途上国の - Ministry of Foreign Affairs10 無償資金協力...

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9 ODAの必要性 21世紀の現在でも、世界の多くの人々が 飢餓と極度の貧困に苦しんでおり、環境破 壊、HIVエイズをはじめとする感染症など 地球規模の問題が山積みしています。ODA を通じてこれらの問題に取り組むことは国際 社会の一員としての責務であり、このような 取組は、日本の国際的信頼の基となり、国 際社会における日本の存在感を高めること になります。特に、軍事的手段を持たない日 本にとって、ODAは最も重要な外交手段の 1つです。 またODAは、開発途上国の経済発展への 貢献を通じて、その国の安定、ひいては国 際社会の平和と安定に重要な役割を果たす ものです。このことは、国際平和に依拠し、 資源・食糧の多くを海外に依存する日本にと って、国民の生活を守り、日本にとって好ま しい国際環境を構築していく上で極めて重要 であり、国益の増進に貢献しています。 ODAの重要性 日本の安全を確保する:ODAを通じて、開 発途上国、特にアジア地域の経済や社会の 安定と発展に貢献していくことは、結果的に 日本の安全保障につながります。また、日 本は、エネルギーなどの資源や食糧の多く を開発途上国に依存しており、ODAを通じ て開発途上国の平和と安定を図ることは、関 係国との友好関係を深め、資源の安定的供 給を確保する観点からも非常に重要です。 日本経済にとってのプラスになる:東アジ アの飛躍的な経済発展は、輸出市場や投資 先の拡大という大きな利益を日本にもたらし ましたが、このような東アジアの発展には、 日本のODAが大きな役割を果たしました。 アジアをはじめ世界各国が今後も発展してい くことは、日本経済にとってもプラスになり ます。 世界の格差是正と貧困問題の解決に 貢献する:日本は貿易立国を図る過程で、 自由で開放的な国際経済体制から多大な利 益を受けてきました。しかし、経済のグロー バル化は、一方で経済格差の拡大と貧困の 増大といった問題を生み出しました。 貧困問題の解決は、ミレニアム開発目標 MDGs1 において第1の目標に掲げられて いるとおり、国際社会全体が取り組むべき課 題です。 日本の援助の歩み 日本は第2次大戦後、米国や世界銀行な どから資金援助を受け、復興に必要なイン フラ整備を行いました。援助国としての歩み は、以下の4期に分けることができます。 体制整備期:1954年、日本はコロンボ・プ ラン(アジア太平洋地域の開発を促進するた めの地域協力機構)に加盟し、政府ベースで の経済協力(技術協力)を開始しました。そ の後、徐々にODAの体制を整えました。 計画的拡充期: 1976年に戦後賠償の支払い が完了し、1978年から5次にわたる中期目 標を発表、ODAの計画的な拡充を行いまし た。また、日本は1989年に世界最大の援助 国になりました。 政策・理念充実期:冷戦後の国際情勢に対 応するため、1992年にODA大綱を策定し ました。以後はこれを踏まえてODAの質的 な充実を図りましたが、量的には、厳しい経 済・財政状況の下、2001年には米国に世界 最大の援助国の地位を譲りました。 新たな時代への対応: 2003年、日本はODA の透明性などを高めるために、ODA大綱を 改定しました。この改定を受け、2005年に ODA中期政策を策定し、ODAを一層戦略 的に活用する当面の方策を示しました。国際 社会の期待に応えるためにも、日本は引き続 ODAの改革を進め、平和の構築や人間の 安全保障など新たな 開発課題への対応も 含め援助国としての役 割を果たしていきます。 21世紀に入った現在も、 世界人口約64億人のうち、 12億人以上の 人々が極度の貧困に苦しんでいます。 日本は、この貧困や難民、感染症の蔓延、 環境破壊など、国際社会が直面している 様々な問題の解決に向けて、 人道的な見地から、積極的に 取り組んでいます。 また、紛争や社会的混乱の根元に 貧困があるとの認識から、 開発問題に対しても、 自らの戦後復興の体験も生かしつつ、 積極的な支援を行っています。 3 1 ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals MDGs):極度の貧困と飢餓の撲滅、普遍的初 等教育の実現等国際社会が2015年までに達成すべ 8目標を具体的数値とともに掲げたもの。2000の国連ミレニアム宣言を契機に作成。 途上国の 開発問題への 取組 ODAとは Official Development Assistance (政府開発援助)を略したもので、 開発途上国の経済開発や福祉の向上に 役立つことを主な目的として、 政府、あるいは政府の実施機関によって 提供されるものです。 ODAホームページ 日本のODAに関する情報をわかりやすく、 また、タイムリーに提供するために、ホームページの 一層の充実化を図っています。 例えば、プロジェクトの概要や写真、援助を受けた 国や現場の人々の反応、国際的な援助動向など、 様々な情報を提供しています。 日本語版 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/ 英語版 http://www.mofa.go.jp/policy/oda/ 戦後の学校給食はユニセフの 援助によって支えられていた 提供:(財)日本ユニセフ協会

