塔尾栞莉 fragments of memory - MAKI GALLERY...展覧会名 fragments of memory 作家名...

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PRESS RELEASE 塔尾栞莉は、両親が写した幼いころの自身の写真 や、自分で撮りためた画像をモチーフに、「記憶」 の劣化と歪をキャンバスに写し取っています。彼 女の描きたい記憶は、単にノスタルジーに浸るた めのものではありません。劣化し、欠損すること を免れない「記憶」のもつ特性、システム自体に 興味の焦点があるのです。 情報化時代の今日、記憶を補い、記録する役割の デジタル画像もまた、実はその存在に危うさをはら んでいることを、画質の劣化によるブロックノイズ を例として、私たちは既に体験しています。儚さを 多分に内包する「記憶」を描く、塔尾栞莉の初個展。 ぜひギャラリーにてご覧いただければ幸いです。 記憶というのは目に見えない、形に残らない、流 動的なものです。それは時間とともに薄れる儚さ とともに、恣意的に強化され、場合によっては書 き換えられます。目で見ているはずなのに、一部 は記憶されずに忘れ去られていることもあります。 この記憶の特性は、作家の制作方法に率直に反映 されています。紙焼きした写真に格子状の線を引 き、記憶が断片的に失われ、復活するがごとく、小 さな矩形ごとにキャンバスへ写していきます。 塔尾の制作方法には興味深い点が2つあります。 描かれるブロックの周囲はマスキングテープで周 到に囲われ、隣り合うブロックは個別に写されま す。つまり、隣のブロックはマスキングテープの下 にあり、あらたに描かれるブロックは、あやふやな 「記憶」を頼りに色みが強化されたり、劣化したり、 ときには違う色に変化してしまったりするのです。 もうひとつは、写真にマスキングテープを何度も 貼り直すため、「記憶」が薄れ、欠損するがごとく 物理的な劣化が起きることです。作家は、劣化に より写真の表面がはがれた状態をそのままキャン 展覧会名 fragments of memory 作家名 塔尾栞莉 会期 2020 1 24 日(金)- 2 15 日(土) 会場 MASAHIRO MAKI GALLERY, 東京 / 3F 塔尾栞莉 - fragments of memory Shiori Tono, Hide and Seek, 2019, oil on canvas, 130.3x162.0cm

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Page 1: 塔尾栞莉 fragments of memory - MAKI GALLERY...展覧会名 fragments of memory 作家名 塔尾栞莉 会期 2020 年1 月24 日(金)-2 月15 日(土) 会場 MASAHIRO

PRESS RELEASE

塔尾栞莉は、両親が写した幼いころの自身の写真や、自分で撮りためた画像をモチーフに、「記憶」の劣化と歪をキャンバスに写し取っています。彼女の描きたい記憶は、単にノスタルジーに浸るためのものではありません。劣化し、欠損することを免れない「記憶」のもつ特性、システム自体に興味の焦点があるのです。情報化時代の今日、記憶を補い、記録する役割のデジタル画像もまた、実はその存在に危うさをはらんでいることを、画質の劣化によるブロックノイズを例として、私たちは既に体験しています。儚さを多分に内包する「記憶」を描く、塔尾栞莉の初個展。ぜひギャラリーにてご覧いただければ幸いです。 記憶というのは目に見えない、形に残らない、流動的なものです。それは時間とともに薄れる儚さとともに、恣意的に強化され、場合によっては書

き換えられます。目で見ているはずなのに、一部は記憶されずに忘れ去られていることもあります。この記憶の特性は、作家の制作方法に率直に反映されています。紙焼きした写真に格子状の線を引き、記憶が断片的に失われ、復活するがごとく、小さな矩形ごとにキャンバスへ写していきます。塔尾の制作方法には興味深い点が2つあります。描かれるブロックの周囲はマスキングテープで周到に囲われ、隣り合うブロックは個別に写されます。つまり、隣のブロックはマスキングテープの下にあり、あらたに描かれるブロックは、あやふやな「記憶」を頼りに色みが強化されたり、劣化したり、ときには違う色に変化してしまったりするのです。もうひとつは、写真にマスキングテープを何度も貼り直すため、「記憶」が薄れ、欠損するがごとく物理的な劣化が起きることです。作家は、劣化により写真の表面がはがれた状態をそのままキャン

展覧会名 fragments of memory

作家名 塔尾栞莉

会期 2020年 1月 24日(金)- 2月 15日(土)

会場 MASAHIRO MAKI GALLERY, 東京 / 3F

塔尾栞莉 - fragments of memory

Shiori Tono, Hide and Seek, 2019, oil on canvas, 130.3x162.0cm

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バスに写していきます。こうして、いやおうなく断片化された「記憶」は、連続した画像であることを否定しつつ、キャンバス上で再度繋ぎ合わされます。情報社会となった現在、紙焼きの写真にとって代わり、デジタル画像が社会に絶え間なくあふれ返っています。デジタル画像は紙焼き写真のような物質的な劣化はないものの、圧縮と修正を繰り返し、劣化の一途度をたどった挙句、ブロックノイズを

引き起こしたり、一部データが欠けたりすることで復元不可能に陥ります。うまく劣化や欠損を逃れた画像たちも、放り出されたまま、もう誰も見なくなる運命をたどります。つまり “堅牢 ” に思えるデジタル画像でさえ、実は同じ記憶のシステムのなかに組み込まれています。塔尾は、こうした不安定で、不確定な「記憶」を客観的にとらえ、欠落することも、連続しないことも冷静に見つめながら作品化しているのです。

- 塔尾栞莉1994年、大分県生まれ。2019年尾道市立大学大学院 美術研究科美術専攻 油画コース 修了。2018年小林和作奨励賞受賞。主な個展に「かすむ」Gallery Bar 夢喰(広島、2017年)「あのひの」Gallery Bar 夢喰(広島、2018年)。グループ展「Future Artists Tokyo “ERLection of Anonymous”」東京国際フォーラム ロビーギャラリー、寺田倉庫 T-ART HALL(東京、2019年)、「Colors and Figuration」MASAHIRO MAKI GALLERY(東京、2019年)

Shiori Tono

20:42:09

2019

oil on canvas

91.0x116.7cm

Shiori Tono

Birthday

2019

oil on canvas

91.0x116.7cm

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