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平成30年度 大学院理学系研究科博士前期課程(生物科学専攻) 第1次募集 入学試験問題 専門科目 試験時間:13:00~16:30 配点(合計):400点 問題は,問題 I〜問題 X まで,全部で10題あります.「問題 I~問題 III (生化学(タンパク質化学を含む))」および「問題 IV~問題 VI(分子細 胞生物学(遺伝学・発生生物学を含む))」は,必ず解答しなさい.問題 I ~問題 VI に加えて,「問題 VII、問題 VIII(有機化学・物理化学)」と「問 題 IX、問題 X(生態学・進化系統学)」のどちらかを選択して,合計8題 に解答しなさい. 注意 (1)解答用紙を8枚配付します.配付された解答用紙の枚数を確認し なさい.不足の場合は速やかに申し出なさい. (2)各解答用紙の所定の欄に,受験番号と氏名を必ず記入しなさい. (3)解答は,選択した問題ごとに,それぞれ別の解答用紙に記入しな さい.解答用紙の所定の欄に,問題番号(ローマ数字)を必ず記 入しなさい. (4)解答用紙の表面に解答を書ききれない場合には,裏面を使用しな さい.計算や下書きは,問題冊子の余白を使用しなさい.

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平成30年度 大学院理学系研究科博士前期課程(生物科学専攻)

第1次募集 入学試験問題

専門科目

試験時間:13:00~16:30 配点(合計):400点

問題は,問題 I〜問題 Xまで,全部で10題あります.「問題 I~問題 III

(生化学(タンパク質化学を含む))」および「問題 IV~問題 VI(分子細

胞生物学(遺伝学・発生生物学を含む))」は,必ず解答しなさい.問題 I

~問題 VI に加えて,「問題 VII、問題 VIII(有機化学・物理化学)」と「問

題 IX、問題 X(生態学・進化系統学)」のどちらかを選択して,合計8題

に解答しなさい.

注意 (1)解答用紙を8枚配付します.配付された解答用紙の枚数を確認し

なさい.不足の場合は速やかに申し出なさい. (2)各解答用紙の所定の欄に,受験番号と氏名を必ず記入しなさい. (3)解答は,選択した問題ごとに,それぞれ別の解答用紙に記入しな

さい.解答用紙の所定の欄に,問題番号(ローマ数字)を必ず記

入しなさい. (4)解答用紙の表面に解答を書ききれない場合には,裏面を使用しな

さい.計算や下書きは,問題冊子の余白を使用しなさい.

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問題 I.下の図は,グルコースおよび脂肪酸の代謝過程を表している.この図を見て,

問1~問6に答えなさい. 図 グルコース,脂肪酸の代謝

問1.図中の ア ~ キ の化合物の名称を答えなさい.

問2.TCAサイクルが行われるオルガネラの名称を答えなさい.

問3.反応系①,②の名称を答えなさい.

問4. ピルビン酸を ア に変換する多酵素複合体に関する問(1)と(2)に答

えなさい.

(1)多酵素複合体の名称を答えなさい.

(2)太古から毒物として知られているヒ素は,多酵素複合体に作用し毒性を発揮

する.作用機構を説明しなさい.

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問5. ア を キ に変換する酵素に関する問(1)~(3)に答えなさい.

(1)酵素の名称を答えなさい.

(2)あるホルモンが脂肪組織のアデノシン 3’,5’環状一リン酸(cAMP)濃度を上昇させると,この酵素はリン酸化され,活性が阻害される.cAMP濃度を上昇さ

せるホルモンの名称を答えなさい.

(3)この酵素は,あるホルモンによって合成が促進される.ホルモンの名称を答

えなさい.

問6.脂肪酸に関する問(1)と(2)に答えなさい.

(1)炭素数 16の飽和脂肪酸の名称を答えなさい.

(2)(1)の脂肪酸が完全に酸化される場合,何分子の ATP が生成されるか答え

なさい.ただし,NADHから3個,FADH2から2個,アセチル CoAから 12個のATPが生成されるとし,途中の計算式も記述すること.

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問題 II.下の図は葉緑体チラコイド膜の模式図である.葉緑体におけるエネルギー変

換に関する以下の問1〜問6に答えなさい.

問1.下の図の(ア)〜(ス)にあてはまる最も適当な語を答えなさい.ただし,

(ア),(イ),(ウ),(エ)は複合体,(シ)と(ス)は区画を示す.また,(オ),

(カ),(ク),(ケ)は略号ではなく,名称で答えなさい.

問2.(ア)で受容した光エネルギーが化学エネルギーに変換される場所を図の記

号で2つ答えなさい.

問3.図の説明文で示した H+濃度勾配の形成機構について,問(1)と(2)に

答えなさい.

