大学入試改革等と国際バカロレアについて2...

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教育再生実行会議第十二回会議資料 2013 9 18 大竹委員提出資料 大学入試改革等と国際バカロレアについて アフラック創業者・最高顧問 (国際バカロレア日本アドバイザリー委員会委員) 大竹 美喜 教育再生実行会議第3次提言においては、「国は、国際バカロレア認定校について、一部日本語に よるディプロマプログラムの開発・導入を進め、大幅な増加(16 校→200 校)を図る」 としたとこ ろです。国際バカロレア(IB)は、グローバル化に対応した教育環境を作りだし、グローバル化 に対応できる人材を育成する上で非常に優れたプログラムと考えます。 今年度からは、文部科学省と国際バカロレア機構の協力の下、高校レベルに相当するIBのディ プロマ・プログラム(DP)の一部科目を日本語で実施可能とする「日本語DP」 ※※ の開発が始ま り、今後、IBの国内普及に弾みがつくことが期待されます。最近、我が国でも、IBに対する注 目が、少しずつ高まってきているように感じますが、現状では、まだまだIBが十分理解されてい るとは言えず、普及も遅れています。 以下、我が国においてIBを導入する意義について指摘するとともに、その普及に向けて取り組 むべき課題について、特に大学入試における対応を中心に提言します。 ※平成 25 年 9 月 2 日現在、日本における IB ディプロマプログラム(DP)の認定校は、18 校(うち、学 校教育法第1条に規定されている学校は 5 校であり、それ以外は、いわゆるインターナショナルスクール 等)。なお、全世界のDP認定校は、2,453校。 ※※ DPの授業等は、現在は原則として英語で行われているが、その一部科目を日本語で実施可能とする プログラム。 1.国際バカロレアについて IBは、国際バカロレア機構が提供するする国際的な教育プログラムであり、全人教育を通して、 主体性を持ちバランス感覚に優れた、国際社会に貢献できる若者の育成を目的としています。この ため、IBのプログラムは、自国の文化を深く理解することにも焦点が置かれており、その上で世 界の文化や多様性を認識し、国際理解を深めるものとなっています。 プログラムは、生徒の年齢に応じて、3~12 歳を対象としたプライマリー・イヤーズ・プログラム (PYP)、11~16 歳を対象としたミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)、16~19歳を対象とし たディプロマ・プログラム(DP)の3段階からなり、世界各地で履修できる大学進学用の国際統 一カリキュラムの作成や、大学進学のルートを確保するためのIB資格の授与等を行っています。 このうち、DPでは、2年間のカリキュラムを履修し、学習成果等に関する学内評価と、世界共 通の最終試験の成績を加味して、所定の基準を満たした合格者に対しIB資格 が授与されます。I B資格は、国際的に通用する大学入学資格として認められており、それを取得した生徒が大学レベ ルの学習に対応できるだけの実力を備えていることの証明となっています。現在、世界の約 2,000 の大学において、入学審査等に広く活用されています。 ※IB資格は、2 年間のカリキュラムを履修し、最終試験において 45 点満点中 24 点以上のスコアを取得し 1

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教育再生実行会議第十二回会議資料 2013 年 9 月 18 日

大竹委員提出資料

大学入試改革等と国際バカロレアについて

アフラック創業者・最高顧問

(国際バカロレア日本アドバイザリー委員会委員)

