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自動車産業の生産拠点の現状及び生産拠点の移設に伴う経済波及効果 ~静岡県の浜松市、磐田市を例に~
原田 巧
2011 年 9 月
目次
ページ 1. はじめに 2 2. 日本における自動車産業の生産拠点の現状 3 2‐1. 日本の自動車産業の生産拠点の変移 2‐2. 地方と自動車産業の関係 ~静岡県を例に~
3. 静岡県の産業連関分析 6 3‐1. 産業連関分析による静岡県における自動車産業の経済波及効果の計測 3‐2. 市町村地域産業連関表の作成と市町村レベルでの波及効果の分析 3‐2‐1. 市町村地域産業連関表の作成 3‐2‐2. 生産拠点の移転がもたらす経済波及効果 ~浜松市と磐田市を例に~ 4. おわりに 21 参考文献 22
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1.はじめに 長年、自動車産業は日本の基幹産業の一つである1。しかし、1980 年代に入るとプラザ合
意による円高の影響や日米貿易摩擦の解消を目的に、多くの日本の自動車メーカーが米国
など海外に工場を移設した。また、2000 年代後半には、日本国内販売台数の減少及び海外
販売台数の増加、新興国の自動車産業の飛躍的な成長などを背景に、競争力強化のため、
日本の自動車産業の海外進出が更に強まった。 このように、近年、日本の自動車産業の海外進出が著しい反面、トヨタ自動車発祥の地
である愛知県豊田市やスズキ自動車が本社を置く静岡県を例に見てみれば分かることだが、
自動車メーカーの国内拠点周辺には多くのその企業関連工場が集積している。つまり、自
動車産業は根強く地域と密接に結びついている。 しかし、昨今の円高傾向や 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災を契機に、自動車
メーカーの国内拠点の移転を検討する動きも強まっている。例えば、静岡県に本社を置く
スズキ自動車は東日本大震災の想定以上の被害を受けて、「東海地震」のリスクを考慮して
二輪の開発・設計拠点(静岡県磐田市)と本社(浜松市)の二輪エンジン工場を浜松市都
田地区に移設することを決定した2。今後も各自動車産業の国内外の工場移設が予想される。 本稿では早い段階から移設を決定したスズキ自動車の拠点である静岡県のケースを例に、
自動車産業が移転した場合、その地域にどれほどの経済的影響を与えるのかを定量的に検
証する。 本稿の構成は以下の通りである。第 2 章では日本の自動車産業の生産拠点の現状につい
て説明する。第 3 章では、静岡県における自動車産業の影響力について統計データを用い
て考察する。また、静岡県の浜松市、磐田市それぞれの市町村産業連関表の作成について
も論ずる。現在、産業連関表については 1990 年以降、全都道府県で作成されるようになっ
たが、市町村レベルでは政令指定都市(新潟市、浜松市、名古屋市、京都市を除く)、釧路市
(平成 12 年をもって作成終了)、舞鶴市を除くと、産業連関表を作成しているところはほと
んどない3。そのため、第 3 章では分析対象とする静岡県の浜松市、磐田市それぞれの市町
村産業連関表を作成し、それを用いて、特定業種からの波及効果を産業連関分析によって
検証していく。最後に、第 4 章では全体を総括し、自動車産業の移設に伴う問題点を明記
するとともに、その対策について考えていく。
1 本稿では但し書きがない限り、「自動車」にはオートバイやキャタピラーによって走行す
る車両も含まれる。 2 『日本経済新聞』2011 年 7 月 12 日 3 野崎道哉(2009)「市町村地域産業連関表の作成と地域産業構造-先進事例の比較調査研究
-」、中央大学経済研究所『中央大学経済研究所年報』中央大学経済研究所、第 40 号、11月、289‐308 頁
3
2.日本における自動車産業の生産拠点の現状 1980 年代以降、日本国内企業は生産拠点を海外に移転し、現地生産を進めている。その
一方で、全ての生産拠点を海外に移転するのではなく、トヨタをはじめ多くの自動車メー
カーは国内に生産拠点を置き、近隣地域と密接なネットワークを持っている。本節では、
自動車業界における生産拠点の変遷を概観した上で、静岡県を例に地方経済と自動車産業
の関係を考察していく。 2-1.日本の自動車産業の生産拠点の変移 日本車の輸出が開始されたのが 1957 年であり、トヨタ自動車が製造したクラウンが最初
である。当時は戦後間もなく、技術力も乏しかったためクラウンはあまり売れずに、輸出
も失敗に終わった。その後、各自動車メーカーは欧米の自動車を研究し技術力を高めた。
オイルショック以降は、日本の高い技術力や省燃費性、価格の安さが評価され、徐々に世
界中に日本車が輸出されるようになった。 1980 年代に入ると輸出は急拡大を続けたが、プラザ合意による円高や日米間の貿易摩擦
の深刻化を転機に、日本の自動車産業は徐々に海外に工場を移設するようになった。 1990 年代前半は、日本の自動車産業はバブル時の過剰な設備投資の見直しや生産システ
ムの改善などに取り組んでいたことや円高によって収益性が極端に低下していたため、欧
米の自動車メーカーと比べると海外進出で出遅れていた。しかし、1990 年代後半になると
中国政府による産業政策「第 9 次 5 カ年計画」もあって日本自動車産業の中国進出が本格
化した4。また、2006 年にはインド重工業省が産業政策「自動車ミッション 2016」を発表
し、日本自動車産業のインド進出も本格化した5。2008 年以降は、世界金融危機の影響で欧
米諸国の需要は減少したものの、経済発展の著しい新興国への進出が更に進む傾向にある。 以上の事実から、近年、日本自動車産業の進出先の特徴の共通点としては、世界有数の
人口大国であり、同時に急激な経済成長とそれに伴う外貨保有が増大しているなどが挙げ
られ、国内市場のパイの縮小を補うようなかたちで、新興国市場の旺盛な需要を掴もうと
する姿勢が見て取れる。 2-2.地方と自動車産業の関係 ~静岡県を例に~ 海外進出が進む中でも、日本の自動車産業は今なお日本に生産拠点を置き、地方経済と
密接に結びついている。例えば、トヨタ自動車は愛知県豊田市に本社を置き、その周辺地
域には関連工場が集積している。他にも本田技研工業は埼玉県、日産自動車は神奈川県と
4「第 9 次 5 カ年計画」とは、1994 年に中国政府が個人の自動車保有を認め、かつ、50%までは外資の参入を認め、自動車産業を国の基幹産業とすることを目的にしたもの。 5 「自動車ミッション 2016」とは、インドの自動車産業生産規模を 2016 年までに、2006年の 4 倍の約 800 万台にすることを目的にしたもの。
4
いうようにほとんどの自動車産業は地域と深い関係にある。このような集積の合理性につ
いては、空間経済学などにおいても広く論じられるところである。ここでは後の定量分析
で対象となる静岡県に注目していく。 静岡県における自動車産業の県経済におけるプレゼンスを確認しておこう。『平成 22 年
度 静岡県の県民経済計算』によると、自動車産業が含まれる輸送用機械の県内総生産に
占める割合は、リーマンショック以前はサービス業、建設業に次ぐ水準であり、製造業の
中では最も高かった。しかし、リーマンショック後は輸出の落ち込みが著しかった結果、
割合は下がったものの、6.6%(平成 22 年度)と未だに高い構成比を維持している。
静岡県には自動車メーカーとしてはスズキ自動車、ヤマハ発動機の本社がある。スズキ
自動車は図表 1 を見ても分かるように、静岡県に本社・高塚工場、湖西工場、磐田工場、
相良工場、大須賀工場の 5 か所の工場を持つ。2011 年時点での従業者数はそれぞれ本社・
高塚工場 7800 人、湖西工場 2517 人、磐田工場 1451 人、相良工場 1681 人、大須賀工場
450 人である。 それに対して、ヤマハ発動機は図表 2 の通り静岡県に本社工場、浜北工場、磐田南工場、
中瀬工場、森町工場、豊岡工場、袋井工場の 7 か所の工場を持つ6。2010 年時点での従業者
数はそれぞれ本社工場 5276 人、浜北工場 660 人、磐田南工場 975 人、中瀬工場 176 人、
森町工場 174 人、豊岡工場 166 人、袋井工場 322 人である。 他にも本田技研工業の浜松製作所があり、単純計算しても静岡県の従業者数の約 7%もの
人々がスズキ、ヤマハといった自動車メーカーで働いており、関連会社などを含めるとそ
の割合は更に高まる。 しかし、3 月 11 日に発生した東日本大震災によって静岡県における自動車産業の生産拠
点は大きく変わろうとしている。静岡県は長年、東海地震の発生が警戒されており、浜岡
原子力発電所があることや太平洋に面していることから、津波や放射能汚染と言った東日
本大震災と同様もしくはそれ以上の被害が予想されうる。実際、スズキ自動車は今年の 7
月 11 日に東海地震での津波などの被害が想定される磐田市の二輪の開発・設計センターと
浜松市の本社の二輪エンジン工場の2拠点を移設することを発表した。また、ヤマハ発動
機に関しても移設を検討している7。
6 袋井南工場は主に船外機の製造のため除外。 7 『日本経済新聞』2011 年 6 月 24 日
5
図表 1 スズキの主な生産工場
(資料)スズキ株式会社 ホームページより
図表 2 ヤマハ発動機の主な生産工場
(資料)ヤマハ発動機株式会社 ホームページより
6
3.静岡県の産業連関分析 以上で述べてきたように、3 月 11 日に発生した東日本大震災は企業の立地に大きな影響
を与える可能性がある。特に地震やそれに付随する原発被害などが想定される静岡県では、
この問題は地域経済への影響が大きいものとなり深刻である。そこで、本章では県レベル
