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`岡 山 医学 会 雑 誌  第113巻

April 2001, pp. 79-86 レ ビ ュ ー

薬剤耐性菌について

秋 山 尚 範,荒 田 次 郎,岩 月 啓 氏

キ ー ワ ー ド: MRSA, VRE, PRSP,緑 膿 菌, ESBL, BLNAR,多 剤 耐 性 結 核 菌,バ イ オ フ ィ ル ム

緒 言

病 原 細 菌 に 劇 的 に 効 く抗 生 物 質 の 開 発 に よ り感 染

症 の 時 代 は 終 わ っ た と い う の が 十 数 年 前 ま で の 定 説

とな っ て い た.と こ ろ が1980年 代 に 入 り メ チ シ リ ン

耐 性 黄 色 ブ ド ウ球 菌(methicillin resistant Sta

phylococcus aureus; MRSA)の 出 現 に よ り事 態 は 一

変 し た.バ ン コ マ イ シ ン(VCM)の 発 売 に よ り一 時

の 騒 動 は や や 沈 静 化 し た か に 見 え る が, VCMの 使

用 量 の 増 加 と と も に 近 年 で は ヘ テ ロVRSA

(vancomycin-resistant S. aureus), VCM耐 性 腸

球 菌(VCM resistant Enterococcus; VRE)な どの

蔓 延 が 危 惧 さ れ て い る. 1990年 代 か ら は ペ ニ シ リ ン

耐 性 肺 炎 球 菌(penicillin resistant Streptococcus

pneumoniae; PRSP),基 質 拡 張 型 β-ラ ク タ マ ー ゼ

(extended-spectrum β-lactamase; ESBL)を 産

生 しセ フ ォ タ キ シ ム(CTX)や セ フ タ ジ ジ ム(CAZ)

な ど の 第 三 世 代 セ フ ェ ム 薬 に 耐 性 を獲 得 し た 肺 炎 桿

菌(Klebsiella pneumoniae),多 剤 耐 性 緑 膿 菌,イ ン

フ ル エ ン ザ 菌(Haemophilus influenzae)の β-ラ ク

タ マ ー ゼ 非 産 生 ア ン ピ シ リ ン 低 感 受 性 菌(β-

lactamase negative ampicillin resistant;

BLNAR),多 剤 耐 性 結 核 菌 な ど の 「薬 剤 耐 性 菌 に よ

る感 染 症 」 が 問 題 と な っ て い る.本 稿 で は,前 半 で

薬 剤 耐 性 菌 の 概 況 を 述 べ,後 半 で 皮 膚 科 領 域 の

MRSA感 染 症 と そ の 対 策 に つ い て 述 べ る.

薬剤耐性菌の概況

1. 薬剤耐性菌 の現況

抗菌薬の研究 ・開発 の進歩 は細菌感染症 の治療 に

多大 な貢献 をもた らし,感 染症死亡 を大 き く減少 さ

せ た.一 方,抗 菌薬の使用量の増大 と ともに薬剤耐

性菌が出現 ・増加 し,治 療に難渋す る症例 が増 えて

きた.近 年 ではあ らゆる種 類の菌に薬剤 耐性 が進行

して見 られている1)(表1). MRSAやPRSPは 臨

床分離 され る菌 の50%以 上 を占め,常 在菌化 とい う

深刻 な事 態 となっている.院 内感染 の大部分 は薬 剤

耐性菌に よ り発症す る.易 感染 者の増加 とともに 多

剤耐性菌 は患者 の予後 に重大 な影響 を及ぼ して来て

い る.

2. 二十一世紀 の細菌感染症

人間が抗生物質 を開発す る能力 よ り菌 が変化 す る

スピー ドの方が勝 って いるため,感 染症 は二十一世

紀に も人類 の脅威 であ り続け ると考 えられ る.細 菌

感染症 の治療 はいまだ抗生物 質に頼 ってい るのが現

状 であ るが,病 原菌 を抗生物 質で殺 す とい う考 え方

だけでは感染症 の治療 に限界があ るのは明 らかで あ

る.抗 生物質の適正使 用 とともに抗 生物質 だけに頼

らない新 しい取 り組み,院 内感染 対策 などの予防対

策が ます ます重要 となる.

