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文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開発学校 平成27年度指定スーパーグローバルハイスクール研究開発実施報告書 第2年次 (研究開発構想名) 科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成 平成29年3月 国立大学法人 東京工業大学 附属科学技術高等学校

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文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開発学校

平成27年度指定スーパーグローバルハイスクール研究開発実施報告書

第2年次

(研究開発構想名)

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

平成29年3月

国立大学法人 東京工業大学 附 属 科 学 技 術 高 等 学 校

本報告書に記載されている内容は,グローバル・リーダー育成に資する教育

を重点的に実施し,これに関する教育課程等の改善に資する実証的資料を得る

ため,現行教育課程の基準の下での教育課程等の改善に関する研究開発のほか,

学校教育法施行規則第85条(同規則第108条の第2項で準用する場合を含

む。)並びに第79条及び第108条第1項で準用する第55条に基づき,現行

教育課程の基準によらない教育課程を編成・実施するために,文部科学大臣の

委託を受けて実施した実証研究です。

したがって,この研究の内容のすべてが,直ちに一般の学校における教育課

程の編成・実施に適用できる性格のものでないことに留意してお読み下さい。

参照:平成26年1月14日文部科学大臣決定

「スーパーグローバルハイスクール実施要項」の6

はじめに 今年度は,選挙権年齢が18歳に引き下げられ,初の選挙が行われるという歴史的な年に

なりました。第24回参議院議員通常選挙では,18歳の投票率が高い割合となり,若年層

の政治への関心の高さが伺えました。選挙で投票することは国家の要であり,18歳の生徒

が在籍する本校では,様々な授業や体験の機会を通じて,社会に関わろうとする意欲を育て

ていくべきであると考えております。このような変化する社会情勢の中で,文部科学省は,

学習指導要領等改訂の基本的な方向性を打ち出し,次期学習指導要領等が目指すのは,学習

の内容と方法の両方を重視し,子供たちの学びの過程を質的に高めていくことであるとして

います。 本校では従前より,科学技術系人材育成プログラムにより,科学者・技術者として必要な

知識・能力・技能・スキルなどを身につける教育を行ってきました。さらには,指定2年目

を迎えるスーパーグローバルハイスクール(SGH)研究開発では,東京工業大学の全面的

な支援のもと,国際社会に通用する “グローバルテクニカルリーダー(GTL) ”の育成に取り組んでいます。 私たちが取り組むべき課題は,コンテンツ中心の学習を脱却し,学習方法をも重視したコ

ンピテンシー中心の学習への転換を具体的に企図することです。そのためには,高校段階で

すべきことは何かを見極め,育成すべき資質・能力の提案することが喫緊の課題であると考

えています。そのため,SGH開発科目を,既存の教科・科目,および科学技術系人材育成

プログラムと一体的に捉えるカリキュラム・マネージメントの必要性を感じております。 私たちは,SGH研究開発指定をきっかけとして,科学技術系人材に必要な育成すべき資

質・能力とは何か,技術教育とは何か,グローバル人材とは何か,これらを高校段階の教育

に落とし込むためには,本校は何をするべきなのか,様々な課題に取り組んでおります。整

理すべき課題は多くありますが,私たちはこの取り組みを通じて,SGH研究開発の成果を

社会に発信していきたいと思います。幸いにも私たちは,培ってきた科学技術系人材の教育

方法,とりわけ課題研究の指導方法を手がかりとして,問題解決のプロセス・方法を提案する

ことにしたいと思います。 研究第二年次は,第一年次の試行を進化させ,深い学びに耐えうる新たな提案を掲載して

おります。お読みいただく皆様方のご助言・ご感想を頂戴できれば幸甚です。 最後になりましたが,SGH研究開発の機会を与えて下さった文部科学省の関係各位,ご

指導とご助言をいただいている運営指導委員会の関係各位に,厚く御礼申し上げます。さら

に,高大連携の推進に当たり多大なご協力をいただいた東京工業大学の教職員の皆様に謝意

を表します。 平成29年3月

東京工業大学附属科学技術高等学校 校長 宮本 文人

目 次 ❶ 平成28年度スーパーグローバルハイスクール研究開発完了報告 ❷ 平成28年度スーパーグローバルハイスクール研究開発の成果と課題 ❸ 実施報告書(本文) ❸−1 研究の概要 Ⅰ 研究開発の指定期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 Ⅱ 研究の概要および本校の概要等 1 研究開発構想名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 研究開発の目的・目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 研究開発の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 4 学校全体の規模 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 5 研究開発の内容等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 6 研究開発計画・評価計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 7 研究開発成果の普及に関する取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 8 研究開発組織の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

❸−2 スーパーグローバルハイスクール研究開発の実施内容 Ⅰ グローバル社会と技術研究会の活動報告 1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 39

Ⅱ グローバル社会と技術・応用研究会の活動報告 1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 52

Ⅲ SGH課題研究研究会の活動報告 1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 65

Ⅳ 海外調査研修の報告 1 SGHマレーシア海外調査研修について ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 2 SGHフィリピン共和国海外調査研修について ・・・・・・・・・・・・・・・ 68

❸−3 第2年次の研究のまとめと今後の課題・成果の普及 Ⅰ 第2年次の研究のまとめと今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 Ⅱ 今後の課題・成果の普及 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73

❹ 関係資料 Ⅰ 平成28年度教育課程表 Ⅱ 運営指導委員会の記録 Ⅲ 連絡協議会等の記録 Ⅳ SGH関連の出張の記録 Ⅴ 報道機関等による取材・報道の記録 Ⅵ SGH生徒意識調査 Ⅶ 生徒成果物

❶ 平成28年度スーパーグローバルハイスクール研究開発完了報告

(別紙様式3)

平成29年 3月 31日

研究開発完了報告書 文部科学省初等中等教育局長 殿

住所 東京都目黒区大岡山二丁目12番1号 管理機関名 国立大学法人東京工業大学 代表者名 契約担当役 理事・副学長 安 藤 真 印

平成28年度スーパーグローバルハイスクールに係る研究開発完了報告書を,下記により提出します。

1 事業の実施期間 平成28年4月28日(契約締結日)~平成29年3月31日 2 指定校名 学校名 国立大学法人東京工業大学附属科学技術高等学校 学校長名 宮本 文人 3 研究開発名

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成 4 研究開発概要

科学技術系の知識を有しながら,ビジネスフレームワークのような問題解決の枠組みな

どのマネージメントスキルをも有する人材を育成するため,また,リスク回避の観点から,

ESD理解を深めるため,産油国・鉱物資源産出国(フィリピン・オーストラリア・サウ

ジアラビア・アメリカ・中国・モンゴル)との国際交流を行う。その際,国際社会で活躍

するリーダーとして育成すべき資質と能力を明確にし,備えるべきスキルと地政学的リス

ク回避能力,語学力(英語によるコミュニケーション力等)を獲得するため,新科目「グ

ローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメントの手法や

費用便益分析などの定量的評価を取り入れた「SGH課題研究」を開発する。その際,東

京工業大学との連携教育を大幅に増強し,東京工業大学グローバルリーダー教育院・リベ

ラルアーツセンター・学術国際情報センター等や企業との連携を図りながら,斬新な育成

プログラムを開発・実践し,成果普及に努める。

5 管理機関の取組・支援実績 (1)実績の説明

① 附属科学技術高等学校での大学教授による特別講義(6月24日) 第1学年開発科目「グローバル社会と技術」において,附属科学技術高等学校の専門

5分野に関係する本学の専攻から,5名の教員を派遣し,特別講義を実施した。 ② 本学が主催する各種行事等への附属科学技術高等学校生徒の参加(7月) ⅰ)“Communicating Science and Engineering in Society (CSES)-東工大サマープロ

グラム 2016,「英語で語る科学・技術・社会」”に,附属科学技術高等学校から希望した生徒 14 名が参加し,留学生と本学学生が共に文化背景や社会の違い・科

学・技術と社会との関係,問題解決へのアプローチの多様性を学ぶ授業に参加した。

ⅱ)本学大岡山キャンパスにおいて,「サマーレクチャー」を9月に実施し,第2学年

全生徒が参加した。本学大学院 環境・社会理工学院の竹内徹教授による「建築構造デザインの世界−華麗でタフな建築を実現するために−」と題した講演を行い,生徒はグループに分かれてキャンパス内の2つの研究室見学を行った。関連して,1

1月に附属科学技術高等学校で開催された「サマーレクチャーレポート発表会」に

おいては,講評者として本学教授を派遣した。 ③ 附属科学技術高等学校での本学教授による講演会(1月27日) 「グローバルリーダー育成講演会」と題して複数回実施される講演会に,本学リベラ

ルアーツ研究教育院池上彰教授を派遣し「グローバルリーダーを取り巻く国際情勢」と

題する講演会を行った。 ④ 本学教授団による専門的支援 教育運営,教育工学,国際交流,工学専門などの専門的見地から支援するために,本

学から学内指導者として6名を選出し,運営指導委員会の委員として委嘱した。 ⑤ 本学事務組織による支援 本学の事務組織である総務課,企画戦略本部,教育推進室,国際室などを中心に,本

研究開発の運営に対する支援を行った。 ⑥ 管理機関における事業の管理 図1に示すように,本研究開発における研究組織体制を整備している。

図1 SGH研究開発研究組織図

6 研究開発の実績 6-1 グローバル社会と技術研究会 (1)実績の説明

① 新科目「グローバル社会と技術」の運営と試行 第1学年配当科目である本科目は,開発科目だが,学校としては,科学技術教育の入

り口となっており,両者の両立・整合性を図る必要がある。本科目は,①解決すべきテ

ーマの理解,②問題解決の手順を習得,③具体的な解決への提案,④英語による発表と

討議の4つの段階よりなる。①では,ESDに不可欠な基礎的学習を行う。②③では問題解決の手順を学ぶが,技術の専門家としての情報モラル・技術者倫理を扱う授業の中で

の問題解決を学ぶ。なお,発表や討議に英語による表現を導入し,知識の再構築による

理解の進化を試みた。今年度は,科目の実践を本格化させた。実施にあたって,本校が

5クラス編成であり,かつ,1テーマあたり4時間で実施するという制約条件を満たす

ため,オムニバス形式の授業運営を実施し,軌道に乗せることができた。特に,テーマ

:スピーチコミュニケーションでは,SGHで採用した外国人教員(以下,外国人教員)

と本校日本人教員(英語科)とのティームティーチングを行った。 ② 東京工業大学教員による特別講義 科学技術への興味・関心を喚起させ,社会と技術の関わりを考えさせることを目的で

として,本学教員を講師として,平成28年6月24日(金)14:15~15:15

「特別講義」が行われた。それぞれの講義のテーマ,講義者は以下の通りである。生徒

は受講する講義を自ら選んで参加した。 ・「燃料電池のしくみとエネルギーの流れ」物質理工学院応用化学系伊東章教授 ・「プログラミングを楽しむ」情報理工学院情報工学系権藤克彦教授 ・「ロボットはできた。さあ,どう動かそう。」工学院システム制御系三平満司教授 ・「風力発電を知っていますか」工学院電気電子系七原俊也教授 ・「人々が生活する世界遺産」環境・社会理工学院融合理工学系高田潤一教授

③ 校外研修 12月21日(水)横浜みなとみらい地区とその周辺において,第1学年生徒全員を

対象に授業の一環として校外研修を実施した。この地区を選んだ理由は, 多くの技術館・博物館・開港に関する港湾施設等があり,フィールドワークに適しているためである。

生徒達は,地球環境の保全やエネルギー問題に関するテーマを事前に考え,フィールド

ワークによる調査を経て,レポートを提出した。レポートでは,種々の科学技術を体感

し,フィールドワークで深めた考えが読み取れる。この研修をきっかけに,本校の生徒

が問題解決の手段を学習したことが期待される。 ④ グローバルリーダー育成講演会 今年度は,第1学年対象のグローバルリーダー講演会を2回実施した。 第1回は,11月4日(金)15:10~16:00,「グローバル化時代に向けた

英語学習」と題し,NHKおとなの基礎英語講師・立教大学教授松本茂先生を迎え,講

演会を実施した。グローバル化する社会の中で,成長していくために自分が誇れる能力

・体験を持つこと,使いものになる外国語の必要性などを強調されていた。聴衆である

生徒の間にマイクを持って回りながら問答を試みるなど,生徒に直接訴えかけていた。 第2回は,1月27日(金)15:10~16:00,「グローバルリーダーを取り

巻く国際情勢」と題し,ジャーナリストとして多くの著作を持ち,テレビ番組でも活躍

中の本学教授池上彰先生を迎え,講演会を実施した。直近のトピックであるアメリカ合

衆国の大統領選挙を題材にして,政治や社会のしくみ,国際関係に及ぼす影響などを,

現地で取材された経験を交え,わかりやすい表現で次々と説明されていた。多くの取材

経験に基づく様々な現象の見方,海外で気をつけるべきことなど,大変興味深く,生徒

から活発な質問がなされていた。2回の講演会は,大きな成果を上げた。

6-2 グローバル社会と技術・応用研究会

(1)実績の説明 第2学年の「グローバル社会と技術・応用(AGST)」は,第1学年の「グローバル社会と技術(GST)」の続編となる。本科目では,すでに学んだ問題解決の手法を試行する段階となる。特に研究第2年次に当たる本年度は,授業内容を精選し,学校行事への組み込

みは最小限とし,3種類のテーマ学習・各分野による「SGH課題研究への道」・グロー

バルリーダー育成講演会等の講演会等の実践を充実した。 テーマ学習では,集中講義として「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英

語によるコミュニケーションスキル」をオムニバス形式で実施した。なお,英語に関する講

義は,外国人教員による授業で「Global Awareness」として実施した。また,「SGH課題研究への道」では,テーマ設定の手順について,一部の分野で一般化へのモデル化に着手

した。本科目は上記授業内容に加えて「SGH課題研究」へのステップとなる科目であり,

以下のような行事,研修,講演会等,多岐多彩なものからなる。

・6月17日 歌舞伎鑑賞教室に参加し日本の伝統・文化への理解を深めた。 ・7月7日 本科目に関する概要を「ガイダンス」として実施した。 ・9月2日 本学大岡山キャンパスを訪問し,講演に参加した。その後各自の興味・関

心に応じて研究室訪問を行なった。 ・9月29日,10月6日 課題研究発表会参加 ・11月17日 本学大岡山キャンパス研究室訪問について全員がリサーチペーパーを

提出,各クラスでの代表が,プレゼンテーションを行なった。 ・12月15日 「リーダーとしての生き方,その喜びと生きがい」講師:樋渡社中

Founder&CEO前武雄市長樋渡啓祐氏による講演会を行った。 ・12月21日 「理系リーダーのススメ」講師:楽天株式会社楽天ベンチャーズ(JP)宮田多門氏による講演会を行った。

・1月17日 「芝浦で世界とつながる,世界をつくる」講師:株式会社広告製版社代

表取締役伊東勝氏による講演会を実施した。

6-3 SGH課題研究研究会

(1)実績の説明 ① 「SGH課題研究」の運営と取り組み 本科目は,本研究開発における学習の総仕上げとして,いままで学び,蓄積してきた

知識やスキルを活かして問題を分析し,課題を設定することから始める。そして,科学

技術系人材育成プログラムによって培ってきた知識や能力・スキルを総動員し,必要に

応じて,マネージメントに基づく損益や費用便益分析など定量的な評価の結果などを根

拠としながら立案し,ものづくりや実験・実習によって実証的な研究を進める。これら

の取り組みにより,論理的に物事を捉え,直面した問題を解決できる人材,モデル化し

た手順により問題解決を図る人材,チームワークの形成などリーダーとなり得る人材,

成果の英語化により,自ら蓄積した知識を再構築できる人材の育成が期待できると考え

ている。 ② 講演会等の実施

外部講師等を招聘して下記の講演会(応用化学分野)および講評会(建築デザイン分

野)を行った。

①応用化学分野講演会 講師:東京大学生産技術研究所 岡部 徹教授 日時:平成29年1月24日 9時30分〜12時00分 題目:「奇跡の物質-レアメタル-」

②建築デザイン分野講評会 講師:株式会社 URコミュニティ参与 林邦彦氏 対象:平成28年度建築デザイン分野 SGH課題研究実施生徒及び3年生希望者 (聴講:建築デザイン分野第2学年及び建築デザイン分野への所属が決まって

いる第1学年生徒) 日時:平成28年12月16日 13時15分〜15時15分 題目:「私のラテンアメリカ・ベネズエラ」

6-4 海外調査研修 (1)実績の説明(マレーシア)

7月31日(日)から8月5日(金)の6日間,生徒8名(男子6名,女子2名)と

引率教員3名でマレーシアにおいて調査研修,現地校との国際交流を行った。現地校に

おいて講義を受けた他,本校生徒がエネルギー・環境問題についてのプレゼンテーショ

ンをする機会が3回あり,それぞれの学校で現地生徒と意見交換を行うことができた。

UNIMAS(マレーシア大学サラワク校)では,教授陣から専門的なアドバイスを得た。また,企業訪問では,まさに国際社会で活躍する日系企業(太陽誘電サラワク社)社長

から直々にレクチャーを受けた。日本国内で,日本人同士で話しているだけでは生まれ

ないような考え方や視点に触れ,非常に有意義な研修となった。 (2)実績の説明(フィリピン共和国)

8月7日(日)~12日(金),生徒6名(男子3名・女子3名),引率教員2名が

フィリピン共和国デ・ラ・サール大学附属高校で調査研修を行った。今年度は「異文化

理解」「コミュニケーション能力の育成」の観点から,ホームステイを実施した。8日

~12日まで校内での研修(環境,エネルギーに関するプレゼンテーション・質疑応答,

附属高校通常授業参加),日本文化の紹介(文化紹介プレゼンテーション,折り紙教室),

校外研修(デ・ラ・サール大学研究室訪問,地熱発電所訪問,Eco-Park 散策,Eco-Island訪問)等プログラムに沿って研修を行った。

7 目標の進捗状況、成果、評価 7-1 グローバル社会と技術研究会

研究第2年次は,本科目の学習活動において,①解決すべきテーマの理解,②問題解決

の手順を習得,③具体的な解決への提案,④英語による発表と討議の4つの段階よりなる。

①では,専門分野の教員があたり,科学技術教育の入口であることを意識しながら,情報

収集・内容理解・課題設定を目指すが,成果が得られつつある。次に,②・③では,技術

の専門家としての情報モラル,技術者倫理を学び,倫理観の涵養を助けながら,問題解決

の手段を学ぶ。ここでは,独自のICT教材を開発しながら,実践を進めており,順調な

滑り出しができている。また,外国人教員によるスピーチコミュニケーションの実施によ

り,各章のレポートの英語化に加え,ノンバーバルコミュニケーションスキルの習得を目

指している。

7-2 グローバル社会と技術・応用研究会 研究第2年次は,内容の精選を行い,関連する学校行事等を整理し,集中講義と専門分

野で行われる「SGH課題研究への道」を活動の中心とした。「SGH課題研究への道」

を「SGH課題研究」へと効果的につなげていくためには,生徒自身がグローバルな視野

に立って活動し,課題を発見・解決するためのフィールドワーク,すなわち,実際にもの

に触れたり,専門家にヒアリングを行ったりすることが,より実感を伴った学習となり,

課題設定の具体化につながる。しかし,現状では生徒全員の視察調査は予算や年間スケジ

ュールの確保のため実施しがたく,まずは,課題設定のための生徒の活動をモデル化する

ことが求められる。 7-3 SGH課題研究研究会 研究第2年次の活動では,全ての分野で「SGH課題研究」が提案され,研究会で認定

した。その結果,全ての分野から2テーマ以上,合計15テーマを実施できた。実地調査

でのご指摘を踏まえ,従来の課題研究との違いについて検討した。他方,生徒の発表の場

を得ることができ,「都内国立校合同 SSH/SGH課題研究成果発表会」(2月19日:東京学芸大学)に参加し,ポスター発表・SGH部門で2テーマが受賞することができた。ま

た,3月「SGH甲子園」に10名の生徒が参加し,成果を発表することができた。 他方,校内の取組として,「SGH課題研究」への導入となりうる第2学年での学習を,

専門教科教員と普通教科教員とが協力しあい,充実させることが重要であり,生徒の自主

性を尊重しながら,「SGH課題研究」への接続を円滑にすることが求められる。

7-4 海外調査研修 イスラーム教国の資源国での調査研修が,本研究開発では必須としたため,訪問国にマ

レーシアを選定し,昨年度からのフィリピンに加えて実施した。計画通りの成果を得なが

ら,日本との再生可能エネルギーの考え方の違い(太陽光発電と水力発電)を調査するこ

とができた。大きな成果であったといえる。

7-5 まとめ 研究第2年次は,新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」

において,研究第1年次に作成した教材を用いて,効果の検証をしながらの実施,また,

教材・指導法の再検討を行い,授業形態・指導方法,成績評価の方法などの確認と改善の

検討を行った。授業運営については,予定通り進み,教材内容についてもより実情に沿っ

た改善がなされている。また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携との

実現について,計画通りの実績を積んでいる。第1学年では,NHKテレビ「おとなの基

礎英語」講師である立教大学教授松本茂氏,マスコミで活躍されている東京工業大学教授 池上彰氏を招くことができた。また,企業との連携を図る必要があることから,第2学年

では,前武雄市長の樋渡啓祐氏,楽天株式会社の宮田多門氏,株式会社広告製版社社長の

伊東勝氏を招くことが出来た。刺激の強い企業人を招くことにはためらいもあったが,起

業の現場を垣間見ることができたと考えている。また,「SGH課題研究」については,

テーマや運営方法について校内での試行を重ねる計画とした。この点はおおむね達成でき

たと考える。それに加えて,SGH課題研究における問題解決モデルについて,検討を行

った。 管理機関と附属科学技術高等学校との連携については,図1に示す研究組織により,本

学教授陣による理解と協力の下,支援を行うことができている。次年度も,同様に支援を

していく。 <添付資料>目標設定シート

8 次年度以降の課題及び改善点 8-1 グローバル社会と技術研究会 研究第2年次における本科目の学習活動は,1 テーマ4時間とする時間的制約があり,内容が豊富であるがゆえに,十分な演習ができているとは言いがたい。そのため,ICT

