超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D...

9
超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二 1. 超高精細 3D プリンティング(マイクロ光造形法) 近年、立体モデルを自在に作製できる 3D プリンター が脚光を浴びている。なかでも、レーザー光によって光 硬化性樹脂を硬化させて 3D モデルを造形する光造形法 は、最も高精度な 3D プリンティング技術として再び注 目を集めている。特に、我々が世界に先駆けて開発して きた、フェムト秒パルスレーザーを用いた2光子マイク ロ光造形[1]を利用すると、サブ 100nm の加工線幅で 3 次 元マイクロ・ナノ構造体を自在に作製できる。また、本 手法では、光硬化性樹脂をさまざまな部位に滴下して造 形することで、曲面状や微細部品の先端などあらゆる場 所に微小構造を付加加工することもできる(図1)。した がって、マイクロ光造形法は、フォトニクス、ラボオン チップ、マイクロマシン、医療デバイスなどさまざまな 分野に応用されている[2]。 2. マイクロ光造形を用いたセラミックス鋳型技術 我々は、マイクロ光造形法の応用分野を飛躍的に拡大 させるために、光造形で作製した 3D 樹脂構造体を鋳型 に用いて、セラミックス構造を作製する 3D 鋳型技術を 提案・開発している[3]。この鋳型技術を用いることで、 3D プリンターの大きな課題である生産性の低さや使用 材料の制限を克服できる。これまでにシリカ微粒子を用 いて透明マイクロ流体回路を作製した[4]。また、紫外レ ーザーを用いた光造形法を利用して、バイオセラミック スを用いた医療用足場(図2)や圧電セラミックスを用 いた振動発電素子も作製している[5,6]。 図 1 2 光子マイクロ光造形による造形例 図 2 圧電セラミックスを用いた発電素子 (a)CAD モデル(b)樹脂型(c)成形体(d)焼結体 3. SIP プロジェクト 現在、我々は、内閣府の SIP プロジェクト「超3D 造 形技術プラットフォームの開発と高付加価値製品の創出」 を推進中である。本プロジェクトでは、(1)空間光変調 技術を駆使した超高速ナノ造形法の開発、(2)光ファイ バーを用いた全方位型造形装置の開発、(3)青色半導体 レーザーを用いた普及型装置(図 3)の開発に加えて、 マイクロ・ナノ光造形法と3D 鋳型技術を駆使して、さま ざまなセラミックス微小デバイスの創製を目指している。 これまで作製が困難であった微小な 3 次元セラミックス 部品は、超精密機械部品、超微小電子部品、医療用足場 など多方面への応用が期待されている。 4. 産学官連携によるオープン・イノベーション 地域企業とのオープン・イノベーションによって高付 加価値製品を創出することを目的として、平成 27 年 10 月に、我々が開発した普及型造形装置を神奈川県産業技 術センターに設置し、企業の方が利用可能な 3D 造形プ ラットフォームを構築した。我々が設立した産学官連携 組織「超3D 造形ものづくりネットワーク[7]」に無料会 員登録していただくことで、本装置を利用可能である。 実際に、これまでにいくつかの企業の方に利用しただい ている。例えば、セラミックス微粒子を混合した新規な 感光性樹脂材料を用いて、3 次元微細形状を作製する共 同研究を行った。また、ナノインプリント技術によって 作製された微細な 2 次元パターン上に、3 次元微細形状 を付加加工する共同研究も行った。今後、この普及型装 置を含む「超 3D 造形技術プラットフォーム」を活用し て、産学官連携によるオープン・イノベーションをさら に推進し、高付加価値製品を創出したいと考えている。 図 3 普及型造形装置による造形例 謝辞 本研究は、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラ ムの支援を受けて行われた。 参考文献 [1] Opt. Lett. 22, 132 (1997). [2] Laser & Photonics Reviews 2, 100 (2008). [3] Jpn. J. Appl. Phys. 48, 06FK01 (2009). [4] SPIE Newsroom (29 November 2012) DOI: 10.1117/2.1201211.004378 [5] Jpn. J. Appl. Phys. 50, 06GL15 (2011). [6] Sensors and Actuators A 200, 31 (2013). [7] http://super-3dfab.ynu.ac.jp 2PM-A01 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Transcript of 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D...