3. 本邦 のMRSA,ヘ テ ロVRSAに つ いて

1950年 代か ら1960年 当初にかけて 多剤耐性 黄 ブ菌

の増加 が観察 されたが,耐 性 ブ ドウ球菌用ペニ シ リ

ン薬 ・第一世代 セフェム薬の使用 とともに その数 は

減少 した.一 方,こ れ らは緑膿菌に抗菌力が劣 った

岡山大 学 医 学部 皮 膚 科 学 講座

電話:086-235-7282 FAX: 086-235-7283

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ため緑膿菌 の増加 が見 られた. 1980年 代にな り緑膿

菌 には優 れた抗菌 力 を有す るが黄 ブ菌 には効 菌力の

劣 る第二,第 三世代 セフェム薬 の使用が始 まった.

それ とともに緑膿菌 は減少傾 向を示 したが,日 本 中

でMRSAが 猛威 を振 るったのはまだ記憶に新 しい.

MRSAに は細胞壁合成酵素であるペニシリン結合 蛋

白(PBP) 1と2の 間に新 たにPBP 2'が 検 出 され

る.こ のPBP 2'は β-ラ クタム薬 との結合 親和性

が極 端 に低 い ため, β-ラ クタ ム薬 の 存在 下 で も

MRSAは 細胞壁の合成 を継続 し続 け,生 育で きる.

PBP 2'を コー ドしている遺伝 子はmec A遺 伝 子

と呼ばれてい る.

表1  あ らゆ る種 類 の菌種 にお け る薬 剤耐 性 の進行

( )は耐 性菌 の分 離率 を示 す.

院 内感染 菌

MRSA (50%以 上),ア ルベ カ シ ン耐性 黄 色 フ ドウ球 菌

(MRSAを 含 む: 1-10%), PRSP (50%以 上), VRE,

緑 膿菌(20%前 後)/ブ ドウ糖 非 発酵 菌群,肺 炎桿 菌 ・セ

ラチ ア/腸 内細 菌科 な ど

伝 染病 起 炎菌

赤 痢菌,コ レラ菌,ペ ス ト菌,ジ フ テ リア菌,百 日咳 菌

な ど

食 中毒起 炎 菌

病 原大 腸 菌,サ ル モネ ラ,キ ャン ピロバ クター な ど

性 感染症 起 炎菌

淋 菌,ク ラ ミジア な ど

抗 酸 菌

MAC (Mycobacterium avium-intercellulare complex),

多剤 耐性 結核 菌(1-10%),癩 菌 な ど

そ の 他

Helicobacter pylori,イ ンフルエ ンザ菌, Moraxella catarr

halisな ど

文献1)の 表1, 2を 改 変

1990年 代になるとVCMの 発売により重症MRSA

感染 症は激減 したが, VCMの 使用量 の増加 ととも

に近 年ヘ テ ロVRSA, VREの 出現が報告 されてい

る. VRSAと はVCMに 対す る最小発育阻止濃度

(MIC)が8μg/ml以 上 のintermediate耐 性 を示す

黄ブ菌 を言 う.ヘ テ ロVRSAと はVCMに 対す る

MICは4μg/ml以 下 でVCMに 感受性パ ター ンを示

すが, VRSAを 高頻度(106に1個 以上 の割合)に 含

む黄ブ菌 を言 う2).ヘ テ ロVRSAは 細菌検査室 でル

チンに行 うMIC測 定な どでは感受性 に分類 され

て しま う. VCMは 組織移行性 が悪いため, 8μg/ml

とい う濃度で も治療 で きない と考 えられてい る.

4. VCM耐 性腸球菌(VCM resistant Enteyococ

cus; VRE)

腸球菌(主 にE. faecalis, E. faecium)は グラム

陽性菌 の中ではブ ドウ球菌 とともに最 も多剤耐性菌

が存在す ることがその特徴 の一つ として挙 げられる.

