製造現場に「手軽にいつもクリーン環境」を。 · 2....

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製造現場に「手軽にいつもクリーン環境」を。 自らの改善活動の中から生まれたクリーンセンシング機器。 ■ オムロン株式会社 センシング機器統轄事業部 アプリセンサ事業部 新領域AMG 大塚 隆史 1. はじめに ットパネ ディスプ イの ちろん、 デジタ カメ される ように、 におけるパーティク によるト が、 きな影 えている。 でク いク ームで される 、デジタ されるよう に、これまで ームを としていなかっ みの で、 造するような 、ク する ーザが えてきており、さまざまな している。 2. クリーンルームの問題点と局所クリーン化 なク ームを する など、 であり、ま た、 きなスペースを いク スに維 する ために め、運 コスト になる。さ らに、ク ーム での 、ク する があり、 が悪く、維 にし ないといけないという がある。 ごろから、 造の 、ク のク に維 するので く、ク される エハ 辺の けを にク する「ミニエ バイ ト」 「 んでいる。 コストを える のとと に、 をより させる として、 されている。 一 、デジタ において から、 造 、 による している。 3. 局所クリーン化の実現手段 する として、 なの が、エアク ニットを ったク ブース チである。 のボックス のビニ シートの に、 μmのパーティク すること のできるHEPAフィ タを したエアク ットを け、ボックス にク エアを るしくみになっている。さらに、ク する ために 、ボックス のエアを み、ミク ーダーのパーティク をカ トできるエアパーテ ィク タが いられる。 これらの されるク ース てる により さま ざまであるが、 にと ない、 のダ サイジ められている。 4. オムロンのクリーン機器の開発コンセプト オム に、 むセ をおこなう ニーズに応えるため、「エアク ニット」、 「エアパーティク サ」、「イオナイザ ニット」の し、 した。

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Page 1: 製造現場に「手軽にいつもクリーン環境」を。 · 2. クリーンルームの問題点と局所クリーン化 大規模なクリーンルームを設置する場合、敷地の確

製造現場に「手軽にいつもクリーン環境」を。 自らの改善活動の中から生まれたクリーンセンシング機器。 ■ オムロン株式会社 センシング機器統轄事業部 アプリセンサ事業部 新領域AMG 大塚 隆史 1. はじめに  半導体やフラットパネルディスプレイの製造現場で