Page 1: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

超高精細3Dプリンティングの開発と応用展開

横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二 1. 超高精細3Dプリンティング(マイクロ光造形法)

近年、立体モデルを自在に作製できる 3D プリンター

が脚光を浴びている。なかでも、レーザー光によって光

硬化性樹脂を硬化させて 3D モデルを造形する光造形法

は、最も高精度な 3D プリンティング技術として再び注

目を集めている。特に、我々が世界に先駆けて開発して

きた、フェムト秒パルスレーザーを用いた2光子マイク

ロ光造形[1]を利用すると、サブ100nmの加工線幅で3次

元マイクロ・ナノ構造体を自在に作製できる。また、本

手法では、光硬化性樹脂をさまざまな部位に滴下して造

形することで、曲面状や微細部品の先端などあらゆる場

所に微小構造を付加加工することもできる(図1)。した

がって、マイクロ光造形法は、フォトニクス、ラボオン

チップ、マイクロマシン、医療デバイスなどさまざまな

分野に応用されている[2]。

2. マイクロ光造形を用いたセラミックス鋳型技術

我々は、マイクロ光造形法の応用分野を飛躍的に拡大

させるために、光造形で作製した 3D 樹脂構造体を鋳型

に用いて、セラミックス構造を作製する 3D 鋳型技術を

提案・開発している[3]。この鋳型技術を用いることで、

3D プリンターの大きな課題である生産性の低さや使用

材料の制限を克服できる。これまでにシリカ微粒子を用

いて透明マイクロ流体回路を作製した[4]。また、紫外レ

ーザーを用いた光造形法を利用して、バイオセラミック

スを用いた医療用足場(図2)や圧電セラミックスを用

いた振動発電素子も作製している[5,6]。

図1 2光子マイクロ光造形による造形例

図2 圧電セラミックスを用いた発電素子

(a)CADモデル(b)樹脂型(c)成形体(d)焼結体

3. SIPプロジェクト

現在、我々は、内閣府の SIP プロジェクト「超3D 造

形技術プラットフォームの開発と高付加価値製品の創出」

を推進中である。本プロジェクトでは、(1)空間光変調

技術を駆使した超高速ナノ造形法の開発、(2)光ファイ

バーを用いた全方位型造形装置の開発、(3)青色半導体

レーザーを用いた普及型装置(図 3)の開発に加えて、

マイクロ・ナノ光造形法と3D鋳型技術を駆使して、さま

ざまなセラミックス微小デバイスの創製を目指している。

これまで作製が困難であった微小な3次元セラミックス

部品は、超精密機械部品、超微小電子部品、医療用足場

など多方面への応用が期待されている。

4. 産学官連携によるオープン・イノベーション

地域企業とのオープン・イノベーションによって高付

加価値製品を創出することを目的として、平成 27 年 10

月に、我々が開発した普及型造形装置を神奈川県産業技

術センターに設置し、企業の方が利用可能な 3D 造形プ

ラットフォームを構築した。我々が設立した産学官連携

組織「超3D造形ものづくりネットワーク[7]」に無料会

員登録していただくことで、本装置を利用可能である。

実際に、これまでにいくつかの企業の方に利用しただい

ている。例えば、セラミックス微粒子を混合した新規な

感光性樹脂材料を用いて、3 次元微細形状を作製する共

同研究を行った。また、ナノインプリント技術によって

作製された微細な 2 次元パターン上に、3 次元微細形状

を付加加工する共同研究も行った。今後、この普及型装

置を含む「超 3D 造形技術プラットフォーム」を活用し

て、産学官連携によるオープン・イノベーションをさら

に推進し、高付加価値製品を創出したいと考えている。

図3 普及型造形装置による造形例

謝辞

本研究は、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラ

ムの支援を受けて行われた。

参考文献 [1] Opt. Lett. 22, 132 (1997). [2] Laser & Photonics Reviews 2, 100 (2008). [3] Jpn. J. Appl. Phys. 48, 06FK01 (2009). [4] SPIE Newsroom (29 November 2012) DOI: 10.1117/2.1201211.004378 [5] Jpn. J. Appl. Phys. 50, 06GL15 (2011). [6] Sensors and Actuators A 200, 31 (2013). [7] http://super-3dfab.ynu.ac.jp

2PM-A01 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 2: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