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Page 1: 途上国の - Ministry of Foreign Affairs10 無償資金協力 開発途上国に対して返済義務を課さずに資金を供与 する援助の形態です。開発途上国のうちでも特に開発

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ODAの必要性

21世紀の現在でも、世界の多くの人々が

飢餓と極度の貧困に苦しんでおり、環境破

壊、HIV/エイズをはじめとする感染症など

地球規模の問題が山積みしています。ODA

を通じてこれらの問題に取り組むことは国際

社会の一員としての責務であり、このような

取組は、日本の国際的信頼の基となり、国

際社会における日本の存在感を高めること

になります。特に、軍事的手段を持たない日

本にとって、ODAは最も重要な外交手段の

1つです。

またODAは、開発途上国の経済発展への

貢献を通じて、その国の安定、ひいては国

際社会の平和と安定に重要な役割を果たす

ものです。このことは、国際平和に依拠し、

資源・食糧の多くを海外に依存する日本にと

って、国民の生活を守り、日本にとって好ま

しい国際環境を構築していく上で極めて重要

であり、国益の増進に貢献しています。

ODAの重要性

日本の安全を確保する:ODAを通じて、開

発途上国、特にアジア地域の経済や社会の

安定と発展に貢献していくことは、結果的に

日本の安全保障につながります。また、日

本は、エネルギーなどの資源や食糧の多く

を開発途上国に依存しており、ODAを通じ

て開発途上国の平和と安定を図ることは、関

係国との友好関係を深め、資源の安定的供

給を確保する観点からも非常に重要です。

日本経済にとってのプラスになる:東アジ

アの飛躍的な経済発展は、輸出市場や投資

先の拡大という大きな利益を日本にもたらし

ましたが、このような東アジアの発展には、

日本のODAが大きな役割を果たしました。

アジアをはじめ世界各国が今後も発展してい

くことは、日本経済にとってもプラスになり

ます。

世界の格差是正と貧困問題の解決に

貢献する:日本は貿易立国を図る過程で、

自由で開放的な国際経済体制から多大な利

益を受けてきました。しかし、経済のグロー

バル化は、一方で経済格差の拡大と貧困の

増大といった問題を生み出しました。

貧困問題の解決は、ミレニアム開発目標

(MDGs)*1において第1の目標に掲げられて

いるとおり、国際社会全体が取り組むべき課

題です。

日本の援助の歩み

日本は第2次大戦後、米国や世界銀行な

どから資金援助を受け、復興に必要なイン

フラ整備を行いました。援助国としての歩み

は、以下の4期に分けることができます。

体制整備期:1954年、日本はコロンボ・プ

ラン(アジア太平洋地域の開発を促進するた

めの地域協力機構)に加盟し、政府ベースで

の経済協力(技術協力)を開始しました。そ

の後、徐々にODAの体制を整えました。

計画的拡充期:1976年に戦後賠償の支払い

が完了し、1978年から5次にわたる中期目

標を発表、ODAの計画的な拡充を行いまし

た。また、日本は1989年に世界最大の援助

国になりました。

政策・理念充実期:冷戦後の国際情勢に対

応するため、1992年にODA大綱を策定し

ました。以後はこれを踏まえてODAの質的

な充実を図りましたが、量的には、厳しい経

済・財政状況の下、2001年には米国に世界

最大の援助国の地位を譲りました。

新たな時代への対応:2003年、日本はODA

の透明性などを高めるために、ODA大綱を

改定しました。この改定を受け、2005年に

はODA中期政策を策定し、ODAを一層戦略

的に活用する当面の方策を示しました。国際

社会の期待に応えるためにも、日本は引き続

きODAの改革を進め、平和の構築や人間の

安全保障など新たな

開発課題への対応も

含め援助国としての役

割を果たしていきます。

21世紀に入った現在も、

世界人口約64億人のうち、12億人以上の

人々が極度の貧困に苦しんでいます。

日本は、この貧困や難民、感染症の蔓延、

環境破壊など、国際社会が直面している

様 な々問題の解決に向けて、

人道的な見地から、積極的に

取り組んでいます。

また、紛争や社会的混乱の根元に

貧困があるとの認識から、

開発問題に対しても、

自らの戦後復興の体験も生かしつつ、

積極的な支援を行っています。

3

*1ミレニアム開発目標(Millennium DevelopmentGoals:MDGs):極度の貧困と飢餓の撲滅、普遍的初等教育の実現等国際社会が2015年までに達成すべき8目標を具体的数値とともに掲げたもの。2000年の国連ミレニアム宣言を契機に作成。