はもちろん、携帯電話やデジタルカメラに代表される

ように、電子機器の小型化・高機能化に伴い製造現場

におけるパーティクルや静電気の発生によるトラブル

が、製品の品質に大きな影響を与えている。

 特に大型でクリーン度の高いクリーンルームで製造

される製品以外でも、デジタル家電に代表されるよう

に、これまではクリーンルームを必要としていなかっ

た手組みのラインで、光学部品や液晶部品を組み込ん

だ機器を製造するような場合、クリーン環境下で製造

するユーザが増えてきており、さまざまな製造現場で

クリーン化の要求が拡大している。

2. クリーンルームの問題点と局所クリーン化  大規模なクリーンルームを設置する場合、敷地の確

保や建設費用など、膨大な初期費用が必要であり、ま

た、大きなスペースを高いクリーンクラスに維持する

ためには、電気代を含め、運用コストも莫大になる。さ

らに、クリーンルーム内での作業では、クリーン服の着

用する必要があり、作業性が悪く、維持管理を厳密にし

ないといけないという課題がある。

 2000年ごろから、半導体製造の業界では、クリーンルー

ム全体のクリーン度を高レベルに維持・管理するのではな

く、クリーン度が最も要求されるウエハ周辺の局所空間だ

けを徹底的にクリーン化する「ミニエンバイロメント」や「

クリーントンネル」方式の導入が進んでいる。

 局所クリーン化は、初期投資や運用コストを抑える

のとともに、製品品質をより向上させる手段として、注

目されている。 一方、デジタル家電や電子部品の製

造現場においても、導入費用と品質向上の両方の観点

から、製造装置や、人による組立工程への局所クリー

ン化導入が加速している。

3. 局所クリーン化の実現手段  局所クリーン化を実現する手段として、代表的なの

が、エアクリーンユニットを使ったクリーンブースやク

リーンベンチである。

 透明のボックスや帯電防止のビニルシートの上に、

0.3μmのパーティクルを99.97%以上濾過すること

のできるHEPAフィルタを搭載したエアクリーンユニ

ットを取り付け、ボックス内部にクリーンエアを排気す

るしくみになっている。さらに、クリーン度を計測する

ためには、ボックス内部のエアを吸い込み、ミクロンオ

ーダーのパーティクル数をカウントできるエアパーテ

ィクルカウンタが用いられる。

 これらの局所クリーン機器が搭載されるクリーンブ

ースは、内部の装置や組み立てる製品により大小さま

ざまであるが、装置や製品の小型化にともない、局所

クリーン機器のダウンサイジングも求められている。

4. オムロンのクリーン機器の開発コンセプト  オムロンでは、昨年の7月に、自社を含むセル生産

をおこなう製造現場や、電子部品の製造工程の局所ク

リーン化ニーズに応えるため、「エアクリーンユニット」、

「エアパーティクルセンサ」、「イオナイザユニット」の

クリーンセンシング機器を開発し、発売を開始した。

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株式会社

これらは、システムとして、さまざまなアプリケーショ

ンに対応するとともに、用途や目的に応じて単体でも

使用できる。

 また、3年前からオムロンでは、インラインで静電気

を測定するための小型・高速の「静電気センサ」や、発

生した静電気を高速・高精度に除去する「イオナイザ」

を商品ラインナップに加え、事業領域を、製品そのもの

の品質から、製品の品質に影響を与える製造現場環境

の「センシング&コントロール」に拡大している。

 オムロンでは、従来からCCDやレンズなどの光学部

品を使った計測・視覚センサなどの組み立てラインで、

他社のクリーン機器を用いて局所クリーン化に取り組

んで来た。しかし、他社製品の場合、使い勝手が悪かっ

たり、重く大きくかさば

り、価格も高価であった

ため、現場の改善活動

を進める上で不満があ

った。そこで、現場での

改善活動に役立つクリ

ーン機器とはどういうも

のかを、自らの製造ライ

ンで仮説・検証を繰り返

し、得意のセンシング&

コントロール技術で製

品化した。

5. オムロンのクリーン機器の紹介 5-1 エアクリーンユニット

 エアクリーンユニットは、装置やクリーンブースの天

井や側面に取り付けられるため、省スペース性と、速

やかに除塵を行うための大風量化が求められる。一般

的には、大風量化のためにパワーを求めれば、エアク

リーンユニットは大型化し、重量も重くなってしまうが、

オムロンでは独自のツインファンを採用し(形ZN-

A2502タイプ)、業界最薄の軽量・コンパクト構造で

ありながら、他社同等品と比較して、約2倍の風量を実

現した。

 さらに、風量は5段階に設定が可能で、ファンの異常

を知らせる自己診断機能も搭載している。メンテナン

ス性にも十分な配慮を行っており、内部に搭載した風

量センサでHEPAフィルタの目詰まりを検知し、本体

のコーナーに配備された大型LEDで表示するととも

に、外部への信号出力で、HEPAフィルタの交換時期

を教えてくれる。HEPAフィルタ自体の交換も、ネジを

使わずに4つのバックルを外すだけのワンタッチ構造

で、作業者の負担を軽減している。

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5-2 エアパーティクルセンサ

 従来のエアパーティクルカウンタは、エアを吸い込

む方法として、ポンプによる吸引方法が採用されてい

る。ポンプによる吸気は、吸引量は大きいものの、サイ

ズが大きく、長時間の連続運転ではポンプの焼け切れ

や寿命に問題があり、価格も高価なものであるため、

製造現場では1セクション、あるいは、1フロアに1台あ

れば良いレベルで、毎日もしくは毎週、定期的に定めら

れた場所を測定して、クリーン度を記録している状況

であった。

 オムロンでは、エアの吸引方法に高性能・小型ファ

ンを採用し、約40,000時間の連続測定を可能にする

とともに、センシング部には、半導体レーザと得意の高

感度光学設計により、0.3μmのパーティクル測定を実

現した。長寿命化により、従来は、定期的な測定による

チェックしかできなかったが、常時監視が可能になり、

イベント的なクリーン度の低下(パーティクルの増加)

