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資源開発環境調査 タイ王国 Prathet Thai (Kingdom of Thailand)

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資源開発環境調査

タイ王国

Prathet Thai

(Kingdom of Thailand)

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目 次

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2. 政治・経済概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

3. 鉱業概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

4. 鉱業行政 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

5. 鉱業関係機関 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

6. 投資環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

7. 地質・鉱床概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

8. 鉱山概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

9. 新規鉱山開発状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

10. 探査状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

11. 製錬所概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

第 2 部 地質解析

1. 地質・地質構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

2. 鉱床 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

2-1. 鉱床生成区 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

2-2. タイプ別・時代別分布の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

3. 鉱床胚胎有望地域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

資料(統計、法律、文献名、URLなど) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

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- 1 - タイ

Bangkok

9696

101

101

106

106

107

107

5

10 10

15 15

20 20

22 22

Cambodia

Laos

Myanmar

Vietnum

Malaysia

GULF OF THAILAND

AN

DA

MAN

SEA

第1部 資源開発環境調査

1. 一般事情

1-1. 面積 51 万 4,000 ㎢

1-2. 人口 6,346 万人(2002 年)

1-3. 首都 バンコク

1-4. 人種 ほぼタイ族。その他、華僑、マレー族、山岳少数民族等。

1-5. 公用語 タイ語

1-6. 宗教 仏教 95%、イスラム教 4%

1-7. 地勢等

タイ王国は、インドシナ半島のほぼ中央に位置する。マレーシア、カンボジア、ラオス、

ミャンマーの 4 ヵ国と隣接し、タイランド湾とアンダマン海に接している。タイには大き

な 2 つの山脈が走っており、1 つは北部から中央部、東北部へと続き、もう 1 つはミャン

マー国境に沿ってマレー半島に連なっている。河川はラオスとの国境からカンボジアへ流

れているメコン川と、中央部

を流れているメナム川の 2 大河

がある。タイには現在 76 の県

があり、盆地が点在している

北部タイ、海抜 100~300 メー

トル程度の高台が広がっている

東北タイ、チャオプラヤ川両岸

に広がる平野を中心とした中部

タイ、マレー半島部や小島の多

い南部タイの 4 つの大きな地

域に区分される。気候は北半球

の熱帯に位置し、季節はモンス

ーン(季節風)に左右され、1 年は

雨季と乾季に分けられる。11 月

から翌年 2 月にかけてがベスト

シーズンで、朝夕は初秋を思

わせるような日が多くて快適で

ある。3月から5月にかけては、

1 年中で も暑い時期で、6 月

からは本格的な雨季に入る。

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- 2 - タイ

2. 政治・経済概要

2-1. 政体 立憲君主制

2-2. 元首 プーミポン・アドゥンヤデート国王(ラーマ9世王)

(1946 年 6 月 即位 在位 58 年)

2-3. 議会 二院制 上院 200 名・下院 500 名(両院とも民選)

2-4. 政治概況

タイでは 1932 年立憲革命以降、軍部主導の政治が続いていたが、92 年の軍と民主化勢

力の衝突(5 月事件)以降軍部は政治関与を控え、民主的な政権交代手続きが定着してい

る。97 年に成立した新憲法に従って、年 1 月に下院選挙が行われ、タイ愛国党の圧勝によ

りタクシン政権が成立した。 タクシン政権は、首相の強力なリーダーシップと下院における連立与党(タイ愛国党、

タイ国民党、国家発展党)の安定多数(364/500 議席)を背景に、数々の経済改革政策

を推進している。

2-5. 主要産業 2003年のGNPにおいて非農業部門の割合は約9割。うち工業部門は35%を占める。GNP に占める農業の地位は低下しているが就業人口の約 4 割

を占める重要産業である。

2-6. GDP 1,431 億円 一人当たり 2,236 ドル

2-7. 通貨 バーツ

2-8. 為替レート 1US$=約 38 バーツ(2005 年 2 月現在)

年末 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

1US$= 37.814 40.112 44.432 42.960 41.485

(International Financial Statistics 2004) 2-9. 貿易

第 2-1 表 タイ王国の貿易(2003 年)

億 $ 品 目

輸 出 804 億$ コンピューター、集積回路、自動車・部品、天然ゴム

輸 入 756 億$ 電気機械・部品、産業用機械、原油、化学製品、集積回路

第 2-2 表 タイ王国の対日貿易(単位:百万ドル)

2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

輸 出 10,180 9,959 9,940 11,417貿易品 魚介類、事務用機器、音響映像機器、肉類、半導体等電子部品

輸 入 15,349 13,809 14,877 18,221

貿易品 半導体等電子部品、鉄鋼、自動車部品、プラスチック、原動機 (Bank of Thailand, Ministry of Commerce 単位:百万ドル)

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2-10. 経済概況

タイは、80 年代後半から日本を始め外国投資を梃子に急速な経済発展を遂げたが、その

一方で経常収支赤字が膨張し、不動産セクターを中心にバブル経済が現出した。その後、

バブル破壊に伴い不良債権が増大し、経済の悪化を背景にバーツ切り下げの圧力が高まり、

97 年 7 月、為替を変動相場制に移行するとバーツが大幅に下落し、経済危機が発生した。 タイ政府は、IMF 及び我が国を始めとする国際社会の支援を受け、不良債権処理など構

造改革を含む経済再建に努力した。タイ政府の財政政策を含む景気対策、好調な輸出など

により低迷を続けていた経済は回復基調に転じた。 2001 年 2 月に発足したタクシン政権は、従来の輸出主導に加えて国内需要も経済の牽

引力とすることを訴え、農村や中小企業の振興策を打ち出している。タクシン政権の内需

拡大政策の奏功と見られる個人消費の活性化等により、 近は経済の回復傾向が見られ、

2003 年の経済成長率は、6.7%と経済危機後 も高い数字を記録した。

3. 鉱業概要

鉱物生産では、かつては世界 1・2 を争う主要供給国とされていた錫鉱石(世界第 11 位)

の生産量が減少しており、輸入鉱石による錫地金生産(世界第 5 位)を行っている。その

他、鉛・亜鉛、工業鉱物の生産があるが、多くの非鉄金属鉱石の生産量は直近 10 年間で

は、漸減傾向にあり、90 年の約 1/2~1/8 の範囲となっている。 GDP に占める鉱業部門の割合も近年低下傾向にあり、1%未満(天然ガスを除く)であ

る。宝石・貴石類を除くと輸出額全体に占める鉱物資源の割合も低い。 3-1 鉱物資源埋蔵量

タイ王国の鉱物資源の埋蔵量は、錫、イットリウムが第 9 位で、タングステンの埋蔵量

も多い。 第 3-1 表 タイ王国の鉱物資源埋蔵量

鉱 種 タイ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

錫(t) 200,000 11,000,000 1.8 9

イットリウム(t) 600 610,000 0.1 9 出典:Mineral Commodity Summaries 2004

3-2 非鉄金属の生産量

現在タイで生産される鉱物は金属鉱物、非金属鉱物(エネルギー鉱物の褐炭を含む)はあ

わせて 40 鉱種を超え、2003 年の総生産額は 295 億 8,800 万バーツに達している。その多

くは国内消費に回り、輸出額は 27 鉱種、110 億 4,754 万バーツであった。2002 年と比べ

て、総生産額はほぼ同額、輸出額では 17%の減額であった。 生産額の上位は、褐炭、石灰岩、石膏といった非金属鉱物(工業用鉱物)であり、この 3

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鉱種で生産額の 72%を占めている。金属鉱物では、金、亜鉛、錫等が生産額の 11%を占め

ている。 これは、鉱量の枯渇や亜鉛等の価格低迷によって金属鉱物の生産が減少したことと、他

方、1980 年代後半からの経済成長にともなって非金属鉱物(工業用鉱物)の需要が増大し、

非金属鉱山の増産・開発が進展した結果によるものである。 1980 年代後半以降からの非金属鉱物の生産額の増加は著しく、金属鉱物の生産額が減少

しつつも、全体としては全鉱物生産額は増加してきている。

第 3-2 表 タイ王国の主要非鉄金属の生産量

年 1999 2000 2001 2002 2003 亜鉛鉱石(t) 185,702 159,093 88,664 151,876 148,297 金 (kg) 0 0 0 4,949 4,269 錫鉱石(t) 3,400 2,363 2,383 1,384 980 鉛鉱石(t) 23,833 24,760 800 6,500 0 石膏(千 t) 5,005 5,830 6,190 6,325 7,291 石炭(千 t) 18,266 1,205 1,353 1,230 18,843

(出典:Department of Mineral Resources) 3-3 タイ王国からの輸入鉱石等

錫地金が主要なものとなっており、その他については数量は僅かである。

第 3-3 表 日本のタイ王国からの主要非鉄金属輸入実績(2003 年)

鉱 種 タイ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

亜鉛地金(t) 61 41,148 0.1 8

アルミニウム地金(千 t) 0 2,042 0.0 18

錫地金(t) 3,538 29,136 12.1 3

金地金(kg) 8 49,405 0.0 21

銀地金(t) 1 1,303 0.1 12 出典:日本貿易月表 2003.12

4. 鉱業行政

4-1. 法律

1901 年に 初の Mining Law が制定された。その後 1918 年に改正。これらは錫鉱業に

関する規定を主としている。1931 年に 初の Tin Control Act が制定されている。

The Minerals Act 1967 年(改正 1973 年,1979 年,1991 年) The Mineral Royalty Act 1966 年(改正 1977 年,1979 年) The Tin Control Act 1971 年

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The Improvement and Conservation of National Environmental Quality Act 1975 年

(改正 1978 年) The Petroleum Act 1971 年(改正 1973 年,1979 年,1990 年)

4-2. 政策

タイの鉱物法による鉱物の定義は、次のように与えられている。 『鉱物は、無機質の鉱物資源で恒久的な化学成分と物理的な性状を有するか、僅かに化

学成分と物理性状が変動し、利用に際して事前に熔錬あるいは精錬の必要の有無に関わり

ないものである。石炭、油頁岩、大理石、金属および製錬過程で生じるスラグも含み、装

飾用あるいは工業用岩石として政府の規定により定められた岩石、政府の規定により工業

用粘土あるいは工業用砂として定められた粘土または砂を含む。しかし、水、吹きだした

塩の凝華、ラテライト質土壌、岩石、粘土あるいは砂は鉱物に含めない。』とされ、法律は、

この定義により「鉱物」の探鉱・採掘・選鉱・販売・購入・製錬について適用されている。

地下水の調査・試錐・規制を所管する部局が DMR に設置されている。 無主の鉱物は国家に帰属し、何入も国家の許可無しに鉱物の探鉱・採掘等の行為を行う

事が出来ない。しかし、鉱物法を主管する DMR(工業省鉱物資源局)が、自らの業務の中で

鉱物に関する探鉱・テスト・研究または調査を目的とする場合には適用されない。 選鉱・販売等も許可が必要とされているが、鉱業権の主要な許可は探鉱と採掘とされて

いるので、鉱物法の用語の定義を以下に示す。 Prospecting:「探鉱」は、試錐やピット掘り、その他のいかなる方法、またはある地域

内に鉱物が存在するならば、その鉱物の量・額を評価・鑑定する手段を意味する。 Mining:「採掘」は、いかなる方法・手段によりある地域から陸上もしくは水域で鉱物

を獲得する操業を意味し、政府の規定に定められた鉱物の個入採掘あるいは個入のパンニ

ングを含まない。 Mining Area:「採掘地域」は、暫定採掘許可(Provisional Prathanabat [1icense])もし

くは採掘許可(Prathanabat)に明記された地域。 Provisional Prathanabat:Prathanabat を受領する前に特定区域内での採掘のために