の産業連関表を使った分析や、市レベルの産業連関表を作成してそれを使った分析を行う
ことで、詳しく自動車産業が地方に与える影響について定量的な考察をしていく。 3-1.産業連関分析による静岡県における自動車産業の経済波及効果の計測 産業連関分析とはアメリカの経済学者ワシリ-・レオンチェフによって考案された経済
構造の把握や経済予測等に用いられる分析手法である。産業連関分析には産業連関表を用
いる。産業連関表とは、一定期間(通常 1 年間)において、財・サービスが各産業部門間でど
のように生産され、販売されたかについて、行列の形で一覧表に取り纏めたものであり、
それを用いることで、ある産業への最終需要が変化した場合、その他の各産業にどれだけ
の生産額の変化もたらすのかというような経済波及効果を計測することが出来る。また、
産業連関分析では雇用の波及効果についても計測することが出来る。 マクロ的に、自動車部門の実体経済に与えるインパクトを測る上で有効なのが、産業連
関表の影響力係数を見ることである。影響力係数とは、産業連関表の逆行列係数表を列(縦)
方向に各部門を合計し、全部門の列和の平均を 1 として係数化したものである。これによ
りある部門に 1 単位の最終需要を与えたときの全部門の生産に及ぼす影響力を知ることが
でき、その係数の値が 1 を越えるほど他の産業に与える影響が強いことを意味している。
実際に『平成17年度 静岡県産業連関表(34部門)』を用いて影響力係数を算出してみると、
自動車産業が含まれる輸送用機械の影響力係数は約 1.06 と他の産業と比べてみても高く、
影響力の強さがうかがい知れる。
産業連関表を使った分析の一番の強みは、波及効果を詳細に分析できる点である。ここ
では、具体的な事例を意識し、自動車産業が含まれる輸送機械部門の生産額が約 3712 億円
減少した場合を考える8。この値は近年の自動車産業の海外移設を考慮し、過去 5 年の静岡
県における輸送機械部門の生産額の平均をもとに、仮にその 30%が抜けた場合の減少分相
当である9。
シミュレーション結果を示した図表 3によると、他の産業は、県 GDP 比で 2.6%に相当す
る約 8990 億円の損失を被ることとなる。誘発額の大きい(大きく影響を受けた)産業は教
育・研究、対事業所サービス、商業であり、この結果から輸送機械部門の生産額減少によ
8 逆行列係数表については、一般的に生産されたものは全て県内で消費されるとは限らない
ため、移輸入や移輸出を考慮した輸入内生モデル[I-(I-M)A]-1を用いる(ここでは I=単位
行列、A=投入係数行列、M=輸入係数行列)。 9 静岡県企画広報部統計利用課(2011)『平成 22 年度静岡県の県民経済』(統計利用課)、7 頁
から算出。
7
って自動車産業の利益が落ち込み、企業間取引が縮小したり、消費需要が低下したり、各
事業所の経費節約がなされるといった影響が反映されていると考えられる。雇用に関して
も 2万 4496 人の減少という結果となり、その約 76%が輸送機械の従業者である。
このように、自動車産業の生産の落ち込みが静岡県経済に大きな影響を与えることが確
認された。
8
図表 3 静岡県の輸送機械の輸出落ち込みによる経済波及効果
最終需要額 生産誘発額 総合効果直接効果 一次波及効果 (直接効果+ 各産業部門の 雇用表より 就業係数 生産誘発の結果
一次波及効果 県内生産額 従業員数 必要な就業者数(百万円) (百万円) (百万円) (百万円) (人) (人)
部門 ① ② ③=①+② ④ ⑤ ⑥=⑤÷④ ⑦=③×⑥1 農林水産業 0 -36 -36 339,677 177,514 0.522596467 -192 鉱業 0 -46 -46 17,041 746 0.043776774 -23 飲食料品 0 -18 -18 2,283,199 76,723 0.033603291 -14 繊維製品 0 -79 -79 122,237 13,335 0.109091355 -95 パルプ・紙・木製品 0 -569 -569 1,220,680 58,875 0.048231314 -276 化学製品 0 -1,090 -1,090 1,165,694 1,794 0.001538997 -27 石油・石炭製品 0 -34 -34 22,443 61,668 2.747760995 -948 窯業・土石製品 0 -804 -804 171,819 7,540 0.043883389 -359 鉄鋼 0 -3,184 -3,184 176,086 4,379 0.02486853 -79
10 非鉄金属 0 -3,173 -3,173 469,828 12,116 0.025788161 -8211 金属製品 0 -1,146 -1,146 456,159 39,249 0.086042367 -9912 一般機械 0 -1,099 -1,099 1,281,200 52,180 0.040727443 -4513 電気機械 0 -2,197 -2,197 1,589,943 56,902 0.035788704 -7914 情報・通信機器 0 -143 -143 676,873 7,897 0.011666886 -215 電子部品 0 -227 -227 220,975 25,360 0.114764114 -2616 輸送機械 -371,210 -446,339 -817,549 4,715,383 107,696 0.02283929 -18,67217 精密機械 0 -80 -80 244,933 10,219 0.041721614 -318 その他の製造工業製品 0 -5,433 -5,433 1,453,179 26,383 0.018155368 -9919 建設 0 -1,296 -1,296 2,114,562 173,602 0.082098326 -10620 電力・ガス・熱供給 0 -2,839 -2,839 603,905 7,921 0.013116301 -3721 水道・廃棄物処理 0 -894 -894 262,945 12,321 0.046857708 -4222 商業 0 -10,169 -10,169 2,235,047 321,392 0.143796529 -1,46223 金融・保険 0 -6,670 -6,670 1,239,276 44,695 0.036065412 -24124 不動産 0 -1,093 -1,093 1,888,237 14,105 0.007469931 -825 運輸 0 -6,563 -6,563 1,589,656 112,437 0.070730397 -46426 情報通信 0 -2,437 -2,437 727,768 33,410 0.045907487 -11227 公務 0 -178 -178 906,951 52,782 0.05819719 -1028 教育・研究 0 -16,663 -16,663 1,302,724 91,547 0.070273519 -1,17129 医療・保健・社会保障・介護 0 -2 -2 1,292,175 152,689 0.118164335 030 その他の公共サービス 0 -238 -238 150,242 16,028 0.106681221 -2531 対事業所サービス 0 -11,507 -11,507 1,358,802 166,679 0.122666143 -1,41132 対個人サービス 0 -125 -125 1,602,652 255,217 0.159246674 -2033 事務用品 0 -404 -404 49,429 0 0 034 分類不明 0 -1,040 -1,040 215,194 2,433 0.011306077 -12
合計 -371,210 -527,815 -899,025 34,166,914 2,197,834 -24,496
就業係数の算出
9
3-2.市町村地域産業連関表の作成と市町村レベルでの波及効果の分析 次に、3 月の東日本大震災とその後の原発問題を契機に意識され始めた広義の地震災害リ
スクに伴う拠点シフトが地域経済に与える影響について考えてみたい。拠点シフトは、静
岡から県外へのシフトの可能性もあり、その場合は(移転に伴う経済構造の変化によって
産業連関表も実際には変化するが)基本的には県レベルの産業連関表を使った分析と考え
方は似たものとなると考えて良い。しかし、先述の通り、今回具体的に出てきた話は静岡
県内での拠点のシフトである。これを分析するには、県レベルの産業連関表では限界があ
ることから、以下では市町村レベルでの表を作成し、それを用いた分析を行う。 3-2-1.市町村地域産業連関表の作成 産業連関表は 1990 年以降、全都道府県で作成されるようになった。しかし、野崎(2009)における「地方自治体における地域産業連関表の整備状況に関するアンケート調査」によ
ると、市町村レベルでは政令指定都市(新潟市、浜松市、名古屋市、京都市を除く)、釧路市
(平成 12 年をもって作成終了)、舞鶴市といった例外を除けば、産業連関表を作成している
市町村はない。産業連関表を一から作り上げるには、多大な費用や労力、時間が必要であ
り、これが制約となっていると考えられる。 ここでは市町村レベルにおける産業連関表の作成およびその応用について、京都府舞鶴
市を事例とした地域産業連関表の簡便な作成法を提唱している本田・中澤(2000)を参考に、
静岡県の浜松市、磐田市の産業連関表を作成する(図表 5、6 参照)。作成手順の概要は以
下の通りであり、図表 4 には作成手順の段階で参考にした資料を示した。 第一に、産業別市内生産額の推計を行う。この推計では、「事業所・企業統計」の産業別
