解剖 - 中外医学社7 T 6 T 5 T 4 T 3 T 2 T 1 T 1 C 8 C 7 C 6 C 5 C 4 C 3 C 2 C 1 C 1 C 2 S 2 S...

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498-05474 2 1.脊椎・脊髄 1 脊椎(脊柱)の解剖 脊椎は椎骨が連なって形成されており,頭側から 7 個の頚椎,12 個の胸椎,5 個の腰椎,5 個の 仙椎,3 〜 6 個の尾椎からなる. 第 1 頚椎(環椎)と第 2 頚椎(軸椎)を除いて,椎骨の形態は共通の構造を持っている(図 1). 前方に椎体,後方に椎弓があり,その間の脊柱管内に神経組織が存在する.左右には椎間孔があ り,分岐した神経根が通過する. 上下の椎骨は前方では椎間板,後方では椎間関節を介して連結している.この連結は靱帯(前縦 靱帯・後縦靱帯・黄色靱帯・棘間靱帯・棘上靱帯)でさらに強固となっている(図 2).仙椎は 5 個の椎体が癒合して仙骨を形成している.仙骨は仙腸関節を介して腸骨と結合し,骨盤の一部分と なっている.尾椎も癒合し,尾骨を形成している.また,胸椎には 12 対の肋骨が連結する. 脊椎の側面配列は成長とともに弯曲が形成される.頚椎と腰椎では前弯が,胸椎では後弯が形成 され,全体でS 字状を呈する(図3). 脊椎の役割は,主に,体幹の支持性(stability),体幹の可動性(mobility),脊髄などの神経組 織の保護(nerve tissue protection)である. 2 神経組織の解剖 a 脊髄 脳から繋がる中枢神経であり,延髄の尾側から始まり,第 1 腰椎から第 2 腰椎高位で脊髄円錐 となり終わる.分岐する神経根に対応する脊髄の部位を髄節と呼び,頚髄が 8 髄節,胸髄が 12 髄 節,腰髄が 5 髄節,仙髄が 5 髄節,尾髄が 1 髄節,合計 31 髄節からなる.胎生期には脊椎と髄節 の高位は一致しているが,成長に伴いずれが生じてくる.それは脊椎の成長が脊髄の成長よりも速 いためであり,各髄節は対応する脊椎よりも頭側に位置するようになる.成人では頚椎と頚髄の位 置関係が 1.5 椎ほどずれ,C3/4 椎間板高位が C5 髄節,C4/5 が C6 髄節,C5/6 が C7 髄節,C6/7 が C8 髄節にほぼ対応する.胸椎と胸髄の位置関係も同様にずれが生じている.脊髄円錐の高位は T11/12 から L2/3 までと個人差があり,80% は T12/L1 から L1/2 までに存在する 1) .この脊髄 円錐から脊髄円錐上部にかけての狭い領域に,L4以下の腰仙髄が集中して存在する(図3). 解剖 1 脊椎・脊髄 A 解剖

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  • 498-054742 1.脊椎・脊髄

    1 脊椎(脊柱)の解剖

    脊椎は椎骨が連なって形成されており,頭側から 7 個の頚椎,12 個の胸椎,5 個の腰椎,5 個の仙椎,3 〜 6 個の尾椎からなる.

    第 1 頚椎(環椎)と第 2 頚椎(軸椎)を除いて,椎骨の形態は共通の構造を持っている(図 1).前方に椎体,後方に椎弓があり,その間の脊柱管内に神経組織が存在する.左右には椎間孔があり,分岐した神経根が通過する.

    上下の椎骨は前方では椎間板,後方では椎間関節を介して連結している.この連結は靱帯(前縦靱帯・後縦靱帯・黄色靱帯・棘間靱帯・棘上靱帯)でさらに強固となっている(図 2).仙椎は 5個の椎体が癒合して仙骨を形成している.仙骨は仙腸関節を介して腸骨と結合し,骨盤の一部分となっている.尾椎も癒合し,尾骨を形成している.また,胸椎には 12 対の肋骨が連結する.