VREは 家畜(主 に養鶏)の 飼料 中に生育促進剤 とし

て添加 されて いたグ リコペ プチ ド系抗生物質 であ る

アボパ ルシン(VCMと 同系統)に 対 して耐性 を獲

得 した腸球菌(同 時にVCM耐 性 を獲得)が 人へ と

伝搬 された もの と考 えられてい る3).細胞壁ペ プチ ド

グ リカン を構成 して いるmurein monomer末 端 の

D-alanyl-D-alanineがD-alanyl-D-lactateへ と

変化 したため, VCMが 結合 で きな くな りその抗菌

力 を失 う4). VCM耐 性遺伝 子はplasmid上 にある

van Aと 染色体上にあ るvan B (plasmid上 に もあ

る), C, D, Eが あ り,そ れ ぞれでVCMと テイ

コプ ラニ ン(TEIC)の 耐性 度が異な る.

VREの 多 くは現存す るすべ ての抗菌薬に耐性であ

るため問題 とな る. VREは 尿路感染,腹 部術後感染,

さ らに重篤な敗血症 を起 こす. VREの 感染源 は患者

の便 ・尿であ ることが 多 く,院 内感染 の原因 ともな

りうる.本 邦 では まだVREの 分 離頻度は少ないが,

各地 で検 出され るようになって きて いることか ら,

VREの 蔓延 に注意す る必要 があ る.

5. ペニ シ リ)ン耐性肺炎球菌(penicillin resistant

Streptococcus pneumoniae; PRSP)

高齢者の市中肺炎,小 児の化膿性髄膜炎,耳 鼻科

領域 での急性中耳炎 ・副鼻腔炎 な どの起炎菌 として

最 も重要 な肺炎球菌 は近年 高度 の多剤耐性化 を示 し

てい る5).院内感染の病原菌の耐性化 とは異なった意

味で重大 である.

肺炎球菌のペニ シ リン薬 ・セフェム薬 に対す る耐

性 は,そ れ らの作用点であ るPBPの 変 異による.

National Committee for Clinical Laboratory

Standard (NCCLS)に よるペ ニ シ リンG (PCG)

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薬 剤耐 性菌 につ いて  81

の基準 はそのMICが0.063μg/ml以 下 を感受 性

(penicillin sensitive S. pneumonia; PSSP),同

0.125-1μg/mlを 中間型(penicillin intermediate

S. pneumoniae; PISP),同2μg/ml以 上 を耐 性

(PRSP)と す る.本 邦 ではPISPが30-40%, PRSP

が10-30%で,両 者 を合 わせ る とす でに50-70%が

PCGに 耐性 となって いる.こ れ らではペニ シ リン薬

のみならずセフェム薬 ・マ クロライ ド薬耐性 も進ん

でいる.ニ ュー キ ノロン薬の耐性は頻度の上ではそ

れほ ど多 くはないが各地 で検 出され ている.各 種 薬

剤耐性の肺炎球菌 の出現 と増加 は,各 々の抗菌薬の

使用状況 と明 らか な関連性が ある と考 えられてい る

ため,各 施 設ご との耐性化状況の正確 な把握 と適正

な抗菌薬の選択 が重要 となる5).

