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第465号 法務省大臣官房司法法制部 ドイツ商法典 (第1編~第4編)

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法 務 資 料第465号

法務省大臣官房司法法制部

ドイツ商法典(第1編~第4編)

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ドイツ商法典(第1編~第4編)

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 は し が き

この資料は,ドイツ商法典(Handelsgesetzbuch,2016年3月31日現在)の第

1編から第4編までを翻訳したものである。

概説,監修及び各編の翻訳は,次の方々に委嘱した。ここにその労に対し,

深く謝意を表する次第である。

 概   説   東京大学教授  神作裕之

 監  修   立教大学教授  松井秀征

 第1編翻訳   立教大学教授  髙橋美加

 第2編翻訳   立教大学教授  松井秀征

 第3編翻訳   大阪大学准教授 久保大作

 第4編翻訳   上智大学教授  伊藤雄司

 なお,この資料は,執務の参考資料として印刷し,配布するものである。

平成28年8月

 法務省大臣官房司法法制部

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目   次

はしがき

[概説]ドイツ商法典の経緯と概要 ……………………………………………… 1

ドイツ商法典

第1編 商事 ………………………………………………………………………… 9

第1章 商人(第1条~第7条) ……………………………………………… 9

第2章 商業登記簿・企業登記簿(第8条~第16条) ……………………… 10

第3章 商号(第17条~第37a条) ……………………………………………… 22

第4章 商業帳簿(第38条~第47b条)(削除) ……………………………… 28

第5章 支配権及び商事代理権(第48条~第58条) ………………………… 28

第6章 商業使用人及び商業徒弟(第59条~第83条) ……………………… 30

第7章 代理商(第84条~第92c条) …………………………………………… 35

第8章 商事仲立人(第93条~第104条) ……………………………………… 44

第9章 過料規定(第104a条) …………………………………………………… 46

第2編 商事会社及び匿名組合 …………………………………………………… 48

第1章 合名会社 ………………………………………………………………… 48

第1節 会社の設立(第105条~第108条) ………………………………… 48

第2節 社員相互間の法律関係(第109条~第122条) …………………… 49

第3節 社員の第三者に対する法律関係(第123条~第130b条) ……… 52

第4節 会社の解散及び社員の退社(第131条~第144条) ……………… 55

第5節 会社の清算(第145条~第158条) ………………………………… 58

第6節 時効・責任の時的限定(第159条~第160条) …………………… 61

第2章 合資会社(第161条~第229条) ……………………………………… 62

第3章 匿名組合(第230条~第237条) ……………………………………… 66

第3編 商業帳簿 …………………………………………………………………… 69

第1章 全ての商人のための規定 ……………………………………………… 69

第1節 簿記,財産目録(第238条~第241a条) …………………………… 69

第2節 開業貸借対照表,年度決算書 ……………………………………… 71

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第1款 総則(第242条~第245条) ……………………………………… 71

