骨髄異形成症候群のゲノム異常と病態...骨髄異形成症候群のゲノム異常と病態...

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骨髄異形成症候群のゲノム異常と病態 千葉 Key words : Myelodysplastic syndrome, Chromosome, Gene, Mutation はじめに 骨髄異形成症候群(MDS)は,20 世紀前半から,「治 療に反応しない貧血ないし血球減少であり,かつ急性骨 髄性白血病(AML)に移行しやすい病態」として,様々 な名称で報告され議論されてきた(Table 1) 1) 。概念に ついて一定のコンセンサスが得られたのは,1982 年に 提案された白血病の French-British-American (FAB)分 類の改訂版で分類されて以降といってよい 2) 。その後 WHO 7 つの亜型に分類している 3) 。約半数で染色体 異常が,ほぼ全例で遺伝子異常がクローン性に見いださ れる。遺伝子異常の同定は 1980 年代後半にはじまり, 四半世紀を経た現在までに相当程度明らかにされてき た。しかし,MDS のさまざまな病態との関連について はまだ不明な点が多い。現状の理解について概説する。 1MDS の病態 MDS の病態を形成する中心的な異常は,「クローン 拡大とアポトーシス亢進の共存」であるといえる。もう 少し具体的には,以下のようにまとめられる(Fig. 1)。 ①造血幹細胞ないしこれに近い未熟細胞のゲノム異常に よってクローナルに造血細胞が増殖する腫瘍であるが, 芽球が無制限に増殖するのではなく,腫瘍細胞が機能的 な血球まで,機能的/数的に不完全ながら分化する。② 骨髄は通常正形成ないし過形成であるにもかかわらず, 血球の減少を来たしている。これはクローン性造血細胞 による無効造血と,正常造血(非クローン性造血)の抑 制との両者に由来する。③顆粒球系,赤血球系,巨核球/ 血小板系のうち多系統にわたって,種々の程度の形態異 常を呈している。これが,疾患名に冠されている「異形 成」という表現の由来である。④高頻度で AML (ほと んどの場合 AML with myelodysplasia-related changesに移行する。 時には,クローンの拡大がおきているにもかかわら ず,骨髄の細胞成分が少ない(低形成)こともあり,さ らにバリエーションを大きくしている。 2MDS における染色体異常と MDS の診断 MDS の約 50%で,複数の細胞に共通の(/クローン 性の)染色体異常が古典的な染色体分析法(G-バンディ ング)で検出される。これらの染色体異常は,類縁疾患 である AML のそれとはかなり異なる。すなわち,AML では均衡型転座(ゲノムの量が変わらないままの相互転 座)が多いのに対し,MDS における染色体異常の大多 数は不均衡型の異常(染色体の全部または一部の欠失や 増幅)である(Table 2)。中でも,第 5 染色体長腕の欠 失(5q,),第 7 染色体全体または長椀の欠失(,7/ 7q,),第 8 染色体トリソミー(+8),第 20 染色体長 椀の欠失(20q,),Y 染色体の欠失(,Y)の頻度が高 い(他の染色体異常との合併も含む)。 WHO 分類では,正形成性または過形成性骨髄で原因 不明の血球減少を認める場合,「異形成」も「芽球増加」 も観察されない場合でも,Table 2 に記載した染色体異 常をクローン性に検出できれば,MDS と診断するとし ている 3) 。ただし, Table 2 で*を附した, +8del(20q), ,Y のいずれかだけを認める場合には,明確な「異形成」 が観察されたり「芽球増加」が認められたりしない限り, MDS とは診断しないことになっている。これらの患者 もクローン性増殖を示しており病態には類似点が多いと 推察されるが,骨髄が低形成であれば再生不良性貧血, 低形成でなければ idiopathic cytopenia(s) with undeter- mined significance (ICUS)と診断される。 5410 1411687筑波大学血液内科 75 回日本血液学会学術集会 骨髄系腫瘍CML/MPN/MDS EL-18 プログレス

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Page 1: 骨髄異形成症候群のゲノム異常と病態...骨髄異形成症候群のゲノム異常と病態 千葉 滋 Keywords:Myelodysplasticsyndrome,Chromosome,Gene,Mutation はじめに