6. 緑 膿 菌

緑膿菌は水が存在す る環境下 では長期 間生存す る

こ とが で き,増 殖 可 能 で あ る.そ の ため, water

bacteriaと も呼ばれてお り, MRSAと ともに院内

感染の原因菌 として しば しば分離 され る.健 常 人で

はほ とん ど病 原性 を発揮せず,病 原性 は低い と考 え

られるが,抗 癌剤や免疫抑制剤の投与 あるいは重症

の熱傷 な どに より免疫力 の低 下 した患者,尿 路障害

や 呼吸器障害 な どの基礎 疾患 を持 っ患者 などに対 し

て しば しば重篤 な感染症 や慢性 の感染症 を引 き起 こ

す6).緑膿菌は 多 くの抗菌薬や消毒薬 に対 して高度 自

然耐 性を示す.耐 性機構 は低 い外 膜透過性,薬 剤排

出ポンプの働 き,不 活化 酵素 の産生 お よび作用標 的

に対す る親和性の低 下に よ り起 こることがあ きらか

に なっ て い る.グ ラム陰 性菌 の β-ラ ク タマ ー ゼ

(表2)は 外膜 と内膜の間,い わゆ るペ リプ ラスマ

に存在す る菌体 内酵素 であ る.モ ノバ クタム薬 を除

きペ ニシ リン薬,セ フェム薬,セ ファマ イシン薬 お

よびカルバペネム薬 を効率 よ く加水分解す る メタロ

β-ラ クタマーゼ を産生する緑 膿菌が 日本各地 で分離

され関心が高 ま りつつ あ る.キ ノロン薬や カルバペ

ネム薬が開発 され,治 療 に使用 され る現在 では,フ

ルオロキノロン耐性緑膿菌,カ ルバペ ネム耐性緑膿

菌が20%前 後に見 られている.

7. 肺 炎 桿 菌

肺炎桿菌は呼吸器感染症,尿 路感染症,髄 膜炎,

敗血症 あるいは術 後感染症 な どの起炎菌 として分離

され る.本 菌は莢 膜 を有 し好 中球 などの食菌作用に

表2  β-ラ クタマー ゼ(β-ラ クタム薬加 水分 解 酵素)の 分 類

1.  セ リン β-ラ クタマ ーゼ

セ リンを活性 部位 とす る クラスA, C, D型 酵素

2.  メタロ β-ラ クタマ ーゼ

活性保 持 に亜 鉛 な どの 金属 イオ ンを要す るク ラスB型 酵 素

文 献6, 7よ り改 変

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抵抗性 を示す ため,感 染防御能 の低下 したコンプ ロ

マ イズ ドホス トにおける感染症 では重篤化す る可能

性が ある.肺 炎桿菌 の薬剤耐 性機構 は β-ラ クタム薬

母核構造 中の β-ラ クタム環 を開環 させ るβ-ラ クタ

マー ゼ産生 に よるものがほ とん どである7). ESBL産

生菌 はセフ ァマ イシン薬や カルバペ ネム薬 な ど一部

を除 きほ とん どのペ ニ シ リン薬やセフ ェム薬 に耐性

を示す.し か し,ク ラブ ラン酸(CVA),ス ルバ クタ

ム(SBT),タ ゾバ クタム(TAZ)な どのβ-ラ クタ

マーゼ阻害薬 と,ペ ニ シ リン薬やセ フェム薬 との合

剤は基本的 にはESBL産 生菌 に抗菌力 を発揮 す る.

8.  インフルエ ンザ菌

市 中肺炎 の重要 な起炎菌 であ るインフルエ ンザ菌

の薬剤耐 性機構 は β-ラ クタマーゼ(ペ ニ シ リナーゼ)

産生 とPBPの 変異 によ るBLNARが あげ られ る.

BLNARは ペニ シ リナーゼ産生株 と異な り,ペ ニ シ

リン薬のみならず一部のセフェム薬 にも耐性 を示す8).

さらに近年,新 しい耐性菌 として β-ラ クタマーゼ阻

害薬 耐性 の β-ラ クタマーゼ 産生株(β-lactamase

positive amoxicillin clavulanate resistant;

BLPACR)の 出現が報告 されてい る.

9. セ ラ チ ア

セ ラチア(ほ とん どがSerratia marcescens)は

基礎 疾患 を有す る患者や カテー テル装着 な どの医療

処 置 を受 けてい る患者,免 疫機能 が低下 した患者 な

どに,尿 路感染症 や肺炎な どを起 こす頻度が高 い.

このほか,敗 血症,創 傷 感染,髄 膜炎,腹 膜炎 など

多 くの感染 症 を引 き起 こす ことが知 られている.セ

ラチアは β-ラ クタマーゼ を産生 しペ ニ シ リン薬 ・セ

フェム薬 をは じめ とす るβ-ラ クタム薬に耐性 である

ことが 多い.特 に,消 毒 剤に耐 性生で ヒ トの手 を介 し

た伝 播経 路に よる院内感染症 の発生例 の報告が見 ら

れてい ることか ら,本 菌 が分離 された場合 には特に

院内感染対 策の面 か らも注意が必要 であ る9).