途上国の開発問題への取組

ODAとはOfficial Development Assistance(政府開発援助)を略したもので、

開発途上国の経済開発や福祉の向上に

役立つことを主な目的として、

政府、あるいは政府の実施機関によって

提供されるものです。

●ODAホームページ日本のODAに関する情報をわかりやすく、また、タイムリーに提供するために、ホームページの

一層の充実化を図っています。

例えば、プロジェクトの概要や写真、援助を受けた

国や現場の人々の反応、国際的な援助動向など、

様 な々情報を提供しています。

日本語版

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/英語版

http://www.mofa.go.jp/policy/oda/

戦後の学校給食はユニセフの

援助によって支えられていた

提供:(財)日本ユニセフ協会

Page 2: 途上国の - Ministry of Foreign Affairs10 無償資金協力 開発途上国に対して返済義務を課さずに資金を供与 する援助の形態です。開発途上国のうちでも特に開発

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● 無償資金協力

開発途上国に対して返済義務を課さずに資金を供与

する援助の形態です。開発途上国のうちでも特に開発

の遅れの目立つ地域や国が対象として優先されます。

● 技術協力

開発途上国の国造りを推進するために、将来を担

機関を経由することで政治的に中立性を保てるという

利点があります。特に紛争地帯での難民・被災民に対

する援助などに有効性を発揮します。日本は、様々

な国際機関を通じて積極的な支援を行っています。

う途上国の人材の「人造り」(人材育成と技術向上)を

目的とした援助で、専門家の派遣、研修員の受け入

れ、機材の供与などによって行われます。

● 有償資金協力(円借款)

開発途上国に対して、低利で長期の緩やかな条件

で開発資金を貸し付けるもので、日本円で貸し付けら

れるため、通称「円借款」と呼ばれています。これは、

日本の戦後復興の経験などを踏まえ、返済義務を課

すことを通じ、開発途上国が経済的に自立するための

自助努力を促していくことを狙った援助の形態です。

また、無償資金協力では十分対応できないような

大規模な経済社会基盤の整備や、被援助国の社会全

体の広範な資金需要に応えられます。

● 国際機関を通じた援助

各国際機関の持つ高度な専門知識、豊富な経験、

世界的援助ネットワークを利用することができ、国際

ODAを機動的・戦略的に活用するとともに、その効率性を高めるため、2003年、政府は新たな「政府開発援助大綱(ODA大綱)」を閣議決定しました。

1.「理念」…ODAの目的、基本方針、重点課題・地域を定めています。

目的:国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて

我が国の安全と繁栄を確保する…平和を希求する日

本にとってODAは国際社会の共感を得られる最もふさわしい政策であるとしています。

日本のODAの形態

(百万ドル)

20,000

18,000

16,000

14,000

12,000

10,000

8,000

6,000

4,000

2,000

01994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004(暦年)

出典: 2004年DAC、 支出純額ベース、 2004年のみ 暫定値

13,239

14,489

9,4399,358

10,640

12,162

13,508

9,8479,283 8,880 8,859

18,999

8,4757,8367,497

2,5372,484

米国

日本

フランス

英国

ドイツ

カナダ

イタリア

総額 88億7,966万ドル (1兆292億円)

無償資金協力 16億9572万ドル (1,965億円)

19.1%

30.9%

21.4%

28.7%

技術協力 27億4738万ドル (3,184億円)

政府貸付など 18億9,113万ドル (2,192億円)

国際機関向けの 拠出・出資など 25億4543万ドル (2,950億円)

※東欧及び卒業国向け実績を除く。

 国際機関向け拠出・出資等には、

 欧州復興開発銀行向け拠出を除く。

DAC*主要国のODA実績の推移

日本のODA実績(2003年)

t o p i c

基本方針:(1)開発途上国の自助努力支援(2)「人間の安全保障」の視点(3)公平性の確保(4)日本の経験と知見の活用(5)国際社会における協調と連携

重点課題:(1)貧困削減(2)持続的成長(3)地球規模の問題への取組(4)平和の構築

重点地域:アジアは日本の安全と繁栄に大きな

影響を及ぼし得る重点地域。その他の地域

についても、大綱を踏まえて、援助需要や

発展の状況に留意しつつ重点化。

2.「援助実施の原則」…軍事支出の動向や民主化の

努力などに十分注意を払い、相手国の援助需要、経

済社会状況、二国間関係などを総合的に判断して、

ODAを実施。

3.「援助の立案及び実施」…政策立案・実施過程

での国民参加の拡大、政府全体としての一体性

の確保等。

4.「ODA大綱の実施状況に関する報告」

…実施状況をODA白書にて報告。

ODA大綱

政府開発援助(ODA)

二国間援助 国際機関に対する出資・拠出

無償資金協力 技術協力 有償資金協力

無償資金協力で建設された井戸の周りで喜ぶ子どもたち

(ガーナ) 提供:JICA

料理を教える青年海外協力隊員(マレーシア) 提供:JICA

*DAC(Development Assistance Committee):開発援助委員会。OECDの下部機関。援助供与国間の意見交換を行っています。日本を含む先進22か国と欧州委員会が加盟。