教材の開発・導入を進めながら,1テーマあたりの時間的制約に対する柔軟な対策の1つと

して,本科目では種を蒔き,多くの科目の中でそれを育てることが必要であると考え,次

年度には,カリキュラム・マネージメントにも挑戦する予定である。 本科目は,研究1年次に引き続き,東京工業大学教員による特別講義,著名人によるグ

ローバルリーダー育成講演会を実施し,生徒の興味喚起に大きく役立つことが確認された。

研究2年次は,NHKテレビ「おとなの基礎英語」の講師をされている立教大学教授松本

茂先生,マスコミ等で活躍の本学教授池上彰先生に講師をお引き受けいただいた。著名人

による講演は,生徒のモチベーションを高め,効果が大きいが,これを通常の授業にどの

ようにつなげていくか,位置づけの検討は必要である。 8-2 グローバル社会と技術・応用研究会 研究第2年次では,本研究会での活動を焦点化し,本校で掲げるグローバルテクニカル

リーダー(GTL)像をなるべく高校段階での教育活動に落とし込む検討をしている。本

校では,GTLが備えるべきスキルを,インクルージョン力(多様性受容力),バックキ

ャスティング力(目標から現在すべきことを考える力),コンセンサスビルディング力(合

意形成力))と定義しているが,実際に高校段階で何をすれば良いのか,明確にする必要

がある。この問いに答えるべく,本校が提案している解は,問題解決の手順・手法を学ぶこ

とであり,本研究会で実施する「SGH課題研究への道」である。この活動では,課題研

究のテーマを決める場面における問題解決を取り扱っている。分野の特性があり,アプロ

ーチの方法は様々だが,次年度にかけてこの収束を図りたいと考えている。その一方で,

集中講義の3テーマは,ほぼ形が整い,授業が円滑に行われつつあるが,この3テーマを

どのように力の獲得に結びつけていくかが課題となる。

8-3 SGH課題研究研究会 研究第2年次では,第2学年を対象に実施している「グローバル社会と技術・応用」の

「SGH課題研究への道」を主に専門分野の教員が行っているが,今後は「SGH課題研

究」への導入となりうる学習を,専門教科教員と普通教科教員とが協力して行い,充実さ

せることが重要であり,生徒の自主性を尊重しながらも「SGH課題研究」への接続を円

滑にすることが求められる。今後も,学校全体で取り組む研究開発の理念を忘れることな

く,着実な実行が求められよう。反省すべき点を次年度にいかしていきたいと思う。さら

に,SGH課題研究で得られた成果の普及ために,各種発表会やコンテスト,地域イベン

トなどで公開することで学術交流や地域交流に寄与する努力を続けながら,より効果的な

公開する場の獲得や公開方法について検討することが必要であると考えられる。 8-4 海外調査研修 今年度の取組により,東南アジアにおける,再生可能エネルギーの考え方が,日本とは

異なることが明らかになった。運営指導委員会では,先進国での調査をすべきであるとの

ご助言を受けており,次年度において,検討を開始する予定である。 8-5 まとめ SGH研究開発は研究第2年次を迎え,模索する段階から研究第1年次の試行の結果を

基に,育成すべき資質と能力を収束しつつある。グローバルリーダーを育成するために,

グローバルリーダーの持つべき能力を分解して提案してきたが,今年度の取り組みでは,

この提案を,いかに高校段階の教育に即したものにしていくか,何をすれば良いのか,提

案していく段階となっている。

本校では,研究開発での取組をより多くの方々に理解していただき,成果を普及するた

めに,問題解決場面のモデル化を研究している。たとえば,課題研究のテーマを決めると

いう場面において,情報の収集→処理→まとめを行いながら,テーマの決定に向けて流れ

ていく。今年度は,一分野での試案にとどまるが,次年度以降,対象をすべての分野に拡

大し,検討したいと考えている。また,海外調査研修については,参加生徒による報告会

などを通じて,興味・関心の喚起,得がたい知識の獲得など,多くの成果を上げているが,

直接この成果を還元する場として,ICT教材を活用した海外交流ゲームを開発中である。

次年度,これらの成果を公表すべく,中間報告会を11月22日に実施する。多くのご

意見・ご助言を求め糧にしていく所存である。また,ホームページでの発信も継続する。本

校提案のモデルで指導し,外部の課題研究発表会などの場に,生徒を派遣したい。

【担当者】 担当課 総務部総務課 TEL 03-5734-2031 氏 名 平井 陽子 FAX 03-5734-3649 職 名 総務課長 e-mail [email protected]

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❷ 平成28年度スーパーグローバルハイスクール研究開発の成果と課題

Ⅰ 総 論

本校は,幾多の変遷を経て科学技術高校となったが,一貫して科学技術系人材の育成に

尽力してきた。その一貫として,14年におよぶスーパーサイエンスハイスクール研究開

発事業にも取り組んできた。一般に,科学技術を学問として習得することを志す高校生は,

理数系に興味があり,積極的な取組が見られるが,理数系科目を通じて学ぶべき,見方・

考え方が十分に身についていないため,現実世界での転移がスムーズに行われているとは

言いがたい。その結果,指示待ち体質の生徒が増加,独創性の欠如,問題解決学習での時

間配分の冗長さなどを生んでいる。

今般,スーパーグローバルハイスクール研究開発の指定を受け,グローバルリーダーの

育成に着手したが,グローバルリーダーとなるべく,高校段階で身につけるべき資質と能

力は,問題解決学習に大きな影響を与えることから,科学技術教育にも大きな影響を与え

ることが予想される。それゆえ,グローバルリーダーが身につけるべき資質と能力とその

育成方法を明確化することで,両者の効果が相俟って,生徒の成長を増長するものと考え

ている。

Ⅱ 平成28年度の成果

1 研究開発の仮説

本研究開発では,以下の項目について,仮説を立てた。

①高校段階において育むべき資質と能力について,「リーダーが備えるべきスキル」,

「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を柱とする。

②「リーダーが備えるべきスキル」とは,“インクルージョン力(多様性受容力)”・“バ

ックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)”・“コンセンサスビル

ディング力(合意形成力)”を備えるべき不可欠なスキルとして提案する。

③上記①②を実現するために,新科目「グローバル社会と技術」,「グローバル社会と

技術・応用」の開発・実践する。

④フィリピン・オーストラリア・サウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴルといっ

た資源産出国・韓国などの東アジアにおける資源消費国との国際交流の実施

⑤マネージメントや費用便益分析などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」の開

発・実践する。

⑥上記③④⑤の実践により,科学技術の素養を持つことを活用しながら,新しいタイ

プの先導者となりうる“グローバルテクニカルリーダー”を育成することができる。

これらの実現には,東京工業大学との連携が不可欠であり,高大連携をさらに緊密に

する必要がある。

2 平成28年度の取組

①のうち「リーダーが備えるべきスキル」については,その多くが問題解決能力の獲

得により実現できることから,③の開発科目「グローバル社会と技術」における課題設

定の取組,開発科目「グローバル社会と技術・応用」における「SGH課題研究への道」

− 2 −

におけるミニ課題研究,または問題解決へのシミュレーションの取組,⑤の開発科目「S

GH課題研究」の取組により,実践を続けている。今年度の取組により,生徒の疑問や

関心をいかにして課題として設定していくか,この点について課題設定場面のモデル化

が必要であることが明らかになった。本校は,5つの専門分野があり,それぞれにアプ

ローチの違いがあるため,今年度はモデル化の取組に着手したところであり,一部の例

を報告書に記載している。

②のうち「地政学的リスク回避能力」については,高校地理歴史科での扱いが少なく,

情報を収集するにしても基礎的な知識が必要と考え,「グローバル社会と技術・応用」の

中で,「中東・中央アジア理解」および「イスラーム文化研究」を実施するとともに,地

政学的知識が豊富な,本学教授池上彰先生の講演会により,生徒の興味・関心を引き出す

ことに成功している。講演会後の調査では,90%以上の生徒が強い関心を持つことが

できた。また,企業との連携を図る必要があることから,第2学年では,前武雄市長の

樋渡啓祐氏,楽天株式会社の宮田多門氏,株式会社広告製版社社長の伊東勝氏を招いた。

起業には独創的な発想が必要であり,自らの考えをいかに課題として設定して問題解決

につなげるか,課題設定の重要性を学んだ。

②のうち「語学力」では,「グローバル社会と技術」内の1テーマである「 Speech

Communication」および「グローバル社会と技術・応用」の中で実施された「英語による

コミュニケーションスキル -Global Awareness-」を外国人教員によって実施し,成果を上

げている。また,NHKテレビおとなの基礎英語講師・立教大学教授松本茂先生の講演に

より,グローバルリーダーには,コミュニケーションスキルとしての語学力が必要であ

ることを学んだ。これらの取組により,英検受験者は増加し,合格者も全国平均を大き

く上回っている。

④のうち海外調査研修および国際交流事業については,本校の協定校があるフィリピ

ン共和国の他,イスラーム教国であるマレーシアでの実施とした。アラブ圏の国際情勢

が安定しないため,東南アジアのイスラーム教国による交流を先行した。この渡航先の

変更については,変更申請をさせて頂いている。渡航に際して,フィリピンでは,昨年

度と異なり,多様性受容力(インクルージョン力)を充実するためホームステイを実施

した。また,マレーシアでは,資源を産出するボルネオ島サラワク州を中心に,2大学・

2高校に訪問した。両国とも学校訪問にあたっては,エネルギー・環境問題に関する生徒

の主張を披露し,討議した。今年度の渡航では,再生可能エネルギーに関する考え方の

違いを相手側から引き出すことができた。これらの成果は,国際交流報告会によって,

渡航していない生徒にも広く伝えた。これらの取組により,海外調査研修の希望者は,

大きく増加し,14名の枠に70名以上の応募があった。生徒の関心の高さを示してい

る。

⑤の「SGH課題研究」については,文部科学省実地調査にお出で頂いた際にも,工

業科目「課題研究」との違いについて,ご質問を頂いた。本校は,科学技術高校である

ことから,問題解決の提案をものづくりで表現している。それゆえ,ものづくりの場面

だけを見ると,両者の違いがわかりにくい。SGHでの取組では,自らの疑問や社会全

体が抱えている問題を課題として設定し,提案をまとめ,それを実証的に検討する必要

がある。この実証的検討が,実験やものづくりによって行っており,場合によっては提

− 3 −

案をプロトタイプによって説明することを意図している。従来の「課題研究」は,もの

を作る,あるいは実験をすることそのものを目的としており,その過程における問題解

決を目指している。SGHはいわば人を対象としており,人材育成の一環として,もの

づくり等が位置づけられるが,従来の「課題研究」では,製作物,あるいはものの完成

が目的とされる。この点が大きな違いであるが,今後とも教員・生徒に対する研究会を実

施したいと思う。今年度の成果として,SGH課題研究の数値目標である30%(課題

研究のうちSGH課題研究の割合)をほぼ達成する形で,15テーマを実施できた。ま

た,「SGH課題研究成果発表会」(2月19日:東京学芸大学)に参加し,ポスター発

表・SGH部門で2テーマが受賞,3月「SGH甲子園」に10名の生徒が参加し,成

果を発表することができた。

Ⅲ 平成28年度の課題

高校は,授業の円滑な運営を優先する。これは生徒を対象としているため,どこの高校

でも実践が先行するきらいがある。本校では,授業運営については,すでに軌道に乗り,

テキスト作成も順調に進んでおり,特段問題はない。しかし,仮説を検証し,研究を評価

するための,具体的な理論が開発途上であることは否めない。メソッドやモデル化の試み

は,具体的な理論の構築にあたり,完成を急ぐ必要がある。

また,これまでの実践により,高校段階で育成すべき,グローバルリーダーに求められ

る資質と能力が,多様性受容力や語学力といったグローバルに対する側面に加え,問題解

決能力がかなりの比率を持つものと考えている。問題を解決するためには,ある程度定式

化したメソッドが近道であり,それは生徒の自覚や自由な意思だけでは生み出せるもので

はない。また,問題を実際に解決するためには,知識だけではなく,様々な能力の力を借

りる必要がある。たとえば,課題を設定するためには,情報を収集し,処理し,まとめて

いく必要がある。このような過程を経てはじめて使える知識となる。この過程は,情報処

理能力であり,情報的な見方・考え方の習得に大きく依存している。また,実証的な検討に

は,数学的な見方・考え方,科学的な見方・考え方,技術的な見方・考え方が必要である。こ

れらのことからも,SGH開発科目と既存の科目との連携が必要であり,カリキュラム・

マネージメントに取り組むことを課題としたい。

− 1 −

❸ 実施報告書(本文)

❸−1 研究の概要

Ⅰ 研究開発の指定期間

指定を受けた日から平成32年3月31日

Ⅱ 研究の概要および本校の概要

1 研究開発構想名

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

2 研究開発の目的・目標

(1)目的

多様化する国際社会で活躍する人材を輩出する視点から,科学技術系素養を持つ科

学技術高校生徒に育成すべき資質と能力を提案し,高大連携教育を大幅に増強した“グ

ローバルテクニカルリーダー”プログラムを実践し,成果普及に努める。

(2)目標

多様化する国際社会で活躍するリーダーとしての資質と能力を身につけると共に,

資源産出国との国際交流を軸に,地政学的な基礎知識を元にリスクを回避できる“グ

ローバルテクニカルリーダー”の育成を図る。その際,高大連携教育を大幅に増強し,

高大を貫くグローバル人材の育成を目指し,求められる資質と能力を提案すると共に,

実現のための新科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および

「SGH課題研究」を軸とした育成プログラムを開発・実践し,成果を普及する。

3 研究開発の概要

科学技術系の知識を有しながら,ビジネスフレームワークのような問題解決の枠組み

などのマネージメントスキルをも有する人材を育成するため,リスク回避の観点から,

ESD理解を深めるため,産油国・鉱物資源産出国(フィリピン・オーストラリア・サ

ウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴル)との国際交流を行う。その際,国際社会で

活躍するリーダーとして育成すべき資質と能力を明確にし,備えるべきスキルと地政学

的リスク回避能力,語学力(英語によるコミュニケーション力等)を獲得するため,新

科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメント

の手法や費用便益分析などの定量的評価を取り入れた「SGH課題研究」を開発する。

その際,東京工業大学との連携教育を大幅に増強し,東京工業大学グローバルリーダー

教育院・リベラルアーツセンター・学術国際情報センター等や企業との連携を図りなが

ら,斬新な育成プログラムを開発・実践し,成果普及に努める。

4 学校全体の規模

課程・学科・学年別生徒数,学級数(平成29年2月現在)

− 2 −

課程 学科 第1学年 第2学年 第3学年 計

生徒

学級

生徒

学級

生徒

学級

生徒

学級

全日制 科学・技術科※ 194 5 192 5 185 5 571 15

計 194 5 192 5 185 5 571 15 ※第1学年では全教科を共通に履修する。第2学年以降の専門教科では,

材料科学・環境科学・バイオ技術分野 (応用化学分野)

情報・コンピュータサイエンス分野 (情報システム分野)

システムデザイン・ロボット分野 (機械システム分野)

エレクトロニクス・エネルギー・通信分野(電気電子分野)

立体造形・ディジタルデザイン分野 (建築デザイン分野)

の5分野に分かれて履修する。(括弧内は各分野の略称である。) 5 研究開発の内容等

(1)全体について

① 現状の分析と課題

文部科学省(2014)は「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価

の在り方に関する検討会」の論点整理*1 や次期学習指導要領改訂の議論を踏まえた

文部科学大臣の諮問*2(2014)を公表し,我が国の子供たちにとって今後特に重要

と考えられる,何事にも主体的に取り組もうとする意欲や多様性を尊重する態度,

他者と協働するためのリーダーシップやチームワーク,コミュニケーションの能力

などの関係,および,それらの育成すべき資質・能力と,各教科等の役割や相互の関

係の構造化などの検討を求めている。

本校は,科学技術系の素養を育成する科学技術高校であり,国際社会で活躍でき

るグローバルリーダーを育成するためには,普通科の高校とはベースが異なるため,

新たな「育成すべき資質・能力」を提案して「生きる力」の育成を具現化する新し

い教育システムを構築しなければならない。本校では,科学技術系の素養を持つグ

ローバルリーダーを“グローバルテクニカルリーダー(GTL)”と称することとす

る。GTLは,たとえば,技術専門者をうまく使いながら,グローバルに生産・販

売拠点を置き,安定的(リスクを回避しながら)製品を生産し,流通させ,利益を

上げられるような生産・販売計画を立案できるような資質を想定しており,ある程

度の科学技術系の知識を有しながら,マネージメントスキル,すなわち,ビジネス

フレームワークのような問題解決の枠組みを使いこなせる人材である。このGTL

の人物像は,本校のスクールポリシーに掲げる生徒像とも合致すると考えている。

しかし,GTL育成のためには,新たに,学ぶべき内容の精査,学習・指導方法や

学習の成果を検証し,情報技術(ICT)を大幅に活用するなど指導方法の改善や

パフォーマンス評価方法を開発して,充実を図る必要がある。

いままでに,3 期 13 年にわたるSSH研究開発指定を受け,科学技術系人材に必要

な力として,第1期SSHでは,創造性の基盤となる「わかる」「えがく」「つくる」,

第2期SSHでは,第1期の発展型として「いどむ」「わかりあう」,そして第3期

SSHでは,さらに社会のニーズに応えるべく「伝え合い学び合う」を掲げ,コミ

− 3 −

ュニケーション力の育成(「科学技術コミュニケーション入門」の開発),課題研究

の実践によるチームワークの育成など,個別に必要な力を伸ばす努力を重ねてきた。

これらに加えて,国際交流による成果も着実に積んでいる。その結果,本校の独自

調査では,将来留学,あるいは仕事で国際的に活躍したいと思う割合が,55.2% (第

2学年 )に達するが,実際に留学経験(短期も含む)がある割合は,13.6%に留まる

という現実がある。すなわち,今までの研究開発は,科学者・技術者としての素養

を身につけるものとして,一定の成果を上げながらも,グローバルリーダーの育成

という観点からは取り組んでこなかったといわざるを得ない。そこで本校では,G

TL育成のために,高校段階において育成すべき資質と能力を,「リーダーが備える

べきスキル」,「地政学的なリスク回避力」,「語学力」の3点を提示する。

「リーダーが備えるべきスキル」とは,“インクルージョン力(多様性受容力)”・“バ

ックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)”・“コンセンサスビル

ディング力(合意形成力)”を備えるべき不可欠なスキルとして提案する。これら3

つの能力は,正課の中で明示的に育成されることはなかった。“インクルージョン力”

とは,ダイバーシティ&インクルージョンが可能な能力のことで,異文化理解を進

め,世界の文化,民族など様々な多様性を受容する能力を指すとともに,先入観な

く多様な情報を受け入れる情報収集力,情報活用力を含む。次に,“バックキャステ

ィング力”とは,持続可能な社会を目標として掲げ,それを実現するために現在を

振り返って,今は何をするべきかを考えることができる力であり,目標実現のため

の企画力である。この能力育成のためには,本校のスタッフの他,企業などで人材

育成をしている方(メーカーまたは,コンサルティング,JETRO など)の協力が必

要である。“コンセンサスビルディング力”とは,コミュニケーション過程において,

相手に納得してもらい,自らの意見に賛同してもらう合意形成力である。この

know-how を,本校ではかねてより“科学技術コミュニケーション”として蓄積して

おり,応用の準備は整っている。

「地政学的なリスク回避力」とは,地域に依存するリスクを理解した上で,リス

クを回避するための意思決定できる能力で,たとえば,世界各地から,どのように

部品を集め,どこで生産し,どこで売るのか,といったことをさまざまな経済情勢

やそれぞれの地域の抱えるリスクなどを,考慮しながら考えることができる能力で

ある。なかでも,リスクを回避するためには,地球全体が抱える様々な問題に精通

する必要があり,殊に,エネルギー問題や環境問題について理解を深める必要があ

る。本校では,新たなESD理解を図るため,産油国などの鉱物資源産出国の実情

を把握する必要性から,特に正課の中で学ぶことは少ない中東・中央アジアやイス

ラーム文化について,異文化コミュニケーションに必要な知識を補填する計画であ

る。また,我が国とは立場の異なるこれらの国々の,特に高校生の意識は,文献資

料では計りがたい。そのため,国際交流によって,直接肌で感じ取らせることを計

画した。これらの取組は,地理歴史科の世界史や公民科の政治・経済,倫理と関連

させ,東京工業大学リベラルアーツセンター等との連携を図りながら,内容を精選

する。

− 4 −

「語学力」とは,英語によるコミュニケーション力を指し,ツールとしての英語

力を充実させる必要がある。これらを具体的に活かす場として,国際交流を推進す

るが,エネルギー問題・環境問題の理解を深めるためには,産油国であるサウジア

ラビア王国・世界最大級の鉱物資源保有国であるアメリカ合衆国・中華人民共和国,

フィリピン・オーストラリア・そしてモリブデンの埋蔵量が世界屈指であるモンゴ

ル国といった資源産出国との交流が不可欠である。これにより,資源に対する考え

方の違いを理解しうると考えている。また,資源消費国についても,日本だけの考

えでは,グローバルな視野とは言えないため,日本と同じように資源を持たない東

アジア各国との交流(韓国など)が欠かせないと考えている。

GTL育成のために必要なこれらの資質や能力は,3つの新科目「グローバル社会

と技術」,「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメントや費用便益分析

などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」を開発する必要があり,東京工業大

学との連携教育の大幅増強,東京工業大学グローバルリーダー教育院・リベラルア

ーツセンター・学術国際情報センター等との連携が不可欠となる。 *1 育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会(2014) 論点整理 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/07/22/1346335_02.pdf(参照日 2015.2.9) *2 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問),文部科学大臣 (2014). http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1353440.htm(参照日 2015.2.9)

