自由レポート · 1.リスク評価:科学的知見に基づく食品健康影響...

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1 授業概要 管理栄養士は食を通じて人の健康を支えるので食の安 全に対する知識、技術を習得することは重要である。 本講義では食中毒や食品事故の要因となる微生物、寄 生虫、異物などについて学ぶ。 そして、食品に残留するなどして健康被害を起こす恐れ のある農薬、重金属などの化学物質やカビ毒などの天然 成分について学ぶ。 さらに食品添加物、食品衛生管理に関する科学的かつ客 観的な知識の習得をする。 また、生物的、化学的、物理的危害要因とそのリスクにつ いて理解し、これら危害要因によるリスクの低減方法につ いて考察する。 食品微生物学2013(岸本) 1 到達目標 食品の安全性の確保に関する基本的な知識を 身につけるとともに、それを実践する方法を学 ぶことが目的である。 そして、食品を扱うプロとして「安全・安心」とは 何かを理解し、問題解決の方法を主体的に考 える能力を養うことを到達目標とする。 2 食品微生物学2013(岸本) 第1回 食品衛生行政と法規①(食品安全基本法、食品の安全性の考え方ほか) 第2回 食品衛生行政と法規② (食品衛生行政 食品衛生法、食品衛生監視員、関連法規ほか) 第3回 食品の変質① (微生物とは ほか) 第4回 食品の変質② (微生物に関する基本事項 ほか) 第5回 食品の変質③ (食品の腐敗・変敗・変質 ほか) 第6回 食中毒① (食中毒の定義と概要、自然毒食中毒)、 第7回 食中毒② (微生物性食中毒その1) 第8回 食中毒③ (微生物性食中毒その2) 第9回 食中毒④ (ウイルス性食中毒) 第10回 食品による感染症・寄生虫症 (消化器感染症、人獣共通感染症、寄生虫症ほか) 第11回 食品中の汚染物質 (カビ毒・化学物質・異物) 第12回 食品衛生管理/食品の器具と容器包装 (HACCP/包装資材ほか) 第13回 食品添加物 第14回 新しい食品の安全性問題 第15回 試験とまとめ (なお、第2回から第14回まで毎回小テストを実施する) 3 食品微生物学2013(岸本) 自由レポート 提出は必須ではない。任意に提出する。提出しなくても減点なし。 提出されたレポートはその内容等を総合評価し、0~5点をつけ、成績に加点する (上限30点)。 第2回~14回の授業開始時のみ受け付ける。提出日直近の授業に関連する内容で、 表題(テーマ)に沿ったまとまりのあるものでなければならない。それ以外は評価の対 象にしない。 手書きで、A4サイズのレポート用紙3枚以上(表紙除く)であること。 ただし、Wordなどで作成した提出者オリジナルの文書ならば手書きでなくてもよい。 このとき、自身のオリジナルの文書であることをページ冒頭に書いておくこと。 インターネットの情報をプリントアウトしたものを添付することはできない。 新聞、雑誌、学術雑誌等の出版印刷物のコピーを参考資料として添付または貼付で きる。 レポート表紙に、「第○回授業(○月△日)授業レポート」と「レポートの表題(タイトル )」、番号、クラス、氏名を書き、左上を綴じること。提出を忘れて翌週提出したものは 評価の対象にしない。 4 食品微生物学2013(岸本) http://www.fmfsm.com/ 食品微生物学2013(岸本) 5 担当科目受講生へ 食品衛生学(金城学院大学) 2013前期 パスワード anzensei 授業資料のDL 小テストのDL 1章 食品衛生行政と法規 6 食品微生物学 Food Microbiology / Food Hygiene / Food Sanitation 食品微生物学2013(岸本)

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授業概要

管理栄養士は食を通じて人の健康を支えるので食の安全に対する知識、技術を習得することは重要である。

本講義では食中毒や食品事故の要因となる微生物、寄生虫、異物などについて学ぶ。

そして、食品に残留するなどして健康被害を起こす恐れのある農薬、重金属などの化学物質やカビ毒などの天然成分について学ぶ。

さらに食品添加物、食品衛生管理に関する科学的かつ客観的な知識の習得をする。

また、生物的、化学的、物理的危害要因とそのリスクについて理解し、これら危害要因によるリスクの低減方法について考察する。

食品微生物学2013(岸本) 1

到達目標

食品の安全性の確保に関する基本的な知識を身につけるとともに、それを実践する方法を学ぶことが目的である。

そして、食品を扱うプロとして「安全・安心」とは何かを理解し、問題解決の方法を主体的に考える能力を養うことを到達目標とする。

2 食品微生物学2013(岸本)

