保険会社とソーシャルメディア: 無限の可能性と課題...2...
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保険会社とソーシャルメディア:無限の可能性と課題
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ソーシャルメディアの活用が保険会社に多大な恩恵をもたらす
実際に、ソーシャルメディアが保険会社にもたらすメリットとして以下が考えられます。
ブランド強化
ソーシャルメディアを使うことでブランド力を高めることが可能です。顧客の声や苦情にきちんと耳を傾け、応えていく保険会社であることをアピールする、或いはまた、そのまま放置すれば甚大な風評被害に繋がりかねないような課題に対しても迅速に対応することをアピールすることなども可能です。
コスト削減
顧客同士がソーシャルメディア上で情報交換することにより、コールセンターへの問合せが減り、同じ質問に繰り返し対応しなければならない状態を回避できます。このように、無料のバーチャルツールによって、顧客サービスに関する経営資源をより重要な課題や顧客獲得のための労力に充当できるのは大きな利点と言えるでしょう。しかしながら、顧客間でやり取りしている情報の正確性には細心の注意を払う必要があります。
顧客行動への影響力
ソーシャルメディアを通じて保険会社への信頼を高めることで顧客との関係を強化することも可能となります。ソーシャルメディアに評価の高い口コミが多く寄せられることで、保険会社に対する顧客の認識を変えていくことができます。
顧客満足度の向上
ソーシャルメディアをモニタリングすることで、自社に対するネガティブ意見を早期発見し、より早い段階で積極的な問題解決を図ることが出来ます。その一方で、丁寧な交流で存在感を増し、NPS(ネットプロモータースコア)を向上させ、ロイヤリティ醸成や満足度の高い口コミへと繋げていくことが可能となります。
収保拡大
ソーシャルメディア上で保険商品のランキングやレビュー、キャンペーンなどの情報が共有され広まると、新規顧客の獲得も期待出来ます。既存顧客のレビューやランキング、おすすめ情報などをフィードバックとして取り入れることで自社商品やキャンペーンの改善を図るとともに、潜在的な顧客層像を割り出すことも可能となります。
革新のサポート
ソーシャルメディアを有効活用可能な保険会社にとっては、ソーシャルネットワークは顧客の声(インサイト)を収集する貴重な情報源です。リアルタイムで競合他社に関する情報を取得し、新たな施策として他社との協業のチャンスを見つけ出すことも可能です。
新たな保険商品・サービス展開
最近ではソーシャルメディア上で顧客情報を保護する新サービスを開始する保険会社も出てきました。偽造アカウントや中傷的な投稿などの危険要素を排除するなどインターネットの安全な利用を「保証」しています。
昨今の動きとして、ソーシャルメディアは、人材開発、マーケティング、顧客サービスあるいは企業の広報活動等において大きな役割を果たしつつあります。保険会社にとっても、ソーシャルメディアの活用を通じて個人やコミュニティと密な交流を図り、常に顧客とインタラクティブなコンタクトを維持することが可能になると考えられます。
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図 1. ソーシャルメディアの活用がもたらすメリット
顧客の新規獲得
顧客レベル
収益と市場シェアの拡大
ブランド構築/認知度/広報
レビュー/ランキング/コメント
口コミ/バイラルマーケティング
ダイレクト(主にチャリティ)
検索エンジンの最適化
リッチメディア広告、ターゲット広告
顧客の声(インサイト)と革新商品・サービスの開発、改善、差別化
バズモニタリング
クラウドソーシング
顧客センチメント(心情)分析 プライベート/オープンコミュニティ
カスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)と顧客サービス顧客ロイヤリティの向上とコスト削減
セルフサービス セルフヘルプコミュニティ モニタリングと交流
アジャイル・コラボレーション組織横断での社員の効果的業務遂行と情報共有
情報資産と専門知識の共有
共創
ビジネスネットワーク
協業精神
ゲーミフィケーション(ゲームを取り入れたマーケティング)
ネットワークの構築
タレント(優れた人材)の獲得と維持イメージの改善、有能な人材の維持・獲得、社員の声への傾聴
ブランドの認知度 タレントの特定 タレントデータベース
企業レベル
新しい保険商品 市場研究/競合他社に関する情報
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ソーシャルメディア活用における勝機とリスク