② 研究開発の仮説

高校段階において育むべき資質と能力について,「リーダーが備えるべきスキル」,

「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を柱とする,新科目「グローバル

社会と技術」,「グローバル社会と技術・応用」の開発・実践,フィリピン・オース

トラリア・サウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴルといった資源産出国・韓国

などの東アジアにおける資源消費国との国際交流および,マネージメントや費用便

益分析などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」の開発・実践により,科学技

術の素養を持つことを活用しながら,新しいタイプの先導者となりうる“グローバ

ルテクニカルリーダー”を育成することができる。

(2)課題研究について

① 課題研究内容

a 「SGH課題研究」に向けた新科目「グローバル社会と技術」

新科目のうち,「グローバル社会と技術」は,グローバルな視野で,現在,地球

全体が抱えている問題を学ぶ。ここでの学びは,きっかけに過ぎず,これを種と

して,自らの主体的な調べ学習などにより,実を結ぶことを狙っている。そのた

めの方策として,テーマごとに,生徒個人の「問題解決への提案」を義務づける

ことから,「SGH課題研究」への入門の役割を担っている。本校では,「SGH

課題研究」における問題解決には一定の手順が存在するという仮説を掲げている

が,本科目では,4段階程度のラフな手順を生徒自身に考えさせ,課題に即した

解を埋めることで,「SGH課題研究」における問題解決スキルを磨くことを目指

す。しかしながら,この段階では,手順すべてに考えが及ぶのではなく,むしろ

− 5 −

問題発見のスキル向上に寄与すると考えている。従来,総合的学習の時間やアク

ティブラーニングでは,PDCAサイクルでいうD (do;行動 )やC (check;評価 )

に力を入れているが,本科目では,P (plan)の充実を図る。すなわち,「SGH課

題研究」を始めるには,本来,全体の目的を明示し,いま行える取組を下位目標

に設定して,目標達成の道筋をつけるといったプロセスが必要である。本科目は,

「SGH課題研究」の構成を考え,課題発見・問題解決を図るためのスキルを身

につけることを目指すことから,「SGH課題研究」の入門として重要な役割を担

う。

b 「SGH課題研究」に向けた新科目「グローバル社会と技術・応用」

図1は,「グローバル社会と技術・応用」のあらましである。

新科目のうち,「グローバル社会と技術・応用(AGST)」は,1年次に実施した

「グローバル社会と技術」の続編をなし,テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イ

スラーム文化研究」,「英語によるコミュニケーションスキル」をオムニバス形式で

実施する。これにより,地政学的リスク回避のための知識と語学力の鍛錬という

GTLに必要な新たなファクタを加え,得られた知見と既有の知識の再構築を促

す。これらの総仕上げが,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」

と称するミニ「SGH課題研究」である。REEI は,エネルギー問題・環境問題な

ど私たちを取り巻く諸問題について,マネージメントの問題解決手法や定量的分

析などを援用しながら,自らの考えを提案する探求型学習である。この取組は,

単に法律による規制に頼るのではなく,新たな技術的開発の提案という帰結を目

指す。REEI は,提言に留まらず,国際交流の場においてベースとなる文化の違う

高校生に対して主張することを前提としている。それゆえ,国際交流相手校に対

しても同じテーマでの発表を依頼する。ミニ「SGH課題研究」の例としては,

図 1 新科目「グローバル社会と技術・応用」のあらまし

− 6 −

砂漠に太陽光発電をつくるべきか? 洗濯機に求められるものは何か? 飲む水

と食器を洗う水は分けるべきか? 砂漠で飲み水を忘れたら分け合うべきか?な

どが挙げられる。

本研究開発における国際交流は,資源産出国等を交流相手と考えており,フィ

リピン・オーストラリアとの交流事業を先行し,サウジアラビア・中国・アメリ

カ・モンゴルとの交流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進めていくことを計画

している。

~なぜフィリピン共和国なのか~

フィリピンは,東南アジア有数の資源産出国であり,エネルギー自給率は 2011

年時点で 59.1%である。しかしながら,電力需給の逼迫が深刻化しており,輪番

制の計画停電も計画される事態となっている。このことは以前より予想されてお

り,原子力発電所を建設,ほぼ完成したが,アキノ政権時代に稼働を認可せず,

結局,原子力開発をあきらめた経緯がある。原子力に代わって地熱発電所を建設

し,その発電量はアメリカに次いで第2位となった。本校では,日本とはあまり

にも違う選択をしたこの国を重視し,フィリピン共和国・デ・ラ・サール大学附

属高校と新たに国際交流協定を締結し,私たちの交流の意図を理解していただく

予定である。原子力開発よりも輪番停電を選んだ国民,文献では知り得ない高校

生の意識を,REEI によるこの国際交流で是非とも明確にしたい。

~なぜオーストラリアなのか~

オーストラリアは,鉱物資源が豊富な資源産出国で知られている。なかでも,

ウランが採掘されているのに,原子力発電所が一基もない。電力の大部分は,火

力発電によるもので,石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料は自給している。火

力発電に頼れば,CO2 の排出を減らすことは出来ない。もちろん,再生可能エネ

ルギーへの取組を行っているが,まだ開発途上である。本校では,日本とは大き

く異なる選択をしたこの国をフィリピンに次いで,重視している。そこで,鉱工

業と関連が深い西オーストラリア州のパースのカーティン大学における「資源開

発ビジネス研修」,および周辺の高校との REEI による国際交流を計画した。「資源

開発ビジネス研修」によりマネージメントの観点からこの国のエネルギー問題へ

の考え方を知り,また,現地の高校生との交流により,文献では伺うことの出来

ない国策に対する高校生の意識を,REEI によるこの国際交流で是非とも明確にし

たい。

なお,サウジアラビアについては,在日アラブ人学校と連携するほか,日本を

訪問するサウジアラビア王立学校校長等の訪問にあわせて,REEI によるこの国際

交流を開始する。中国については,東京工業大学が招聘するサマーキャンプに参

加する清華大学学生との交流を計画している。アメリカ・韓国・モンゴルについ

ては,東京工業大学との連携により,交流を開始する。

c 新科目「SGH課題研究」

従来の課題研究では,技術的な問題の解決や改善をテーマとすることが主であ

ったが,ここでは,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用し,

その結果,必要とされた改善をテーマとする。すなわち,ものを作ること自体が

− 7 −

目的なのではなく,コストを抑える,あるいは損失のリスクを回避するためには

どうしたらよいか,といった視点を大切にする。また,AGST における REEI を発

展させ,実験・実習によるデータを元に,エネルギー・環境問題等を題材とした

研究を行うことも想定している。その際も,マネージメントに基づく損益や費用

便益分析を念頭に置いた帰結を求める。「SGH課題研究」の例としては,「廃油

を利用した芳香効果を持つ石けんの製作」,「安価に製作できる電子式測定器具」,

「廃車を利用した電気自動車の製作」,「安価な電子部品による追尾式太陽光発電

装置の製作」,「廃材を活用した日本家屋の設計」などが挙げられる。

② 「SGH課題研究」の実施方法・検証評価

第1学年に配当される「グローバル社会と技術」では,オムニバス形式でテーマ

学習が進行するが,その最終回において,問題解決の手順をワークシートにまとめ,

テーマの文脈に沿った解を埋めて提出させる。これは,「SGH課題研究」に向けた

問題解決の第一歩となる。さらに,その内容は,テーマ;スピーチコミュニケーシ

ョンにおいて集約され,提言を英語化し,発表する。これは,「SGH課題研究」の

アブストラクトの英語化につながる。評価は完成した作品,発表の4観点評価,お

よびワークシートやレポートによる総合評価とする。

また,第 2 学年に配当される AGST 内で実施される REEI は,2年生全員に実施

する。AGST は,所属する分野ごとに実施され,オムニバス形式の講義とミニ「S

GH課題研究」から形成される。ただし,ミニ「SGH課題研究」そのものは,1

学期に集中的に行うことが望まれる。それは,国際交流が夏休み期間から始まるた

めである。本研究においては,「SGH課題研究」の成果を国際交流相手国の胸を借

りてコミュニケーションすることが,真の交流となり得ると考えている。なお,仮

説に対する検証は,ポートフォリオ形式の進捗報告書,最後にまとめる報告書およ

び評価テスト,意識調査により行う。また,外部のコンテストや発表会に積極的に

参加し,外部評価を受ける。

他方,本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必

修科目とされている。そこで,「課題研究」のテーマ設定の段階で,30%程度を目

標に,「SGH課題研究」に振り分ける。このとき「SGH課題研究」に所属した生

徒は,従来型のものづくりを目的とする「課題研究」には参加しないため,教育課

程の特例が必要となる。なお,仮説に対する検証は,担当教員による4観点評価,

「課題研究」・「SGH課題研究」発表会での参観者による評価,生徒・教員・保護

者に対して行う意識調査などによって行う。

<各研究開発単位について>

新科目「グローバル社会と技術」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技術に対す

る興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることにより,創造的に問題

解決を図ることができるような人材を育てるとともに,科学技術を学ぶもののあ

− 8 −

り方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫理観を涵養する。その際,問題解

決の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で

行うことができるように指導する。

b 内容

各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてある

べき姿を考えさせるものとする。テーマは,メカニズム・電力・都市・環境と人

間といったESDに関するものや,技術者倫理・情報モラル・スピーチコミュニ

ケーション(英語)を予定している。

学習活動は,科学技術に対する興味・関心の喚起,学習の動機付け,問題解決

の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせること,英語による発表

と討議の4つの段階よりなる。科学技術に対する興味・関心の喚起では,科学技

術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを理解するために不可欠な基礎的

学習を行う。なお,問題点の指摘にあたっては,技術者のモラル・倫理観につい

ても自ら学ぶことができるよう配慮する。なお,グローバル化に対応するため,

発表や討議に英語による表現を導入し,1学年からの国際交流事業において,成

果を検証する。

c 実施方法

第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。な

お,1テーマあたりの授業回数は,4回程度を想定している。最先端の技術によ

る興味・関心の喚起のため,東京工業大学の協力により,特別講義を年1回実施

する。また,フィールドワークの必要性から,年1回程度の校外学習を行う。

d 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている問題の理解によって,

いま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテー

マごとに行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化

やグローバル化への対応についても考慮することから,ワークシート形式を想定

する。

新科目「グローバル社会と技術・応用」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

それぞれの文化に根ざした「SGH課題研究」をまとめ上げ,資源産出国に対

する文化的理解を深めると共に,英語による科学技術コミュニケーションを行い,

国際交流を深めることを目的とする。本科目は,英語によるコミュニケーション

が必須であることから,仮説の「語学力」養成につながる。また,来日する資源

国あるいは他の消費国との間には,文化をベースとした差異があり,コミュニケ

ーションを通じて体験することにより,仮説の「地政学的リスク回避能力」につ

いても,強い印象で身につくことが期待される。このように「SGH課題研究」

をまとめ上げることや,フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国,消費国

それぞれの文化に根ざした交流の実践を通して,GTLが身につけるべきスキル

の育成を期する。

− 9 −

b 内容

新科目におけるミニ「SGH課題研究」では,夏休み期間から本格化する国際

交流事業を,GTLが備えるべきスキル(インクルージョン力(多様性受容力),

バックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力),コンセンサスビ

ルディング力(合意形成力))の検証の場と捉えている。それゆえ,国際交流に耐

えうる英語による科学技術コミュニケーションが必須となる。これらの総仕上げ

が,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ「SGH

課題研究」である。REEI は,エネルギー問題・環境問題など私たちを取り巻く諸

問題について,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用しながら,

自らの考えを提案する探求型学習である。この取組は,単に法律による規制に頼

るのではなく,新たな技術的開発の提案という帰結を目指す。REEI は,提言に留

まらず,国際交流の場においてベースとなる文化の違う高校生に対して主張する

ことを前提としている。たとえば,「砂漠に太陽光発電をつくるべきか?」,「洗濯

機に求められるものは何か?」,「飲む水と食器を洗う水は分けるべきか?」,「砂

漠で飲み水を忘れたら分け合うべきか?」などが挙げられる。本研究開発におけ

る国際交流は,資源産出国等を交流相手と考えており,フィリピン・オーストラ

リアとの交流事業を先行し,サウジアラビア・中国・アメリカ・モンゴルとの交

流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進めていくことを計画している。

c 実施方法

第2学年全員を対象に1~2単位で実施する。通年実施ではなく半期での実施

とし,ミニ「SGH課題研究」を想定して,4時間連続等の授業を実施する。ま

た,国際交流での「SGH課題研究」の成果の利用を前提としているため,前半

(4月~9月)に実施する。担当する教員は,専門分野の教員に加え,人文・社

会系,体育科の教員のティームティーチング(TT)による。なお,プレゼンテー

ションシートの制作・要旨の作成・発表原稿の作成は英語で行う必要性があるこ

とから,外国人講師,東京工業大学の外国人大学院生などとの TT を想定してい

る。

d 検証評価方法

実践の過程において,本校教員による4観点評価を行う。また,実践による成

果は,報告書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員による評価を

行う。仮説に対する検証については,生徒の目標達成状況によって計ると共に,

意識調査および評価テストによって生徒・教員の態度変容を知る。なお,選抜さ

れた優秀な生徒は,SGH校で行われるコンテストや外部の発表会に積極的に参

加させることで,外部評価を受ける。

新科目「SGH課題研究」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

SGHの総仕上げとして,GTLのスキルを活かし,マネージメントに基づく

損益や費用便益分析の結果,必要な改善を施すことが,「SGH課題研究」の目的

である。その結果,GTLに必要なスキルを再確認しながら,リスク回避の必要

− 10 −

性を認識することが期待できる。また,「SGH課題研究」を進行するにあたり,

チームワークの形成などリーダーとして必要な資質の育成ともなりうる。なお,

「SGH課題研究」の成果を報告する際に,アブストラクトを英語によりまとめ,

将来の学会発表に寄与する。

b 内容

本校が科学技術高校であることを活かし,現在直面する問題を解決しながらも

のづくりや実験を行う。改善が前提としてあり,設計思想が重視されることから,

ものをつくること自体が目的の従来型課題研究とは大きく異なる。また,AGST

における REEI を発展させ,実験・実習によるデータを元に,エネルギー・環境

問題等を題材とした「SGH課題研究」を行うことも想定している。その際も,

マネージメントに基づく損益や費用便益分析を念頭に置いた帰結を求める。より

実用的な題材が求められることになることから,「SGH課題研究」の一例として

「廃油を利用した芳香効果を持つ石けんの製作」,「安価に製作できる電子式測定

器具」,「廃車を利用した電気自動車の製作」,「安価な電子部品による追尾式太陽

光発電装置の製作」,「廃材を活用した日本家屋の設計」などが挙げられる。

c 実施方法

本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必修科

目とされている。従来型のものづくりを目的とする「課題研究」が義務づけられ

ていることから,「課題研究」のテーマ設定の段階で,30%程度を目標に,「S

GH課題研究」に振り分け,教育課程の特例を受ける。なお,時間割上は,すべ

ての生徒が同一時間帯に「課題研究」・「SGH課題研究」のいずれかを行うが,

「SGH課題研究」では,人文・社会系および体育科の教員,および東京工業大

学教員などが指導に加わる。

d 検証評価方法

実践の過程において,本校教員による4観点評価を行う。また,「SGH課題研

究」の成果は,報告書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員によ

る評価を行う。仮説に対する検証については,担当教員による4観点評価,「課題

研究」・「SGH課題研究」合同発表会での参観者による評価,生徒・教員・保護

者に対して行う意識調査などによって行う。

③ 課題研究に関して必要となる教育課程の特例

a 必要となる教育課程の特例とその適用範囲

工業教科科目「課題研究」に替え,学校設定科目「SGH課題研究」を科学・

技術科第3学年において,希望により振り分けた30%程度の生徒を対象に実施

する。本研究の総仕上げにあたる重要な科目であるが,従来の「課題研究」とは,

課題設定の方法や研究の進め方が大きく異なるため,教育課程の特例が必要であ

る。

新科目「SGH課題研究」

第1 目標

− 11 −

グローバルな視野で,工業に関する課題を設定し,マネージメントにおける

損益,費用便益分析等の検証によって,課題の解決を図り,専門的な知識と技

術の深化,総合化を図るとともに,問題解決の能力や自発的,創造的な学習態

度を育てる。

第2 内容

(1)分析,設計, (2)作品製作, (3)調査,研究,実験

第3 内容の構成及び取扱い

ア グローバルな視野に立ち,生徒の興味・関心,進路希望等に応じて,内容

の (1)はマネージメントの観点から分析を行い,改善の目標を設定すること。

(2)または (3)までの中から個人又はグループで適切な課題を設定させること。

なお,課題は内容の (2)から (3)までの2項目にまたがる課題を設定することが

できること。

イ 「SGH課題研究」の成果について発表をする機会を設けるようにするこ

と。

ウ 国際交流での活用を見据えて,英語による要旨の作成等を行うこと。

b 教育課程の特例に該当しない教育課程の変更

設定しない

(3)課題研究以外の取組

① 課題研究以外の研究開発の内容・実施方法・検証評価

図2は,研究開発全体のあらましを示している。各研究開発単位の取組のうち,

「SGH課題研究」を除く部分について,以下に記す。

<各研究開発単位について>

新科目「グローバル社会と技術」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技術に対す

る興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることにより,創造的に問題

解決を図ることができるような人材を育てるとともに,科学技術を学ぶもののあ

り方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫理観を涵養する。その際,問題解

決の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で

行うことができるように指導する。

b 内容

各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてある

べき姿を考えさせるものとする。テーマは,メカニズム・電力・都市・環境と人

間といったESDに関するものや,技術者倫理・情報モラル・スピーチコミュニ

ケーション(英語)を予定している。

学習活動は,科学技術に対する興味・関心の喚起,学習の動機付け,問題解決

学習への導入,英語による発表と討議の4つの段階よりなる。科学技術に対する

興味・関心の喚起では,科学技術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを

− 12 −

図2 研究のあらまし

理解するために不可欠な基礎的学習を行う。なお,問題点の指摘にあたっては,

技術者のモラル・倫理観についても自ら学ぶことができるよう配慮する。なお,

グローバル化に対応するため,発表や討議に英語による表現を導入し,1学年か

らの国際交流事業において,成果を検証する。

c 実施方法

第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。な

お,1テーマあたりの授業回数は,4回程度を想定している。最先端の技術によ

る興味・関心の喚起のため,東京工業大学の協力により,特別講義を年1回実施

する。また,フィールドワークの必要性から,年1回程度の校外学習を行う。

d 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている問題の理解によって,

いま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテー

マごとに行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化

やグローバル化への対応についても考慮することから,ワークシート形式を想定

する。

新科目「グローバル社会と技術・応用」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

− 13 −

GTL育成のために,高校段階において育むべき資質と能力である「リーダー

が備えるべきスキル」,「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を身につ

けると共に,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ

「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知識を自覚し,国際交流

によって実践することを目的とする。また,「SGH課題研究」の成果を以て英語

によるコミュニケーションを図ることから,「語学力」の達成を図る。

フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国との国際交流の場において,学

習内容の検証を自ら行うことにより,GTLに必要なスキルや知識を自覚するこ

とが出来る。

b 内容

テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英語によるコミ

ュニケーションスキル」をオムニバス形式で実施後,「Response to Energy and

Environmental Issues(REEI)」と称するミニ「SGH課題研究」を実施する。「中

東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」では,地球全体が抱える様々な問題

を提示し,殊に,エネルギー問題や環境問題について理解を深める。その際,新

たなESD理解を図るため,産油国などの鉱物資源産出国の実情を把握する必要

性から,特に正課の中で学ぶことは少ない中東・中央アジアやイスラーム文化に

ついて,異文化コミュニケーションに必要な知識を地理歴史科の世界史や公民科

の政治・経済,倫理と連携しながら学習する。

また,REEI は,エネルギー問題・環境問題など私たちを取り巻く諸問題につい

て,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用しながら,自らの考

えを提案する探求型学習である。この取組は,単に法律による規制に頼るのでは

なく,新たな技術的開発の提案という帰結を目指す。REEI は,提言に留まらず,

国際交流の場においてベースとなる文化の違う高校生に対して主張することを前

提としている。なお,本研究開発における国際交流は,資源産出国等を交流相手

と考えており,フィリピン・オーストラリアとの交流事業を先行し,サウジアラ

ビア・中国・アメリカ・モンゴルとの交流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進

めていくことを計画している。

c 実施方法

東京工業大学リベラルアーツセンターの協力の下で,中東・中央アジア・イス

ラーム文化に関して,GTLを目指す高校生に備えるべき内容を精選する。また,

リベラルアーツセンターに所属する著名な専門家による講演会を実施する。また,

東京工業大学グローバルリーダー教育院・学術国際情報センター・留学生センタ

ーの協力により,人材の派遣を円滑に行い,かつ英語によるコミュニケーション

の鍛錬に協力いただく。また,この分野は,企業などで能力開発などの仕事をし

ている方(メーカー,コンサルティング,あるいは JETRO などの組織)に協力い

ただくことを想定している。

生徒への実施にあたっては,第2学年全員を対象に1~2単位で実施する。通

年実施ではなく半期での実施とし,ミニ「SGH課題研究」を想定して,4時間

連続等の授業を実施する。また,国際交流でのミニ「SGH課題研究」成果の利

− 14 −

用を前提としているため,前半(4月~9月)に実施する。担当する教員は,専

門分野の教員に加え,人文・社会系,体育科の教員のティームティーチング(TT)

による

d 検証評価方法

オムニバスの講義形式の講義については,レポートおよび成果物による評価を

行う。ただし,発表を伴うものについては,4観点評価を行う。また,実践の過

程において,本校教員による4観点評価を受ける。また,REEI については,報告

書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員による評価を受ける。仮

説に対する検証については,生徒の目標達成状況によって計ると共に,意識調査

および評価テストによって生徒・教員の態度変容を知る。なお,選抜された優秀

な生徒は,SGH校で行われるコンテストや外部の発表会に積極的に参加させる

ことで,外部評価を受ける。

② 課題研究以外の取組で必要となる教育課程の特例等

a 必要となる教育課程の特例とその適用範囲

工業教科科目「工業技術基礎」に替え,学校設定科目「科学技術基礎」を科学・

技術科第1学年全クラスを対象に実施する。本科目は,第1期SSHから実践し

ている本校の科学技術教育システムにおいて,第1学年に設置した基礎的な科学

技術の理論と実験実習によって構成される科目であり,本研究開発を実施する上

で必要不可欠であるため設置する。

科学技術基礎

教 科:工 業

科 目 名:「科学技術基礎」

目 標:知識の活性化を狙い,実験・実習の手順を手本として,問題解決に必

要な基本的な技能や既習の知識と現実世界を「結びつける力」を身につ

ける。これらを活用して,自ら課題を設定し,既習の知識と問題解決を

結びつけ,自ら課題を解決する。なお,実験・実習にあたっては,工業

の各分野にわたる基礎的科学技術の理論を確かめながら体験させ,かつ,

各分野における技術と基本的な科学の概念や原理・法則の理解,問題解

決のための手法を獲得させ,科学技術に関する広い視野を養うとともに,

科学技術者としての必要な能力を養う。

履修学年:第1学年

単 位 数:3単位

内 容: (1)力学分野 (2)電気分野 (3)化学分野 (4)製図分野

(5)問題解決学習

各分野においてテーマを設定し,問題解決場面を体験する。

内容の取扱い:

− 15 −

(1) 科目の目標を達成するために,次の点に留意する。日常生活と関係

の深い科学技術に関する実験・実習を通して,科学技術への興味関

心を養うとともに,その理論を理解させる。

(2) 2年次の新科目「グローバル社会と技術・応用」と密接な関連を図

ること。

(3) 指導計画にあたっては,「工業技術基礎」との違いについて留意す

ること。

b 教育課程の特例に該当しない教育課程の変更

グローバル社会と技術

教 科:工 業

科 目 名:「グローバル社会と技術」

目 標:グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技

術に対する興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることによ

り,創造的に問題解決を図ることができるような人材を育てるとともに,

科学技術を学ぶもののあり方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫

理観を涵養する。その際,問題解決の手順を提案させ,「SGH課題研究」

への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で行うことができるように指導す

る。

履修学年:第1学年

単 位 数:1単位

内 容:各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者と

してあるべき姿を考えさせるものとする。

(1)メカニズム (2)電力 (3)都市

(4)環境と人間 (5)技術者倫理 (6)情報モラル

(7)スピーチコミュニケーション(英語)

内容の取り扱い:

学習活動は, (1)科学技術に対する興味・関心の喚起, (2)学習の動機

付け, (3)問題解決学習への導入, (4)英語による発表と討議の4つの段

階よりなる。

(1)科学技術に対する興味・関心の喚起

生徒の興味を沸きたてる授業,最先端の科学技術を体験する特別

講義や体験学習によって,生徒の目を科学技術に向けさせるため,

科目を横断したテーマの設定が望まれる。

(2)学習の動機付け

科学技術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを理解する

ために不可欠な基礎的学習を行う。

(3)問題解決学習への導入

問題解決学習は,「受ける学習」から「調べる学習」への転換を図

− 16 −

るものだが,そのためには,生徒自身が主体的にテーマを設定し,

取り組むことが望まれる。

(4)グローバル化に対応するため,発表や討議に英語による表現を導入

し,国際交流事業において,成果を検証する。

グローバル社会と技術・応用

教 科:工 業

科 目 名:「グローバル社会と技術・応用」

目 標:高校段階において育むべき資質と能力である「リーダーが備えるべき

スキル」,「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を身につける

と共に,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称する

ミニ「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知識を自覚

し,フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国との国際交流によっ

て実践することを目的とする。また,REEI の成果を以て英語によるコミ

ュニケーションを図ることから,「語学力」の達成を図る。

履修学年:第2学年

単 位 数:2単位

内 容:

(1)リーダーが備えるべきスキル・地政学的リスク回避能力・語学力育

(2)テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英語

によるコミュニケーションスキル」の実施

(3)「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ

「SGH課題研究」の実施

指導方法:

(1)については,その育成を意識しながら,科目の全般にわたり指導す

る。

(2)については,専門家の意見を取り入れ,グローバルリーダーの資質

を育成する観点から内容を精選すること。また,専門家による特別

講義を企画すること。

(3)については,自ら導き出した成果を,協同学習の中で意見をすりあ

わせ,独善性を排除した知識の再構成をはかるように留意すること。

また,論理的な意見交換,質問とその回答のしかたなどを学ばせ,

討論や意見交換を通じて相互理解をはかること。また,そこから,

新たな発見ができる可能性があることを理解させること。情報通信

ネットワーク環境を活用して,遠隔地との交流を試み,外国語によ

る国際交流も実施する。

数理基礎

教 科:工 業

− 17 −

科 目 名:「数理基礎」

目 標: 理科及び工業教科を理解するために必要な基礎的数学知識を習得させ

ることにより,科学や技術の分野に興味・関心を持たせ,工業教科の学

習をスムーズに進められるようにする。

履修学年:第1学年

単 位 数:2単位

内 容:

(1)式の計算 (2)指数の計算 (3)有効数字 (4)ギリシャ文字と単位

(5)三角比 (6)ベクトルの計算 (7)常用対数の計算 (8)三角関数 (9)式とグラフ

内容の取扱い:

(1)科目の目標を達成するために,高等学校の理科及び工業教科で使用す

る数式の基本を学習し,数式の理科及び工業教科への応用を学び,深

化を図る。また,理科や工業等の科学技術の基礎教育において,原理・

法則,未知の現象等に対して数理的な見方,考え方を自ら積極的に行

わせるとともに,実験・実習をより客観的に捉え,数理的処理方法の

要領を自ら会得できるようにする。

(2)指導計画の作成に当たっては,「工業数理基礎」との違いについて留意

する。

先端科学技術入門

教 科:工 業

科 目 名:「先端科学技術入門」

目 標: 工業の各分野における先端科学技術の研究や成果及びその基盤となっ

ている部分に触れさせ,基礎的な学力の必要性や重要性を認識すること

で,理数系科目の基礎力の定着を目指し,自然科学ならびに技術に対す

る意欲と挑戦への動機付けを図る。

履修学年:第2学年

単 位 数:1単位

内 容:

(1)各専門分野における工業技術及び科学技術

(2)各専門分野における先端科学技術の研究内容・研究成果

(3)各専門分野における具体的事例に深く関係する理科・数学

(4)各専門分野に関係する科学技術系英語文献を用いた技術系英語

内容の取扱い:

本科目は,先端の科学技術を研究・開発している大学教員や技術者が

講師として参画し,本校教員と協力して行う科目である。

第2学年以上で,1単位で実施することが望ましい。

(1)科目の目標を達成するために,次の点に留意する。

ア年間を通して6テーマ程度と設定する。また,1テーマにつき授業

を4回程度実施し,第1,2回目を本校教諭による準備授業,第3

− 18 −

回目を講師による授業,第4回目を本校教諭によるまとめの授業と

なるように配慮する。

科学技術コミュニケーション入門

教 科:工 業

科 目 名:「科学技術コミュニケーション入門」

目 標:科学技術の背景となる理論や法則と科学技術との関連を理解させ,も

のつくりの過程の中で自ら課題を見つけ,主体的に判断・行動し,問題

を解決する資質や能力を育成するとともに,自ら導き出した成果を,協

同学習の中で意見の摺り合わせ,プライオリティを考えながら集団での

意志決定を行わせる。このようにして得られた結論及びその過程を,シ

ナリオのような詳細な計画にまとめられ,聴衆に発信される。これらを

1つの教育システムとした教育ゲームやICTを活用した表現発表会等

を行うことによってコミュニケーション力を引き出し『発信する力』を

育成する。

履修学年:第2学年

単 位 数:2単位

内 容:

(1)理論・法則と科学技術との関連

(2)科学技術に関する課題の発見・設定と解決の方法

(3)知見・成果の表現と発信する方法

(4)討論と相互理解

指導方法:

(1)については,背景となる理論や法則と科学技術との関連を理解させる

とき,各専門分野の特色を生かした事象を例として扱うこと。同時に,

理数科科目との関連を理解させること。

(2)については,ものつくりの過程の中で,科学技術に関する事象を深く

観察させ,協同学習を通じて多面的に考察する力を養うこと。

(3)については,自ら導き出した成果を,協同学習の中で意見の摺り合わ

せ,集団での意志決定を行わせる。このようにして得られた結論及び

その過程を,シナリオのような詳細な計画にまとめて,聴衆に発信す

る力を養うこと。

(4)については,論理的な意見交換,質問とその回答のしかたなどを学ば

せ,討論や意見交換を通じて相互理解をはかること。また,そこから,

新たな発見ができる可能性があることを理解させること。情報通信ネ

ットワーク環境を活用して,遠隔地との交流を試み,外国語による国

際交流も実施する。

③ グローバルリーダー育成に関する環境整備,教育課程課外の取組内容・実施方法

− 19 −

東京工業大学グローバルリーダー教育院・学術国際情報センター・留学生センタ

ー・世界文明センター等の協力により,グローバル化への対応に明るい専門家によ

る助言,外国人留学生の派遣など,人材の派遣を円滑に行い,かつ英語によるコミ

ュニケーションの鍛錬に協力いただく。

また,東京工業大学リベラルアーツセンターの協力により,国際情勢の教育に明

るい著名な専門家を招き,講演会の実施,新科目に対する講義内容への助言を戴く。

東京工業大学が実施しているSGU:スーパーグローバル大学創造支援事業に参

加し,共同で事業を進めることにより,相乗効果を狙う。

6 研究開発計画・評価計画

(1)第一年次

新科目「グローバル社会と技術」において,オムニバス形式の実施のための授業編

成,内容の精選,英語化の方策などについて検討しながら,試行を進める。

新科目「グローバル社会と技術・応用」において,授業内容の精選,専門家による

助言等を加味しながら,試行を進める。特に国際交流の相手として,フィリピンとオ

ーストラリアを先行実施する。また,著名な人物による講演や助言等を企画する。

「課題研究」・「SGH課題研究」に対する意識調査を行い,「SGH課題研究」への

振り分け方法や実施方法を検討しながら,「SGH課題研究」を試行する。

国際交流校の拡充を視野に,在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘する

イベント等への参加,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参加を促し,

交流への第一歩を踏み出す。

新たに開発する教材や指導法などのコンテンツのデジタル化についての計画を検討

するとともに,データの蓄積を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

第一年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(2)第二年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,第一

年次に作成した教材を用いて,効果の検証をしながら,実施する。試行をもとにして

作成した教材,指導法の再検討を行い,授業形態・指導方法,成績評価の方法などの

確認と改善の検討を行う。また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連

携を企画する。

「SGH課題研究」について,テーマや運営方法について校内での試行を重ねる。

また,「グローバル社会と技術・応用」において,計画に基づくテーマ学習について趣

旨説明を行い,交流校に打診し,REEI の現地校での実施,実現に向けて検討する。そ

の際,国際交流に関して大学との連携を深める。

国際交流校の拡充を視野に,在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘する

イベント等への参加を継続し,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

− 20 −

加を促し,情報収集を行う。サウジアラビアに関しては,王立学校校長等に対する REEI

討議を実現する。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのデジタル化についての計画を検討

するとともに,データの蓄積を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

第二年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(3)第三年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,第二

年次に作成した教材と指導法の確認と改善を行いつつ,第2年次全クラスにおいて本

格的な授業実践を開始する。実践を踏まえて,授業形態・指導方法,成績評価の方法

などの確認と改善の検討を行う。また,大学との連携について,第二年次の立案を試

行する。

「グローバル社会と技術・応用」について,REEI のテーマをフィリピン・オースト

ラリア両国の交流校に依頼し,来日時に討議を行う。また,在日アラブ人学校との交

流,東京工業大学が招聘するイベント等への参加,他校との交流プログラムについて,

具体的な行動計画を立案する。その際大学との連携を行い,モンゴルとの交流を具体

的に進展させる。また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携を企画

する。なお,サウジアラビアについては,王立学校校長等との交流を継続する。

「SGH課題研究」について,テーマ選定での振り分けを実施し,本格的な実施を

開始する。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

加を促し,情報収集を行う。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのデジタル化のためのデータ蓄積を

引き続き行いながら,アーカイブズの計画と制作を行い,普及方法の計画を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

SGH中間報告会を実施し,成果を普及すると共に様々な意見を吸収し,研究にフ

ィードバックする。

第三年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(4)第四年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,授業

実践を行い,2つの科目が結びついているか,検証を開始する。また,引き続き実践

を踏まえた問題点等を検討し,必要に応じて改善を行う。なお,大学との連携を本格

的に行い,問題点を抽出する。

「グローバル社会と技術・応用」について,フィリピン・オーストラリア両国の交

流校にテーマを依頼し,来日時の討議を本格化する。在日アラブ人学校との交流,東

京工業大学が招聘するイベント等への参加の継続し,これをきっかけとして,他校と

− 21 −

の人的交流の実現,またはネットワーク環境による交流の可能性について検討する。

また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携を実現する。

「SGH課題研究」について,本格実施を継続し,アブストラクトの英語化など国

際交流への準備を進めるとともに,従来型の「課題研究」との違いについて,検証す

る。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

加を促し,情報収集を行う。

新たに開発したSGH科目等における開発教材や指導法などのコンテンツのデジタ

ル化のためのデータ蓄積とアーカイブズの制作を継続しながら,一部制作したアーカ

イブズの普及を試行する。

研究対象生徒への意識調査を行う。教員から見た生徒の変容を調査する。理工系大

学に進学した卒業生への追跡調査を行う。教員対象の意識調査を行う。

第四年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(5)第五年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,授業

実践を行い,教材・授業形態・指導方法・成績評価の方法などについて,完成を目指

す。また,大学との新たな連携を完成させる。

「グローバル社会と技術・応用」について,フィリピン・オーストラリア両国の交

流校との本格的国際交流を進め,来日時に討議を行う。他校との人的交流の実現,ま

たはネットワーク環境による交流の具体的な実現を期す。その際大学との連携を行う。

また,著名な人物による講演や助言等,企業との連携を円滑に行う。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等へ参加

する。在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘するイベント等への参加をき

っかけとした直接交流を実現する。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのデジタル化のためのデータ蓄積と

アーカイブズの制作を継続しながら,普及を図る。

大学に進学した卒業生への追跡調査を行う。生徒の変容についてのまとめを行う。

SGH研究開発の活動に関する意識調査を本校教員に対して行い,教員の変容につい

てのまとめを行う。研究全体の評価をまとめる。

「SGH研究開発発表会」を開催し,研究の評価のためのアンケート調査を行う。

第五年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

7 研究開発成果の普及に関する取組

校内における保護者に対する公開授業の実施,中学生を対象とした体験入学等での本

開発科目の試行,SGH研究開発中間報告会および成果報告会での公表に加え,新たに

開発した教材や指導法などをデジタルデータで記録し蓄積する。蓄積したデジタルデー

タを編集し,一連のアーカイブズとして制作する。制作するアーカイブズは「Tokyo Tech

SGH アーカイブズ」としてICTなどの活用による普及を試みる。

− 22 −

8 研究開発組織の概要(経理等の事務処理体制も含む)

SGHの取組には下の図3に示す研究組織に本校の教員が所属し,教育研究活動を行

う。また,これに伴う事務業務を事務員が全面的に支援する。

(1)各研究会・委員会の役割分担

校内の各研究会・委員会の役割分担は,次の通りである。また,研究開発成果等の

普及や成果等の普及を目的としたアーカイブズの開発も,それぞれの活動を通して継

続的に行う。

図3 「SGH研究開発研究組織図」

◎各研究会・委員会の役割分担

校内の各研究会・委員会の役割分担は,次の通りである。

〇グローバル社会と技術研究会

新科目「グローバル社会と技術」の開発

〇グローバル社会と技術・応用研究会

新科目「グローバル社会と技術・応用」の開発,海外国際交流校との連携,

東京工業大学国際室及び留学生センターとの連携

〇SGH課題研究研究会

「SGH課題研究」の開発,「課題研究」との連携を行う。

〇SGH研究開発委員会

SGH研究開発における全般的な企画立案,渉外活動,業務のとりまとめ

− 23 −

(2)研究担当者(〇印 研究主任) 氏 名 職 名 担当教科(分野)

宮本 文人 校長

仲道 嘉夫 副校長 工業(情報・コンピュータサイエンス分野)

千葉 一雄 副校長補佐(総務担当・主幹教諭)

工業(立体造形・ディジタルデザイン分野)

山口 正勝 副校長補佐(研究担当・主幹教諭) 工業(システムデザイン・ロボット分野)

〇遠藤 信一 教諭・SGH研究開発委員会幹事 地理歴史・公民

井口実千代 教諭・SGH研究開発委員会幹事 英語

近藤 千香 教諭・SGH研究開発委員会幹事 工業(情報・コンピュータサイエンス分野)

久光 絢乃 教諭・SGH研究開発委員会幹事 英語

河野 志行 教諭・グローバル社会と技術研究会幹事 工業(エレクトロニクス・エネルギー・通信分野)

片渕 和啓 教諭・グローバル社会と技術・応用研究会幹事 工業(立体造形・ディジタルデザイン分野)

保立 雅紀 教諭・SGH課題研究研究会幹事 地理歴史・公民

草彅 久男 事務長

(3)運営指導委員会

① 組織

氏 名 所 属・職 名 備考(専門分野等)

蟻川 芳子 (一社 )日本女子大学教育文化振興桜楓会・理事長 教育

太田 幸一 元富士通株式会社・常務取締役 産業界

佐藤 義雄 元文部省・教科調査官 教育行政

辛坊 正記 株式会社 HiAc・最高顧問 ビジネスマネジメント

(五十音順)

② 活動計画

1年に2回程度の運営指導委員会を開催し,研究内容に即した授業の参観,研究

内容に関する討議等を行い,指導と助言を受ける。 (4)学内指導者

① 担当者

氏 名 所 属・職 名 備考(専門分野等)

大竹 尚登 東京工業大学・工学院機械系・教授 研究推進担当副学長

佐藤 勲 東京工業大学・工学院機械系・教授 国際企画担当副学長

篠崎 和夫 東京工業大学・物質理工学院材料系・教授 入試室高大連携委員

髙田 潤一 東京工業大学・環境・社会理工学院融合理工学系・教授 留学生教育

松田 稔樹 東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院・准教授 教育工学

水本 哲弥 東京工業大学・工学院電気電子系・教授 教育運営担当副学長

(五十音順)

− 24 −

② 活動計画

1年に2回程度の報告会を開催し,研究内容に即した授業の参観,研究内容に関

する討議等を行い,指導と助言を受ける。

25

❸-2 スーパーグローバルハイスクール研究開発の実施内容

Education for Sustainable Development ESD

ESD

basic

26

第1章 電力

SGH

27

4

第2章 技術者倫理

SGH

SGH

50

ICT

28

4

29

第3章 情報モラル

SGH

4

4

30

27

SGH

3

31

28

第5章 環境と人間

1

( )

( )

( )

SGH

32

6

6% IPCC AR4

COP21(2015)

LCA

PET 100 g g

99.97 %

“sustainability”

第6章 スピーチコミュニケーション

Introduction / Physical Message (Posture & Eye Contact)

Physical Message (Gestures & Voice Inflection)

Speech Structure (Introduction, Body & Conclusion)

Speech Delivering

33

McGahan

第7章 メカニズム

1-4

34

35

40

10

36

28 6 24 14 15 15 15

5

「燃料電池のしくみとエネルギーの流れ」物質理工学院 応用化学系 伊東章先生

「プログラミングを楽しむ」情報理工学院 情報工学系 権藤克彦先生

「ロボットはできた。さあ,どう動かそう。」

工学院 システム制御系 三平満司先生

2

「風力発電を知っていますか」工学院 電気電子系 七原俊也先生

1-6

37

「人々が生活する世界遺産」環境・社会理工学院 融合理工学系 高田潤一先生

12 21

1-7

38

39

1-10

ESD

1

40

1-10

− 41 −

Ⅱ グローバル社会と技術・応用研究会の活動報告

1 概要

本科目は,第3学年で実施する「SGH課題研究」をまとめ上げ,資源産出国に対す

る文化的理解を深めるとともに,英語による科学技術コミュニケーションを行い,国際

交流を深めることを目的として,設置している。

2 経緯

本科目では,グローバルテクニカルリーダー(GTL)育成のために,高校段階にお

いて育むべき資質と能力である「リーダーが備えるべきスキル」,「地政学的リスク回

避能力」,「語学力」の3要素を身につけると共に,「Response to Energy and Environmental

Issues(REEI)」と称するミニ「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知

識を自覚し,国際交流によって実践することを目的としている。また,「SGH課題研

究」の成果を以て英語によるコミュニケーションを図ることから,「語学力」の育成も

行う。

国際交流の場として,フィリピンやマレーシアなどの資源産出国との交流を通して,

学習内容の検証を自ら行うことによって,GTLに必要なスキルや知識を自覚すること

を目指している。

3 内容

(1)総論および全体の計画

本校における SGH 研究開発の入り口が,1年次の「グローバル社会と技術(GST)」

であるならば,2年次の「グローバル社会と技術・応用(AGST)」は,その続編とな

る。GST では,課題設定に必要な情報の収集,外部知識の取り入れやそのためのスキル

を学び,問題解決のモデルを学んだが,本科目では,さらに進んで,すでに学んだ問題

解決の手法を試行する段階となる。

特に研究第2年次に当たる本年度は,授業内容を取捨選択した。その結果,学校行事

の組み込みは最小限とし,3種類のテーマ学習・各分野による「SGH課題研究への道」・

グローバルリーダー育成講演会等の講演会等の実践を充実した。

表 2-1 は,本科目において育成したい能力と各授業・学校行事との関係を示している。

これら求められる能力をいかに高校段階の教育に落とし込んでいくかが,今後の課題と

なる。

テーマ学習では,集中講義として「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英

語によるコミュニケーションスキル」をオムニバス形式で実施した。特に前者2講義は,

高校段階では学習する機会があまりなく,情報収集するにしても,基礎知識を補う必要

があることから,実施している。また後者の英語に関する講義は,外国人教員による授

業で,1年次の GST の「Speech Communication」を発展させた「Global Awareness」として実施した。

− 42 −

次に,これらの総仕上げとなる「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」

と称するミニ「SGH課題研究」を提案しているが,マネージメントの問題解決手法や

定量的分析などを取り入れた問題解決方法を提案しながら,本校の5分野の実情に応じ

て,3学年次の課題研究への提案を行うこととした。それが SGHを標榜するのであれば,

今日の私たちが掲げる問題を解決する一助とならなければならない。本校ではそれを「課

題研究への道」と呼ぶ。

これらの正規の授業とは別に,2年生全員を対象とした「グローバルリーダー育成講

演会」を企画した。本講演会のうち,本科目の対象としたものは3回行われた。これら

の講演会は,2学年全員に対して行われ,前武雄市長の樋渡啓祐氏,楽天株式会社の宮

田多門氏,株式会社 広告製版社の伊東勝氏を招くことが出来た。詳細は後述するが,国

際社会の中で活躍する企業,あるいは起業家の話を聞くことにより,教育関係者とは異

なる見方・考え方を垣間見ることができると考えた。

講演会とは別に,学校行事の参加による異文化理解の促進を図った。詳細は後述する

が,わが国の文化を知る「歌舞伎鑑賞教室」,来日し本校に1週間程度留まる交換留学

生との交流などがこれにあたり,GTLの備えるべき能力のインクルージョン力(多様

性受容)を養う。

なお,海外調査研修については,今年度の報告よりⅣに掲載箇所を変更した。

11))リリーーダダーーととししててののススキキルル 22))地地政政学学的的 リリススクク回回避避力力

33))英英語語ココミミュュニニケケーーシショョンン力力 ①インクルージョ

ン力

②バック

キャスティング力

③コンセンサス

ビ ル デ ィ ン グ

国国際際交交流流事事業業 ◎ ○ ○ ◎ 学学校校行行事事 ○ △ 集集

中中

講講

義義

地地 歴歴 科科 教教

員員 ○ ◎

外外 国国 人人 講講

師師 ○ ◎

課課題題研研究究へへのの道道 ◎ ◎ △ GG TT LL 育育 成成 講講 演演

会会 ◎ ◎ ○

表 2-1 育成したい能力と授業・学校行事との関係

◎能力向上に期待できる ○能力向上に寄与 △関係あり ・集中講義は,地歴科教員による「中東・中央アジア理解」・「イスラーム文化研究」,外国人講師によ

る「Global Awareness」を集中講義(補講期間)。 ・「課題研究への道」は,各専門分野ごとに実施 ・GTL:Global Technical Leader

