路面下空洞の対策について - mlit.go.jp...路面下空洞の対策について...

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路面下空洞の対策について 東北技術事務所 発表責任者 遠藤 雅司 発 表 者 鈴木 敬哲 1. はじめに これまで、路面下空洞調査は空洞発生の有無について重点的に行い、 個々の空洞の原因究明については、補修の時間的制約から、ほとんど 行われてこなかったため、空洞が再発するケースも一部で見受けられ た。 また、地震や豪雨等の後に、多くの箇所で空洞が発見され、陥没事 故も発生するなど、今後も空洞による第三者被害が懸念されている。 本報告は、陥没事故や空洞再発を防止するために検討した結果を報 告するものである。 2. 路面下空洞や陥没防止に対する取り組み ①路面下空洞調査について 路面の陥没を防止するために、平成6年度より、路面下空洞調査を 実施している。 これまで約 330 箇所の空洞を発見し、未然に対策を講じるなど、路 面陥没の防止に取り組んできた。( ※道路管理延長約 2,900km のうち約 570km を 調査(約 20%)) ②路面下に発生した空洞の発生原因について これまで東北地方の直轄国道で発見された空洞を原因毎に分類し、 整理した。 原因は原因不明を含めた6つの空洞発生毎に分類した。 分類した結果、図-1 に示すとおり、原因②、③が各々3割以上 の発生原因となっており、全体でも地下埋設物等に関連する原因が 8 割以上を占めている結果となった。 電磁波レーダ探査車を用いて調査を実施。 取得したレーダ信号を解析して空洞の可能性のある異常信号 を抽出。 【車道部】 【歩道部】 手押式調査車を用い て空洞の可能性のあ る信号を抽出。 空洞 幅約2.5m 空洞 幅約2.5m ※約50km/hで走行しながら非破壊 で空洞の可能性のある信号を抽出。 電磁波レーダ探査車を用いて調査を実施。 取得したレーダ信号を解析して空洞の可能性のある異常信号 を抽出。 【車道部】 【歩道部】 手押式調査車を用い て空洞の可能性のあ る信号を抽出。 空洞 幅約2.5m 空洞 電磁波 レーダ 幅約2.5m 深度約1.5m 一次調査 ※約50km/hで走行しながら非破壊 で空洞の可能性のある信号を抽出。 一次調査により空洞の可能性がある箇所について、位 置や広がり、深さなどの詳細調査を実施。 【位置特定調査】 ハンディ型地中レー ダ装置を用いて位置 と広がりを特定。 【削孔調査】 位置確認後、道路 を削孔し、空洞の 深さを調査。 二次調査(詳細調査) 二次調査結果 空洞深さ 61cm アスコン 30cm

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  • 路面下空洞の対策について

    東北技術事務所 発表責任者 遠藤 雅司 発 表 者 鈴木 敬哲

    1. はじめに これまで、路面下空洞調査は空洞発生の有無について重点的に行い、

    個々の空洞の原因究明については、補修の時間的制約から、ほとんど

    行われてこなかったため、空洞が再発するケースも一部で見受けられ

    た。 また、地震や豪雨等の後に、多くの箇所で空洞が発見され、陥没事

    故も発生するなど、今後も空洞による第三者被害が懸念されている。 本報告は、陥没事故や空洞再発を防止するために検討した結果を報

    告するものである。 2. 路面下空洞や陥没防止に対する取り組み

    ①路面下空洞調査について

    路面の陥没を防止するために、平成6年度より、路面下空洞調査を

    実施している。

    これまで約 330 箇所の空洞を発見し、未然に対策を講じるなど、路

    面陥没の防止に取り組んできた。(※道路管理延長約 2,900km のうち約 570km を

    調査(約 20%))