発行された許可 Prathanabat:特定区域内での採掘のために発行された許可以上の他にも、各々の許可

による:選鉱地域、製錬地域、鉱物貯蔵場所(place)にっいても用語の定義がなされているの

が特徴である。 探鉱権に相当するのは、Prospecting Atchayabat [=1icense], Exclusive Prospecting

Atchayabat および Special Atchayabat で、3 種類の許可に区分にされている。何人も許

可を与えられた範囲外では「探鉱」することが出来ない。また、特別探鉱許可(Special A.)は、既に占有探鉱許可(Exclusive Prospecting A.)、特別探鉱許可、暫定採掘許可、採掘許

可の与えられている地域に重複して許可される事はない。 Minerals Act の下に、鉱山保安規則が制定されている。鉱業権を得ようとする者は、環

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境アセスメントを国家環境委員会に提出しなければならない。鉱業権の認可の審理は、鉱

物資源局、国家環境委員会および森林局の合議による。 4-3. 税制

3 年から 8 年、低開発の地域では免税終了後 5 年間は 50%減税(県により、また工業団

地に立地するかどうかにより差あり) 免税期間中の配当に対しても免税となる。 免税期間中に生じた欠損は免税期間終了後の 5 年間のどの年からの利益からでも控除可

能。 なお、法人所得税の免税は、ゾーンごとに与えられる免税期間にかかわらず、免税累積

額が、当初の投資額(土地代、運転資金、技術提携等による海外に支払う技術料を除く)

に達したとき、打ち切られる措置が、2001 年 12 月 1 日以降に認可を受けた事業から適用

されるようになった。 銅・鉛・亜鉛のロイヤルティ料率は 2.5%である。

5. 鉱業関係機関

5-1. 政府機関

工業省鉱物資源局:Department of Mineral Resources エネルギー資源については,国家エネルギー委員会が基幹政策を立案

5-2. 公営機関

公営企業として錫採掘を行う Off shore Mining Corporation: OMO があるが,業績不振

で民営化を検討中。 5-3. 民間会社

タイで活動中の主要な鉱業関係会社は以下の通りである。

Internal AuditorsBureaucratic Sysytem

Development Group

Legal Affairs GroupMonitoring and Evaluation Group

Director General

Deputy Director General Inspector General Deputy Director General

Bereau of Central Administration Bereau of Geological Survey Bureau of Minera Resources Geological Resources Conservation

Mineral Resources Analysis Environmental Geology Geotechnic Division Geological Resources

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第 5-1 表 タイで活動中の主な鉱業会社

Karnchanaburi Exploration & Mining Co Ltd

Padaeng Industry Co www.padaeng.co.th

Thai Copper Industries Co

Thailand Smelting & Refining Co Ltd www.thaisarco.com

Tongkah Harbour plc www.tongkahharbour.com

Aokam Tin Ltd

Asia Pacific Potash Corp www.crewgroup.com

Lampang Minerals & Metals Ltd

Metro Resources Ltd

New Siam Minerals Resources Co Ltd

Sintana Resources Co Ltd

Thai Antimony Enterprise Co Ltd

Thai Lead Metal Co Ltd

Tungkum Ltd

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6. 投資環境

6-1 投資法

1977 年 投資促進法(1992 年改訂) 政府によって推奨される業種に投資を行う内外

の投資家向けに税金面、非税金面での奨励措置を規定する。 1972 年 外国人事業規制法 外国人の事業活動を制限する業種を定める。 2000 年 外国人事業法 1992 年 工場法:工場内の安全、環境保護を定めている。

(1) 低投資額と認可原則

投資委員会の奨励を受ける場合、原則的に規定なし。ただし、奨励措置を受けるには、

土地と運転資金を除いて 低 100 万バーツの投資金額が必要。 投資額が 5 億バーツ未満(土地および運転資金を除く)のプロジェクトは、売上収入の

20%以上の付加価値が必要(ただし、エレクトロニクス、アグロインダストリー並びにタイ

経済に寄与するプロジェクトなどは除く)。 資本金及びその他の自己資本に対する借入債務の比率は 3 倍を上回らないこと(ただし、

拡張プロジェクトに関してはケースバイケースで認可される) 投資額が 5 億バーツ(土地と運転資金を除く)以上のプロジェクトはフィージビリティス

タディを提出する。 (2) 投資申請

管轄省庁は投資委員会(BOI: Board of Investment)である。BOI は、奨励対象業種の決

定、案件の審査、認可及び多くの奨励措置の提供を行う。BOI の投資サービスセンターは

投資家に適切な情報を提供し、また奨励措置を受けるために申請する企業をサポートする。

更に同センターは、ワークパミット、工場ライセンスなど許認可事項に関しても必要なサ

ポートを行う。 外国人事業規制法は、タイ国内で外国人の資本参加が制限される業種を明記している。

規制される業種は、外国人の営業を禁止する業種<リスト1>、国家安全保障に係わる、

または文化、伝統、地場工芸、天然資源・環境に影響を及ぼす業種<リスト 2>、タイ人

に外国人との競争準備がまだ整っていない事業<リスト3>3 種類のリストに分けられて

いる。さらに、規制業種以外の業種は 200 万バーツ、規制業種は 300 万バーツ(詳細は省

令で定められる)と 低資本金が定められているが、BOI から奨励措置を受ける際は、外

国人事業規制法の適用は受けない。 (3) 投資分野

投資委員会は奨励の対象となる業種のリストを発表しており、その分野は次の 7 種。 ・農業及び農業製品 ・鉱物、金属、セラミックス ・軽工業

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・金属製品、機械および運輸機器の製造 ・電子・電気産業 ・化学工業、紙およびプラスチック ・サービス及び公共施設 次の産業は特別重要産業と指定され、税制面で更なる恩典が付与される。 ・農業及び農産品からの製造業 ・技術開発および人的資源の開発にかかわる事業 ・公共事業、公共建設、基本サービス ・環境の保全と対策に関係する事業 ・特別目的産業 また、サポーティングインダストリーの誘致に も力を入れている。

(4) 規制分野

外国企業の参入を規制する業種は外国人事業規制法による。 (5) 優遇措置

タイ国内を 3 つの地域に分け工場の立地に応じての税制上の優遇措置が与えられる。 第 1 地域(バンコクなど 6 都県)

・機械輸入関税を 50%減免。 ・条件により 3 年間法人税免除。 ・輸出のために使用された原材料と資材に係わる輸入関税 1 年間免除。

第 2 地域(第 1 地域の近郊 11 県とプーケット) ・機械輸入関税の 50%減免。 ・3 年間法人所得税の免除、条件により 5 年間に延長。 ・輸出相当分を生産するに必要な原材料あるいは資材の輸入関税を 1 年間免除。

第 3 地域(残りの各県) 機械輸入関税の免除。

・法人所得税 8 年間免除。立地条件により更に 5 年間 法人所得税の 50%減免。 ・輸出相当分を生産するに必要な原材料あるいは資材の輸入関税を 5 年間免除。 ・立地条件により法人所得を生じた日より 10 年間輸送、電力、水道の経費の 2 倍ま

での控除を与える。 ・立地条件により設備の据え付け及び必要インフラ建設の投下金額の 25%を純利益か

ら控除できる。 (6) 出資比率規制

投資委員会の奨励措置を受ける場合の出資比率は以下の通りである。 農業、牧畜業、水産業、採鉱と鉱山業またはサービス業のプロジェクトは、タイ国籍者

が登録資本金の 51%以上を所有する。 製造業のプロジェクトは その立地にかかわらず、登録資本の過半数または全数を外国

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投資家が所有できる。(以前は輸出比率、立地ゾーンにより規制されていた) 然るべき理由がある場合には、委員会は、奨励を付与するある業種に限り、外国人に

株式所有比率を規定することがありうる。 (7) 税制

租税はタイ国国家歳入法により規定されており、法人所得税、付加価値税、個人所得税

に分けられる。 法人所得税:タイ国内で事業を行う法人は純益の 30%を所得税として納める。 付加価値税(VAT):輸入・生産過程のあらゆる段階で付加された価値に 7%の税率が適用

される(この税率は 2001 年 9 月 30 日まで)。輸出は 0%である。 個人所得税:居住者、非居住者を問わず個人がタイ国内で雇用または事業から課税対象

収入を得ている場合、あるいはタイ国内に資産を持っている場合には、個人所得税の支払

義務がある。これは収入の支払場所がタイ国内か国外かに係わらない。税率は 5%から 37%の累進税率となっている。

タイは二重課税を防止するための条約を日本と結んでいる。この他、石油収入税、印紙

税、消費税、家屋土地税、看板税などがある。 土地所有については土地法により、外国人は土地所有が認められていない。しかしなが

ら、投資委員会の被奨励企業に認定された場合は所有することができる。また、工業団地

開発公社(IEAT)が開発した工業団地に入居することによっても土地を所有できる。 6-2. 通関

(1) 管轄官庁

大蔵省関税局 http://www.customs.go.th/Customs-Eng/indexEng.jsp (2) 関税体系

・一般税率 ・ASEAN 域内共通効果特恵関税(CEPT)税率 ・自由貿易協定(FTA)の適用税率

(3) 品目分類

Harmonized System(HS 分類)に基づいている。税率は品目により従価税と従量税と

に分かれているが、従価税の基本税率は 0~30%の範囲で 6 段階に分類されている。 (4) 関税の種類

大部分は従価税だが、一部の品目は従量税。 (5) 課税基準

CIF 価格 (6) 対日輸入適用税率

一般税率 (7) 特恵等特別措置

・ASEAN 共通効果特恵関税(CEPT):ASEAN 域内の関税は、一部の例外を除き、ほ

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ぼ全て 5%以下に引き下げられている。 ・AICO(ASEAN 産業協力)スキーム:AICO 参加企業(現地資本比率 30%以上)間

で取引される AICO 製品(中間製品、原材料等)は、CEPT を前倒しして 5%以下の特恵

課税を享受できる。 ・中国との農産物貿易:ASEAN・中国 FTA のアーリーハーベストとして、タイ・中国

間の農産物関税は先行的に引き下げられている。 (8) 関連法

関税法(西暦 1926 年)およびその関税率布告 ・投資委員会(BOI)許可による関税の減免: 生産用機械や原材料の輸入関税の減免を 高で 8 年間受けられる。 ・関税法第 19 条の 2 による輸入関税の払い戻し: 原材料を輸入し、これを加工して輸出を行う場合、原材料の輸入税の還付が認められて

いる。ただし、あらかじめ税関への登録を要する。 ・輸出加工区(EPZ)への入居: 工場建屋建設資材、生産用機械設備、生産用原材料・部品の輸入関税が免除される。

6-3. 金融

借入は外国企業もタイ企業も区別ない。借入は商業銀行、タイ産業金融公社(IFCT)、フ

ァイナンスカンパニーなどから行う。優遇措置を受ける企業は、認可の際の条件として、

負債を資本金の 3 倍以内に抑さえなければならない。(拡張プロジェクトの場合はケースバ

イケースで考慮される) 投資資金やローンの送金は自由だが、外貨取得後 15 日以内に公認銀行に外貨を売却す

るか、外貨預金勘定に預け入れる必要がある。 社債を発行するにあたっては、Office of the Securities and Exchange Commission の許