第1回 食品衛生行政と法規①(食品安全基本法、食品の安全性の考え方ほか) 第2回 食品衛生行政と法規② (食品衛生行政 食品衛生法、食品衛生監視員、関連法規ほか) 第3回 食品の変質① (微生物とは ほか) 第4回 食品の変質② (微生物に関する基本事項 ほか) 第5回 食品の変質③ (食品の腐敗・変敗・変質 ほか) 第6回 食中毒① (食中毒の定義と概要、自然毒食中毒)、 第7回 食中毒② (微生物性食中毒その1) 第8回 食中毒③ (微生物性食中毒その2) 第9回 食中毒④ (ウイルス性食中毒) 第10回 食品による感染症・寄生虫症 (消化器感染症、人獣共通感染症、寄生虫症ほか) 第11回 食品中の汚染物質 (カビ毒・化学物質・異物) 第12回 食品衛生管理/食品の器具と容器包装 (HACCP/包装資材ほか) 第13回 食品添加物 第14回 新しい食品の安全性問題 第15回 試験とまとめ (なお、第2回から第14回まで毎回小テストを実施する)

3 食品微生物学2013(岸本)

自由レポート 提出は必須ではない。任意に提出する。提出しなくても減点なし。 提出されたレポートはその内容等を総合評価し、0~5点をつけ、成績に加点する

(上限30点)。

第2回~14回の授業開始時のみ受け付ける。提出日直近の授業に関連する内容で、表題(テーマ)に沿ったまとまりのあるものでなければならない。それ以外は評価の対象にしない。 手書きで、A4サイズのレポート用紙3枚以上(表紙除く)であること。 ただし、Wordなどで作成した提出者オリジナルの文書ならば手書きでなくてもよい。

このとき、自身のオリジナルの文書であることをページ冒頭に書いておくこと。 インターネットの情報をプリントアウトしたものを添付することはできない。 新聞、雑誌、学術雑誌等の出版印刷物のコピーを参考資料として添付または貼付できる。

レポート表紙に、「第○回授業(○月△日)授業レポート」と「レポートの表題(タイトル)」、番号、クラス、氏名を書き、左上を綴じること。提出を忘れて翌週提出したものは評価の対象にしない。

4 食品微生物学2013(岸本)

http://www.fmfsm.com/

食品微生物学2013(岸本) 5

担当科目受講生へ

食品衛生学(金城学院大学)2013前期

パスワード

anzensei

授業資料のDL 小テストのDL

第1章 食品衛生行政と法規

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食品微生物学

Food Microbiology / Food Hygiene / Food Sanitation

食品微生物学2013(岸本)

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食品衛生とは 食品衛生法第4条⑥

「この法律で食品衛生とは、食品、添加物、器具及び容器包装を対象とする飲食に関する衛生をいう。」

食品衛生とは WHO(世界保健機関)

Food hygiene means all measures necessary for

ensuring the safety, wholesomeness and soundness

of food at all stage from its growth, production or

manufacture until its final consumption.

7 食品微生物学2013(岸本)

食品衛生とは

• 「いのち」を大切に。

• あらゆる「いのち」を守りたい。

• 幸せな生活。幸せな食生活。安全な食生活。

• 安全性が確保された食品を供給したい。

• 衛生=「いのち」を衛る

• 人間の食生活の智恵→食品衛生

• 食品衛生の目的=健康で幸せな生活の維持

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1・1食品安全行政の対象と範囲

食品微生物学2013(岸本)

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平成15年5月23日制定,法律第48号

食品安全基本法

食品微生物学2013(岸本)

食品安全基本法の考え方

1.フードチェーン全体における安全性の確保 From Farm To Table

製造・加工工程だけではなく,第一次生産から流通も含む安全性確保

2.食品の安全には,「絶対」はなく,リスクの存在を前提としつつ科学的知見に基づいてこれを制御する リスク分析による科学的評価

ゼロリスクを求めない 平成15年5月23日制定,法律第48号

10 食品微生物学2013(岸本)

食品安全基本法の基本理念

1.国民の健康の保護が最も重要という基本的認識(第3条)

2.食品供給行程の各段階における安全性の確保(第4条)