10. 多剤耐性結核 菌

結核 患者 の急減 した本 邦では,若 年者 の大半が結

核免疫 のない結核 未感染 者 とな ったため, 1990年 代

の半 ばよ り結核の集団感染が相 次いで発 生 している.

耐性結核菌 は各薬剤 の耐性遺伝 子部位 の点変異が原

因 なので,薬 剤 の有無 に関係 な く自然に突然変異 と

して発 生 して くる.普 通,リ フ ァンピシン(RFP)

とイソニア ジ ド(INH)の2剤 に耐性が あ る場合,

多剤耐性結核菌(MDR-TB)と して いる.こ のMDR

-TBは 日本 では初 回治療 で0 .1%,再 発例 で10.1%

と言われてい る.抗 結核薬単剤治療か患者の不規則

服用が あると耐性菌 が選択増殖 して耐性結核 患者が

発生す る10).耐性菌出現の予 防は,治 療の開始時 より

必ず複数の薬剤 を同時に用 いるこ とお よび途中で治

療の 中断 を行 わないこ とである.

皮膚科領域のMRSA感 染症 とその対策

1. 皮 膚 科 領 域 黄 色 ブ ドウ球 菌 感 染 症 にお け る

MRSAの 分離頻度

皮膚科領域 細菌感染症か ら分離 され る黄ブ菌 の約

30-40%がMRSAで あ り,そ の頻度は ここ数年変

わっていない. MRSAの 検 出は褥瘡,二 次感染 で高

く,伝 染性膿痂疹,毛 包炎 では少 ない.近 年, MRSA

はその数の上 ではア トピー性皮膚炎(AD)の 皮膚病

変か ら最 も多 く分離 され るのが特徴 となってい る.

ADに 抗菌薬 を投与 すれば皮膚表面に定着 したメチ

シ リン感性S. aureus (MSSA)がMRSAに 菌交

代す る症例が入院患者 を中心 に数 多 く見 られる. AD

患者へ の抗菌薬療法 はMRSAへ の菌交代 を防 ぐた

め注意深 い投与デザ インが必要 である11).

2. MRSAに よる毒素関連性疾患

a.  ブ ドウ球 菌性 表皮 剥 脱 性毒 素(exfoliative

toxin: ET)に よる疾 患

伝 染性 膿痂疹,ブ ドウ球 菌性 熱傷 様皮 膚症候 群

(SSSS)の 起炎菌は現在 で もメチ シ リン感受性黄 ブ

菌(MSSA)に よることが多い.し か し,近 年, MRSA

に よる伝染性膿痂疹, SSSSの 報告が少 なか らず見

られてい る.こ れ らでは伝染性膿痂疹, SSSSの 第

選択薬 である経 ロセ フェム薬 が無効 なこ とが最大

の特徴 である.初 診時の臨床所見 で起炎菌がMSSA

か, MRSAか の判断 は不可能 なため,必 ず細菌培養

を行 い,抗 菌薬感受 性 を調べ る.抗 菌薬感受性 によ

り起 炎菌 がMRSAで あるこ とが判明す れば,感 受

性のあ る抗菌薬 に変更す る12).

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b. Toxic shock syndrome toxin-1 (TSST-

1)に よる疾 患

Toxic shock syndrome (TSS)は 黄ブ菌が産生

するTSST-1な どに よ り発熱,血 圧低下,多 臓器不

全,発 疹 を来す疾患 で, MRSAに よるこ とが 多い.

近年,皮 膚科領域か らTSSの 診断基準 を満 たさな

い産褥期 の症例がprobable TSSと い う概念 で報告

されてい る.

高橋,内 山 らは発熱,発 疹(toxic erythema),血

小板減少 を示す新生 児疾 患 をneonatal TSS-like

exanthematous disease (NTED)と して報告 した13).

NTEDはMRSAのcolonizationよ り産生 され た

TSST-1に よる新生 児のTSSで あ り,成 熟児は無

治療で軽快す るが,未 熟児は重症化 す る.近 年,成

熟児で も重症化す る例 があることが指摘 されている.