3DSystemsが提案するこれからのものづくりスタイル

株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン ソフトウェア事業部

並木 隆生

熱狂的な“3Dプリンタブーム”は去った。しかしそれは、3Dプリンタが魔法の箱ではないことが認知さ

れたに過ぎない。Additive Manufacturing は新たな製造手法として、試作用途に留まらず型や最終製品まで

適用の幅を確実に広げている。活用分野も設計から製造、保守、物流まで、ものづくりのプロセス全体に新

たな変革をもたらしつつある。世界が目指す次の産業革命に日本が乗り遅れないためにもブームとともに消

沈することなく、3Dプリンタのメリット・デメリットを理解し、今こそ積極的な取り組みが求められている。

3Dプリントに注目が集まる理由の一つとして、製造業が抱える消費者の要求の変化があげられる。大量消

費社会においては、マスプロダクションによるコスト削減が最重要項目とされ、さらなる効率化を実現する

ためにプロセスのデジタル化が発展し、CAD/CAM が結果として大きな成果を上げた。しかし、一定の生活

水準を満たす現在の日本社会においては、所有欲を向上させるデザインや、オリジナリティ、そして早い買

替需要といった、マスカスタマイゼーション、つまり少量多品種生産に対応するための模索が背景となって

いる。この場合、これまでのワークフローにただ 3D プリンタを導入しただけでは、ある一定の効果は見込

めるものの、本当のイノベーションを生み出すことは難しい。目的を明確にした上で、ツール、プロセス、

そしてユーザの意識改革も重要な要素となってくるだろう。

3Dプリンタはデジタルモデル(データ)をフィジカルモデル(現物)にする装置である。対して、現物を

データにする装置として 3Dスキャナ(デジタイザ)が存在する。当社は 3Dプリントのパイオニアとして業

界を牽引しているだけでなく、3Dスキャニングにも多くの経験と実績をもっている。当社が提案するのは現

物とデータをサイクルするものづくりプロセスである。すべてをデジタル環境で完結させようとすることは

業務全体での効率化にはならず、また感性的なデザインも生まれにくい。3Dプリンタと 3Dスキャナは、デ

ータと現物の往来を手軽にすることで、双方のメリットを活かしたプロセスを実現する。モデルデータと現

物の差異を把握する、現物に加えた変更をデータにフィードバックする、現物にフィットしたデータをデザ

インするなど、限られた開発期間の中でこのサイクルをより多く繰り返せるような環境が求められている。

そして、製造手法についても決してすべてのケースにおいて 3D プリンタが最適だとは考えていない。当

社は CAM ソフトウェアの開発を行うことで、切削造形にも取り組んでいる。デジタルかフィジカルか、も

しくは切削か積層か、といった勝ち負けで捕えるのではなく、これらを効率的に融合したハイブリッドなプ

ロセスを構築すること、技術を一方的に押し売りすることなく、様々なテクノロジーとノウハウによりユー

ザの視点に立って最適なソリューションを提案すること、それこそが当社の目指すものづくりの未来である。

2PM-A02 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 3: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

3Dプリンターを前提としたものづくりとは?

株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン 3Dプリンター事業本部 事業本部長 宇野 博 1. はじめに 当社 3D Systemsは米国サウス・カロライナに本社のある 3Dプリンタ(”積層造形”=Additive Manufacturing)

の総合メーカーである。創業者のチャック・ハルは、1984年に世界初の積層造形となる「光造形技術」の特許を申請、1987年に世界初の光造形装置SLA™-1を商用化。現在 3Dプリンタの標準ファイル形式であるSTLもその時に開発されオープンソース化された。3Dプリンタにはオールマイティな技術はなく、積層する方式と利用する材料によって適用範囲が異なる。当社では 7つの造形技術 1. PJP (Plastic Jet Printing 熱溶解積層法)、2. FTI (Film Transfer Imagingフィルム転写法)、3. MJP (MultiJet Printing マルチジェット法)、4. CJP (Color Jet Printing カラージェット法)、5. SLA (Stereolithography 光造形法)、6. SLS ( Selective Laser Sintering 粉末焼結法)、7. DMP (Direct Metal Printing 金属造形法) をベースに、10万円台~1億円以上までの価格帯で製品ラインアップを展開している。

3Dプリンターの機種選定「完璧な1台」ではなく「最適な1台」を

100万 1,000万 3,000万 5,000万 1億~

2. 3Dプリンターを前提としたものづくり

近年 3Dプリンターは急速に普及し、ある意味市民権を得たかのように思われる。だが実際は有効活用しているケースと眠っているケースがある。ではその差は一体何なのでしょうか? ものづくりのための形状加工、成型加工に完

璧な手法は存在しない。種々の手法から、現状で最適なものを選択して組み合わせていくのがものづくり工程である。

3Dプリンターもその一手法にすぎない。種々の加工法との棲み分けをきちんと考えて、それぞれの加工法の最適化を図っていかなければならない。その選択過程において 3Dプリンターが最適であれば、新しいものづくりに寄与するであろう。ここでは決して万能なマシンではない 3Dプリンターの特徴を知り、3Dプリンターを前提としたものづくりについて説明します。

3Dプリンターによる生産性向上代表的な3つの効果

・設計変更の最小化による 強力なコスト削減効果

・開発期間短縮による 市場投入スピードの加速

・付加価値のある製品による 新規ビジネスの拡大

生産性向上のための運用「カネ」を生むツールにするための3つのポイント

・適用範囲の拡大・オペレーションの最適化・設計の最適化 

2PM-A03 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 4: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