就業者数の静岡県と浜松市、磐田市それぞれの就業者割合を分割指標とし、静岡県産業連
関表の産業別生産額に掛けることによって浜松市、磐田市それぞれの市内生産額を推計す
る。 第二に、投入額(中間投入、粗付加価値)の推計を行う。中間投入に関しては浜松市、磐田
市それぞれの市内生産額に静岡県産業連関表から求めた投入係数を掛けることによって推
計する。粗付加価値についても、同様に浜松市、磐田市それぞれの市内生産額に静岡県産
業連関表から求めた粗付加価値数を掛けることによって推計を行う。 第三に、産出額(中間需要、最終需要)については、中間需要は、投入額の推計値を行(横)に集計して求める。最終需要については、家計外最終消費支出の推計では、先に求められ
た粗付加価値部門の各産業別の家計外消費支出(行和)を、静岡県産業連関表の家計外最終消
費支出の構成比(列ベクトル)で品目別に配分する。民間最終消費支出の推計では、まず静岡
県産業連関表の家計最終消費支出を国勢調査人口の県市割合で人口規模分割する。そして、
県市間の消費格差を考慮するため「全国消費実態調査」の全世帯一人当たりの 1 カ月の支
出額の県市割合で調整を行う。こうして求めた浜松市、磐田市の民間最終消費支出を静岡
県産業連関表の民間最終消費支出の構成比(列ベクトル)で品目別に配分する。一般政府最終
10
消費支出については、浜松、磐田それぞれの市内にある国及び静岡県の決算額から消費的
支出に相当するものを積み上げることによって求める。ただし、公的総資本形成に分類さ
れる投資的支出(民間建設事業費、災害復旧事業費、失業事業費)については、除外する。こ
うして求めた浜松市、磐田市それぞれの一般政府消費支出を静岡県産業連関表の一般政府
消費支出の構成比(列ベクトル)で品目別に配分する10。総固定資本形成(民間)については、
静岡県産業連関表の総固定資本形成(民間)を静岡県民経済計算の県内生産額と「平成 17 年
度しずおかけんの地域経済計算」から得た浜松、磐田市内総生産額の比率で案分する。総
固定資本形成(公的)についても、一般政府消費支出を求める際に除外した投資的支出に相当
するものを積み上げることによって求める。在庫品純増については、「事業所・企業統計」
より求めた公営企業(公務、医療業、下水道業を除く)と民営企業(金融・保険業、不動産業
を除く)の従業者割合を分割指標とする。純輸移出に関しては、市内生産額-(中間需要+家
計外最終消費支出+民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成(民間)+総固
定資本形成(公的)+在庫品純増)によって決定される11。 作成された市町村地域産業連関表(図表 5、6)はその地域の特性を正確に捉えているだ
ろうか。まず、浜松市について見ていきたい。浜松市は「ものづくりのまち」として三大
産業と呼ばれる繊維、楽器、輸送用機器が発達している。作成した浜松市の地域産業連関
表(図表 5)を見ても、輸送用機器の生産額が非常に高く、繊維製品に関しても県内生産額の
約 48%を占めている。磐田市に関しても、ヤマハ発動機やスズキ自動車の工場があるなど
輸送用機器が発達しており、温室メロンや茶、シラスなど農・水産物が有名である。作成
した磐田市の地域産業連関表(図表 6)を見ても、輸送用機器の生産額が非常に高く、農林水
産業、飲食料品に関しても他の市町村に比べて高い。
以上のことから作成した市町村地域産業連関表はその地域の特性も反映していると評価
して差し支えないだろう。
10 ただし、市内にあるすべての国・静岡県の機関の決算額を支出の性質別で判断すること
は極めて困難であり、現段階では過小推計となっている可能性がある。 11 移出・移入に関しては市町村レベルで使用することが出来る統計は存在していない。そ
のため、推計に関して非常に大きな障害となる。
11
図表 4 作成手順の段階で参考にした資料
②投入額③産出額 家計外最終消費支出
一般政府最終消費支出
総固定資本形成(公的) 在庫品純増 純移輸出
総務省 『平成17年度 地方財政統計年報』
静岡県統計調査課 『平成18年度 静岡県の事業所・企業統計調査』静岡県統計調査課 『平成17年度 静岡県産業連関表』静岡県統計調査課 『平成17年度 静岡県産業連関表』
静岡県統計調査課 『平成17年度 静岡県産業連関表』
参考資料
静岡県統計調査課 『平成17年度 静岡県の国勢調査』 民間最終消費支出
統計局 『平成16年度 全国消費実態調査』
①産業別市内生産額
静岡県統計調査課 『平成17年度 静岡県民経済計算』 総固定資本形成(民間)
静岡県統計調査課 『平成17年度 しずおかけんの地域経済計算』総務省 『平成17年度 地方財政統計年報』静岡県統計調査課 『平成18年度 静岡県の事業所・企業統計調査』
12
図表 5 浜松市の産業連関表 単
位:百
万円
0102
0304
0506
0708
0910
1112
1314
1516
1718
1920
34
部門
農林
水産
業鉱
業飲
食料
品繊
維製
品パ
ルプ
・紙・
木製
品化
学製
品石
油・石
炭製
品窯
業・土
石製
品鉄
鋼非
鉄金
属金
属製
品一
般機
械電
気機
械情
報・通
信機
器電
子部
品輸
送機
械精
密機
械そ
の他
の製
造工
業製
品建
設電
力・ガ
ス・
熱供
給
01農
林水
産業
8,33
30
19,3
3880
61,
805
2757
30
50
00
00
10
1,92
558
30
02鉱
業2
20
021
116
14,4
101,
358
757
35
110
00
50
143
3,16
487
103
飲食
料品
4,95
20
20,8
9025
833
310
30
120
00
00
00
00
500
004
繊維
製品
406
1120
314
,163
951
1733
055
3917
413
735
689
012
825
12,
579
471,
000
1,22
712
05パ
ルプ
・紙・木
製品
1,15
15
3,17
553
936
,519
351
1432
785
512
530
477
1,89
340
542
92,
191
266
6,13
820
,765
117
06化
学製
品4,
057
171,
824
7,97
93,
977
4,06
81,
226
652
113
1,42
174
91,
548
3,19
450
21,
164
18,5
1528
325
,293
1,84
251
07石
油・石
炭製
品1,
821
3264
852
572
111
424
,397
381
357
388
271
292
223
3212
22,
990
3231
54,
521
4,14
108
窯業
・土石
製品
800
1,29
642
481
199
681
2,29
121
180
736
11,
338
2,56
315
52,
565
8,67
936
989
323
,973
409
鉄鋼
72
05
615
10
255
20,8
3416
820
,318
18,6
569,
300
485
305
77,6
9653
786
19,
226
010
非鉄
金属
00
253
415
589
012
816
041
,591
6,83
65,
524
15,4
831,
868
2,15
035
,989
943
2,39
52,
876
4511
金属
製品
8251
4,89
044
1,01
317
945
222
112
225
15,
986
7,81
76,
080
953
1,14
916
,343
593
2,56
540
,447
4612
一般
機械
113
00
891
736
6048
212
46,3
074,
437
202
246
16,8
5132
653
92,
772
013
電気
機械
240
20
91
00
06
101
7,48
525
,766
1,73
61,
589
45,0
2064
291
3,32
40
14情
報・通
信機
器0
01
02
20
10
22
124
201,
595
138,
376
119
686
115
電子
部品
00
10
20
00
034
470
5,68
823
,310
23,0
3920
,784
14,2
556,
229
1,21
094
116
輸送
機械
559
00
00
00
00
00
30
00
750,
327
00
00
17精
密機
械16
01
09
00
00
12
1,17
918
910
330
1,02
345
063
450
18そ
の他
の製
造工
業製
品84
921
5,39
11,
224
4,27
145
376
725
148
83,
119
972
4,89
410
,564
3,47
61,
864
64,6
421,
405
33,8
226,
770
640
19建
設37
117
243
188
972
101
889
374
310
530
868
644
934
209
394
1,81
311
474
097
33,
976
20電
力・ガ
ス・熱
供給
592
521,
754
1,13
25,
373
267
2,04
346
91,
442
2,19
61,
711
2,40
82,
332
404
1,41
715
,831
245
3,01
01,
637
2,23
621
水道
・廃棄
物処
理59
1161
933
475
811
817
214
592
181
164
619
382
6819
71,
665
9942
11,
056
493
22商
業3,
327
6010
,772
4,14
89,
872
772
11,7
501,
042
3,01
94,
701
5,15
313
,905
16,7
064,