骨髄異形成症候群のゲノム異常と病態

千 葉 滋

Key words : Myelodysplastic syndrome, Chromosome, Gene, Mutation

はじめに

骨髄異形成症候群(MDS)は,20世紀前半から,「治療に反応しない貧血ないし血球減少であり,かつ急性骨

髄性白血病(AML)に移行しやすい病態」として,様々な名称で報告され議論されてきた(Table 1)1)。概念について一定のコンセンサスが得られたのは,1982年に提案された白血病の French-British-American (FAB)分類の改訂版で分類されて以降といってよい2)。その後

WHOは 7つの亜型に分類している3)。約半数で染色体

異常が,ほぼ全例で遺伝子異常がクローン性に見いださ

れる。遺伝子異常の同定は 1980 年代後半にはじまり,四半世紀を経た現在までに相当程度明らかにされてき

た。しかし,MDSのさまざまな病態との関連についてはまだ不明な点が多い。現状の理解について概説する。

1.MDSの病態

MDS の病態を形成する中心的な異常は,「クローン拡大とアポトーシス亢進の共存」であるといえる。もう

少し具体的には,以下のようにまとめられる(Fig. 1)。①造血幹細胞ないしこれに近い未熟細胞のゲノム異常に

よってクローナルに造血細胞が増殖する腫瘍であるが,

芽球が無制限に増殖するのではなく,腫瘍細胞が機能的

な血球まで,機能的/数的に不完全ながら分化する。②

骨髄は通常正形成ないし過形成であるにもかかわらず,

血球の減少を来たしている。これはクローン性造血細胞

による無効造血と,正常造血(非クローン性造血)の抑

制との両者に由来する。③顆粒球系,赤血球系,巨核球/

血小板系のうち多系統にわたって,種々の程度の形態異

常を呈している。これが,疾患名に冠されている「異形

成」という表現の由来である。④高頻度で AML (ほと

んどの場合 AML with myelodysplasia-related changes)に移行する。

時には,クローンの拡大がおきているにもかかわら

ず,骨髄の細胞成分が少ない(低形成)こともあり,さ

らにバリエーションを大きくしている。

2.MDSにおける染色体異常とMDSの診断

MDSの約 50%で,複数の細胞に共通の(/クローン

性の)染色体異常が古典的な染色体分析法(G-バンディング)で検出される。これらの染色体異常は,類縁疾患

である AMLのそれとはかなり異なる。すなわち,AMLでは均衡型転座(ゲノムの量が変わらないままの相互転

座)が多いのに対し,MDSにおける染色体異常の大多数は不均衡型の異常(染色体の全部または一部の欠失や

増幅)である(Table 2)。中でも,第 5染色体長腕の欠失(5q,),第 7 染色体全体または長椀の欠失(,7/7q,),第 8 染色体トリソミー(+8),第 20 染色体長椀の欠失(20q,),Y染色体の欠失(,Y)の頻度が高い(他の染色体異常との合併も含む)。

WHO分類では,正形成性または過形成性骨髄で原因不明の血球減少を認める場合,「異形成」も「芽球増加」

も観察されない場合でも,Table 2に記載した染色体異常をクローン性に検出できれば,MDSと診断するとしている3)。ただし,Table 2で*を附した,+8,del(20q),,Yのいずれかだけを認める場合には,明確な「異形成」が観察されたり「芽球増加」が認められたりしない限り,

MDSとは診断しないことになっている。これらの患者もクローン性増殖を示しており病態には類似点が多いと

推察されるが,骨髄が低形成であれば再生不良性貧血,

低形成でなければ idiopathic cytopenia(s) with undeter-mined significance (ICUS)と診断される。

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筑波大学血液内科

第 75回日本血液学会学術集会

骨髄系腫瘍:CML/MPN/MDSEL-18 プログレス

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Table 1 Chronology and Terminology of the Myelodysplastici syndrome

Term Year Author

Refractory anemia 1938 Rhoades and Baker

Preleukemic anemia 1949 Hamilton-Paterson

Preleukemia 1953 Block et al.

Refractory anemia with ringed sideroblasts 1956 Bjorkman

Refractory normoblastic anemia 1963 Dacie et al.

Smoldering acute leukemia 1969 Rheingold et al.

Chronic erythremic myelosis 1973 Dameshek

Lreleukemic syndrome 1974 Saarni and Linman

Subacute myelomonocytic leukemia 1974 Sexauer et al.

Hypoplastic acute myelogenous leukemia 1975 Miescher and Farguet

Refractory anemia with excess myeloblasts 1976 Beard et al.