青年海外協力隊とシニア海外ボランティア

青年海外協力隊(JOCV)は、情熱をもったボランティア精神あふれる20歳から39歳までの日本の青年男女を、開発途上国にボランティアとして派遣し、現地

の人とともに生活しながら専門技術を伝えていくもので

す。技術移転と友好親善を増進させるとともに、日本

ODA大綱

ODA中期計画

国際援助計画

 個別のプロジェクト

3~5年を念頭に 日本のODAの基本方針、

重点課題などについて考え方、 アプローチ、具体的取り組みなどを

明らかにしたもの

(分野別イニシアティブ) 5年程度を目処とした日本の国別や分野別の援助計画・

政策を示すもの

の青年の国際的視野を広げることにも役立っており、こ

れまでに2万人以上の隊員が派遣されています。また、高度な技術、幅広い知識と豊かな経験をもっ

た中高年齢層(40歳から69歳)を開発途上国にボランティアとして派遣し、現地の経済発展のために技術支

援をするシニア海外ボランティア事業も行っています。

日本のODAの政策的枠組

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感染症対策

HIV/エイズ、結核、マラリア、ポリオ、寄

生虫症に代表される感染症の蔓延は、開発

途上国の発展を大きく阻害しており、その対

策の拡大と強化は国際社会が一丸となって

取り組むべき緊急の課題となっています。日

本は、2000年のG8九州・沖縄サミットで5年

間に30億ドルを目処として感染症対策支援を

行うことを内容とする「沖縄感染症対策イニシ

アティブ」を発表し、開発途上国政府のみな

らず、他の援助国、国際機関、非政府組織

(NGO)、民間セクター等の国際社会のパー

トナーとの連携を強化しながら、幅広い感染

症対策に積極的に貢献してきています。

(2000年度から2003年度までの4年間で41

億ドルの支援を実施済み)。

持続可能な開発・地球環境問題

地球環境を保全しながら限りある資源を有

効に使い、将来にわたって経済・社会開発

を続けられるよう「持続可能な開発」を実現す

ることが国際社会の大きな課題となっていま

す。物質的豊かさや利便性のみを求めて、際

限なくエネルギーを消費し、山林・河川を開

発すると、二酸化炭素の排出による地球温

暖化や大気汚染、森林の減少、生態系やオ

ゾン層の破壊といった地球規模の環境の破

壊や自然災害の増加を招き、結果として豊か

な社会は実現できません。このような地球環

境問題は、1国のみでの対応が困難なもので

あり、国際的な共同の取組が必要です。

特に地球温暖化問題は、人類の生存基盤

に関わる最も重要な環境問題の1つです。日

本は、気候変動枠組条約及び京都議定書の

下で、国内における温室効果ガスの排出を

削減するとともに、国際的連携を通じた地球

規模での温暖化対策の推進に向け積極的な

役割を果たしています。

この他にも日本は、生物多様性条約やワシ

ントン条約といった多数国間環境条約に加盟

するとともに、「アジア森林パートナーシップ」

のような地域の活動や、「国連持続可能な開

発のための教育の10年」や循環型社会の構

築のための「3Rイニシアティブ」を提唱するな

どして、地球環境問題の議論をリードしてきて

います。

人権問題

世界各地で、人種、宗教や民族の違いな

どに起因する紛争・事件が頻発し、多数の

人々、特に一般市民が被害者・犠牲者となっ

たり、また、人々の生命・自由にかかわる深

刻な人権侵害が、引き続き国際社会の懸念

事項となっています。人権問題は、日本を含

む国際社会が継続的に取り組むべき重要な

課題です。

日本は、人権は普遍的な価値であって、そ

の擁護は各国の基本的な責務であり、国際

社会の正当な関心事項であるとの基本原則

を踏まえ、国連人権委員会などの国際フォー

ラムや二国間対話を通じて、各国の人権状

況の改善に向けた取組を進展させるため努

力しています。また、日本は、国際人権規

約、女子差別撤廃条約、児童の権利条約な

どの主要人権条約の締約国となっており、

「障害者権利条約」などの策定作業を通じて

も、国際的な人権規範の発展・促進に積極

的に参加しています。

国際組織犯罪・麻薬

近年、グローバリゼーションの進展に伴

い、国境を越えて大規模かつ組織的に行わ

れる国際組織犯罪の脅威が深刻化していま

す。これらに対処するためには、各国それぞ

れによる対策の強化とともに、国際社会が司

法・法執行分野で協力し、法の抜け穴をなく

国際社会は現在、貧困、紛争、

テロ、難民、感染症、国際組織犯罪、

環境、自然災害、人権侵害など様 な々

問題に直面しています。

こうした人間の生存、生活、尊厳に

対する脅威から各個人を守り、

それぞれの持つ豊かな可能性を

実現するために、1人ひとりの人間を

重視する取組を強化しようという、

人間の安全保障の考え方が

重要な役割を果たそうとしています。

こうした中で日本は、人間の安全保障を

外交政策の重要な視点のひとつと

位置づけ、国際社会が一体となって

取り組むことができるよう率先して知的・

財政的貢献を行ってきています。

4人間の安全保障の推進に向けた地球規模問題への取組

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す努力が必要です。

日本は、国連やG8などの国際機関や枠組

みを通じた国際組織犯罪分野でのルール作

りや対策の検討・協力に積極的に貢献してき