− 43 −

(2)テーマ学習の取り組み

表 2-2 補講期間での集中講義

1 学期補講期間 2 学期補講期間 3 学期補講期間 計

中東・中央アジア理解 2 0 0 2

イスラーム文化研究 0 2 0 2

外国人講師 4 2 4 10

計 6 4 4 14

① 「中東・中央アジア理解」

1)実施内容

テクニカルリーダーに求められる知識として,エネルギー環境問題と豊富な天

然資源を有する地域への理解が必要だと考え,サウジアラビアと中央アジアにつ

て,1 時間ずつの授業を行った。世界でも最大級の産油国であるサウジアラビアに

ついて,王族による特有の政治体制と産油国であるという特徴を踏まえた上での

産業構造に関しての授業を行った。一方で中央アジアについては,同地域におけ

る政治的影響力の大きさからウズベキスタン,天然資源を豊富に保有しており,

また,特徴的な政治体制をとるトルクメニスタンの 2 ヵ国を取り上げた。

授業後,授業内容の理解促進とこれら地域について,レポートを課題として課

した。以下の 3 つのテーマより 1 つを選択した上で,それについて調べ,題名と

参考文献を付けた上で,レポート作成するように指導した。

レポートのテーマ

(ア)サウジアラビアの産業・政治制度・経済または今後のあり方について

(イ)中央アジアのいずれかの産業・政治制度・経済・今後のあり方などについて

(ウ)天然資源をめぐる問題について

レポートの感想・考察について代表的なものを以下に紹介したい。テーマの(ア)

と(イ)を選んだ生徒については,「エネルギー供給国という点で,日本とも関

係のある国にもかかわらず,中東・中央アジアの国々についてはよく知らなかっ

た。体制・文化の違いを知った上で,良好な関係を保たなければならない。」「今

まで関心のなかった中東・中央アジア地域について調べることができて,面白か

った。」といった感想が多く見受けられた。他にも授業を通じて,「(複雑な政

治的・地理的背景を知って)天然資源を安全に確保し日本に供給するには,いろ

いろな問題があると思った。」「(サウジアラビアは)普段日本とはあまり関係

ないと思っていたが,日本にエネルギー供給という意味で欠かせない国であり,

驚いた。」などの感想があった。

また,別の観点から,「(サウジアラビアの政治制度について)宗教が王族に

よる暴走を止める場合もあることを知った。」などの感想もあったイスラーム教

の果たしている社会的役割に着目できたことは,異文化を多面的に捉えることに

つながったと思われる。これにより,グローバルテクニカルリーダーにとって必

要な物事を多面的に見ることの重要性を認識する機会にもなったと思われる。

− 44 −

(ウ)のテーマを選択した生徒からは,エネルギー問題では天然資源の枯渇に

言及した上で,それら天然資源が枯渇する前に,代替エネルギーの開発・導入に

早期に本格的に着手すべきだなどの意見が多く見られた。

2)今後の課題

レポートの感想の中でサウジアラビアや中央アジアについて,「今まで知らなか

った」というものが多かった。授業では地図などを用いていたが,授業内容に即し

た画像・写真などを用いることで,これら地域のイメージを掴みやすいように改善

したいと感じた。

②「イスラーム文化研究」

本校では,地歴・公民科の科目で,イスラーム文化について学ぶ機会がある。それ

は,地理歴史科の世界史 (1年 ),および公民科の倫理 (3年 )である。残念ながら,1

年次の世界史は,近・現代の歴史が主であるために,イスラーム教の内容の理解に

は至らない。また,3年次の倫理では,宗教の特徴について話題にするが,今日国

際問題となっているシーア派やスンナ (スンニー )派について学ぶ時間はない。

国際社会の中で,問題に直面した場合,本校で開発している問題解決のロジック

では,情報を収集し,自らが使える知識に加工することを求めている。しかしなが

ら,情報を収集する段階で,何ら予備知識なしに取り組むことはこんなんである。

特にイスラーム教に関わる知識については,アラビア語の固有名詞が含まれること

もあって,高校生の理解を阻んでいる。その意味では,少ない時間ではあるが,今

日のイスラーム教徒国際情勢を理解する上で,本テーマを全員が学ぶ意義は大きい。

今年度の実践では,国際情勢の理解に必要な項目として,

・預言者とは何か

・なぜ偶像の破壊を行うのか

・死後の世界の考え方

・コーランの一節を知る必要があるか

・スンナ派とシーア派の分裂

・六信五行

・礼拝の励行と食事の制限(ハラール(حلال Halāl))

について,学ぶこととした。

預言者について学ぶ理由は,近年,独裁者の中に「第2のムハンマド」を標榜す

るものがいるためである。預言はあくまでも宗教的な信頼関係の中で実現している

ものだが,ムハンマドは自分自身が最後の預言者であることを明言している。この

ことを忘れてはならないだろう。

偶像の破壊について学ぶ理由は,神像が崇拝される反面,多くの地域で邪悪な像

が災いをもたらすと考えられていることも事実である。偶像破壊は,厳格な宗教規

則の中で行われるが,突飛なことではないことを予め理解しておく必要がある。

死後の世界について学ぶ理由は,それが自爆テロに結びつくためである。死後が

約束されているからこそ,現実の世の中で死を厭わなくなる。死を近くに感じるこ

とは,宗教上の問題であり,私たちが関与することではないが,目的達成のために

− 45 −

死を厭わないことは,欲望の延長線上に死による解決をみるものであって,爆死の

ような大勢の犠牲をもたらす行為を異教徒である私たちは容認できるものではない。

近年,イスラームテロ集団が,日本人などの異教徒を誘拐し,コーラン (クルアー

ン , Qur’an)の一説を唱えさせたというニュースが流れ,多くの生徒から何を暗記すれ

ば良いか,問い合わせが相次いだ。私たちに必要なのは,小手先の暗記力でイスラ

ーム教徒になりすますことではなく,お互いを理解し合い共存しあう道を粘り強く

模索することである。近視眼的な見方を冗長してはいけない。

シーア派テロ組織ヒズボラの蛮行などが報道されるに至り,シーア派とスンナ (ス

ンニー )派分裂の経緯を知る必要がある。両派の境界は,ユーフラテス川であり,そ

の両岸をイラクが領有している。イラクの政治が一筋縄ではいかないことは,宗教

的にも説明のつく問題であり,シーア派誕生の理由について,理解する必要がある

だろう。

イスラーム教徒には独特の宗教儀礼があり,それを受容することが,お互いを理

解する第一歩である。今年度の実践の中では,5回の礼拝,ラマダーン月 の( رمضان)

断食,宗教的に許された食事・ハラールについて学ぶこととし,イスラーム教徒の

理解につなげたいと考えた。

1)生徒への課題

生徒は,授業を受けながらワークシートを完成させていくことで,授業内容を確

認し,自らの考えを記入していく。ほとんどの生徒が,イスラーム教の特徴を理解

し,それを受け入れながら共存の道を探るべきであると考えている。

2)今後の課題

アッラーの神の恵みか,赤道周辺のイスラーム教国には,石油などの化石燃料が埋

蔵されている。その採掘権が彼らにある以上,私たちは彼らと上手に付き合う必要

がある。別項目で言及するが,イスラーム教国との国際交流を通じてエネルギー問

題を考えるためのゲーム型教材を開発した。来年度はその実践に努めたい。

③「Global Awareness」

本授業は,外国人講師が担当し,グローバルな認識を持つために,英語でのディスカ

ッションおよびプレゼンテーションの向上と共に,10 のテーマについて英語で集中学

習を行った。会議形式でアクティブラーニングを取り入れた。合計 10 時間の授業は,

各学期の補講期間中に実施し3つのパートに分かれる。

パート1では,1年次のスピーチコミュニケーション授業で勉強したプレゼンテーシ

ョンスキルの復習,同世代のプレゼンテーションの紹介,各生徒が選択したテーマにつ

いてテキストを基にグループディスカッションを行った。なお 10 のテーマは以下に示

すとおりである。

・International Relations(国際関係) ・International Organizations(国際機関) ・Cultural & International Studies(文化と異文化研究) ・Global Health Issues(グローバルヘルス問題) ・Global Energy & Environmental Issues(地球規模エネルギー・環境問題)

− 46 −

・International Conflict Resolution(国際紛争解決) ・World Heritage Stewardship(世界遺産管理) ・Model of Local & Global Science & Technological Project(地域的およびグローバル的な科学技術プロジェクト事例) ・International Cooperation(国際協力) ・Local & Global Collaborations(地域およびグローバル連携) パート2では,経験的学習を中心とし,グローバル・アウェアネスについて世界的に

認知されているカリキュラムの基本概念:①世界について調べる,②考えを伝える,③

あらゆる視点を認識する,④行動を取る,と取り入れた。本年度は,本校国際交流アド

バイザーおよびバングラデシュ出身の博士課程学生がグローバルヘルス問題,世界遺産

管理,地域的およびグローバル的な科学技術プロジェクト事例のテーマの英文プレゼン

テーションを実施した。また,生徒達はテーマ別のグループに分かれ,テキストの宿題

を基に英語でのディスカッションを行った。

パート3では,各自の担当テーマ・国について作成した英文プレゼンテーションを基

に,グループプレゼンテーションの最終準備を行い,クラス全体にプレゼンテーション

を行った。

(3)SGH課題研究への道

3年次に課題研究として研究に取り組むための準備という位置づけで,現在の「STEM

課題研究 (SSH 事業 )」および「SGH 課題研究」における各分野のテーマ設定までの手順

について再確認し,そのプロセスを明確化することを単元の目的とした。なお,以下に

記す学校行事も「課題研究への道」として位置づけている。

・サマーレクチャー

・サマーレクチャーレポート発表会

・課題研究発表会聴講

生徒には7月に実施したガイダンスの際,上記の学校行事を課題研究のテーマ設定の

外国人講師による授業の様子 グループディスカッションの様子

図 2-1 授業の様子(Global Awareness)

− 47 −

契機として捉えるように事前にアナウンスを行った。各行事の際には,自分たちの興味・

関心がどのように研究へと接続することができるのか積極的に質疑・応答を交わすとと

もに,熱心にメモを取る姿が多く見られた。また,「サマーレクチャー」に関しては,

本校の SGH 課題研究の趣旨でもある,エネルギー問題や環境問題などを研究のテーマと

して掲げている研究室も多く見受けられ,それらの諸問題へアプローチする研究の手法

についても深く学ぶことができる良い機会となった。

また,各専門分野における研究テーマ設定のための取組みに関しては,指導の詳細は

異なるが,おおよそ,以下のような活動が挙げられる。

・既往研究の参照

・文献調査

・インターネットによる情報収集

・工場や研究所等の見学

・展示会等への参加

・講演会等への参加

・他校の研究発表会等への参加

・専門家や各指導教員へのヒアリング

・グループディスカッションおよび発表

生徒達には,課題研究のテーマ設定にあたり,どのタイミングで,どのくらいの時間

をかけ,上記のような活動を行ったかを具体的にレポート(A4 用紙一枚程度)としてま

とめることを課した。今後は,各分野においてそのレポートをもとに,研究テーマ設定

までの手順を一般化するとともに,SGH 課題研究に関しては,研究テーマとその手順と

の相関関係を明らかにし,生徒にとってその手順の中でどういった活動が有効であるか

を明らかにする必要がある。

− 48 −

講演会の様子 1(応用化学分野) 講演会の様子 2(応用化学分野)

グループディスカッションの様子

(情報システム分野)

グループディスカッション後の発表会

の様子(情報システム分野)

研究テーマ設定のための発表準備の様

子 2(電気電子分野)

研究テーマ設定のための発表準備の様

子 1(電気電子分野)

図 2-2 授業の様子(SGH 課題研究への道)

− 49 −

(4)学校行事

表 2-3 SGH 事業 授業と学校行事

時期 行事名 時間数

7/7(木) ガイダンス 1 6/17(金) 歌舞伎鑑賞教室 2 7/14(木) 集中講義 2 7/15(金) 集中講義 2 7/19(火) 集中講義 2 9/2(金) サマーレクチャー 6 9/29(木) 課題研究発表会(応用化学,機械)

2 10/6(木) 課題研究発表会(情報,電気,機械)

11/17(木) サマーレクチャーレポート発表会 2 12/15(木) グローバルリーダー育成講演会(第 1 回) 2 12/16(金) 集中講義 1 12/19(月) 集中講義 1 12/21(水) グローバルリーダー育成講演会(第 2 回) 2 1/17(火) グローバルリーダー育成講演会(第 3 回) 2 3/14(火) 集中講義 2 3/15(水) 集中講義 2 合計 31

①ガイダンス

日時:7 月 7 日(木) 対象:2 学年全員 場所:体育館

本科目について,生徒へ説明を行った。

図 2-4既往研究の調査で使用したプリ

ント (建築デザイン分野)

図 2-3マンダラートによるアイデアの

整理 (機械システム分野)

− 50 −

②歌舞伎鑑賞教室

日時:6 月 17(金) 対象:2 学年全員 於国立劇場

演目:「新皿屋舗月雨暈−魚屋宗五郎−」

出演者:中村橋之助,中村梅枝他

初めに,中村萬太郎さんと木佐彩子さんによる「英語」での歌舞伎の解説を聞き,

様々な楽器を使った音の演出や,歌舞伎俳優の演技による表現を学んだ。また,外

国人の観客数名が舞台上で楽器演奏や演技を体験するシーンもあり,生徒たちもや

りとりに熱心に耳を傾けていた。英語を通して日本の伝統文化を学ぶ,良い機会と

なった。

③サマーレクチャー

日時:9 月 2 日(金) 対象:2 学年全員

場所:東京工業大学大岡山キャンパス

午前中は全員がレクチャーシアターに集合し,「建築構造デザインの世界−華麗

でタフな建築を実現するために−」というテーマで東京工業大学大学院 環境・社会

理工学院教授の竹内徹先生に講演していただいた。午後には,協力頂いた 19 の研

究室から生徒達が興味・関心を持った 2 箇所の研究室を訪問し,最先端の研究が行

われている現場を見学した。その後,東工大の先生方や本校卒業生を招き質問コー

ナー設けた。研究に関することから大学生活,受験勉強など,さまざまな質問に答

えて頂いた。本行事に対する生徒達の反応は概ね好評で,進路等を含め,これから

のことを考える上で大変有意義な時間となった。

④課題研究発表会への参加

日時:9 月 29 日 (木 )

応用化学分野 (10:00~12:15,13:15~15:45)

機械システム分野 (10:00~12:30)

10 月 6 日 (木 ) 情報システム分野 (9:40~12:30)

電気電子分野 (9:40~12:30)

建築デザイン分野 (9:40~12:30)