第2款 計上規定(第246条~第251条) …………………………………… 72

第3款 評価規定(第252条~第256a条) ………………………………… 74

第3節 保存及び提出(第257条~第261条) ……………………………… 78

第4節 州法(第262条~第263条) ………………………………………… 80

第2章 資本会社(株式会社,株式合資会社及び有限会社)及び特定

 人的会社についての補充規定 …………………………………………………… 81

第1節 資本会社の年度決算書と状況報告書 ……………………………… 81

第1款 総則規定(第264条~第265条) ………………………………… 81

第2款 貸借対照表(第266条~第274a条) ……………………………… 87

第3款 損益計算書(第275条~第278条) ……………………………… 96

第4款 (削除)(第279条~第283条) …………………………………… 99

第5款 附属説明書(第284条~第288条) …………………………… 100

第6款 状況報告書(第289条~第289a条) …………………………… 109

第2節 コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書 ………… 113

第1款 適用範囲(第290条~第293条) ……………………………… 113

第2款 連結範囲(第294条~第296条) ……………………………… 119

第3款 コンツェルン決算書の内容及び形式(第297条~第299条) … 120

第4款 完全連結(第300条~第307条) ……………………………… 122

第5款 評価規定(第308条~第309条) ……………………………… 125

第6款 比例連結(第310条) …………………………………………… 127

第7款 関連企業(第311条~第312条) ……………………………… 127

第8款 コンツェルン附属説明書(第313条~第314条) …………… 129

第9款 コンツェルン状況報告書(第315条) ………………………… 137

第10款 国際的会計基準によるコンツェルン決算書(第315a条) … 139

第3節 監査(第316条~第324a条) ……………………………………… 140

第4節 開示,連邦官報の運営者による監査(第325条~第329条) … 154

第5節 様式及びその他の規定の制定権限(第330条) ………………… 161

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第6節 刑罰及び過料の規定,秩序違反金(第331条~第335b条) … 163