生産現場での3Dプリンターの活用

~3Dプリンター活用による大型プリンターの生産改革~ 株式会社 リコー ○坂木 泰三、丸田 和弥 新規事業推進センター AM事業室

リコーは、3D プリンターを活用した製品開発を推進してきたが、3D プリンターの性能向上に伴い、RP(Rapid

Prototyping)からRT(Rapid Tooling:型、治具の製作)・RM(Rapid Manufacturing:部品、製品の生産)への活用を

目指して社内での開発を進めている。 一方で、コピー・プリンターのアナログからデジタル化等の製品の変化に合わせて生産改革を絶えず進めてきた。

最近の国内生産は、海外工場との分業により大型・高付加価値製品の少量生産が中心となり、これに対応する新たな

生産改革が求められてきた。 以上の背景から、3DプリンターによるRT、具体的には、治具製作をトリガーとして生産ラインを革新する生産改

革を実現したので、ご紹介する。 1.3Dプリンターの用途の変化

3D プリンターの発明は、1980 年に遡り、80 年代後半

に製品として登場した。ただ、使える材料の制約や性能

の未熟さから、形状やデザイン確認の簡易試作がもっぱ

らの用途であった。しかし、最近の材料や性能の進化か

ら機能試作にも活用が可能になり、リコーも製品開発の

品質・効率の向上を狙いとして、積極的な活用を進めて

きた。さらに、用途は、試作の領域を超えて、RT・RMに

広がり始めている。

2.国内生産の課題

リコーの主力商品であるコピー・プリンターは、1970

年代からグローバルに生産を展開している。各地域での

生産は、時代とともに変化し、最近では、生産の地域ご

との分担を大まかに言うと、アジアでは小型機の大量生

産、欧米では中型機の中量生産、国内では大型機の少量

生産となっている。

図1 大型プリンター

生産する製品の品種、生産量に対応して絶えず適した

生産方式を追求し生産改革を進めてきたが、大型・高付

加価値製品の少量生産をする国内では、以下に示す課題

に対応するためにさらなる改革の必要性を感じていた。

①品質

大型機は、1日の生産量が数台から20台程度であるた

め、作業者一人あたりの組立部品点数が多く、さらに類

似部品も存在し、組立ミスを起こす可能性が大きい。ま

た、工程や作業者の変更により、品質を維持するまでの

習熟期間の増大も避けられない。このような環境下での

品質を維持する対策が求められる。

②効率

作業効率だけでなく、総ロット数が少ないために治工

具に対する投資効率も悪化するため、治具数の削減など

有効な対策が求められる。

③生産量変動への対応

受注生産の比率が高く、生産量変動に応じて工程変更

が容易な柔軟なラインが求められる。

3.3Dプリンターによる治具製作

加工方法による形状の制約を受けないという 3D プリ

ンターの特長を生かして、治具製作に取り組んだ。

①組立てミスの低減・習熟期間の短縮に対しては、

・見て分かりやすい(治具を見て作業が連想できる)

・ミスをすると作業ができない(フールプルーフ)

②治具数の削減に対しては、

・複数治具の一体化

③工程の変更に掛かる工数低減に対しては、

・軽量化による脱着容易化

以上を行い、効果を上げた。

4.生産ラインの改革

3Dプリンターによる治具製作は、材質を金属から樹脂

に変えた効果もあり、大幅な軽量化を実現できた。軽量

化により、従来は頑丈な作業台に治具を固定して作業を

行っていたが、移動可能な台車での組立が可能になった。

この結果、生産ライン構成をフレキシブルに構築可能と

なり、生産変動への対応が柔軟にできるようになった。

5.結論

3Dプリンターを用いた治具製作により、国内生産の課

題である、品質や生産効率改善に貢献するとともに、事

具の軽量化をトリガーとして、生産変動に対して柔軟に

対応できる生産ラインを構築できた。

6.謝辞

この度の活動は、生産を担当しているリコーインダス

トリー株式会社の方々に献身的なご協力を得たことで、

実現した。心より感謝を申し上げる。

2PM-A04 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 5: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

図 1 受講者・講師で造形物を見ながら

3Dプリンティングの可能性を学ぶ

図2 セミナー「3Dプリンティングを巡る

大きな流れ」の様子

3D プリンティング技術の動向と日本 3D プリンティング産業技術協会のご紹介

日本 3D プリンティング産業技術協会 渡邉 好夫

1. はじめに

すでに 3D プリンターという言葉は広く知られるよう

になってきた。この技術は、もとは 30 年以上も前に

Rapid Prototyping (高速試作:以下RPと略す) 技術とし

て世の中に登場したものであるが、近年の技術の向上と

市場の広がりとあいまって、Rapid Tooling(型・治具: RT)