今年度も,各分野の保護者や,来賓として東京工業大学から多くの先生のご臨席

を頂いた。また,2 学年の生徒達もそれぞれの分野の発表会に参加し,3 年生の発

表を熱心に聴講し,積極的に質問していた。2 学年の生徒にとっては,次年度に取

組む課題研究への足がかりとなる良い機会となった。

⑤サマーレクチャーレポート発表会

日時:11 月 17 日(木) 対象:2 学年全員 場所:体育館

9月のサマーレクチャー実施後,生徒には見学した研究室の研究内容についてレ

ポートを作成するという課題が出された。その後,そのレポートの中から,各分野

− 51 −

より1名ずつ,計 5 名の代表生徒が選出され,2 学年全生徒および東京工業大学か

らの来賓の先生の前でレポート発表会が行われた。

限られた発表時間の中で,各発表者は研究室見学を通して学び,調べた内容につ

いて,簡潔かつ分かりやすく説明していた。また,各発表に対しては,分野を超え

て多くの質問が投げかけられ,活発な質疑応答となった。最後に聴講者による投票

が行われ,最優秀賞および優秀賞の表彰が行われた。

(5)グローバルリーダー育成講演会

①グローバルリーダー育成講演会 第 1 回

日時:12 月 15 日(木) 対象者:2 学年全員 場所:大講義室

講演タイトル:「リーダーとしての生き方,その喜びと生きがい」

講師:樋渡社中 Founder&CEO,前武雄市長 樋渡啓祐氏

最初に「スピード・ブランド・ストーリー」という3つのキーワードを揚げ,樋

渡氏自身の経歴や実績をもとに,その3つのキーワードを切り口にして,独自のリ

ーダー論を語って頂いた。講演は生徒が理解しやすいように動画を中心とした構成

と成っており,それぞれのトピックの要所に,軽妙な語り口で解説をはさむことで,

生徒達の興味・関心を引き,終始笑いの絶えない講演会となった。

②グローバルリーダー育成講演会 第 2 回

日時:12 月 21 日(水) 対象者:2 学年全員 場所:大講義室

講演タイトル:「理系リーダーのススメ」

講師:楽天株式会社 楽天ベンチャーズ(JP) 宮田多門氏

楽天株式会社における英語での朝礼や会議等の話を聞くことで,英語の重要性を

再認識すると共に,将来は英語をコミュニケーションツールとして活用できる人材

になるべく志を新たにする生徒が多く見受けられた。また,講演者との年齢が近い

ためか,生徒達も遠慮することなく,積極的に質疑応答を交わしていた。

③グローバルリーダー育成講演会 第 3 回

日時:1 月 17 日(火) 対象者:2 学年全員 場所:大講義室

講演タイトル:「芝浦で世界とつながる,世界をつくる」

講師:株式会社 広告製版社 代表取締役 伊東勝氏

広告製版社の社屋は「Shibaura House」という名称で地域住民に親しまれている。

広告製版業をベースとしながらも,世界と芝浦をつなぐ文化拠点として,また,芝

浦という地のコミュニティスペースとして,新しい「働き方」を更新し続ける

「Shibaura House」の話を生徒達は熱心に聞き入っていた。 また,生徒たちが一日

の内の大半を過ごす,芝浦という地における身近なコミュニティ活動についても深

く理解することが出来た。

− 52 −

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

研究第2年次にあたる今年度は,研究第1年次の試行を整理する必要があった。前年

度は,GTL育成のための知識,スキル,第 3 学年におけるSGH課題研究へのステッ

プであるという考えから,幅広く,しかも内容も多彩なものとなった。言うなれば,効

果がありそうなものは,何でも取り組むという意欲的な活動であった。

今年度は,内容の取捨選択を行い,関連する学校行事等を整理し,集中講義と専門分

野で行われる「課題研究への道」を活動の中心とした。「課題研究への道」を SGH 課題

研究へと有効につなげていくためには,生徒自身がグローバルな視野に立って活動し,

課題を発見・解決するために,実際にものに触れたり,専門家にヒアリングを行ったり

することで,より実感を伴った学習を行えることが望ましい。しかし,現状では生徒全

員の視察調査は予算や年間スケジュールの確保のため実施しがたく,それらについてよ

り一層の検討や工夫が今後も求められる。

そうした現状を見据えて今年度行ったのが,教員による視察研修である。具体的には,

SGH 課題研究のテーマに展開できる可能性のある案件を教員が事前に調査し,その中か

ら宮崎県日南市における地方創生事業の取り組みを視察した。これには,成果を分野・

教科を超えて普及する方法や恒常的に実施できる仕組み作りの検討が引き続き求められ

るが,視察調査の成果は,SGH 課題研究への導入にとどまらず,「グローバルリーダー

育成講演会」などへも展開可能である。今後は外部講師として招集する人材や機会を拡

張するだけでなく,専門的知識の供給を受けることで,生徒と教員の双方にとって研究

意欲や学習・理解の向上に繋がると考えられる。

「課題研究への道」を充実することは,本研究会での活動を焦点化することであり,

本校で掲げるGTL像をなるべく高校段階での教育活動に落とし込むことを意味する。

本校では,GTLが備えるべきスキルを,インクルージョン力(多様性受容力),バッ

クキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力),コンセンサスビルディン

グ力(合意形成力))と定義しているが,実際に高校段階で何をすれば良いのか,明確

にする必要がある。この問いに答えるべく,本校が提案している解は,問題解決の手順・

手法を学ぶことであり,本研究会で実施する「課題研究への道」である。この活動につ

第 1 回講演会の様子 第 2 回講演会の様子

図 2-5 グローバルリーダー育成講演会の様子

− 53 −

いては,上記に詳細が掲載されているが,課題研究のテーマを決める場面における問題

解決を取り扱っている。分野の特性があり,アプローチの方法は様々だが,次年度にか

けてこの収束を図りたいと考えている。このことについては,本報告書の全体のまとめ

の中で仮のモデルを提案しているので,当該箇所を参照いただきたい。一方で,集中講

義の3テーマは,ほぼ形が整い,授業が円滑に行われつつあるが,この3つをどのよう

に統合していくかが課題となる。

なお,海外調査研修については,研究会から分離し,海外から受け入れる短期留学生

についてのみ,多くの生徒が関わることから,本研究会の活動に残すこととした。これ

によって,しだいにGTLが備えるべきスキルは,本研究会の活動内容に合致していく

ものと考えている。

− 54 −

Ⅲ SGH課題研究 研究会の活動報告

1 概要

工業課程の専門高校では,工業科高等学校学習指導要領により,科目「課題研究」を必履修科

目としている。それゆえ,本校では予てより,ものつくりによる課題研究を実践してきた。今般,

「SGH課題研究」を標榜することにより,両者の違いを明確にしなければならない。今年度実

施された文部科学省による実地調査においても,この点についてご下問があり,研究第2年次に

あたる今年度は,まずはこの点から明確にしたいと思う。

従来の課題研究では,ものつくり,あるいは改善することを目的とする。すなわち,ものの完

成,あるいはもの自体を対象としている。それに対して,研究開発科目である「SGH課題研究」

は,課題を解決できる人材の育成を目的としており,あくまでも人を対象とする。ここに両者の

違いがある。問題解決のためには,1・2年次に学んだSGH科目での手法を総動員し,場合に

よっては,マネージメントを意識したり,定量的評価を行ったりする。この力を持つ者に,グロ

ーバルリーダーへの道が開かれるものと考えている。

「SGH課題研究」は,本校が提案している上記の項目が,テーマ設定における制約条件とな

る。しかも,これらの解決のためには,いままでとは異なる手順やものの見方・考え方,検証方

法やまとめ方が必要であり,「SGH課題研究」の円滑な実践が,課題研究全体を大きく変える

ものである。

2 経緯

(1) 背景

本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必履修科目とされて

いる。科目「課題研究」は,本校が昭和 58 年に文部省研究開発学校の指定を受けた際に開発

したものであり,その後必履修科目となったことから,全国の工業高校等で実践が積まれてき

た。なお,現行の学習指導要領では必履修科目とはなっていないが,本校では必修科目として

継続している。

本校においても研究開発学校の指定以来,30 年あまりの間,実践を積んできた。本校が行

ってきた「課題研究」は,ものづくりや実験・実習に基づき,その過程において直面した課題

を解決するという方法で展開されてきた。

(2) 本校における取り組みと仮説

「SGH研究開発」における学習の総仕上げとして,いままで学び,蓄積してきた知識やス

キルを活かして問題を分析し,課題を設定する。そして,科学技術系人材育成プログラムによ

って培ってきた知識や能力・スキルを総動員し,時には,マネージメントに基づく損益や費用

便益分析など定量的な評価の結果などを根拠としながら立案,ものづくりや実験・実習によっ

て実証的な研究を進める。

これらの取り組みにより,論理的に物事を捉え,直面した問題を解決できる人材,モデル化

した手順により問題解決を図る人材,チームワークの形成などリーダーとなり得る人材,SG

H課題研究における成果の英語化により,自ら蓄積した知識を再構築できる人材の育成が期

待できると考えている。

− 55 −

3 内容

(1)SGH課題研究 研究会の活動

今年度の活動について,内容ごとに報告する。

① 「SGH課題研究」と「課題研究」との違いを明確化する

両科目に関する経緯は前述のとおりだが,本研究会ではそれらの違いを分かりやすくする

ため,下記のとおりとした。3年生やその保護者に対しては,9月下旬~10月上旬に本校で

分野ごとに行う学校行事“課題研究発表会”の要旨集に掲載し,定着をはかった。なお,その

際,2年生,1年生には,科目選択や分野選択と関連づけて説明した。

表 3-1 「SGH課題研究」と「課題研究」との違い

科 目 内 容

課題研究

自ら課題を設定し,目標を達成するまでに生じた問題を解決することによ

って,専門的な知識と技術を深め,総合化を図るとともに,問題解決能

力や自発的,創造的な学習態度を身につける。

SGH課題研究

グローバルな視野から,社会が求める技術的な解決を要する課題を自ら設

定し,問題点を科学的・技術的な取り組みによって解決し,得られた結果

が社会に及ぼす影響・効果・損益などを成果として導くことによって,

グローバルテクニカルリーダーとしての素養を身につける。

②SGH課題研究を分野で認定し,研究会で公認する流れ

今年度実施した「課題研究」は前年度の3学期頃から準備を行い,次年度の予算申請が2月

にはあることから,各分野において大まかなテーマ設定と人数を決定した。4月にはテーマ,

人数を確定した。

4月から「SGH 課題研究」を実施するにあたり,一部のテーマを「SGH課題研究」に認定

し,その内容,指導に加わる普通教科教員,TA と外部講師について再検討した。5月に,各分

野で内容等を吟味し,研究会で公認した。公認したテーマは後述の通りである。

③5分野のスケジュールの現状確認と今後の年間日程の調整

「SGH課題研究」,「課題研究」に関する実施前の指導は,2年生で実施する。その内容や

時期は,各分野で実施する他の専門科目の履修とリンクするため,分野ごとに種々である。

④講演会や調査旅費をはじめとする予算の活用(活動を拡張する方法)

講演会や調査旅費は各分野の「SGH課題研究」テーマごとに研究会に提案し,研究会が検

討の上,可否を決めた。

⑤分野教員と教科教員との協働

後述の通り,「SGH課題研究」のうち,いくつかのテーマで専門教科教員と普通教科教員

− 56 −

とのTTが実現した。今後もTTが促進されるよう,普通教科教員に課題研究の見学等を促す。

⑥SGH 課題研究要旨集の作成

「SGH課題研究」の要旨集は,「課題研究」の要旨集とまとめた一冊にするが,両者が区

別しやすいよう,中扉を設けた。

(2)講演会等の実施

SGH課題研究の活動の一環として,外部講師を招聘し,下記の講評会や講演会を行った。

今年度は,応用化学分野,建築デザイン分野の研究テーマに関連して実施された。他の課題研

究と合同で 10 月に行われた発表会においても,講評会は行われたが,広範なテーマの発表が

多数あり,時間的な制約もあった。それに対し,別途行われた講評会等は,より専門性の高い

講師陣を迎え,まとまった時間をとって行われた議論及び講評が行われ,生徒の理解を深める

と同時に,次年度につながる課題研究課題をも得ることができた。

①講師:東京大学 生産技術研究所 岡部 徹 教授

対象:2016 年度応用化学分野 2 年生

日時:2017 年 1 月 24 日 9 時 30 分〜12 時 00 分

場所:1 号館第 1会議室

題目:「奇跡の物質-レアメタル-」

内容:私たちの生活の中で多種多様な形で用いられ,豊かな生活には欠かすことのできない存

在となっているレアメタルについて,材料としての特質,埋蔵量,将来性,また多くの報

道の中にある誤解等,様々な観点からお話し頂いた。先生は学生時代から,チタンを中心

に,レアメタルの精錬・リサイクル技術の開発に携わってきた。レアメタルというと希少

な資源と思われるが,例えばチタンについてはコモンメタル(汎用金属)である銅・ニッ

ケルより賦存量ははるかに多く,精錬技術の進展に伴い,将来的には十分にコモンメタル

になり得るとのことであった。講演では,先生がコンサルティングする世界中の鉱山を訪

問したときの話も多く盛り込またが,その際に自らの手で採掘したという金属サンプル

を多く見せて頂いた。生涯目にできるか分からないようなサンプルに触れるという貴重

な体験に,生徒たちも大きな関心を示していた。4 月からの課題研究テーマの設定に向け

て,大いに参考になる有意義な講演会となった。

図 3-1 東京大学岡部徹教授講演会での様子

− 57 −

②講師:株式会社 UR コミュニティ参与 林邦彦氏

対象:2016 年度建築デザイン分野 SGH 課題研究実施生徒及び3年生希望者

(聴講:建築デザイン分野 2 年生及び建築デザイン分野への所属が決まっている 1 年生)

日時:2016 年 12 月 16 日 13 時 15 分〜15 時 15 分

場所:本校2号館3階造形室

題目:「私のラテンアメリカ・ベネズエラ」

内容:日本住宅・都市整備公団での在職時に派遣 JICA 専門家として南米ベネズエラでの建造

物の技術指導に携わられた林氏に,発展途上国における建築事情や当時の社会情勢,国際

技術協力のあり方などについてご講演いただいた。また,同氏の高校生時代からの経歴等

もご紹介頂くことで,どのように研鑽を積み建築実務に携わる技術者となりえたか,大企

業において業績を残されたかを仔細に示して頂き,生徒が現在における学習と将来の仕

事や生活との関わりに関する理解を深めることにつながった。特に,技術者として海外で

の生活にいかに順応するか,企業等において先輩達からの学びがいかに重要であるとい

う助言は,日本の国際化の最前線で活躍された同氏にしか伺えない説得力のある貴重な

ものとなった。

(3)各分野の活動

①応用化学分野

(ア) 今年度の概要

応用化学分野では,全地球規模で影響のある環境問題を題材にした研究について,

SGH 課題研究の認定を受けて実施することとした。今年度は「水質浄化」と「水質評価」

をテーマとする 2つの研究について実施した。

(イ) 実施したテーマ

「可視光応答性 WO3光触媒を担持した多孔質ガラスの水質浄化能力の評価」

光触媒は,光により励起状態になった物質が触媒作用を有し,物質表面に吸着した

有機物質を酸化分解する。光触媒は何らかの物質に担持することで取り扱いやすくな

るが,この担持物質を多孔質材料とし,水中の有機物質を効率的に吸着・回収するこ

とができれば,効果的な水質浄化が期待できる。本研究では,有機溶媒の影響が小さ

く,表面修飾も容易な多孔質ガラスを担持物質とし,光触媒としては可視光域に活性

を持つ酸化タングステンを用い,高性能な光触媒の開発を目指した。実験結果からは,

図 3-2 株式会社 UR コミュニティ参与 林邦彦氏による講演会の様子

− 58 −

作製した多孔質ガラスにより水中の有機物の約 60%が除去でき,また光触媒効果によ

り,さらに約 20%の浄化作用が認められた。

「界面活性剤を用いた水質評価」

界面活性剤は,水中の有機物に対して吸着し,乳化する特性を持つ。この特性を生

かした水質評価法ができると,非常に簡易化できる可能性がある。本研究では,種々

の性質の異なる界面活性剤を用い,水質評価の可能性を検討した。実験結果からは,

界面活性剤が水中の有機物に対する作用から予想される結果と相反するものとなった。

しかし,界面活性剤が汚染水への応答性があることが示唆され,今後,この応答作用

の解明により,有効な評価法となり得ることが期待される。

(ウ) 今後の課題

今年度の取り組みからは,グローバルな視点からの技術的な解決につながる部分に

ついて,評価することができた。この技術が社会的に有効であると期待できるが,そ

れを定量的に示すところまでには至っていない。このあたりの評価は今後の課題であ

る。また,今回は環境問題を題材にした研究に止まったが,SGH 課題研究として合致す

るテーマのさらなる創出についても今後の課題と考えている。

②情報システム分野

(ア) 今年度の概要

SGH 課題研究の内容として,「グローバルな視野から,社会が求める技術的な解決を

要する課題を自ら設定する」ことが求められている。今年度の課題研究では障害者福

祉,特に視覚障害者の支援に取り組むグループとインターネットを介して情報を共有

し,その中から必要な情報を抽出するアプリケーションに取り組むグループがあり,

SGH 課題研究の内容として合致すると判断した。メンバーへ意向を確認したところ,

SGH 課題研究として進めることに同意し,認定を受けることとした。

(イ) 実施したテーマ

「白杖に取り付け可能な危険回避装置の開発」

視覚障害者の多くは白杖を使用して日常生活を過ごしているが,白杖では上部の物

体を検知しきれないなどの欠点もあることが研究動機・背景である。センサなどを利

用した危険回避のための電子機器を開発し,安価で製作することで「社会が求める技

術的な解決」に至ると考えた。

結果として,約 1 m 先の物体を検知することができ,危険回避のための電子機器の

開発は成功した。また,安価で製作することもできた。しかし課題は多く残り,現状で

は視覚障害者をサポートできるだけのものにはならなかった。研究結果の反省から多

角的に再検討し,視覚障害者が扱いやすい,使いやすいものを創造することが求めら

れていると考える。

− 59 −

「データベースを用いた動的な Web ページの作成」

これからのグローバル社会では,多くの情報から必要な情報を取捨選択し,共有し

ながら協同作業を行うことが必要となる。そこで,必要なデータを抽出してウェブ上

に動的な Web ページを表示することが「社会が求める技術的な解決」に至ると考えた。

今回の研究では,進学試験報告書の整理を例に作成した。

(ウ) 今後の課題

今年度は,障害者福祉またはネットワークを介した協働の観点から SGH 課題研究と

して認定を受けた。「グローバルな視野から,社会が求める技術的な解決を要する課題」

として,最低限の結果を出すことはできた。しかし,「得られた結果が社会に及ぼす影

響・効果・損益などを成果として導くことによって,グローバルテクニカルリーダー

としての素養を身につける」という点では,技術的な解決方法のみで終わってしまっ

たため,成果を測ることはできなかった。

グローバルリーダーとして技術的な解決方法を導き出すことができても,その先の

成果を測ることへの苦手意識があるため,成果を測る手法の指導および成果を測る工

程も加味したスケジュール管理が必要であり,早期に課題へ対する技術的な解決を導

かなければならないと考える。

③機械システム分野

(ア)今年度の概要

今年度の機械システム分野では,「課題研究」の研究テーマの希望調査の時点で,エ

ネルギー・環境やグローバルな視点での社会貢献・社会福祉,ユニバーサルデザイン

といったキーワードに関連する問題を背景として,既に世の中に存在し活用されてい

る機械装置・システム等も対象として,省エネルギー化,低コスト化,多様な世代での

利用を可能とすることによる社会貢献・福祉,ユニバーサルデザインを目指すことを

目的とした2つのテーマを,今年度の「SGH課題研究」として実施することとした。

(イ)実施したテーマ

「一人乗り電気自動車の小型化及び性能実験」

過去の課題研究で製作した電気自動車を,小型化及び軽量化を施し,エネルギ

ー効率の高いものへと改良することを目標に環境問題の解決への一助にするとと

もに,スマートフォンなどのスマートデバイスによる操作システムの構築を行う

ことによるユニバーサルデザインを目指した。

図 3-3 装置の外観 親機(左)と子機(右)

− 60 −

図 3-4 電気自動車 図 3-5 発表会の様子

「メカナムホイールを用いた体重移動による全方向移動車の製作」

メカナムホイールを用いることにより,タイヤの操舵を必要とせずに全方向に

移動可能な車両を製作した。移動にあたっては,操作台の上に立つ,もしくは,座

った姿勢の状態で,体重移動による操作台に加わる荷重の変化を活用し,荷重が

大きく加わった方向に進行していく仕組みとなっている。さらに,ユニバーサル

デザインの考えを採り入れ,だれでも操作し易く,汎用性の高い乗り物の開発を

目指した。10 歳代から 80 歳程までの 20 名の方々に協力をしていただき,操作性

と身体への負担・疲労度をそれぞれ5段階評価してもらった。身体への負担,疲労

度に関しては,若年者高齢者どちらにおいても立っているときと座っているとき

で大差はなかった。この様な乗物の開発により,主に福祉での社会問題解決への

可能性を模索した。

図 3-6 メカナムホイール 図 3-7 発表会の様子

(ウ)今後の課題

グローバルリーダーの育成を目標とする本研究開発において,「SGH課題研究」は,

第1学年と第2学年における開発科目「グローバル社会と技術」及び「グローバル社

会と技術・応用」を学習することによって成立するものである。今年度は,昨年度試行

で実施した「グローバル社会と技術・応用」を学習した生徒による。

前述のように,全テーマから,エネルギー,環境,グローバルな視点での社会貢献や

福祉,ユニバーサルデザインなどのキーワードに関連するテーマを抽出し,生徒と相

談,希望も考慮した上で,上記2テーマを「SGH課題研究」で実施するテーマとして

認定した。認定したテーマは,スマートフォンにより電気自動車の操作を可能とする

− 61 −

もの,年齢を問わず体重移動により全方向に移動できる4輪車の開発など,ユニバー

サルデザインを目標にした内容であった。特に,全方向移動車については,老若男女

20 名の協力を得て評価まで行っている。評価を踏まえたフィードバックを行い,改良

まで行えればさらによかったと思われる。「SGH課題研究」としては,成果のひとつ

と言えよう。

今後の課題としては,SGH課題研究の趣旨・目標等についての理解を深めること

にある。今年度の第3学年は,第1年次での「グローバル社会と技術」を履修していな

いが,テーマ設定の際,エネルギーや環境,ユニバーサルデザイン等を目標にしたテ

ーマ設定を行うグループが存在した。このことは,第2年次の「グローバル社会と技

術・応用」での学習成果が要因のひとつとも言える。今後,研究テーマ希望調査時点に

おいて,率先して「SGH課題研究」としてテーマを提出してもらえるようになるこ

とが望まれる。

④電気電子分野

(ア) 今年度の概要

本分野では,現代社会が抱える問題の解決や娯楽に応用できる機器の改善,生産性

向上を図るといった様々な場面において,電気・電子技術による解決を目標とした。

本分野のテーマ設定時期は 2年次の 11 月中旬~12 月末である。2年次設定科目「グ

ローバル社会と技術・応用」において,3 年次科目「課題研究/SGH 課題研究」を見据

えて,調べ学習やプレゼンテーション作成・発表を行っているためである。また,テー

マ設定時には次のような条件を与え,生徒たちが自らグループを組み,課題研究の立

案を行っている。

○ 電気・電子工作を必ず行う(1 テーマ 5~7人程度)

本分野の特質より,ソフトウェアのみの課題研究テーマは認めていない。

グループ活動により,分業と連携及び協調性を養う体制をつくる。

○ 基本目標と応用目標の設定

基本目標とは,動作をするために必要な最低限の目標である。応用目標とは,基本

目標より機能性を向上させ,問題化帰結に導くための高度な目標である。

○ 研究の意義の考える

ただ単に,技術追求型としての「電子工作」に留まらず「誰に」,「どのような影響

を与えるか」を考えさせることに留意した。たとえ,同じ機能を持つ製作物ができる

場合でも「より安価に」や「使いやすい」,「作りやすい」ことも研究内容の良さとし

て検討するように指導した。

「研究内容として適正であるか」「作品の完成予測ができるか」「研究に危険な作業

などは伴わないか」などについて総合判断し,本分野の教師が課題研究と認定した。

今年度は,2年次に SGH 課題研究について理解をする時間を設けたことから,テーマ

設定時に SGH 課題研究か従来の課題研究かを生徒と話し合い選択した。

今年度実施したテーマは以下の 6 つである。

従来の課題研究(4 テーマ)

①視覚補助システム ②電子オルガンの製作 ③2モード電動台車

④災害救助支援ラジコンカーの製作

− 62 −

SGH 課題研究(2 テーマ)

