腎生検 PMP. ver4...蛋白尿のみ...
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腎生検
2013年12月 作成
腎生検の目的
侵襲の大きい検査のため 腎生検を施行することで診断の確定、治療方針の
決定が必要であるときに施行するのが原則
腎生検の適応
適応除外
前提として除外疾患
血尿→非糸球体性疾患
(腫瘍、結石、ナットクラッカー等)
蛋白尿→体位性蛋白尿、瘢痕腎、低形成腎
を確認する。
血尿のみ
血尿のみで異常を発見するとすれば、IgA腎症、Alport症候群 Thin basement membraneの3つが主である。
Thin basement membrane → 予後良好 IgA腎症(血尿のみ) → ほとんどの組織が活動性の低いもの Alport症候群 → 診断的価値があるかもしれないが頻度が 低く濃厚な家族歴などを疑った場合のみ施行されるべき
276人の腎生検のうち血尿のみを伴ったもの36人中、治療方針に 関わる診断的価値のあったものは1人だけだった。 Richard NT et al Nephrol Dal Transplant 1994: 9:1255
・IgA腎症の可能性が否定できない高校生以上の反復する 肉眼的血尿を呈する症例
(活動性病変がある症例が存在する可能性があるため)
・3か月以上継続する低補体血症 ・腎不全の家族歴があるもの
・腎機能低下が認められるもの
以上のものは考慮する
蛋白尿のみ ネフローゼレベルまでに至らない程度の軽度の(500~1000㎎/day)蛋白尿で、Crの上昇の無い症例の組織所見で診断的価値のあったものは、軽度の巣状糸球体硬化症、IgA腎症、膜性腎症であったがいずれも免疫抑制剤などの治療を必要とせず予後良好であった
Hall CL Clin Nephrol 2004:62:267
ただし①低形成腎、②尿路感染後腎瘢痕化、③腎硬化症、 ④二次性巣状糸球体硬化症、などの疾患も蛋白尿単独であるため、
①、②を否定したうえで、Crの上昇、血圧の上昇などを注意深く観察
し、u‐Pro/Cr 0.5以上1~2か月 0.2以上6か月以上継続する場合
には腎生検の適応
血尿+蛋白尿
もっとも診断的価値の高い症候である。
糸球体性疾患で治療対象となる可能性が高くなるため、積極的な 腎生検の適応となる。
・血尿を伴っており、尿蛋白/Cr比0.2以上が3か月以上持続、もしくは
0.02g/㎏/day以上
血圧上昇例、腎機能低下例では早期な腎生検を考慮する。 日本腎臓病学会 CKD guideline 2012
症候別 腎生検の適応
ネフローゼ 小児ではネフローゼ症候群の約90%が微小変化型ネフローゼ症候群であるため、適応が限られる。
・強い血尿、高血圧、低補体血症、腎機能低下
腎炎の急性発症を疑う場合はステロイド開始前の腎生検が必要 ・ステロイドfull dose 4週間投与に対し、反応がないもの
巣状糸球体硬化症などの疾患を疑うため ・1歳未満発症のネフローゼ症候群
先天性ネフローゼ症候群の可能性があり、予後不良のため
・ステロイド依存性ネフローゼに対し、 シクロスポリン導入前腎障害評価の目的として
急性腎不全 ・障害部位が腎前性、腎性、腎後性を判断し、腎実質の障害が 疑われ、原因が不明の場合は治療方針を決定するうえで腎生検 は有効。 ・原疾患に治療可能な腎疾患が考えられる場合 (RPGN、IgAやHSPN等の急性増悪、FSGSなどで起こり得る急性腎不全) 確定診断、治療強度、腎障害の程度を知る上で有効
その他
SLEの場合は尿所見の有無関わらず、病期診断のために 腎生検の適応となる。
経皮的針生検の禁忌 ・出血傾向 ・単腎、馬蹄腎などの形態的異常のあるもの ・嚢胞腎(多発性嚢胞、大きい単嚢胞) ・水腎症(中等度以上) ・管理不能な全身合併症(高度高血圧、敗血症等) ・腎実質内の感染症、穿刺部位の感染症 ・腎動脈瘤 ・高度の萎縮腎(矮小腎) ・1歳以下、身長75㎝以下に対しては 経皮的腎生検は禁忌(開放腎生検を行う)