ています。

例えば日本は、国際組織犯罪防止条約(国

際組織犯罪と戦うための基本的枠組みを包

括的に規定する初めての普遍的条約)や関連

の議定書の策定に参加したり、児童や女性

が犠牲者となる人身取引の撲滅や防止に積

極的に取り組んでいます。薬物対策につい

ては、国連薬物犯罪オフィスへの資金の拠出

などを通じてアジア地域を中心に代替作物や

リハビリ等のプロジェクトを実施しているほか、

金融活動作業部会におけるマネーロンダリン

グ対策のルール作りにも貢献しています。

人道支援

民族・宗教等を背景とする紛争や、干ば

つ、飢饉、洪水、地震、暴風等の自然災害

により、世界各地において、人道支援の必要

性・重要性が一層増加しています。国連世界

食糧計画(WFP)によれば、世界では3億人

の子どもたちが慢性的に飢えており、また国

連難民高等弁務官事務所(UNHCR)及び国

連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)

の保護や支援の対象となっている難民・国内

避難民等の数は、約2129万人に達していま

す(2004年統計)。さらには、2003年までの

10年間の自然災害による死者数は約67万人

に上り、災害発生件数・死者数共に増加傾

向にあります(国際赤十字(IFRC)統計)。こ

のような世界各地において厳しい状況に置

かれている人々の存在は、人道上の問題で

あると同時に、関係地域のみならず、国際社

会全体の平和と安定に影響を及ぼしかねな

い問題となっています。

日本は、「人間の安全保障」の観点から、人

道支援を国際貢献の重要な柱の1つと位置づ

けており、UNHCR、WFP、赤十字国際委

員会(ICRC)、国際移住機関(IOM)等の国

際機関によるアフリカ、アジアなどの世界各

地における活動に対し積極的に支援を行って

きています。また、アフガニスタン、コンゴ

民主共和国等における厳しい勤務状況の下

で、UNHCR、WFP等の国際人道機関で日

本人職員が活躍しているなど、日本は人的貢

献も行っています。

警察署に拘置された捕虜(ハイチ)©UN/DPI Photo #187325c

世界人権宣言(第9条:何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない)

アフガン難民(パキスタン) ©UN/DPI Photo #210485 ケシ畑でソバを栽培する「コーカン特別区麻薬対策貧困削減プ

ロジェクト」(ミャンマー) 提供:JICA

生計をたてるためにレンガを運ぶ少年(インド)©UN/DPI Photo #137529

国際緊急援助隊医療チーム(インドネシア) 提供:JICA

Page 5: 途上国の - Ministry of Foreign Affairs10 無償資金協力 開発途上国に対して返済義務を課さずに資金を供与 する援助の形態です。開発途上国のうちでも特に開発

外務省では、国際機関で働く

日本人職員を増やしたり、

世界で活躍するNGOとの連携に

努めているほか、海外で活動する

日本企業の応援もしています。

国際社会で活躍することや、

外務省の仕事に興味がある方は、

外務省で働くことも

是非考えてみてください。

5日本企業に対する支援

日本企業の海外における活動に必要な環

境を整え、貿易、対外及び対内投資等を促

進する必要性は最近高まっています。全ての

大使館や総領事館には「日本企業支援窓口」

が設けられています。また外務省は、経済連

携協定、投資協定といった法的、制度的な

基盤の整備も積極的に行っています。

国際機関で活躍する日本人職員

国際社会においては、平和と安全の維持、

開発、貿易、環境及び人権・人道問題など

の分野で国際社会全体の共通利益のために

活動する国連等国際機関が重要な役割を果

たしています。このような国連等国際機関で

活躍する日本人職員数は増加傾向にありま

すが、日本の財政的貢献に比べると未だに

著しく少なく、例えば国連事務局の場合、分

担率や人口等を基に設定される望ましい職

員数の範囲の下限の半分にも満たない状況

です。このような状況を改善するために、外

務省では「国際機関人事センター」を設置し、

国連等国際機関での勤務を希望される方に

対して、各種採用に関する情報提供や国際機

関への応募支援業務を行っています。

日本のNGOとの協力

近年、日本の非政府組織(NGO)は、開

発援助はもとより、環境・自然保護、軍縮・

不拡散、経済等の分野でも、国際社会にお

いて活躍するようになってきています。外務

省は、21世紀の国際社会においてますます

大きな役割を果たすことが期待されるNGO

など市民社会の自発的な活動との建設的な

協力関係を構築していくことが重要であると

の認識に基づき、NGOより寄せられる様々

な照会・要望等に適切に対応するため、

「NGO連絡センター」を設置しました。

●国家公務員採用I種試験

国家公務員採用 I種試験から採用

された職員は、入省3年目から2~3

年間の在外研修に出ます。研修終了

後は、在外公館の館務につくか、ま

たは本省に戻って勤務することになり

ます。その後は、本省勤務と在外勤

務を繰り返し、将来は幹部職員とな

ることが期待されています。

国家公務員採用I種試験は、人事

院が実施しており、例年、1次試験

が5月頃に、2次試験が6月頃に行

われています。

I種職員の採用に関する

お問い合わせ:

外務省人事課総務班

電話:03-3580-3311(内線2197)

●外務省専門職員採用試験

外務省では、多様化した外交の

需要に応えるため、多くの地域別・

分野別の専門家の養成にも力を入

れており、外交の第一線においてこ

うした専門家として活躍しうる人材

の採用を目的として外務省専門職員

採用試験を実施しています。例年、

1次試験を6月頃に、2次試験を8月

頃に実施しています。

専門職員として採用された職員

は、入省2年目から2~3年の在外研

修に出ます。その後は、おおむね

在外公館の館務につき、本省勤務

と在外勤務を繰り返し、中堅職員と

して活躍するほか、幹部職員となる

道も開かれています。

専門職員の採用に関する

お問い合わせ:

外務省人事課採用班

電話:03-3580-3311(内線2131)

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国際社会で活躍する日本人への支援

アフガニスタンで活動するUNHCA職員千田氏 提供:千田氏

●NGO連絡センター 電話:03-5501-8046

●国際機関人事センター

電話:03-3580-3311(内線2841)http://www.mofa-irc.go.jp

外務省は、本省と約190の在外公館を含め現在約5400人の陣容で外交

領事事務を担っています。主要国に比べて小規模である上に仕事の内容は

多岐にわたるため、1人ひとりが幅広く活躍し、能力を最大限に発揮するこ

とが期待されています。

●国家公務員採用III種試験

国家公務員採用I I I種試験の合格

者の中から面接を経て外務省に採

用された職員は、本省において、

会計、文書管理事務、電信事務、

秘書的事務などに従事した後、在外

公館に赴任し、以後は本省と在外

公館の勤務を繰り返します。在外公

館では会計、電信、文書管理事務

などに従事しますが、その後の経験

や能力、適性に応じて領事、文化

広報、経済協力などの分野で活躍

することもあります。

III種職員の採用に関する

お問い合わせ:

外務省人事課採用班

電話:03-3580-3311(内線2131)

外務省採用案内

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今や世界中で日本人や

日本企業が活躍しています。

そうした中で、海外の日本人の安全や

領事サービスの提供を確保することは

もちろん、日本人が安心して

海外に渡航し、生活を送ることができるよう

環境の整備を進めることもますます

重要となっています。このため、

外務省は領事サービス本部を設置し、

全省をあげた取組を進めています。

6海外日本人安全対策と領事業務

海外日本人安全対策

海外で活躍する日本人の生命、身体、財

産を保護することは、外務省の最も重要な

任務の1つです。海外で不幸にして事件や事

故に巻き込まれたり、急病や所持品の紛失

により助けを求める日本人に対して、大使館

や総領事館が援護した件数は年間約1万5千

件に迫っています。大使館や総領事館では、

皆様が抱える問題についての様々な相談を

受け、その解決のためにできるだけの努力を

しています。しかし、海外でのトラブル予防

のためには、まず、一人一人が「自らの安全

は自ら責任を持つ」との自覚を持つことが重

要です。

このような認識のもと、外務省は、海外へ

の渡航・滞在に当たって注意が必要と考えら

れる情報を「海外安全ホームページ」やFAX、

電話などで広く提供しています。さらに、若

年層を対象とした「海外安全キャンペーン」を

はじめとする積極的な広報・啓発活動も実施

しています。

●海外安全相談センター

窓口対応、電話:03-5501-8162

●海外安全ホームページ

http:www.mofa.go.jp/anzen/

●海外安全情報FAXサービス

0570-023300

海外安全対策に関する情報

(危険情報、スポット情報、安全対策基礎データ、

広域情報等)を提供しております。

●在留届電子届出システム「ORRネット」

http:www.ezairyu.mofa.go.jp

旅券(パスポート)

パスポートは、国外において自分が日本人であるこ

とや、氏名・年齢等を証明する国際的な身分証明書で

す。パスポートは、旅券法に基づいて、国内では都道

府県旅券事務所が、国外では日本の大使館、総領事館

が作成・交付しています。2004年の国内におけるパス

ポート発行数は350万冊を超え、また、パスポートを所

持する国民は約3500万人(2005年1月現在、外務省旅

券課調べ)で、国民の4人に1人がパスポートを持ってい

ることになります。

その一方で、パスポートの適切な管理が重要な課題

となっています。現在、国内外で年間5万件(2004年)