①事故回避のための発光傘 ②起立補助いすの製作

(イ) 実施したテーマ

○事故回避のための発光傘

交通事故は雨天時の夜間に多発するという統計資料がある。これはドライバー(運転

者)から通行人などの認識が遅れることが原因の一つである。通行人などをドライバー

から早い段階で認識できるよう,本テーマの研究を行った。

【基本目標】

傘の骨組みに沿った装飾用光ファイバをマイコンによりフルカラーLED で発光させ

る機能の実現。

【応用目標】

・発光パターンや発光色を変更できる機能の実現。

・電池切れなどの場合に使用する,簡易発電機能を搭載。

本研究は,基本目標及び応用目標を達成し,作品として完

成することができた。また,SGH 課題研究での情報収集過程

において,日本以外の傘の使用率などを調べた。その結果,

高価な傘を求めないこと,傘の利用率が低いことがわかった。

それ故,より安価に丈夫にできるよう傘の素材や,日傘との

兼用などの検討を行い,漏電の危険を避けるため,竹などの

木材を素材とすることが望ましいとした。また,夜間の使用

では見通しがきく透明なビニールにすべきだが,日傘との兼

用では黒の布を使うことが望ましいと考えた。しかし,骨組みを一から作るのは本分

野として難しく,今回は市販の金属製の骨組みを使用したが,黒い布については,縫

製して独自のものを作ることができた。

文化祭発表では,問題の共有,解決策への納得が得られ多くの聴衆を引きつけた。

○起立補助いすの製作

高齢化や肥満が及ぼす腰痛に焦点を当て,椅子への離着席を補助することを目標と

して本研究を行った。

【基本目標】

・座面の上昇,下降を電気で制御できる椅子の製作

【応用目標】

・使用者が安全に配慮し,けがにつながる誤動作を防ぐ機能の実現。

・操作状況を LED で表示する機能の実現。

・ユーザ毎のデータを登録し,その人に合わせた高さに自動調節する機能の実現。

本研究は,座面の昇降機能と人感装置を実現し,目標を達成した。

椅子から立ち上がる前に座面が上がる,座る前に高い位置に座面があることで,腰痛

の低減や再発防止につながることを期待した。

本研究は,市販品と同機能の椅子をより安価に製作するために材料やセンサの選択

に配慮した。その結果,市販品より機能面では劣るものの,1/5 以下の費用で製作した。

本来,本分野では,回路等の電子工作を行い,機械工作ができない。その結果,安定し

図 3-8 発光傘

− 63 −

て使用するための工作には多くの時間を費やした。

(ウ) 今後の課題

生徒/教師ともに「グローバル化」と「ユニバーサル化」の区

別が曖昧なままにテーマ設定をしたように思われる。誰でもそ

の機能を使えるようにすれば「グローバル(Global:世界)化」と

捉えがちであったと感じる。使用者が扱う機能の他に,各国に

おける生産者側の考え方の差異を考慮できるようになることも

重要である。それ故,グローバル化の内側にユニバーサル化が

含まれていることが望ましいことを指導していかなければなら

ない。そのためには,文献やインターネットによる調査はもと

より,多国籍の集まる企業などを訪問するといった直接的な経

験をする必要があると思われる。

⑤建築デザイン分野

(ア) 今年度の概要

建築デザイン分野の SGH 課題研究では,エネルギー問題をはじめとした現代の社会

的な課題に対して,その原因の解明や解決法の提案を建築的な視点から探求すること

で,生徒が社会問題に関する理解を高め,その解決法に関する視野を広げること,そ

してそれを達成するために有効な建築的思考を獲得することを目指している。

今年度は,省エネルギー化による持続可能な建築の探求と地方創生社会における地

域性の保全という社会的な課題を背景として,再生利用可能な材料の有効活用および

地域性の保全の円滑化の大きく2つのテーマを掲げ SGH 課題研究を実施した。これら

のテーマの設定および研究過程において,昨年度にテーマとして扱われたもののうち

自然素材・自然エネルギーは前者に,都市の国際化は後者に包摂されるものとして扱

われた。一方で,特定の前提条件が設定された建築デザインコンテストや,部材の強

度などの定量的な解析に主眼の置かれたテーマのものは,SGH 課題研究として認定せ

ず,従来の課題研究として実施した。

その結果,今年度は建築デザイン分野全生徒のうち 7名(27%)を対象に,7つの研

究型のSGH課題研究が実施された。そのうち再生利用可能な材料に関する3テーマは,

化学との関連性が高かったことから,前提となる知識の学習に普通教科教員(化学科

1名)に協力頂き,研究の過程で共通する作業や観察・分析は生徒同士で共同して行

った。また,地域性の保全の円滑化に関するテーマは,建築に関する専門的な知識の

ない普通科高校の生徒や海外の高校の生徒とも共有しやすく,その研究成果は SGH 合

同発表会や国際交流の場で発表され,生徒の様々な研究交流を深めることができた。

(イ) 実施したテーマ

○再利用可能な材料の有効活用

「廃材を有効利用した漆喰に関する研究」,「身近な材料を用いた漆喰の表面仕上げ

に関する研究(図 3-10)」,「土間の温度特性に関する研究(写真 3-6)」

○地域性の保全の円滑化

「江戸城天守再建が東京のまちづくりに与える影響」,「『洋館』の現代における価値

を考える」,「港区芝浦地区における水路沿いの建物の構えに関する研究」,「建物の

図 3-9 起立補助いす

− 64 −

立面表現からみた銀座の街並みの連続性に関する研究(図 3-12)」

(ウ) 今後の課題

第2年次の今年度は,課題研究のテーマ設定前に SGH 課題研究の目的等について生

徒への説明を行なった上で,SGH 課題研究に取り組みたい生徒を募った。そして,生徒

が担当する教員と相談した上で各自のテーマを提示し,それについて分野教員全員で

協議すことで SGH 課題研究として認定した。こうした段階的なテーマ認定により,昨

年度は多様でありながらも拡散的だったテーマ認定を前述の大きく2つの大枠で位置

づけることができた。しかし,その一方で,認定する時期や内容が厳密化した結果,研

図 3-10 植物を用いた着色実験結果の一例

図 3-11 サーモカメラによる土間の

材料の温度解析

図 3-12 建物の立面表現からみた銀座の

街並みの連続性の分析

− 65 −

究を進める中で SGH 課題研究として位置づけられうるテーマの取りこぼしも見られ,

テーマ設定過程における柔軟性が求められると考えられた。例えば,課題研究として

継続的に取り組んでいる建築デザインコンテストへの参加は,課題の内容や発表時期

が出題者である大学によって異なっており,今年度は SGH 課題研究として認定するこ

とができなかった。しかしながら,そこで設定される課題は様々な社会情勢を踏まえ

たものも少なくなく,そうした課題に具体的な製作などを通して提案することは,SGH

課題研究のひとつの在り方として十分有意義なものとなりうることから,それら製作・

提案型の研究を認定する枠組みの再検討が必要であると言える。また現段階において,

SGH 課題研究 が SSH と比べて成果発表の場が限られることが,生徒にとって SGH 課題

研究に取り組む意欲の障害となる場面も見られた。

これらの課題を踏まえ次年度においても,引き続き SGH 課題研究に関する生徒の理

解の向上やテーマ設定過程の検討を行い,建築デザイン分野での学習により適した SGH

課題研究の実施手法の確立に努めたい。SGH 課題研究の成果発表の場については,着実

に増えてきている合同発表会等に積極的に参加すると同時に,学校祭や地域での発表

の場を開拓することなどを通して,生徒への学習効果の向上を目指したい。

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

今年度の活動では,研究会での議論を踏まえ,全ての分野で「SGH課題研究」が提案され,

研究会で認定した。その結果,全ての分野から2テーマ以上,合計 15 テーマを実施できたこと

は,成果といえる。

また,テーマを認定する基準を本研究会において示し,各分野においてテーマの認定理由の基

準となるような大枠の項目の検討を開始した。各テーマの認定理由は大枠の項目に照らし合わせ,

各分野で細かい理由を設定することが次年度以降に求められる。

現在,2年生を対象に実施している「グローバル社会と技術・応用」などのSGH科目を通し

て,「SGH課題研究」への導入となりうる学習を,専門教科教員と普通教科教員とが協力して

行い,充実させることが重要であり,生徒の自主性を尊重し,内容の理解を向上させながら,「S

GH課題研究」への接続を円滑にすることが求められる。研究第2年次として,この方針に従い,

ある程度の成果を残すことができた。しかし,学校全体で取り組む研究開発の理念を忘れること

なく,着実な実行が求められよう。反省すべき点を次年度にいかしていきたいと思う。

今年度は,「都内国立校合同 SSH/SGH 課題研究成果発表会」(2017 年2月 19 日:東京学芸大学)

に参加し,ポスター発表・SGH部門で2テーマが受賞することができた。また,2017 年 3 月に

「SGH甲子園」に 10 名の生徒が参加して,成果を発表することができた。さらに,SGH課

題研究で得られた成果の普及ために,各種発表会やコンテスト,地域イベントなどで公開するこ

とで学術交流や地域交流に寄与する努力を続けながら,より効果的な公開する場の獲得や公開方

法について検討することが必要であると考えられる。

− 66 −

Ⅳ 海外調査研修の報告

1 SGH マレーシア海外調査研修について (1)概要

7 月 31 日(日)から 8 月 5 日(金)の 6 日間,生徒 8 名(男子 6 名,女子 2 名)と引率教員 3 名でマレーシアにおいて調査研修,現地校との国際交流を行った。本校SGH プログラムの柱として,エネルギー・環境問題をテーマとした国際交流を目指している。日本は資源に乏しく,消費国としてのみそのような問題を理解しているに過

ぎない。それに対しマレーシアは,資源産出国としての立場を持っている。日本とは

異なるエネルギー事情の国の人々の考えに触れ,よりグローバルな視野でエネルギ

ー・環境問題について取り組む人材を育成することが本研修の目的である。

研修内容 1 日目 マレーシア航空便で成田空港からクアラルンプールへ。 クアラルンプールで乗り換えクチンへ。午後 9 時頃到着。市内ホテル泊。 2 日目 マレーシア大学サラワク校(UNIMAS)・工学部にて研修。(再生可能エネ

ルギー・現地の水力発電プロジェクトについての講義,本校生徒によるエ

ネルギー・環境問題のプレゼンテーション) 市内ホテル泊。 3 日目 セント・トーマス高校にて研修。(本校生徒によるエネルギー・環境問題の

プレゼンテーション,物理授業に参加) 市内ホテル泊。 4 日目 クチン科学高校にて研修。(本校生徒によるエネルギー・環境問題のプレゼ

ンテーション,数学・生物授業に参加,日本語クラスを履修している現地

生徒との交流) 企業訪問:太陽誘電サラワク訪問(事業紹介,施設見学) 市内ホテル泊。 5 日目 マレーシア航空便でクチンからクアラルンプールへ。 ヘリオットワット大学にて研修。(マレーシアの石油ネットワーク・再生

可能エネルギーについての講義,施設見学) 行政都市プトラジャヤ見学。モスク見学。 市内ホテル泊。 6 日目 マレーシア航空便でクアラルンプールから成田空港へ。午後 7 時頃帰国。

現地校において講義を受けた他,本校生徒がエネルギー・環境問題についてのプレ

ゼンテーションをする機会が 3 回あり,それぞれの学校で現地生徒と意見交換を行うことができた。UNIMAS では工学部教授陣から専門的な目線からのアドバイスを得た。また,企業訪問ではまさにグローバルリーダーとして活躍する現地社長から直々にレ

クチャーを受け,レクチャーの内容のみならず,その姿からも多くのことを学んだ。

日本国内で,日本人同士で話しているだけでは生まれないような考え方や視点に触れ,

非常に有意義な研修となった。

− 67 −

クアラルンプール空港

サラワク大学での研修 工学部教授によるプレ

ゼンテーション

セントトーマス高校で

の研修

本校生徒によるプレゼ

ンテーション

物理の授業に参加

伝統的なダンスのパフ

ォーマンス

クチン科学高校での研

生物の授業に参加

太陽誘電 企業訪問

ヘリオットワット大学

での研修

プトラジャヤ

モスク ローブを着て入場

成田空港到着 図 4-1 研修の様子

− 68 −

2 SGH フィリピン共和国海外調査研修について (1)概要

8月7日(日)~12日(金),生徒6名(男子3名・女子3名),引率教員2名が

フィリピン デ・ラ・サール大学附属高校(以下,DLSU-IS)で調査研修を行った。本校が SGH に認定されて 2 回めの実施である。昨年平成 27 年度は全日程ホテル泊の研修だったが,グロバールリーダーの素養である「異文化理解」「コミュニケーショ

ン能力の育成」の観点から,ホームステイを原則として実施した。8 日~12 日までSGH の目標である「グローバルテクニカルリーダーの育成」に基づいた校内での研修(環境,エネルギーに関するプレゼンテーション・質疑応答,附属高校通常授業参加),

日本文化の紹介(文化紹介プレゼンテーション,折り紙教室),校外研修(デ・ラ・

サール大学研究室訪問,地熱発電所訪問,Eco-Park 散策,Eco-Island 訪問)等プログラムに沿って研修を行った。滞在中低気圧の襲来ですべての学校が休校になるとい

う気候の違い,学校の対応の差違も経験もした。

研修内容 第1日 8月8日(月)

Integrated School での研修を行なった 全校生徒 7,8,9,10 年生 800 名の前で「日本紹介」,「本校の紹介」のプレゼンテーションを行った。授業に参加して本校生徒による「 Special class on Environment and Water」(環境に関するプレゼンテーション水に関するプレゼンテーション)についてのプレゼンテーションを行った。その後現地の生徒

達と活発な質疑応答を行った。 第2日 8月9日(火)

Outbound Tour in Laguna ラグーナ州の校外研修 フィリピンの自然をそのまま残す保護地区にて気候,風土を体験すると共に,現地高校生と一緒に校外

活動をすることにより,ことなる文化を持つ人々と協力をすること,リーダー

シップの重要性等を学習する。引率の先生3名の他に Outbound Education Instructor 4名,Security guard 1 名が同行した。

第3日 8月10日(水) 低気圧のため ),教育省よりマニラの学校は休校となった。生徒は自己の研修テーマに基づきホストファミリーと行動。ホストファミリーの関係で現地銀行で

の見学,講義を受ける。 第4日 8月11日(木)

Eco-tour (Freedom Island) 東工大デ・ラ・サール大学訪問 「環境を考慮したジプニーの開発と利用」に

ついての講義,質疑応答の後,宇宙,環境,電子系等研究室訪問 東工大オ

フィス訪問 第5日 8月12日(金)

Farewell Party 校長,副校長,バディに感謝のスピーチを披露

− 69 −

ホームステイを実施することで,本校,DLSU-IS が設定した旅程に加えて,ホスト

ファミリーの特別な計らいにより,現地銀行の見学,管理職からのレクチャー,それ

ぞれの興味・関心に応じた見学も受けることができた。

デ・ラ・サール大学附属高校

(ラグーナ)

生徒集会で 日本文化の紹介

環境問題についての ディスカション

エネルギー問題についての

ディスカション

折り紙の紹介

体育の授業参加

地熱発電所見学

Panguil River エコパークでの活動

Boodle Fight

(伝統的な食事 )

デラサール大学訪問 (マニラ)

ソーラーカー 開発チーム訪問

また日本で会いましょう

図 4-2 研修の様子

− 70 −

❸−3 第2年次の研究のまとめと今後の課題・成果の普及

Ⅰ 第2年次の研究のまとめと今後の課題

1 総論

研究第2年次は,新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」

において,第1年次に作成した教材を用いて,効果の検証をしながらの実施,また,教

材・指導法の再検討を行い,授業形態・指導方法,成績評価の方法などの確認と改善の

検討を行うことを計画した。授業運営については,予定通り進み,教材内容についても

より実情に沿った改善がなされている。当面の目標は達成できていることから,その成

果は次年度の中間発表会で公表する予定である。

著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携との実現について,計画したが,

グローバルリーダー育成講演会において,NHKテレビ「おとなの基礎英語」講師であ

る立教大学教授 松本茂氏,マスコミで活躍されている東京工業大学リベラルアーツ教育

院 特命教授 池上彰氏を招くことができた。また,企業との連携を図る必要があること

から,2年生のグローバルリーダー育成講演会を企業人に限り,前武雄市長の樋渡啓祐

氏,楽天株式会社の宮田多門氏,株式会社 広告製版社の伊東勝氏を招くことが出来た。

教育現場には刺激の強い企業人を招くことにはためらいもあったが,起業に対する関心,

インキュベーション (incubation)の現場を垣間見ることができたと考えている。

「SGH課題研究」については,テーマや運営方法について校内での試行を重ねる計

画とした。この点はおおむね達成できたと考えるが,SGH研究全体に対する位置づけ

など生徒や教員に周知すべき事柄が明確にしなければならず,このことが課題研究の成

否に影響を与えると考えている。また,SGH課題研究における問題解決モデルについ

て,検討を行った。この点については,詳細を後述する。

海外調査研修および来日時の調査研修について,交流校に打診し,REEI の現地校での

実施,実現に向けて検討する計画を立てた。この点に関しては,おおむね達成されたと

考えている。詳細は前掲に委ねるが,フィリピンでは協定校であるデ・ラ・サール大学附

属高校において,生徒によるエネルギー問題に関する提案,プレゼンテーションを行っ

た。当該交流校は,10月に来日したが,その際には,電気電子分野の2年生と交流し,

エネルギー問題に関する提案を相互に行った。その際,日本人の発想は主に太陽光発電

に関心が向けられていたが,フィリピンでは,太陽光発電はコストが高く,小型水力発

電にもっぱら関心があった。この考え方の違いは,ネットの検索では得がたいもので,

今後解決すべき問題をはらんでいる。また,マレーシアにおいては,セントトーマス高

校(Saint Thomas High School),クチン科学高校(Kuching Science High School)との交

流を新規に開拓し,両校において,エネルギー問題に関する提案,プレゼンテーション

を行うことができた。なお,国際交流にあたって大学との連携を深めることとしたが,

マレーシアにおいて,マレーシア大学サラワク校 University Malaysia Sarawak (UNIMAS),

ヘリオットワット大学マレーシア校 Heriot-Watt University Malaysia の2校との間で,交

流を深めることができた。特に前者では,本校生徒の提案を批評して頂き,かつ小型水

力発電についての講義を受けた。マレーシアに足がかりを作ることができたところから,

− 71 −

次年度もマレーシアでの海外調査研修を行う予定だが,運営指導委員からの助言により,

先進国との交流を勧められており,この点については,今後調査することとした。

2 新科目「グローバル社会と技術」

新科目「グローバル社会と技術」では,グローバルな視野で,地球全体が抱えている

解決すべき問題(テーマ),科学技術による問題解決が求められる現状への理解を促し,

さらなる科学技術の発達が必要であることを認識すれば,自ら学ぶ意欲,思考力,判断

力,表現力などの育成が図られるという考えにもとづき,授業を実践した。取り上げる

テーマなどについて,再検討を行い,テキストを改定している。

本科目では,1 テーマ4時間とする制約条件があり,内容は限られる。ここで私たち

は,考え方を大きく転換し,4時間で完結することを目指すのではなく,これらの時間

内では種を蒔き,多くの科目の中でそれを育てることが必要であると考えている。その

ためには,カリキュラム・マネージメントについても検討する必要がある。なお,外国

人講師によるスピーチコミュニケーションの実施により,各章のレポートの英語化に加

え,ノンバーバルコミュニケーションスキルの習得を目指している。このことは,日本

人特有の無表情な発話だけではスピーチが成り立たないことを身をもって体験するもの

である。自らの主張を補強し,確信にまで高めなければ,説得力のあるスピーチにはな

りがたいことに気づくチャンスである。これらが外国語での発信というだけではなく,

問題解決場面においても役立っていることは言うまでもない。

また,本科目では,研究1年次に引き続き,東京工業大学教員による特別講義,著名人

によるグローバルリーダー育成講演会を実施し,生徒の興味喚起に大きく役立つことが

確認された。研究2年次は,NHKテレビ「おとなの基礎英語」の講師をされている立

教大学教授 松本茂先生,マスコミで評判の東京工業大学特命教授 池上彰先生に講師を

お引き受けいただいた。大物の著名人による講演は,生徒のモチベーションを高め,効

果が大きいが,これを通常の授業にどのようにつなげていくか,位置づけの検討が必要

である。

3 新科目「グローバル社会と技術・応用」のまとめと今後の課題

新科目「グローバル社会と技術・応用」では,GTL に必要な知識やスキルの習得を目

指している。そのために,3種類のテーマ学習「中東・中央アジア理解」「イスラーム文

化研究」「英語によるコミュニケーションスキル」による知識の蓄積とスキルの獲得を行

い,1年生で履修した「グローバル社会と技術」の成果,および,その他の活動を「S

GH課題研究への道」によって,具体的に各専門分野での問題解決に結びつけ,3年生

でのSGH課題研究につなげたいと考えている。

研究第2年次にあたる今年度は,内容の取捨選択を行い,関連する学校行事等を整理

し,集中講義と専門分野で行われる「課題研究への道」を活動の中心とした。これを充

実することは,本研究会での活動を焦点化することであり,本校で掲げるGTL像をな

るべく高校段階での教育活動に落とし込むことを意味する。本校では,GTLが備える

べきスキルを,インクルージョン力(多様性受容力),バックキャスティング力(目標か

ら現在すべきことを考える力),コンセンサスビルディング力(合意形成力))と定義し

ているが,実際に高校段階で何をすれば良いのか,明確にする必要がある。この問いに

答えるべく,本校が提案している解は,問題解決の手順・手法を学ぶことであり,本研究

− 72 −

会で実施する「課題研究への道」である。この活動については,上記に詳細が掲載され

ているが,課題研究のテーマを決める場面における問題解決を取り扱っている。分野の

特性があり,アプローチの方法は様々だが,次年度にかけてこの収束を図りたいと考え

ている。このことについては,別節で後述する。一方で,集中講義の3テーマは,ほぼ

形が整い,授業が円滑に行われつつあるが,この3つをどのように統合していくかが課

題となる。

4 新科目「SGH課題研究」のまとめと今後の課題

新科目「SGH課題研究」について,並行して実施している従来の「課題研究」との

相異を明確にすることから取り組んだ。従来の課題研究では,ものつくり,あるいは改

善することを目的とする。すなわち,ものの完成,あるいはもの自体を対象としている。

それに対して,研究開発科目である「SGH課題研究」は,課題を解決できる人材の育

成を目的としており,あくまでも人を対象とする。ここに両者の違いがある。問題解決

のためには,1・2年次に学んだSGH科目での手法を総動員し,場合によっては,マ

ネージメントを意識したり,定量的評価を行ったりする。この力を持つ者に,グローバ

ルリーダーへの道が開かれるものと考えている。すなわち,「SGH課題研究」は,第1

学年の「グローバル社会と技術」,第2年次の「グローバル社会と技術・応用」で学んだ

知識やスキルを図 5-1 のとおり,「課題研究への道」で収束させ,各分野に即した問題解

決方法とし,学ぶべきことは何か,解決すべきテーマは何か,改めて考え直すことにな

る。その成果が,SGH課題研究として実を結ぶと考えた。

今年度の活動では,研究会での議論を踏まえ,全ての分野で「SGH課題研究」が提

案され,研究会で認定した。その結果,全ての分野から2テーマ以上,合計 15 テーマを

実施できたことは,成果といえる。

図 5-1 新科目と「課題研究への道」の関係

− 73 −

また,テーマを認定する基準を本研究会において示し,各分野においてテーマの認定

理由の基準となるような大枠の項目の検討を開始した。各テーマの認定理由は大枠の項

目に照らし合わせ,各分野で細かい理由を設定することが次年度以降に求められる。

現在,2年生を対象に実施している「グローバル社会と技術・応用」などのSGH科

目を通して,「SGH課題研究」への導入となりうる学習を,専門教科教員と普通教科教

員とが協力して行い,充実させることが重要であり,生徒の自主性を尊重し,内容の理

解を向上させながら,「SGH課題研究」への接続を円滑にすることが求められる。研究

第2年次として,この方針に従い,ある程度の成果を残すことができた。しかし,学校

全体で取り組む研究開発の理念を忘れることなく,着実な実行が求められよう。反省す

べき点を次年度にいかしていきたいと思う。

今年度は,「都内国立校合同 SSH/SGH 課題研究成果発表会」(2017 年2月 19 日:東京

学芸大学)に参加し,ポスター発表・SGH部門で2テーマが受賞することができた。

また,2017 年 3 月に「SGH甲子園」に 10 名の生徒が参加して,成果を発表すること

ができた。さらに,SGH課題研究で得られた成果の普及ために,各種発表会やコンテ

スト,地域イベントなどで公開することで学術交流や地域交流に寄与する努力を続けな

がら,より効果的な公開する場の獲得や公開方法について検討することが必要であると

考えられる。

Ⅱ 今後の課題・成果の普及

SGH研究開発は研究第2年次を迎え,模索する段階から第1年次の試行の結果を基に,

育成すべき資質と能力を収束しつつある。グローバルリーダーを育成するために,グロー

バルリーダーの持つべき能力を分解して提案してきたが,今年度の取り組みでは,この提

案を,いかに高校段階の教育に即したものにしていくか,何をすれば良いのか,提案して

いく段階となっている。

本校では,私たちの考えをより多くの方々に理解していただき,成果を普及するために,

問題解決場面のモデル化を研究している。図 5-3 は,課題研究のテーマを決めるという場

面において,情報の収集→処理→まとめを行いながら,テーマの決定に向けて試行してい

く姿を示している。今年度は,一分野での試案にとどまるが,次年度以降,対象をすべて

図 5-2 海外交流ゲームの画面例

− 74 −

の分野に拡大し,検討したいと考えている。また,海外調査研修については,参加生徒に

よる報告会などを通じて,興味・関心の喚起,得がたい知識の獲得など,多くの成果を上

げているが,直接この成果を還元する場として,ICT教材を活用した海外交流ゲームを

開発中である。

今後,これらの案を通じてホームページなどで公表し,その成果を発表していきたいと

思う。また,この試行の手順をいかして指導し,SGH甲子園などの場に,生徒を派遣し

ていきたい。

図 5-3 課題研究テーマ決定場面における問題解決モデル案 (仮 )

