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国家試験対策学習 ガイダンス 平成30年度入国フィリピン人看護師候補者 受入れ機関(施設)向け就労前説明会 国家試験対策専門家 高橋 ゆかり

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国家試験対策学習ガイダンス

平成30年度入国フィリピン人看護師候補者受入れ機関(施設)向け就労前説明会

国家試験対策専門家

高橋 ゆかり

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第108回看護師国家試験の概要実施時期:平成31年2月17日(日)(8月官報で発表)試験地:北海道、青森県、宮城県、東京都、愛知県、石川県、

大阪府、広島県、香川県、福岡県及び沖縄県

実施方法:マークシートによる試験試験時間:午前・午後各3時間30分(※EPA候補者特別措置時間)受験資格:(7)

経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定に基づき、日本語の語学研修及び看護導入研修を受け、かつ、研修の修了後、病院において看護師の監督の下で国家資格取得を目的として就労している外国人看護師候補者で、厚生労働大臣が(1)から(3)までに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたもの(平成31年3月4日(月曜日)までに厚生労働大臣が(1)から(3)までに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認める見込みの者を含む。)

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試験概要:科目と問題種別①人体の構造と機能 ②疾病の成り立ちと回復の促進

③健康支援と社会保障制度 ④基礎看護学 ⑤成人看護学

⑥老年看護学 ⑦小児看護学 ⑧母性看護学 ⑨精神看護学

⑩在宅看護論 ⑪看護の統合と実践

種別 必修問題 一般問題 状況設定問題

概要 基本的で重要な知識や技能に関する専門基礎・専門分野の出題

疾患から看護ケアまで幅広く出題される

患者の状況に応じて看護過程を展開する応用力や判断力が求められる

配点 1問1点50問 1問1点130問 1問2点60問

基準 8割以上 毎回変動(107回では62.3%)

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第 107回看護師国家試験の結果概要:合格状況

EPA

インドネシア 22(38) 0((0) 0%(0) 194(180) 29(21) 14.9%(11.7)

フィリピン 29(57) 1(0) 3.4%(0) 156(135) 30(29) 19.2%(21.5)

ベトナム 21(17) 7(3) 33.3%(17.6) 19(20) 11(12) 57.9%(60.0)

(EPA計) 72(112) 8(3) 11.1%(2.7) 369(335) 70(62) 19.0%(18.5)

区分H29年度入国者 H26・27・28年度入国者

受験者数 合格者数 合格率 受験者数 合格者数 合格率

( )は前年数

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大前提の確認:EPA看護師候補者とは(受入れパンフレットp.2,23)

EPA又は交換公文に基づき、一定条件を満たす受入れ施設において、研修責任者の監督の下で、日本の看護師国家資格を取得することを目的とした研修を受けながら就労する者

看護師国家資格取得を目的とする事が条件の在留資格

特定活動

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大前提の確認:受入れ機関・施設の要件(受入れパンフレットp.7)

看護師学校養成所の臨地実習受入れ病院と同等の体制が整備されている病院であって、①~⑨の要件を満たすこと

① 受入れ施設において、原則として、看護学生の臨地実習に係る実習指導者(厚生労働省又は都道府県が実施する実習指導者講習会等を受けた者をいう)が配置されていること。

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大前提の確認:研修の要件 (受入れパンフレットp.11)

病院における研修は、以下の①から⑤までの要件を満たしていなければなりません。

① 研修内容は、看護師国家試験の受験に配慮した適切なものとし、これを実施するための看護研修計画が作成されていること。

④ 日本語の継続的な学習、職場への適応促進及び日本の生活習慣習得の機会を設けること。

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大前提の確認:看護師候補者が従事する業務(受入れパンフレットp.23)

看護師候補者は、看護師資格を取得するまでの間は、看護業務に従事することはできません。

受入れの趣旨に鑑み、病院において看護師候補者が従事する業務内容については、できる限りの配慮をお願いします。

できる限り看護師候補者の経験や意向も踏まえた上で、看護師資格の取得に資する業務に従事させるとともに、(中略)

単純なのもからより高度なものとなるように、配慮をお願いします。

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看護導入研修の概要

平成30年版看護師国家試験出題基準に準拠した通訳付き講義

内容

テキスト

研修時間

・過去問題における頻出項目を中心・出題基準領域:必修問題、老年看護学、在宅看護論、

精神看護学、基礎看護学

・翻訳付きテキストは副教材として活用・集合研修仕様オリジナルテキスト(日本語と母国語を連動させた学習用:上下同一内容)

・受験資格に必要な規定時間を、90分1コマで実施(長時間の集中力確保が目的)

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導入研修の反応からみた今後の課題

日本語コンプレックスを取り除く指導:母国語での理解優先

日本語コンプレックス

質問ができない「分からない」と言えない

相談せず自分本位に進める

理解の内容を確認できない

誤った理解のままでいる

「報・連・相」に抵抗感がある

学習意欲が低下

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看護師国家資格取得を目的とした就労環境:学習支援の視点

学習時間

学習環境

学習方法

学習教材

・試験時間(3時間30分)を意識した学習時間の確保

・研修内容や研修方法(講義・自己学習・個別指導等)に合わせた工夫

・看護場面や処置等の見学や演習モデル体験(OJT)を含めた就労の工夫(出題基準を確認し、基礎技術演習)

・頻出項目に絞った効率的学習(学習ガイド参照)・看護専門知識の習得を優先(日本語能力試験の学習は後回し)