大竹 美喜

教育再生実行会議第3次提言においては、「国は、国際バカロレア認定校について、一部日本語に

よるディプロマプログラムの開発・導入を進め、大幅な増加(16 校→200 校)を図る」※としたとこ

ろです。国際バカロレア(IB)は、グローバル化に対応した教育環境を作りだし、グローバル化

に対応できる人材を育成する上で非常に優れたプログラムと考えます。

今年度からは、文部科学省と国際バカロレア機構の協力の下、高校レベルに相当するIBのディ

プロマ・プログラム(DP)の一部科目を日本語で実施可能とする「日本語DP」※※の開発が始ま

り、今後、IBの国内普及に弾みがつくことが期待されます。最近、我が国でも、IBに対する注

目が、少しずつ高まってきているように感じますが、現状では、まだまだIBが十分理解されてい

るとは言えず、普及も遅れています。

以下、我が国においてIBを導入する意義について指摘するとともに、その普及に向けて取り組

むべき課題について、特に大学入試における対応を中心に提言します。

※平成 25 年 9 月 2 日現在、日本における IB ディプロマプログラム(DP)の認定校は、18 校(うち、学

校教育法第1条に規定されている学校は 5 校であり、それ以外は、いわゆるインターナショナルスクール

等)。なお、全世界のDP認定校は、2,453 校。

※※ DPの授業等は、現在は原則として英語で行われているが、その一部科目を日本語で実施可能とする

プログラム。

1.国際バカロレアについて

IBは、国際バカロレア機構が提供するする国際的な教育プログラムであり、全人教育を通して、

主体性を持ちバランス感覚に優れた、国際社会に貢献できる若者の育成を目的としています。この

ため、IBのプログラムは、自国の文化を深く理解することにも焦点が置かれており、その上で世

界の文化や多様性を認識し、国際理解を深めるものとなっています。

プログラムは、生徒の年齢に応じて、3~12 歳を対象としたプライマリー・イヤーズ・プログラム

(PYP)、11~16 歳を対象としたミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)、16~19 歳を対象とし

たディプロマ・プログラム(DP)の3段階からなり、世界各地で履修できる大学進学用の国際統

一カリキュラムの作成や、大学進学のルートを確保するためのIB資格の授与等を行っています。

このうち、DPでは、2年間のカリキュラムを履修し、学習成果等に関する学内評価と、世界共

通の最終試験の成績を加味して、所定の基準を満たした合格者に対しIB資格※が授与されます。I

B資格は、国際的に通用する大学入学資格として認められており、それを取得した生徒が大学レベ

ルの学習に対応できるだけの実力を備えていることの証明となっています。現在、世界の約 2,000

の大学において、入学審査等に広く活用されています。

※IB資格は、2 年間のカリキュラムを履修し、最終試験において 45 点満点中 24 点以上のスコアを取得し

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た者に授与される。また、IBのスコアは、世界の大学入試において広く活用されているほか(例:オッ