可が必要。社債は公開株式会社に限って 1 億バーツまで発行できる。 6-4. 労働

外国人労働者 被奨励企業は投資委員会によって技術者、専門職の外国人を連れてくることが許可され

る。しかしながら投資委員会はタイ人をマネージャー及び技術者として雇用することを奨

励している。 タイ国内で外国人の就労が認められていない職種は 38 種ある。また、タイ国内で就労

する全ての外国人は事前に就労許可証を取得しなければならない。1978 年に改正された法

により就労許可証の発行と管理の手順が規定されている。 6-5. 治安

外務省は、ナラティワート県、ヤラー県及びパッタニー県への渡航の延期を勧告してい

る。

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- 12 - タイ

(1)タイは安全な国というイメージがあるが、殺人等の凶悪事件は人口比で日本の 14 倍

発生しており、日本人も被害に遭うケースがある。また、首都バンコクにおいては、

日本人観光客をターゲットとしたいかさま賭博や盗難等の各種被害も多発している。 (2)タイ 南部では、同地域の分離独立を標榜する集団が存在し、関連は明らかになっ

ていないが、襲撃・爆弾事件等が連続発生し多数の死傷者が出ている。2004 年 4 月

には武装グループと治安当局との銃撃戦の結果、100 人以上の死者が出る事件が発生、

同年 10 月にはイスラム系住民と軍・警察との衝突の末、多数の逮捕者が移送中に死

亡する事件が発生し、さらに、その後も喫茶店等で爆発事件が発生し外国人観光客が

巻き込まれる等タイ南部における治安情勢は悪化している。 (3)国際テロ情勢では、2003 年 8 月に国際テロ組織ジェマ・イスラミーヤ(JI)の 高

幹部の一人がアユタヤに潜伏しているのをタイ警察が発見、逮捕している。また、同

年 5 月から 7 月にかけて、タイ南部においても JI 関係者とみられる者が摘発されて

おり、報道によれば、取調べの結果、バンコク内の米、英、豪、イスラエル、シンガ

ポール各大使館及びプーケット、パタヤに対するテロ攻撃を計画していたことが判明

したとされており、タイも国際テロと無縁ではなくなっている。 6-6. 交通

(1) 道路

タイ国の道路は、1)全国の都市を結ぶ国道、2)出入り規制を伴う高規格特別国道、衛生

区道路、3)地方自治体を結ぶ地方道、4)地方自治体内、衛生区内の地方自治体道路、衛生

区道路、5)BOT 方式の特許道路、6)バンコク市内の高速有料道路に分けられる。国道総延

長は、1996 年で 51,000k 田である。道路整備は地方道の格調、改良に重点が置かれ、ほ

とんどの村と市場がピックアップ方式のバスシステムで網羅され、地方都市間を結ぶ高速

長距離バスネットワークが整備されている。バンコク市内の渋滞は有名であり世界 悪と

いわれており、通勤時の平均時速は 10 ㎞以下と言われている。この理由は従来、水路に

よる水運を中心としていたが、水路を埋め立てた道路ネットワークとなった結果、非能率

で交通量をさばくに量的に不足しているからである。加えて、首都圏への人口流入と自動

車台数の増加が交通渋滞に拍車をかけている。この状況を解決するために、BOT 方式によ

る首都圏都市交通網整備が推進されている。主なものとして、第 2 次高速道路及びドンム

アン・トルウエイ有料道路、高架鉄道タヨナン・プロジェクトが完成した。現在、国際空

港(ドンムアン)と都心を結ぶ 2層式の高速道路と地下鉄(約 20km)プロジェクトが進行して

いる。 (2) 鉄道

タイの鉄道は、バンコクから放射状に延長している。主なものは、チェンマイまでの北

線、ノンカイ、ボンラチャタニまでの北東線、アランヤプラテートまでの東線、及びマレ

ーシア国境に至る南線の 4基幹鉄道が基本となっている。営業総延長は 1995年現在、4.041㎞で、内 90 ㎞が複線化されているがほとんどは単線である。 近の輸送量は、1996 年で

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旅客数 271 億人、貨物輸送量 96 億トンである。 (3) 海運

タイの港湾は、かって大型船が入港できない河川港が中心であったが、貿易量拡大、経

済活動活発化に伴い、1980 年代後半から港湾施設の建設が推進された。主要港湾は、 大

貿易港であるバンコク港(クロントイ港)、レムチャバン港、工業港としてのマプタプット

港、民間主導で開発されたシラチャ港、軍用のサタヒップ港、農産品、水産物を扱うソン

クラ港、観光港としてのプーケト港があり、他にバンサパン港、コシチャン港がある。 (4) 空運

国際輸送では、到着旅客数は 1992 年の 605 万人から 1996 年の 1,814 万人に、荷卸し

量は 14 万トンから 72 万トンへ、郵便物は 845 トンから 2,746 トンに急激に贈大した。国

内輸送では、同期間中に旅客数が 392 万人から 637 万入、荷卸し量が 336 万トンから 4,459万トンへ増加した。空港は、国際空港としてバンコク(ドンムアン)、プーケット、チェン

マイ、ハジャイの各空港と国内空港が 22、軍用空港のウタパオ空港がある。国内空港の内、

ウドンターニー、ウボンチャタニ、チェンライが国際空港としての整備を行っている。バ

ン:コク空港は、インドシナのハブ空港としての役割を担っており、3,700m と 3,30 伽のを

本め滑走路を持ち年間旅客処理能力は約 2,500 万人である。 6-7. 電力

タイ国の電力需要は、経済発展に伴う工業、サービス業、家庭での消費増から大きく伸

びた。電力販売量の伸びでは 1987 年から 1996 年までで年平均 13.4%でとなっている。発

電能力は、1992 年の 1 万 1,700MW から 1996 年の 1 万 6,500MW へ、発電量は同期間中

に 5 万 7,100GWh から 8 万 7,500GWh へ各々増加した。発電方式別では、火力 91.6%、

水力 8.4%、その他 0.0%である。火力発電の電源構成は、天然ガス 47%、石油 32%、石炭

21%である。これまで、輸入原油に依存度を下げるために石油の割合は低下していたが、

火力発電所の稼働が増え石油によるシェアは再び高まりつつある。

7. 地質・鉱床概要

7-1. 地質概要

タイは、アルプス造山運動帯に含まれているが、それ以前に先カンブリア期、カレドニ

ア期、バリスカン期、インドシナ期の造山運動を被っているために、複雑な地質構造発達

史を有する。タイの地質構造は、各造山運動の影響の度合いによって大きく 3 つの構造ユ

ニットに区分される。西側の①シャンタイ(Shan Thai)準卓状地、②コラート・コントム

(Khorat Kontum またはコラート)卓状地、その間に挟まれた③雲南-マレイ変動帯である。 第 7-1 図に地質構造図、第 7-2 図に地質図を示す。 シャンタイ準卓状地は、先カンブリア紀の基盤岩を古生界および中生界が覆っており、

それらは後期中生代の摺曲運動を被っている。コラート卓状地は、先カンブリア紀の基盤

岩が一般に緩く西に傾いて分布しており、その上位に白亜系、第三系の地層がわずかに南

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東に傾いて累重している。雲南-マレイ変動帯は、海洋性地殻を含むカレドニア期とバリ

スカン期に形成された岩石を基盤とし、これを覆う地層はインドシナ期の造山運動を被り、

さらに一部ではアルプス期の造山運動を受けている。北部~中部タイにおいて、この変動

帯は、東側のロエイ(Loei)摺曲帯と西側のスコータイ(Sukhotai)摺曲帯に区分される。 7-2. 鉱床概要

シャンタイ準台地では、島弧における火山活動に由来する火山岩類、酸性から中性深成

岩類の貫入で特徴づけられている。。鉱床としては、花崗岩活動に関連する輝安鉱、重晶

石、蛍石、鉛等が分布する。コラート台地では、新第三紀~後期鮮新世の玄武岩の溶岩を

除けば顕著な火成活動は認めちれない。低品位の U-Cu 鉱床、カリ・岩塩鉱床が知られて

いる。ロエイ摺曲帯は古生代~中生代の砕屑性堆積物と中生代の火山岩類から構成される。

卑金属・貴金属のスカルン鉱床、浅熱水性鉱床、斑岩銅鉱床が期待される。 スコータイ摺曲帯の火山活動は、前期石炭紀のソレアイト~アルカリ岩系の玄武岩活動

が西部でみられ、中央部では二畳~三畳紀の酸性~中性の火山岩が卓越する。火山岩の分

布域に沿って、銅、アンチモン、重晶石、蛍石鉱床が分布し、金、鉛、タングステン、マ

ンガン等が浅熱水鉱床、漂砂鉱床として分布する。(第 7-3 図)

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第7-1図 タイ共和国の地質構造図

(平成5年度 資源開発協力基礎調査 JMEC)

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第 7-2 図 タイ共和国の地質図

(Gigital Geologic Map of east and Southeast Asia, 2004 から作成)

Bangkok

Cambodia

Laos

Myanmar

Vietnum

Malaysia

GULF OF THAILAND

AN

DAM

AN

SEA

9696

101

101

106

106

107

107

5

10 10

15 15

20 20

22 22

Legend of Geology

Quaternary sedimentary rocks

Tertiary sedimentary rocks

Cretaceous sedimentary rocks

Jurassic to Cretaceous sedimentary

Jurassic sedimentary rocks

Triassic to Jurassic sedimentary

Triassic sedimentary rocks

Paleozoic to Triassic sedimentary

Carboniferous to Triassic sedimentary

Permian sedimentary rocks

Carboniferous to Permian sedimentary

Carboniferous sedimentary rocks

Ordovician sedimentary rocks

Cambrian sedimentary rocks

Neogene to Quaternary mafic volcanic

Jurassic felsic to intermediate volcanic

Permian to Triassic felsic to intermediate volcanic

Triassic to Jurassic felsic plutonic

Silurian to Devonian metamorphic

Proterozoic high grade metamorphic

Ultramafic rocks

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第 7-3 図 タイ共和国の鉱床区図 (平成 12 年度 資源開発協力基礎調査 JMEC)

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8. 鉱山概要

8-1. Thailand-PbZn-Song Tho

国名/地域 :Thailand/kanchanaburi 県 名前 :Song Tho 位置 :バンコク市北西 280Km 緯度・経度 :北緯 14 度 50 分、東経 98 度 47 分付近 会社名(権益比率):

Kanchanaburi Exploration and Mining 社、

Metallgesellschaft 46%, Bohl and Sons(タイ)

鉱床 鉱種 :Pb Zn、操業 埋蔵鉱量 : 1)約 3 百万 t、 7-12%Pb+Zn (財)国際鉱物資源開発協力協会(1996) 2)当初の鉱量 約 850 万 t、7-12%Pb+Zn 資源情報センター(1992)(財)国際鉱物

資源開発協力協会(1994)より引用 鉱床タイプ :層準規制鉱床。ミシシッピーバレー型。 地質概要 :付近の地質はカンブリア紀と推定される変成岩類を基盤としてオルド

ビス~ペルム系堆積岩類が広く分布し、それらを覆う三畳~後期ジュラ紀の海成

石灰岩、礫岩から構成される。オルドビス紀の石灰岩は層厚約 500mを有し、鉱

床母岩となっている。鉱体は裂罅や断層沿いに鉱脈状に産し、場所により不規則

脈状、レンズ状、角礫状を呈す。鉱床は 4 鉱体からなり、南北数 Km にわたり分

布する。鉱体の厚さは 20mに達するところもある。鉱石鉱物は方鉛鉱、閃亜鉛鉱

を主とし、黄鉄鉱、白鉄鉱を随伴する。 鉱化作用の年代:オルドビス紀以後、ジュラ紀以前 発見の経緯 :1950 年に Cominco が評価、1970 年代後半に開発開始。 1989 年には年産約 40,000tの鉛・亜鉛精鉱を生産していた。 採鉱法 :坑内掘り。(Room and Pillar, Sublevel Stoping) 副産物等: Ag

8-2. Thailand-Zn-Mae Sot(Padaeng)

国名/地域 :Thailand/Tak 県 Mae Sod(Sot)郡 名前 :Mae Sot 鉱山 位置 :Tak 市西方60Km、Bangkokの北西400Km, ミャンマー国境近く 緯度・経度 :北緯 16 度 39 分、東経 98 度 40 分付近。 会社名(権益比率):

Padaeng Industry Co., Ltd.