    ②路面下に発生した空洞の発生原因について

    これまで東北地方の直轄国道で発見された空洞を原因毎に分類し、

    整理した。

    原因は原因不明を含めた6つの空洞発生毎に分類した。

    分類した結果、図-1 に示すとおり、原因②、③が各々3割以上

    の発生原因となっており、全体でも地下埋設物等に関連する原因が

    8 割以上を占めている結果となった。

    電磁波レーダ探査車を用いて調査を実施。取得したレーダ信号を解析して空洞の可能性のある異常信号を抽出。

    【車道部】 【歩道部】

    手押式調査車を用いて空洞の可能性のある信号を抽出。

    空洞

    電磁波レーダ

    幅約2.5m

    深度約1.5m

    空洞

    電磁波レーダ

    幅約2.5m

    深度約1.5m

    一次調査

    ※約50km/hで走行しながら非破壊で空洞の可能性のある信号を抽出。

    電磁波レーダ探査車を用いて調査を実施。取得したレーダ信号を解析して空洞の可能性のある異常信号を抽出。

    【車道部】 【歩道部】

    手押式調査車を用いて空洞の可能性のある信号を抽出。

    空洞

    電磁波レーダ

    幅約2.5m

    深度約1.5m

    空洞

    電磁波レーダ

    幅約2.5m

    深度約1.5m

    一次調査

    ※約50km/hで走行しながら非破壊で空洞の可能性のある信号を抽出。

    一次調査により空洞の可能性がある箇所について、位

    置や広がり、深さなどの詳細調査を実施。

    【位置特定調査】ハンディ型地中レーダ装置を用いて位置と広がりを特定。

    【削孔調査】位置確認後、道路を削孔し、空洞の深さを調査。

    二次調査(詳細調査)

    一次調査により空洞の可能性がある箇所について、位

    置や広がり、深さなどの詳細調査を実施。

    【位置特定調査】ハンディ型地中レーダ装置を用いて位置と広がりを特定。

    【削孔調査】位置確認後、道路を削孔し、空洞の深さを調査。

    二次調査(詳細調査)