3. MRSAが 皮膚病変 よ り検 出された場合 について

皮膚病変か らMRSAが 検出 された場合,定 着(コ

ロナ イゼー シ ョン)か 感染症発症かの鑑別 を感染症

状(炎 症 の四徴 ・膿),検 体の グラム染色所 見(多 核

白血球 のグラム陽性球 菌の貪食像),血 液生化学 的炎

症反応(白 血球数, CRP)亢 進,菌 量 で行 う. MRSA

が検出 されて も感染症 でない場合に は抗菌 薬投与 は

行 わない(表3).皮 膚か らMRSAが 検 出 されて も

コロナ イゼー シ ョンの こ とが 多い.そ の場合 も院 内

感染源 として他 の患者 に移行す る可能性や 患者 自身

に何か侵襲が加 わ るとMRSAは 起炎菌 とな りうる.

皮膚病変 にMRSAが 定着 した場合,皮 膚病変 その

ものが治癒 しない限 りMRSAは 消失 しないため,

皮膚病変 の改善 に努め るこ とが重要 である.

表3  皮膚病変よりMRSAが 検出された場合

炎症 の 四徴:発 赤,腫 脹,痔 痛,熱 感

4.  MRSAの 出現を抑 えるには

MRSAの 拡散は,無 効な抗菌薬が使用されている

宿主内での選択的増殖及び交差感染によって起こる

ことが多い.そ のため抗菌薬の適正使用 と病院にお

ける交差感染防止がMRSAの 出現抑制に極めて重

要である.適 正使用 とは病態ごとに第一選択薬を設

定し,投 与期間を必要限度内に抑えることである.

5. MRSA院 内感染対策

伝播経路 として接触感染が最 も重要 なため,手 洗

い ・手の消毒,一 作業一消毒 を行 う.ま た,中 心静

脈カテーテル(CVC)留 置の適応と管理の適正化に

努める. CVC感 染の感染経路として刺入部皮膚から

の汚染,三 方活栓 ・接続部からの汚染,体 内の感染

病巣からの間欠的菌血症による内因性(血 行性)汚

染が考 えられる.皮 膚科領域では水疱症患者 などの

皮膚病変部には極めて多数の黄ブ菌が定着 しており,

CVC留 置により高率にCVC感 染を併発する危険が

ある.深 い皮膚潰瘍に定着 したMRSAの 菌血症か

ら細菌性心内膜炎,骨 髄炎,関 節炎, CVC感 染 を起

こすことがあるため注意する必要がある.

現在では院内感染症や術後感染症などを引き起 こ

す菌は,ほぼ例外なく薬剤耐性菌 となっている. MRSA

保菌者対策が必要なのは,コ ンプロマイズ ドホス ト

(手術患者を含む),今後コンプロマイズ ドホス トに

なる可能性がある症例,コ ンプロマイズ ドホス トに

接触する人,医 療従事者である. MRSA保 菌者のス

クリーニングで最 も重要なのは鼻腔である.鼻 腔内

のMRSA保 菌者はムピロシン(MUP)軟 膏を3日

間に限って鼻腔内に外用する.術 後患者などでの鼻

腔定着MRSAに よる感染症発症予防に威力を発揮

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す る.可 能 な らMRSA感 染 者は隔離す る.そ れが

不 可能 の場合 には, MRSA感 染 対策上最 も重要 な コ

ンプ ロマ イズ ドホス トを逆隔離 ない し, MRSA感 染

者 と同室に しない こ とを原則 とす る.コ ンプ ロマイ

ズ ドホス トが易感染状態 を脱 した場合には,逆 隔離

を解除す る.

6.  MRSA皮 膚遷延性 感染症

MRSA皮 膚遷延性感染症 として, ADに 伴 う感染

症14),コ ンプ ロマ イズ ドホス トの感染症,バ イオフィ

ルム感染症15),爪 囲感染症 な どが ある.

a.  ア トピー性皮 膚炎 に伴 う感染症

ADに おけ る黄 ブ菌感染症 は伝染性膿痂疹 ・痴 な

どの原発性 感染症 と湿疹病変部 の黄 ブ菌の菌数が増

加 して107cfu/cm2以 上 となった二次感染 に分類 される.

