フィリピンの税務実務 -個人所得税の基礎と留意点-フィリピンの税務実務 -個人所得税の基礎と留意点- ... フィリピン ※
配当課税の仕組み2017/11/08 · 額等(注1)(注2)が1,000万円を超えている...
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配当課税の仕組み
上場株式等の配当所得に対しては、20.315%(所得税15.315%・住民税5%)の源泉徴収が行われます(配当所得の収入すべき時期は、配当を支払う法人の株主総会や取締役会などの決議があった日となります。くわしくは 104ページ参照)。 源泉徴収の後、上場株式等の配当所得について確定申告をする場合には、総合課税または申告分離課税のいずれか一方を選択します。確定申告をしない場合には、源泉徴収のみで課税関係が終了する申告不要制度を選択することができます。 ただし、上場株式等の配当所得であっても、大口株主(内国法人の発行済株式数の3%以上を保有している個人株主)が支払いを受けるものについては、課税上は一般株式等の配当所得と同様の扱いとなり、源泉徴収税率は20.42%(所得税のみ)で原則として総合課税となります。◆確定申告する場合 確定申告をする場合、申告する上場株式等の配当所得の全額について、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければならず、申告する上場株式等の配当所得のうちの一部を申告分離課税、残りの部分を総合課税にすることはできません。 総合課税を選択した場合、配当控除
( 105ページ参照)が適用されます。
一方、申告分離課税を選択した場合、上場株式等の譲渡損との損益通算ができますが、配当控除の適用はありません。 一般株式等の配当所得や大口株主が受け取る上場株式等の配当所得について総合課税が適用されている場合でも、上場株式等の配当所得(大口株主の受取配当等を除く)について、申告分離課税を選択することも可能です。◆申告不要を選択した場合 申告不要を選択した場合、源泉徴収のみで課税が終了するため、実質的に源泉分離課税と同じといえます。申告不要の利用に手続きは必要ありません。単にその配当を確定申告しなければよいのです。 申告不要については、銘柄ごと、1回に支払いを受ける配当等の額ごとに選択できます。ただし、源泉徴収ありの特定口座内に受け入れた配当等については、口座ごとに選択します。◆所得税と住民税で異なる課税方式の選択可 なお、上場株式等の配当所得における総合課税・申告分離課税・申告不要制度の3つの課税制度は所得税と住民税でそれぞれ選択することも可能です。 所得税の確定申告書のみを提出した場合、または所得税で申告不要制度を選択し住民税の申告書を提出しなかった場合は、自動的に所得税で選択した課税方式
源泉徴収と課税方法� 上場 一般
■上場株式等の配当所得 �
-34� 非居住者の区分
所得の種類
恒久的施設を有する者 恒久的施設を有しない
者
所得税の源泉徴収※2恒久的施設
帰属所得※1その他の所得
⑭�定期積金の給付補填金等⑮�匿名組合契約等に基づく利益の分配
【源泉徴収の上、総合課税※3】
【源泉分離課税】 15.315%20.42%
⑯その他の国内源泉所得 【総合課税※3】 【総合課税※3】 無※1 �恒久的施設帰属所得(非居住者が恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該恒久的施設が
当該非居住者から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、その恒久的施設が果たす機能等を勘案して、当該恒久的施設に帰せられるべき所得)が、①から⑯の国内源泉所得に重複して該当する場合があります。
※2 �源泉徴収税率のうち一定の所得に係るものについては、軽減又は免除される場合があります。※3 �総合課税の対象とされる所得のうち一定のものについては、申告分離課税又は源泉分離課税の対象
とされる場合があります。※4 上場株式等の配当等の源泉徴収税率は原則15.315%です。※5 �②資産の譲渡により生ずる所得のうち恒久的施設帰属所得に該当する所得以外のものについては、
所得税法令で規定するもののみが課税対象です。
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■一般株式等の配当所得 � 一般株式等の配当所得に対する税金は、20.42%(所得税のみ)の源泉徴収が行われます。一般株式等の配当所得は、所得税について1銘柄あたり1回に受ける配当額が10万円(年1回配当の場合)