を超えるパスポートの紛失・盗難が発生していますが、

これらのパスポートの一部は、国際犯罪組織により偽変

造され、不正な出入国および国際犯罪に利用されるこ

ともあります。

このようなパスポートの偽変造や第三者による不正使

用を防止するため、生体情報を用いた本人認証技術(バ

イオメトリクス)を利用した旅券(IC旅券)が国際的に注

目されており、日本は、その国際標準化作業に積極的

に参加するとともに2006年3月のIC旅券の導入に向け

て取り組んでいます。

また、パスポートの発給業務についての国民からの

要望に応えるため、外務省は都道府県と協力して、申

請から交付までの期間の短縮や交付時間の延長

など、行政サービスの改善に努めると

ともに、毎年2月20日を「旅券

(パスポート)の日」と定め、全

国の旅券事務所と協力して国民

の方々にパスポートの管理の重

要性と紛失・盗難の防止を呼び

かけています。

パスポートイメージキャラクター「パスポくん」

査証(ビザ)

グローバル化の進展に伴い、日本と諸外国との人的

交流も活発化の傾向にあり、日本に入国する外国人の

数も年々増加しています。

日本に入国しようとする外国人は、査証が免除される

場合を除き、入国前に、海外にある日本の大使館や総

領事館などの在外公館で査証(ビザ)を取得することが

原則となっています。(日本国内では査証を取得するこ

とはできません。)

外務省では、査証の申請方法や入国に関する照会に

対応するために、「査証相談センター」(TEL:03-5501-

8431)を設置しています。ここでは、査証申請に必要

な書類についての案内、在外公館から外務本省に送ら

れた査証申請の審査状況の照会など、査証に関する各

種相談に応じています。査証関係の情報は、外務省ホ

ームページのほか、FAXや電話でも提供しています。

在外選挙

98年の公職選挙法改正によって、海外に在住する有

権者も国政選挙の投票ができるようになりました。まず

在外公館で在外選挙人名簿への登録申請を行い、在外

選挙人証を取得する必要があります。投票方法は、在

外公館での投票、海外から直接郵便で行う投票、一時

帰国等した場合に国内で行う投票の3通りがあります。

在留届

外国に3か月以上滞在する人は、その地域管轄の日

本大使館・総領事館への在留届の提出が定められてい

ます。在外公館では日本人が事件・事故に巻き込まれ

た際、在留届の連絡先を基に援護を行います。現地到

着後、在留届を必ず提出してください(提出方法は窓口、

郵送、FAX、インターネットいずれでも可)。

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7文化外交と広報・広聴活動

文化交流

文化交流は、安全保障、対外経済関係、

経済協力と並ぶ外務省業務の重要な分野の

1つです。

文化力は、ソフト・パワーとして相手国国民

の日本に対する好感情を醸成し、対日理解

を促進することに資するのみならず、文化コ

ンテンツ産業の発展や観光・投資の促進、ひ

いては広い意味での日本の安全保障の向上

にもつながるものです。

外務省は、文化交流を日本外交の重要な

手段として改めて位置づけ、オールジャパン

で文化外交を推進することが重要な課題と捉

え、積極的な文化交流に取り組んでいます。

人物交流

諸外国との相互理解を促進する上で人物交

流は重要な基盤です。外務省は、各国の要人

や有識者等を対象とした招聘事業を実施し、

日本に対する正しい理解の増進に努めていま

す。また、次世代を担う青少年についても、留

学生交流や JETプログラム(The Japan

Exchange and Teaching Programme)