Hematopoietic dysplasia 1978 Linman and Bagby

Subacute myeloid leukemia 1979 Cohen et al.

Dysmyelopoietic syndrome 1980 Streuli et al.

Myelodysplastic syndrome 1982 Bennett et al.

Fig. 1 Pathophysiology of myelodysplastic syndrome.The process and pathophysiology of myelodysplastic syndrome are depicted.The first event is the genetic abnormality that initiates the clonal expansionin a normal hematopoietic stem or a progenitor cell; other geneticabnormalities follow during the clonal expansion. Ineffective hematopoiesisby clonal cells and suppression of non-clonal cells cause cytopenia. HSC,hematopoietic stem cell; HPC, hematopoietic progenitor.

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3.SNPアレイ法による染色体異常の検出

古典的な染色体分析法では,分裂期にある細胞しか解

析できず,また G-バンディングで形態的に観察可能な程度に大きなゲノム異常しか検出できない。近年,高解

像度 single nucleotide polymorphism (SNP)アレイを用いることにより,より小さな領域の異常を,しかも細胞

周期とは無関係に検出する方法が開発された(SNPアレイ法)4)。この方法ではクローン特異的な小さなゲノ

ム領域のコピー数異常を同定することができる。また,

トータルのコピー数には増減がなくとも(すなわち 2コピーであっても),一方の親由来のアレルが別な親由来

のアレルに置き変わる acquired uniparental disomy(aUPD)を検出することも可能である5)。SNPアレイ法を用いると,古典的な染色体検査では正常であってもゲ

ノムコピー異常を検出でき,MDSの 75%程度で異常を検出可能ある6, 7)。ただし,均衡型転座の場合は,コピー

数に異常が生じず,aUPD とも無関係であり,SNP アレイ法では異常を検出できない。

4.MDS において同定されている遺伝子異常と,その病態への関与

ゲノム異常からMDSの病態を生物学に説明するためには,染色体レベルで異常を検出するだけでは困難であ

り,遺伝子異常を同定しなければならない。

腫瘍の遺伝子異常を同定するためには,(つい最近ま

では)まず何らかの方法で候補遺伝子を同定する必要が

あった。すなわち,①産物(蛋白)の機能解析や疾患に

おける発現異常などから腫瘍関連遺伝子であると推定す

る,②他の悪性腫瘍ですでに異常が同定されている,③

腫瘍が多発する家系で変異が認められる,④染色体異常

が同定された領域に局在している(染色体転座の標的に

なっている,欠失が認められる領域に存在している,

aUPDが同定される領域に存在している),などによって候補遺伝子を絞り込んだ上で,シークエンス解析を

行っていた。

しかし近年,大規模シークエンス技術が進歩し,標的

となる候補遺伝子を同定せず,直接網羅的にシークエン

スを行う方法で,多数の遺伝子異常が急速に同定されて

いる。必然的に,遺伝子異常の意味や病態の説明につい

ては,将来への宿題になっている。ここでは,MDSの病態―生物学を,現時点で可能な範囲でゲノム異常の視

点から考えることにする。(Fig. 1,Fig. 2,Table 3参照)

(1)クローンの拡大と細胞増殖関連遺伝子変異:RNAS,TP53,C-CBL異常主要な細胞増殖シグナル経路である受容体/細胞質チ

ロ シ ン キ ナ ー ゼ ―RAS (KRAS,NRAS,HRAS)-RAF(ARAF,BRAF,CRAF)-MEK-ERK (Fig. 2)は,多くの悪性腫瘍で遺伝子変異により活性化されている8)。非造

血器腫瘍では,KRAS 9) と BRAF 10)の機能亢進型変異の

頻度が高く,半数ないしそれ以上の頻度で変異を認める

腫瘍もある。一方,造血器腫瘍でも,チロシンキナーゼ

型受容体 FLT3は AMLの 30%以上で変異しており11),

細胞質チロシンキナーゼ JAK2の V617F変異が大多数の真性多血症をはじめとするmyeloproliferative neoplasms(MPN)で極めて高頻度に認められる12)。AML ではNRASも 20%程度の頻度で変異している11)。

ところが,MDSでは上記の遺伝子変異の頻度は,総じて低い。約 10%の MDS で NRAS の変異が同定される13, 14)他は,いずれも稀である(Table 3)。ちなみに,NRAS は MDS で最初に変異が発見された遺伝子であ

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143(1689)

Table 2  Frequent chromosomal abnormalities in myelodysplastic syndrome at the diagnosis. Note that the vast majority are unbalanced abnormalities. t-MDS, cases developing AML from MDS.