以下のときにのみ申告不要を選択できます。住民税の特別徴収は行われず、総合課税となります。所得税において確定申告を行っていない場合には、住民税について申告書の提出が必要となります。
◆配当所得の計算 株式の配当による配当所得の金額は、原則として、その年に受け取った配当金額がそのまま配当所得の金額となります。 ただし、株式を取得するために要した
借入金の利子(譲渡した株式等を取得するために要した借入金の利子は除きます)がある場合には、その借入金の利子のうちその年に元本を有していた期間に対応する金額を控除した額が、配当所得
の金額となります(確定申告する場合)。◆配当所得の収入すべき時期 配当所得の金額は、配当を支払う法人
の株主総会その他正当な権限を有する機関の決議があった日に収入があったものとすることとされています。
配当所得の計算と収入時期� 上場 一般
総合課税の対象となる配当所得(源泉徴収される前の配当金額、負債利子がある場合は負債利子控除後の金額)は、配当金額に応じた税額控除を受けることができます。これを配当控除といいます。申告分離課税・申告不要を選択した上場株式等の配当所得は、配当控除の適用はありません。 配当について源泉徴収された所得税と配当控除額が、納付税額の計算上、控除されます。 配当控除額は、配当所得の12.8%(所得税10%・住民税2.8%。課税総所得金額等(注1)(注2)が1,000万円を超えている
部分は所得税5%・住民税1.4%)です。 例えば、配当所得以外の課税所得金額が930万円の人に150万円の配当所得があるとすると、1,000万円以下の部分に対応する配当所得70万円についてはその12.8%の8.96万円、それを超える部分に対応する配当所得80万円についてはその6.4%の5.12万円、全体で14.08万円を算出税額から差し引くことができます。上場株式等の配当所得について配当控除を受けるために総合課税を選択するか、申告不要を選択するかについては、 次ページのQ&Aをご覧下さい。
総合課税と配当控除� 上場 一般
(注1)�課税総所得金額等が1,000万円を超えるかどうかは、土地・建物等の課税譲渡所得、株式等にかかる課税譲渡所得等、申告分離課税を選択した上場株式等にかかる課税配当所得の金額、先物取引にかかる課税雑所得等の金額を課税総所得金額に加えた合計額によることになります。課税退職所得や
課税山林所得の金額は含まれません。本書では、これらを「課税所得金額」といいます。
(注2)�所得税と住民税では、扶養控除などの人的控除額に差があることから、同じ収入金額でも住民税の方が、通常、課税所得金額は大きくなりますが、ここでは、便宜的に同じ金額として取り扱っています。
が住民税の課税方式とみなされます。 住民税において所得税と異なる課税方式を選択するには、所得税の確定申告書
とは別に住民税の申告書を提出する必要があります(詳しい手続きについては72ページ参照)。
●配当控除額の計算例課税所得金額 1,000万円
所得税 15万円住民税 4.2万円合計 19.2万円
所得税 10%住民税 2.8%
所得税ⓐについて 7万円ⓑについて 4万円住民税ⓐについて 1.96万円ⓑについて 1.12万円 合計 14.08万円
所得税ⓐについて 10%ⓑについて 5%住民税ⓐについて 2.8%ⓑについて 1.4%
所得税 7.5万円住民税 2.1万円 合計 9.6万円
所得税 5%住民税 1.4%
配当控除率 配当控除額
1,000万円以下
配当所得を加えると 1,000万円超
1,000万円超
その他の所得800 万円
配当150 万円
その他の所得930 万円
その他の所得1,050 万円
ⓐ=70 万円ⓑ=80 万円
配当150 万円
配当150 万円
ⓐ ⓑ
●配当所得の課税方式所得区分 所得税の課税方式 住民税の課税方式 備考
上場株式等
大口株主に該当しない場合
・申告不要制度 ・申告分離課税 ・総合課税から納税者が選択
・申告不要制度 ・申告分離課税 ・総合課税から納税者が選択
所得税と住民税で異なる課税方式とすることも可能※2
大口株主(発行済み株式の3%以上保有)に該当し、少額配当※1に該当しない場合
総合課税 総合課税 ―
大口株主かつ少額配当※1に該当する場合
・申告不要制度 ・総合課税から納税者が選択
総合課税所得税のみ申告不要とすることも可能※3
一般株式等
少額配当※1に該当しない場合 総合課税 総合課税 ―
少額配当※1の場合 ・申告不要制度 ・総合課税から納税者が選択
総合課税所得税のみ申告不要とすることも可能※3
※1 少額配当とは、1銘柄1回あたりの配当額が次の基準額以下となる配当所得をいいます。