第3章 登記済共同組合についての補充規定(第336条~第339条) …… 173

第4章 特定の業務を営む企業のための補充規定 ………………………… 176

第1節 信用機関及び金融サービス機関のための補充規定 ………… 176

第1款 適用範囲(第340条) …………………………………………… 176

第2款 年度決算書,状況報告書,中間決算書

(第340a条~第340d条) …………………………………………………… 177

第3款 評価規定(第340e条~第340g条) …………………………… 180

第4款 通貨の換算(第340h条) ……………………………………… 183

第5款 コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書,コンツェ

ルン中間決算書(第340i条~第340j条) ……………………………… 183

第6款 監査(第340k条) ……………………………………………… 184

第7款 開示(第340l条) ………………………………………………… 186

第8款 刑罰及び過料の規定,秩序違反金

(第340m条~第340o条) ………………………………………………… 188

第2節 保険企業及び年金基金に対する補充規定 ……………………… 191

第1款 適用範囲(第341条) …………………………………………… 191

第2款 年度決算書,状況報告書(第341a条) ……………………… 192

第3款 評価規定(第341b条~第341d条) …………………………… 193

第4款 保険技術上の準備金(第341e条~第341h条) ……………… 195

第5款 コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書

(第341i条~第341j条) …………………………………………………… 197

第6款 監査(第341k条) ……………………………………………… 199

第7款 開示(第341l条) ………………………………………………… 199

第8款 刑罰及び過料の規定,秩序違反金

(第341m条~第341p条) ………………………………………………… 200

第3節 原料分野における特定の企業のための補充規定 …………… 203

第1款 適用範囲,定義規定(第341q条~第341r条) ……………… 203

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第2款 支払報告書,コンツェルン支払報告書及び開示

(第341s条~第341w条) ………………………………………………… 204

第3款 過料規定,秩序違反金(第341x条~第341y条) …………… 208

第5章 民間会計基準委員会,会計審議会(第342条~第342a条) ……… 209

第6章 会計検査機関(第342b条~第342e条) …………………………… 211

第4編 商行為 …………………………………………………………………… 215

第1章 総則(第343条~第372条) …………………………………………… 215

第2章 商事売買(第373条~第382条) …………………………………… 222

第3章 問屋営業(第383条~第406条) …………………………………… 225

第4章 運送営業 ……………………………………………………………… 230

第1節 総則(第407条~第450条) ……………………………………… 230

第2節 引越物品の運送(第451条~第451h条) ………………………… 251

第3節 異なる種類の運送手段による運送(第452条~第452d条) … 253

第5章 運送取扱営業(第453条~第466条) ……………………………… 255

第6章 倉庫営業(第467条~第475h条) …………………………………… 259

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 [概説]ドイツ商法典の経緯と概要

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ドイツ商法典の経緯と概要

東京大学 神作裕之

1 ドイツ商法典の誕生と特色 ドイツ商法典(HGB;Handelsgesetzbuch)は,1897年5月10日,商取引を

行う特定の当事者及び特定の経済的行為・経済活動に関する民法の特別法と

して制定された。商法典の特色は,法律関係の形成・解消の簡易迅速性,自

己責任の原則,法的明確性の重視,開示・公示主義,信頼の保護及び国際性

などにあるとされる。ドイツ商法典は,同日に制定された商法施行法に基づ

き,1896年8月18日に制定されたドイツ民法典とともに,1900年1月1日に施

行された。

2 ドイツ商法典の構成 現行のドイツ商法典は,第1編「商事(Handelsstand)」,第2編「商事会

社及び匿名組合」,第3編「商業帳簿」,第4編「商行為」及び第5編「海商」

の5編から構成されている。本法務資料にその日本語訳が収録されているド

イツ商法第1編から第4編は,次の章から構成されている。

第1編「商事」は,第1章「商人」,第2章「商業登記簿・企業登記簿」,

第3章「商号」,第5章「支配権及び商事代理権」,第6章「商業使用人及び

商業徒弟」,第7章「代理商」,第8章「商事仲立人」及び第9章「過料規定」

の8章から構成されている。なお,第4章「商業帳簿」は,後述するように

1985年改正に際し,第3編として独立したため,削除されるに至っている。

 第2編「商事会社及び匿名組合」は,第1章「合名会社」,第2章「合資会社」

及び第3章「匿名組合」から構成される。

 第3編「商業帳簿」は,第1章「全ての商人のための規定」,第2章「資

本会社(株式会社,株式合資会社及び有限会社)及び特定人的会社について

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の補充規定」,第3章「登記済協同組合についての補充規定」,第4章「特定

の業務を営む企業のための補充規定」,第5章「民間会計基準委員会,会計

審議会」及び第6章「会計検査機関」の6章から成る。

 第4編「商行為」は,第1章「総則」,第2章「商事売買」,第3章「問屋

営業」,第4章「運送営業」,第5章「運送取扱営業」及び第6章「倉庫営業」

の6章から成る。

3 ドイツ商法典の改正の経緯 ドイツ商法典は,制定後現在に至るまで,数多の改正を経ているが,主要

な改正として,次のものが重要である。1937年に株式法が制定され,ドイツ

商法典から株式会社に関する規律が切り出された。また,第二次世界大戦後

の1950年には,「商法分野における規定の廃止に関する法律」に基づき,協

同組合法及び手形法・小切手法がそれぞれ商法典から独立し,単行法化され

た。

 第1編「商事」においては,商法の適用を受ける名宛人である「商人」が

定義され,商業登記簿・企業登記簿,商号など商事的企業に係る一般的制度

に関する規定が置かれている。しかし,第6章「商業使用人及び商業徒弟」

は労働法に属する事項について,また,第7章「代理商」及び第8章「商

事仲立人」は商行為に属する事項について定めている。第1編の重要な改

正として,次の改正が挙げられる。第1に,1989年改正により代理商に関す

る規律が大幅に見直された。さらに,1998年6月22日の改正商法により,商

法の最も基本的な概念である「商人」概念について抜本的な改正がなされ

た。すなわち,同改正前法における「必然的商人(Mußkaufmann)」と「義

務的商人(Sollkaufmann)」の概念を統合し,「商業(Handelsgewerbe)を

営む者」という要件の下に統一し(ドイツ商法第1条第1項),「固有の商人

(Istkaufmann)」という概念を立てることとした。これにより,基本的商行

為を業とするかどうかにより「必然的商人」と「義務的商人」に分類すると

いう1998年改正前法の考え方は廃止された。なお,1998年改正商法は「商業

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(Handelsgewerbe)」の定義規定を置き,「商業とは,全ての営業活動をい