Abnormalities MDS t-MDS

Unbalanced

+8* 10%

-7 or del(7q) 10% 50%

-5 or del(5q) 10% 40%

del(20q)* 5─8%

-Y* 5%

-i(17q) or t(17p) 3─5%

-13 or del(13q) 3%

del(11q) 3%

del(12p) or t(12p) 3%

+del(9q) 1─2%

idic(X)(q13) 1─2%

Balanced

t(11;16)(q23;p13.3) 3%

t(3;21)(q262.;q21.2) 2%

t(1;3)(q36.3;q21.2) 1%

t(2;11)(p21;q23) 1%

inv(3)(q21;q26.2) 1%

t(6;9)(q23;q34) 1%

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る15)。JAK2 V617F 変異は,myelodysplastic/myeloproli-ferative neoplasms (MD/MPN)に分類されている re-fractory anemia with ring sideroblasts associated withmarked thrombocytosis (RARS-T)の 50%に認められる16, 17)が,MDS では 5%程度に認められるにとどまる18)。

一方,細胞増殖を負に制御する p53 をコードするTP53も,あらゆる悪性腫瘍で高頻度に欠失や変異が認められ,機能が低下している。AMLでは 20%程度に変異が認められる11) が,非造血器腫瘍における変異頻度

よりは低い。MDS でも TP53 の変異は認められるが,その頻度は AMLよりもさらに低く,10%程度である19)。

一部のMDSでは,チロシンキナーゼ型受容体の活性を負に制御する C-CBLの変異が同定される。この変異では C-CBLの機能低下の他に,CBLファミリーの他の分子の機能を阻害することで,強く負の制御を解除する可

能性が示唆されている(Fig 2)。この変異は MD/MPNに分類される慢性骨髄単球性白血病(chronic myelomo-nocytic leukemia; CMML)では 15%程度と比較的高頻度に同定される7)。

NRAS や TP53 の変異は,MDS の予後不良因子である。実際,これらの異常は芽球の多いタイプのMDSに多い。また,MDSから AMLに進展したケースにも多いことから,MDSの進展の比較的後期に生じていると予想される。このことは逆に,細胞増殖関連遺伝子の変

異は MDSの一部でしか同定されておらず,MDSの発

生初期のクローン拡大(Fig. 1)にとって真に重要な遺伝子変異については,未だに明らかではない,というこ

とでもある。

(2)無効造血の原因となるゲノム異常骨髄は造血細胞が正常ないしそれ以上に存在するにも

かかわらず,末梢血では汎血球減少が生じている,とい

う現象は,無効造血に起因するものであり,MDSの中心的な病態の一つである(Fig. 1)。無効造血は主に,クローン性に増殖している細胞の①分化障害(maturationarrest)と,②アポトーシスの亢進の二つによって説明される。

(2)-(i)分化障害と転写因子:RUNX1変異RUNX1は AMLでもっとも高頻度に認められる染色体異常である t(8;21)転座において,ETO (RUNX1T1)遺伝子と融合する遺伝子として同定された20)。RUNX1は顆粒球単球系の分化を正に制御する転写因子である。

RUNX1-RUNX1T1 では,RUNX1 の N 末端部分に ETOのほぼ全長が融合している。RUNX1の C末端部分が失われており,少なくとも RUNX1が生理的に担っている分化促進機能など,一部の機能損なわれる21)。

一方,MDSの 15∼20%で RUNX1の点変異が同定される。22, 23)。RUNX1 は MDS で 2 番目に高い頻度で変異を来す遺伝子で,N末端部分に存在する RUNT領域のミスセンス変異と,より C末端部分のフレームシフト変異に大別される。マウスを用いた研究では,これら

の 2種類の変異は異なる血液異常をもたらす24) ことか

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Fig. 2 Representative targets of gene mutations and deletions in myelodysplasticsyndrome. Pink indicates gain-of-function mutations. Blue indicates loss-of-function mutations. Yellow (IDH1/2) indicates gain of a different function. InRUNX1, C-CBL, TP53, ASLX1 and DNMT3A, additional functional changesrather than the simple loss of function are indicated.