基準額=10万円×配当の計算期間の月数12 配当の計算期間の月数…�直前の配当に関する基準日の翌日から今回の配当に関する基準日までの月数(12ヵ月
超の場合は12ヵ月とし、1ヵ月未満の場合は1ヵ月とする)※2 �所得税と住民税で異なる課税方式とするには、所得税の確定申告書と住民税の申告書の両方の提出が必要です。
手続きについては 72ページを参照してください。※3 �所得税で申告不要とする場合は、住民税の申告書の提出が必要です。手続きについては 72ページを参照して
ください。
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式上場株式等の配当所得については、総合課税・申告分
離課税・申告不要の選択制になっています。また、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することも可能となっています。 申告分離課税を選択した場合、その年や過年度の上場株式等の譲渡損と損益通算(繰越控除)することができます。 いずれの適用も受けない場合は、上場株式等の配当所得について、総合課税か申告不要のいずれかを選択することが有利になるものと考えられます。所得税と住民税で異なる課税方式を選択することも考慮に入れると、考えうる選択肢は、(A)「両方とも申告不要」、(B)「両方とも総合課税」、(C)「所得税は総合課税で住民税は申告不要」の3つが挙げられます。 ここでは、これら3つの課税方式について、商品別にどの方式が最も税率が低くなるかを検討します。 なお、ここでは単純な税率の比較を紹介しますが、申告不要を選択した配当所得が合計所得金額などに含まれないのに対し、総合課税を選択した配当所得はこれに含まれる点に
も注意が必要です( 120ページ参照)。◆正味税率の比較 配当控除率(表1)を考慮して、商品の類型ごとに課税所得金額別に3つの課税方式による正味税率を試算したものが表2〜表5です。これらをまとめた表が表6になります。 表6を見ると、課税所得金額が330万円以下の場合は、上場株式等となる全ての商品の配当所得について、(C)「所得税は総合課税で住民税は申告不要」を選択すると最も正味税率が低くなります。 他方、課税所得金額が900万円超の場合は、上場株式等となる全ての商品の配当所得について、(A)「両方とも申告不要」を選択することで最も正味税率が低くなります。 悩ましいのが、課税所得金額が330万円超900万円以下の場合です。この場合は、商品類型ごとに、課税方式の有利・不利が変わってきます。配当所得は原則として1銘柄・1回の配当・分配金ごとに申告の有無を選択できますが、源泉徴収ありの特定口座に配当所得を受け入れている場合は、当該配当所得は特定口座単位で申告の有無を選択しなけれ
ばなりません。 なお、所得税で確定申告し総合課税を選択した場合、住民税の申告書を提出しないと自動的に住民税も総合課税となってしまいます。このため、「所得税は総合課税で住民税は
申告不要」という課税方式を選択するには、所得税の確定申告書のほかに、住民税の申告書の提出も必要です。住民税の申告書の提出方法については 72ページを参照してください。
総合課税と申告不要の選択上場株式の配当について、総合課税とすべきか申告不要とすべきか迷っています。どのようにして判断すればよいのでしょうか? また、投資信託やETFの分配金は、上場株式の配当の場合と同じと考えてよいのでしょうか? ●[表1]商品類型ごとの配当控除率
商品類型 商品の種類
配当控除率※1
所得税 住民税Ⅰ 日本株、日本株ETF※2 10% 2.8%
Ⅱ 公募株式投資信託のうち株式以外の割合・外貨建資産の割合がいずれも50%以下のもの 5% 1.4%
Ⅲ 公募株式投資信託のうちⅡ・Ⅳのいずれにも該当しないもの 2.5% 0.7%
Ⅳ 公募株式投資信託のうち株式以外の割合・外貨建資産の割合のいずれかまたは両方が75%超のもの 0% 0%
Ⅴ配当所得を生じさせる上場株式等のうちⅠ〜Ⅳのいずれにも該当しないもの(外国株、REIT 、ETN、国内ETFでⅠ〜Ⅳに該当しないもの、外国ETFなど)
0% 0%
※1 �課税所得金額が1,000万円以下の場合の率です。課税所得金額が1,000万円超の場合はこの半分です。※2 �日本株ETFとは、正確には、「特定株式投資信託のうち特定外貨建等証券投資信託以外のもの」をい
います。 ●[表2]配当所得の課税方式の選択(商品類型Ⅰの場合)
課税所得金額
(A)両方とも申告不要 (B)両方とも総合課税
(C)所得税は総合課税で住民税は申告不要 最も税率
の低い課税方式
所得税・復興特別所得税(①)
住民税(②)
合計(①+②)