ADに 抗菌薬(例:セ フ ジニル(CFDN))を 投与す

ると21%で 皮表はMRSAに 菌 交代す る. MRSAへ

の菌交代 は外来例 よ り入院例 に 多 く,入 院例 では抗

菌薬 を7日 間投与す る と88%がMRSAに 菌交代す

る. MRSAに 菌交代 した場合,臨 床 的に軽快 し菌数

も少 ないあま り問題の ない例 と臨床症状 も重篤 で菌

数 も多い問題例 が ある.問 題例 では黄 ブ菌 の存在以

外に接触性皮膚炎 などの皮疹 の増悪 因子が他 に存在

して いるため,抗 菌薬投与 と同時にそれ らの除去 を

行 うこ と及 びステロイ ド外用剤 を用いて早急 に皮疹

を軽 快 させ るこ とが最 も重要 で あ る. MRSAは

MSSAよ り平均 で約1.5倍 増殖 速度が遅 いため,抗

菌薬 を中止す る と皮表 は約2週 か ら5ヵ 月で再 び

MSSA優 位 の菌 叢に菌交代す る. MRSAを 検 出 し

た場合,感 染症状 が あれば抗菌 薬療法 を行 う.感 染

症状 が ない と抗菌薬療 法は行 わ ない.

b. バ イオフィルム感 染症

皮膚科領 域のバ イオフィルム感染症 は皮膚挿入異

物感染症,慢 性膿皮症,ボ トリオ ミコーゼ,褥 瘡感

染症 などであ る.黄 ブ菌 のバイオフ ィルムは,菌 の

接 着につづ いて,菌 周囲の フィブ リンの取 り囲み と

菌 の グ リコカ リックス産 生で形 成 され る.バ イオフ

ィルム中の黄ブ菌 は抗菌薬 ・消毒薬 に抵抗性 であ り,

黄 ブ菌 の周囲 をフ ィブ リンが取 り囲んだだけ で10%

イソジン液 は黄 ブ菌 に対 す る殺菌 力 を失 う.黄 ブ菌

感染対策上,血 漿凝 固が起 こらない,す なわ ちフィ

ブ リン形成が起 こらない ことが最 も重要 であ ると考

え られ る.そ の ため黄ブ菌 の コア グラー ゼ(血 漿 中

のプ ロ トロンビンと活性結合体 を形成 し,血 漿凝 固

に関与)に よ り血漿凝 固が起 こらない外用薬 を探 し

た. 5%酸 化亜鉛16), 70%精 製 白糖17)の存在 および低

pH (pH 5.4以 下)環 境18)で黄 ブ菌 に よる血漿凝 固が

起 こ らないことが判 明 した. 2.5%濃 度 の酢酸 も血漿

中に存在す る黄ブ菌 のバ イオフィルムを完全に破壊

す るほどの強 い抗バ イオフィルム作 用 を有す る18).ス

ルファジア ジン銀は,銀 がバ イオフィル ムを取 り囲

む ことによ り液体培地 中 よりバ イオフィルム中に存

在す る黄 ブ菌に よ り強い殺菌力 を有す るこ とが判 明

した17).こ れ らをまとめ て表4に 示 した.

7. 重症度 ・耐性度別MRSA皮 膚感染症への適正

抗菌薬療法

各症例 で分離 されたMRSAの 感受性試験の結果

をもとにMRSAに 対 して十分 な抗菌力 を持つ抗菌

薬の全 身投与 を行 う必要が あ る.重 症度 ・耐性度別

MRSA皮 膚感染症へ の適正抗 菌薬療法 を表5に 示

す. VCMが 最 も確 実な治療 であ るが グラム陰性桿

菌には無効 であ り,混 合感染が疑 われ る場合 には,

第三世代 セフェム薬や カルバペ ネム薬 を併用す る.