この新たなソーシャルチャネルの活用は驚異的な速さで広まってきました。2004 年に開始されたばかりの Facebookは、今では 8 億 2500 万人もが利用しており(このうち 4 億 2500 万人がモバイルユーザー)、年間増加率は 200%以上となっています。2006 年に始まったTwitter の拡大はさらに早く、同 800%となっています。このような急速な変化に伴い顧客行動性向として新たな特徴も現れ始めています。例えば、ソーシャルメディア上の掲示板で意見交換が行われ、そこでの他者の意見に信用が置かれ顧客の重要な判断要因となるような場が生み出されているのです。
モバイルやインターネット、双方向テレビなどのデジタル/ダイレクトチャネルの進展に伴い、ソーシャルメディ
アのプラットフォームも急激に拡大してきました。(このプラットフォームには企業が運営する「公式」プラットフォームだけでなく Facebook、 Twitter、 Foursquare、 YouTube、 Pinterest、 Highlight などの、一企業がコントロールできない「一般」のプラットフォームが含まれます。) この拡大の一方で、顧客との接点も断片化しつつあります。数ヵ月ごとに新たなチャネルが出現し、顧客との一貫した統一的関係を保つことが困難となってきます。顧客接点の断片化やこれに伴うコミュニケーションの加速化によって、ほんの数時間で簡単にブランドイメージが崩壊する可能性さえあります。企業が自身で正しい情報を発信することが可能である一方で、外部ソーシャルチャネルに対する統制は効きにくく、既に広まった情報に対抗することも訂正することも容易ではありません。
ソーシャルメディアの活用には保険会社のビジネスにとって多くの変革機会が存在する一方で、その急激な展開は顧客にとっても劇的な変化をもたらす可能性もあるため、保険会社は新たな課題とリスクに直面することにもなります。このような状況に上手く対処するためには、従来のマーケティングや顧客サービスの枠にとらわれることなく、継続的に顧客との関係構築に努めていく必要があります。
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保険会社とソーシャルメディア
しかし、金融業界全体としてみても未だソーシャルメディアの活用手法を確立しているわけではありません。Facebook における法人ページのトップ 50 に金融機関の名前がないのは、その事実を表しているという見方もできます。(ただし、ページ上で処理されている膨大な交流数は保険会社が実際の日常業務トランザクション量とは相違するため必ずしも正しい評価とは言えません)別の見方として、ファンやフォロワー数が何百万単位でいる人気企業には劣るとは言え、金融機関がFacebook の「いいね」機能や Twitterのリツイート機能で評価されている総数等の他の指標を考慮すると関係構築の質はかなり高いと言えるでしょう。すなわち、金融機関の勝機は交流数ではなく、その質にあります。保険会社による顧客との関係構築の成功例として Facebook ページに 370 万人の参加者を集めた米プログレッシブ保険のキャラクター「プログレッシブ・ガール、フロー」の事例あります。
アクセンチュアが生命保険、損害保険について実施したグローバル調査によると、新たに保険商品を購入する保険会社を選定する際に、消費者 5 人のうち 4 人がソーシャルメディア上の評価を参考にすることが明らかになりました。さらに、回答者全体の 30%(若年層に至ってはその 2 倍)がこの評価を主要な選定基準とすると回答しています。
他にもいくつかの保険会社がソーシャルメディアを利用してインパクトや注目度の高い施策を展開しています。アメリカの軍関係者向け保険 USAA 社はFacebook のページ上に「My USAA」タブを設置し、クリック一つで同社ホームページにアクセスできるような仕組みを設けています。これにより、契約者は迅速に保険料収納や保険証券の照会が可能となりました。また、財務アドバイスを綴ったブログも開設しYouTube にアップロードした動画を掲載しています。このように、USAA はFacebook や Twitter に加え、自社のホームページにブログやランキング、掲示板などの機能を追加しています。
これまで保険業界全体としては、ソーシャルメディアに対して慎重な姿勢をとってきました。フォーチュン 500 社に入る保険会社 28 社が Facebook のページを開設し、そのうち 20社が Twitter のアカウントを持っているものの、今になって漸くソーシャルメディアを組み込んだキャンペーンなどの可能性を探り始めています。顧客との関係構築にソーシャルメディアを活用するという点では、保険会社はエンターテイメントや消費財メーカーだけでなく金融業界内でも銀行などから遅れをとっています。今やソーシャルメディアを活用するかしないかが問題ではなく、いかにして効果的に活用できるかがポイントなのです。