所得税(復興特別所得税除く)
復興特別所得税込みの所得税の正味税率(③)
住民税 正味税率の合計(③+④)
正味税率の合計
(③+②)税率 配当控除率
正味税率 税率 配当
控除率正味税率(④)
195万円以下
15.315% 5% 20.315%
5%
10%
0% 0%
10%
2.8% 7.2%
7.2%※1 5%※1
上記(C)の方式
195万円超330万円以下 10% 0% 0% 7.2% 5%
330万円超695万円以下 20% 10% 10.21% 17.41% 15.21%
695万円超900万円以下 23% 13% 13.273% 20.473% 18.273%
900万円超1,000万円以下 33% 23% 23.483% 30.683% 28.483%
上記(A)の方式
1,000万円超1,800万円以下 33%
5%
28% 28.588%
1.4% 8.6%
37.188% 33.588%
1,800万円超4,000万円以下 40% 35% 35.735% 44.335% 40.735%
4,000万円超 45% 40% 40.84% 49.44% 45.84%
※1 配当所得に係る税額から控除し切れない分は、他の所得に係る税額から控除する形となります。※2 配当控除以外の税額控除はないものとして計算しています。※3 0.001%未満の端数が出る場合は四捨五入により0.001%単位で表示しています。
上場 一般
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●[表3]配当所得の課税方式の選択(商品類型Ⅱの場合)
課税所得金額
(A)両方とも申告不要 (B)両方とも総合課税
(C)所得税は総合課税で住民税は申告不要 最も税率
の低い課税方式
所得税・復興特別所得税(①)
住民税(②)
合計(①+②)
所得税(復興特別所得税除く)
復興特別所得税込みの所得税の正味税率(③)
住民税 正味税率の合計(③+④)
正味税率の合計
(③+②)税率 配当�控除率
正味�税率 税率 配当�
控除率正味税率(④)
195万円以下
15.315% 5% 20.315%
5%
5%
0% 0%
10%
1.4% 8.6%
8.6% 5% 上記(C)の方式
195万円超330万円以下 10% 5% 5.105% 13.705% 10.105%
330万円超695万円以下 20% 15% 15.315% 23.915% 20.315% (A)と(C)
が同値695万円超
900万円以下 23% 18% 18.378% 26.978% 23.378%
上記(A)の方式
900万円超1,000万円以下 33% 28% 28.588% 37.188% 33.588%
1,000万円超1,800万円以下 33%
2.5%
30.5% 31.141%
0.7% 9.3%
40.441% 36.141%
1,800万円超4,000万円以下 40% 37.5% 38.288% 47.588% 43.288%
4,000万円超 45% 42.5% 43.393% 52.693% 48.393%
※1 配当控除以外の税額控除はないものとして計算しています。※2 0.001%未満の端数が出る場合は四捨五入により0.001%単位で表示しています。 ●[表4]配当所得の課税方式の選択(商品類型Ⅲの場合)
課税所得金額
(A)両方とも申告不要 (B)両方とも総合課税(C)所得税は総合課税で住民税は申告不要 最も税率
の低い課税方式
所得税・復興特別所得税(①)
住民税(②)
合計(①+②)
所得税(復興特別所得税除く)
復興特別所得税込みの所得税の正味税率(③)
住民税 正味税率の合計(③+④)
正味税率の合計
(③+②)税率 配当�控除率
正味�税率 税率 配当控
除率正味税率(④)
195万円以下
15.315% 5% 20.315%
5%
2.5%
2.5% 2.553%
10%
0.7% 9.3%
11.853% 7.553% 上記(C)の方式
195万円超330万円以下 10% 7.5% 7.658% 16.958% 12.658%
330万円超695万円以下 20% 17.5% 17.868% 27.168% 22.868%
上記(A)の方式
695万円超900万円以下 23% 20.5% 20.931% 30.231% 25.931%
900万円超1,000万円以下 33% 30.5% 31.141% 40.441% 36.141%
1,000万円超1,800万円以下 33%
1.25%
31.75% 32.417%
0.35% 9.65%
42.067% 37.417%