778
2,81
483
,411
1,87
513
,738
26,5
491,
262
23金
融・保
険1,
835
196
1,69
32,
609
2,52
529
31,
771
662
640
1,86
31,
715
3,68
02,
585
774
758
13,6
3081
14,
584
6,72
92,
279
24不
動産
2413
189
206
346
5420
882
100
158
334
668
738
147
105
1,16
080
525
1,05
853
425
運輸
3,74
882
64,
985
1,76
55,
226
460
9,07
61,
956
1,57
43,
438
3,21
45,
278
5,67
81,
622
1,36
029
,127
678
9,01
124
,407
1,73
426
情報
通信
231
1565
755
783
033
538
022
723
271
71,
174
2,85
03,
623
1,32
871
05,
919
288
1,80
75,
026
1,16
427
公務
00
00
00
00
00
00
00
00
00
00
28教
育・研
究59
31,
153
431
932
1,48
750
271
324
92,
089
859
6,91
018
,756
5,94
56,
899
59,6
812,
156
4,07
152
61,
487
29医
療・保
健・社
会保
障・介
護6
00
00
00
00
00
00
00
00
00
030
その
他の
公共
サー
ビス
264
104
6310
132
9325
4433
123
503
171
110
4651
316
167
390
9431
対事
業所
サー
ビス
916
955,
860
1,60
53,
497
1,02
23,
090
1,30
791
52,
255
3,35
310
,398
11,3
923,
488
3,06
845
,752
1,43
47,
142
33,0
575,
103
32対
個人
サー
ビス
361
2314
253
144
720
1944
5815
1824
64
8221
011
33事
務用
品38
287
5591
914
2430
4911
633
132
910
298
773
3714
814
953
34分
類不
明1,
901
261,
677
257
1,18
751
595
323
542
602
633
2,45
21,
277
209
992,
464
871,
062
4,83
129
535
内生
部門
計35
,508
1,47
587
,726
38,9
5382
,896
10,6
2772
,939
13,3
2331
,672
67,9
3056
,388
152,
389
168,
874
53,8
7950
,643
1,32
7,47
020
,046
123,
831
228,
914
26,6
4936
家計
外消
費支
出(行
)48
112
22,
088
860
2,27
236
81,
635
457
393
1,00
01,
970
3,80
35,
042
1,72
41,
187
11,1
0557
13,
889
6,51
21,
056
37雇
用者
所得
8,10
436
119
,348
14,1
3219
,293
2,03
210
,990
5,44
96,
715
12,6
4631
,063
56,1
6345
,510
10,0
8212
,457
222,
399
8,23
746
,267
148,
872
7,84
938
営業
余剰
20,5
4610
925
,034
784
8,72
41,
315
11,0
842,
018
1,95
11,
927
3,86
211
,148
6,83
01,
490
915
25,6
311,
636
9,13
04,
320
5,81
339
資本
減耗
引当
6,91
115
16,
561
2,12
28,
497
1,14
913
,736
1,85
32,
161
5,30
95,
338
13,7
0415
,210
3,12
53,
198
49,9
401,
870
9,88
222
,286
12,7
02
40間
接税
(除関
税・輸
入品
商品
税)
3,32
514
925
,728
2,26
64,
278
392
50,7
7299
41,
047
2,87
03,
307
4,50
93,
798
1,17
298
424
,470
1,03
35,
671
14,5
144,
476
41(控
除)経
常補
助金
-661
0-4
39-8
-7-1
-258
-2-2
-4-9
-17
-14
-3-4
-77
-3-1
6-1
,380
-212
42粗
付加
価値
部門
計38
,707
892
78,3
2020
,156
43,0
565,
255
87,9
5810
,768
12,2
6523
,747
45,5
3189
,310
76,3
7717
,590
18,7
3733
3,46
813
,343
74,8
2319
5,12
431
,684
43市
内生
産額
74,2
152,
367
166,
046
59,1
0912
5,95
215
,882
160,
897
24,0
9243
,937
91,6
7710
1,91
924
1,69
924
5,25
171
,469
69,3
801,
660,
938
33,3
8919
8,65
442
4,03
858
,333
13
図表 5 浜松市の産業連関表の続き
2122
2324
2526
2728
2930
3132
3334
3536
3738
3940
4142
4344
水道
・廃棄
物処
理商
業金
融・保
険不
動産
運輸
情報
通信
公務
教育
・研究
医療
・保健
・社会
保障
・介護
その
他の
公
共サ
ービ
ス
対事
業所
サー
ビス
対個
人サ
ービ
ス事
務用
品分
類不
明内
生部
門計
家計
外消
費
支出
(列)
民間
消費
支出
一般
政府
消費
支出
市内
総固
定資
本
形成
(公的
)
市内
総固
定資
本
形成
(民間
)在
庫純
増純
輸移
出最
終需
要部
門計
浜松
市生
産額
062
00
130
1028
01,
166
523
5,98
50
040
,456
490
18,0
240
028
638
,041
-23,
082
33,7
5974
,215
00
00
00
23
00
0-6
010
20,7
87-4
3-4
20
0-1
149
9-1
8,82
4-1
8,42
12,
367
075
00
580
4226
93,
678
392
29,8
420
119
60,7
235,
692
140,
796
970
00
62,7
65-1
04,9
0110
5,32
316
6,04
667
1,80
739
87
559
140
377
100
849
599
530
1,14
222
436
830
,141
661
19,7
350
127
0-1
2,14
420
,444
28,9
6859
,109
148
3,67
91,
169
192
3,24
81,
638
319
1,42
21,
394
513
979
1,63
35,
082
619
97,9
2369
92,
521
535
432
34,6
83-1
0,34
628
,029
125,
952
664
57
617
618
612
21,
765
34,1
4366
1,14
91,
915
253
705
119,
635
1,17
313
,845
00
014
,538
-133
,309
-103
,753
15,8
8268
01,
190
113
149
32,1
1715
71,
405
2,02
396
516
349
51,
611
078
984
,178
205
29,9
350
00
-16,
370
62,9
4976
,719
160,
897
130
223
615
131
4369
044
341
463
769
4844
350
,313
152
1,21
90
00
8,88
8-3
6,48
0-2
6,22
124
,092
170
00
174
04
02
034
80
540
160,
051
0-1
750
-64
-217
22,3
84-1
38,0
42-1
16,1
1443
,937
76
00
43
2816
321
582
105
1039
111
7,46
89
563
00
2313
,685
-40,
072
-25,
791
91,6
7731
1,31
716
9769
942
744
2982
5331
456
23
275
93,5
5018
21,
696
15
368
11,7
76-5
,659
8,36
910
1,91
920
43
00
321
530
00
5,40
421
258
20
78,6
3826
463
051
232
,807
42,4
7586
,776
163,
061
241,
699
412
71
377
2528
970
150
1,70
774
091
88,2
7743
614
,936
067
16,
374
21,9
1811
2,63
715
6,97
424
5,25
12
6517
726
1334
914
53
414
340
011
,795
7,81
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,424
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,475
