製品安全をめぐる内外動向 リコールへの取組を中心に

長岡技術科学大学 システム安全系 教授

安全安心社会研究センター長 三上 喜貴

2

本日の内容 １．主要国のリコール事情 主要国のリコール情報窓口

米国 CPSC カナダ HC オーストラリア ACCC EU RAPEX 日本 消費者庁

各国比較 リコール件数と対人口比 製品分野構成

２．時間軸から見たリコール 三つの遅れと誤り

経産省リコールガイドと

ISO10393に見るフロー

気づきの遅れと誤り

意思決定の遅れと誤り

回収の遅れと誤り

2

3

１．主要国のリコール事情 米国、カナダ、豪州、EU

3

Product Recalls Australia

Health Canada

Consumer Product Safety Commission

European Commission

4

消費生活用品に関する 主要国のリコール情報窓口 国名 リコール 情報窓口

日本 消費者庁 経産省等

米国 CSPC

カナダ Health Canada

豪州 ACCC

欧州 RAPEX

生活用品

自動車

食品

医薬品

4

消費者庁 経産省

NITE

消費製品 安全委

CPSC

保健省 Health Canada

競争・消費者委員会 Australia

Competition and

Consumer Commission

ACCC

欧州委European

Commission

0

100

200

300

400

500

600

1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

5

1972 CPSC 発足

2007 Year of

the Recall

2008 消費者安全改善法

対応開始年

件

リコールの対応開始年別件数 米国

6

リコールの対応開始年別件数 カナダ

0

200

400

600

800

1000

1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

消費生活用品

車両

食品

健康・衛生

対応開始年

件

1995 ACCC 設立

7

リコールの対応開始年別件数 オーストラリア

0

50

100

150

200

250

300

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

消費生活用品

車両

食品

対応開始年

件

1995 ACCC 設立

リコールの対応開始年別件数 欧州

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1990 1995 2000 2005 2010 2015

8 対応開始年

件

1992 GPSD

2003 RAPEX 稼働

リコールの対応開始年別件数 日本

0

50

100

150

200

250

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

9

2007 重大事故 報告制度

対応開始年

件

製品評価技術基盤機構（NITE）のリコールサイトから、2013年11月19日現在

10

国際比較 リコール件数と対人口比、2013年11月

10 注：2013年11月10日前後の検索結果に基づく。検索されるすべてのリコール情報が現在有効ではない可能性もあり、正確な比較ではない。

国名 リコール報告機関

日本 消費者庁

米国 CSPC

カナダ Health Canada

豪州 ACCC

欧州 RAPEX

A．リコール件数 消費生活用製品

1,761 6,430 1,963 2,555 13,187

B．人口 万人（2011年）

12,654 31,455 3,401 2,227 50,250

C．A／B リコール件数/万人

0.139 0.204 0.577 1.147 0.262

D．製品別構成

消費生活用製品 1,761 6,430 1,963 2,555 13,187

自動車 --- --- 10,046 2,795 ---

食品 --- --- 1,399 829 ---

医薬品 --- --- 5,398 --- ---

11

リコール製品の分野構成比 消費生活用製品、2013年11月

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

日本 米国 カナダ 豪州 EU

子供用品玩具

その他

建物・設備

保健衛生品

被服品

光熱水品

文具・娯楽用品

住居品

家電製品

11 注：各国の製品分類が異るので正確な比較ではない。2013年11月現在有効なリコール総件数に基づく。EUのみ1912年のRAPEX年報の集計に基づく。

12

２．時間軸から見たリコール 三つの遅れ

生産 市場流通量

リコール回収分

利用者による廃棄分

①気付き ②リコール進捗 ③意思決定

被害拡大の防止のため、如何にして３つの遅れや誤りを回避できるか？ 課題

13

フロー：リコールハンドブックとISO10393

事故 兆候

事実関係調査

ﾘｺｰﾙﾌﾟﾗﾝ策定

ﾘｺｰﾙ実施

ﾘｺｰﾙ判断

達成判断

終了

４． 一般要求事項

５．２ 事故通知 ５．３ 事故調査 ５．４ リスクアセスメント ５．５ トレーサビリティ ５．６ リコール決定 ６．２ リコール活動開始 ６．３ コミュニケーション ６．４ リコールの実施 ６．５ モニタリング及び報告 ６．６ 有効性の評価 ６．７ リコール戦略の見直し・修正