(1)この機構は何とよばれているか,名称を答えなさい.

(2)ミトコンドリアにおいても同様の機構が存在する.ミトコンドリアにおい

て,図中の(ウ)に相当する複合体は何か答えなさい.

H2O

� �

�+

��

������

�����

+��

H+

2 H+ 4 H+

4 H+

½

図 チラコイド膜のモデル

光合成における電子伝達系では,可動性電子キャリアである(カ)は,(イ)からの電子

で還元されて(オ)になって,(ウ)を経て(ク)へと電子を運ぶが,電子が(ク)へ2個移

動するたびに,4個の H+が(シ)から(ス)へと移動して,H+の濃度勾配を形成する.

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問4.チラコイド膜の内側と外側の H+濃度勾配を利用して合成される物質の名称

を1つ答えなさい.

問5.タンパク質(ケ)は,カルビン回路の酵素であるフルクトースビスホスファ

ターゼ(FBPアーゼ)とセドヘプツロースビスホスファターゼ(SBPアーゼ)を

活性化する.その機構を説明しなさい.

問6.カルビン回路で(サ)を補酵素として用いる反応について,触媒する酵素名

と反応式を書きなさい.

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問題 III.下表は,ア〜オの5種類のアミノ酸の側鎖の構造と,a-カルボキシル基,a-

アミノ基,アミノ酸側鎖,それぞれの酸解離定数の負の常用対数(pKa)の値をまと

めたものである.この表を必要に応じて参考にしながら,問1~問7に答えなさい.

問1.リシンのカルボキシル基とアスパラギン酸のアミノ基が脱水縮合して得ら

れるジペプチドは,pHにより5通りのイオン構造をとり得る.このジペプチドについて,問(1)〜(3)に答えなさい.

(1)pH1.0の条件下で最も多く存在する分子種 Aの構造式を書きなさい.

(2)等電点の状態にある分子種 Bの構造式を書きなさい.

(3)A, B以外のイオン構造の分子種を,負電荷が大きい順(または正電荷が小

さい順)に C, D, Eとする.A〜Eを,低 pHから高 pHに変わるに従って生じる順に並べなさい.

問2.アスパラギン酸およびグリシンの等電点を,それぞれ求めなさい.

問3.グリシンは緩衝液によく利用されている.グリシンの緩衝領域(緩衝作用が

有効な pHの範囲)を答えなさい.

問4.pH7.4 のシステイン水溶液中において,プロトンを解離しているチオール基 のモル濃度は,解離していないそれの何倍か答えなさい.ただし,活量係数は 1と

みなして計算しなさい.

a-カルボキシル基 a-アミノ基 アミノ酸側鎖

ア H- 2.4 9.8 -

イ HS-CH2- 1.9 10.7 8.4ウ HOOC-CH2- 2.0 9.9 3.9

エ H3N-(CH2)4- 2.2 9.1 10.5

オ 1.8 9.3 6.0

アミノ酸側鎖の構造

pK a

+

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問5.ジンクフィンガーと呼ばれるタンパク質の構造モティーフにおいて,亜鉛イ

オンに四面体配位しているアミノ酸をア〜オの中からすべて選びなさい.

問6.ポリユビキチン鎖のうち,プロテアソームによるタンパク質分解のシグナル

になるものは,どのアミノ酸と,どのアミノ酸がアミド結合することで鎖長伸長

しているか.ア〜オの中からすべて選びなさい.

問7.(A)〜(G)のうち,正しい事柄を述べているものをすべて選びなさい.

(A)ヒトの体内には,a-アミノ酸しか存在しない.

(B)ヒトの体内には,L型アミノ酸しか存在しない. (C)細菌が生産する抗生物質の中には,D型アミノ酸を含むものがある.

(D)細菌が生産する抗生物質の中には,L型アミノ酸を含むものがある. (E)細菌は,リボゾームで起こる翻訳により,D型アミノ酸を含むタンパク質を

生合成できる. (F)ヒトは,リボゾームで起こる翻訳により,D型アミノ酸を含むタンパク質を

生合成できる. (G)高等植物は,ヒトの必須アミノ酸をすべて生合成できる.

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問題 IV.動物細胞における細胞内シグナル伝達系に関する下の文を読み,問1~問

5に答えなさい.

