ECMOカニューレ · 2019-07-04 · dlc導入施設に対して...

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ECMOカニューレ 2019618慈恵ICU勉強会 東京慈恵会医科大学附属柏病院 臨床工学部 渡邊 拓也

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ECMOカニューレ

2019年6月18日慈恵ICU勉強会

東京慈恵会医科大学附属柏病院

臨床工学部 渡邊 拓也

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ECMOブラッドアクセス

①V-A:循環補助

②V-V:呼吸補助

③A-V:炭酸ガス除去

ブラットアクセスによって目的が変わる

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Single Lumen Catheter

TERMOキャピオックス®経皮カテーテルキット(Xコーティング)

MERA経皮的挿入用カニューレ PCKC(ヘパリンコーティング)

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VV-ECMO カニューレ部位

Crit Care Clin. 2017 Oct;33(4):813-824.

大腿-大腿 大腿-内頸 内頸

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Bi-Caval Dual Lumen Catheter

GETINGEAvalon Elite

(ノンコーティング)

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DLC 送血-脱血

脱血

脱血

送血

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Cannulas:

A large double lumen cannula, or two large (23-31 Fr) venous

cannulas are required: IVC via femoral vein for drainage and

right atrial via the jugular or opposite femoral for blood return.

Blood flow: Flow: 50-80 cc/drykg/min. Max initially, then

lowest flow to maintain SaO2>80- 85% at rest vent settings.

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サイズ:13Fr、16Fr、19Fr、20Fr、23Fr、27Fr、31Fr

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Thorac Cardiovasc Surg. 2015; 63; 653-62

Background:VV-ECMOにおけるDLCと従来カニューレの治療効果と使用の複雑さ、経費を比較する

Design:RetrospectivePatients:2010年1月〜2012年3月 ARDSによりVV-ECMOを受けた患者Methods:患者サイズと必要とするflowによりカニューレサイズを決めるConventional群:

Edwards FemFlex, FemTrakまたはMedtronic Biomedicus送血アプローチ:頸静脈または鎖骨下静脈脱血アプローチ:大腿静脈

DLC群:Avalon Eliteアプローチ:右内頸静脈

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Methods• 全ての導入はICUで実施

DLC群導入人数Physician 2 名、Perfusionist 1 名、Nurse 1 or 2 名

Conventional群導入人数Physician 1 名、Perfusionist 1 名、Nurse 1 名

• 経食道エコー下で実施し、その後はレントゲンを見てカニューレ位置と調整した

• Physicianに対して、挿入の複雑性について1(Simple)~6(very difficult)の間で評価をした

• Prone positionが可能であれば実施した

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患者背景・重症度スコアに有意差なしSevere ARDSが半数以上H1N1またはそれ以外の肺炎患者

Results

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• ECMO導入までの人工呼吸器期間は約3日

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• 死亡率について有意差なし(両群6割の死亡率)• 人工呼吸器期間、ICU滞在期間、ECMO期間はDLC群で長い• DLCの合併症についてはなし、装置側で2件発生

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• 通常のカニューレに比べ約3.3倍、トータルコストは約2.1倍• カニュレーション挿入の評価はDLC群で難しい• 両群で挿入時間に差はなし• Prone position はDLC群で頻繁(8/9)に行われた• 溶血について有意差なし

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ECMO設定で両群間に違いはなかったPump flowを得るためにDLC群で遠心ポンプ回転数が高い傾向にあった

ECMOパラメータ

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Discussion

合併症について

• Conventional群でカニュレーション時に心室壁をruptureさせることが発生した

• DLC群で人工肺が凝固し、交換した• DLC群でカニューレ位置のズレでSpO2が低下した

挿入の評価について

• 人員や材料、労力、TEEの経験値などが求められるためDLC群で挿入は難しいという評価となった

• DLC群でカニューレ位置の調整に時間を要した

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Discussion

Prone positioningについて• DLC群で頻回に体位ローテンションとProne

positioningが行われた• Conventional群ではfemカニューレが邪魔をして通常の体位変換ですら困難とした(困難の主な原因は脱血不良の発生)