    脊椎の側面配列は成長とともに弯曲が形成される.頚椎と腰椎では前弯が,胸椎では後弯が形成され,全体で S 字状を呈する(図 3).

    脊椎の役割は,主に,体幹の支持性(stability),体幹の可動性(mobility),脊髄などの神経組織の保護(nerve tissue protection)である.

    2 神経組織の解剖

    ● a 脊髄脳から繋がる中枢神経であり,延髄の尾側から始まり,第 1 腰椎から第 2 腰椎高位で脊髄円錐

    となり終わる.分岐する神経根に対応する脊髄の部位を髄節と呼び,頚髄が 8 髄節,胸髄が 12 髄節,腰髄が 5 髄節,仙髄が 5 髄節,尾髄が 1 髄節,合計 31 髄節からなる.胎生期には脊椎と髄節の高位は一致しているが,成長に伴いずれが生じてくる.それは脊椎の成長が脊髄の成長よりも速いためであり,各髄節は対応する脊椎よりも頭側に位置するようになる.成人では頚椎と頚髄の位置関係が 1.5 椎ほどずれ,C3/4 椎間板高位が C5 髄節,C4/5 が C6 髄節,C5/6 が C7 髄節,C6/7が C8 髄節にほぼ対応する.胸椎と胸髄の位置関係も同様にずれが生じている.脊髄円錐の高位はT11/12 から L2/3 までと個人差があり,80% は T12/L1 から L1/2 までに存在する 1).この脊髄円錐から脊髄円錐上部にかけての狭い領域に,L4 以下の腰仙髄が集中して存在する(図 3).

    解剖1 脊椎・脊髄 A 解剖

  • 498-05474 A 解剖 3

    後縦靱帯黄色靱帯

    棘間靱帯

    棘上靱帯

    前縦靱帯

    椎間板

    図 2●椎骨の連結(伊藤達雄, 編. 整形外科手術のための解剖学─脊椎・骨盤. メジカルビュー社; 1998. p.10)

    頚髄

    胸髄

    腰髄

    仙髄

    尾髄

    馬尾

    Co1Co1

    S1S1L5

    L4

    L3

    L2

    L1L1

    T12

    T11

    T10

    T9T8

    T7T6T5T4

    T3T2

    T1T1

    C8C7C6C5C4C3

    C2

    C1C1C2

    S2S3

    S4S5

    脊髄終糸

    硬膜

    図 3●脊椎と神経組織の位置関係(伊藤達雄, 編. 整形外科手術のための解剖学─脊椎・骨盤. メジカルビュー社; 1998. p.14)

    棘突起下関節突起

    上関節突起

    横突起

    椎弓板

    椎弓根椎弓

    椎孔椎体

    図 1●椎骨の解剖a:上面よりb:側面より

    上関節突起 上椎切痕

    下椎切痕

    椎体

    棘突起

    横突起

    下関節突起椎弓板

    椎弓根

    ab

  • 498-054744 1.脊椎・脊髄

    ● b 神経根中枢神経系と末梢神経系をつなぐ神経組織であり,前根と後根からなる.解剖学的には硬膜内の

    部位をさすが,臨床的には硬膜分岐部から後根神経節の末梢までの部位をさすことが多い(図 4).頭側から順に,頚神経(C1 から C8,8 対),胸神経(T1 から T12,12 対),腰神経(L1 からL5,5 対),仙骨神経(S1 から S5,5 対),尾骨神経(1 対)の神経根が分岐する.腰髄以下では前述したように脊椎と髄節の高位のずれが大きいため,腰神経,仙骨神経,尾骨神経は馬尾を形成して腰部柱管内を下行する(図 3).

    ■ 文献1)Demiryurek D, Aydingoz U, Aksit MD, et al. MR imaging determination of the normal level of conus

    medullaris. Clin Imaging. 2002; 26: 375-7.〈吉本三徳〉

    前根

    後根

    神経根

    脊髄

    硬膜

    くも膜

    軟膜

    図 4●脊髄と神経根(伊藤達雄, 編. 整形外科手術のための解剖学─脊椎・骨盤. メジカルビュー社; 1998. p.15)