・母国語での理解を優先させる看護専門書・基礎教育や日本語教育とは別の国家試験対策専門書

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国家試験を知る:新出題基準・頻出傾向

限られた時間では、学習の優先順位(頻出項目の学習)が最重要

新出題基準 頻出傾向

・出題意図を把握できる・「生活者」の視点、「療養の場の多

様化」に伴う看護サービス・「看護の統合と実践」:複数科目

を含む多重課題・トピックス:労働、再生医療、

薬剤耐性、災害、人権など

・過去問題の出題テーマから8割程度出題されている(頻出項目は学習ガイド参照)

・過去問題のプール制:正答率70%以上の良問活用

・新傾向:長文事例による情報の取捨選択能力を問う出題

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国家試験対策学習の原則

●「要点学習」→「問題演習」の学習順の場合 ●「問題演習」→「解説理解」の学習順の場合

要点A

要点D

要点E

要点C

要点B

要点F

問題1

問題2

問題4

問題5

問題6

問題3

国試問題1

国試問題2

× ×

要点A

要点D

要点E

要点C

要点B

要点F

問題1

問題2

問題4

問題5

問題6

問題3

国試問題1

国試問題2

○ ○

要点学習 解説理解 問題演習 項目クリア

わからない

わかる

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学習計画の立案方法:5クールに分けた計画【前半期(5月~9月):第1~第2クール】

・要点学習を中心に基礎的知識をつける

・正文リストを用いた要点暗記など

【後半期(10月~2月):第3~第5クール】

・問題演習と解説理解を中心とした実践学習

・一般問題 → 状況設定問題 → 必修問題

5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月

第 1クール 第 4クール 第 5クール 第 2クール 第 3クール

学習内容確認と

基礎的専門知識の学習

知識の応用

(状況設定問題)

知識の確認

(一般問題)

基礎的専門知識の定着

必修対策と

知識の統合

要点学習 問題演習→解説理解

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H30年度入国フィリピン人向け効果的な学習方法

導入研修講義テキストの復習

要点学習:2018年度 問題演習:2019年度以降

過去問題(最低5年分)

看護専門知識テスト

集合研修復習テスト

正文リストの暗記

キーワード検索

領域別

模試試験問題

正答率70%以上を優先

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学習指導と学習支援との違い

学習指導(できる:与える) 学習支援(わかる:引き出す)

・合格に必要な知識を定着させる・問題演習により知識の定着を確認

・個別性を配慮した教材(学習内容)の提供

・時間管理(学習時間の確保)

・振り返り(リフレクション)の活用

・対等な立場(評価しない)

・自己の課題を考えさせる・自己の課題の解決策を考えさせる

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効果的な学習指導(与える)のポイント

専任者による学習時間の監督

専任者による個別指導

・学習内容の決定・要点のまとめと暗記・オリジナル問題の演習・得意項目と不得意項目の分析・課題提出と成果確認

・毎日3時間30分の学習時間確保・集中できる環境の整備・学習スケジュールの決定・スケジュールの時間管理・張り付きによる進捗把握

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効果的な学習支援(引き出す)のポイント

振り返り(洞察性強化と

認知修正)

エンパワメント(独立性強化と

見守り)

・強みと弱みを見いだす・弱みを受容する・解決可能な課題を見いだす・実践可能な解決策を見いだす・実践のイメージができる・決意表現できる

・自己の問題と捉えさせる・他者との間に一線を引く・強みを活かすことを理解させる・肯定的フィードバック・成長を信じる・評価をしない

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集団指導(集合研修)と個別指導(施設内指導)との違い

集団指導 個別指導

・集団力動の活用:連帯感の強化

・他者との比較:競争意識の強化

・モチベーションアップ・情報交換と孤独感からの開放

・個人の尊重:マイペース・自己責任の確認:独立性の獲得

・独自性の活用:自己理解の強化

・自己評価による認知:現実検討力の強化

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したい指導・支援とすべき指導・支援

したい指導・支援 すべき指導・支援

・合格後の即戦力を期待する指導・全ての内容を網羅した指導・根拠に基づくアセスメント能力

の指導・看護実践に繋がる指導・主体的な学習姿勢を導く支援

・理想的な臨床看護師の育成・日本人と同レベルの看護師育成

・根拠に基づく国家試験対策・合格に最低限必要な指導・個別性を尊重した指導・共に学ぶ姿勢による指導・対等な立場で寄り添う支援

・国家試験合格可能な指導・就労継続できる支援

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国家試験合格に必要な指導

机上で学ぶ知識 実践で学ぶ知識

・頻出項目のキーワードの確認・正文リストによる重要項目の暗記・対義語を意識した学習・パターン学習(状況設定問題)・過去問題と模試問題の反復練習

・日本人患者の理解(生活背景等)・看護技術(基礎看護学他)の実際・検査/処置/治療等の実際・入院時/退院時の指導・看護過程の展開等の実際

・正否の根拠に固執しない・対象に合わせた学習範囲の決定・学習の優先順位を決定

・臨床と基礎教育との一致を確認・臨地実習を想定したOJT・モチベーションアップへの配慮

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指導者の心得:レディネスを踏まえて

看護専門知識

日本語能力

モチベーション

・「母国では有資格者」であるというプライドを尊重する・「忘れていることが多い」ことに共感する・「全てを理解しなくてよい」という事実を、再認識する・「文化や環境の違いで、理解しにくい」ことに共感する

・「日本語が全て分からないと問題が解けない」は誤認・「母国語での理解」を優先する・「候補者に必要な日本語能力(入国条件)」は備えている・「話す力」「読む力」「書く力」は別物と考える

・「分からないと言わない」のは、「言えない!」のサイン・「絶対に合格する」の暗示を、自分(指導者)にかける・「絶対に合格させねば」と、自分(指導者)を追い込まない・「成人である」ことを言い訳にしない(尊重と放任は異なる!主体性は引き出さないと出ない!)

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ご清聴ありがとうございました