3.国民の健康への悪影響の未然防止(第5条)

11 食品微生物学2013(岸本)

リスク分析手法 1.リスク評価:科学的知見に基づく食品健康影響評価の実施

(第11条)

2.リスク管理:評価結果等に基づく施策の策定(第12条)

3.リスクコミュニケーション:施策の策定に当たっての関係者との情報や意見の交換

(第13条)

12 食品微生物学2013(岸本)

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1.委員会の役割 1)食品健康影響評価の実施

委員会による評価制度

2)評価結果に基づいた行政的対応の確保 評価結果に基づく勧告 施策の実施状況の監視,勧告

3)リスクコミュニケーションの推進

2.委員会の法的性格 審議会(行政委員会ではない)

3.委員会の組織 内閣府に設置 委員(任期3年)の任命は内閣総理大臣が行うが,任命に当たっては両議院の同意が必要

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食品安全委員会

食品微生物学2013(岸本)

科学的知見に基づき客観的かつ中立公正に食品のリスク評価を行う内閣府の機関。

http://www.fsc.go.jp/iinkai/index.html

2003年7月1日 - 内閣府に設置。

食品安全委員会 委員長:熊谷 進 (東京大学名誉教授) 微生物

委員長代理:佐藤 洋 (独立行政法人国立環境研究所) 公衆衛生学

(元東北大学大学院医学系研究科教授)

委員長代理: 山添 康 (元東北大学大学院役学研究科教授) 化学物質

(有機化学)

委員長代理: 三森国敏 (元東京農工大学大学院農学研究院教授) 毒性学

(非) 石井克枝 (千葉大学教育学部教授) 消費者意識

(非) 上安平洌子 (元(株)NHKグローバルメディアサービス企画事業部担当部長) 情報交流

(非) 村田容常 (お茶の水大学大学院教授) 生産・流通システム

14 食品微生物学2013(岸本)

http://www.fsc.go.jp/iinkai/iin_meibo_2407.html

食品安全委員会の専門調査会

15 食品微生物学2013(岸本) 食品微生物学2013(岸本) 16

http://www.fsc.go.jp

/

http://www.caa.go.jp/ • 2009.9~

食品微生物学2013(岸本) 17 食品微生物学2013(岸本)

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食品衛生行政の沿革

M33(1900) 「飲食物その他物品取締りに関する法律

S23(1948) 「食品衛生法」

警察による取り締まり

食品衛生監視員による指導

H07(1995) PL法 総合衛生管理製造過程導入による改正

H15(2003)Jan27 発表 BSE問題・残留農薬・表示問題・添加物事件を背景に食品衛生法改正を審議

食品の規格基準違反と表示基準違反に対する罰則強化する趣旨の改正

19 食品微生物学2013(岸本)

組織・機構と対象

国(厚生労働省)

食品微生物学2013(岸本) 20

食品衛生行政

都道府県(衛生主幹部局)

保健所

市町村(衛生主幹課・係)