クスフォード大学は、入学オファーの対象となり得るスコアの目安を 38~40 点以上と設定)、高得点者に

対する入学後の一部履修科目の免除等にも活用されている(例:UCLA では、IB の上級レベル科目のスコ

アが 5点以上(7点満点)の場合、大学の相当する科目の単位が与えられる(専攻分野等により異なる))。

2.我が国の学校への国際バカロレア導入の意義

IBを我が国の学校に導入する意義としては、大きく以下のとおりです。

一つ目は、世界で活躍するグローバル人材育成の観点です。

グローバル化に対応できる人材が各界から求められているにもかかわらず、我が国ではこうした

人材の育成が十分なされておらず、今や日本企業は、即戦力として日本で学んでいる留学生を積極

的に採用するようになっています。日本の若者の内向き志向は憂慮すべき状況であり、各国におけ

る海外への留学生数では、中国やインド、韓国の増加傾向に対し、我が国は漸減傾向にあります。

高校生の海外留学への意向についても、アメリカ、中国、韓国などと比べ、「留学したいとは思わな

い」との回答が4カ国中最高との結果でした。日々、刻々と変化を遂げる世界、答えのない時代に

おいては、今までにも増して課題発見・解決能力、コミュニケーション能力が求められています。

グローバルな潮流に合ったマインドセットに切り替え、時代を先取りして変化を待ち受け、直ちに

即応できる人材です。IBの学習者像には、“挑戦する人”(Risk-taker),“コミュニケーションが

できる人”(Communicator),“心を開く人”(Open-minded)などが定められていますが、IBにより

育まれる能力は、正にグローバル化の時代に求められる基礎的な素養そのものであり、更には現在

の学習指導要領が目指す「生きる力」の考え方とも多くの点で合致していると言えます。

また、今まで、日本の高校生にとって、日本の大学に入学してから海外留学するのが普通でした

が、IBを取得することで、高校卒業から海外の大学に直接進学するという選択肢もより現実的な

ものとなり、若者の進路の拡大にもつながります。

二つ目は、我が国の教育界、特に大学の国際化の促進です。IBという国際的に高く評価されて

いるプログラムを通じて、単に国内学生の海外留学促進といった側面のみならず、国内外のIB校

を卒業した優秀な学生を獲得することにより、彼らが日本の大学内に与える様々な「化学反応」が

期待できます。一方で、日本の大学は、IBの学びを経た優秀な学生から、その教育・研究水準に

ついて、世界の大学と厳しく比較・選別されることも覚悟する必要があります。IBの普及は、日

本の大学に対し、学生の能力を更に引き出すような国際標準の教育を強く促していくことになると

思います。

三つ目は、地域社会の活性化等にも資することです。人づくりこそ国づくりであり、IBにより

育まれる素養・能力を有し、グローバルな視点を持って地域社会の活性化を担うことのできる人材

の育成は、当該地域はもとより、日本全体の底上げにつながると確信しています。

四つ目は、我が国の初等中等教育、特に高校教育の改革に資することです。IBの学びが、一部

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とはいえ我が国の学校で実践されることは、日本の初等中等教育のカリキュラム改革にもインパク

トを与えることになります。IBの教育の特色である、協働型のインタラクティブな授業が、我が

国の学校現場に広がることが期待されます。

3.グローバル化に対応した大学入試改革へ ~国内大学入試におけるIB資格の活用~

IBの日本の教育現場への導入促進には、まだまだ課題も少なくありません。国内でのIBの認

知度向上のほか、IBを指導できる教員確保・養成、学習指導要領と IB カリキュラム整合性の確保、

国内大学入試でのIB資格の活用などです。ここでは、特に、国内大学入試でのIB資格の活用の

重要性について指摘します。

※本年 7 月 31 日、国際バカロレア機構により、文部科学省の協力の下、高校・大学・経済界等の有識者等

から構成される「国際バカロレア日本アドバイザリー委員会」(委員長:藤崎一郎上智大学特別招聘教授・

前駐米大使)が発足。同委員会においては、今後、日本におけるIBの普及拡大に向けた課題について幅

広い角度から検討を行う予定。

現在、国内大学入試においては、IB資格やそのスコアは殆ど活用されていないのが実態です。

日本の高校に在籍している者を対象とした大学入試で、IBのスコアを活用しているものは、ごく

一部の限られた大学で実施されているにすぎません。

※IBに特化した入試を実施している大学は、岡山大学、玉川大学、横浜市立大学など。

現在の知識偏重の大学入試は、グローバル化に対応した素養、能力を評価する内容にはほど遠い

内容となっています。過去に学んだ知識は、いずれ陳腐化しますが、重要なことは、生涯学び続け、

常に新たな発想に挑戦することだと思います。我が国の大学入試においても、IBの教育を通じて

育まれる、課題発見・解決能力、コミュニケーション能力等を正当に評価していくことが重要です。

国際的に通用する大学入学資格というIBの特長を生かし、「IBを履修すれば世界の大学にも日

本の大学にも進学できる」といった進路の多様性を確保していくことは、今後増加が見込まれる国

内のIB履修者の幅広い進学先確保の観点のみならず、国内外の優秀な人材獲得の観点からも重要

です。優秀なIBスコアを獲得した生徒が、自らの意思で海外進学することは、もちろん大いに歓

迎すべきことです。しかしその一方で、日本の大学が、今後入試を通じてこうした生徒を積極的に

獲得するという意思を明確に示さない限り、これらの生徒が海外に流出する状況は続き、それは日

本の大学にとって大きな損失ではないでしょうか。

各国の大学が、世界中から優秀な学生の獲得に努める中、現在の日本の大学入試は、残念ながら、

グローバル化の波に乗り遅れたものになっていると言わざるを得ません。我が国の大学においても、

大学入試における多様な観点からの評価や多様な人材の確保を念頭に、例えば国際バカロレア入試

枠の設定など、IBに焦点を当てた入試の実施について積極的に検討すべきと考えます。

大学改革を進める中で、こうしたグローバル人材育成に向けた大学入試改革にも併せて取り組む

ことで、我が国の大学の魅力が向上し、国際競争において有利な位置を占めるようになることを強

く期待しております。

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(参考)