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14
図表 6 磐田市の産業連関表 単
位:百
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部門
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水産
業鉱
業飲
食料
品繊
維製
品パ
ルプ
・紙・木
製品
化学
製品
石油
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製品
窯業
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製品
鉄鋼
非鉄
金属
金属
製品
一般
機械
電気
機械
情報
・通信
機器
電子
部品
輸送
機械
精密
機械
その
他の
製造
工業
製品
建設
電力
・ガス
・熱
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00
00
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05パ
ルプ
・紙・木
製品
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化学
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石製
品22
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属0
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11金
属製
品23
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報・通
信機
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00
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電子
部品
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00
00
00
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00
00
00
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械5
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244
217
018
その
他の
製造
工業
製品
235
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,558
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102
19建
設10
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電力
・ガス
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給16
435
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21水
道・廃
棄物
処理
167
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140
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273
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業92
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融・保
険50
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79
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2,32
588
751
61,
335
12,8
6866
3,01
03,
973
275
26情
報通
信64
1038
215
220
91,
149
203
5533
299
448
1,25
556
642
369
72,
615
2860
481
818
527
公務
00
00
00
00
00
00
00
00
00
00
28教
育・研
究16
267
011
723
45,
100
268
174
3587
132
73,
044
2,93
11,
892
6,77
326
,366
211
1,36
086
236
29医
療・保
健・社
会保
障・介
護2
00
00
10
00
00
00
00
00
00
030
その
他の
公共
サー
ビス
73
6017
2511
050
66
1447
221
2735
4522
72
5664
1531
対事
業所
サー
ビス
253
643,
407
437
879
3,50
61,
651
319
130
941
1,27
84,
580
1,78
01,
110
3,01
220
,212
141
2,38
65,
381
810
32対
個人
サー
ビス
100
134
611
81
18
719
95
1810
90
2734
233
事務
用品
101
5115
2332
86
421
4414
651
3396
341
450
248
34分
類不
明52
618
975
7029
817
631
879
7725
124
11,
080
200
6797
1,08
89
355
786
4735
内生
部門
計9,
823
1,00
051
,000
10,5
9720
,829
36,4
5438
,973
3,25
44,
494
28,3
2921
,488
67,1
2326
,391
17,1
4749
,716
586,
450
1,96
741
,369
37,2
644,
230
36家
計外
消費
支出
(行)
133
831,
214
234
571
1,26
187
311
256
417
751
1,67
578
854
91,
165
4,90
656
1,29
91,
060
168
37雇
用者
所得
2,24
224
511
,248
3,84
44,
848
6,97
15,
872
1,33
195
35,
274
11,8
3724
,738
7,11
23,
209
12,2
2998
,251
808
15,4
5724
,234
1,24
638
営業
余剰
5,68
474
14,5
5421
32,
192
4,51
05,
922
493
277
804
1,47
24,
910
1,06
747
489
811
,323
161
3,05
070
392
339
資本
減耗
引当
1,91
210
23,
814
577
2,13
53,
940
7,34
045
230
72,
214
2,03
46,
036
2,37
799
43,
140
22,0
6218
33,
301
3,62
82,
016
40間
接税
(除関
税・輸
入品
商品
税)
920
101
14,9
5761
71,
075
1,34
627
,129
243
149
1,19
71,
260
1,98
659
437
396
610
,810
101
1,89
42,
363
710
41(控
除)経
常補
助金
-183
-0-2
55-2
-2-2
-138
-0-0
-2-4
-7-2
-1-4
-34
-0-5
-225
-34
42粗
付加
価値
部門
計10
,707
605
45,5
325,
483
10,8
1918
,026
46,9
992,
630
1,74
09,
903
17,3
5139
,339
11,9
365,
598
18,3
9414
7,31
91,
309
24,9
9731
,763
5,02
943
市内
生産
額20
,530
1,60
596
,532
16,0
8031
,648
54,4
8085
,972
5,88
36,
234
38,2
3238
,839
106,
462
38,3
2722
,745
68,1
1073
3,76
93,
276
66,3
6669
,027
9,25
9
15
図表 6 磐田市の産業連関表の続き
2122
2324
2526
2728
2930
3132
3334
3536
3738
3940
4142
4344
水道
・廃棄
物処
理商
業金
融・保
険不
動産
運輸
情報
通信
公務
教育
・研究
医療
・保健
・社会
保
障・介
護
その
他の
公共
サー
ビス
対事
業所
サー
ビス
対個
人サ
ービ
ス事
務用
品分
類不
明内
生部
門計
家計
外消
費支
出
(列)
民間
消費
支出
一般
政府
消費
支出
市内
総固
定資
本
形成
(公的
)
市内
総固
定資
本
形成
(民間
)在
庫純
増純
輸移
出最
終需
要部
門計
磐田
市生
産額
010
00
20
294
182
111
950
00
16,3
3812
54,
158
00
120
783
-994
4,19
220
,530
00
00
00
01
00
00
02
9,09
3-1
1-1
00
0-5
10-7
,473
-7,4
881,
605
012
00
70
991
573
90
4,73