からさらには、Rapid Manufacturing(製品製造: RM)の

段階に進みつつある。

2. 国内外の状況

世界の 3D プリンティング関連の産業は、毎年 20~

30%の成長をみせており、2020 年には 2 兆円前後にな

ると思われる。また、その活用形態も、RMの比率が年々

高まっている。これに対して、日本の成長率はそれより

は低く、このままではますます世界との差が広がってい

きそうである。

そのような日本においても、RTの領域では、3Dプリ

ンティングによる治具で生産ライン改革に結びつけた例

や、樹脂の型を短納期で作成し、高機能性製品を圧倒的

な短納期で製造した例など、活用も着実に広がりつつあ

る。また、RMの領域でも、医療、歯科分野を中心に急

速な広がりを見せている。さらには、3D プリンティン

グの特性を生かし、設計者と製造工場を結ぶマーケット

プレイス提供という新しいビジネスも進展しつつある。

最近は 3D プリンティング技術をいかに活用するかに

も注目が集まっている。実際、複雑さをいとわないこの

技術は、従来の加工技術を念頭に置いた設計ではその良

さを引き出しきれない。そのひとつとして、トポロジー

最適化などのシミュレーション技術にも大きな期待がか

けられている。

3. 協会の活動

上記の状況の受け、当協会は、日本の 3D プリンティ

ング技術の発展・普及を目指して、2015年 11月に設立

された。以下、協会の活動について紹介したい。

3.1 教育講座

現在は、導入編と実践編の二つの講座を開催している。

導入編では、3Dプリンターについては初めての技術者・

企画担当者・マネージャを対象に、3D プリンティング

技術の基本とその可能性について学ぶ。20人以下の少人

数で、図1に示したように、実際の造形物を見ながら講

師と議論する場も設けており、たいへん好評な講座とな

っている。

もうひとつは、実践編として、実際に3Dプリンター

導入・活用の中心となる技術者を対象に、技術面に焦点を

当てた講義と、実際の 3Dプリンター(FDM方式)を用い

た実習を行っている。受講者は、協会提供の 3Dデータ、

あるいは、自ら作成した 3D データを造形する。従来の

加工法では不可能なものが目の前で形となる様子を見て、

3Dプリンターの可能性を体感することができる。

3.2 ビジネス・技術に関するセミナー

高度な 3Dプリンターの活用事例や、新しいビジネス

の流れを把握するため、最先端の講師によるセミナーを

開催している。第1回としては、「3Dプリンティングを

巡る大きな流れ」と題打って、海外の最先端情報や、IoT

時代における 3D プリンティングビジネスのあり方につ

いて紹介いただいた。企業の技術者、企画担当者のみな

らず、企業経営陣、大学、国研の研究者にもご参加いた

だき、大いに盛り上がる会となった(図 2参照)。

今後は、3Dプリンターを用いた生産革新やその良さ

を生かす先端設計技術について、また、3D プリンター

がもたらす新しいビジネスについて、さらには海外最新

動向に関するセミナーを開催していく予定である。

4. まとめ

当協会は、これからも日本の 3D プリンティング技術

の発展・普及をめざして活動していく所存である。この

技術を大きく発展させるため、ぜひ多くの方に協会にご

加入いただきたいと考えている。詳細については、以下

のサイトをご参照いただきたい。

http://3dprint.or.jp/

2PM-A05 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 6: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

都産技研における 3D 技術を活用した支援事例について

(地独)東京都立産業技術研究センター ○山内 友貴

1.はじめに

近年の商品開発において,各種3D技術は欠かせないツ

ールになりつつある.その傾向は中小企業にまで浸透し

ているように感じる.それらは開発のプロセスに組み込

まれ,開発の高速化や,低コスト化,高品質化に寄与し

ている.都産技研では,平成18年9月にデザインセンタ

ー(旧本部)を開設し,3D設備による中小企業へのスピー

ディな製品化支援を実施してきた.さらに平成 23 年 10

月,本部移転に伴って開設されたシステムデザインセク

ター(現:3D ものづくりセクター)では,設備を強化し,

連携運用することによって,図1に示すような多角的な

支援体制を確立している.その結果,3D技術を活用した

開発,製品化について多くの事例が確認されている.本

報で特定の中小企業について開発,支援内容を記載する

ことはできないため,実際の事例は発表にて紹介する.

図1 都産技研の3D技術による製品化支援

2.都産技研で運用している3D設備

3D 技術にはそれぞれ目的によって種類が分かれてい

る.ほとんどの場合で単体では完結せず,複数の3D技術

を併用することによって効果を発揮する.ここではそれ

ぞれの種類の役割と都産技研で運用している 3D 技術に

ついて紹介する.

2.1 設計・モデリング

3D 技術の中心となるツールが 3D-CAD である.都産技

研ではSOLIDWORKS(ダッソーシステムズ社)を用い,利用

できる体制を整えている.また定期的に入門者を対象と

した講習会を開催するなど,普及を図っている.

モデリングソフトとして,ボクセルベースのGeomagic

Freefrom(3Dシステムズ社)を導入しており,自由度の高

いSTLデータの編集にも対応可能である.