アメリカの Aetna 社は契約者が健康面での目標を設定するソーシャルゲーム
「The Life Game」を介して顧客との交流を図っています。ゲームの中ではプレイヤー同士が繋がり、目標を共有することもできます。さらに、Facebookや Twitter に成果を発表することで個人的なネットワーク内でも情報シェアができます。この施策によって Aetna社は知名度や顧客との関係構築を強化し、ブランド力を強化しています。同様にインドの ICICI Prudential 社は加入者がそれぞれの定年後の思いや夢について語り合う「Living Your Passion」をソーシャルメディア上に開設しています。この取組により、定年後の生活に前向きに焦点を当て、長期にわたり顧客との関係を継続することを目指しています。
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ソーシャルメディア活用の 3 フェーズ
第 1 フェーズ:Listen ( 傾聴 )
まず、第 1 フェーズの「Listen」(傾聴)段階では、企業として 2 つの基本的な目的に沿ってソーシャルメディア上にある情報を分析します。第一に顧客センチメント(心情)の実態をつかむ事、そして第二に、顧客の中でも群を抜いて意見形成や意思決定に影響力を持つとみられるソーシャルメディアユーザー(インフルエンサー)の特定を行います。
第 1 フェーズのソーシャルメディア活用では、R&D、マーケティング、広報、IR あるいはその他顧客および対外的コミュニケーションを担う部門が主体となり、ソーシャルメディア上の情報モニタリングや情報収集、何か問題が発生した際の対処法の決定・対応を行うことが主たる業務となります。
実行に密に関連するため各チャネル別に実施される必要があります。このような一連の分析活動は、保険会社の展開する全事業地域において、現地の言語を通して 24 時間体制で実施されることが望ましいと考えられます。
第 2 フェーズ:Engage ( 関係構築 )
第 2 フェーズでは、第 1 フェーズの情報収集を継続しながら次のステップを踏み出し、体系的に顧客との関係構築を図ります。ここでは、公式チャネルと一般チャネルの双方において、企業全体規模で積極的に顧客との交流に参加し、企業認知度の向上・確立を目指します。
アクセンチュアは、ソーシャルメディア活用のための分析、導入、革新をサポートしてきた様々な企業との実績を基に、ソーシャルメディア活用展開を 3 つのフェーズに整理しました。(図 2 参照)
この段階で効果的な取り組みを行うためには、保険会社はライブモニタリング・警戒を行い、徹底的なアクション分析を行うための適切なツールやサービスを特定・導入することが必要となります。モニタリング・警戒に関していえば、例えば、コミュニケーションスタッフを配置し定期的な情報モニタリングや様々なメディアのスポットチェックの実施、特定のテーマに関する投稿の報告などを行うことも効果的と考えられます。
ソーシャルメディア上の情報分析においては、”インフルエンサー”を特定するための体系的なアプローチや、顧客からの質問と発言に対する分析、特定テーマやセンチメント(心情)に関する徹底的な分析等が必要となります。また、これらは適切な対処法の検討・
図 2. ソーシャルメディア活用の 3 フェーズ
ServeIT、マルチチャネル
Driveマーケティング活動、営業、採用
Supportカスタマーケア
React広報、IT、コミュニケーション
LearnR&D、マーケティング、顧客の声(インサイト)
ソーシャルメディアのモニタリングと警戒
ソーシャルメディアの分析
Listen(傾聴)
ソーシャルCRM変革プログラム
「一般」ソーシャルメディア
エンゲージメント・マネジメント
「公式」ソーシャルメディア
顧客プロファイルごとの最適化
シードトラッキングとROI
CRM統合
Engage (関係構築)
マルチチャネル統合
Optimize(最適化)
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一般に、企業の公式チャネルは、最新のソーシャルプラットフォーム上に構築されます。これには、ブログやランキング、レビュー、掲示板、Q&A サイト、ウィキ機能、メディアシェアリング機能等を含みます。公式チャネルは、特定のプライベートコミュニティを対象として、或いは一般チャネルにおける企業の各チャネルを統合して構築することも考えられます。また、公式チャネルは、保険会社がソーシャルメディアを活用して、独自のコミュニティを設けたり、特定のコミュニティ群を統合し新たに形成するのに有用な手段とも言えます。これらには、代理店のバーチャルコミュニティ、特定の繋がりのあるアフィニティグループ(USAA の軍関係者集団等)、専属代理店のコミュニティなどが挙げられます。