ホルモンや細胞増殖因子などの細胞外メッセンジャー分子は,細胞に存在する

特異的な結合タンパク質である アアア を介して細胞内シグナル伝達系を活性化

する.ある種の アアア は,(a)ヘテロ三量体 G タンパク質に作用し,イイイ を結合した活性型αサブユニットとβγサブユニットへの解離を促進する.イイイ

結合型αサブユニットにより活性化されたシグナル伝達酵素は,(b)アデノシン3’,5’環状一リン酸(cAMP)やイノシトール 1,4,5-トリスリン酸(IP3)などの

ウウウ を生成し,これらの ウウウ が細胞内を拡散することにより,シグナルが伝達される.一方,アアア 型タンパク質チロシンキナーゼは,細胞外にリガンド

結合ドメイン,細胞内に触媒ドメインをもつ.この酵素の作用によって(c)リン酸化されたチロシン残基は,エエエ ドメインや オオオ ドメインによって特異的に

認識される.Grb2 は エエエ ドメインをもち,タンパク質間相互作用の仲介を主な機能とするタンパク質である.このようなタンパク質は,カカカ タンパク質と

呼ばれる.Grb2 には Sos が結合し,(d)Sos は,単量体 G タンパク質の一種であるRasを活性型に変換する.

問1.上の説明文の アアア~キカキ に入る最も適当な語を,それぞれ答えなさ

い.

問2.上の説明文の下線部(a)に関して,α,β,γのうち,細胞膜に局在するための脂質修飾を受けるサブユニットをすべて答えなさい.

問3.上の説明文の下線部(b)に関して,cAMP の生成を触媒する酵素の名称と IP3

の生成を触媒する酵素の名称を答えなさい.また,細胞内シグナル伝達におけ

る cAMPの役割と IP3の役割を説明しなさい.

問4.上の説明文の下線部(c)の構造式を示しなさい.

問5.上の説明文の下線部(d)に関して,Sos などの,単量体 G タンパク質を活性

型に変換するタンパク質の総称を答えなさい.また,単量体 G タンパク質には,その不活性化を調節するタンパク質も知られている.単量体 G タンパク質の酵

素活性を促進し,活性型から不活性型への変換を促進するタンパク質の総称を

答えなさい.

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問題 V.PCR実験に関する次の問1~問4に答えなさい.

問1.大腸菌 DNAポリメラーゼ I (polA) 遺伝子のコーディングシーケンス (タン

パク質に翻訳される,開始コドンから終止コドンまでの塩基配列) 全長を含む領域を PCRで増幅したい.下に大腸菌ゲノム上の polA遺伝子の開始コドンおよび

終止コドン付近の塩基配列を示す.開始コドンおよび終止コドンには,下線を付

した.この情報をもとに,上記の領域を増幅するための,各 15塩基長の PCRプ

ライマーをひと組設計し,それらの塩基配列を記しなさい.

5’-cacggacattatggttcagatcccccaaaa - (途中省略) - gggatcaggcgcactaagattcgcctgaac-3’

問2.PCR実験では,アニーリングの温度をプライマーの Tm (DNAが熱変性する

温度)以下にする必要がある.その理由を説明しなさい.また,反対にアニーリング温度が低すぎると,どのような不都合が生じるかを説明しなさい.

問3.PCR産物の長さを知るにはどのような実験をすればよいか説明しなさい.

問4.マウス DNAポリメラーゼα(Polα)遺伝子のコーディングシーケンス全長を

増幅する場合,PCRの鋳型にはゲノム DNAではなく cDNAを用いる必要がある.その理由を説明しなさい.

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問題Ⅵ.上皮細胞間の結合に関する下の図を見て,問1~問4に答えなさい.

図 上皮細胞間の結合

問1.密着結合(tight junction)について説明しなさい.

問2.図中A~Cに密着結合以外の上皮細胞間の結合様式の模式図を示した.密

着結合以外の上皮細胞間の結合様式A~Cの名称をそれぞれ答えなさい.ただ

し,Cは6つの膜貫通型タンパク質から構成され,細胞外ドメインで隣り合っ

た細胞の同じタンパク質と結合し,細胞質間の小分子の通過を許容するチャネ

ル構造を形成している.

問3.問2で答えた結合様式A~Cを構成するタンパク質の名称をそれぞれ1つ答

えなさい.

問4.基底膜を構成する基質分子の名称を3つ答えなさい.

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問題 VII.以下の(A)~(C)の反応について生成物の構造式を示し,反応機構を

説明しなさい.

(A)

O +H+

NH

(B)

CHO +

O OH-

(C)

O

+ CH3CH2OHH+

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問題 VIII.次の問1~問4に答えなさい.

問1.(1)~(5)の過程における,エンタルピー差(DH),エントロピー差(DS),

及びギブスの自由エネルギー差(DG)の符号を< 0,> 0,= 0で答えなさい.

(1)閉じ込められた理想気体が真空中に自由拡散した.

(2)塩化ナトリウムを蒸留水に溶解させた(吸熱反応).