コストについて

• ECMO治療自体にコストがかかる上に、DLCカニューレが高額である

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DLCの評価

• DLCは従来のカニューレに比べ、Recirculationを減少させ、頸部のみのアプローチにより患者の活動性を向上させる

• カニューレ挿入については画像診断装置を用いて合併症に注意が必要である

• 人員確保やカニューレ位置を決めるためにTEEの技術が必要となる

• カニューレは高額であるため、利点欠点を理解した上で導入する必要がある

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挿入時の合併症

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挿入時には画像診断装置が必要

• 挿入時にはいずれかの画像診断装置を用いて実施する

• 導入する施設についてはメーカー主催のハンズオンと座学を受講し、修了証が発行された施設に販売される

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ASAIO J. 57; 203-5

TEEおよびレントゲンを用いて評価

A:IVCにワイヤーまたはカニューレを確認B:送血ポートが三尖弁側を向いていることC:脱血ポートがSVCとIVCに位置していること特にIVC側のカニューレがHepatic veinに迷入しないように注意をする

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Perfusion. 2015 Apr;30(3):182-6

右室へ迷入:ワイヤー補強がない送血ポートで曲がっている

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Perfusion. 2015 Apr;30(3):182-6

右室へ迷入:三尖弁方向へ120°折れ曲がっている

透析カテ

経食プローブ

送血ポート部分

先端

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Right ventricular rupture and tamponade

J Cardiothorac Surg. 2012; 7; 36

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DLC導入施設に対して

• カニューレ挿入時にはいずれかの画像診断

装置を使用して行う(装置の限定はない)

• メーカー主催のハンズオンと座学を実施• 関連学会への症例報告

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Recirculation

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大腿-内頸 ECMO

ASAIO J. 2015 Mar-Apr;61(2):115-21.

ポンプフローを上げるほどRecirculationが上がる

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Recirculationの原因• カニューレの形状と位置• ポンプスピード、カニューレサイズ、ECMOの血流量• 胸腔内圧、心臓内圧、腹腔内圧の変化• ECMOの血流方向

Recirculationの抑制• 送血・脱血カニューレの距離をとる• DLCへ変更• ドレナージカニューレを一本追加する• 送血カニューレ位置の調整(三尖弁方向へ向ける)

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DLC

ASAIO J. 2015 Mar-Apr;61(2):115-21.

三尖弁方向に送血を向けた位置調整によりRecirculationを低くできる

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Use of a bicaval, dual-lumen cannula

Recirculationは2%まで低くなる可能性がある。しかしカニューレの位置異常でRecirculationが有意に上昇する場合がある。

ASAIO J. 2008 Nov-Dec;54(6):606-11.

羊にDLCによるECMOを導入

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Prone positioning

Respiratory Diseases, 2017, 7, 18-24

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Awake & mobilized

The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery Volume 155, Number 3

頸部のみのアプローチにより大腿が空くことでがなくなることで活動性が拡大する

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DLCまとめ

利点• Recirculationが低い• カニューレ挿入が1箇所で済む• 感染リスクを下げる可能性がある• 患者の活動性を上げ、低い鎮静で管理ができる(ProneまたはAwake)

欠点• 導入時の合併症に注意が必要• カニューレコストが高い

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DLCの現状

• 米国は2008年 FDA510k取得

• 欧州は2012年 CEマーク取得

• 全世界で年間約3000本が使用

• 日本は2018年2月に承認

• 予定販売価格30万円(償還42000円)

• しかし日本への入荷は未定・・・まだしばらくは従来カニューレ選択を選択するしかない

2019年6月現在

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所感

• 挿入手技は従来のカニュレーションに比べ難しいことを認識し、導入時に注意が必要である

• コストはかかるが、DLCによるメリットを考慮し

て導入を検討すべき

• あくまでVV-ECMOのカニューレ選択肢の一つで

あるため、ProneやAwakeにむけたECMO管理を

目指す場合に有効であると考える