2.2 測定

測定ツールは,大きく分けて非接触の3Dスキャナ,接

触式の三次元測定器,CTスキャナの3種類があり,それ

ぞれ複数の種類を配備している.3Dデータ取得を目的と

した場合,現状では非接触3Dスキャナへの需要が多い.

非接触の3Dスキャナとして,都産技研では以下に示すパ

ターン投影タイプを運用している.

・COMET 5(Steinbichler社製) 1100万画素

・ATOS III(GOM社製) 800万画素×2

・SmartSCAN-C5(Breuckmann社製) 500万画素 カラー

取得したデータは,目的に応じた3Dソフトによって処

理される.形状の偏差解析であれば,spGauge(アルモニ

コス社),リバースエンジニアリングであれば Geomagic

wrap(3D システムズ社)もしくは spScan(アルモニコス

社)といったように関連するソフトを充実させている.

2.3 試作

試作ツールは都産技研の3D装置のなかでも,最も利用

頻度の高い装置である.特に,積層することで三次元形

状を造形するAdditive Manufacturing(AM)技術を活用し

た試作への需要が多い.都産技研では,その需要の高さ

からさまざまな方式の装置を運用し,目的にあった試作

品製作を支援している.表1に都産技研で運用している

AM装置を紹介する.それぞれの装置は,本部と各支所に

分散的に配置されている.

表1 都産技研で運用中のAM装置

装置名 タイプ 材料

RaFaEl550C 粉末焼結 ナイロン12

RaFaEl300F 粉末焼結 ナイロン11

CONNEX500 インクジェット アクリル系紫

外線硬化樹脂

EDEN350V インクジェット アクリル系紫

外線硬化樹脂

ZPrinter 650 インクジェット 石膏+バインダ

NRM-6000 光造形 エポキシ系紫

外線硬化樹脂

Connex3 インクジェット アクリル系紫

外線硬化樹脂

FORTUS 400mc-L 材料押出 ABS,ULTEM他

ProX300 粉末溶融 ステンレス鋼

3.まとめ

都産技研では,現在更なる3D技術の支援強化のため,

平成28年4月より3Dものづくりセクターを発足させた.

当セクターは,3D技術の駆使による事業化に向けた「プ

ロセスの革新」と,最終的な「プロダクトの革新」によ

る世界に勝つ製品開発への支援を目的としている.

また当セクターでは3D技術の研究,ならびに活用につ

いても積極的に取り組んでいる.都産技研内のみならず,

企業や大学等との共同研究によって新たなシーズの創出

や,既存のニーズに対応することを目指している.

2PM-A06 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 7: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

神奈川県産業技術センターの 3D プリンター設備紹介および支援事例 神奈川県産業技術センター 機械・材料技術部 ○阿部顕一 技術支援推進部 守谷貴絵、佐々知栄子 1. はじめに

産業技術センターでは、 2015 年 12 月より、生活支

援ロボットデザイン支援事業を実施するため、大型の3Dプリンター(図1)を導入した。3Dプリンターの紹介と、

それを活用した新事業によるデザイン開発事例について

報告する。 2. 導入した3Dプリンターの特徴

主な仕様を表1に示す。導入した 3D プリンターはイ

ンクジェット型方式を採用しており、プリントヘッドか

ら噴射した樹脂を、紫外線で硬化させながら積層し、造

形していく。 本機種では、硬度や色が異なる2種類の材料を任意の

配合比で造形できる。材料はアクリル樹脂やゴムに似た

特徴がある。 サポート材は無害のワックスとなっており 60℃で溶

解する。その為、恒温槽・超音波洗浄機で容易に溶解除

去できる。ウォータージェット等でサポート材を機械的

に除去する方法に比べ、造形物の破損は少ない。 3. 3Dプリンターを活用したデザイン開発

生活支援ロボットデザイン支援事業のスキームを図 2に示す。 使ってもらえる製品(売れる製品)の早期商品化を実

現するために、デザインコンセプト作りの初期段階から、

開発企業、デザイン事業者に加え、ユーザーを巻き込ん

だ共創で開発する。商品開発に至るまで、三者を結びつ

けるツールが3Dプリンターである。 このスキームにより、足のリハビリテーション補助機

器の開発は次のように進んだ。 ・デザイン事業者は,開発企業の開発テーマをユーザー

視点で再構築することから始め、開発企業の試作機の検

証により、機構の見直しを行った。 ・デザイン事業者が提案する機構案が適切かどうかを、

手早く検証する必要があるため、3D プリンターにより

造形した試作物(図3)での検証を実施した。 ・商品を必要とするユーザーに対してヒアリング(図4)を実施した。 ・その結果、多くの新たな気付きや、課題を抽出し解決

することができた。

4. おわりに

今後は、3D プリンターを用いた開発実績を積むこと

で、さらなる支援方法を検討していく。外観や機構の確

認に加え、一品生産品や小ロットの製品等として利用す

る可能性について、造形物の物性試験等を通して情報を

収集し検証していく。

図4 ユーザーヒアリング 図3 基本構造

図2 支援スキーム

表1 主な仕様 出力方式 UV硬化型インクジェット造形方式 解像度 HD モード 32 µm,

UHD モード 29µm 造形範囲 550 x 393 x 300 mm 材料 アクリル系樹脂

VisiJet CR-WT - 白(ABSライク)