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タイ側 70%(政府・王室財産管理局33%、 民間37%) Vieille Montagen(ベルギー)30%

(金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の

鉱業の趨勢 JOGMEC/(財)国際鉱物資源開発協力協

会(2001)) 鉱種 :Zn、操業 埋蔵鉱量 :

1)4.7 百万 t 11.3%Zn (Raw Materials Data August 2004) 2)Mae Sot 地域にある Hualon 鉱山(硫化物)

確定・推定資源量(2002 年末) 0.295 百万 t 6%Zn (Mining Annual Review 2003: Mining Communications Ltd. 2003)

3)4.59 百万 t 28.9%Zn カットオフ 10%Zn (Padaeng Industry 社。(財)国際鉱物資源開発協力協会(1994))

鉱床タイプ :層準規制型。酸化亜鉛鉱床。 地質概要 :Padaeng鉱床は、石灰質砂岩および頁岩からなるオルドビス紀(三畳

紀後期~ジュラ紀との説もある)石灰岩層中に南北600m、東西200mの広がりで、

不規則な厚さ・形態で胚胎される。上部の酸化鉱体の100-200m下方にはドロマ

イト質石灰岩中に初生硫化鉱体(閃亜鉛鉱など)がある。酸化鉱は異極鉱、菱亜

鉛鉱を主とし、硫化鉱は閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱を主とする。 広義のPadaeng鉱床は東西3Km,南北2Kmの範囲に5つの鉱体で構成されてい

る。Pa Daeng Industry Co., Ltd.により稼行されているのは南東部に位置する狭

義のPadaeng鉱床と中央部に位置するHud Lon鉱床である。北東部の鉱床はター

ク鉱山として別会社(Tak Mining Co., Ltd. タイ国資本)の経営の下で1997年から生産を開始している。

Mae Sod鉱床はPadaeng鉱床付近にあり、珪酸亜鉛鉱を主体に一部炭酸亜鉛鉱

を含む。 鉱化作用の年代 :ジュラ紀(145-210Ma) 発見の経緯 : 1947 年 露頭発見。 生産量 (直近 5 ヵ年): 生産開始年:1972

(Raw Materials Data August 2004) ((財)国際鉱物資源開発協力協会(1994))

年 1999 2000 2001 2002 2003 粗鉱生産量 Mt 0.153 0.134 0.139 0.113 0.1 e

品位% 15.6 20.4 17.5 22.2 22.2 金属量 Zn t 23,900 27,300 24,300 25,000 37,000

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採鉱法 :OP

8-3. Thailand-Au-Chatree

国名/地域 :Thailand/ 名前 :Chatree 位置 :Bangkok の北、Bitumen ハイウェイから 280Km。

Chao Phraya 盆地の東縁に位置する。 緯度・経度 : 会社名(権益比率):Kingsgate Consolidated Limited 100% 鉱種 :Au、操業 埋蔵鉱量 :資源量 30.7 百万 t、 1.90g/tAu, 14g/tAg 鉱量 8.6 百万 t、 2.70g/tAu, 12g/tAg

Raw Materials Data August 2004 鉱床タイプ :浅熱水性脈状鉱床。 地質概要 : 鉱床は地表近くに分布する。鉱石は選鉱が容易な鉱石で不純物も少な

い。 2004 年 4 月、現在操業中の露天掘りの北 3Km に新鉱化帯が試錐で発見

された。走向延長 1,200m、地表下 12m及び 120m以内で着鉱している。 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年:2001

年 粗鉱生産量 Mt 粗鉱品位 Au(金属量, t) Ag(金属量, t)

2001 0.313 1.16

2002 4.956 18.05

2003 1.2 e 3.6g/tAu 20.0g/tAg

4.351 12.71

Raw Materials Data August 2004 採鉱法 :OP。 2 つの露天掘りピット。

剥土比 2.20:1, カットオフ 0.70g/tAu 金属回収法 :CIL (Carbon in leach), 重力選鉱 備考 :2004 年増産計画あり。起業費 US$8 百万。

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- 21 - タイ

9. 新規鉱山開発状況

9-1. Thailand-CuAu-Phu Lon

国名/地域 : Thailand/Nong Khai 県メコン河岸 埋蔵鉱量 :第 1 鉱体 5.4 百万 t、 2.43%Cu, 0.64g/tAu

第 2 鉱体 53 百万 t、 1.7%Cu, 0.45g/tAu 鉱床タイプ :スカルン、開発中 地質概要 :デボン紀石灰岩を母岩とし、三畳紀初期と思われる花崗閃緑岩に貫入

される。2 鉱体からなる。

9-2. Thailand-Cu-Phu Hin Lek Fai

国名/地域 :Thailand/ 名前 :Phu Hin Lek Fai 位置 :Loei 市の東約 15Km 鉱床 鉱種 :Cu 、開発中 埋蔵鉱量・品位:約 65 百万 t、1%Cu(内、確定・推定鉱量 15 百万 t)。 鉱床タイプ :ポーフィリーカッパー 地質概要 :古生代下位の石灰岩、凝灰岩、砂岩、頁岩に石英斑岩、石英閃緑岩が

貫入している。これら貫入岩類の周辺部では広く熱水変質を受けると共に、黄銅鉱、

黄鉄鉱、斑銅鉱、磁鉄鉱、赤鉄鉱が網状細脈あるいは鉱染状に生成されている。銅

鉱化帯の範囲は 1,000mX450m で深度 150mまで二次富化作用が認められる。 鉱化作用の年代: 発見の経緯:1963 年に実施された空中磁力探鉱による。磁鉄鉱および赤鉄鉱からなる鉱化

帯の発見をきっかけに探鉱が進められた。

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10. 探査状況

10-1. 錫

タイは、過去、マレーシアと並んで世界的な錫の生産地であり、外貨獲得源としての錫

鉱業はタイにおいては重要な産業であった。しかしながら、1985 年以降の錫価格の低迷に

よって錫精鉱産出量は減少の一途をたどり、1985 年には 23,022t であったものが 1997 年

には 756t にまで落ち込んだ。2003 年の生産量は 980t となっている。錫鉱業は、タイに

おいては長い歴史を持つ産業であり、記録によると、1518 年から生産が始まったとされ、

盛期には 700 近い鉱山が稼働していたが、現在は 30 か所程度が操業を継続しているに

すぎない。また、Phuket には、国内唯一の錫精錬所があり、年間生産量は約 2 万 t であ

るが、原料のほとんどを豪州、ラオス、ペルー等からの輸入に依存している状況である。 10-2. 亜鉛

Tak 市西方ミャンマー国境近くに、Padaeng Industry 社の Mae Sot 鉱山が操業してお

り、2002 年、約 11 万 t の珪化亜鉛鉱石を生産している。 Tak 市には同社の所有する国内唯一の亜鉛製錬所がある。Mae Sot 鉱山からの原料のほ

か、豪州、ペルー、米国等から輸入している硫化亜鉛精鉱を使用しており、原料の半分を

海外に依存している状況となっている。このため、タイ国内での新たな亜鉛鉱山の開発が

望まれている。 10-3. 金

タイ国内初の金山となる Chatree 鉱山が 2001 年 11 月から操業を開始した。鉱床はバン

コクの北約 280 ㎞の北部 Phichit 県、Phetchaboon 県にまたがる一帯にあり、推定鉱量は、

2002 年 7 月末現在、約 1,412 万 t で、金 22t、銀 280t が確認されているとのことである。

採掘権を保有している Akara Mining 社は、豪州 Kingsgate Consolidated 社とタイのエネ

ルギー企業 Banpu 社とで 1993 年に設立された合弁企業であり、2003 年の生産量は、鉱

石が 151 万 t、金 154,484 オンス、銀 484,170 オンスとなっている。同社は、2004 年に

入り、鉱石生産能力を 180 万 t に増強している。 同鉱山に続き、2002 年 8 月には、錫鉱山開発大手 Tongkah Harbor 社の子会社、Thung

Kham Mining 社が、Loei 県 Wang Saphung での採掘権を取得。投資総額は 15 億 1 千万

バーツを予定している。第一ステージでは 15t の金の採掘が見込まれており、価値にして

60 億バーツとなる予定である。 10-4. 銅

Pan Australian 社は、タイ北東部のラオスとの国境近くの Puthep で銅鉱山開発プロジ

ェクトを進行中である。PUT1、PUT2 の2鉱体が発見されており、鉱染状鉱体と2次富

鉱帯から成り、推定鉱量は両者で約 1.2 億トン、Cu 0.43%である。 この鉱床は Loei-Phetchabun 褶曲帯に位置し、(ラオスの Phu Bia に繋がる褶曲帯の 1

つ)。褶曲帯は、主に Palaeozoic- Mesozoic の変堆積岩と花崗岩の貫入を伴う火山岩類で構

成される。

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タイ初の銅製錬所となる Thai Copper Industries 社のプラント建設が順調に進捗し、

2004 年 4 月にも操業開始が予定されている。 同プラントは、バンコクの南東約 210 ㎞の Rayong に建設され、生産能力は年間 16 万 5

千 t、 終的には 18 万 t 規模を想定。これにより、現在 100%輸入に依存している自動車、

電気機器製造等向けの銅地金をすべて国産化することを見込んでいるほか、将来的には中

国、インド、中東への輸出をも視野に入れている。所要銅鉱石については、チリ、豪州等

から長期契約により確保している。 同社は、1994 年に設立され、製錬所の建設を進めていたが、7 割まで完成した時点の

1997 年に通貨危機が発生したため、計画が一時棚上げ状態となり、その後、2002 年初め

から再建策の検討が進み、建設が再開されていた。 出資比率は、タイ資産管理公社(TAMC)36%、タイ産業金融公社(IFCT) 7%、タイ・フィ

ルム・インダストリー(TFI)27%、ノルウェーに本拠地を置くクヴァナ(Aker Kvaerner)28%等となっている。 10-5. 非金属鉱物(工業用鉱物)

1980 年代後半以降、非金属鉱物産出量の年平均増加率は 30%近くにも達している。こ

れは、非金属鉱物を原料とする工業界の発展に起因するところが大きい。たとえば、建設

部門ではセメント原料となる石灰岩や石膏、エネルギー部門では火力発電用の褐炭などが、

経済成長とともに多量に消費されてきている。 10-5-1. 石膏

タイは、世界でも有数の石膏生産国であり、2003 年の生産量は前年比 15%増の 729 万

t となった。生産量の約 70%が輸出され、残りがセメント工業向けを中心として国内で消

費されている。輸出先はインドネシア、日本、マレーシア、ベトナム、台湾、韓国等の近

隣諸国へ輸出されている。輸出される石膏の多くはタイ南部からのもので、Nakhon Si Thammart にある Wanit Gypsum 社が 大の生産・輸出会社である。また、タイ北部の

Nakorn Sawan と Phicit では国内消費用のものが生産されている。 10-5-2. 褐炭

タイにおける褐炭の生産は、2003年は 1,884万 tとなっており、その大部分がElectricity Generation Authority of Thailand (EGAT)をはじめとする発電事業者、残りがセメント、

製紙事業者等によって消費されている。国内 大の褐炭鉱山である Lampang の Mae Moh鉱山は、EGAT が所有しており、採掘された褐炭は、近隣の火力発電所に供給されている。 10-5-3. カリウム