ISO 10393:2013 Consumer product recall –Guidelines for suppliers

経産省リコールハンドブック ISO 10393:2013

日常的な取組 ①気づきの遅れ

②意思決定の遅れと誤り

③リコール進捗の遅れ

①気づきの遅れ

経産省ハンドブック 第Ⅴ章 １．日頃からの取り組み リコールに背を向けない企業姿勢 意識向上のための教育 ２．情報収集体制 兆候情報 ３．販路情報の収集 ４．マニュアル整備 ５．報告先機関の確認 ６．責任範囲の確認 ７．費用の確認

ISO 10393 4章 一般要求事項 4.2 方針 4.7 教育訓練とシミュレーション 4.3 文書化・記録保持 4.5 専門知識 4.7 教育訓練とシミュレーション 4.4 規制上の要求事項 4.6 権限

14

事故 兆候

事実関係調査

ﾘｺｰﾙﾌﾟﾗﾝ策定

ﾘｺｰﾙ実施

ﾘｺｰﾙ判断

達成判断

終了

ISO 10393:2013 Consumer product recall –Guidelines for suppliers

日常的な取組 ①気づきの遅れ

生産開始からリコールまでの年数 事例：自動車、2008年のデータから

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1

15

16

製品使用期間別事故発生件数 総件数

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1年未満 5 10 15 20 25 30 35 40

テレビ

洗濯機

エアコン

冷蔵庫

扇風機

16 製品評価基盤技術機構（NITE）の製品事故データベース、2013年10月現在 注：３項ウェイト（１，３，１）で移動平均して平準化

製品使用期間（年）

17

製品使用期間別事故発生件数 NITEが経年劣化事故と判定した事故のみ

0

2

4

6

8

10

12

1年未満 5 10 15 20 25 30 35 40

テレビ

洗濯機

エアコン

冷蔵庫

扇風機

17 製品評価基盤技術機構（NITE）の製品事故データベース、2013年10月現在 注：３項ウェイト（１，３，１）で移動平均して平準化

製品使用期間（年）

EU Best Practice Techniques in Market Surveillance より

18

市場監視当局 Market Surveillance Authority

生産者 Producer

上市前 Before placing the product on the market

上市後 After placing the product on the market

Conformity Assessment

Compliance Assessment

Compliance Assessment

Risk Assessment

Risk Assessment Production control &

follow-up on the products in the market

EUのベストプラクティスマニュアルは上市後のアセスメントを重視

②意思決定の遅れと誤り

経産省ハンドブック 第Ⅵ章 事故等への速やかな対応 １．事実関係の把握等２．リコールを実施するか否かの判断 ３．対策本部等の実施母体の設置 ４．リコールプランの策定 ５．社告等の情報提供方法の決定 ６．関係機関等への報告

ISO 10393 5章 リコールの必要性に関するアセスメント 5.2 事故通知 5.3 事故調査 5.4 リスクアセスメント 5.5 トレーサビリティ 5.6 製品リコール決定 6章 リコールの実施 6.2 戦略・目標・プロセス・財政的資源

19 ISO 10393:2013 Consumer product recall –Guidelines for suppliers

事故 兆候

事実関係調査

ﾘｺｰﾙﾌﾟﾗﾝ策定

ﾘｺｰﾙ実施

ﾘｺｰﾙ判断

達成判断

終了

日常的な取組

②意思決定の遅れと誤り

20

リスク認識の範囲は十分なのか？ リスク類型別構成比は日米欧で随分違う

0%

20%

40%

60%

80%

100%

日本 米国 EU

その他

火傷・火災

電気的

窒息

化学的

外傷

日本：消費者庁，事故情報データバンク，2012年7月検索 米国：CPSCリコール情報、Hazard 別集計 欧州：RAPEX 2012 Annual Report, type of risk 別集計

21

市場に残存する商品の把握 消費動向調査を用いた製品残存率の推計 消費動向調査（内閣府） 調査の目的 今後の暮らし向きの見通しなど

について消費者の意識、支出予定、主要耐久消費財等の保有状況を把握することにより、景気動向判断の基礎資料を得ること

調査の対象 外国人・学生・施設等入居世帯

を除く約5,061万世帯 調査時点 毎月15日。主要耐久消費財等の

保有・買替え状況は3月のみ

推計方法 STEP 1 消費動向調査をオーダーメ

ード集計し（統計センター委託）、使用期間別動機別買替え台数を算出 ↓ STEP 2 移動平均で平準化 ↓ STEP 3 買替え台数を累計 ↓ STEP 4 残存率を計算