国際バカロレアについて

1.国際バカロレア(IB)について

国際バカロレア(IB: International Baccalaureate)は、非営利教育財団・国際バ

カロレア機構が実施する国際的な教育プログラム。

同機構は、第2次世界大戦の反省から世界の平和に寄与する人材育成の教育を行うと

ともに、各国ごとに異なる大学入学資格や成績証明書を世界共通に統一したものにする

ため、1968年にスイスで設立。認定校に対する共通カリキュラムの作成や、世界統一の

国際バカロレア試験の実施、国際バカロレア資格の授与等を行っている。

2.IBのディプロマ・プログラムについて

IBでは、グローバル化に対応できるスキルを身に付けた人材を育成するため、生徒

の年齢に応じた教育プログラムを提供。

※IBの目指す人間像(別紙1)

このうち、16歳~19歳を対象としたディプロマ・プログラム(DP)※は、所定のカ

リキュラムを2年間履修し、世界統一の最終試験において45点満点中24点以上のスコア

を取得すれば、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)が得られるプロ

グラムであり、その資格及びスコアは、世界共通の成績証明書として、世界の約2,000

の大学において入学選考等に広く活用されている※※。

※このほか、3~12歳を対象としたプライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)と、11~16歳を対

象としたミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)がある。

※※例えば、オックスフォード大学の入学選考では、入学オファーの対象となり得るスコアの目安を

38~40点以上と設定している。また、高得点者に対する入学後の一部履修科目の免除にも活用されて

おり、例えばUCLAでは、IBの上級レベル科目のスコアが5点以上(7点満点)の場合、大学の相当す

る科目の単位が与えられる(専攻分野等により異なる)。

3.IBの普及等に向けた取組

(1)我が国では昭和54年より、大学入学資格に関し、学校教育法に基づき、国際バカ

ロレア資格を有する者で18歳に達した者を、高等学校を卒業した者と同等以上の学力

があると認められる者として指定。

(2)現在、DPの授業等は原則として英語で行われているが、平成25年度から、文部

科学省及び国際バカロレア機構の協力により、DPの科目の一部を日本語で実施可能

とする「日本語DP」※の開発・導入に着手。

※日本語で実施可能となる科目は、当面以下の通り。

経済、歴史、生物、化学、Theory of Knowledge、Extended Essay、Creativity/Action/Service

(3)平成25年5月、東京学芸大学を中心に、関心を有する高等学校等により、国際バ

カロレア、特に日本語DPの導入等に向けた情報共有等のための「国際バカロレア・

(参考)日本語DPによるIB校の認定等に関するスケジュール(最短のケース)

・平成25年10月 IBに対し、最初の日本語DPによる候補校申請

・平成27年 2月頃 IBから、最初の日本語DPによるIB校認定(同年4月に1年生入学)

・平成28年 4月 最初の認定校で、2年生より日本語DP課程開始

・平成29年11月 同校で、3年生が国際バカロレア試験を受験(平成30年3月卒業)

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デュアルランゲージ・ディプロマ連絡協議会」が設立。

(4)平成25年7月、国際バカロレア機構により、文部科学省の協力の下、日本におけ

るIBの普及拡大に向けた課題について幅広い角度から検討を行うため、高校・大

学・経済界等の有識者等から構成される「国際バカロレア日本アドバイザリー委員会」

が発足(別紙2参照)。

4.国際バカロレアの推進に関する最近の提言等(抜粋)

○「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」 (平成25年6月14日 閣議決定)

「一部日本語による国際バカロレアの教育プログラムの開発・導入等を通じ、国

際バカロレア認定校等の大幅な増加を目指す(2018年までに200校)。」

○教育再生実行会議第三次提言 「これからの大学教育等の在り方について」

(平成25年5月28日)

「国は、国際バカロレア認定校について、一部日本語によるディプロマ・プログ

ラムの開発・導入を進め、大幅な増加(16校→200校)を図る。」

○日本経済団体連合会 「世界を舞台に活躍できる人づくりのために」

―グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言― (平成25年6月13日)

「語学力のみでなく、コミュニケーション能力や異文化を受容する力、論理的思

考力、課題発見力などが身に着くIBディプロマ課程(16歳~19歳対象)は、グロー

バル人材を育成する上で有効な手段の一つである。」

「ディプロマ取得者に対する社会における適切な評価も重要であり、大学入試に

おける活用や、企業も採用時や人材活用において適切に評価することなどが重要で

ある。」

「我が国においても、入試の際、TOEFLやTOEICなどの英語能力の4技

能を測定できる外部試験を活用することや、入試においてIB資格を活用する大学

を拡大することなども検討すべきである。」

○日米文化教育交流会議(カルコン)教育タスクフォース報告書

(平成25年6月13日)