タイ東北部、Chaiyaphum 県において、坑内採掘により、年間 100 万 t の炭酸カリウム

鉱石を生産し、肥料を製造する計画が Asia Pacific Potash Corp.(APPC)を中心に進められ

ているが、出資比率や環境影響評価を巡り工業省との調整が行われている。 同プロジェクトは 1970 年代に打ち出された ASEAN 共同投資プロジェクトのタイ案件

であったが、同投資プロジェクトが構想倒れで終わり資金調達の目途が立たず、1992 年か

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- 24 - タイ

ら現在まで棚上げとなっていたもの。ちなみに、同鉱山は、タイ鉱業法の改正による坑内

採掘許認可における規制緩和の適用第一号となる見込みである。 10-6. 鉱害問題

10-6-1. カドミウム

2004 年 3 月、北部 Tak 県 Mae Sot 郡の水田から収穫された食用米から、0.7~2.0mg/kgのカドミウムが検出された旨が公表された。同地域は 2002 年にも、他機関により食用米、

大豆等からカドミウムが検出されている。近郊には、Padaeng Industry 社の亜鉛鉱山(露天採掘)が稼働しており、因果関係について調査が行われており、同鉱山と、1997 年に閉

山した Tak Mining 社の堆積場管理に問題があったものとみられている。また、鉱山企業

に対し、汚染米の買入れ・処分が要請されている。 10-6-2. 鉛

カンチャナブリ県において、20 年にわたり鉛を含む水を排出していたことで近隣住民の

健康被害が発生していたほか、世界遺産である Thung Yai Naresuan 野生動物保護区に位

置し自然環境への影響も憂慮されていたことから、鉱物資源局の指導により、鉛精錬所 1か所が 2002 年末までに閉鎖されることとなった。 10-6-3. 砒素

タイ南部では多くの鉱山が操業していたが、現在、ほとんどの鉱山が閉山している。

Nakhon Si Thammart 市西方の Ron Phibun では、廃止した錫鉱山が原因とみられる鉱害

問題がクローズアップされ、錫鉱石に含まれていたヒ素が地下水や土壌を汚染し、その結

果、付近の住民に皮膚ガンの症状が発生しているというものである。 タイ政府はその対策に乗り出し、ヒ素で汚染された地下水を住民が飲まなくてもすむよ

うに、水道施設の設置や、汚染されていない地下水を確保するための新規の井戸を掘削す

るなどの対策を行ってきている。 10-6-4. 石炭

Lampang 県では、石炭火力発電所からの排煙による大気汚染が周辺住民の社会問題化

し、二酸化硫黄(SOx)、二酸化窒素(NOx)や煤塵を抑制するため、発電設備に排煙脱硫装置

や電気集塵機が設置され、発生源対策が進展した。 近では、これまでの健康被害への補

償が求められている。 石炭火力発電所の新設に関しては、大気汚染への懸念から、地元の反対が強まっており、

Prachuab Khiri Khan 県の発電所の立地が見送られるに至っている。 (2004. 4. 30/バンコク事務所 市原秋男)

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11. 製錬所概要

11-1. Thailand-Cu-Thai Copper

国名/地域 :Thailand/ 名前 :Thai Copper Industries 位置 :バンコクの南東約210 ㎞のRayong 会社名(権益比率): タイ資産管理公社(TAMC) 36%

タイ産業金融公社(IFCT) 7% タイ・フィルム・インダストリー(TFI) 27% クヴァナ(Aker Kvaerner ノルウェー) 28%

主要生産金属 :Cu 生産量 (直近5ヵ年) 生産開始年:2004 年8月操業開始 生産能力は年間16 万5 千t、 終的には18 万t 規模を想定 備考 :所要銅鉱石については、チリ、豪州等から長期契約により確保している。同社

は、1994 年に設立され、製錬所の建設を進めていたが、7 割まで完成した時点

の1997 年に通貨危機が発生したため、計画が一時棚上げ状態となり、その後、

2002 年初めから再建策の検討が進み、建設が再開されていた。

11-2. Thailand-Zn-Tak

国名/地域 :Thailand/ Nongbuatai/Muang Dist 名前 :Tak Zinc Refinery 位置 :Nongbuatai/Muang Dist, Tak 会社名(権益比率):Padaeng Industry (Umicore) 主要生産金属 :Zn 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年

年 金属量 千トン

1999 95.4 2000 101.6 2001 104.8 2002 105.1 2003 113.7

Raw Materials Data, August 2004, Raw Materials Group 製錬方法 :

精錬 :ELR 備考 :国内の Mae Sot 鉱山のみでは、原料の亜鉛鉱石を供給できず、原料消費量の約

8 割を豪州、ペルー、米国等から輸入している状況となっている。このため、タ

イ国内での新たな亜鉛鉱山の開発が望まれている。

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11-3. Thailand-Sn-Phuket

国名/地域 :Thailand/ 名前 :Phuket 位置 :Phuket 会社名(権益比率):Thailand Smelting & Refining Co.Ltd. 100%

Escoy Holdings Bhd. Malaysia Amalgamated Metal Corp Plc, UK TUI AG, Germany 主要生産金属 :Sn 生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年:

年 1999 2000 2001 2002 2003 生産量 千 t 17.3 17.08 22.39 18.39 15

・ Raw Materials Data August 2004

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第 11-1 図 鉱山・製錬所位置図

鉱山・製錬所 Thailand-PbZn-Song Tho 北緯 14 度 50 分、東経 98 度 47 分付近

Thailand-Zn-Mae Sot(Padaeng)鉱山 北緯 16 度 39 分、東経 98 度 40 分付近

Thailand-CuAu-Phu Lon Thailand/Nong Khai 県メコン河岸

Thailand-Cu-Phu Hin Lek Fai Loei 市の東約 15Km

Thailand-Cu-Thai Copper Industries バンコクの南東約 210 ㎞のラヨーン

Thailand-Zn-Tak Tak

Phu Lon

Phu Hin Lek Tak

Mae Sot 鉱山

Song Tho

Thai Copper Industries

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12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況

海外地質構造調査(実績) 1977~1981 年度 タイ北部 1981 年度 メイサリアン 1982~1984 年度 ワンヌア

資源開発協力基礎調査(実績) 1983~1985 年度 オムコイ 1986~1988 年度 ヤンキャン 1991~1993 年度 クラブリ 1994~1996 年度 チェンコン/ドイチェン/ラブリ 1997~1999 年度 メイサリアン

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- 29 - タイ

第 2 部 地質解析

1. 地質・地質構造

タイは、アルプス造山運動帯に含まれているが、それ以前に先カンブリア期、カレドニ

ア期、バリスカン期、インドシナ期の造山運動を被っているために、複雑な地質構造発達

史を有する。 タイの地質構造は、各造山運動の影響の度合いによって大きく 3 つの構造ユニットに区

分される。それらは第 7-1 図に示すように、西側の①シャンタイ(Shan Thai)準卓状地、東

側の②コラート・コントム(Khorat Kontum またはコラート)卓状地、その間に挟まれた③

雲南-マレイ変動帯である。 シャンタイ準卓状地は、ミャンマー北部からマレーシアまで南北方向に伸長する狭い地

域で、深部に達する断層によってブロック化している。先カンブリア紀の基盤岩を古生界

および中生界が覆っており、それらは後期中生代の摺曲運動を被っている。 コラート卓状地は、やや北西一南東方向の延びを示して広く分布する。この卓状地は、

先カンブリア紀の基盤岩が一般に緩く西に傾いて分布しており、その上位に白亜系、第三

系の地層がわずかに南東に傾いて累重している。 雲南-マレイ変動帯は、海洋性地殻を含むカレドニア期とバリスカン期に形成された岩

石を基盤とし、これを覆う地層はインドシナ期の造山運動を被り、さらに一部ではアルプ

ス期の造山運動を受けている。北部~中部タイにおいて、この変動帯は、東側のロエイ

(Loei)摺曲帯と西側のスコータイ(Sukhotai)摺曲帯に区分される。ロエイ摺曲帯は、イン

ドシナ造山運動の摺曲帯で、スコータイ摺曲帯は 後にアルプス造山運動の摺曲を受けて

いる。 タイの地質図を第 7-2 図に示す。 タイの火成活動は、上記の構造運動に伴っていくつかの時期に分かれて認められている。 シャンタイ準台地では、堆積岩中に凝灰岩が挟まれると共に、花崗岩の活動が不確かな

先カンブリァ紀の花崗岩を除けば 4 時期に認められる。この花崗岩は、ほとんどがイルメ

ナイト系 Sタイプに分類される花崗岩で錫・タングステンの鉱化作用と深く関係している。 コラート台地では、新第三紀~後期鮮新世の玄武岩の溶岩を除けば顕著な火成活動は認

めちれない。 ロエイ摺曲帯の火成活動は、主にカルクアルカリ岩系の活動であり、コラート卓状地の

西縁に沿って南北方向に連続して分布する。ロエイ摺曲帯の火成活動は、後期デボン~前

期石炭紀の玄武岩を中心とした活動に始まり、後期石炭紀や後期三畳~前期ジュラ紀に中

性~酸性の火山岩類が活動している。ロエイ摺曲帯の中央部には新生代のバイモーダルな

火山活動が認められるが、これを除けば主たる火成活動は後期ジュラ紀までである。ロエ

イ摺曲帯に貫入する深成岩類は、花崗岩、 花崗閃緑岩、閃緑岩、斑れい岩などがあり、そ

の活動時期は三畳紀とされている。 スコータイ摺曲帯の火山活動は、前期石炭紀のソレアイト~アルカリ岩系の玄武岩活動

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が西部でみられ、中央部では二畳~三畳紀の酸性~中性の火山岩が卓越する。またこの帯

では、新生代ので玄武岩の活動も随所に見られる。スコータイ摺曲帯の深成活動は、花崗

岩、トーナル岩、 花崗閃緑岩などがバソリスと浅所に貫入する岩株として認められるが、

これらの貫入時期は放射年代値から三畳紀、ジュラ紀、白亜紀及び第三紀の活動が考えら

れている。

2. 鉱床

2-1. 鉱床生成区

タイの鉱床区は、地質構造区に基づき、第 7-3 図に示したように北東鉱床区、中央鉱床

区,西鉱床区の 3 つの鉱床区に区分される。鉱床分布図を第 2-1 図に示す。 (1) 北東区(North eastern Province)

地勢状のコラート高原に対応するもので、地質は中生代の堆積物と新生代の玄武岩プラ

トーから構成されている。低品位のU-Cu鉱床、カリ・岩塩鉱床が知られている。 (2) 中央区(Central Province) 3つの亜区(Sub Province)に細分化される。 a) Loei亜区

コラート高原西部のLoei摺曲帯に相当する。古生代~中生代の砕屑性堆積物と中生代の

火山岩類から構成される。卑金属・貴金属のスカルン鉱床、浅熱水性鉱床、斑岩銅鉱床が

期待される。沈み込みによる島弧であったと考えられている。 b) Sukhothai亜区

島弧における火山活動に由来する火山岩類、酸性から中性深成岩類の貫入で特徴づけら

れている。火山岩の分布域に沿って、銅、アンチモン、重晶石、蛍石鉱床が分布し、金、

鉛、タングステン、マンガン等が浅熱水鉱床、漂砂鉱床として分布する。 c) Pha Som亜区

タイ北部、ラオス国境から上記のLoei亜区とSukhothai亜区の境界部を狭長に南東方に

延びる亜区。シャンタイ・テレーンとインドシナ・テレーンの衝突によって陸上に押し上

げられた海洋地殻起源の塩基性岩と考えられている。ラオス国境に近いウタラディット

(Uttaradi)県、南東部のプラチーンブリ(Prachinburi)県で蛇紋岩中にクロム鉄鉱が

認められている。タイ国唯一の超塩基性岩体である。 (3) 西部区(Western Province)