1,800万円超4,000万円以下 40% 38.75% 39.564% 49.214% 44.564%
4,000万円超 45% 43.75% 44.669% 54.319% 49.669%
※1 配当控除以外の税額控除はないものとして計算しています。※2 0.001%未満の端数が出る場合は四捨五入により0.001%単位で表示しています。
●[表5]配当所得の課税方式の選択(商品類型Ⅳ・Ⅴの場合)
課税所得金額
(A)両方とも申告不要 (B)両方とも総合課税(C)所得税は総合課税で住民税は申告不要 最も税率
の低い課税方式
所得税・復興特別所得税(①)
住民税(②)
合計(①+②)
所得税(復興特別所得税除く)
復興特別所得税込みの所得税の正味税率(③)
住民税 正味税率の合計(③+④)
正味税率の合計
(③+②)税率 配当控除率
正味税率 税率 配当�
控除率正味税率(④)
195万円以下
15.315% 5% 20.315%
5%
0%
5% 5.105%
10% 0% 10%
15.105% 10.105% 上記(C)の方式
195万円超330万円以下 10% 10% 10.21% 20.21% 15.21%
330万円超695万円以下 20% 20% 20.42% 30.42% 25.420%
上記(A)の方式
695万円超900万円以下 23% 23% 23.483% 33.483% 28.483%
900万円超1,000万円以下 33% 33% 33.693% 43.693% 38.693%
1,000万円超1,800万円以下 33% 33% 33.693% 43.693% 38.693%
1,800万円超4,000万円以下 40% 40% 40.84% 50.84% 45.84%
4,000万円超 45% 45% 45.945% 55.945% 50.945%
※1�配当控除以外の税額控除はないものとして計算しています。※2 0.001%未満の端数が出る場合は四捨五入により0.001%単位で表示しています。 ●[表6]配当所得の課税方式の選択(商品類型Ⅰ~Ⅴのまとめ)
課税所得金額最も税率の低い課税方式
商品類型Ⅰ 商品類型Ⅱ 商品類型Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ
195万円以下所得税は総合課税で住民税は申告不要
(C)
所得税は総合課税で住民税は申告不要(C)
所得税は総合課税で住民税は申告不要(C)195万円超 330万円以下
330万円超 695万円以下 (A)と(C)が同値
両方とも申告不要(A)
695万円超 900万円以下
両方とも申告不要(A)
900万円超 1,000万円以下
両方とも申告不要(A)
1,000万円超 1,800万円以下
1,800万円超 4,000万円以下
4,000万円超
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◆(2)損益通算の順序
上場株式等の譲渡損失の損益通算を行う場合に、上場株式等の譲渡による所得および申告分離課税を選択した上場株式
等の配当所得(および利子所得)があるときには、次の順序で控除の対象とすることとされています。
◆(3)繰越控除
上場株式等の譲渡損については、同じ年の上場株式等の配当等だけでなく、翌年以降3年間の上場株式等の配当等と通
算することも認められます(注)。 繰越控除の順序については、 次ページCheck�Point!を参照して下さい。
(注)�通算する前の上場株式等の配当等の金額が「合計所得金額」( 47ページCheck�
Point!参照)に含まれます。
◆(4)損益通算・繰越控除と適用税率
例えば、上場株式等の配当所得(申告分離課税)が年150万円あり、他に上場株式等の譲渡損が60万円ある場合、控除後の配当所得90万円に対して20%(所得税15%★・住民税5%)の税率が適用されます。税負担は18万円(=90万円×20%、他に復興特別所得税)となります。
繰越控除の適用がある場合、つまり、前年以前から繰り越されてきた上場株式等の譲渡損失がその年の上場株式等の譲渡所得等や配当等から控除しきれた場合には、その控除後の金額に対して、20%
(所得税15%★・住民税5%)の税率が適用されます。
平成29年において上場株式等の譲渡所得等および配当所得・利子所得があり、平成26年分から平成28年分の各年から繰り越された上場株式等の譲渡損失を控除する場合の取り扱いについては以下のようになります。 この場合、平成26年に発生した損失から順次控除にあてていきます。また、繰越損失を控除する際には、譲渡益に限らず、上場株式等の配当からも控除することが可能です。その際、繰り越した損失は、次の①→②の順に控除します。