う。ただし,企業が,その種類や量ゆえに商人的に組織化された営業活動を

必要としない場合を除く。」と定める(同条第2項)。人的会社及び資本会社

等の形式商人(Formkaufmann)は,商業を営むかどうかにかかわらず,そ

の法形式に基づき商人とされ,商法の適用を受ける(第6条)。営業を行う

企業のなす営業活動が「商業」に該当しないときであっても,当該企業がそ

の商号を商業登記簿に登記している場合には,その活動は商業とみなされる

が,商業登記簿にその商号を登記するかどうかは自らが決定することができ

る(第2条)。さらに,農業又は林業を営む者は,その種類及び量に鑑み商

人的に組織化された方法で事業活動することを要するときは,商業登記簿に

登記することができることとし(第3条第2項),登記した場合には商業性

を認められ,商人として扱われることになった。商業登記簿に登記するかど

うかを選択することができるこれらの者が登記した場合は,彼らは任意的商

人(Kannkaufmann)となる。

 第2編「商事会社及び匿名組合」においては,「商事会社」のうち,いわ

ゆる資本会社については株式法及び有限会社法において規律されており,人

的会社すなわち合名会社と合資会社についてのみ規律されている。また,ド

イツにおいては,匿名組合は商事会社とともに規律されており,商行為法各

論において匿名組合を規律している日本商法とは異なる。

 第3編「商業帳簿」においては,全ての商人に適用される一般ルールをま

とめて規定した後,資本会社,登記済協同組合及び特定の業務を営む企業の

ための補充規定が定められている。前述したように,ドイツ商法典は,空洞

化が進行してきたが,この傾向に多少の変化が生じたのは1985年改正におい

てである。すなわち,1985年に,計算書類に関するEU指令を国内法化するた

めに,「会社法の調和のためのEU理事会第4指令,第7指令及び第8指令を

国内法化するための法律」に基づき商法典が改正された。1985年改正法によ

り,EU指令を国内法化するとともに,計算書類の作成に関する規律など既

に商法典に存在していた計算に関する規定と株式法に規定されていた株式会

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社の計算に係る諸規定とを統合し,102か条から成る第3編「商業帳簿」が新

設された。第3編は,商人の単体の決算書のみならず企業グループすなわち

コンツェルン決算書に関する詳細な規定も置かれている。1998年4月20日の

法律により,国際的な企業グループについてはコンツェルン会計基準として

国際会計基準の適用を認めることとした。また,2000年2月24日の法律によ

り,人的会社形態を用いながら無限責任を負う自然人が存在しない,いわゆ

る公開人的会社(Publikums-Personengesellschaft)について資本会社に適用

される計算規定が適用されることになった。その後も,第3編は,数次にわ

たる改正を経て現在に至っている。その中で最も大きな改正が,2009年の「計

算規定現代化法」による改正である。2009年改正法は,①小規模の個人企業

の計算書類の公示に係る規制を緩和し,②商法典に基づき作成される計算書

類の有用性を高め,③商法典に基づき作成されるコンツェルン決算書の透明

性を高め,④2つのEU指令を国内法化するとともに計算規定の実効性を高

めることを目標とするものであった。

 第4編「商行為」においては,ドイツ商法典が編さんされた19世紀の時代

状況を色濃く反映した断片的な規定が置かれている。すなわち,第4編は,

商事売買,問屋営業,運送営業,運送取扱営業及び倉庫営業について規律す

る。「商行為」における重要な改正は,1998年6月25日の運送法改正法である。

同改正前は,商法典における運送営業に関する規定は,多くの特別法が存在

していたため,実務的には重要性を持たなかったとされる。運送法改正法に

より,個別に分断化されていた上に,部分的に過剰に規制され時代遅れとなっ

ていた改正前の運送法に関する商法典の規定が,整理されるとともに現代化

された。さらに,国際条約との整合性を配慮し,任意法規化を進めるなどの

改正が進められた。第4章「運送営業」においては,第1節「総則」におい

て運送契約に係る法律関係を規律する。第1節の総則規定の適用範囲は,①

物品を陸路・内水路又は航空機によって運送するものとされており,かつ,

②当該運送が営業的企業の経営に属するときである(第407条第3項)。この

ように,運送の手段を問わず,運送契約一般について規律されることとなっ

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た。特に航空運送に関する規定は,従来商法典には存在しなかったのである