次の4亜区に区分される。チェンマイが位置するこの西部区の北部では、先カンブリア

系~古生界中期の分布と古期花崗岩類の活動で特徴づけられる。鉱床としては、花崗岩活

動に関連する輝安鉱、重晶石、蛍石、鉛等が分布する。 a) ChainMai亜区

花崗岩類に伴う錫、タングステン鉱床が多く、ペグマタイト中のものや交代作用による

鉱床は稀といわれている。アンチモン、亜鉛、蛍石、重晶石等の鉱床も認められている。

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b) Kanchanaburi亜区 オルドビス紀の石灰岩を交代した鉛・亜鉛鉱床で特徴づけられる。チェンマイ亜区と似

た地質分布を示すが、アンチモン、蛍石に比して鉛、方鉛鉱を伴う鉱床が卓越する。 c) Chumphon亜区

二畳系~石炭系の含礫泥岩が分布し、鉱床として、鉱染状、漂砂鉱床の錫鉱床で特徴づ

けられる。 d) Nakon Si Thammarat亜区

熱水性の磁鉄鉱、赤鉄鉱鉱床が認められる。

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96 9

6

101

101

106

106

107

107

5

10 10

15 15

20 20

22 22

Cambodia

Laos

Myanmar

Vietnum

Malaysia

GULF OF THAILAND

AN

DAM

AN

SEA K

HLO

NG

MARUI FA

ULT

RANO

NGFA

ULT

THREE PAGODAS FAULT

CHAOPHRAKA

FAULTMAE

PINGFAULT

Legend of Minerals

Au

Cu

Zn/Pb

Sn

W

Sb

Chatree

Huai Luang

Champang

Tha Tako

Krabin

Pa Ron

Toh Moh

Phu Hin Lek Fai

Phu Lon

Phu Thong Daeng

Puthep

Mae Sot

Song Toh

Katsu Valley

Ranong

Yala

Thung PhoThung Khamin

Doi Mok

Khao Soon

Mae Lama

Doi Pha Kok

Huai Nai Khao

第 2-1 図 タイ共和国の鉱床分布図 (平成 3 年度 地質解析委員会報告書の図を編集)

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- 33 - タイ

2-2. タイプ別・時代別分布の特徴

2-2-1. 金鉱床

含金銀石英脈、風化残留及び漂砂鉱床の存在はタイ・ミャンマー両国において数多く知

られてはいるものの、それらが安定的に操業できるような埋蔵鉱量・品位をもった鉱床は

今までになかった。しかしながら、タイ国内初の Chatree 金鉱山が発見され、2001 年に

操業を開始した。これまでに知られている主な鉱床は以下の通りである。 Phu Lon 鉱床

ラオス国境に接するノンカイ(Kong Khai)県のメコン河岸に位置するスカルン型鉱床で

ある。第1鉱体と第2鉱体からなり、その規模は第1鉱体が540万トン、Cu2.43%、Au0.64g/t、第 2 鉱体が 5,300 万トン、Cu1.7%、Au0.45g/t である。 Ban Bo Thong 鉱床

中央タイのロッブリ(Lopburi)県 Khok Samrong 郡に位置し、石英閃緑岩と石灰岩の接

触部に胚胎するスカルン型金鉱床である。局所的に柘榴石に富む大理石と珪岩の接触部沿

いに賦存する鉱脈中にも金が賦存する。 Ban Tha Thako 鉱床

Khok Samrong 郡から道路距離 75km のナコンサワン(Nakhonsawan)県に位置し、金

は緑色柘榴石を伴う石英-方解石脈に鉱染状に胚胎する。脈は局所的に白亜紀~第三紀(?) の石英モンゾニ斑岩が貫入する石灰岩中に賦存しており、脈自身は後期貫入の石英閃緑

岩々脈に切られている。したがって本鉱床は石灰岩を母岩とする熱水交代鉱床の可能性が

ある。鉱脈中の金品位は 2-90g/t と言われる。

Toh Moh 鉱床

タイ・マレーシア国境付近に位置し、古くから小規模、かつ断続的に採掘が行われた。

本格的な採掘は1936年から50年までの15年間継続し、平均年産量は0.39トンであった。 この鉱床は古生層粘板岩、片岩とこれらを貫く二畳紀~三畳紀花崗岩体中の含金石英脈

である。石英脈はほぼ南北系の走向を示し、 大肥厚部は約 2mで、採掘鉱石の平均品位

は 10g/t といわれる。 Tha Tako 鉱床

この鉱床はバンコク市北方約 150 ㎞付近に位置する。鉱床の発見は約 100 年前にさかの

ぼり、以後数回にわたり探鉱と採掘が行われた。 鉱床母岩は Rat Buri 石灰岩層で、石英モンゾニ岩及び石英閃緑岩岩脈が貫入する。付

近にはいくつかの含金方解石-石英脈が認められるが、概して小規模、不規則である。

大の鉱脈の走向延長は、約 200m 大脈幅は 6mであり、品位は 2~90g/tと変化が著

しい。 Pa Ron 鉱床

バンコックの南西に位置する。110 年以前から現地住民などによって継続的に採掘が行

われた。鉱床は古生代の粘板岩、砂岩とこれらを貫く多くの含金石英脈が、熱帯性の風化

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作用によって分解した現地残留性堆積物中に賦存する。この付近は比較的なだらかな地形

を呈し、その間を小河川が侵蝕流下する。残留堆積層は河床面から数m高位の堤防状丘陵

の上に位置し、主に粘土、シルト及び角礫から成る。その厚さは一般に 2~5mで、下部の

基盤岩に移化する。含金品位の高い部分は残留堆積層の下部、すなわち、比較的起伏の多

い基盤岩の直上付近に相当し、その厚さは数 10 ㎝以内である。 採掘は立坑を基盤岩まで掘り下げ、含金層に沿って放射状に水平坑道を展開して、採掘

鉱石を地上に捲き上げた後、流下式比重選鉱法によって金を回収した。これまでに得た

大のナゲットは 50gであったといわれる。 Huai Luang 鉱床

タイ、ラオス、ミャンマー国境近くの Chiang Saen(Mae Chan)の南に位置し、100 年

以上も前から現地住民によって継続的に砂金採取が行われて来た。 鉱床付近は Khorat 系に属する砂岩、粘板岩の互層とこれらを貫く中粒閃緑岩から成り、

いくつかの石英脈も認められる。砂鉱床は Huai Luang 渓谷の沖積層であり、主要な含金

砂礫層の長さは下流域までの約 1 ㎞である。富鉱部は風化した基盤岩直上の厚さ数 10 ㎝

以内の砂礫層である。 Chatree 鉱床

近年発見され、三畳紀の火山弧を母岩とする氷長石-絹雲母浅熱水性鉱脈鉱床で、石英

-石灰石-氷長石の脈中に金を胚胎する。 鉱床は地表近くに分布し、4 つのオーピンピッ

トで採掘している(第 2-2 図)。鉱石は選鉱が容易な鉱石で不純物も少ない。2004 年に、

現在操業中の露天掘りの北 3Km に新鉱化体が試錐で発見された。走向延長 1,200m、地表

下 12m及び 120m以内で着鉱している。更なる探鉱がなされている。

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2-2-2. 銅鉱床

タイの銅鉱化作用は中部から北部地域にかけて多数知られている。砂岩型や熱水性鉱脈

あるいは斑岩型鉱床が見出おり、タイ北東部 Loei 地区の鉱床はその規模と品位から、開発

可能性をもつ鉱床として注目に値する。 銅鉱床区分は次のとおりである。 ①斑岩型鉱床、スカルン型鉱床:Loei 地区の Phu Hin Lek Fei 鉱床、Phu Tong Daeng 鉱

床、Phu Lon 鉱床。 ②鉱脈鉱床:中部タイに比較的多く賦存するが、いずれも小規模、低品位で短期間の探鉱

と採掘が行われた。 ③含銅砂岩鉱床:砂岩あるいは砂岩・頁岩中の銅鉱床。北部タイのランパン県とウタラデ

ィット県に数ヵ所賦存するが、いずれも小規模で継続的な稼行実績はない。 a) ポーフィリー型鉱床

Loei 地区の鉱床

この地区の鉱床探査は 1963 年に実施された空中磁探による、磁鉄鉱および赤鉄鉱から

なる鉱化帯の発見をきっかけとして進展した。Phu Hin Lek Fai 鉱床および Phu Thong Daeng 鉱床はいずれも Loei 市の東約 15 ㎞に位置する。

付近の地質は古生代の Kanchana Buri 統とこれに貫入する酸性岩から成る。Kanchana Buri 統は石灰岩、チャート、砂質頁岩、砂岩及び凝灰岩を主とし、これらに石英斑岩およ

び石英閃緑斑岩が岩株状あるいは岩脈状に貫入している。これら酸性貫入岩類の周辺部で

は広く熱水変質を受けるとともに、黄銅鉱、黄鉄鉱、斑銅鉱、磁鉄鉱、赤鉄鉱を伴う網状

細脈の発達あるいは鉱染が著しい。 Phu Tong Daeng 鉱床

斑岩の他に周囲の凝灰岩・砂岩中にも鉱化変質および鉱化帯が発達する。塊状の黄鉄

第 2-2 図 Chatree 鉱山

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- 36 - タイ

鉱・黄銅鉱の組み合わせの他、鉱染状黄銅鉱が凝灰岩・斑岩中に認められる。主要鉱石鉱

物は磁鉄鉱・赤鉄鉱・黄鉄鉱・黄銅鉱・藍銅鉱で微量の方鉛鉱・閃亜鉛鉱の存在も報告さ

れている。埋蔵鉱量は 100 万トンと計上されている。 Puthep 鉱床

Pan Australian 社は、タイ北東部のラオスとの国境近くの Puthep で銅鉱山開発プロジ

ェクトを進行中である。この地域は Loei-Phetchabun 褶曲帯に位置し、(ラオスの Phu Biaに繋がる褶曲帯の 1 つ)褶曲帯は、主に Palaeozoic- Mesozoic の変堆積岩と花崗岩の貫入を

伴う火山岩類で構成される。すでに PUT1、PUT2 の2鉱体が発見されており、鉱床は花

崗閃緑岩に貫入された変堆積岩を母岩とする。貫入時にもたされた銅は貫入岩及び堆積岩

にも賦存し、鉱床は初生鉱床、酸化鉱、2次富化鉱よりなり、推定鉱量は両者で約 1.2 億

トン、Cu 0.43%である。鉱体 PUT1 の 84%は2次富化鉱で、北北西方向に 3.4km、幅は

大 1km、平均 700m、層厚は約 30m である。 鉱体 PUT2 も同様の鉱体であるが、酸化鉱と富化鉱の割合は半々である。 同社はラオスの Phu Bia(国境から約 100km 北東)において銅・金鉱床も開発中であ

る。 b) 鉱脈鉱床

熱水性鉱脈鉱床はタイ中部に比較的多数知られているが、いずれも小規模、低品位であ

るため、短期間の探鉱と採掘が行われたにすぎない。 c) 含銅砂岩鉱床

砂岩あるいは砂岩・頁岩中の銅鉱床はタイ中部の Changwat Lampang および Uttaradit地方の数ヶ所に見出されている。Lampang 東部の数ヶ所では Khorat 系の含銅砂岩層が探