•食品

•食品添加物

•食品を取り扱う器具

•食品の容器

•包装

•乳幼児が口に入れる可能性のあるおもちゃ

•食品に関係する営業施設

•集団給食施設

行政機構

食品微生物学2013(岸本) 21

愛知県

健康福祉部

生活衛生課

食品安全対策グループ

三重県

健康福祉部

食品安全課

岐阜県

健康福祉部

生活衛生課

厚生労働省

医薬食品局

食品安全部

企画情報課

基準審査課

監視安全課

食品衛生行政

国 http://www.pref.aichi.jp/eisei/

http://www.pref.gifu.lg.jp

/kurashi/kurashi-

chiikidukuri/syoku-

anzen-anshin/

http://www.pref.mie.lg.jp/SHOKUSEI/

HP/ http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/

syoku-anzen/index.html

食品微生物学2013(岸本) 22

愛知県の場合

http://www.pref.aichi.jp/iryofukushi/hc.html

http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/

http://www.pref.aichi.jp/shokuhinkensa/

http://www.pref.aichi.jp/0000042295.html

http://www.pref.aichi.jp/eisei/anzen.html

食の安全・安心情報サービス

健康福祉部健康担当局生活衛生課の事業内容

食品微生物学2013(岸本) 23

名古屋市の場合

各区保健所生活環境課 区内の飲食店や食品製造業、食品販売業などを監視指導しています。

食品衛生広域監視班 市内の学校給食などの集団給食施設を監視指導しています。

食品衛生機動班

輸入食品や広域流通食品を扱う施設などを監視指導しています。

中央卸売市場衛生検査所

市場内の卸売業者や食品販売業者などを監視指導しています。

食肉衛生検査所

中央卸売市場高畑市場内のと畜業者や食肉販売業者などを監視指導しています

健康福祉局健康部食品衛生課食品衛生係

http://www.city.nagoya.jp/kurashi/c

ategory/15-7-12-0-0-0-0-0-0-0.html

http://www.shokunoanzen.city.nagoya.j

p/action/main/index

対象と範囲

食品微生物学2013(岸本) 24

食品衛生行政

飲食に起因する衛生上の危害を排除

国民生活の安全確保

食品衛生法に基づく活動

第1章 総則 第6章 監視指導指針及び計画

第2章 食品及び添加物 第7章 検査

第3章 器具及び容器包装 第8章 登録検査機関

第4章 表示及び広告 第9章 営業

第5章 食品添加物公定書 第10章 雑則

第11章 罰則

不衛生な

食品の排除

有毒有害な器具・容器包装の排除

営業施設の規制

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食品衛生法 主な内容① p.5~6

a.目的(第1条)

b.食品事業者自らによる安全性の確保(第3条)

c.食品・添加物・器具・容器包装の定義(第4条)

d.販売を禁止するもの(第6~11条)

e.食品添加物の指定(第10条)

f.食品および食品添加物の規格と基準・残留農薬・残留医薬品(第11条)

食品微生物学2013(岸本) 25

食品衛生法 主な内容② p.6~7

g.総合衛生管理製造過程(HACCP)の承認と更新(13・14条)

h.器具・容器包装の規格と基準(第18条)

i.表示義務(第19・20条)

j.臨検検査と収去(第28条)

k.食品衛生監視員制度(第30条)

l.食品衛生管理者制度(第48条)

食品微生物学2013(岸本) 26

食品衛生法 主な内容③ p.7~8

m.施設基準と営業許可(第51・52条)

n.回収と廃棄(第54条)

o.営業の停止・禁止・取り消し(第55条)

p.食中毒の処置・患者の届け出(第58条)

q.罰則(第71・72条)

r.薬事・食品衛生審議会(第7~11条)

食品微生物学2013(岸本) 27

1・2食品の安全性の考え方

集団給食や外食産業の発達・拡大

加工食品の利用増加とその販路拡大

BSE

遺伝子組み換え食品

アレルギー物質を含む食品の表示

輸入食品(農薬・添加物他)

健康食品

ノロウイルス

安全性の確保・保障

広がる

食品衛生の

課題

28 食品微生物学2013(岸本)

食品事件 1996 O157食中毒(学校給食)

1998 O157食中毒(醤油漬けイクラ)

1999 ダイオキシン騒動・核燃料臨界事故(野菜)、 腸炎ビブリオ食中毒多発(1998~1999)

2000 黄色ブドウ球菌食中毒(加工乳)、異物混入事例 遺伝子組み換えトウモロコシを検出

2001 O157食中毒(牛たたき) 遺伝子組み換えジャガイモ混入、回収

2001 BSE発生、口蹄疫汚染(イギリス)

2002 食肉表示偽装、国産肉買い上げ事業に虚偽申請

2002 無認可食品添加物の使用発覚 中国野菜で基準以上の残留農薬発見

2003 鳥インフルエンザ

2007 1月 不二家 6月 ミートホープ 8月 石屋製菓(白い恋人)

10月 赤福餅,比内地鶏 11月 船場吉兆

2008 1月 中国製冷凍餃子(天洋食品) 6月 うなぎ産地偽装

9月 事故米転売 中国製メラミン入り乳製品 29 食品微生物学2013(岸本)

• 微生物(細菌、真菌、ウイルス)、寄生虫

• プリオン

• 毒素(微生物、動物、植物由来)

• 合成化学物質

• アレルゲン物質

• 物理的リスクとしての異物混入 他

食品に由来する危害(ハザード(Hazard))要因

危害とは、「健康に悪影響を引き起こす可能性を持った、生物的、化学的、物理的な作用を引き起こす食品のなかのもの、あるいは食品の状態」(Codex2003)

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P.8 表1-1参照せよ

食品微生物学2013(岸本)

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ハザード=食の安全を脅かすもの???