が,航空運送に係る規律を現代化した上で,商法典に統合された。第2節で

は「引越物品の運送」,第3節では「異なる種類の運送手段による運送」に

ついて分けて規律する。第3節により,物品の運送が統一的な運送契約に基

づき異なる種類の運送手段によって実行される場合について,ドイツ商法典

に初めて規律が導入されることになった。第5章「運送取扱営業」では,運

送市場が国際化している中でどのような路線と運送人を利用するのが最も効

率的であるかを運送取扱人の取次ぎを通じて実現するという実務に対応する

ための規定が設けられた。取次ぎに係る規律によるのではなく,運送法の規

律に大幅に準拠することになった。また,第6章「倉庫営業」では,倉庫契

約により倉庫営業者は物品を蔵置し,かつ,保管する義務を負うと定め,運

送法の規律に準拠して倉庫契約を位置づけることとしたが,過失の推定を行

うものの過失責任として位置づけるなど責任に関する規律は運送業者及び運

送取扱業者の責任とは異なる。

 最近のドイツ商法典の改正で特に注目されるのは,EU法における調和・

統合,とりわけEU指令の影響を大きく受けている点である。例えば,計算

規定についてはEU指令を国内法化したものが少なくないし,1989年代理商法

の改正により,EUの1986年の代理商指令に基づく規定が置かれることになっ

た。

4 日本法との関係と日本法への影響 日本の現行商法である明治32年商法は,明治23年商法を基礎として制定さ

れた。明治23年商法は,ヘルマン・レスラー博士の起草に係る明治17年のレ

スラー草案から多大の影響を受けている。レスラー博士は,ドイツ法のみ

ならず,フランス法やイギリス法など当時の欧州諸国の商法を広く参照し

ながら草案を起草したとされる。明治23年商法の編別についてはフランス

商法典が最も参考にされているものの,内容的には1861年のプロイセン株式

法のほか,とりわけドイツ商法典の前身である1861年のドイツ普通商法典

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(ADHGB;Allgemeine Deutsche Handelsgesetzbuch)が基礎となっている

ことは明らかである。したがって,日本の商法典は,ドイツ法を母法にする

ものであるといえる。もっとも,例えばドイツ商法典は,商行為概念を「商

人」概念と「商業」概念に基づき規定しており「絶対的商行為」概念を有し

ないのに対し,ドイツ普通商法典及びそれを参考とした日本商法は「絶対的

商行為」概念を有するなど,両者の間には当初から相違点もあったことには

注意を要する。

 日本に目を向けると,会社法及び保険法が商法典から独立し単行法化さ

れ,商法の空洞化が進行しており,また,現在進行中の民法(債権関係)改

正においては,有価証券に関する規定や契約の申込みに関する規定の一部が

民法に移動し,商事消滅時効や商事法定利率が廃止されることが予定されて

いるなど,商法の空洞化がさらに進行しようとしている。このような状況の

下,日本同様,商法の空洞化の歴史を経ながら,独自の発展を続けている日

本商法の母法と位置づけられるドイツ商法典の動向は,注目に値する。とり

わけ,本法務資料において翻訳されている第1編「商事」(商法総則に相当),

第2編「商事会社及び匿名組合」,第3編「商業帳簿」及び第4編「商行為」

は,日本の今後の商事法制の行方を検討するに際し,参考になるものと考え

られる。

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【凡例】

・翻訳に当たっては,2016年3月31日現在の法文を用いた。

・翻訳としての読みやすさを考え,可能な限り原語を付すことはせず,特殊な

用語等に限り,必要最小限の範囲で原語をカッコ内に示した。

・ドイツ商法典の条文には,原文に見出しが付されているものと見出しのない

ものがある。原文に付されている見出しの場合は,( )内に示した。見出

しのない条文については,Beck-Texte im dtv版において編者が用いた見出

しを用い,【 】内に示した。

・原文中にセミコロン(;)が用いられている場合があるが,日本語ではこれ

を用いないことが通常であることから,適宜,句点に置き換えた。

・EUの法令が引用されている条文については,法令名について適宜の翻訳を

したが,官報名等は,検索に際しての便宜等を考え,原文のまま残している。

・法文の中に複数の文が含まれる場合,各文の文頭に番号(①,②……)を付

した。

(松井秀征)

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ドイツ商法典(第1編~第4編)