鉱された。また、Uttaradit 市の東および北東付近で、砂岩、頁岩互層中に胚胎する銅鉱

床が探鉱されたものの、いずれも小規模であったため継続的稼行はなされていない。 2-2-3. スズ・タングステン鉱床

タイ、ミャンマー地域は極めて多くのスズ、タングステン鉱床が知られている。それら

は主に Shan-Tennasserim-West Thai プラットフォームおよび Yunnan-Malay 褶曲帯両

構造帯中に賦存している。鉱床の生成タイプは Nutalaya et al.(1979)や Puwakool(1979)らによって次のように分類されている;

1.熱水性鉱脈及びグライゼン鉱床 2.鉱染鉱床(花崗岩および被貫入岩中) 3.ペグマタイト鉱床 4.接触交代鉱床 5.風化残留鉱床 6.沖積鉱床 熱水性鉱脈、風化残留タイプのスズ、タングステン鉱床は地域全般に生成しているが、

鉱染鉱床やペグマタイト鉱床は概してミャンマー南部、タイ南部に多い。また、タングス

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- 37 - タイ

テン鉱とくに灰重石を主とする鉱床はタイ北部から中部およびミャンマー南東部に集中す

る タイ、ミャンマーのスズ、タングステン鉱床は古生代末から古第三紀にかけて貫入した

花崗岩類と密接に関連して生成しており、いずれのタイプの鉱床、鉱微地もその大半は

Shan-Tennassrim-West Thai プラットフォームに集中する。この構造帯はミャンマー北部

を北限とし、マレー半島にほぼ沿って南に延び、マレーシア西部を経てボルネオ西部に至

る。 スズ、タングステンは地球化学的には親石元素で、スズの地殻存在度は 2ppm であるが、

火成岩とくに花崗岩やネフェリン閃長岩において 高の存在度を示す。花崗岩類の中でも

イルメナイト系花崗岩および S タイプ花崗岩で濃集することが知られている。南部タイに

おけるイルメナイト系列の花崗岩類で Sn は 8.2~38.6ppm(分析個数 23)を示し、Fとの相関が極めて著しい。

タイ、ミャンマーを含め、マレー半島地域の花崗岩類に関する研究は多く行われてきて

いる。なかでも、Huchison and Taylor(1978)、および Huchison(1986)は花崗岩類をその

産状、鉱物化学的および岩石化学的特徴に基づいて 4 帯に分けた。すなわち、マレー半島

部の東から西に向って、Eastern Belt, Central Belt, Main Range Belt および Western Belt に分帯した。主要なスズ鉱床は Western Belt および Main Range Belt に集中する。

一方、Asnachinda(1978)および Charusiri(1991)はタイを中心として分布する花崗岩類の

分帯を行い、これらを Eastern, Central および Western の 3 帯にまとめた。それらのう

ち、Hutchison and Taylor(1978)による Main Range Belt と Central Belt が一括され

Central Belt として扱われ、従来、その他の花崗岩類として扱われているタイ北部の花崗

岩類へと連続する。 タイ北部およびミャンマー東部には後期三畳紀~ジュラ紀にかけて貫入した花崗岩類

が多く(Charusiri, 1991;Nutalaya et al., 1979;Puwakool, 1979)それらがタングステンを

多く伴っていることはよく知られている。これらの地域ではタングステン鉱物種として鉄

マンガン重石や鉄重石だけでなく、灰重石を主な鉱物種とする鉱床も多く、同じ花崗岩帯

でも Central Belt(タイ南部)においてはスズ石の卓越する鉱床とタングステンに富む鉱

床ではその生成期や鉱化作用の性格を異にしているのかもしれない。 Doi Mok 鉱床(Chiang Rai Province)

チェンライ市南東約 60 ㎞に位置し北部タイにおける大規模鉱床である。この鉱床は

1970 年に発見され、以後 1978 年の中頃までの間に、約 5,000 トンの灰重石精鉱を産出し

た。その後、生産は漸滅し、1980 年には坑道探鉱を行ったのみで、すでに閉山している。 鉱床付近の地質は先ニ畳系の変火山─堆積岩系と三畳紀に貫入した Sタイプ花崗岩類か

らなる。先ニ畳系は主として結晶質石灰岩、珪岩、結晶片岩、角閃岩および酸性~塩基性

の変火山岩類から構成される。そらはほぼ南北の走向を示し、東へ傾斜する。鉱床付近の

花崗岩体は黒雲母花崗岩および優白質花崗岩を主として、ミャンマー国境付近から南へ約

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150 ㎞延長する Fan Mae Suai 深成岩体の一部を成している。 鉱体は 3 ヶ所にあって、いずれも母岩の層理にほぼ調和して発達する。

Mae Lama 鉱床(Mae Hong Son Province)

Mae Lama 鉱床の東に位置する花崗岩体はアダメロ岩が主であるが、斑状黒雲母花崗岩

および白雲母花崗岩を伴い、岩体の頂部付近はグライセン化が著しい。 この岩体の周辺部には Mae Lama 鉱床の他に数鉱床が分布する。いずれも、主に下部古

生界中の裂罅を充填した熱水性の鉱脈鉱床である。 Mae Lama 鉱床は走向 E─W、S へ急斜する含タングステン石英脈で、走行延長 460m、

傾斜延長 150mが確認されている。鉱石は鉄マンガン重石が主で、灰重石とごく少量のス

ズ石を伴う。鉄マンガン重石と灰重石との比は 9:1 である。このほか、硫砒鉄鉱、黄鉄

鉱、磁硫鉄鉱、閃亜鉛鉱、針鉄鉱等を伴う。鉱石品位は平均で FeMnWO51%、ときに 10%以上に達することがある。 Thung Pho 及び Thung Khamin 鉱床(Songkla Province)

両鉱床は Hat Yai 市南南東約 10 ㎞に位置する。鉱床付近は下部石炭系の砂岩、シルト

岩、泥岩、頁岩の互層から成り、やや複雑な褶曲構造を示す。後期三畳紀~前期ジュラ紀

に貫入した中粒~粗粒黒雲母花崗岩類は古生界の東に露出する。 花崗岩は石炭系との接触部付近で、細粒~中粒優白質となり、長石類はカオリン化およ

びセリサイト化されるとともに、スズ石を伴った石英細脈およびアプライト脈が発達する。

とくに、キュポラ状を示す岩体の頂部付近では曹長石化、グライゼン化、電気石化、セリ

サイト化および粘土化作用が著しく、鉱化石英脈が多い。 両鉱山におけるこれまでのスズ精鉱の生産実績は Thung Pho 鉱山が 641 トン(1976-84)

であり、Thung Khamin 鉱山では僅かに 64 トン(1980-81)である(Pungrassami, 1984)。 Phuket ペグマタイト鉱床(Phuket Province)

タイ南部、プケット島のほぼ中央部 Katsu Valley にはスズ─タンタル─レアアースを主

とするペグマタイト鉱床が発達する。上部石炭系の Phuket 層群を貫くこれらのペグマタ

イト系および Sn-REE ペグマタイト系とに大別される。大半のペグマタイトは幅 1m前後

であるが、なかには、幅約 20m、走向延長約 600mにも達する大規模なものもある。これ

らのペグマタイトは 1980 年代の中頃まで稼行された。 2-2-4. 堆積性鉱床

マレー半島におけるスズ生産の大半は堆積型鉱床、すなわち現地残留、崩積、沖積性の

砂礫層から産出した。タイにおける重要な堆積鉱床は Western Belt の花崗岩類に由来し

ており主にプーケット─パンガ─タクアパ地域に分布する。この地域のスズ生産量はタイ

の 50%以上を占め、1980 年代の中頃まで盛大に稼行されていた。現在では、陸域におけ

る堆積型鉱床の稼行は著しく減少し、主に海域において、ドレッジ採掘が行われている。 沿海域のスズ鉱床はプーケット─タクアパ地域に集中している。とくにタイ南部の西海

岸付近が採掘の対象地域であるが、現在、採掘により沖合に移動している。

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2-2-5. 鉛・亜鉛鉱床

タイ・ミャンマー地域には多くの鉛、亜鉛鉱床が分布し、比較的規模の大きい数鉱床が

稼行されている。Song Toh と Mae Sod 鉱床が代表的な鉱床である。 鉛、亜鉛鉱床の生成タイプは、熱水性鉱脈、接触交代および層準規制型などが知られて

いるが、なお、成因的に未解決の鉱床もある。この地域の鉛、亜鉛鉱床のメタロジェニー

としては(1)Shan-Tennasserim-West Thai プラットフォームの炭酸塩岩層中に生じた

層準規制型鉱床、(2)同褶曲帯に貫入した花崗岩マグマ活動に伴って生じた熱水性鉱脈お

よび接触交代鉱床が注目される。 Song Toh 鉱床(Kanchanaburi Province)

Kanchanaburi 県の北緯 14 度 50 分、東経 98 度 47 分付近に位置する。付近の地質は、

カンブリア紀と推定される変成岩類を基盤としてオルドヴィス~二畳系堆積岩類が広く分

布し、それらを覆う三畳紀~後期ジュラ紀の海成石灰岩、礫岩から構成される。鉱床付近

のオルドヴィス系石灰岩は層厚 500m 程度を有し、SongTho 鉱床の母岩となっている。鉱

体は裂鐸や断層沿いに脈状で認められるが、場所により不規則細脈状、レンズ状、角礫状

を呈し、南北方向に数km以上にわたって分布する。鉱体の厚さは局部的に20mに達する。

本鉱床の生成時期は母岩の石灰岩堆積の時期以後でジュラ紀~後ジュラ紀の構造運動より

前と推定している。成因は、ミシシッピバレー型との類似点を認めながらも、鉱石組織・

流体包有物・微量元素の品位および累帯分布から鉱化溶液の起源は不明としている。しか

し、層準規制型鉱床であることを認めて、石灰岩堆積後のオルドヴィス系凝灰岩をもたら

した火成活動関連する鉱化熱水の可能性を示唆した。鉱石鉱物は方鉛鉱・閃亜鉛鉱を主と

し黄鉄鉱、時には白鉄鉱を随伴する。微量鉱物は閃安鉛鉱・濃紅銀鉱・車骨鉱・砒四面銅

鉱および含銀・含アンチモン四面銅鉱とされている。従来のミシシッピバレー型と比べて

銀・アンチモン・水銀含有量が多く、かつその品位が鉱体中心部から外側へ漸減する特徴

がある。SongTho 鉱床は、4 鉱体からなる。主要 4 鉱体の埋蔵鉱量を約 850 万トン、Pb+Zn・7~12%。年間約 40,000 トンの鉛、亜鉛精鉱(1989 現在)を生産していた。 Mae Sod 亜鉛鉱床(Tak Provicnce)

Tak 県 Mae Sod(Sot)郡に位置する。北緯 16 度 39 分、東経 98 度 40 分付近。1957-65年の期間に住友金属鉱山(株)が調査を行い、鉱量 2,699,000 トン、亜鉛品位 33%を計上し

たが酸化鉱のために開発には到らなかった。その後もタイ企業・豪州企業により調査・評

価が行われていた。1981 年に Padaeng Industry 社が設立され、同社により鉱床の再評価・

再開発が行われた後 84 年から生産を開始した。 本鉱床の母岩はオルドビス系のドロマイト質石灰岩とされていたが、Naraballobh et

a1.,(1992)は上部三畳系~ジュラ系の含化石 Huai Hin Fon 累層としている。本累層は灰色

~暗灰色石灰岩相が卓越し、石灰質頁岩・砂岩・石灰礫岩を挟在して走向 NNW-SSE で

SW 傾斜を示す。本層の東側には二畳系 Doi Phawar 累層が断層で接し、Huai Hin Fon層の伸長方向と同じ NW-SE 方向に伸長する。Doi Phawar 累層はドロマイト質石灰岩・