上場株式等の譲渡損失を繰越控除する場合の取扱い
◆(1)損益通算
申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得については、上場株式等の譲渡損と通算することができます。 申告分離課税を選択した場合も、総合課税を選択した場合と同様に、上場株式等の配当等は、「合計所得金額」( 47ページCheck� Point!参照)に含まれる
ことになります。損益通算が行われる場合、損益通算後の金額(利益の場合に限ります)が合計所得金額に含まれます。 上場株式等の配当所得であっても申告不要や総合課税を選択した場合は損益通算の対象となりません。
譲渡損失の損益通算・繰越控除� 上場 一般
①上場株式等の譲渡による所得②申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得および利子所得
●繰り越された各年の上場株式等の譲渡損失の金額平成26年発生分 平成27年発生分 平成28年発生分
500,000円 200,000円 100,000円
●�平成29年分の上場株式等の譲渡所得等および申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得・利子所得の金額
①上場株式等の譲渡所得等②�申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得および利子所得
700,000円 200,000円
①上場株式等の譲渡所得等700,000円
平成26年分の損失500,000円
平成27年分の損失200,000円
②申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得・利子所得200,000円
平成28年分の損失�100,000円
申告分離課税を選択した上場株式等の�配当所得・利子所得�100,000円
上場 一般
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株
式
みなし配当は、法人に留保されていた利益が、企業組織再編や自己株式取得など一定の事由を契機として、その法人の株主に移転したと考えられる場合に発生します。具体的には、以下の事由に伴い株主に対して交付される金銭等の額が、その交付の基因となった株式に対応する資本金等の額を超える場合の、その超える部分の金額をいいます。
みなし配当に対する課税方法は、通常の配当と基本的に同じです。ただし、みなし配当に関しては、その計算期間は12ヵ月と取り扱われます。したがって、大口株主が保有する上場株式等に係るみなし配当や、一般株式等に係るみなし配当に関しては、1回当たりのみなし配当金額が10万円以下である場合に限り、申告不要を選択できることとなります。
みなし配当� 上場 一般
例えば、自己株式の取得の場合、上記計算式の(A)は、株式発行法人が1種類のみの株式を発行しているか、2種類
以上の株式を発行しているかにより、次のように計算します。
(1)みなし配当の算出方法
◆みなし配当と譲渡益の計算方法
総合課税、申告分離課税、申告不要の比較(上場株式等の配当等)
①合併(適格合併を除く)②分割型分割(適格分割型分割を除く)③株式分配(適格株式分配を除く)④�資本の払戻し(剰余金の配当のうち分割型分割によるもの以外のもの)または解散による残余財産の分配⑤�自己の株式の取得(金融商品取引所の開設する市場における購入による取得等を除く)⑥�社員の退社又は脱退による持分の払戻し⑦�組織変更(組織変更をした法人の株式以外の資産が交付されるものに限る)
みなし配当額=交付された金銭その他の資産の価額の合計額
−その法人の資本金等の額のうち、金銭等の交付の基因となったその法人の株式に対応する部分(A)
①発行している株式が1種類のみの場合
(A)=自己株式取得等の直前における発行法人の資本金等の額(取得資本金額)(注)
×
発行済株式等の総数
②発行している株式が2種類以上の場合
(A)=
自己株式取得等の直前における自己株式取得等に係る株式と同じ種類の株式に係る資本金等の額(種類資本金額)(注)
×
その種類の株式の総数
(注)当該価格が0以下の場合は0
自己株式取得に応じた株主等が有していた株式数
自己株式取得に応じた株主等が有していた取得を行う株式と同じ種類の株式に係る株式数
確定申告をする 確定申告をしない
総合課税 申告分離課税 (申告不要制度適用)
負債利子控除 あり なし
税率 超過累進税率 20%(所得税15%★�
・住民税5%)下記源泉徴収税率と同じ
配当控除 あり なし