60
2119
,499
1,44
932
,481
170
00
1,29
241
,641
77,0
3396
,532
1828
560
171
881
3413
212
910
618
169
658,
210
168
4,55
30
011
4-2
503,
285
7,87
016
,080
4158
117
723
410
9769
479
217
111
196
259
1,56
410
925
,041
178
582
14
182
714
4,94
66,
606
31,6
4818
31
11
2211
2659
55,
322
1422
930
478
124
47,3
8529
93,
194
00
029
93,
303
7,09
554
,480
188
188
1718
4,05
79
302
681
150
3599
256
013
924
,318
526,
906
00
0-3
3755
,033
61,6
5585
,972
3635
12
20
923
269
992
122
1578
15,3
4739
281
00
018
3-9
,967
-9,4
645,
883
50
00
220
10
00
71
095
57,4
150
-40
0-8
-91
461
-51,
502
-51,
181
6,23
42
10
00
06
550
116
173
6945
,494
213
00
010
282
-7,6
85-7
,261
38,2
329
208
212
882
160
1013
1263
891
4827
,748
4639
10
115
524
210
,255
11,0
9138
,839
561
00
40
110
00
1,07
934
179
031
,024
710
70
6413
,803
874
60,5
8375
,438
106,
462
120
00
101
6224
20
341
120
1630
,502
111
3,44
60
842,
682
451
1,05
27,
825
38,3
271
103
13
175
51
183
50
04,
593
1,98
94,
481
098
1,84
0-5
0110
,244
18,1
5222
,745
04
20
011
123
175
00
412
092
042
,227
528
90
00
8025
,510
25,8
8468
,110
00
00
644
072
33
00
2,40
02
00
335,
408
06,
741
047
3,37
72,
118
386,
079
398,
361
733,
769
191
30
22
281
365
029
140
01,
681
261,
103
036
784
-15
-339
1,59
53,
276
397
909
810
1924
018
689
62,
471
262
331
1,31
244
659
210
365
,471
380
4,03
42
3258
261
6-4
,752
895
66,3
6639
450
216
12,
120
578
6151
894
423
618
152
266
00
10,7
420
00
9,25
223
,302
025
,731
58,2
8669
,027
589
1,57
312
494
806
6538
81,
895
514
2724
01,
125
055
25,8
587
7,07
50
00
0-2
3,68
2-1
6,59
99,
259
883
319
118
1432
452
793
855
480
2281
1,22
80
112
8,31
45
2,59
433
20
00
2,06
94,
999
13,3
1326
81,
182
231
461,
363
9051
11,
824
2,19
323
81,
412
3,01
074
213
896
,779
2,46
755
,129
412
36,
945
728
-86,
130
-20,
735
76,0
4412
43,
980
3,93
82,
627
3,30
815
311
31,
210
562
125
2,21
085
00
5,16
843
,076
014
,545
00
00
-18,
734
-4,1
8838
,889
281,
958
531
220
527
140
3390
024
912
428
063
80
287,
962
080
,910
220
00
-42,
950
37,9
8245
,944
479
4,40
682
810
83,
573
202
1,15
41,
597
757
195
875
1,63
519
642
757
,764
754
18,0
54-3
89
516
254
-31,
454
-11,
905
45,8
5941
93,
116
2,19
278
513
1,10
81,
203
3,09
659
344
84,
351
1,11
90
241
28,6
7133
313
,313
1831
42,
941
-27
-36,
876
-19,
984
8,68
70
00
00
00
00
00
00
1,35
71,
357
083
316
,557
00
015
,571
32,9
6134
,318
322
721
012
611
86
139
80
9528
028
651
,772
09,
177
8,93
20
00
10,4
0628
,514
80,2
870
21
03
10
175
30
02
02
771
748
14,6
8519
,715
00
05,
033
40,1
8040
,951
8843
9912
489
014
547
011
216
40
231,
826
05,
512
00
00
-680
4,83
26,
658
949
4,38
84,
316
775
6,81
690
41,
858
4,51
51,
835
484
4,77
31,
469
034
385
,701
119
5,51
70
165
1,35
80
-38,
885
-31,
725
53,9
753
7612
3134
9422
118
863
2391
728
041
2,42
916
,701
49,8
430
00
0-2
3,39
143
,153
45,5
8225
301
146
973
1768
364
101
2982
960
22,
279
00
00
00
1,25
21,
252
3,53
115
262
117
623
538
419
223
2,18
320
023
350
200
00
11,4
950
320
00
0-3
,597
-3,5
657,
930
5,34
325
,050
13,9
726,
445
24,0
603,
535
9,27
424
,687
16,7
332,
417
21,5
6819
,984
3,53
19,
092
1,24
3,59
025
,998
350,
048
45,7
1410
,221
58,6
148,
257
272,
903
771,
755
2,01
5,34
524
91,
584
1,02
610
575
555
348
996
852
720
31,
099
1,03
20
3825
,998
4,06
831
,464
11,1
281,
113
12,5
981,
986
14,2
8244
,648
19,0
713,
522
18,9
1412
,694
022
741
7,66
61,
288
10,8
197,
869
20,8
552,
540
898
021
62,
119
715,
143
5,88
00
-2,4
6211
4,94
22,
018
4,11
54,
176
15,0
274,
099
1,42
910
,171
9,08
92,
515
412
5,71
53,
576
094
113
1,85
0
636
3,05
61,
730
2,44
91,
970
287
101
774
680
204
1,57
82,
419
095
84,7
68
-290
-45
-1,0
12-5
0-1
63-1
0-9
6-6
94-1
71-4
2-4
0-1
-3,4
697,
970
50,9
9424
,916
39,4
9821
,799
5,15
325
,043
55,6
0024
,218
4,24
132
,407
25,5
980
-1,1
6277
1,75
513
,313
76,0
4438
,889
45,9
4445
,859
8,68
734
,318
80,2
8740
,951
6,65
853
,975
45,5
823,
531
7,93
02,
015,
345
16
3-2-2.生産拠点の移転がもたらす経済波及効果 ~浜松市と磐田市を例に~ 浜松市、磐田市それぞれの産業連関表を使って、静岡県内における自動車産業の生産拠
点の移設を例に経済波及効果についてミクロの視点でシミュレーションを行う。 はじめに磐田市の分析を行う。逆行列係数表については移輸出入を除外した(I-A)-1型
の逆行列を用いる。なぜなら、脚注 11 で記述したように、移出・移入に関しては市町村レ
ベルで使用することができる統計は存在しておらず、本田・中澤(2000)と同様に本稿でもバ
ランス式から移輸出入を決定している故である。そのため、そのまま移輸出入を使用する
と移輸出入の推計結果で域内自給率が大きく変化し、経済波及効果にも大きな影響がでる
恐れがあるため、今回のシミュレーションでは除外する12。 磐田市にはスズキ自動車の他にヤマハ発動機の本社、工場が存在し、2011 年 9 月時点で
移設を決定しているのはスズキ自動車の二輪開発・設計拠点だけだが、二輪技術センター