(電気電子分野の場合 )

-i-

❹ 関係資料

Ⅰ 平成28年度教育課程表

平成28年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語 国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 2 2 数 学 Ⅱ 3 3 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科学と人間生活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7 保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4 英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2 小計 24 20 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎実験*(特例対象) 4 4

グローバル社会と技術* 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術 研 究* 4 4 先端科学技術入門* 1 1

グローバル社会と技術・応用* 2 2 STEM課題研究* 4 4 SGH課題研究* 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4 小計 7 12 8 27 3,0 0,2,4

ホームルーム活動 1 1 1 3 合計 32 33 22 87 6 0,2,4

卒業時単位数 93,95,97 表中の「*」は,学校設定科目を示し,太斜字はSGH開発科目を示す。

-ii-

平成27年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語 国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 1 1 数 学 Ⅱ 4 4 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科 学 と 人 間 生 活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7 保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4 英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2 小計 23 21 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎*(特例対象) 3 3

数 理 基 礎* 2 2 グローバル社会と技術* 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術* 2 2

科学技術コミュニケーション入門* 1 1 先端科学技術入門* 1 1

グローバル社会と技術・応用* 2 2 課 題 研 究 4 4 S G H 課 題 研 究* 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4 小計 8 11 8 27 3,0 0,2,4

ホームルーム活動 1 1 1 3 合計 32 33 22 87 6 0,2,4

卒業時単位数 93,95,97 表中の「*」は,学校設定科目を示し,太斜字はSGH開発科目を示す。

-iii-

平成26年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語 国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 1 1 数 学 Ⅱ 4 4 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科 学 と 人 間 生 活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7 保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4 英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2 小計 23 21 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎*(特例対象) 3 3

数 理 基 礎* 2 2 人 と 技 術* 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術* 2 2

科学技術コミュニケーション入門* 2 2 先端科学技術入門* 1 1

グローバル社会と技術・応用* 2 2 課 題 研 究 4 4 S G H 課 題 研 究* 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4 小計 8 12 8 28 3,0 0,2,4

ホームルーム活動 1 1 1 3 合計 32 34 22 88 6 0,2,4

卒業時単位数 94,96,98 表中の「*」は,学校設定科目を示し,太斜字はSGH開発科目を示す。

-iv-

また,前ページの表で「※」の部分詳細は,次の表のようになる。 材料科学・環境科学・バイオ技術分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

工 業 物 理 化 学 1 2 3

0,2,4 有 機 工 業 化 学 2 2 4 地 球 環 境 化 学 2 2 工 業 技 術 英 語 1 生 物 工 学 2

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 情報・コンピュータサイエンス分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

電 気 基 礎 1 1

0,2,4 電 子 回 路 2 2 ハ ー ド ウ ェ ア 技 術 1 1 ソ フ ト ウ ェ ア 技 術 2 2 プログラミング技術 2 1 3 コンピュータシステム技術 3

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 システムデザイン・ロボット分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

実 習 3 3 2

0,2,4 製 図 2 2 機 械 設 計 2 2 機 械 工 作 2 2 自 動 車 工 学 1

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 エレクトロニクス・エネルギー・通信分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

電 気 基 礎 4 2 6

0,2,4

電 子 技 術 1 1 実 習 2 2 電 子 計 測 制 御 2 電 気 機 器 1 電 力 技 術 通 信 技 術

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 立体造形・ディジタルデザイン分野の科目

科 目 必 修 選 択 1年 2年 3年 小計 類型 自由

製 図 2 2 4

0,2,4 建 築 構 造 1 1 2 建 築 構 造 設 計 1 1 建 築 計 画 1 1 2 建 築 施 工 2 建 築 法 規 1

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4 類型選択(6単位)の4コース

教科 コース 専門 数学 理 科 国語 地理

歴史 英語 物理 化学

専門系 a 3 3 理科系 b 3 3 理科系 c 3 3 文科系 d 2 2 2

v

7

8

vi

SSH SGH

SGH

SSH 3 5

SGH

SGH

27 71

vii

SGH

SGH 24%

30

SGH

1

SGH

SSH SGH

SGH

SGH

viii

SSH

AI

SGH

ix

SGH

SSH SGH

SGH SSH

SGH

SGH

SGH

2

1

HiAc

x

SGH

SGH

55

SGH

SGH

SGH

SGH

SSH STEM

SGH

SGH

xi

SGH

SGH

SGH

xii

SGH

SGH

SGH

xiii

SGH

29 11 22

SGH

SGH

10 21

:

xiv

SGH

28

ESD

SGH

SGH

SGH

SGH

xv

SGH

SGH SGH

-xvi-

Ⅵ SGH生徒意識調査 1 調査内容

(1) 調査対象: 全校生徒 (2) 調査回数: 1学年 …… 年 2回(平成 28年 6月と平成 29年 1月) 2学年 …… 年 2回(平成 28年 6月と平成 29年 1月) 3学年 …… 年 2回(平成 28年 6月と平成 28年 12月) (3) 回答方法: 5段階の間隔尺度による自己評価で,マークシートを利用する。

2 調査項目 グローバルテクニカルリーダーとして育成すべき資質と能力に関して以下の項目を調査した。 ① リーダーが備えるべき 3つのスキル 【Q1】インクルージョン力(多様性受容力) 世界の文化の違いに気づき受け入れること

ができる。 【Q2】バックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)

持続可能な社会を実現するために過去を振

り返って,今は何をすべきか企画できる。 【Q3】コンセンサスビルディング力(合意形成力)

相手を納得させながら自分の意見に賛同し

てもらうことができる。

② 【Q4】地政学的なリスク回避力(地域に依存するリスクを理解した上で,リスクを回避するための意思決定できる能力) 地域特有のリスクを理解した上で,リスクを

回避するための決定ができる。

③ 語学力(英語によるコミュニケーション力) 【Q5】英語での成果の発信

英語で自分の意見・考え・探求の成果を多くの

人に伝えたい。 【Q6】英語のスピーチ力

探求した結果を英語でスピーチができる。

【Q7】英語のプレゼンテーション力 探求した結果を英語でプレゼンテーション

ができる。 【Q8】英語の質疑応答力

英語で発表した内容の質問に英語で応答が

できる。

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

① ② ③ ④ ⑤伝えたい

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

-xvii-

【Q9】英語による議論力

興味・関心のあるトピックなら英語で議論が

できる。 【Q10】英語による文章力

興味・関心のあるトピックなら英語で文章に

できる。 3 調査結果

(1) 学年ごとの調査結果と検定 事前・事後の調査結果をまとめ,学年ごとに,対応のあるサンプルの母平均の差の検定(t

検定)を行った。 l 1学年

検定結果:1学年では,【Q3】コンセンサスビルディング力(合意形成力)が 5%水準で有意であった。その他の項目について有意差はみられなかった。

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q 1 インクルージョン力 74 61 39 10 4 188 4.02 1.01

Q 2 バックキャスティング力 24 59 75 23 7 188 3.37 0.96

Q 3 コンセンサスビルディング力 22 73 59 27 8 189 3.39 1.01

Q 4 地政学的なリスク回避力 20 67 78 20 4 189 3.42 0.79

Q 5 英語での成果の発信 50 38 63 27 11 189 3.47 1.41

Q 6 英語のスピーチ力 15 29 65 53 26 188 2.76 1.25

Q 7 英語のプレゼンテーション力 18 29 63 56 23 189 2.80 1.28

Q 8 英語の質疑応答力 8 24 67 60 30 189 2.58 1.07

Q 9 英語による議論力 19 34 66 44 26 189 2.87 1.35

Q 10 英語による文章力 34 43 67 25 20 189 3.24 1.44

質問項目有効回答数と平均・分散

SGH⽣徒意識調査・1学年(事前) 平成28年6⽉

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q 1 インクルージョン力 70 74 32 5 0 181 4.15 0.65

Q 2 バックキャスティング力 18 71 67 23 2 181 3.44 0.77

Q 3 コンセンサスビルディング力 22 77 64 14 4 181 3.55 0.78

Q 4 地政学的なリスク回避力 25 61 82 10 3 181 3.52 0.74

Q 5 英語での成果の発信 39 50 56 23 13 181 3.44 1.36

Q 6 英語のスピーチ力 10 36 66 41 28 181 2.77 1.21

Q 7 英語のプレゼンテーション力 12 35 64 39 31 181 2.77 1.31

Q 8 英語の質疑応答力 12 20 66 48 35 181 2.59 1.25

Q 9 英語による議論力 15 34 68 42 22 181 2.88 1.22

Q 10 英語による文章力 30 57 45 35 14 181 3.30 1.39

質問項目有効回答数と平均・分散

SGH⽣徒意識調査・1学年(事後) 平成29年1⽉

-xviii-

l 2学年 検定結果:2学年ではいずれの項目においても有意差はみられなかった。

l 3学年

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q 1 インクルージョン力 53 77 47 6 3 186 3.92 0.81

Q 2 バックキャスティング力 12 54 79 27 14 186 3.12 0.98

Q 3 コンセンサスビルディング力 21 55 81 21 7 185 3.34 0.90

Q 4 地政学的なリスク回避力 14 66 73 26 6 185 3.30 0.84

Q 5 英語での成果の発信 36 35 69 28 17 185 3.24 1.43

Q 6 英語のスピーチ力 10 41 61 49 24 185 2.81 1.18

Q 7 英語のプレゼンテーション力 9 34 68 52 23 186 2.75 1.09

Q 8 英語の質疑応答力 5 20 55 69 37 186 2.39 1.01

Q 9 英語による議論力 12 40 61 49 24 186 2.82 1.22

Q 10 英語による文章力 29 49 62 29 17 186 3.24 1.35

質問項目有効回答数と平均・分散

SGH⽣徒意識調査・2学年(事前) 平成28年6⽉

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q 1 インクルージョン力 53 75 43 12 2 185 3.89 0.86

Q 2 バックキャスティング力 18 45 89 22 11 185 3.20 0.95

Q 3 コンセンサスビルディング力 19 57 76 26 6 184 3.31 0.90

Q 4 地政学的なリスク回避力 27 40 88 25 5 185 3.32 0.94

Q 5 英語での成果の発信 30 35 70 30 19 184 3.15 1.40

Q 6 英語のスピーチ力 15 30 55 55 30 185 2.70 1.34

Q 7 英語のプレゼンテーション力 20 25 55 56 29 185 2.74 1.43

Q 8 英語の質疑応答力 15 19 53 58 40 185 2.52 1.37

Q 9 英語による議論力 19 35 51 51 29 185 2.81 1.46

Q 10 英語による文章力 30 44 52 39 19 184 3.15 1.49

質問項目有効回答数と平均・分散

SGH⽣徒意識調査・2学年(事後) 平成29年1⽉

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q 1 インクルージョン力 46 58 54 11 6 175 3.73 1.06

Q 2 バックキャスティング力 19 54 67 23 11 174 3.27 1.06

Q 3 コンセンサスビルディング力 19 52 68 31 5 175 3.28 0.94

Q 4 地政学的なリスク回避力 18 54 75 24 4 175 3.33 0.84

Q 5 英語での成果の発信 27 26 49 39 34 175 2.85 1.74

Q 6 英語のスピーチ力 11 21 48 52 43 175 2.46 1.36

Q 7 英語のプレゼンテーション力 9 28 51 49 38 175 2.55 1.31

Q 8 英語の質疑応答力 11 13 45 57 49 175 2.31 1.30

Q 9 英語による議論力 15 18 44 62 36 175 2.51 1.38

Q 10 英語による文章力 23 28 46 46 32 175 2.79 1.64

SGH⽣徒意識調査・3学年(事前) 平成28年6⽉

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q 1 インクルージョン力 56 61 42 11 6 176 3.85 1.09

Q 2 バックキャスティング力 20 61 60 24 11 176 3.31 1.09

Q 3 コンセンサスビルディング力 24 68 57 21 6 176 3.47 0.97

Q 4 地政学的なリスク回避力 28 59 65 17 6 175 3.49 0.97

Q 5 英語での成果の発信 23 49 54 28 22 176 3.13 1.44

Q 6 英語のスピーチ力 11 44 45 50 26 176 2.80 1.33

Q 7 英語のプレゼンテーション力 15 38 43 52 28 176 2.77 1.44

Q 8 英語の質疑応答力 9 19 53 56 38 175 2.46 1.21

Q 9 英語による議論力 12 30 50 49 33 174 2.65 1.37

Q 10 英語による文章力 23 46 44 39 23 175 3.04 1.54

SGH⽣徒意識調査・3学年(事後) 平成28年12⽉

質問項目有効回答数と平均・分散

-xix-

検定結果:3学年では【Q5】英語での成果の発信,【Q6】英語のスピーチ力の項目が 1%水準で有意であった。また【Q3】コンセンサスビルディング力(合意形成力),【Q4】地政学的なリスク回避力(地域に依存するリスクを理解した上で,リスクを回避するための

意思決定できる能力),【Q7】英語のプレゼンテーション力,【Q10】英語による文章力の 4項目が 5%水準で有意であった。

(2) SGH行事(イベント)に関する調査結果と検定 事後調査に関して,参加(対象)生徒と不参加(対象外)生徒の 2 つのグループに分け,

独立したサンプルの母平均の差の検定(t 検定)を行った。(Levene による等分散性の検定を含む) l フィリピン・マレーシア海外研修 参加(14名中,無効の回答を除いた 13名で分

析)および不参加のグループ 検定結果:母平均の差の検定においては, 1%水準で有意:【Q5】【Q6】,【Q7】,【Q9】 5%水準で有意:【Q1】~【Q4】,【Q8】,【Q10】 有意差なし:該当項目なし (等分散性については有意水準を 5%として 等分散性を採択:【Q1】~【Q4】,【Q6】~【Q10】等分散性を棄却:【Q5】) すべての項目において海外研修に参加したグ

ループの平均値が高く,有意差がみられた。

-xx-

l SGH課題研究

3学年の生徒のうち SGH課題研究のグループ(45名中,無効の回答を除いた 44名で分析)とそれ以外のグループ 検定結果:すべての項目について有意差がみ

られなかった。 (等分散性については有意水準を 5%として等分散性を採択:【Q1】,【Q2】,【Q4】~【Q6】, 【Q8】~【Q10】,等分散性を棄却:【Q3】,【Q7】)

-xxi-

l マレーシア政府観光局講演 参加したグループ(15名)と不参加の

グループ 検定結果:母平均の差の検定においては, 1%水準で有意:【Q5】, 5%水準で有意:【Q2】,【Q4】,【Q10】 有意差なし:上記以外 (等分散性については有意水準を 5%とし,すべての項目で等分散性を採択) l 東工大留学生によるバイオマスについ

てのプレゼンテーション 参加したグループ(18名)と不参加の

グループ 検定結果:母平均の差の検定においては, 5%水準で有意:【Q3】,【Q5】,【Q10】 有意差なし:上記以外 (等分散性については有意水準を 5%とし,すべての項目で等分散性を採択)

-xxii-

4 スーパーグローバルハイスクール目標設定シートに関する調査 「SGH対象生徒」を全校生徒として集計を行った。 【Q-a】社会貢献活動や自己研鑽活動に取り組んでいる。 ①いいえ ②はい 【Q-b】留学または海外研修に行った。 ①いいえ ②はい 【Q-c】将来留学したり,仕事で国際的に活躍したいと考えている。

①いいえ ②はい

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 41 133 174 23.56 76.44 100.00

2年 50 127 177 28.25 71.75 100.00

1年 52 129 181 28.73 71.27 100.00

1~3年合計 143 389 532 26.88 73.12 100.00

a. ⾃主的に社会貢献や⾃⼰研鑽活動に取り組む⽣徒回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 22 153 175 12.57 87.43 100.00

2年 26 156 182 14.29 85.71 100.00

1年 24 156 180 13.33 86.67 100.00

1~3年合計 72 465 537 13.41 86.59 100.00

b. ⾃主的に留学または海外研修に⾏く⽣徒回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 73 100 173 42.20 57.80 100.00

2年 78 105 183 42.62 57.38 100.00

1年 105 76 181 58.01 41.99 100.00

1~3年合計 256 281 537 47.67 52.33 100.00

c. 将来留学したり,仕事で国際的に活躍したいと考える⽣徒回答数(人) 割合(%)

-xxiii-

【Q-d】公的機関から表彰されたり,公益性の高い国内外の大会で入賞した。 ①いいえ ②はい 【Q-e1】次の「実用英語技能検定」に合格した。(複数回答可) ①いいえ ②英検準 2級 ③英検 2級 ④英検準 1級 ⑤英検 1級 【Q-e2】「TOEIC」または「TOEIC S&W」で次のスコアをマークした。(複数回答可) ①受験していない ②TOEIC 225~545 ③TOEIC 550~780 ④TOEIC 785~940 ⑤TOEIC 945~ ⑥TOEIC S&W160~230 ⑦TOEIC S&W240~300 ⑧TOEIC S&W310~350 ⑨TOEIC S&W360~ ⓪他の資格試験を受験した ※CEFRと実用英語検定・TOEICとの対照は,以下の表に基づく。(文部科学省:英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第 1回)配付資料より)

A1 A2 B1 B2 C1 C2 実用英語検定 3~5級 準 2級 2級 準 1級 1級 - TOEIC L&R 120~ 225~ 550~ 785~ 945~ - TOEIC S&W 80~ 160~ 240~ 310~ 360~ -

【Q-f】外国人に対し,文化の違いを理解しながらコミュニケーションできる。 ①いいえ ②はい

満たす 満たさない 合計 満たす 満たさない 合計

3年 33 142 175 18.86 81.14 100.00

2年 33 151 184 17.93 82.07 100.00

1年 26 155 181 14.36 85.64 100.00

1~3年合計 92 448 540 17.04 82.96 100.00

e. ⽣徒の4技能の総合的な英語⼒としてCEFRのB1〜B2レベルの⽣徒回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 90 80 170 52.94 47.06 100.00

2年 89 89 178 50.00 50.00 100.00

1年 106 69 175 60.57 39.43 100.00

1~3年合計 285 238 523 54.49 45.51 100.00

回答数(人) 割合(%)

f. グローバルリーダーに必要な,多様性に対する受容⼒を有する⽣徒(外国⼈に対し,⽂化の違いを理解しながらコミュニケーションできる⽣徒)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 8 165 173 4.62 95.38 100.00

2年 14 170 184 7.61 92.39 100.00

1年 13 166 179 7.26 92.74 100.00

1~3年合計 35 501 536 6.53 93.47 100.00

回答数(人) 割合(%)d. 公的機関から表彰されたり,公益性の⾼い国内外の⼤会で⼊賞した⽣徒

-xxiv-

5 調査結果と検定 (1)成果を示す根拠・学年ごとの調査結果と検定

第 1 学年および第 2 学年の生徒において,第 2 学年では「リーダーが備えるべきスキル」いずれの項目においても大きな変化は見られなかったが,第 1 学年では昨年度と異なりコンセンサスビルディング力(合意形成力)に5%の有意差が

みられた。昨年有意差が見られなかった項目である。本研究活動 2 年次となり「グローバル社会と技術」において,地球全体が抱えている解決すべき問題を理解さ

せ,情報モラル・技術者倫理をふまえて,課題設定および問題解決に至る段階的

な学習活動の成果と教員の側の授業展開,指導方法に工夫がみられた成果と考え

られる。第 3 学年は第 2 学年より SGH 科目に取り組んで来た学年である。そのため,英語でスピーチを行うこと,成果を発信していくことの重要性に気づき,積

極的に取り組む姿勢が見られたと考えられる。その全体を 1 つの母集団ととらえて事前・事後の比較を行ったが,すべての項目について意識の変容を示す客観的

な資料を得ることができた。しかしながら SGH 研究開発の対象となる「SGH 課

題研究」の生徒が 44 名有意差を示すだけの変容は立証できていない。

(2)成果を示す根拠・海外研修および SGH 課題研究に関する調査結果と検定 フィリピン,マレーシア海外調査研修に参加した生徒(13 名)は,参加していない生徒(519 名)と比較してほとんどの項目で有意差がみられた。特に語学力における項目スピーチ,プレゼン,質疑応答する力が参加していない生徒の平均を

上回った。一方「SGH 課題研究」では有意差が見られなかった。取り組んだ生徒達にとって「SGH」は成果を発表できる場が少ないという認識があったことは否めない。その点については指導する教員の側の情報提供が十分ではなかったとい

う次年度への反省点である。

平成29年3月31日発行

スーパーグローバルハイスクール研究開発学校

代表者 校長 宮 本 文 人

所在地 〒108-0023

東京都港区芝浦三丁目3番6号

学校名 東京工業大学附属科学技術高等学校

(TEL 03-3453-2251)

(FAX 03-3454-8571)