事前検査
【血液】 血算(血液像)、血液型 Na,K,Cl,Ca,P,BUN,Cr,UA,TP,Alb,Glu,ALT,AST,LDH,Alp,CPK T‐Cho,TG,CRP,IgG,IgA,IgM ASO,ASK,C3 ,C4 ,CH50,抗核抗体、(p‐ANCA、c‐ANCA) 凝固系(PT,APTT, Fib, TT, AT‐III,FDP,D‐dimer) 【尿】 一般沈査,β2MG, NAG, Na, K, Cl, Ca, P, Cr UN, UA, 蛋白定量
画像検査 DMSA 分腎機能を知る上で適した検査、具体的な大きさは計測不能、
腎機能に左右差がないことを確認する
腹部超音波 腎生検施行時も使用するため、事前に腎のsize、水腎の有無などを 施行時のイメージを持って観察できる、検査者、エコー機器により
若干の精度の差異があるが、侵襲は少ない
前評価としてはDMSA、腹部超音波の2つで対応
経皮的腎生検の実際
=名古屋第二赤十字病院の例=
鎮静
・セコバルビタール(200㎎)1A+生食40ml (1ml=5㎎)
1ml/㎏投与(MAX2ml/㎏まで)
・ペンタゾシン(15㎎)1A iv
・ソリタT3 500ml+アドナ1Ap 40ml/hr
患者年齢、体重により増減
施行前に用意するもの マグナムバード 15mm、22mm 患者体格により穿刺長を変更可
①患者さんをベッドに仰向けに寝かせモニターをつける。 ②ペンタゾシンとセコバルビタールで鎮静する。(ペンタゾシン1Ap、 セコバルビタール1ml/㎏ 2倍量まで増量可) 幼少時の場合,眠るまで両親についてもらうと安静が保ちやすい。 ペンタゾシンは注入時静脈痛を訴えるため,最初にその由伝えておくと良い。 ペンタゾシンとセコバルビタールは混合すると混濁するため,ペンタゾシンを しっかりと流してからセコバルビタールを使用する。
– セコバルビタール鎮静後は呼吸が浅くなるため,1名が呼吸をモニタリングする。 – セコバルビタールの追加投与ができるように用意しておく。
③バルーンを留置する。
④腹臥位にし、腹部に枕を入れ,生検部位を 平らに保つ。
⑤エコーで腎生検をする位置を確認し, 穿刺部位にマーキングをする。
⑥ガウンを着る。(穿刺者と前立ち2名)
⑦マーキングをした部位を中心に消毒を行ない, 穴空きコンプレッセンを載せる。
⑧エコーのプローベを清潔ビニールで包み, 再度腎生検部位を確認する。
⑨穿刺部位及び腎臓の皮膜をエコーで確認しながら, 局所麻酔を行なう。 疼痛により動くことが多いため,手足の抑制をする。 (周りの人が押さえる) ⑩穿刺部位を約5㎜切開を加える。
局麻部位
⑪バイオプティーガンに穿刺針をとりつけ、穿刺針が しっかり出るか確認する。
⑫プローベガイドの穴に穿刺針がスムースに通るかを確認。
穿刺針の先端5mm程切開した穴に入れプローベを合わせる。 ⑬プローベが合ったところで前立ちにプローベを 固定してもらい,再度微調節をする。
穿刺部位
⑭エコーで穿刺針を見ながら,腎皮膜まですすめる。 事前にエコーで深さを確認し,どの程度穿刺針を進めれば よいかを把握しておくと良い。 ⑮皮膜にあたったところから約0.5~1cmすすめ、穿刺針を発射する。 穿刺針を打つ時にしっかりと手を固定する。
⑯検体が採取できているかどうかを確認し,小ガーゼに検体 を載せ,速やかに生食(または3号液)をかけ (乾燥するのを防ぐ)、 検体処理係に渡す。
⑰うまく取れなかった場合は11~18を繰り返すが, 最高3回まで。
⑱採取できていた場合は,穿刺部位を圧迫。 両肘を伸ばし,体重がかかるようにして15分間行なう。
⑲圧迫終了後,エコーで皮膜下血腫の確認。
