電磁気学2講義第11回 12/3 Chapter 6 Magnetic …Chapter 6 Magnetic Fields in Matter...
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電磁気学2講義第11回(12/3)�
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今日の講義の内容
物質に静磁場をかけると,電流分布に変化が生じて磁気双極子モーメントが誘起される.この効果を取り入れた物質中の静磁場の基本法則は,物質中の磁場の強さを定義し直すことにより,真空中の基本法則と同じ形にまとめられる.
Chapter 6 Magnetic Fields in Matter (物質中の磁場)
l 物質中には原子に束縛された電子の運動に伴うミクロな電流が存在す
る.そこで,局所的な電流分布が作る近似的な磁場を多重極展開に
よって求め,磁気双極子モーメントの概念を導入する(§5.4.3). l 物質中の磁化について学ぶ(§6.1).
|r� r�|�rr�
磁気双極子モーメント(5.4.3 Multipole Expansion of the Vector Potential)
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A(r) =µ0I
4⇥
�1
|r� r�|dl�
A(r) =µ0I
4⇤
⇥⇥
n=0
1rn+1
�(r�)nPn(cos �rr�)dl�
1|r� r�| =
1r
⇥⇤
n=0
�r�
r
⇥n
Pn(cos �rr�)
l 局在した電流分布が遠方につくる近似的なベクトルポテンシャルを導く.
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l 展開式の最初の数項を具体的に書き下す.
�dl� = 0閉じたループでは必ず
l 主要項は双極子項(dipole term)
Adip(r) =µ0I
4⇥r2
�r� cos �rr�dl� =
µ0I
4⇥r2
�(r · r�)dl�
4
l ベクトル解析の公式より
l 磁気双極子の磁場
�(c · r)dl = �c⇥
⇥da ⇤ �c⇥ a
m � I
�da = Ia 磁気双極子モーメント
(magnetic dipole moment)
m
I
m = I�R2
R
Bdip(r) = ⇤⇥Adip =µ0
4�
1r3
[3(m · r)r�m]
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§6.1.1 Diamagnets, Paramagnets, Ferromagnets (反磁性体,常磁性体,強磁性体)
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l 磁性体(磁石)
§6.1 Magnetization(磁化)
l 原子内にある種の回転電流が存在し,そのため原子が小さな磁気双
極子モーメントを持つ.
U字磁石 方位磁針
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l 原子の磁気双極子モーメントは多くの場合,電子自身の行っている自転
運動の寄与が大きい.これを電子のスピン(spin)と呼ぶ.
l 通常は原子の熱運動のためにそれぞれの原子が持つ磁気双極子モーメ
ントの向きはばらばらで,互いに打ち消しあう.しかし磁場がかけられると
磁気双極子は磁場の方向に揃う傾向を示す.
l その結果,物質はマクロにも磁気双極子モーメントを持つ.
l このように物質が巨視的な磁気双極子モーメントを持つ現象を磁化
(magnetization)という.
常磁性体(paramagnets):磁気モーメントが磁場と同方向に揃う.
反磁性体(diamagnets):磁気モーメントが磁場と反対方向に揃う.
強磁性体(ferromagnets):磁場を取り除いても磁気モーメントが残る.
§6.1.2 Torques and Forces on Magnetic Dipoles (磁気双極子に働くトルクと力)
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磁気双極子に働くトルク(証明はProblem 6.2で)
N = m�B
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l 磁場によるトルクは双極子を磁場と同じ向きに揃える方向に働く.
l このトルクが常磁性(paramagnetism)を引き起こす原因となる.
l 全ての電子はスピンと呼ばれる固有の磁気モーメントを持つ.量子力学の
法則(特にパウリの排他率)によれば原子内では反対向きのスピンを持つ
電子が対を成し,実効的にトルクを打ち消してしまう.
l したがって,常磁性は奇数個の電子を持つ原子や分子についてのみ起こ
る.対をなさない余分な電子のみが磁性を担うことができる.
l その場合でも,原子のランダムな熱運動が秩序を乱すため,磁気双極子
モーメントは完全に揃うわけではない.
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(a) (b)
磁気双極子に働く力(証明はProblem 6.4で)
F = �(m · B)
§6.1.3 Effect of a Magnetic Field on Atomic Orbitals(原子軌道に対する磁場の効果)
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l 原子がもともと磁気双極子モーメントを持たない場合でも,原子内の電子
の軌道運動に磁場の影響による変化がおこり,原子は双極子モーメントを
持つようになる. l 簡単のため,電子が原子核の周りを一定の早さ で半径 の円運動を
行っているとしよう.この円運動の周期は であるから,これは,
原子内に小さな円電流
I =e
T=
ev
2�R
が生じているとみなすことができる.
l 電子の軌道運動による磁気双極子モーメントは
m = �I(�R2)z = �12evRz
(マイナス符号は電子が負電荷を持つことに起因する.)
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l 磁場が無いとき,遠心力とクーロン力の釣り合いは
l 右図のように磁場がかかっているときは
�e(v ⇥B) = �evBr
l 磁場が弱ければ
�v = v � v =eRB
2me
�m = �12e(�v)Rz = �e2R2
4meB
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l 磁気双極子モーメントの変化は磁場と逆向きである.
l 通常,物質中の原子内の電子軌道はそれぞればらばらの方向を向いて
いるため,軌道磁気双極子モーメントは全体として打ち消し合う.
l しかし磁場が存在するとそれぞれの原子に「余分」な磁気双極子モーメ
ントが生じて,物質全体として磁場とは反対方向の磁気モーメント生じる.
l このような機構によって磁気モーメントが生じる機構を反磁性
(diamagnetism)と呼ぶ.
l 電子の軌道運動による反磁性は通常は電子スピンによる常磁性に比べ
て非常に弱いので,奇数個の電子を持つ原子の場合は,常磁性の効果
が反磁性の効果に打ち勝って,物質全体としては常磁性を示す.
l 偶数個の電子を持つ原子の場合はスピンによる常磁性が無いので,軌
道運動に起因する反磁性が起こる.
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l 物質を磁場の中に置くと巨視的な磁気モーメントが生じる.この現象を
物質の磁化と呼ぶ.これには,二つの機構がある.
l いずれの場合でも,物質が磁化した状態を以下の磁化ベクトル
(magnetization vector)によって記述することにしよう.
§6.1.4 Magnetization(磁化)
(1)常磁性:原子がもともと磁気双極子モーメント(電子スピン)を持つ場合,トルクによって磁気双極子が磁場の方向に揃う傾向を示す. (2)反磁性:原子内の電子の軌道運動に磁場の影響による変化がおこり,原子が双極子モーメントを持つようになる.
単位体積あたりの磁気双極子モーメント M �