「国際バカロレア資格を取得可能なプログラムを拡充する。」

【参考】世界における国際バカロレア認定校数(平成25年9月2日現在)

146か国 3,664校 (26校)

うち PYP実施校 1,088校(14校)

MYP実施校 1,026校 (7校)

DP実施校 2,453校(18校)

※( )内は、日本国内の認定校数。

※1校で複数のプログラムを実施している学校があるため、プログラムごとの学校数の合計は

全体の学校数と一致しない。

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IBを学ぶ人間像

Com

mun

icat

ors

(コミュニケーションできる人)

様々な言語やコミュニケー

ションの手段を使って、考え

や情報を理解し、自信を持っ

て創造的に表現できる。まわ

りの人たちと進んで協力し合

い、効果的にものごとに取り

組むことができる。

Car

ing(思いやりのある人)

ほかの人の気持ちや必要としてい

ることに共感し、尊重し、慈愛を示

すことができる。まわりの人々の生

活や環境をよくするために、個人的

に関わり、積極的に行動し奉仕し

続ける。

Inqu

irers(探究する人)

好奇心あふれ、探究と調査のた

めのスキルを身につけている。自

主的に学ぶことができる。生涯に

わたって学ぶことを積極的に楽し

むことができる。

Prin

cipl

ed(正義感のある人)

誠実かつ正直で、公平な考えと

道義感を持ち、まわりの人々や

地域社会を尊重して行動するこ

とができる。自分の行動とその結

果に責任を持つことができる。

Ope

n-m

inde

d(心をひらく人)

自分の歴史や文化を理解し、尊重し、他

の人々や地域社会の持つ伝統、価値観、

視点に心をひらくことができる。常に色々

な人の意見に耳をかたむけ、検討し、そ

れらの経験から成長しようとしている。

Bal

ance

d(バランスのとれた人)

自分とまわりの人々が幸せな生活を

おくるためには、知・情・体がいずれも大

切であることを理解している。

Ris

k-ta

kers

できる。

Ris

k-ta

kers(挑戦する人)

不慣れな状況や不確実性に、勇気と

気構えを持って臨むことができる。今

までにない、方策、考え、役割を試そ

うとする自立的な精神を持っている。

恐れず自分の信念を明言することが

できる。

Kno

wle

dgea

ble(知識のある人)

地域や地球規模の重大な問題や事

柄について、常に考えている。広くバ

ランスのとれた学問領域について理

解と知識を深めている。

Ref

lect

ive(振り返ることができる人)

思慮深く自分自身の学習や経験を見つめ直すこ

とができる。自分の学びや成長を支えるために長

所と限界を理解し、評価することができる。

Thin

kers(考える人)

複雑な問題を認識し立ち向かうために、

批判的かつ創造的に思考し、理性的

で倫理的な決断を導き出せる。

(別紙1)

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(別紙2) 国際バカロレア・日本アドバイザリー委員会委員

(委員長)

藤崎一郎 上智大学 特別招聘教授

(委員)

内田勝一 早稲田大学副総長

大迫弘和 広島女学院大学客員教授(IB 調査研究室長)

大竹美喜 教育再生実行会議 委員/Aflac 創業者・最高顧問

木村孟 文部科学省顧問、東京都教育委員会委員長

國領二郎 慶應義塾大学 常任理事

クレイグ クーツ IB 認定校 代表

高橋貞雄 玉川学園 理事

田中恵次 住友商事株式会社 理事

田宮直彦 経団連/日立製作所 人財統括本部人事教育部長

出口利定 東京学芸大学 附属国際中等教育学校校長

出張吉訓 東京都教育庁教育改革推進担当部長

天外伺朗 元ソニー上席常務、工学博士

中田大成 海城中学校・高等学校 教頭

永田恭介 筑波大学長

永山賀久 文部科学省 大臣官房 国際課長

長谷川壽一 東京大学理事・副学長

藤井健志 東京学芸大学理事・副学長

三田村彰 福井県教育庁高校教育課 企画幹

山本ベバリーアン 大阪大学 人間科学部 教授

和田道雄 立教女学院中学校・高等学校 校長

(顧問)

松本 紘 京都大学総長

(事務局)