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ら,RUNX1遺伝子異常の種類によって RUNX1は異なる機能をもち(Fig. 2),異なる病態が導かれると考えられる。

すなわち単純なモデルでは,RUNX1 の点変異は,Fig. 1 の中では,分化の抑制(maturation arrest)を説明する。ただし,異常の種類によってはクローン拡大に

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Table 3 Representative genes in which abnormalities(mutations and deletions) are identifi ed in myelodysplastic syndrome.

Category of gene product

Pathways/Functions

GeneFunction of

mutantsFrequency

Cell growth-related proteins

Receptors for cytokines

FLT3 Up rare

C-KIT Up rare

CSFR1 Up rare

Inhibition of receptor activation

C-CBL Down~Loss+ rare(5─25% of CMML)

Cytoplasmic tyrosine kinase

JAK2(V617F)

Up 5%(50% of RARS-T)

RAS signaling N-RAS Up 10%

Growth/cell cycle arrest, apoptosis

inductionTP53 Down~Loss+ 10%

Transcription factorTranscription

factorsRUNX1 Down+ 15─20%

Ribosomal protein Translation RPS14 (haploinsuffi ciency) (100% in 5q-/del5 cases)

Epigenetic regulators

DNA methylation modifi res

TET2 Down~Loss 20─25%

DNMT3A Down~Loss 8%

Histone modifi resEZH2 Down~Loss 6%

ASXL1 Down~Loss 10─20%

Metabolism/epigenetics regulators

TCA cycle enzymes

IDH1 Additional function10%

IDH2 Additional function

Spliceosome proteinsRNA splicing(mutually exclusive)

SF3B1 Up?+75%(MDS with ringed sideroblasts)

7%(MDS without ringed sideroblasts)

SRSF2 Up?+6%(MDS with ringed sideroblasts)

12%(MDS without ringed sideroblasts)

U2AF35 Up?+ 12%(MDS without ringed sideroblasts)

ZRSR2 Down~Lossrare(MDS with ringed sideroblasts)

8%(MDS without ringed sideroblasts)

SF3A1 Down~Loss rare(MDS without ringed sideroblasts)

PRPF40B Down~Loss rare(MDS without ringed sideroblasts)

U2AF65 Down~Loss rare(MDS without ringed sideroblasts)

SF1 Down~Loss rare(MDS without ringed sideroblasts)

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も寄与する可能性があり,他の病態にも寄与する可能性

も否定できない。詳細はなお不明である。いずれにせ

よ,RUNX1変異は予後不良因子である。

(2)-(ii)アポトーシスとリボゾーム機能:RPS14の欠失とその関連

RPS14の異常は,MDSにおけるシークエンス解析で変異が同定されず,ここで取り上げる中では異色であ

る。

RPS14は 5q,症候群における第 5染色体長腕の共通欠失領域に存在する遺伝子で,リボゾーム蛋白(40Sサブユニット構成蛋白)をコードしている。対側アレルの

RPS14には変異が見出されておらず,この点では古典的な腫瘍抑制遺伝子とは異なっている。しかし,さまざ

まな実証実験の結果,RPS14 の機能低下は赤芽球のアポトーシスを誘導することが明らかにされ,RPS14 のヘミ欠失が 5q,症候群における高度の無効造血の主な原因と推察されている25)。先天性赤芽球癆である

Diamond-Blackfan 症候群(DBS)で,様々なリボゾーム蛋白遺伝子に遺伝性変異が見出されていることから

も,赤芽球造血ではリボゾーム機能が特に重要であろう

と推察される。さらに,先天性骨髄不全症候群の一つ

Shwachman-Diamond 症候群(SDS)の 90%以上では,sbds遺伝子に変異が同定される。sbdsがコードする蛋白はリボゾームの 60S サブユニットの成熟や 40S と 60Sの結合に重要な役割を果たすことが知られ,変異体はこ

の機能を障害する26)。SDS では貧血とともに好中球減少々も顕著である27)。以上のように,リボゾーマルの機

能不全が貧血をはじめとする骨髄不全に関与するという

証拠が蓄積している。

5q,症候群の頻度は高くないが,他の染色体異常を伴うケースを含めると,5q,は MDSの 10%で認められる染色体異常である。これらのMDSでは,RPS14の欠失が無効造血に寄与していると推察できる。一方,