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第1編 商事

第1章 商人

第1条【固有の商人】⑴ 本法において商人とは,商業を営む者を指す。

⑵ 商業とは,全ての営業活動をいう。ただし,企業が,その種類や量ゆえに

商人的に組織化された営業活動を必要としない場合を除く。

第2条【任意的商人】 ①その営業が第1条第2項による商業に該当しない場

合でも,当該営業を行う企業がその商号を商業登記簿に登記している場合,

その営業活動を本法における商業とみなす。②営業主は,商人の商号の登記

に適用される規定に従って,登記することができるが,登記すべき義務を負

うわけではない。③商号の登記後,第1条第2項の要件が満たされていない

場合に限り,営業主の申請によりその商号を登記簿から抹消することができ

る。

第3条【農業及び林業,任意的商人】⑴ 第1条の規定は農業及び林業には適

用しない。

⑵ 農業又は林業について,その種類や量ゆえに商人的に組織化された方法で

営業することを必要とする場合,第2条を適用する。この場合,商業登記簿

に登記後の商号の削除は,商人の商号の抹消に適用される一般的規定によっ

てのみ行う。

⑶ 農業又は林業に関連する企業があり,その企業が農業又は林業の副業とし

てのみ営まれている場合,当該企業につき第1項及び第2項の規定を準用す

る。

第4条(削除)

第5条【登記による商人】 商号を商業登記簿に登記した場合,その登記を援

用する者に対して,当該商号のもとでなされた営業活動が商業ではないと主

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張することはできない。

第6条【商事会社,形式商人】⑴ 商人に適用される規定は,商事会社にも適

用される。

⑵ 企業目的のいかんにかかわらず,本法が商人たる資格を付与した社団の権

利及び義務は,第1条第2項の要件を満たさなくても,影響を受けない。

第7条【商人たる資格と公法】 商人に関する本法の規定は,営業権を排除し,

又は特定の条件にかからしめる公法上の規制により,適用を妨げられない。

第2章 商業登記簿・企業登記簿

第8条(商業登記簿)⑴ 商業登記簿は裁判所によって電磁的に取り扱う。

⑵ 他の情報開示書類について,「商業登記簿」の表示を取引の中で,使用又

は付加してはならない。

第8a条(商業登記の申請,法令上の申請手続)⑴ 商業登記の申請は,商業

登記申請用に割り当てられた電子情報処理装置に申請が保存され,内容の変

更なく判読可能な状態でいつでも再取得できる状態に置かれたときに効力を

生じる。

⑵ ①州政府は,商業登記の電磁的取扱い,電子申請,電磁的方法による文書

提出及びそれらの保存に関して,家事事件及び非訟事件の手続に関する法律

第387条第2項に基づき連邦司法・消費者保護省が関連する諸規定を定めて

いない範囲において,法規命令によって詳細な規定を置くことができる。②

また,裁判所による処理手続の適正を確保するために,データの伝送及び電

磁的書類の書式についても規定を置くことができる。③州政府は,法規命令

により州司法省に権限を委任することができる。

第8b条(企業登記簿)⑴ 第9a条第1項に規定する場合を除き,企業登記簿

は連邦司法・消費者保護省により電磁的に管理される。

⑵ 企業登記簿のインターネットサイトでは次の文書を閲覧できる。

⒈ 商業登記簿の記録及びその公告,並びに商業登記申請書類

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⒉ 協同組合登記簿の記録及びその公告,並びに協同組合登記申請書類

⒊ パートナーシップ登記簿の記録及びその公告,並びにパートナーシップ

登記申請書類

⒋ 第325条及び第339条に基づく決算提示書類及び第341w条による書類。

ただし,開示されたものに限る。

⒌ 連邦官報に掲載された会社法上の公告

⒍ 株式法第127a条に基づき連邦官報上の株主フォーラム欄に掲載された記

⒎ 有価証券取引法又は財産投資法に基づき企業が官報に掲載する開示,並

びに有価証券の取得及び買付けに関する法律に基づき公開買付者,会社,

取締役,監査役が官報に掲載する開示,並びに取引所上場認可規則に基づ

き官報に掲載される開示

⒏ 資本投資法典,投資法,及び投資税法に基づき,投資運用業者と外国投

資会社が連邦官報に掲載する公告及び開示

⒐ 有価証券取引法第2c条,第15条第1項・第2項,第 15a条第4項,第26

条第1項,第26a条,第29a条第2項,第30e条,第30f条第2項,第37v条

第1項から第37x条第2項まで,第37y条,第37z条第4項,及び第41条に

より,公告又は他の方法により公衆に提供される情報。ただし,本項第4

号又は第7号に基づき,既に企業登記簿における開示事項として該当する

ものを除く。

10. 連邦金融監督庁に提出する資本市場法上の開示事項。ただし,当該開

示自体が,本項第7号又は第9号に基づき,既に企業登記簿に含まれてい

る場合を除く。

⒒ 倒産法第9条に基づき倒産裁判所がなす公告。ただし倒産法第9編によ

る手続の場合を除く。

⑶ ①企業登記簿に登記するには,次の事項を次に掲げる者により企業登記簿

に伝えなければならない。

⒈ 本条第2項第4号から第8号までに係る事項,及び第326条第2項によ

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り小資本会社に求められる年度末決算書類については,連邦官報の運営者

