退院時におい

てすでに完成できることとなり,1項に述べた迅速性が内容の標準性とともに確保されることとなる.

6. 退院時状況について,簡略に記載する.今後の診療・ケア担当者にとって患者の vital signs の状況や臓器機能,

さらには生活機能全般についての情報が大切だからである.

7. 退院時投薬内容は,当該診療科から処方される退院時処方を記載するのではなく,退院時ならびに直近の退院後

において使用される薬剤すべての情報を列記するものである.

8. 退院時方針は,患者の既存症全体を俯瞰し,どのような管理を今後受けてゆくことになるのかについての情報を登録

する.退院後の自科外来の予定のみを記載するようなことであってはならない.

9. サマリー記載全体を通じて,略語はできる限り使用しないようにする.サマリーが多診療科,多施設における医療健

康情報の重要な伝達ツールであるという認識に立てば,自科内あるいは自院内でのみ容易に理解される略語の使

用が不適切であることは言を俟たないのである.略語を使う場合は初出部において,たとえば,EMR (endoscopic

mucosal resection)のように記載をしておき,以下の文章で EMR として表現すること.

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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10. サマリーであるから冗長性は避けるべきである.10 ポイント程度の字体での記載で A4 判用紙 1 枚に収まることを原

則として作成登録されるべきである. 学会として必要な検査項目や分類等の添付,図表の添付,特殊な検査項目の添付などは選択として行えるが,上記

のコアの A4判 1枚記載に付属した文書としての扱いで位置づけられ,別頁に整理されるべきである.

■■■■■■■■ <退院サマリー監査について>

サマリーが退院日より一定期間内に可及的速やかに記載されているか,指導医の承認が得られているか,などの外面的

評価に加えて,内容を問う「質の監査」がなされるべきである.通常,指導医等による内容閲覧を通じての定性的なチェッ

クが行われているが,指導医の判断の差違,サマリー自体についての解釈の違い,どこまで深めて検討するのかの差,等

により,かならずしも客観性妥当性の高い監査になっていない.質を問える定量的な評価の一法として,下記に示すチェ

ックリストの簡易評点法による監査を例示する.

退院サマリーの定量的評価の実例 (A臨床研修病院の取り組み例より 改変)

1 退院時診断名:適切に抽出列記されているか(主たる対象のみならず主要既存症が上げられているか)

2 退院時診断名:各診断名について発生時期の適切な記載,必要コメントの記載がなされているか

3 主訴ならびに入院理由の記載は適切か

4 アレルギー・不適応反応情報の登録は適切か

5

入院までの経過欄:患者プロフィールの記載がなされているか (家族構成,key person,サポート情報,ADL レベル,認知度,職業,宗教や信念,advance directive, 性格特徴など)

6 入院までの経過欄:現病歴,既往歴について,いつから,どこで,の観点できちんとかかれているか

7 入院までの経過欄:現病歴欄に,入院にいたる判断が記載されているか

8 入院までの経過欄:嗜好情報が記載されているか,特に喫煙歴

9 入院までの経過欄:常用薬情報が記載されているか

10 入院までの経過欄:必要な場合の家族歴情報の記載は

11 入院までの経過欄:入院時身体所見に身長体重・バイタルサインの記載がなされているか

12 入院までの経過欄:退院時診断名列に鑑みて,関連する検査結果が適切に抽出列記されているか

13 入院経過欄:入院経過内が事実の列記のみではなく判断を含めて記載されているか

14 手術・処置がある場合,記録が適切になされているか(創部情報・摘出内容・病理所見などを含め)

15 退院時の状態の記載:簡潔かつ適切か

16 退院時処方:常用薬も含め当面の処方の全貌がつかめる記載となっているか

17 退院時方針:患者全体を俯瞰して管理方針が記載されているか

18 全体を通じて不適切な略語が使われていないか

19 全体を通じて不適切な表現がないか(誤字・誤変換を含め)

20 閲覧者の立場からみて,簡潔で読みやすく,正確であるか

この監査項目の各項について 2点:十分な記載 1点:記載はあるが不十分 0点:記載なし N.A.:該当なし

の評点をつけ,N.A.(例えば手術処置がない入院での 14 項や家族歴が不要な場合の 10 項など)を除去した総合点を

項目数で割った割合で定量的なサマリー評価を行うことができる.

引用: 渡邉 直, 嶋田 元, 岡田 定:退院サマリー標準化の試み.退院サマリー評点を通じて医療記載を改善する.日本 POS 医療学会雑誌 19;2015:127-131

■■■■■■■■ <退院サマリーの例>

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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退院時要約(退院サマリー) 例 1 循環器内科

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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退院時要約(退院サマリー) 例 2 消化器内科

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退院時要約(退院サマリー) 例 3 一般内科

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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退院時要約(退院サマリー) 例 4 泌尿器科

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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退院時要約(退院サマリー) 例 5 産科

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退院時要約(退院サマリー) 例 6 婦人科

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退院時要約(退院サマリー) 例 7 神経内科

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退院時要約(退院サマリー) 例 8 消化器外科

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退院時要約(退院サマリー) 例 9 小児科

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退院時要約(退院サマリー) 例 10 整形外科

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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退院時要約(退院サマリー) 例 11 整形外科・リハビリテーション科

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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退院時要約(退院サマリー) 例 12 心療内科

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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■■■■■■■■ 退院サマリーの活用例 (臨床研修医の「病歴要約」への転用)

★★ 退院サマリーの利用例として,臨床研修における「病歴要約」への転用が考えられる.

2020 年度から実施される臨床研修制度の見直しによって,これまで臨床研修の日常業務での作成文書とは別個のレ

ポートの提出が求められていたものが,業務で発生する文書を転用することで「病歴要約」とし,これをもって経験すべき

29 症候と 26 疾病・病態の研修を確認することとなった.

この病歴要約には,病歴,身体所見,検査所見,アセスメント,プラン(診断,治療,教育),考察等を含むことが必要で

あるとされる.退院サマリーを転用して,病歴要約をほぼ自動作成するフォーマットの例を以下に挙げる.

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退院サマリー作成に関するガイダンス Sep 2019

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どの疾患・病態の病歴要約かのリスト

患者氏名や ID 等,個人特定ができる情報は可能なかぎり非表示

研修医の考察欄および指導医確認欄は 「病歴要約」の場合に退院サマリーの 枠組みに追加して登録できるように, 電子カルテシステムにおいて設定する.