MDSにおいて DBSで変異を来しているリボゾーム蛋白遺伝子や sbdsがどの程度の頻度で変異があるかは明らかでない。したがって,5q,や第 5染色体欠失を伴わないMDSにおける無効造血もまたリボゾーム機能低下が関与しているのか,あるいは他の遺伝子異常がより

重要なのか,などは未だ明らかでない。

5q,では RPS14の機能低下により p53が活性化されることが,アポトーシスの亢進の原因の一つと報告され

ている28)。上で述べたように,約 10%の MDS ではTP53 の変異により p53 の機能が喪失し,それが MDSクローンの拡大に寄与していると予想される。その一方

で,MDSの別な面である無効造血に,正常な p53の活性化が関与している可能性があるわけで,MDSの病態

の複雑さを物語っている。

いずれにしても,リボゾームの機能不全は,少なくと

も直接的には細胞の増殖には不利に働いているので,

5q,症候群におけるクローン性増殖は,RPS14以外の第 5染色体長腕上の遺伝子欠失が原因かもしれない。

(3)MDSの病態とエピゲノム制御分子の異常:TET2,DNMT3A,EZH2,ASXL1,IDH1/2変異近年の大規模シークエンスの結果,MDSを含む様々

な造血器腫瘍において,いくつかのエピゲノム制御蛋白

の遺伝子異常が高頻度で生じていることが明らかになっ

た。エピゲノム制御機構とは,クロマチン修飾による遺

伝子発現制御機構であり,DNAメチル化修飾と,ヒストンの修飾(メチル化,アセチル化,ユビキチン化など)

を指すことが多い。一つのエピゲノム制御分子は,多数

のゲノム領域を標的にすると考えられる。必然的に,そ

の異常はMDSの複数の病態に関わると推察される。TET2 は,メチル化シトシン(mC)のメチル基に酸

素を付加し,ヒドロキシメチル化シトシン(hmC)に変換する酵素(ジオキシゲナーゼ)である。TET2遺伝子の機能喪失型変異は MDS の 20∼25%で同定され,MDS におけるもっとも頻度の高い遺伝子変異である29, 30)。mC から hmC に変換されると,さらに非修飾シトシン(C)に変換される,すなわち脱メチル化するプロセスが促進される(Fig. 3)。したがって TET2変異により DNAの脱メチル化が障害されることが推察されている。遺伝子欠損マウスの解析などから,TET2は造血幹細胞の自己複製を亢進することが示唆されており,

MDS発症の比較的早期のクローン拡大に寄与しているのかもしれない。

Cから mCへの変換を触媒する DNAメチル化酵素をコードする DNMT3Aにも MDSの 8%で変異が見いだされている31)。DNMT3A変異の多くは,メチル化酵素機能の喪失を導き,DNAのメチル化が障害されると考えられる。

TET2の変異と DNMT3Aの変異はそれぞれ,DNAの脱メチル化とメチル化を障害すると考えられ相反するよ

うに見える。しかし,DNAメチル化の意義は,メチル化修飾を受ける領域やシークエンスで異なっており,ま

た TET2 と DNMT3A の標的も異なると想像されるので,協調的にMDSの病態形成に寄与したとしても不思議ではない。

一方ポリコーム複合体は,ヒストンメチル化を制御す

る重要な要素である。この一員であり,H3K27をメチル化する EZH2の機能喪失型変異が,MDSの 6%で認められる32)。EZH2は第 7染色体長腕の共通欠失領域である 7q36 に局在することからも,MDS 発症に抑制的

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な役割を演じていることが推察される。H3K27のメチル化障害は,標的遺伝子発現の抑制ができなくなると考

えられるので,MDS発症を促進する遺伝子が EZH2を含むポリコーム複合体(polycomb repressive complex 2,PRC2)の標的になっているのではないかと想像される。一方,PCR1 の機能制御に関わる ASXL1 の変異も比較的頻度が高く,MDS の 10∼20%で認められる33)。

ASXL1の変異も機能喪失型変異と考えられ,PCR1の機能障害が想定される。

IDH1および IDH2遺伝子の機能獲得型変異は,合わせて MDS の約 5%で検出される34)。IDH1/2 は,TCAサイクルにおいてイソクエン酸を aケトグルタール酸