イアン チャンバース IB アジア太平洋地区(IBAP) 代表

坪谷ニュウェル郁子 IBAP 理事

ステファニー レオン IBAP 日本担当

(代行:星野あゆみ IBAP 地域開発マネージャー(日本担当))

(五十音順、敬称略) 7

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教育再生実行会議第十二回目会議資料 2013 年 9 月 18 日

“実力を養え”

アフラック創業者・最高顧問 大竹 美喜

シカゴ大学で働いていたベンジャミン・ブルーム教授は 1950 年代すでに教育

の現場で領域を認知的領域、情意的領域、心理学的運動領域と定め、それが全

人的な能力を開発する手段であり、過程であると仰っております。 ・ 認知的領域(一般知能・適性・創意力など基本的能力と才能) ・ 情意的領域(感性と意志を含んだもの) ・ 心理学的運動領域(身体の発達と健康を含んだもの。それゆえ全人教育は知

力(mind)心力(heart)体力(body)を平均的に育てること。) ・ 1980 年 レーガン大統領の教育改革でベネット教育部長官が3つの C の価

値教育改革を実行しました。 ① Character(人格) ② Content (内容) ③ Choice (選択)

この内容は安倍内閣総理大臣が強調されている多様性を重んじる教育改革

に完全に一致していると思います。

高貴な価値である確信、希望と夢、持久力、苦難に対する忍耐力なども価

値教育の内容に含まれていました。 将来有望と見られ、学力・適性ともに内申成績が高く、名門高校や名門大

学に入ったとしても集中力と時間管理能力が不足していれば失敗せざるを得

なくなります。失敗すれば自身を失い落伍者となり、途中で諦めてしまう場

合が多いのです。 認知的領域では、多くの基本能力を先天的に持って生まれた人々が人生の

落伍者、または敗北者になる場合も時に目にすることがあります。

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教育再生実行会議第十二回目会議資料 2013 年 9 月 18 日

その一方で先天的な能力も不足し環境もさほど良くないのに人生の勝利者

となる人々もおります。 アメリカ教育部の統計によれば英才学生の半分以上が未成就として人生を

生きている。その理由は情意的領域と心理学的運動領域という観点から説明

することができるでしょう。 エジソンは小学校を3ヶ月で中退した結果、教育が不可能な愚か者という

烙印を押されました。しかし、偏見を克服する心力を持ち合わせていなかっ

たならば、また、度重なる失敗にもかかわらず何万回以上の実験を行うこと

のできる体力がなかったならば、特許 1093 個を取得する発明は言うまでもな

く不可能であったことでしょう。 アインシュタインの場合も同様で、ナチスドイツ政権下におけるユダヤ人

に対する迫害と本人の幼少時の学習障害による社会の偏見と嘲りや差別を克

服できたのは、知力よりも心力に負うところがさらに大きかったのです。 アインシュタイン自らが心力を強化し、社会の偏見と差別を克服し、あら

ゆることが奇跡であるという新しい視点で人生や世の中を、そして未来を見

ることができたために天才科学者になったと思います。 才能と能力を最大限に開発できるようにするためには、何よりも教育を変

えなければなりません。 無分別な教育に熱を置いた注入的知識中心教育をやめて、知力、心力、体

力をバランスよく発達させる全人教育へと改革しなければなりません。 今まで疎かにされていた情意的領域の教育を強調し、決して諦めない強い

心力を持ったアインシュタインやエジソンのような人物を輩出できるように

すべきです。 ノーベル賞王国と呼ばれているシカゴ大学ではノーベル賞受賞者が87名に

のぼっております。 最も優秀な学生は東部の名門大学に行きますので、知力はワンランク下の

学生が入学していましたが、シカゴ大学では古典を通した教養教育もしっか

りと行い、そのことがノーベル賞学者を多数輩出した理由の一つであると思

います。 アメリカのことばかり述べましたが、1312 年の歴史(701 年の大宝律令に

おいて「日本」という国号が定められたとすると)を有する日本には偉人と

呼ばれる人々は数え切れないほど存在し、記録は図書館等に眠っております。

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教育再生実行会議第十二回目会議資料 2013 年 9 月 18 日

これが知の宝庫なのです。 日本全体、県単位、市町村単位で登場させそこから深い学びへとつなげる

ことを提案したいと思います。 そうすれば日本は甦ると確信いたします。

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