    二次調査結果

    空洞深さ 61cm

    アスコン 30cm

  • 8%

    35%

    31%

    14%

    10%

    2%

    原因③

    原因②

    原因①

    原因④

    原因

    ⑤④③②

    原因不明

    ・地盤のゆるみ

    ・地下構造物脇の埋戻し

    開削工法による地下構造物周辺

    地下鉄、共同溝、地下街等施設、地下横断施設など

    構造物躯体

    矢板・H鋼背面のゆるみ

    地盤を崩落させながら上部に移動

    空隙

    圧密沈下

    ■原因③大型地下構造物施工時の地中残置物の影響

    ・地盤のゆるみ

    ・地下構造物脇の埋戻し

    開削工法による地下構造物周辺

    地下鉄、共同溝、地下街等施設、地下横断施設など

    構造物躯体

    矢板・H鋼背面のゆるみ

    地盤を崩落させながら上部に移動

    空隙

    圧密沈下

    ■原因③大型地下構造物施工時の地中残置物の影響

    ■原因①地下埋設物の破損による土砂流出

    本管

    取付管破損

    ソケット部破損

    沈下

    ■原因①地下埋設物の破損による土砂流出

    本管

    取付管破損

    ソケット部破損

    沈下

    ■原因⑤護岸部の土砂吸出し

    土砂吸出し

    ■原因⑤護岸部の土砂吸出し

    土砂吸出し

    雨水等の浸入や地下水の変動

    大型地下構造物、CCBOX特殊部、マンホール周辺、

    構造物躯体

    地盤を崩落さながら上部に移動

    礫・砂礫

    粘土層

    地下水の変動水みち

    ■原因④雨水浸透、地下水の変動による影響雨水等の浸入や地下水の変動

    大型地下構造物、CCBOX特殊部、マンホール周辺、

    構造物躯体

    地盤を崩落さながら上部に移動

    礫・砂礫

    粘土層

    地下水の変動水みち

    ■原因④雨水浸透、地下水の変動による影響

    大型地下構造物、マンホール周辺、境界ブロッ

    ■原因②

    地下埋設物部の地盤のゆるみ

    埋設管周辺でのゆるみ

    空洞形成

    ■原因②

    地下埋設物部の地盤のゆるみ

    埋設管周辺でのゆるみ

    空洞形成

    土砂吸出し

    本管取付管破損

    ソケット部破損

    沈下

    埋設管周辺でのゆるみ

    空洞形成構造物躯体

    矢板・H鋼背面のゆるみ

    地盤を崩落させながら上部に移動

    空隙

    圧密沈下

    構造物躯体

    地盤を崩落さながら上部に移動

    礫・砂礫層

    粘土層

    地下水の変動水みち

    ③路面下空洞の発生原因究明と対策について

    空洞や陥没箇所は一度発生すると、補修後も付近に空洞が再発

    する箇所が見られた。そのため、再発防止の観点から、補修時に

    原因を究明するために有効な試験や埋戻しに適した材料などにつ

    いて検討した。

    (1)注水試験による空洞発生位置の確認

    開削工法により補修する現場では、注水試験において、概ねの

    空洞発生位置・方向を確認することができた。試験方法は、空洞

    箇所の一番低い位置にポリタンク 1 個分(約 20ℓ)の水を付近の路盤等に影響がないように注意して流す方法とした。

    (最大で 100ℓ程度(様子を見ながら 5 回繰り返す))

    (2)ゆるみ厚さの確認(空洞下面部)

    原因究明の一環から実施した、ゆるみ厚さの測定結果から空洞深

    さに関わらず、空洞下面が大きくゆるんでいるケースが多々存在し

    ていることが判明した。(図-2)。方法は舗装版撤去後に空洞を確

    認し、簡易貫入棒(鉄筋等)を挿入して、ゆるみ厚さを測定する。

    空洞箇所以外にゆるみ部分を含めた補修を行うが望ましい。

    水 を 流 す と ・ ・ ・

    水みち

    空 洞 ( 陥 没 ) 箇 所 に ・ ・ ・ 水 が流 れ込 み、空 洞 発 生 の原

    因 位 置 を把 握 。

    図-1 空洞の発生原因分類

    写真-1 注水試験の流れ

  • 空洞ありセルをクリック空洞一覧表参照さらに空洞台帳参照(黄色ハッチングは空洞調査実施区間)

    空洞ありセルをクリック空洞一覧表参照さらに空洞台帳参照(黄色ハッチングは空洞調査実施区間)

    様式5

    空洞調査結果報告書

    路線名

    地先名 距離標・上下

    調査日 走行車線区分

    削孔調査写真

      縦断方向 1.6 m

      横断方向 1.8 m

      深度(地表から) 0.38 m

      深さ 0.24 m

    レーダデータ(位置特定調査)

    空洞概略寸法

    ○○県 ○○市 10K095 上り

    平成24年11月27日 センターラインより第2車線目

    H24異常信号箇所番号 国道○○-No.1

    ○○河川国道事務所 ○○国道維持出張所 国道○○号  現道

    7.1m下り

    上り

    No.1

    歩車道縁石先端より

    歩道ブロックより

    2.3m

    削孔調査箇所

    進行方向

    写真撮影方向

    凡 例

    縦断方向 横断方向

    概略深

    度(m)

    概略深

    度(m)

    位置図

    調査箇所写真

    事務所・出張所

    空洞・要因に関するコメント

    ・ 空洞直下に水道管が埋設されているが、破損や水が噴出した形跡は見られなかった。

    ・ 空洞下部に情報BOX管路があり、埋設土の圧密沈下により空洞が発生したものと推察される。

    開削前状況写真 : コメント( 陥没:0.7*0 .65* H0.35 )

    開削時状況写真

    0.8m3

    補修年月日 補修方法 補修材料 使用量

      H18に○○の占用工事有り 埋設材料 砕石

         有(             ) ・ 無(空洞下の土壌に濡れた後はない)