VisiJet CF-BK - 黒(ゴムライク)

VisiJet CR-CL - 透明(ポリカーボ

ネイトライク)

サポート

材料 VisiJet™S500 Support Material

(ワックス)

図1 3D systems ProJet® 5500X

2PM-A07 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 8: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

レゴブロックによる 3Dブロックプリンティング用配置図の自動生成

横浜国立大学 理工学部機械工学・材料系学科 菊池 遼介

横浜国立大学大学院 工学府システム統合工学専攻 高倉 雅之

横浜国立大学大学院 工学研究院 ○前川 卓

1. はじめに

近年 3D プリンターを用いて複雑な形状の対象物を複

数の材料を用いて造形できるようになった。しかし現状

では樹脂や金属といった材料の種類により造形の方式が

異なるため、材料により機種を選択しなければならい。こ

のデメリットを克服できるのがブロック式の 3D プリン

ターである。あらかじめ作成した複数の材料からなるブ

ロックを組み立てるので、同一の機種で造形物を作成で

きる。

このようなブロック式の 3D プリンターの開発に応用

可能な、複数の色からなる複雑な形状のレゴモデルを生

成する手法[1]が提案された。本研究では、3Dプリンター

が自動的にブロックを組み立てることを想定した、より

強度の高いブロック構造の生成手法を提案する。

2. ブロック配置の最適化

ボクセルモデルに焼きなまし法(Simulated Annealing,

SA)という最適化手法を用いて、表面の形状と色情報を保

ちつつ、内部を空洞にしたレゴモデルを生成する。SAで

は、ブロックの局所的な合併、分割、削除の 3 操作を繰

り返し行いながら、(1)表面からの距離、(2)下方向のブロ

ックとの繋がり、の 2 種類のエネルギーを徐々に小さく

していく。操作を繰り返すごとに、その次の操作が行われ

る確率を小さくすることで徐々に収束し、ブロックの配

置が決定される。

3. 自動組み立てを考慮したブロック構造の構築

3D プリンターがブロックを上から押し付けて組み立

てを行う際に問題となるのが、下層のブロックと接続し

ていない浮遊ブロックである。浮遊ブロックは、上層のブ

ロックとしか接続していないため、上層のブロックが先

に存在しないと組み立てることができない。そこで、SA

により空洞化したモデル内部に、柱と梁からなる門型の

組み立て支援構造を設け、浮遊ブロックを支持して組み

立て可能にすることを考える。

まず、1×2ブロックを積み重ねてできた柱を空洞内に

等間隔に立て、その上に梁となるブロックを水平方向に

渡して門型にする。

次に、この梁から浮遊ブロックを支持するための支柱

を立てる。浮遊ブロックが梁の真上に存在する場合は、そ

のブロックへ直接支柱を伸ばして支持する。浮遊ブロッ

クが梁と梁の間に存在する場合は、そのブロックの両脇

の 2 本の梁から支柱を伸ばし、その支柱をつなぐ新たな

梁を渡して浮遊ブロックを支える。

水平方向の梁として用いるブロックは、1×4、1×6、

1×8等のブロックの中から、モデル内部の空隙率が大き

くなるものを選ぶ。

図 1 に、コウテイペンギンのレゴモデル内部に門型の

構造を設けた様子を示す。赤色のブロックが柱、青色のブ

ロックが梁、他の色のブロックがモデル表面である。

(a) (b)

Fig1. LEGO model of an Emperor penguin. (a) External

appearance. (b) Cross section.

4. 今後の展望

今回提案した方法では、空洞の上部に存在する浮遊ブ

ロックは支持できたが、モデル表面の浮遊ブロックは支

持できなかった。また、組み立ての際に加える押し付け力

によって壊れてしまうような、片持ち梁状の構造が存在

する可能性がある。これらの課題を解決するため、モデル

内部の支持構造の改良と、モデル外部の支柱の生成方法

を検討したい。

また、支持構造の生成をSAで行うなどして、より汎用

的な方法も模索したい。

5. 参考文献

[1] T. Kozaki, H Tadenuma and T. Maekawa.

Automatic generation of LEGO building instructions

from multiple photographic images of real object.

Computer-Aided Design, 70: 13-22, 2016.