保険会社は Facebook、Twitter、Google、LinkedIn などの既に確立されたソーシャルメディア上に自社ページやグループを開設することで、一般チャネルに参加することも考えられます。各一般チャネルが異なる特徴を持つため、それぞれの特性に応じた活用が可能です。たとえば、Twitter は顧客サービス型のチャネルとして位置付け、Twitter に顧客からの照会テーマごとにアカウントを開設して顧客とのコミュニケーションを図ることも可能です。Facebook は申込受付や顧客との関係維持に適したチャネルと位置付け、特定のコミュニティの顧客に対してニュースリリースやクイズキャンペーンなどのイベントの発表の場としても活用するといった具合です。
第 2 フェーズのもうひとつの重要な側面を、アクセンチュアは「エンゲージメント・マネジメント」と定義しています。このフェーズでは、顧客との交流のフローをマネージし、保険会社のブランドイメージに対して大きな影響力を持つインフルエンサーを的確に特定・関係構築を図り、公式・一般チャネルでの活動を効果的に検証・レポートする仕組みを構築することが不可欠です。
さらに、保険会社は確固たるソーシャルメディア戦略と適切なガバナンス体制を整備し、ソーシャルメディアプラットフォーム毎にどのような交流を会社としてどのような機能でコントロール
すべきかを明確にすべきでしょう。アクセンチュアは適切な戦略、ロードマップ、手法の開発において豊富な実績を有しています。このフェーズでは、顧客サービス、マーケティング、営業、採用部門など会社全体規模での参画が必要となります。このエンゲージメント・マネジメントプログラムが適切に確立されてこそ、次の最終フェーズへ進めるのです。
第 3 フェーズ:Optimize ( 最適化 )
既に多くの保険会社は既存のマーケティングチャネルを最適化しています。例えば、様々なチャネルをカスタマー・リレーションシップ・マネジメント
(CRM)として一元的に統合管理を行っています。ソーシャルメディア活用の最終フェーズ“最適化”においても、最終的にはソーシャルメディアに対して同様の統合管理に到達することを目指します。特筆したいのは、単に顧客プロファイル(およびコンタクト)の一元的統合管理に留まらず、キャンペーンの成功事例や ROI をトラッキングし、特に有効なソーシャルチャネルの特定まで可能とするようなレベルを指向することです。
顧客プロファイルに基づく最適化を行うことで、保険会社は特定のコンテンツ、ネットワーク、顧客の高度な分析が可能となります。さらに、より詳細で質の高い情報を確保することで、一貫性のあるメッセージ発信やサービスを展開し、全マーケティングチャネルを含めた枠組みの中でのソーシャルメディア統合への道筋がより明確になります。
ソーシャルメディアの活用を最適化することで、キャンピングカーのオーナーや小規模企業の経営者など、特定の興味やニーズを持ったニッチ市場へも柔軟にアプローチできるようになります。保険会社の代理店網の新規顧客獲得や維持にもつながります。ソーシャルメディアが適切に統合されることで、有望な潜在顧客の特定、およびその潜在顧客をフォローすべき適切な代理店に連携することが可能となります。これは、専属代理店であっても独立系(乗合)代理店、ブローカーであっても同様です。
保険会社は、顧客がソーシャルプラットフォーム上で企業をフォロー / 関係構築し、日々の生活の中で投稿している個人的な情報の共有を許可する「オプトイン」を用いて、ソーシャルメディアと CRM を統合することが可能です。これは Facebook の「チェックイン」や「いいね」、Google の +1 ボタン、Twitter の「フォロー」や「リツイート」などの機能を通じても実現できるかもしれません。企業はこのようなソーシャルメディア上の生の情報を社内 CRM に取り込み、顧客からさらなるリコメンデーションを引き出したり、より具体的な対話を増やすことが出来るようになります。
また、別の手法として、「いいね」「+1」「リツイート」などを基準にシードトラッキングを行うことで特定の投稿に関するバイラル効果(口コミの効果)の測定が可能となります。例えば、公式サイト上に貼ったリンクへのアクセス数やツイートに対するリツイート数などから効果測定が可能です。
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ソーシャルメディア戦略の確立
1. 企業ビジョンの定義