• 農薬

• 輸入食品

• 添加物

• 汚染物質

• 遺伝子組み換え食品

• いわゆる健康食品

• 微生物

• 飼料

• プリオン

• 器具・容器包装

• ウイルス

• カビ毒・自然毒

31 食品微生物学2013(岸本)

• リスク=望ましくない事態の発生する可能性

• 食品由来のリスク

=「食品中の危害によってもたらされる健康への悪影響の確率と重篤度の関数」(Codex2003)

• リスクマネジメント

=組織がその使命や理念を達成するためにその資産や活動に及ぼすリスクから最も費用効率よく組織を守るための一連のプロセス

組織目的の実現=企業:利益追求、公的機関:サービスの充実

食品のもつリスクーリスクとは

32 食品微生物学2013(岸本)

• リスクマネジメントのゴール リスクを許容範囲内に制御すること。 だって、リスクをゼロにはできないから

• リスクを処理したら次のリスクが待っている。

• リスクというものを適切に認知して、評価し、 うまく付き合いながらリスク処理を継続していくことが大切。

リスクって…?

33 食品微生物学2013(岸本)

添加物と農薬

• 多くの人が不安を感じる。

• 体に悪い?

• ガン?

• アレルギー?

• 胎児に影響?

• よく分からないけど体に悪い・・・

34 食品微生物学2013(岸本)

添加物の危険性?

• 種類、使用量は食品衛生法で規制

• 一日摂取許容量(ADI)以下の 添加物しか食べない。

死亡 健康被害 無作用 無作用

少量 量 大量

使用量

AD

I

最小致死量 最大無作用量

1/100

以下

35 食品微生物学2013(岸本)

不安の原因は?

• 「悪夢」 水俣病,サリドマイド事件、砒素ミルク事件 カネミ油症事件・・・・・・公害・薬害

• 企業は信用できない。

• 最近の牛乳食中毒、産地偽装、、、

• やっぱり、企業は信用できない。

• 「不信感」

36 食品微生物学2013(岸本)

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不安の原因は?

• 「いい化学物質」と「悪い化学物質」?

• 食品添加物・農薬=人工=危険

• 食塩・ビタミン=天然=安全

• 全ての化学物質は大量に食べれば 健康を害す

37 食品微生物学2013(岸本)

• 「少しでも毒性があるものは 少量でも食べたくない」

ゼロリスクの願い

ゼロリスク神話

• これは、中高生の教科書に問題がある。

• 正しい科学教育が食の安心の確保に必須

不安の原因は?

38 食品微生物学2013(岸本)

• 化学薬品より漢方薬の方が安心?

• これは錯覚

• 漢方の有効成分は化学物質

• 自然にあるものと化学薬品の成分は同じ

• 全ての野菜や果物は天然農薬を持つ

• 天然農薬の量は残留農薬の10000倍

不安の原因は?

39 食品微生物学2013(岸本)

• 誤解

• 香料に法定外添加物が使用された事件

• 健康被害の恐れはない

• しかし、マスコミが毒性を報道

• 消費者は「法律違反」=「健康被害」と 誤解

不安の原因は?

40 食品微生物学2013(岸本)

どうすればいいのか?

• 人間は不安、恐怖を感じて生き延びてきた。

• 「危ないうわさ話」には敏感

• 「安全」のうわさ話は聞き逃しても実害なし

• 「うわさ」をながすのはテレビ、新聞

• マスコミは「危ない話」で商売している。

• 人間は新しいもの好きでもある。(葛藤)

41 食品微生物学2013(岸本)

リスク分析で解決

• 危険な物質をどれくらい食べると どんな症状を呈するのか?

• 危害にあう確率はどの程度か。 = リスク評価

リスク管理 評価に基づいてできるだけ危害を少なくする

リスク

コミニュケーション

そして、

42 食品微生物学2013(岸本)

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厚労省、農水省、食品安全委員会HPより

食品の安全と安心に関するコミュニケーションの試み

43 食品微生物学2013(岸本)

でも、人間は感情の動物

• 科学的な事実を理解しても

• 理性では安全と分かっていても

• 「やはり嫌だ!」

• 直感的・感情的判断

• 自己保存の本能でもある。

• 感情も認めるしくみを作ることも大切か。

• 安全なものに安心を感じないこともある。

44 食品微生物学2013(岸本)