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頁岩・砂岩からなる。西側は頁岩が卓越する第三系 Mae Sod 累層が分布する。周囲の地質

構造は NW-SE 方向の断層に規制されている。Huai Hln Fon 累層の石灰岩層は岩相から 3相に区分され、 上部層のドロマイト質石灰岩に初生の鉱化が認められる。二次鉱化作用

は下部層の細粒砂岩・ドロマイト・ドロマイト質石灰岩に生じている。平面的には、鉱床

付近は NW-SE 方向の二条の平行断層により北・中央・南部と分けられる。中央部にはほ

ぼ N-S 方向の断層が走るが、その南北への伸長は二条の NW-SE 方向の断層によりは画

されている。鉱体周辺は主要断層から派生した断層により、著しく地溝状に分断されブロ

ック化している。Pa Daeng 鉱体を含め主要 4 鉱体は平行断層に挟まれた中央部に位置す

るが、Pa De 鉱体は北部に位置する。中央部に位置する鉱体は、ドロマイト質石灰岩層中

に賦存していることから層準規制型鉱床と考えられている。主に酸化鉱からなる鉱体は

Pha Daeng 地区の丘陵に露出しており、深部延長は 大 110m と推定されている。鉱石鉱

物は菱亜鉛鉱、異極鉱、亜鉛華、ロージアイト等からなり、初生鉱は閃亜鉛鉱、方鉛鉱、

黄鉄鉱を伴う。鉱床成因モデルとして、亜鉛硫化物を含んだ溶液がドロマイト質石灰岩や

砂岩申の断層・裂鑛および多孔質媒体中での浸潤作用により酸化鉱の沈澱をもたらしたと

されているが、初生鉱の起源・沈澱については触れていない。鉱体は不規則な厚さ・形態

を示すが、N230E 方向の断層と砂岩の賦存と密接な関係がある。Padaeng Industry 社の

再評価による埋蔵鉱量は、cut-off 品位を 10%として、459 万トン、Zn28..9%と計上され

た。鉱石は 85km 東の Tak まで運搬され同社:の電解炉により金属亜鉛が生産されている。

http://www.geoscienceworld.org/

第 2-3 図 Mae Sod 鉱床

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2-2-6. アンチモニー鉱床

アンチモニー鉱床は主として、造山運動、火成活動、変成作用に関連して生成している

が、タイのほとんどの鉱床は熱水鉱脈あるいは交代鉱床で、主にタイ北部に集中する。 Huai Nai Knao 鉱床(Surat Thani Province)

タイ南部の Bang Song 地域にはいくつかのアンチモニー鉱床、鉱微地が知られているが、

その中で Huai Nai Khao 鉱床の推定埋蔵鉱量は 16,000 トン(Sb2S3)と言われる。 この鉱床は 1938 年頃に発見され、1964 年に小規模の精練所を建設し、本格的な採掘を

開始した。1970 年代の中頃には主な鉱体のほとんどを採掘して休山した(Tantiskurit, 1978)。

鉱床はシルル紀 Kanchanaburi 層中の東西系の裂罅に沿って生成した熱水性の鉱脈で、

主として砂岩中に発達する。鉱脈の走向延長は断続的ながら約 1 ㎞追跡できるが、採掘可

能な部分は 100m内外であった。脈幅は 10m以内、傾斜方向(60°S)への延長は 20m以上で

ある。 Doi Pha Khan 鉱床(Phrae Province)

鉱床は古生界中の破砕帯(走向 NNE-SSW、傾斜 W)に沿って生成した鉱脈鉱床であり、

断続するいくつかの塊状およびレンズ状鉱体から成る。 大の鉱体は鉱化破砕帯の北部に

位置し、走向方向に約 200m、脈幅 1.5m 以内と推定される。鉱石は輝安鉱を主とし、石

英、方解石を伴う(Gardner, 1967)。 2-2-7. ニッケル、クロム鉱床

タイにはいくつかの縫合線あるいは構造帯に沿って、オフィオライトが分布するものの、

これまで目立ったニッケル、クロム鉱床の開発は行われていない。 2-2-8. その他のレアメタル鉱床

タイから産出するレアメタルにはタンタル、レアアース、チタン、ジルコニウムなどが

あげられる。これらの鉱種はいずれも単独のメタルとして稼行の対象とはなり得なえず、

おもにスズ鉱床の随伴鉱物として回収されているものである。 たとえば、タンタルはペグマタイト、風化残留成、崩積成、沖積成鉱床あるいはアマン

(Amang)から、タンタライト、コロンバイト、ストウルベライトなどの鉱物として回収さ

れるほか、スズの精練鉱滓からも抽出されている。とくに、タイのスズ精練鉱滓はタンタ

ル含有量の多いことで有名であり、世界の重要なタンタル供給国の一つである。レアアー

ス鉱物は主にアマン中に含まれるモナザイト、ゼノタイムがイルメナイト、ジルコンとと

もに回収されている。

3. 鉱床胚胎有望地域

近年タイ国 大の金山(Chatree)が、タイ北東部の Phetchabun 県で発見された。こ

の鉱山の北東(Loei 県)の Puthep で銅鉱床も発見されており調査・開発中である。各社

の活動はかなり活発で地質、地化学探査、物理探査も精力的に行われているようである。

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また、タイとの国境から北東方向に約 100km の地点に稼行間近の Phu Bia 金・銅鉱山が

あり、これはラオスでは Sepon に続いて 2 番目の本格的非鉄鉱山である。 この地帯は、以前から砂岩型や熱水性鉱脈あるいはポーフィリー型鉱床が多く知られて

おり、従って現在タイでは も有望な金・銅鉱床の賦存地域と考えられる。 以下にタイ国全体での鉱床の有望地域をあげる。 3.1 金鉱床

タイの金鉱床の賦存域は次の3帯に分類することができる。 (1) 石炭系~三畳紀の火山活動に関連し、斑岩類に伴うもの。これにはスカルン型と中~

浅熱水型・網状鉱脈型がある。 (2) 古期変成岩に貫入した酸性火山岩類に伴うもので錫花崗岩に関連し、熱水鉱脈型・変

成脈・角礫型がある。 第 3-1 図の有望地域1ではスカルン型及び熱水鉱脈型が期待される。スカルンの母岩は

石炭系上部~二条系の浅海性堆積岩類の炭酸塩岩を主とし、二畳紀後期から三畳紀初期に

かけての火山活動に伴う酸性~中性の貫入岩類によりスカルン化作用が生じたとされてい

る。 有望地域 2 の破線内には、二畳系上部~三畳系下部の火山岩類が NE-SW の方向性を

持って配列し、金鉱床はこの火山岩類と同質の斑岩類に伴われて賦存する。金の鉱化作用

は火山活動後期の熱水作用によるもので、不規則細脈状~網状の石英脈に伴う。 ミャンマー国境沿いを南北に伸長する有望地域 3 は、錫花崗岩が分布する地域と重複し、

花崗岩体内部や花崗岩帯に沿う周囲の変成岩類に錫-タングステン脈に付随した含金・錫

-石英脈が賦存すると言われるが、規模や地質状況については不明である。 3.2 銅鉱床

銅鉱床賦存の有望地域は、第 3-2 図に示す範囲で、スコータイ摺曲帯のオフィオライト

地帯と並んで東北部のロエイ摺曲帯と閃緑岩類の貫入岩類を伴う三畳系酸性~中性火山岩

類分布域である。スカルン型、斑岩型鉱床が有望である。また大部分の銅鉱床に関連する

火成岩系列は、多くの鉛・亜鉛鉱床と同様にカルク・アルカリ岩系と考えられている。 3.3 スズ・タングステン鉱床

タイの広範な錫花崗岩(S-タイプ)分布地域から数ヵ所の磁鉄鉱系花崗岩ストックの存

在が報告されていること、従来から花崗岩岩体内部や周囲の岩石中の錫(.鉄マンガン重石)鉱脈の脈石(石英・方解石)に灰重石が伴われる事も知られていることなどから、イルメナ

イト系・S-タイプとされている花崗岩体も詳細に調査をすればこれら岩体の分布域に磁

鉄鉱系・I-タイプを示す岩相や岩株が発見される可能性はある。広域的には DMR が既に

実施している空中磁気探査と同放射能探査結果の相関、および結果図・解析図と花崗岩岩

体の位置とを参照する事により、イルメナイト系・磁鉄鉱系花醐岩を選別する事が可能と

考えられる。 3.4 鉛・亜鉛鉱床

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有望地域については第 3-2 図に示してある(図中の②が鉛・亜鉛鉱床の有望地)ように、

地域としては地勢・行政区分からは北部タイの Phrae 県・Tak 県、東北タイの Loei 県お

よび中央タイ西部の kanchanaburi 県に分布する。地質・構造的には・Shan-Thai 準卓状

地と Loei 摺曲帯(もしくは Khorat 高原外縁:帯)の古生層分布域と同地域に貫入する花醐岩

類周辺に卓越する。 3.5 アンチモニー鉱床

タイのほとんどのアンチモニー鉱床は熱水鉱脈あるいは交代鉱床で、主にタイ北部に集

中し、有望地域についても第 3-4 図に示す。 3.6 ニッケル、クロム鉱床

超塩基性岩に伴われるこれらの鉱種の賦存状況・胚胎位置について詳細に論じている既

刊の資料は少ない。前述の DMR100 周年記念刊行物(1992)で金・宝石鉱床と一緒にニッケ

ル・クロム鉱床の有望地を示しているが、鉱床としての詳細な記載はない。これらの位置

は、構造帯の境界部に相当し、ニッケル鉱床は付加されたオフィオライトに伴う蛇紋岩位

置する。構造帯は鉱床区の項で述べたスコータイ亜区の境界部もしくはロイ亜区の北端部

(ファソム亜区)と南端部の縁に限定されている。タイの地質構造境界部あるいは縫合帯に

貫入・付加された蛇紋岩にともなわれる鉱化作用は小規模で、鉱:床の賦存および開発に移

行できる鉱床発見の可能性は低いと考えられる。

第 3-1 図 金の有望地 第 3-2 図 銅・鉛・亜鉛の有望地

(平成 5 年度 資源開発協力基礎調査 JMEC)

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(平成 5 年度 資源開発協力基礎調査 JMEC)

第 3-3 図 錫・タングステンの有望地 第 3-4 図 アンチモンの有望地

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資料

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ア島嶼地域 -金、銅、モリブデン ・金属鉱業事業団 (1991):平成 3 年度地質解析委員会報告書 東南アジア・オセアニ

ア島嶼地域の地質と鉱物資源 ・(財)国際鉱物資源開発協力協会(1994):平成 5 年度 資源開発協力基礎調査 プロジ

ェクト選定調査報告書 タイ王国 平成 6 年 3 月 ・(財)国際鉱物資源開発協力協会(1994):平成 5 年度 資源開発協力基礎調査 プロジ

ェクト選定調査報告書 衛星画像解析 タイ王国平成 6 年 3 月 ・(財)国際鉱物資源開発協力協会(1996):平成 7 年度資源開発協力基礎調査 プロジェ

クト選定調査報告書 インドシナ・ミャンマー 平成 8 年 3 月 ・(財)国際鉱物資源開発協力協会(1997):平成 8 年度資源開発協力基礎調査 プロジェ

クト選定調査報告書 タイ王国 平成 9 年 3 月 ・(財)国際鉱物資源開発協力協会(2001):平成 12 年度 資源開発協力基礎調査 プロ

ジェクト選定調査報告書 タイ王国 ・ARC レポート 2004 タイ ・Mineral Potential of Central and East Asia, World Bank Group, Mining Department,

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deposits database, ・InfoMine データベース ・MineSearch データベース ・各社ホームページ(インターネット)