企業はソーシャルメディアの活用にあたって、2 ~ 5 ヵ年のスパンでのソーシャルメディア施策展開の戦略的ロードマップを描くことが必要と考えます。その際、事業戦略、組織およびガバナンス体制、適用テクノロジーなどに関連する課題への対応と整合を取ったロードマップとする必要があります。このステップでの重要なアウトプットとしては、経営目標の設定、現行ケーパビリティのアセスメント、ベストプラクティスやトレンドの分析結果などが含まれます。
2. メトリクス(管理指標)の整備
第 2 ステップとして、現行ケーパビリティと将来展開上目指すべきベストプラクティスとの間のギャップを特定します。このギャップを埋めるために必要な候補施策をリストアップすると同時に、各々の施策について効果測定するための重要成功要因(Critical Success Factor)およびハイレベルのKPI(Key Performance Indicator)を併せて定義しておきます。
3. 組織とガバナンス体制の設計
施策とメトリクスを適切に定義した後、適切なコントロールとレポーティングラインを含めた組織およびガバナンス体制を設計します。これらの重要な要素として、ステアリング・コミッティや、施策推進時に発生する実務課題に対処する「コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)」の設立も含まれます。また、トレーニングやインセンティブなど、その他施策推進上の懸念事項についてもこの段階で考慮すべきでしょう。
4. 適用テクノロジーの選定とソリューション・ブループリントの策定
上記 3 つのステップのアウトプットについて合意形成した後、適用技術の選定と統合ソーシャルメディアソリューションのブループリント(青写真)の設計段階に進むことが出来ます。
アクセンチュアはソーシャルメディアの発展に関する研究を通じて、効果的なソーシャルメディア戦略の立案・導入のための重要なプロセスを 4 つのステップにまとめました。
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ソーシャルメディアを通じたイノベーション
例えば、以下が挙げられます。
• 独立系代理店が集まり、アイデア、経験、専門知識を共有するプラットフォームとして公式のソーシャルメディアを活用する。
• 顧客からのフィードバックや意見を商品開発に活用する。スターバックスの事例のように公式、或いは一般サイトでコンテストを実施し、店舗デザインや新商品などのアイデアを公募する。
• Facebook や LinkedIn のような一般サイトを積極的に活用している若者向けの求人をソーシャルメディア上で行う。
• 顧客同士の情報交換の場を提供することで、コールセンターへの入電数の削減を図る。
• 保険販売には直接関係のないチャリティ活動の広告や継続的な広報活動により「顔の見える 」 存在であることをアピールする。
これまで述べてきたとおり、ソーシャルネットワークが「実験」と「進化」のための「肥沃な土壌」であることは明らかです。ソーシャルメディアを顧客獲得やサービス提供のために利用する場として捕らえている企業は少なくありませんが、他にも様々な活用方法があります。
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ケーススタディ
保険会社によるソーシャル メディア活用法
アメリカンファミリー
「Be a Fan, Be a Winner」と掲げる米国生命保険会社のアメリカンファミリーは、Facebook 上でユーザーが同社とお気に入りのスポーツチームのファンになることでそのチームのグッズをプレゼントするアプリケーションを提供しています。このアプリケーションは 2 つの異なるページのファンをリンクさせます。
同社は米国中のスポーツチームや組織と FanFare 制度で協業しています。さらに各社ごとに 5,000 名を上限に、ファンが増える度に 1 人 1 ドルを米国赤十字社に寄付しています。
2009 年 8 月に開始したこのプログラムにより、アメリカンファミリーは認知度の向上、顧客の獲得と維持を実現しています。
ゼネラリ保険:Kontsurnous -トライブ(グループ)利益
フランスの損害保険会社ゼネラリ社は顧客を「トライブ(Tribe)」ごとのグループに属させる新タイプの保険Kontsurnous(「我々を信頼してください」という意味)を発表し、保険加入から得た利益を顧客同士が分け合うロイヤリティプログラムを実施しています。
例えば、自動車保険の加入件数ごとにポイントが与えられ各トライブ内で集計し配当するシステムです。
事故の被害に遭った会員はトライブで集めた「K-points」からも扶助され、100%を上限として保険金額を超過した損害金額について補てんされます。