そこで、再度

食による健康危害・危険物質を整理

① 自然にある食品成分そのものが有害 →自然毒、アレルギー物質

② 食品自体に問題なし、が有害物質に汚染 →病原微生物汚染、農薬などの残留

③ 人工的産物の安全評価が定まってない →遺伝子組み換え食品、食品添加物など

これが原因の食中毒=事故として頻繁に発生、身近 =最も注目すべき

45 食品微生物学2013(岸本)

有機栽培作物

‐高くても買う人も大勢いますが・・・

有機農産物とは 化学合成された農薬、肥料、土壌改良資材を使わないで、種まきまたは植え付け前2年以上(果樹などの多年生作物は、最初の収穫前3年以上)経過し、堆肥など有機質肥料による土づくりを行ったほ場において収穫された農産物のことです。 有機JASマーク

左のマークが付されたものでなければ「有機○○」「オーガニック××」と表示することはできません。

46 食品微生物学2013(岸本)

有機栽培=安全? 一つの報告ですが、 Preharvest Evaluation of Coliforms, Escherichia coli, Salmonella,

and Escherichia coli O157:H7 in Organic and Conventional Produce Grown by Minnesota Farmers

Mukherjee A.; Speh D.; Dyck E.; Diez-Gonzalez F.

Journal of Food Protection, 67 (5), 2004 , pp. 894-900 • 有機農場32箇所の野菜・果物476点と普通農場8箇所の野菜・果物129点について、 大腸菌群、大腸菌、Salmonella, and E. coli O157:H7を検査

• 全ての有機農場で、家畜糞便の堆肥を使用

• 大腸菌群の汚染濃度は、どちらの農場群でも平均値は同じく2.9 log MPN/g

• 大腸菌陽性率は、有機農場で9.7%、普通農場で1.6%、ただし認証機関により認定された有機農場(8箇所)では4.3%であり普通農場と有意差なし

• 有機栽培レタスが最も大腸菌汚染率が高かった (22.4%) • E. coli O157:H7はどの検体からも検出されなかったが,

Salmonellaは有機レタス1検体と有機ピーマン1検体から検出された

春日文子博士(国立医薬品食品衛生研究所)の資料を引用

47 食品微生物学2013(岸本)

1・3食品衛生監視員と食品衛生管理者

食品微生物学2013(岸本) 48

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食品衛生監視員

食品微生物学2013(岸本) 49

食品衛生行政の第一線職員

食品衛生監視員になるためには? ① 「食品衛生監視員」 国・都道府県・保健所を持つ市や特別区の長が、一定の資格を持った職員の中から

必要に応じて命じた人。

② 「一定の資格を持った職員」 医師・歯科医師・薬剤師・獣医師の免許を持っている人

大学で医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、又は農芸化学の課程を修めて

卒業した人

栄養士免許を持っていて、行政経験として食品衛生事務を2年以上経験した人

別に定められた、大臣指定養成施設を修了した人

食品衛生管理者

食品微生物学2013(岸本) 50

許可を要する業種のうち、

下記の業種については食品衛生管理者の設置が必要

全粉乳、加糖練乳、調製粉乳、食肉製品、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、放射線照射食品、食用油脂、マーガリン、ショートニング及び規格が定められた添加物。

食品衛生管理者の任用資格

医師、歯科医師、薬剤師、獣医師

大学で医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業したもの。

実務経験があり、厚生大臣の指定した講習会を受講したもの。

その他

食品衛生行政の第一線職員

食品衛生責任者

食品微生物学2013(岸本) 51

食品衛生法施行条例および食品製造業等取締条例により、食品営業施設の営業者

は許可施設ごとに自ら食品衛生責任者となるか、従事者のうちから食品衛生責任者を選任しなければなりません。

食品衛生責任者は、次の資格のいずれかに該当し、常時、施設や取り扱い等を管理できなければならず、複数の施設の食品衛生責任者を兼任することはできません。

• 食品衛生責任者養成講習会および認定講習会修了者

• 他県の食品衛生責任者養成講習会修了者

• 調理師

• 栄養士

• 製菓衛生師

• その他(医師、歯科医師、薬剤師、獣医師等……)

