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教育社会心理学第7回

ピアジェ理論解説 + 教科書

富田英司愛媛大学教育学部

2010/12/14

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ピアジェの発達理論• ジャン・ピアジェ( Jean Piaget, 1896 - 1980 )

– スイスの発達心理学者– 20 世紀最大の発達心理学者

• 日本では発達段階についての理論で特に有名• 世界的にはむしろ,構成主義の提唱者として特に有名

• 理論の対象– 認知発達:ものの見方や思考能力,学習能力の発達を明

らかにする

• ピアジェ理解のための基礎学習1. ピアジェの発達観2. ピアジェ理論のキーワード

(1)表象 (2)シェマ

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ピアジェの発達観• 構成主義(こうせいしゅぎ)–人は対象を認識するときに,カメラのように

外界を写し取る訳ではない–認識のプロセス

1. 対象に関する情報が感覚器から入力される2. 対象についての仮説モデルを頭の中につくる3. 対象と関わり合うことで新しい経験を得る4. 仮説モデルと合致しない経験から,仮説モデル

を修正していく ・上記プロセスを繰り返していき,経験と一致し

た対象理解を組み立てていく(=知識を構成する)

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「構成主義」は当たり前か:他の発達観の紹介

• 連合説(行動主義)– 発達を刺激( S )と反応( R )の連合によって説明

• 発達には段階はなく,徐々に進んでいく– 全ての能力は個人の経験によって決まる– 知能のメカニズムについては一切触れない

• 成熟説– 個人がどんな経験をしても,発達には影響しない– あらかじめ決まった方向へ,同じタイミングで発達し

ていく 例)ゲゼルによる階段を上る能力に関する実験

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ピアジェ理論の基礎概念:(1)表象(ひょうしょう)

• Representation = Re( 再 ) + Present( 存在する )

• 表象・・・対象物に対応した心の中の存在– 「表象機能がどう成立しているのか」は哲学や心理

学にとって,昔からの大きな問題の1つ– もし人に表象機能がなかったらどうなる?– 構成主義という考え方と表象との関係は?

対応関係

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ピアジェ理論の基礎概念:(2)シェマ①

シェマとは・・・・認識のための枠組み ( ものの見方 )        但し,脳の中に対応する特定部位がある訳ではない

<シェマの多様性>• 知覚レベルから抽象的思考レベルまで全水準でシェマは想定可

– 「つまむ」シェマ,かけ算に関するシェマ,方程式に関するシェマ  因果関係の認識に関するシェマなど無数に想定が可能

<シェマに関連する心理学概念>• スキーマ

– 過去の経験から形成された知覚や思考の枠組み– 例えば,物語を読む際

• 読者は自らの保有する「スキーマ」と照合することにより物語を解釈し,その結果が符号化 ( 記憶 ) される

• 自分の「スキーマ」にうまく適合しない場合,与えられた情報を「スキーマ」に合うように変容させる

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ピアジェ理論の基礎概念:(2)シェマ②

<シェマを通した人間の認識プロセス>• 同化– 人間が入ってきた情報を自分がすでに持っている思考

方法に合うように変形するやり方• 調節– 人間が自分の思考方法を新しい経験に適応させていく

ことを示す言葉• 同化と調節の影響関係– 新しい対象を見たとき,乳児は他の対象に対してと同

じようにつかもうとする。しかし,同時に新しい対象の形に合わせてつかみ方を適応させる。

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Moodle で取り組んだ3つの課題

• ピアジェの言う操作とは何か?

• ピアジェの言う均衡化とは何か?

• ピアジェ理論によると,なぜ人は徐々に発達せず,段階的に発達すると考えられているのか?

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操作について• 操作とは表象の操作である

• 前操作期 操作ができる期間の以前・・・• 具体的操作期 具体的表象なら操作可能・・・• 形式的操作期 形式的表象でも操作可能・・・

– 形式的=抽象的

 つまり,ピアジェの理論は表象の操作能力がどのように発達するかを軸に展開している

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均衡化について• 配布資料  P33-34

• 均衡化とは–安定したシステムが揺らぎ,新しい安定へと改訂されていくプロセスのこと

• 均衡化のスケール– マイクロなレベル:資料「動物」の例– マクロなレベル:発達段階の移行

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なぜ人は段階的に発達するか• 書き込みについて

– 段階説を採る理由ではなく,段階そのものについての説明が見られた• 質問に答えていない

• ピアジェ理論はなぜ段階説を採るか– ピアジェ理論は構造主義に則っている– 精神過程を構造の変化として捉える– カタストロフ理論 小刻みな連続した変化がある日・・・突然大きな変化を迎える過程を説明• 橋の崩壊などと同じ数学的概念で説明できる

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ピアジェ理論の「わからなさ」

• なぜ全員が同じ到達地点なのか?• なぜ形式的操作が最終地点なのか?• 子どもはそれぞれに個別の構成活動を行

うのに,どうして同じ構造の認知システムを持つのか–生得的に枠組みは決まっているのか?