この商品の保険料はコミュニティの状況に応じて設定されます。また、これまでのロイヤリティプログラムと異なり、この公式プログラムは個々の利益を譲渡できる仕組みになっています。
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ソーシャル CRM と規模に対する課題
ソーシャルメディア活用の推進に向けて
保険会社は前述の第 1 フェーズと第 2フェーズに到達することで大きな進化を遂げます。初期の“Listen”(傾聴)フェーズでの課題は Twitter や Facebookなどから収集したコメントとコールセンター業務に統合する点にあります。特に、顧客から寄せられた意見や質問に対する正確に対応するために、内容に応じて顧客サービス部門の適切な専門家に転送する必要があります。
第 1 フェーズでは、ソーシャルメディアのモニタリングと各部門・担当者への転送業務を少人数で行うことも可能かもしれません。しかし、第 2・第 3フェーズに進むにつれ、その処理量が増加するので、一連の業務を自動化す
保険会社がソーシャルメディアを活用し、多様なコミュニティを確立することで、認知度を高め顧客との関係構築を深められることは明らかです。アクセス数だけでは一般的に「人気」のソーシャルメディアブランドにはなれないかもしれませんが、他の業界よりも顧客の関心を掻き立て、質的に交流を深めることは可能です。既に多くの保険会社がこの可能性を開拓し始めていますが、その処理量や統合管理の課題と同様、顧客の個人情報の取り扱いやコンプライアンス遵守への課題に引き続き取り組んでいく必要があります。
る方法を模索する必要が出てきます。特に、バイラルマーケティングが成功し、高レスポンスを得られた際などには尚のことその必要性が高まります。
第 2・第 3 フェーズでは、寄せられた投稿を自動返信で対応できるものと、個別に専門家が対応するべきものに振り分けるソリューションを導入する必要があります。さらに、コールセンターへ寄せられる日々の入電と同等の件数を顧客情報を守りながら瞬時に対応しなければなりません。
ソーシャルメディアを介して大量の質問、コメント、返信が寄せられると、保険会社はその重要なデータを前に
ソーシャルメディアは業界内で差別化を図る、或いはリーダーシップを発揮する新たな機会を創出するなど、保険業界のあり方を変貌させる力をも秘めています。アクセンチュアでは、ソーシャルメディア施策を個別単発的なものとしてではなく、会社全体の総合的な変革プログラムのひとつに位置付け、推進する保険会社こそが今後成功していくものと確信しています。
様々な課題に直面します。ソーシャルメディアから発生する顧客との接点は、いつどのような理由でその問い合わせが寄せられたかを把握した上で全体のCRM に統合することが理想的です。
このような統合の取組みは、顧客情報の一元管理が比較的困難な旧世代の保険契約管理システムに業務処理を依存する保険会社にとっては大きな課題となるでしょう。
ソーシャルメディア活用の各施策を総合的に実施できるケーパビリティを確立するため、保険会社の多くは(特にレガシーの保険契約管理システムなど)既存の IT 基盤の見直しを図ることが望まれます。
著者についてエマニュエル・ヴィアーレはアクセンチュア・テクノロジー・ラボのディレクターです。南フランスのソフィア・アンティポリス・ラボを拠点に、金融機関のクライアント向けの革新的なテクノロジーを実現させるアプリケーションの開発・導入を専門としています。
お問い合わせ先 [email protected]
クリスチャン・スーシュはアクセンチュアのソーシャルメディアに関するアセット開発と欧州における R&D ソーシャルメディアイニシアチブの担当者です。
アクセンチュアについてアクセンチュアは、経営コンサルティング、 テクノロジー・サービス、アウトソーシング・ サービスを提供するグローバル企業です。 25万7千人の 社 員を擁し、世界120カ国 以 上のお 客 様にサービ スを提 供してい ます。豊富な経験、あらゆる業界や業務に 対応できる能力、世界で最も成功を収めて いる企業に関する広範囲に及ぶリサーチ などの強みを活かし、民間企業や官公庁の お客様がより高いビジネス・パフォーマンスを達成できるよう、その実現に向けてお客様とともに取り組んでいます。2012年8月31日を期末とする2012年会計年度の売上高は、約279億USドルでした(2001年7月19日NYSE上場、略号:ACN)。
アクセンチュアの詳細は www.accenture.comを、 アクセンチュア株式会社の詳細は www.accenture.com/jpをご覧ください。
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