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船舶電装 Vol.195 2014.10 ■船舶電装業における防音保護具の選択と使用方法について 株式会社重松製作所 企画部長 今川輝男 1.はじめに 騒音職場(騒音レベル 85dB 以上)で長年働いていると、個人差はあるにしても、遅かれ早かれ 現れてくるのが騒音性難聴です。 騒音性難聴を治療することは、今のところほとんど不可能です。 騒音職場で働く人の健康を守るためには、ばく露される騒音をできる限り少なくすることが重要 です。 そのため、騒音の低減、騒音暴ばく露時間の短縮、防音保護具の着用等の対策が必要です。 ここでは、防音保護具の選択、使用方法等について書きます。 2.騒音障害防止に関する規則等 2.1 労働安全衛生規則 595 条に次の内容があります。 a)事業者は、強烈な騒音を発する場所における業務においては、当該業務に従事させる労働者 に使用させるために、耳栓その他の保護具を備えなければならない。 b)事業者は、耳栓その他の保護具の使用を命じたときは、遅滞なく、当該防音保護具を使用し なくてはならない旨を、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、見やすい場所に掲示 しなくてはならない。 2.2 騒音障害防止のためのガイドライン 平成 4 10 1 日、基発第 546 号で示されています。 内容は次のとおりです。 a)目的 b)騒音作業の定義 c)事業者の責務 d)計画の届出 e)作業環境管理及び作業管理 この中に、防音保護具の使用、及び掲示が出ています。 f)健康管理 g)労働衛生教育 3.騒音の影響 騒音の自覚的感じと実例(目安)は次のとおりです。(図 1 参照) 4.防音保護具の規格 日本工業規格 JIS T 8161 で規定されています。 現在、この JIS の見直し作業が始まっており、12 年後にできると思われます。

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Page 1: 船舶電装業における防音保護具の選択と使用方法についてdenso.sokei.co.jp/anzen/anzen_hogogu09.pdf5.1 耳栓 a)形の決まっている耳栓 b)形が変わる耳栓

船舶電装 Vol.195 2014.10

■船舶電装業における防音保護具の選択と使用方法について

株式会社重松製作所

企画部長 今川輝男

1.はじめに 騒音職場(騒音レベル 85dB 以上)で長年働いていると、個人差はあるにしても、遅かれ早かれ

現れてくるのが騒音性難聴です。 騒音性難聴を治療することは、今のところほとんど不可能です。 騒音職場で働く人の健康を守るためには、ばく露される騒音をできる限り少なくすることが重要

です。 そのため、騒音の低減、騒音暴ばく露時間の短縮、防音保護具の着用等の対策が必要です。 ここでは、防音保護具の選択、使用方法等について書きます。 2.騒音障害防止に関する規則等

2.1 労働安全衛生規則 第 595 条に次の内容があります。 a)事業者は、強烈な騒音を発する場所における業務においては、当該業務に従事させる労働者

に使用させるために、耳栓その他の保護具を備えなければならない。 b)事業者は、耳栓その他の保護具の使用を命じたときは、遅滞なく、当該防音保護具を使用し

なくてはならない旨を、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、見やすい場所に掲示

しなくてはならない。

2.2 騒音障害防止のためのガイドライン 平成 4 年 10 月 1 日、基発第 546 号で示されています。 内容は次のとおりです。

a)目的 b)騒音作業の定義 c)事業者の責務 d)計画の届出 e)作業環境管理及び作業管理

→ この中に、防音保護具の使用、及び掲示が出ています。 f)健康管理 g)労働衛生教育

3.騒音の影響

騒音の自覚的感じと実例(目安)は次のとおりです。(図 1 参照) 4.防音保護具の規格

日本工業規格 JIS T 8161 で規定されています。 現在、この JIS の見直し作業が始まっており、1~2 年後にできると思われます。

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5.防音保護具の種類

JIS T 8161 で次のように分けられています。

種類 分類 記号 備考

1種 EP-1 低音から高音まで遮音するもの

2種 EP-2主として高音を遮音するもので会話域程度の低音を比較的通すもの

耳覆い - EM -

耳栓

JIS規格(JIS T 8161)

( 図 1 騒音の自覚的感じと実例(目安) )

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5.1 耳栓

a)形の決まっている耳栓

b)形が変わる耳栓

5.2 耳覆い(イヤ-マフ)

6.耳栓の選択方法

6.1 1種、2種の選択 耳栓には、低音から高音までを遮音する「1種」と、主に高音を遮音して会話域を比較的通し

やすくした「2種」があります。 騒音の程度が低く、会話域を聴きやすくする要があるときは、この「2種」を使用します。

しかし、市販で販売されている耳栓のほとんどは、「1種」です。

6.2 不快感のないものの選択 耳栓を装着して不快感があるようでは、使用できません。 使用前に、数分間使用し、不快感がないことを確認してから使用するようにしてください。

6.3 フィットするものの選択 耳栓を使用しても、耳の穴にフィットしていなければ、耳栓の効果は期待できません。 フィットしているかどうかは、耳栓チェッカ-等で確認することができます。

7.耳栓の正しい装着方法

次の手順で装着します。 a)反対側の手で耳をひっぱりあげる。 b)耳の穴をまっすぐにする。 c)耳栓を挿入する。

我々、東洋人の耳の穴は曲がっているため、後ろに引くほうが耳の 穴はまっすぐになりやすいと言われています。

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8.耳栓の保守管理方法

形の決まっている耳栓(5.1a)のタイプ)は、使用後は適度な濃度の中性洗剤で洗い、良く乾

かしてください。 変形したもの、キズがあるものは、性能が十分発揮されませんので、新品と交換してください。 また、汚れた耳栓を使用すると炎症等を起こすおそれがありますので注意してください。

形が変わる耳栓(5.1b)のタイプ)は、使い捨てなので、洗浄等をしての再使用はできません。 9.耳覆い(イヤ-マフ)の保守管理方法

使用後は中性洗剤で洗い、良く乾かしてください。カップが変形したもの、キズがあるものは、

性能が十分発揮されませんので、新品と交換してください 10.防音保護具使用時の注意事項

a) 外耳に炎症があるときは、耳栓は使用できません。耳覆い(イヤ-マフ)を使用してくださ

い。 b) 防音保護具を使用すれば、会話が聞き取りにくくなります。 そのため、他の人との連絡方法、緊急時の連絡方法を事前に取り決めておく必要があります。

11.おわりに

上述したとおり、騒音性難聴を治療することは、今のところほとんど不可能です。 騒音性難聴にならないために防音保護具を使用することは、重要な対策のひとつです。 防音保護具の性能を十分発揮させるために、正しい選択、正しい装着、正しい保守管理を行って

ください。 以上

【会社紹介】 株式会社 重松製作所

シゲマツは、1917 年(大正 6 年)創業以来、一貫として防じんマスク、防毒マスクなどの呼吸用

保護具を中心に、働く人たちを職業病から守るための努力を重ねてきました。 世界人口の増加、公害の拡散、異常気象の続発、資源の枯渇など以前からの危惧が現実化し、地球

環境破壊の進行が明らかになってきています。 地球環境を保護するためには、省資源、省エネルギーに徹することが重要で、特に資源の再生使用

を進める必要があります。 シゲマツが社会に提供している各種の呼吸用保護具は、僅かな資源消費で、働く人達に清浄な空気

を与えられる優れたシステムです。 シゲマツは、日本国内はもとより国境を越えて、働く人々の健康と幸福を支え、かつ地球の環境保

全にも貢献することに誇りと責任を持って仕事に励んでいます。