(3)変性タンパク質が refoldingした.

(4)窒素ガスと水素ガスからアンモニアガスが生成した(N2 + 3H2→ 2NH3).

(5)等温過程において理想気体が膨張した.

問2.ペプチド結合が生成するには,生体内標準条件で 2.1 kJ mol-1のエネルギーが

必要である.一方,この反応を ATP の加水分解反応のエネルギーを用いて駆動

したとすると,300アミノ酸からなるタンパク質 1 molを合成するために,何分子以上の ATPが必要か答えなさい.ただし,生体内標準条件での ATPの加水分

解反応の標準反応ギブスエネルギーは-30.5 kJ mol-1とする.

問3.肺に入った空気は最終的に肺胞に入り,肺胞から酸素が血液中に拡散する.

肺胞の平均半径は 0.0050 cmであり,内部の空気はモル百分率で 14%の酸素を含

んでいる.肺胞内の圧力が 1気圧(1.013 × 105 Pa),温度が 37℃であるとして,肺胞 1個当たりの酸素分子数を計算しなさい.ただし,気体定数 R = 8.31 J mol-1

K-1とする.

問4.1 molの理想気体(単原子)が 400 Kから 300 Kまでの冷却中に,2気圧から6 気圧に圧縮された.この過程における,内部エネルギー変化(DU),及びエン

トロピー変化(DS)を計算しなさい.ただし,loge 2 = 0.69,loge 3 = 1.1,loge 5 = 1.6とする.

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問題 IX. 生物進化に関する下の文を読み,問1〜問6に答えなさい. ある生物種に特有な現象(反応・行動など)を起こすことに直接関係する要因を

近接要因と呼び,その現象をもつ種がなぜ進化のなかで栄えたかに関する要因を究

極要因と呼ぶ. 温帯や亜熱帯の鳥は春に繁殖するものが多く,秋に繁殖する鳥はほとんどいない.

生理学者は,鳥は春に生殖ホルモンの分泌が盛んになることを明らかにした.(a)鳥に春にホルモン分泌を盛んにさせる直接的な要因が近接要因である.しかし,(b)近接要因の研究をどれだけ詰めても,なぜ多くの鳥が秋ではなく,春に合わせて繁殖

の準備をするのかは明らかにできない.ランダムに生じる(ア)は過去において,

秋に生殖ホルモン分泌が始まるような遺伝子をもった個体も生じさせたかもしれ

ない.そういう種がいないのは,(イ)によって,こうした個体が滅び,春に繁殖

する遺伝子だけが残った結果なのである.(c)これは鳥にとって春の繁殖が秋の繁殖よりも有利なためであるが,その理由が究極要因である. 問1.⽂章中の(ア)と(イ)にあてはまる語句を答えなさい. 問2.⽂章中の(イ)は,ある3つの条件が満たされれば必ず作動し,ほかにどのような条件も必要とせずに自立的に進む.この3つの条件をあげなさい.

問3.下線部(a)の近接要因が具体的に何であるかを答えなさい. 問4.下線部(b)の鳥の春繁殖についての近接要因の研究では,どのようなことが調べられるべきかを1つ答えなさい.

問5.下線部(c)の究極要因は2つ考えられるが,その2つを答えなさい.

問6.あなたが知っている生物の行動や反応を1つあげて,その近接要因と究極要

因が何であるかを,想定も含めてわかる範囲で説明しなさい.

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問題 X.ある生物 Xの時刻 tにおける個体数を x(t),生物 Yの時刻 tにおける個体数

を y(t)とし,それらの時間変化がそれぞれ以下の方程式

dxdt= rx 1− x

K⎛⎝⎜⎜⎜

⎞⎠⎟⎟⎟ (1)

dydt

= ry y−a( ) 1− yK

⎛⎝⎜⎜⎜

⎞⎠⎟⎟⎟ (2)

で与えられるとする.ただし r, K, aは正の定数で,a<Kとする.以下の問1〜問5

に答えなさい.

問1.x(t)に関する方程式(1)は一般に何とよばれるか.また,方程式(1)における定数 r, Kは一般に何とよばれるか.それぞれの名称を書きなさい.

問2.x(t)および y(t)の平衡状態をそれぞれ求めなさい.

問3.Xの初期個体数が x(0) = x0であるとき,x(t)を求めなさい.

問4.任意の初期個体数 y(0) = y0から出発したときの Yの個体数 y(t)の経時的な変

化について説明しなさい.

問5.y(t)に関する方程式(2)はアリー効果を考慮した式の1つの例である.アリー効果とは何か,簡潔に説明しなさい.また,アリー効果は具体的にどのよう

な原因によって生じるか,例を2つ挙げなさい.