1・4 食品衛生関連法規

1. 健康増進法 キーワード;特別用途食品 特定保健用食品

2. JAS法 キーワード;JAS規格制度 品質表示基準制度

3. 景品表示法(景表法) キーワード;公正取引委員会

4. と畜場法 キーワード;牛、馬、豚、めん羊、山羊

5. 食鳥検査制度 キーワード;鶏、あひる、七面鳥など

6. 食品表示制度 キーワード; 食品衛生法、JAS法など

7. GMF表示

8. アレルギー表示

食品微生物学2013(岸本) 52

食品微生物学2013(岸本) 53 食品微生物学2013(岸本) 54

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食品微生物学2013(岸本) 55 食品微生物学2013(岸本) 56

健康食品等に極端に依存しない、バランスのよい食生活を促すよう、保健機能食品へこの表記が義務付けられています。

食品微生物学2013(岸本) 57 食品微生物学2013(岸本) 58

消費者庁HPより 59 食品微生物学2013(岸本)

http://www.caa.go.jp/foods/index8.html#m01

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食品微生物学2013(岸本) 61

食物アレルギー発症の傾向 • H13.14調査(全国モニタリング調査)

• 3822症例 木の実類1.4%

肉類1.8% その他

8.3%魚卵2.5%

大豆2.0%

ピーナッツ2.9%エビ4.1%魚類4.4%

そば4.6%

果物類5.8%

小麦8.0%

乳製品15.9%

鶏卵38.3%

何らかの食物摂取後60分以内に症状が出現し、かつ医療機関を受診したもの

年齢: 0歳 32.8% 1歳 18.0%

6歳まで 77.7% 20歳以上 9.5%

食品微生物学2013(岸本) 62

表示が必要な特定原材料等

• 特定原材料(表示が義務)

卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに ・・・(7品目 )

• 特定原材料に準じるもの(表示を奨励)

あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、

牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、

まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、

バナナ ・・・(18品目)

食品微生物学2013(岸本) 63

表示に関する注意事項 (厚生労働省Websiteより)

• 「入っているかもしれない(可能性表示)」はダメ。

• キャリーオーバー、コンタミでも表示する。

• 微量でも表示する。

• 複合した表記はダメ (小麦・大豆 → 穀類) (牛肉・豚肉 → 肉類)

食品微生物学2013(岸本) 64

特定原材料の濃度について (厚生労働省Websiteより)

• 特定原材料のタンパク質濃度が ① mg/ml 含まれている場合

アレルギーを確実に誘発する。 ②数μg/ml(PPM) 含まれている場合

個人差によりアレルギーを誘発する。 ③ ng/ml(ppb)含まれている場合

アレルギーはほぼ誘発しない。

食品微生物学2013(岸本) 65

表示が義務付けられる特定原材料の濃度

(厚生労働省Websiteより)

• 食品中の特定原材料のタンパク質濃度が A 10μg/ml (10ppm)以上 含まれている場合

表示する。 B 10μg/ml (10ppm)以下 含まれている場合

表示する必要なし。

食品微生物学2013(岸本) 66

表示の例

名称:ポテトサラダ

原材料名:ジャガイモ、にんじん、ハム(卵・豚肉を含む)、マヨネーズ(大豆油を含む)、タンパク加水分解物(牛肉・サケ・サバ・ゼラチンを含む)、調味料(アミノ酸)、発色材(亜硝酸Na)、リン酸Na

名称:洋菓子

原材料名:小麦粉、砂糖、植物油脂(大豆油を含む)、鶏卵、アーモンド、バター、異性化液糖、脱脂粉乳、洋酒、でん粉、ソルビトール、膨張剤、香料(乳成分、卵を含む)、乳化剤(大豆由来)、着色料(カラメル、カロチン)、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)

個別表示

一括表示 名称:めんつゆ

原材料名:しょうゆ、風味原料(かつお節、かつおエキス、サバぶし、煮干し、昆布)、糖類(砂糖、果糖ぶどう糖液糖)、発酵調味料、みりん、食塩、タンパク加水分解物、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、酸味料 (原材料の一部に小麦、牛肉、豚肉、ゼラチンを含む)

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1・5 コーデックス

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コーデックス(Codex)とは

コーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)

食品規格という意味

消費者の健康を保護し、公正な食品貿易を推進させることなどを目的に国際的に採用できる食品等の規格基準の策定を行う

食品規格委員会=通称「コーデックス委員会」 (CAC;Codex Alimentarius Commission)

食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)合同の

食品規格計画の実施機関 (Joint FAO/WHO Food Standards Programme)

世界的に通用する食品規格はこの規格だけで、

これをコーデックス規格と呼んでいる。

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