のみの生産額を知ることは不可能である。そこでヤマハ発動機についても生産拠点の移設
を検討していることから、今回はスズキ自動車及びヤマハ発動機の磐田市内の生産拠点全
てを移設するという条件の下でシミュレーションを行う13。実際、図表 7 のように磐田市は
浜岡原子力発電所の周囲 30km 範囲にあり、東海地震のことを考慮すれば、将来的に移設
する可能性も十分にある。よって、輸送機械の減少分は自動車と自動車部品・同付属品の
県内生産額の合計約 3 兆 1174 億円を静岡県、磐田市の就業者数割合で按分し、約 2917 億
円 9500 万円と想定した14。 シミュレーションの結果(図表 8)によると、磐田市の自動車産業の移設に伴う生産額の損
失は、約 1 兆 2295 億円で、磐田市内の総生産額の約 61%の損失である。雇用に関しても
約 4 万 2000 人の減少で、磐田市内の従業者数の約 46%が失業することになる。生産誘発
額の損失額が大きい部門としては、輸送機械以外では鉄鋼、商業といった自動車産業と深
い関係にある部門が多く、いわゆる産業集積が進んでいる地域故に、移転が地域経済にも
たらす影響が甚大であることが数値的にも明らかとなった。 次に浜松市についてであるが、磐田市と同様に逆行列係数表については、移輸出入を除
外した(I-A)-1型の逆行列を用いる。浜松には磐田からの移転があるため、スズキ自動車
の新工場への投資としての建設部門の増加と移設に伴う自動車産業を含む輸送機械部門の
増加を直接的なインパクトと考える。具体的には、建設部門の増加額については、スズキ
自動車は用地代を含む総投資額が約 500 億円だと発表しており、静岡県のホームページ内
にある企業立地ガイドによるとスズキ自動車が取得した「都田地区工場用地」は分譲価格
で 75 億 8000 万円ということから、地代を引いた約 424 億円と想定した。 移設に伴う輸送機械部門の増加については、本来ならばスズキ自動車が移設を発表して
12 「域内自給率」とは、各産業の需要額に占める輸入額や移入額を控除した割合のこと。 13 『日本経済新聞』2011 年 6 月 24 日 14 県内生産額については『平成 17 年度 静岡県産業連関表』、就業者数については『平成
18 年度 静岡県の事業所・企業統計調査』から算定。
17
いる磐田市の二輪開発・設計拠点の生産額がそのまま浜松市内の輸送機械生産額の増加分
となるが、その額は公表されておらず、どの程度が浜松に移転するかはわからない。そこ
で、便宜的に磐田における輸送機械の生産減少分の半分(約 1458 億円)が、浜松市内の輸
送機械の生産額の増加分と仮定する。 シミュレーションの結果(図表 9)によると、浜松市の新工場の建設及び、自動車産業の移
設に伴う輸送機械部門の生産額の増加は、約 7480 億円の経済効果を生み出し、雇用に関し
ては約 2 万 8700 人の増加が実現する。生産誘発額の大きい部門としては、磐田市と同様に
輸送機械以外では鉄鋼のような自動車産業と深い関係にある部門が多い他、商業のような
卸小売についても移転の恩恵をよくすることがわかり、移転の効果を需要供給の両面から
幅広く享受する構図が見えてくる。 磐田と浜松のシミュレーションの結果、市内総生産額に関しては磐田市で約 1 兆 2295 億
円の損失、浜松市で約 7480 億円の経済効果を生み出すことが分かった。しかし、県全体で
見ると約 4815 億円の損害を生み出すことになる。また、雇用に関しては磐田市で約 4 万
2000 人の減少、浜松市で約 2 万 8700 人の増加ということから県全体で見ると約 1 万 3300人の雇用の減少を意味する。 この結果は、移転の半分が県外と仮定したことが主たる理由ではあるが、県レベルでは
少なからずマイナスの経済的影響(例えば、生産、雇用、税収の低下)を受けること、市
レベルでは移転に伴う経済活動規模に大きな変化が生じ、税収も大きく変わることが予想
される。このように、様々な仮定を置いた上での分析ではあるが、自動車産業の地域経済
への影響がうかがい知れる結果となった。
18
図表 7 浜岡原子力発電所の周辺距離
(資料)静岡総合情報サイト「しずおかふぁいるず」より引用
19
図表 8 磐田市のシミュレーションの結果
最終需要額 生産誘発額 総合効果直接効果 一次波及効果 (直接効果+ 各産業部門の 雇用表より 就業係数 生産誘発の結果
一次波及効果 市内生産額 従業員数 必要な就業者数(百万円) (百万円) (百万円) (百万円) (人) (人)
部門 ① ② ③=①+② ④ ⑤ ⑥=⑤÷④ ⑦=③×⑥1 農林水産業 0 -661 -661 20,530 281 0.013687386 -92 鉱業 0 -1,349 -1,349 1,605 78 0.048588698 -663 飲食料品 0 -342 -342 96,532 2,378 0.024634194 -84 繊維製品 0 -2,317 -2,317 16,080 2,146 0.133458364 -3095 パルプ・紙・木製品 0 -6,503 -6,503 31,648 755 0.023856345 -1556 化学製品 0 -17,155 -17,155 54,480 1,084 0.01989716 -3417 石油・石炭製品 0 -6,613 -6,613 85,972 3,354 0.039012625 -2588 窯業・土石製品 0 -5,389 -5,389 5,883 263 0.04470402 -2419 鉄鋼 0 -54,362 -54,362 6,234 147 0.023579387 -1,282
10 非鉄金属 0 -26,993 -26,993 38,232 852 0.022284751 -60211 金属製品 0 -8,388 -8,388 38,839 2,690 0.069260938 -58112 一般機械 0 -8,509 -8,509 106,462 4,425 0.041564159 -35413 電気機械 0 -17,293 -17,293 38,327 1,043 0.027212925 -47114 情報・通信機器 0 -2,861 -2,861 22,745 394 0.017322196 -5015 電子部品 0 -11,587 -11,587 68,110 1,878 0.027572873 -31916 輸送機械 -291,795 -536,013 -827,808 733,769 17,980 0.02450363 -20,28417 精密機械 0 -493 -493 3,276 109 0.033274406 -1618 その他の製造工業製品 0 -34,214 -34,214 66,366 2,547 0.0383783 -1,31319 建設 0 -4,094 -4,094 69,027 4,010 0.058093017 -23820 電力・ガス・熱供給 0 -12,506 -12,506 9,259 73 0.00788435 -9921 水道・廃棄物処理 0 -2,312 -2,312 13,313 590 0.044316834 -10222 商業 0 -43,693 -43,693 76,044 11,762 0.154673705 -6,75823 金融・保険 0 -20,041 -20,041 38,889 1,086 0.027925983 -56024 不動産 0 -3,463 -3,463 45,944 577 0.012558805 -4325 運輸 0 -24,622 -24,622 45,859 3,594 0.078370659 -1,93026 情報通信 0 -13,492 -13,492 8,687 221 0.025439687 -34327 公務 0 -757 -757 34,318 1,754 0.05111081 -3928 教育・研究 0 -26,789 -26,789 80,287 4,130 0.051440746 -1,37829 医療・保健・社会保障・介護 0 -7 -7 40,951 5,250 0.128202103 -130 その他の公共サービス 0 -663 -663 6,658 879 0.132020341 -8731 対事業所サービス 0 -38,395 -38,395 53,975 5,158 0.09556195 -3,66932 対個人サービス 0 -486 -486 45,582 7,767 0.170395938 -8333 事務用品 0 -933 -933 3,531 0 0 034 分類不明 0 -4,427 -4,427 7,930 509 0.064186652 -284
合計 -291,795 -937 ,718 -1,229 ,513 2,015 ,345 89,764 -42 ,273
就業係数の算出
20
図表 9 浜松市のシミュレーションの結果
最終需要額 生産誘発額 総合効果直接効果 一次波及効果 (直接効果+ 各産業部門の 雇用表より 就業係数 生産誘発の結果
一次波及効果 市内生産額 従業員数 必要な就業者数(百万円) (百万円) (百万円) (百万円) (人) (人)
部門 ① ② ③=①+② ④ ⑤ ⑥=⑤÷④ ⑦=③×⑥1 農林水産業 0 491 491 74,215 1,081 0.014565795 72 鉱業 0 1,308 1,308 2,367 115 0.048588698 643 飲食料品 0 220 220 166,046 6,201 0.037345078 84 繊維製品 0 1,483 1,483 59,109 4,451 0.075301882 1125 パルプ・紙・木製品 0 6,735 6,735 125,952 7,277 0.057776042 3896 化学製品 0 9,678 9,678 15,882 316 0.01989716 1937 石油・石炭製品 0 4,645 4,645 160,897 6,241 0.038788714 1808 窯業・土石製品 0 5,527 5,527 24,092 1,077 0.04470402 2479 鉄鋼 0 31,006 31,006 43,937 1,036 0.023579387 731