2PM-APS05 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

Page 9: 超高精細3D プリンティングの開発と応用展開...超高精細3D プリンティングの開発と応用展開 横浜国立大学大学院 工学研究院 丸尾 昭二

3D CADモデルからブロック玩具を自動組立するロボット

横浜国立大学 杉本 千遥, ○前田 雄介

1. はじめに

3D プリンタは複雑な形状を簡単に表現でき,装置の

低価格化が進んだことで手軽な立体の造形を可能にした.

3D CADモデルから立体を造形できる3Dプリンタ技術

は大きく注目されており,今後も成長していくと考えら

れる.これに対して,レゴのようなブロックパーツを組

み立てることでも様々な形状を表現できるため,ブロッ

ク式の 3Dプリンタも実現可能であるといえる.ブロッ

ク式の 3Dプリンタは,既に作製されたブロックを用い

ているため,異なる製造プロセスから得られるブロック

を用いて複数の材料を組み合わせることができることや,

生成した立体をブロック単位に分解できることから材料

の再利用が容易であるといった利点が考えられる(1).

本発表では3D CADモデルで表現された立体を,ブロ

ック玩具を組み立てることで生成するロボットシステム

を紹介する.これまでに簡単な三次元物体の形状を生成

することに成功している(2).これに加えて本研究では色

付きの立体の生成を実現する.

2. 自動組立システム

2.1 システムの概要

3D CAD モデルからブロック玩具を自動組立し立体

を生成する手順を図1に示す.

図1 自動組立システム

まず初めに,Kozakiらの手法(3)を用いて 3D CADモ

デルをブロックモデルに変換する.次に,ブロックモデ

ルをもとにブロックの組立順を決定する.組立順の決定

には中野らのアルゴリズム(2)を使用し,ブロックの組立

は下の段から順に行う.最後に,決定した組立順のとお

りにロボットでブロック玩具を組み立て,目的の立体を

生成する.CAD モデルからブロックモデルへの変換お

よび,ブロック組立手順は自動で行われる.

2.2 実験環境の概要

自動組立用のブロックとしてカワダ社製のブロック玩

具であるナノブロックを使用している.このナノブロッ

クは,最小単位である1×1のブロックの凸部を除いた寸法

が縦4mm,横4mm,高さ3mm である.本研究では凸部

の数が2×2,1×2,2×1,1×1のブロックを使用している.

実験環境を図2に示す.組立装置として,デンソーウ

ェーブ製の 6 軸マニピュレータ VP-6242-G に TAIYO

製の電動グリッパ ESG1-F2840 を取り付けたものを用

いる.また,組立時の押し込みのしやすさを考慮に入れ,

ブロックの接続部である凸形状部に合わせた形状のチャ

ックを用いる.自動組立はLinux PCによってこれらの

機器を制御することにより,生成された組立計画に基づ

いて行う.ブロックの供給場所として32×20の凸部を持

つカワダ社製のブロックパッドを,さらに,組立を行う

土台として 20×20 の凸部を持つカワダ社製のブロック

プレートを用いる.

図2 実験環境

3. 色付きの立体の自動組立

ブロックモデルに色情報を追加することで,生成する

立体が形状だけでなく色も表現できるようにシステムを

変更した.色付きのモデルでも正しく自動組立できるこ

とを確認するため,実験を行った.実験に使用したのは

図 3(左)のショートケーキの3D CADモデルである.

まず,3D CADモデルをKozakiらの手法(3)によりブ

ロックモデルに変換した.得られたブロックモデルのデ

ータにはブロック玩具の位置と形状の情報しかないため,

色情報を追加した.最後に,色情報を追加したデータを

もとに組立計画を行い,ロボットでブロック玩具の自動

組立を行った.実験の結果,図 3(右)のように色付きの立

体が正しく生成されたことが確認できた.

図3 左:3D CADモデル 右:生成した立体

謝辞

本研究は JSPS 科研費 JP15H03944 の助成を受けたも

のです.

参考文献

(1) D. Hiller, et al.: “Microbricks for

Three-Dimensional Reconfigurable Modular

Microsystems,” J. of Microelectromechanical

Systems, vol. 20, no. 5, pp. 1089–1097, 2011.

(2) 中野 櫻二郎ほか: “ロボットによる 3D CADモデル

からのブロック玩具自動組立のための組立手順生成”,

日本機械学会生産システム部門研究発表講演会2016

講演論文集, pp. 113–114, 2016.

(3) T. Kozaki, et al.: “Automatic Generation of LEGO

Building Instructions from Multiple Photographic

Images of Real Objects,” Computer-Aided Design,

vol. 70, pp. 13–22, 2016.

3DCADモデル ブロックモデル 完成形

Supply Pad

Assembly Pad

6軸マニピュレータ

電動グリッパ

2PM-APS06 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