21

22

使用期間別・動機別買替え動向 洗濯機（元データ）

0

200

400

600

1年未満 5年 10年 15～19年 20年以上

その他

住居変更

製品故障

上位機種

消費動向調査（オーダーメード集計）、H20～H24年度合計、一般＋単身世帯合計

23

使用期間別・動機別買替え動向 洗濯機（平準化注データと残存率）

0

100

200

300

400

500

1年未満 5年 10年 15～19年 20年以上

0%

20%

40%

60%

80%

100%

その他

住居変更

製品故障

上位機種

残存率

消費動向調査（オーダーメード集計）、H20～H24年度合計、一般＋単身世帯合計 注： ３項ウェイト（１，３，１）で移動平均して平準化

24

使用期間別・動機別買替え動向 エアコン（平準化注データと残存率）

0

200

400

600

800

1000

1年未満 5年 10年 15～19年 20年以上

0%

20%

40%

60%

80%

100%

その他

住居変更

製品故障

上位機種

残存率

消費動向調査（オーダーメード集計）、H20～H24年度合計、一般＋単身世帯合計 注：３項ウェイト（１，３，１）で移動平均して平準化

25

使用期間別・動機別買替え動向 テレビ（平準化注データと残存率）

0

200

400

600

800

1000

1年未満 5年 10年 15～19年 20年以上

0%

20%

40%

60%

80%

100%

その他

住居変更

製品故障

上位機種

残存率

消費動向調査（オーダーメード集計）、H20～H24年度合計、一般＋単身世帯合計 注： ３項ウェイト（１，３，１）で移動平均して平準化

③リコール進捗の遅れ

経産省ハンドブック 第Ⅶ章 リコールのフォローアップ １．進捗状況の評価及び修正 ２．関係行政機関等への経過報告 ３．記録の作成、リコール漏れへの対処体制及びフィードバック

ISO 10393 6章 リコールの実施 6.2 戦略・目標・プロセス・財政的資源 6.3 コミュニケーション 6.4 リコールの実施 6.5 監視（モニタリング）及び報告 6.6 有効性の評価 6.7 リコール戦略の見直し及び修正 7章 継続的改善

26 ISO 10393:2013 Consumer product recall –Guidelines for suppliers

事故 兆候

事実関係調査

ﾘｺｰﾙﾌﾟﾗﾝ策定

ﾘｺｰﾙ実施

ﾘｺｰﾙ判断

達成判断

終了

日常的な取組

③リコール進捗の遅れ

高齢単身者、高齢者のみ世帯の増加

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

その他

三世代

親と未婚の子

夫婦のみ

単独世帯

27 平成24年度 高齢社会白書

65歳以上の高齢者のいる世帯数

28

日本の市区町村別将来推計人口 老年人口割合別の市区町村数、2020

ブロック Reagion

2020年の老年人口割合（％）・Aged pop. ratio in 2020 総計

TOTAL <10 10～20 20～30 30～40 40～50 50～60 60～70 70<

北海道 16 101 63 180

東北 39 160 57 3 2 261

関東 5 154 173 26 2 2 362

北関東 50 77 11 1 2 141

南関東 5 104 96 15 1 221

北陸 1 15 28 7 51

中部 3 101 105 36 6 251

近畿 1 74 96 29 5 205

中国 13 54 34 9 110

四国 8 42 39 5 1 95

九州・沖縄 4 77 156 50 3 290

総計 14 497 915 341 33 5 1,805

65歳以上の高齢者が40％以上 の市区町村は２割以上に 国立社会保障・人口問題研究所、日本の市区町村別将来推計人口（平成20年12月推計）

29

コミュニケーションにおける工夫 音声読み上げ：Product Safety Australia

29

30

コミュニケーションにおける工夫 SNS等の活用、多言語サービス

30

多くの主要国リコールサイトでSNSを活用し効果を上げている

複数言語によるサービスも

ご静聴、ありがとうございました。

31