(aKG)に変換する酵素(isocitrate dehydrogenase)である。グリオーマでは 70%のケースで変異が同定される。IDH1 または IDH2 変異の結果,イソクエン酸がaKGに変換された後,さらに 2-ヒドロキシグルタール酸(2HG)へと変換されてしまう(Fig. 2)35)。aKG はTET2やヒストン修飾に関わるジオキシゲナーゼ群酵素の基質である一方,2HG(実際には異性体の R型 2HG)はこれらのジオキシゲナーゼによる酵素反応を阻害す

る。このため,IDH1/2変異は,TET2変異と同じように DNAの脱メチル化障害をもたらす他,ヒストン修飾にも変化を与えると考えられる。このような考察から,

IDH1/2変異により,腫瘍細胞における代謝とエピゲノム制御をつなぐ機構が破綻するのではないかと推察され

る。

以上述べたように,エピゲノム関連遺伝子の変異は

MDSにおいて高頻度で同定されるものが多い。しかしながら,AMLや悪性リンパ腫など他の造血器腫瘍でも高頻度で認められることから,MDSに特有の病態を形成するのではなく,初期のクローン拡大など,造血器腫

瘍発症の初期のきっかけを与えているのではないか,と

推察される。

(4)MDS特異的な病態と RNAスプライシング経路分子エピゲノム制御分子の異常が造血器腫瘍発症のための

共通の原因になっている可能性が高いのに対し,最近同

定された RNA スプライシング経路の遺伝子異常は,MDSへの特異性が高い。RNAスプライシングは,多数の蛋白が pre-mRNAと

複合体を形成しつつステップを踏んで進む生化学反応で

ある。これらのうち 8つをコードする遺伝子(U2AF35,ZRSR2,SRSF2,SF3A1,SF3B1,PRPF40B,U2AF65,SF1)のいずれかの変異が,多くの MDSで見いだされた36)。

ほとんどのケースで,これら 8つの遺伝子変異は重複していない,すなわち,それぞれの遺伝子変異は相互に排

他的に生じている。

これらの遺伝子変異を合わせると,環状鉄芽球を伴う

MDS(RARSあるいは RCMD-RS;分類の項参照)では85%と特に変異頻度が高い36, 37)。環状鉄芽球を伴わない

MDS でも 44%でいずれかの遺伝子変異が見いだされる。また MDS/MPNに分類される CMMLでは 55%とや は り 変 異 頻 度 が 高 い。ま た,AML withmyelodysplasia-related changesや治療関連 AMLでは変異頻度が高い(約 25%)が,de novo の AML や MPNでは頻度が低い(10%未満)。すなわち,スプライシング経路分子の変異は骨髄系腫瘍の中でも特にMDSやこれに関連する AMLに特異性が高い。さらに,RARSなどの環状鉄芽球を伴うMDSで変異

が認められる遺伝子のほとんどが SF3B1である(逆に,環状鉄芽球を伴うMDSの 75%で SF3B1の変異が認められる)36, 37)。一方,環状鉄芽球を伴わない MDS における SF3B1 の変異頻度は 6.5%と著明に異なる。これは,遺伝子変異とMDSの分類との間にはじめて明確な関連が示されたことも意味している。

以上述べたように,スプライソゾーム遺伝子の変異は

MDS に特異性が高いことから,MDS 特異的な病態形成に重要であることを物語るが,具体的に Fig. 1に示してあるどの病態に関わっているのかは現在のところ不明

である。さらに,SF3B1変異はMDSの中でも環状鉄芽球を伴うサブタイプに特異的に高頻度であることから,

鉄利用障害など,環状鉄芽球が形成されるプロセスに関

与すると推察される。しかし,具体的な分子機構につい

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Fig. 3 Modification of cytosine. DNMT3A transfers a methylgroup to cytosine, converting cytosine to methylcyto-sine (mC). TET2 oxygenates the methyl group ofcytosine, converting mC to hydroxymethylcytosine(hmC). hmC may be important as a specific epigeneticmark for regulation of gene expression. A proportionof hmC is eventually converted to unmodified cytosinethrough two major pathways.