等を通じて、知日家・親日家の育成を推進し

ています。

ニッポン・プロモーション

外務省は、日本の魅力を積極的に発信し、

日本のイメージ向上を図るための事業を行っ

ています。例えば、外交関係樹立50周年とい

った節目の年に当たる国や地域との間で文

化交流事業を集中的に行う「周年事業」や、

日本の魅力を発信し訪日観光客の増加をはか

る「ビジット・ジャパン・キャンペーン」などを行

っています。このような事業は、海外の人々

を日本に惹きつけるだけでなく、日本の経済、

社会、文化の活性化にもつながるものです。

広報・広聴活動

外務省では、日本語版・英語版のホーム

ページやパンフレット、タウンミーティングや

高校や大学での講演会の開催などを通じ外

交政策や海外事情について幅広い広報活動

を展開し、国民のさらなる理解と支援を得る

努力を続けています。

ホームページのご意見コーナー等を通じ、

外交政策や外務省の業務について、国民の

皆様の意見を広く聴き、外交政策の立案過

程に適切に位置づけるという広聴活動にも力

を入れており、同コーナーには様々な意見

が寄せられています。

情報公開

情報公開法により、誰でも外務省の保有

する行政文書の開示を求めることができま

す。情報公開室において、開示請求の受付

や相談などを行っています。

外交史料館

外交史料館では、幕末から第二次世界大

戦終了までの外交記録と外務省が自主的に

公開*している戦後外交記録を閲覧できます。

また、日本外交史

上重要な条約書、

国書・親書などの展

示も行っています。

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首都高速環状線 至溜池

N

至麻布十番

至虎ノ門・霞ヶ関 飯倉交差点

飯倉片町交差点

六本木一丁目駅

神谷町駅

至三田

至六本木

至芝公園 東京タワー

麻布郵便局 麻布台 渋谷駅行

麻布台 新橋駅北口行

ロシア連邦大使館

外交史料館

文化交流と海外広報は、日本についての

情報を広く発信することにより、

外国国民の日本に対する理解と信頼を

深め、外交政策を推進する上での環境を

整える意義があります。

近年は、伝統的な政府対政府の

外交に加えて、外国の国民・世論に

直接働きかける「パブリック・ディプロマシー」

の有効性を重視する考え方が

広まっています。外務省でも文化交流と

海外広報を有機的に組み合わせ、

民間等の団体との連携を深めつつ

パブリック・ディプロマシーを展開しています。

また、外務省は、国内向けの活動も

積極的に行っており、情報公開、

外交記録の公開、外交政策の広報・

広聴活動等を通じて、

日本の外交に対する国民の理解と

支援を得る努力を続けています。

*作成後30年を経過したもので、国の重大な利益が害されるものや個人の利益が損なわれるものを除く。

〒106-0041 東京都港区麻布台1-5-3電話:03-3585-4511開館時間:月曜~金曜10~17時http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/siryo/

●外務省ホームページアドレス

日本語版 http://www.mofa.go.jp/mofaj/英語版 http://www.mofa.go.jp

日米修好通商条約

(1858年)

●情報公開室:電話03-5501-8068●情報公開ホームページ:

http://johokokai.mofa.go.jp/

提供:(財)自治体国際化協会

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8国際法の形成・実施の取組

国際社会には、国家を超えた「世界政府」

や「世界警察」は存在せず、各国は、ともに

協力しながら、国際社会に適用されるルール

を自ら作り、時代に応じて変更し、これが守

られるように努めています。これらのルール

のうち、各国が法的に拘束される合意(各国

の権利や義務を定め、これに違反すると法

的な責任が生じるもの)を「国際約束」といい

ます。国際約束には、条約、協定、取極と

いった様々な名称がありますが、国際交渉を

通じて国際約束を作成し、運用していくこと

は、外務省の重要な仕事の1つです。

近年、国際化の進展や科学技術の発展な

どにより、国家間の交流が多様となり、それ

に伴い利害関係が複雑になってきています。

国際社会の秩序を保ちながら、協力を進め、

紛争・対立を防ぐためにも、このような国際

的ルールの重要性・必要性は一層高まってき

ています。日本は、国際社会の発展と国民

の安全と繁栄の確保を目指して、国際的な

ルール作りに積極的に参画してきています。

情報収集・分析

流動的な国際情勢の中、種々の課題に機

動的に対応しながら戦略的な外交を進めて

いくためには、常日頃から多様かつ良質な情

報を収集し、洞察力に富んだ分析・評価を

行うことが不可欠です。このため、外務省の

対外情報収集・分析の能力や体制を強化す

ることが極めて重要になっています。

外務省は、東京の本省と在外公館を中心

とする豊富なネットワークを最大限に活用し

て、幅広い分野で情報収集を行っています。

また、国内外の報道をはじめとするいわゆる

公開情報を地道に収集、蓄積するほか、衛

星画像等の先端技術も活用しています。

外務省は、こうして収集された多様な情報

に基づいて、国際情勢を客観的かつ総合的

に分析するよう努力しています。その対象は、

各国・地域の情勢分析や不拡散、テロ等国

家・地域横断的な課題に関する分析等様々

であり、また、短期から中長期にわたる分

析・調査を行っています。

儀典

わが国の諸外国との接点になる駐日外国

公館等は、2005年5月現在、393(135か

国)を数え、その職員及び家族は約1万名に

上り、その接受、特権免除を含む支援業務

は、各国の日本における外交活動を支える

重要な業務となっています。また、天皇皇后

両陛下や皇族の外国ご訪問、外国要人の賓

客としての受け入れ、信任状の捧呈を含む

日本の大使の派遣、外国人叙勲の推薦等、

儀典の業務は多岐にわたり、外交関係の円

滑化に重要な役割を果たしています。

これら諸外国とのお付き合いの際には、敬

称、席次、マナー等の国際儀礼を尽くすこ

とが必要です。

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世界の189か国を受け持つ

在外公館を持ち、

約40の外国語のスペシャリストを擁する

外務省は、あらゆる国際的な場面で

活躍することが期待される

プロ集団といえます。

外務省には、各国・地域などと交渉して

国際的なルールを作成し、

運用していく仕事、

世界中の情報を収集し、

それを分析して

日本の外交政策の企画・立案に

役立てる仕事、

また、外交関係を円滑に進めるために

必要な「儀典」の仕事などがあります。

国際法情報収集・分析儀典

サンフランシスコ平和条約

信任状捧呈式             提供:宮内庁

サンフランシスコ平和条約表紙

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外 務 省〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1 Tel: 03-3580-3311(代)

2005年6月作成

丸ノ内線

日比谷線

外務省

A4出口

A8出口

千代田線

銀座線

丸ノ内線

国会議事堂前駅

虎ノ門駅

霞ヶ関駅

警視庁 合同庁舎2号館

国土交通省 法務省

裁判所 合同庁舎

農林水産省

経済産業省

郵政事業庁

法務省

財務省

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