10 非鉄金属 0 14,849 14,849 91,677 2,043 0.022284751 33111 金属製品 0 8,762 8,762 101,919 7,059 0.069260938 60712 一般機械 0 4,827 4,827 241,699 10,046 0.041564159 20113 電気機械 0 9,129 9,129 245,251 6,674 0.027212925 24814 情報・通信機器 0 1,518 1,518 71,469 1,238 0.017322196 2615 電子部品 0 6,072 6,072 69,380 1,913 0.027572873 16716 輸送機械 145,898 268,654 414,552 1,660,938 40,699 0.02450363 10,15817 精密機械 0 266 266 33,389 1,111 0.033274406 918 その他の製造工業製品 0 18,923 18,923 198,654 7,624 0.0383783 72619 建設 42,420 44,988 87,408 424,038 24,505 0.057789651 5,05120 電力・ガス・熱供給 0 7,274 7,274 58,333 592 0.010148606 7421 水道・廃棄物処理 0 1,479 1,479 48,275 1,968 0.040766122 6022 商業 0 26,440 26,440 481,452 74,468 0.154673705 4,09023 金融・保険 0 13,019 13,019 256,285 7,157 0.027925983 36424 不動産 0 2,206 2,206 376,310 4,726 0.012558805 2825 運輸 0 16,921 16,921 363,049 17,795 0.049015384 82926 情報通信 0 8,736 8,736 147,270 5,002 0.033964908 29727 公務 0 531 531 159,731 8,164 0.05111081 2728 教育・研究 0 14,035 14,035 238,363 19,873 0.083372997 1,17029 医療・保健・社会保障・介護 0 5 5 262,702 31,102 0.118392855 130 その他の公共サービス 0 433 433 30,889 4,078 0.132020341 5731 対事業所サービス 0 25,611 25,611 270,287 21,553 0.079741215 2,04232 対個人サービス 0 318 318 287,232 48,717 0.169608679 5433 事務用品 0 557 557 11,475 0 0 034 分類不明 0 3,104 3,104 45,021 2,358 0.052375786 163
合計 188,318 559,750 748 ,068 6,847 ,581 378,260 28 ,710
就業係数の算出
21
4.おわりに 本稿では、自動車産業の生産拠点の現状及び地方と自動車産業の関係について静岡県を
例に産業連関分析を行った。その結果、自動車産業は近年海外に進出しており、昨今の急
激な円高によって今後はさらに企業の海外進出が進むことが予想される。しかし、自動車
企業は今なお地方と密接に結びついており、地方経済にも依然として大きな影響力をもっ
ていることが本稿の調べで分かった。また、静岡県は長年「東海地震」の発生が懸念され
ており、今回、3 月 11 日に発生した東日本大震災の被害を目の当たりにして、スズキ自動
車を初め多くの企業が震災リスク回避のための移設を検討し始めたことから、浜松市、磐
田市の自動車産業を例に、移設した場合の経済的影響についても測定した。その結果、移
設先の浜松市に関しては生産額、雇用に関してプラスの影響が出るのに対し、磐田市は生
産額、雇用に関してマイナスの影響が出ることが分かり、県全体見ればマイナスの影響が
出ることが分かった。ただし、留意すべき点は雇用に関しては数値上マイナスの影響が出
たものの、実際にはその影響は限定的と考えられることである。静岡県は比較的交通網が
発達しており、今回スズキ自動車が発表している磐田市から浜松市への生産拠点の移設程
度であれば、通勤も可能であり、雇用への影響はごく軽微と考えられる。 しかし、自動車産業の移設によって、静岡県だけでもシミュレーション上約 4815 億円の
損害を生み出しており、今後も東日本大震災の被害を受け、他の都道府県でも地震のリス
クを考え、生産拠点を移す企業が増加することが予想されることから、日本全体で考えれ
ば大規模な損害となりえる。こうしたリスク分散の動きは確かに地方経済に負の影響を及
ぼすが、1企業の経営判断としては正しいと考えられる。そして、今あるリスクに対して
何らかの対策を打たず、結果、大きな損害を受けた場合を考えれば、長い目で見ると地方
経済にとってプラスの効果も大きい。今回の分析では、このような側面については十分考
慮できていない点に注意が必要である。今後は更に、国・地方が一丸となって産業の移設
に伴う地方経済への影響を緩和させる対策を行う必要性があろう。 例えば、本稿で見てきた磐田市は浜岡原子力発電所の周囲 30km にあることや、太平洋
に面していることから今後予想される「東海地震」を考えると企業の移設は避けては通れ
ない問題である。だからと言って、企業を誘致しようとしても震災リスクによって企業も
敬遠するだろう。そこで、残された工場を人材開発の場として有効活用するのも一つの手
段となる。近年、グローバルビジネスの拡大のため、多くの優秀な人材は海外に派遣され
ていることから国内工場は人手不足である。それに加えて、少子高齢化による若年労働人
口の減少から、今後は質の高い人材づくりが課題となっている。そこで、残された工場を
大規模な人材開発の場として活用すれば、優秀な人材を多数輩出することが可能になる。 また、残された工場を被解雇者の再訓練の場として活用するのも一つの手段となり得る。
2008 年には企業による非正規雇用者の大量解雇が社会問題化したが、その際企業側の責任
についても話題となった。企業も被解雇者の転職や再訓練について政府や地方自治体に任
22
せるのではなく、自らそうした要請や再訓練の場を提供するべきである。特に、静岡県に
関しては外国人労働者が多く、彼らの多くは非正規雇用であるから残された工場をそうい
ったことに再利用するのは企業や被解雇者にとっても有効だと考えられる。地域ごとの特
徴を踏まえた、善後策を考えていくことも地方に課せられた重要な課題と言えよう。 参考文献 ・下川浩一(2009)『自動車産業危機と再生の構造』中央公論新社 ・鈴木修(2009)『俺は、中小企業のおやじ』日本経済新聞出版社 ・清晌一郎(2011)『自動車産業における生産・開発の現地化』社会評論社 ・石原貞夫・劉晨・玉村千治(2009)『Excel でやさしく学ぶ産業連関分析』日本評論社 ・藤川清史(2005)『産業連関分析入門 Excel と VBA でらくらく IO 分析』日本評論社 ・安田秀穂(2008)『自治体の経済波及効果の算出 パソコンでできる産業連関分析』 学陽書房
・静岡県企画広報部統計利用課(2011)『平成 22 年度静岡県県民経済計算』静岡県企画広報
部統計利用課 ・高瀬浩二(2010)「静岡県経済の産業連関分析:実践!地域経済分析」、静岡総合研究機構
『SRI』静岡県地域分析研究会、第 100 号、6 月、32‐35 頁 ・本田豊・中澤純治(2000)「市町村地域産業連関表の作成と応用」、立命館大学経済学会『立
命館経済学』立命館大学人文科学研究所、第 49 号 3 巻、8 月、409‐434 頁
・野崎道哉(2009)「市町村地域産業連関表の作成と地域産業構造--先進事例の比較調査研
究」、中央大学経済研究所『中央大学経済研究所年報』中央大学経済研究所、第 40 号、
11 月、289‐308 頁
・スズキ株式会社ホームページ アクセス日 9 月 11 日 http://www.suzuki.co.jp/
・ヤマハ発動機株式会社ホームページ アクセス日 9 月 11 日 http://www.yamaha-motor.co.jp/
・政府統計の総合窓口(e-Stat) アクセス日 9 月 1 日 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do
・統計センターしずおか アクセス日 9 月 1 日 http://toukei.pref.shizuoka.jp/tokei/index.asp
・静岡県磐田市ホームページ アクセス日 9 月 1 日 http://www.city.iwata.shizuoka.jp/
・静岡県浜松市ホームページ アクセス日 9 月 2 日 http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/
23
・静岡総合情報サイト「しずおかふぁいるず」 アクセス日 9 月 12 日 http://shizuoka.tv/modules/d3pipes/index.php?page=eachpipe&pipe_id=1