VCMの 使いす ぎでVCM高 度耐性 のMRSAが 出

現 し,そ れが拡大すれば深刻 な事態 となる.そ のよ

うな事 態になる前にVCMの 使 い方 を見直す必要が

あ る.軽 ・中等症例 ではVCM以 外 に選択薬がある

ため, VCMは 選択 しない.重 症例 にはVCMを 選

択 しホス ホマ イシ ン(FOM)お よびスルバ クタム

(SBT)/セ フォペ ラゾ ン(CPZ)ま たはSBT/ア ン

ピシ リ)ン(ABPC)と の併用 を行 う. VCMを 投与 し

て感染症状消失後 も皮膚 よ りMRSAが 検 出され る

こ とがあ る. VCMはMRSAの 感染症状が消失 し

た ら中止 し,除 菌 を目的にVCMを 投与 し続けては

な らない.

文 献

1) 荒川宜親: 治療に難渋する耐性感染症の諸問題, 薬剤耐

性菌感染症サーベイランス事業, 日本感染症学会雑誌

Page 7: 薬剤耐性菌についてousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/13644/...して見られている1)(表1). MRSAやPRSPは 臨 床分離される菌の50%以 上を占め,常 在菌化という

薬剤耐性菌について  85

表4  S. aureusの バ イオフ ィル ムに有 用 な外用 薬

1. 70%精 製 白糖(70%精 製 白糖 存在 下 で もS. aureusは 増殖 可能)

高浸透 圧 作用 に よ リフ ィブ リン形 成 の抑制(S. aureusの 定着 ・biofilm形 成抑 制)

併 用 抗菌 薬,消 毒 薬 の殺 菌 力増 大

2. 5-10%酸 化 亜 鉛(S. aureusに 静 菌作 用)

フィ ブ リン形成 の抑 制(S. aureusの 定 着 ・biofilm形 成 抑制)

併用 抗菌 薬 の殺 菌 力増大

3. 低pH (pH 5.4以 下)環 境(pH 5.4で もS. aureusは 増 殖 可能)

フ ィブ リン形成 の抑 制(S. aureusの 定 着 ・biofilm形 成 抑制)

2.5%酢 酸含 有 軟 膏(自 家作 製)

2.5%酢 酸 の効 果:バ イ オフ ィルム を破壊 して殺菌 作用

4. 1%ス ル フ ァ ジア ジン銀

銀の効 果:バ イオ フ ィル ム を取 り囲 み殺 菌作 用

表5  重症度 ・耐性度別MRSA皮 膚感染症に対する適正抗菌薬療法

1. 軽 症 例

a) 中等度 耐性

ミノサ イ ク リン内服

ニ ュー キ ノロン薬 内服

ホス ホマ イ シン内服 → β-ラ クタム薬 内服

b) 高度 耐性

ニ ュー キ ノロ ン薬 内服

ホ スホマ イ シン内服 → β-ラ クタム薬 内服

2. 中等症 例

a) 中 等度耐 性

ニ ュー キ ノロ ン薬 内服

ホ スホマ イシ ン内 服→ β-ラ クタム薬 内服

b) 高 度耐性

カ ルバペ ネム 薬iv→ セフ ォチ アムiv

ス ルバ クタム/ア ンピ シ リンiv

ホ スホマ イシ ンiv (oneshot)→ スルバ クタム/セ フォペ ラ ゾン

また はス ルバ クタム/ア ン ピシ りンiv

3. 重 症 例

a) 中等度 耐性

ホ スホマ イシ ンiv (oneshot)→ バ ン コマ イ シンorテ イ コプ ラニ ン

また はア ルベ カ シンiv

ス ルバ クタム/セ フォペ ラゾ ンiv→ バ ン コマ イシ ンorテ イ コプ ラニ ンiv

ア ルベ カ シンiv→ スルバ クタム/セ フ ォペ ラ ゾンiv

b) 高 度耐 性

ホス ホマ イ シンiv (oneshot)→ スルバ クタム/セ フ ォペ ラゾ ン

または スルバ クタ ム/ア ン ピシ リンiv

→バ ン コマ イ シンorテ イ コプ ラニ ンiv

ボス ホマ イ シンiv(oneshot)→ ア ルベ カ シンiv→ スルバ クタム/セ フォペ ラ ゾン

または スル バ クタム/ア ン ピシ リンiv

林泉:癌 研究会附属病院を改変

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86  秋 山 尚範 ・荒 田 次郎 ・岩 月 啓 氏

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