を見える化し、現場改善に活かすことができる。

 また、エアパーティクルセンサと前述のエアクリー

ンユニットを接続すれば、パーティクルのセンシング結

果に基づきエアクリーンユニットの風量をコントロー

ルし、対象エリアのクリーン度をいつも最適な状態に

保つことができる。クリーン度が高い状態が維持でき

ている場合は、エアクリーンユニットの風量を最小にし

て、省エネにも貢献することが可能になる。

 エアパーティクルセンサは業界最小のコンパクトボ

ディで、センシング結果を常時ロギングするためのイ

ンターフェースユニットと専用ソフト「リアルタイムク

リーンエアモニタ」をオプションで用意し、最大10個

所のエアパーティクルセンサの測定結果を一括で、パ

ソコンにロギングすることが可能になっている。

5-3 イオナイザユニット

 製品へのパーティクル付着の原因の一つが静電気

による帯電である。空気中のパーティクルが静電気を

帯びている場合、クーロン力で製品に付着し、エアブ

ローだけでは除塵することができず製品不良に至る。

特にプラスチックやガラスレンズを使う光学部品では、

パーティクル付着による製品品質や歩留まりの低下が、

深刻な問題である。

 従来は、エアクリーンユニットの下で除電のために

イオナイザを使う場合は、高価なバータイプイオナイ

ザを設置していたが、エアクリーンユニットからのダウ

ンフローを遮るため、設置場所の検討や取り付けが非

常に面倒であった。

 新開発のイオナイザユニットは、業界初の四角い開

口構造で、前述のエアクリーンユニットにダイレクトに

取り付けが可能で、エアクリーンユニットからのダウン

フローを遮ることなく、層流エアを乱さない。また、電

源の配線もエアクリーンユニットからワンタッチで供

給できる。もちろん、メンテナンスのための自己診断

機能も搭載され、放電針の清掃や交換のためのお知ら

せ機能が充実している。 

 

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株式会社

 以上が、難しい知識や面倒な測定が不要で、「手軽

に、いつもクリーン環境」を、さまざまなアプリケーショ

ンで実現するために、製造現場から生まれたオムロン

のクリーン機器である。

6. クリーン化への投資と効果  今回紹介したクリーン機器は、オムロンのセンサ工

場である綾部工場でのアプリケーションから生まれた

商品であり、現在、綾部工場では、エアパーティクルセ

ンサや静電気センサによる、製造環境の見える化に取

り組んでいる。

 綾部工場では、透過形レーザ計測センサの受光素子

へのパーティクル付着の対策として、クリーン機器を

導入し、試作段階で、検出特性の不良を10倍以上改

善できた実績もあるが、通常、製造環境のクリーン化

対策は、不具合の原因が明確になっていない場合が多

く、投資に対する効果が見え難い。製造現場で作業を

する全員が意識をして、改善活動を続けないとならな

い課題である。そのための見える化=常時監視は最初

の取り組みとして重要であり、そのために役立つ商品

をオムロンでは、今後も開発していく。

7. 最後に  今後、ますます製品の軽薄短小化・高機能化・高精細

化が進み、製造環境の変化が製品そのものの品質に

与える影響が大きくなってくる。加えて、携帯電話や自

動車に代表されるように、パーティクル等の付着によ

る製品の外観不良(美観品質)への対策要求も高く、

クリーン機器の市場は、ますます拡大し、より手軽に、

いつも一定のクリーン環境を実現するための商品が

求められると、予測する。

クリーンセンシング システム 形ZNシリーズ

資料請求番号 49A-07