⑳穿刺部位の消毒。
㉑穿刺部位に沈子を載せ,弾性テープで圧迫固定。
㉒ストレッチャーにて病室に戻る。 呼吸が浅い場合はインスピロンを使用ながら呼吸をモニターする。
皮膜下血腫
検体処理の仕方 電顕用として保存
蛍光用として保存 光顕用として保存
生検針について 14G or 16G or 18G?? 単一施設の前向き研究471例では糸球体数、合併症 ともに14Gと16Gを用いた比較では優位差は見られ なかった。(成人、小児症例数 不明) Manno C et al Kidney Int 2004:66:1570
ノルウェーの研究では計9288穿刺を調査したところ 14Gと16Gでは合併症に差は見られなかったが、 18Gの使用に関しては高率に合併症(出血が主) が認められた。 糸球体数は14G、16Gのほうが優位に多かった。 Feneberg R et al Nephron 1998:79:438
13の前向き研究、34の後向き研究を合わせた 9474穿刺のmeta‐analysis研究では合併症率は変わ
らなかったが、14G使用の際の輸血使用率が
高かったと報告している。(小児症例を含む)
Corapi et al Am J Kidney Dis 2012:60:62
合併症発生率については様々な意見があるものの
標準的に年長児に16G、幼少児に18Gが用いられる
ことが多く、有効な糸球体数を得るためには18Gを
用いた場合には2回以上の穿刺をすることが
必要であると言われている。 小児腎臓病学 155ページ
血腫 出血による障害は3つある 1.尿路に血液が流入し、肉眼、顕鏡的血尿を出す 同時に閉塞性障害をきたすことがある。 2.腎被膜内にカプセル化されて腎に圧負荷がかかり、 疼痛の原因となる 3.後腹膜腔内に出血が流入し、腹腔内血腫を形成し、重度の貧血を引き起こす →これらの障害は腎生検施行後12~24時間後に起こることが多い up to date 凝固機能異常以外の出血のrisk factorとして ・高血圧 ・糸球体血流量の低下 ・貧血 ・高齢者 ・14Gの生検針の使用 が挙げられている。 Whider WL et al J Am Soc Nephrol 2004:15:142
出血に伴う合併症の発生率は 34論文のsystemaec reviewで
(小児症例を含む9474穿刺)
・一時的な肉眼的血尿 3.5%
・輸血を必要とする出血 0.9%
・止血のためIVRを要した症例 0.6%
IVR(Inter Veneonal Radiology)
・止血のため腎摘を要した症例 0.01%
・死亡 0.02%
Corapi et al Am J Kidney Dis 2012:60:62
動静脈瘻 本邦及び海外にてこれまでにも腎生検後の合併症 としての動静脈瘻の報告は散見されており、頻度は、固有腎では約16%1)移植腎で7.7~17.5%2),3)
とほぼ同等である。 1)Brandenburg VMら Clin Nephrol 58:398-404,2002 2)Deane Cら Urol Radiol 13:211-217,1992 3)Renowden SAら Clin Radiol 45:233-237,1992
しかし固有腎では約90~95%4),5)、移植腎では 約64%2)が自然閉鎖をすると報告されている。 4)Lovaria Aら Ann Urol 33:156-167,1999 5)Gault MHら Nephron 34:1-34,1983
動静脈瘻
血尿や疼痛といった症状を伴ったものでも無処置で 経過観察可能であったという報告もあり、安易に侵襲的処置を行うべきではないとの意見もある 大城ら 移植 34:27-31,1999
侵襲的治療(カテーテル塞栓術)適応 進行する貧血を来す血尿 腎機能低下 シャント量増大 コントロール不良な高血圧