上場株式等の譲渡損失との損益通算 なし あり 特定口座の場合は口
座内で損益通算可能
扶養控除等の判定 合計所得金額に含まれる
合計所得金額に含まれる※
合計所得金額に含まれない
源泉徴収税率 所得税 15.315%住民税 5%
※ �上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得との損益通算の特例の適用を受けている場合にはその適用後で、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けている場合にはその適用前の金額
上場 一般
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株
式
(注)設例の簡素化のため、当期利益や配当の支払は考慮していません。 ◇みなし配当額の計算 ・取得資本金額=(200億円+80億円+20億円)÷4,000万株=750円 ・1株当たりのみなし配当額=1,000円−750円=250円 ◇譲渡損益の計算 ・1株当たりの譲渡代金=1,000円−250円(みなし配当額)=750円 ・1株当たりの譲渡損益=750円−500円=250円
◆相続した非上場株式のみなし配当課税の特例
相続または遺贈(相続等)により取得した非上場株式を発行会社へ譲渡し、かつ、次のすべてに該当する場合には、み
なし配当ではなく、譲渡所得として課税(申告分離課税)されます。
◆資本剰余金を原資とする配当(資本の払戻し)があった場合の課税関係
通常、配当は発行会社の利益剰余金を原資として支払われますが、資本剰余金を原資として支払われることもあります。 資本剰余金を原資とする配当(「みなし配当」部分を除く)については、株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされます。 当該資本の払戻しの金額から取得費を控除して譲渡所得等が発生する場合、確
定申告が必要になります(注)。 また、保有する株式について資本の払戻しがあった場合、その払戻しがあった日(その払戻しに係る剰余金の配当がその効力を生ずる日)以後の当該株式に係る取得価額については、当該株式を発行した法人の純資産減少割合に基づき、次ページの算式により取得価額の調整(減額)を行います。
(注)�資本の払い戻しが特定口座内の上場株式に係るものだったとしても、特定口座内での計算が行われない場合、資本の払い戻しに伴って発生した譲渡所得等は、一般口座における譲渡所得等とみなされ、原則として確定申告が必要です( 220ページ参照)。ただし、例えば、特定口座(源泉徴収口座)のみで株式の取引を行っている給与所得者(給与を1か所から受けていて、その給与の
収入金額が2,000万円以下である者等に限る)が、当該源泉徴収口座での取引につき申告不要制度を選択し、かつ、資本の払戻しによる株式等に係る譲渡所得等の金額を含む所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の場合などは、確定申告を行う必要はありません( 56ページ参照)。
(2)株式譲渡益の算出方法 株主が発行法人から交付される金銭等のうち、みなし配当以外の部分、すなわち資本金等の額から支払われる金額が株
式の譲渡代金となります。この譲渡代金が、譲渡した株式の取得価額を超える場合には、その超過額が株式の譲渡益となります。
例えば、以下のような資本構成のA社(発行済株式数4,000万株。全て普通株)が1株1,000円で600万株の自己株式を取得した場合、自己株式の取得に応じた株主の1株当たりのみなし配当額および譲渡損益は次のようになります(自己株式の取得に応じた株主の取得価額は500円とします)。
34
44
444
44
42
44
44
444
41 3442441344
2441
(250円)
取得資本金額750円 自己株式の
取得価額500円
みなし配当=250円
譲渡益=250円
1,000円
自己株式の
買取価格
・�相続等により取得した株式で相続税があること・�相続開始日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に発行会社に譲渡するものであること・�平成16年4月1日以後に相続等により取得した株式であること
� 自己株式取得直前� 自己株式取得直後1資本金� 200億円� 200億円2資本剰余金 ⑴資本準備金� 80億円� 80億円 ⑵その他資本剰余金� 20億円� 20億円3利益剰余金 ⑴利益準備金� 40億円� 40億円 ⑵その他利益剰余金 任意積立金 繰越利益剰余金� 160億円� 160億円4自己株式� 0� ▲60億円� 株主資本合計� 500億円� 440億円