    補修

    実施

    結果

    周辺工事履歴

    地下水・水みちの有無

    H24.11 .2 開削埋戻 ・ 注入 ・ その他 砕石

    7.1m下り

    上り

    No.1

    歩車道縁石先端より

    歩道ブロックより

    2 .3m

    平面図

    空洞箇所

    横断図

    水みち箇所

    吸出し防止材(不織布)

    図-3 空洞データベースのイメージ

    (3)原因が究明されない場合の対応

    交通開放の制約で緊急に復旧せざるを得ない

    場合や空洞原因が不明確な場合は、埋戻材の細

    粒分が流出することを防ぐ措置(吸出防止材敷

    設)を行うことが望ましい。(写真-2)

    (4)空洞補修箇所の埋戻しの選定及び留意点について

    開削により、空洞箇所を補修する場合は、吸出しなどの防止に

    配慮した、良質な材料(RC-40)を用いることにした。 また、補修後には、以後の道路巡回において確認が出来るよう

    路面マーキングを行うことにした。

    3. 空洞調査結果のデータベース化について 一連の調査・補修結果を日常の維持

    管理に活用できるよう、陥没や空洞に

    関するデータベースを作成した。 作成にあたっては、維持出張所の日

    常業務での活用を念頭に、補足・修正

    等にも容易に対応が可能な市販ソフ

    トをベースとして、過去の空洞調査結

    果や補修結果データとリンクさせた。

    (図-3)

    空洞調査結果

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    H24空洞箇所深

    さ(地

    中) m

    水系埋設物(水路・下水道等)

    非水系埋設物(電線管路等) 埋設物なし

    ゆるみ厚さ

    舗装

    空洞

    発生深度

    23cm

    空洞深さ

    17cm

    ゆるみ厚さ

    95cm

    空 洞 ( 陥 没 ) 補 修 結 果

    【凡例】 ■:発生深度 □:空洞深さ ■:ゆるみ厚さ

    図-2 空洞下面部のゆるみ調査結果

    写真―2 吸出防止材敷設状況

  • 図-4 概要版(道路巡回員用)

    4. 路面管理の手引き(路面下空洞編)(案)の作成について

    これまで、東北地方において

    は路面陥没や路面下空洞に関連

    する調査・補修方法等について、

    統一されていなかった。そのた

    め、本稿の内容や路面陥没、路

    面 下 空 洞 に 関 す る 一 連 の 項 目

    (調査・対策・報告・データ管

    理)を取りまとめた「路面管理

    の手引き(路面下空洞編)(案)」

    を作成している。

    この他、路面陥没が発生した

    場合の対応を統一できるよう、パ

    トロール車に携帯できる概要版

    (A4 版 1 枚)を作成している。(図-4)

    5. 今後に向けて ①空洞発生原因と分析について

    今回、空洞発生要因と傾向を分析した結果、地下埋設物の原因がほ

    とんどであった。今後は、空洞危険箇所を把握する関係からも未実施

    区間の空洞調査を行い、要因と分析を再度、整理する必要がある。

    ②路面下空洞の発生原因究明と対策について

    空洞発生位置への吸出防止材敷設により、埋戻材の細粒分の流出は

    抑制できたと思われるものの、新たな試みのため、敷設箇所の追跡調

    査などにより検証していく必要がある。 ③空洞調査結果のデータベース化について

    データベースについては、今後、地図と連動させ、空洞発生危険箇

    所などが抽出できるように開発して行く予定である。 ④路面管理の手引き(路面下空洞編)(案)について

    手引き(案)については、道路管理者等から意見を頂き、順次、補

    足し、正式な手引きにしていきたいと考えている。

    6. まとめ 今回、検討した内容や取りまとめている手引き(案)が、現場で積

    極的に活用され、路面陥没や空洞再発の防止に少しでも役に立てれば

    と考えている。

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