• 発達と教育は分離して考えられるのか?

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ピアジェとヴィゴツキー• ピアジェ理論

– 「発達段階に合わせて教育すべし」 =発達が教育に先立つ理論

• ヴィゴツキー理論(今度説明します)– 「教育によって発達を促進すべし」 =教育が発達に先立つ理論

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教育史• 古代ギリシャ

– プラトンの『メノン』 観念論・・・• 中世の教会• 宗教革命と印刷技術の発明 経験論・・・• 市民社会のための教育• 国民国家のための教育• 新しい市民社会のための教育

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知識は人々の経験の結果

人の知は先験的に規定されている=経験以前の話

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教授学の成立  The First Pedagogy• Comenius『大教授学』

– いろいろな意味で世界初の体系的な教授学

1. 段階に分かれた学校制度の構想– 幼児学校,初等学校,中等学校,大学

2. ラテン語→母国語への翻訳– 民衆教育へのアプローチ

3. 教育内容と教育方法の接合– 教科書『開かれた言語の扉』:一種の百科事典

4. メディアミックス– 挿絵つき教科書の採用

印刷機 としての教師, 紙 としての子ども「 」 「 」15

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合自然の教育学Developing Independent-Minded Citizens

• Pestalozzi『探究』• 自然主義教育学のルソーに影響を受ける• 市民革命:封建主義からの解放は魂の解放を意味しない。不平等 ,貧困 ,略奪 ,不公平な競争。

 →人間の内面からの主体的な解放が重要• 孤児と貧困児童のための学校運営

– 合自然の認識論と教育方法:労働重視 ,親的な教師像– 「あいまいな直観から言語的概念へ」

• 子どもの近代的な主体の獲得過程– ただし,教師や学校の役割は限定的

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国民国家の教育学Pedagogy for Nation States

• Herbart『一般的教育学』– 一斉授業の普及と制度化– ペスタロッチの「直観から概念へ」に影響– 教育学と心理学の統合– 教育目標を「品性」の陶冶に置いた– 教育過程: 管理「 (態度 ) 訓練」「 (意欲 ) 教授」「 ( 知識 ) 」– 教授過程:明瞭→連合→系統→方法

• ヘルバルトの段階的教授

• 特徴: 主体の脱落 国民国家の建設 個人の脱落「 」「 」「 」• Ziller と Rein へと引き継がれ,世界に影響

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進歩主義的教育Progressive Education

• Dewey 「実験学校 (1896-1904) 」– 産業社会の発展 → 民主主義の担い手を育てる教育– 子どもの関心や興味から出発する活動的学習

• 学校の整備に尽力– 学校は社会の縮図:学校での主体的な経験が,民主

主義を支える市民を育成する

• 現代教育への影響– Kilpatrick 「プロジェクトメソッド」– フリースクール 総合的な学習の時間 話し合い「 」「 」「 」– 知識伝達から「学び」や「学びあい」への展開

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効率主義の教育学Engineered Approach to Education

• Bobbit– カリキュラムの科学的研究の創始者

• テイラーによる「科学的経営の原理」を援用• 組み立て工場における生産過程を教育に持ち込む• 教育目標 という概念が登場「 」• 国家主義と産業主義の二重支配構造が確立

– Charters へと継承• 教育工学へと発展

– 例) Instructional Design : ADDIE モデル

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次回のおしらせ• 宿題:教科書 P 26~32を読んでおく

• 次回の内容– ブルーム:現代的な意味での教育目標の概念や教育評価の方法を確立

– ヴィゴツキー:なぜ他者との相互作用が学びにおいて根本的に大事なのか

• 1月 11 日からの内容

– 心理学から教育へのアプローチ 行動主義→認知心理学→状況論,社会文化理論

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