A社の純資産の部の株主資本
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株
式◆株主割当増資等 会社が有償で増資をする際の通常の新株発行には、株主割当・公募・第三者割当の3通りがあります。 株主割当とは、既存の株主に対して持株数に応じて新株が割り当てられる増資をいいます。株主割当増資の場合、一般に時価より低い価額で新株が発行されることも多いようです。この場合、株主は時価よりも低い価額で新株を取得することになるわけですが、いわゆる権利落ちによって旧株と新株の株価が平均化されますので課税の対象とはなりません。 公募は一般に時価で売り出されるため、課税されません。 第三者割当とは、既存の株主以外の者に株式の割当を受ける権利を与える増資のことです。たとえば、取引先、縁故者、会社の役員や従業員などに株式の割当を受ける権利を与える場合がこれにあたります。払込価額は、時価のときもあれば割安な価額によるときもあります。時価のときは課税の問題は生じませんが、時価よりも安い価額で割当を受けるときは税金がかかります。すなわち、一般に新株の払込期日における時価から新株の払込金を差し引いた金額に対して課税されます。所得区分はその実態に応じ一時所得、給与所得または退職所得となります。◆新株予約権の無償割当(ライツ・イシュー) 既存の株主に対して新株予約権を無償
で付与し、かつ新株予約権を一定期間金融商品取引所に上場させることによる増資手法を、一般にライツ・イシューと呼びます。 ライツ・イシューが行われた場合、新株予約権が付与された時点では、課税対象となりません(新株予約権の取得価額は0となります)。新株予約権を譲渡した場合、譲渡の対価の全額(から手数料等を引いた金額)が上場株式等の譲渡益として課税対象となります。 付与された新株予約権を行使し新株を取得した場合は、その時点では課税の対象となりません(新株の取得価額は、払い込みをした金銭の額となります)。◆株式分割 増資の際の新株発行とは別に、株式分割によって株主の保有株式数が増加することもあります。株式分割とは、1株を2株に、また10株を11株にというように、既存の株式を細分化して従来よりも多数の株式とすることです。言い換えれば、株式分割とは新株を無償で発行し、株主に対して持株数に応じて分与するものであるといえます。 株式分割が行われた場合でも課税の対象とはなりません。外国株式についても、わが国においては国内株式と同様の取扱いとなります。◆株式無償割当て 株式無償割当てとは、株主に対して、
増資や株式分割などと税金4
増資と株式分割� 上場 一般
-4
旧株1株当たりの取得価額=
旧株1株の従前の取得価額 −〔旧株1株の従前の取得価額 ×純資産減少割合〕
○� 取得価額の調整(資本の払戻しがあった後のその有する株式(旧株)の取得価額の調整)
●個人株主に対して資本の払戻し(資本剰余金の減少)があった場合の課税関係
1444444444244444444443
1442443
①交付を受ける金銭等
②みなし配当の金額
A株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる金額
C株式等に係る譲渡所得等の金額
B 取得価額
資本金等の金額※からなる部分
資本金等の金額以外の金額からなる部分
A株式等に係る譲渡 所得等の収入金額 とみなされる金額
=①資本の払戻しにより 交付を受ける金銭等 の価額の合計額
−②みなし配当の金額
B取得価額=旧株の従前の取得価額の合計額×純資産減少割合C 株 式 等 に 係 る 譲渡所得等の金額=
A株式等に係る譲渡所得等の 収入金額とみなされる金額 −B取得価額
(注1)� 資本の払戻しに係る「純資産減少割合」は、次の算式により算出した割合(小数点以下3
位未満は切上げ)をいいます。 《算式》 純資産減少割合=
その法人の資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額
※�この純資産減少割合は、資本の払戻しを行った法人(株式の発行法人)から、その払戻しを受けた株主に対して通知されます。
(注2)� Cの金額は、Bの金額がAの金額を上回る場合は、譲渡損失の額となります。
○ 株式等に係る譲渡所得等の金額
その法人の資産の帳簿価額 −
その法人の負債(新株予約権に係る義務を含む)の帳簿価額
※資本金等の金額は、発行会社が株主から払込みを受けた金額等で、資本剰余金を含みます。
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