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ては,今後の研究を待たなければならない。

一方,RNA スプライシング経路分子変異の多くは,機能喪失型の変異と考えられており,スプライソゾーム

の機能低下を生じる。スプライソゾームの機能がすでに

低下している細胞では,スプライソゾームの特異的阻害

剤への感受性が高い(synthetic lethality)ことから,創薬の可能性に期待が寄せられている。

5.正常造血抑制の原因となるクローン拡大以外の要素:ストローマ異常とサイトカイン異常

クローン性造血疾患で,非クローン性造血が抑制され

ている,という点では,たとえばMPNもMDSと同様である。しかしMDSでは染色体異常がある場合でもその頻度はまちまちで,正常造血細胞が混在していると予

想されることも多い。そこで,MDSクローンの拡大以外にも,正常造血を抑制する機転があるのではないか,

と推察される38)。

現時点で,MDS患者のゲノム解析で明らかにされた遺伝子異常の中で,直接的に正常造血の抑制を示唆する

候補は同定されていない。しかし,以下の二つの観点は

興味深い。

(1)ストローマ細胞の異常を介する正常造血抑制という機序が推察されている38)。これに関連し,マウスの実験

では興味深い知見が得られている。上記で述べたリボ

ゾーム関連遺伝子である sbdsを,ストローマ細胞の一つである骨芽前駆細胞(osteoprogenitor)特異的に欠失させたマウスは,MDS様の病態を発症し,一部は AMLに進展する39)。すなわち,sbds 遺伝子欠損によるリボゾーム機能不全は造血細胞そのものの障害を引き起こ

す40)のみならず,ストローマにおける異常が正常造血障

害を引き起こすことによって,血球減少に関与する可能

性があることが示唆される。MDS患者において,ストローマ細胞における遺伝子異常の実態は全く明らかに

なっていないが,MDS患者ではストローマ細胞の一部がMDSクローンに由来する可能性も示されていることから38),遺伝子異常がストローマの機能異常を介して,

正常造血を抑制している可能性も推察される。

(2)MDS では,好中球減少に伴う感染の他に,時にSweet病の発症など非感染性炎症を伴う38)。この観点で

は,5q,症候群における第 5染色体長椀の欠失領域に局在している二つの miRNA が興味深い。mir145 とmir146a は正常核型の MDS でも発現が低下しており,マウス骨髄細胞でノックダウンすることにより,5q,症候群における貧血以外の特徴である,血小板増加,顆

粒球減少,巨核球の核分葉不良が認められる41)。この 2つのマイクロ RNAの標的遺伝子としては自然免疫関連遺伝子が多数同定され,mir145や mir146aの発現低下

によって発現が上昇するものが同定されている(特に

TIRAPおよび TRAF6)。MDS患者における炎症サイトカインについては一般化できる報告はないが,正常造血

抑制に何らかの役割を演じている可能性がある。

6.異形成の原因遺伝子候補

「異形成」は MDS の名称の由来である。しかし,未だに一つ一つの異形成の分子機序を説明する知見には乏

しい。マウスモデルでは,これまで述べてきた変異遺伝

子の導入や,ストローマ細胞における遺伝子欠失などに

よって,MDS様の異形成が観察されている24, 39)。異形

成は,核分裂異常,分化障害,アポトーシス関連などに

よってもたらされると推察されるが,より具体的に形態

に変化がもたらされる機序について,知見が積み重ねら

れると期待される。

7.ゲノム異常と病態との関連―まとめ

MDS 患者のゲノム異常,特に遺伝子変異と,MDSの病態との関連を中心に概説した。MDS 病態のうち,クローン拡大については,NRASの変異や TP53の欠失/変異によって一部の MDS患者について説明可能だが,これらはMDSの発症というより疾患後期の AMLへの進展等に関わっていると推察される。一方,初期のク

ローン拡大には,TET2異常が関わる可能性がある。無効造血については,一部のMDS患者について,クローン細胞の RUNX1の変異による分化障害や,RPS14欠失によるアポトーシス亢進が,ある程度説明できる。エピ

ゲノム制御遺伝子の異常は MDSにおいて頻度が高い。TET2以外の遺伝子異常も,初期のクローン拡大など,MDS発症のきっかけに寄与するかもしれない。スプライシング経路の遺伝子異常は,MDS に特異的である。特に SF3B1変異は環状鉄芽球の出現との相関が非常に強く,環状鉄芽球の形成に関連していると推察される。

正常造血抑制と異形成については,遺伝子異常による説

明が未だ難しい。一方,エピゲノム制御分子やスプライ

シング経路は,多数の遺伝子について発現や RNAスプライシングを標的にしいると推察され,これらの標的の

異常を介して,複数の角度からMDSの病態形成に関与していると推察される。

著者の COI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連

して特に申告なし

文 献

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