が伝達する。

⒉ 本条第2項第9号及び第10号に係る事項は,それぞれの開示義務を負う

者,又はこの者から開示の委託を受けた第三者が伝達する。

①企業登記簿のインターネットサイトにおいて,原本のデータへのアクセス

を開始するために必要である場合には,本条第2項第1号から第3号に係る

事項及び第11号に係る事項につき,州司法省が企業登記簿に伝達する。③連

邦金融監督庁は,有価証券取引法第2c条,第15条第1項第2項,第15a条第

4項,第26条第1項,第26a条,第29a条第2項,第30e条,第30f条第2項,

第37v条第1項から第37x条第2項まで,第37y条,第37z条第4項,第41条に

より開示及び他の方法で公衆に提供されるべき情報が,商業登記簿に登記,

保存のために伝達されていることを監督し,その適切な執行のために必要に

応じて命令を出すことができる。④第3文の開示,公衆に提供されるべき情

報,及び通知の伝達事項につき,当該伝達がなされなかったり,誤っていた

り,不完全であったり,適法な書式にのっとっていなかったりした場合,連

邦金融監督庁は,義務者の負担において,当該伝達を行うことができる。⑤

連邦金融監督庁による監督業務は,有価証券取引法第4条第3項第1文,第

3文,第7項,第9項,第10項,第7条及び第8条の規定が適用される。

⑷ ①企業登記簿の管理には,本条第2項第4号における決算書類中,企業登

記簿に保存された情報を印刷し,第9条第3項及び第4項に従って認証する

ことも含まれる。②第9条第2項により商業登記簿に提出された書類の電子

送付も同様であるが,この場合の申請は,本条第2項第4号の意味における

決算書類に限られる。この場合,第9条第3項を適用する。

第9条(商業登記簿及び企業登記簿の閲覧)⑴ ①何人も,情報取得の目的で

商業登記及び商業登記申請書類を閲覧することができる。②州司法省は,商

業登記簿から呼び出し得るデータに関する電子的情報及び通信システムを決

定し,その電磁的取得の手続操作について管轄する。③州政府は法規命令に

より,管轄につき異なる定めをおくことができる。法規命令により州司法省

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に当該権限を委任することができる。④複数の州は,州をまたがる中央電子

情報通信システムを定めることができる。⑤州は,他の州の管轄部署に商業

登記事務を委託することもできるし,企業登記簿管理者と合意して企業登記

簿に事務委託することもできる。

⑵ 商業登記申請書類が書面でのみ存在する場合,商業登記申請時より以前の

10年内に作成された書類についてのみ,電子的方法による伝送を請求するこ

とができる。

⑶ ①商業登記簿の内容及び商業登記簿に提出された書類と伝送されたデータ

との一致は,申請に基づき裁判所が認証する。②このとき電子署名法に基づ

く電子署名が使用される。

⑷ ①登記及びその申請書類のプリントアウトを請求することができる。②商

業登記簿に提出された書類が書面のみである場合,その写しを請求できる。

③認証を放棄しない限り,写しは書記課で認証され,プリントアウトも公的

な印刷として作成される。

⑸ 裁判所は,請求に基づき,登記対象事項につき他の登記がないこと,及び

特定の登記が行われていないことにつき証明書を発行しなければならない。

⑹ ①企業登記簿の閲覧について,本条第1項第1文を適用する。②本条第2

項から第5項の申請は,企業登記簿についても,裁判所に伝達される。③小

資本会社の貸借対照表の閲覧(第267a条)は,第326条第2項による権利行

使があった場合,申請に基づきコピーの閲覧が可能である。

第9a条(企業登記簿管理の移管,法令による委任)⑴ ①連邦司法・消費者

保護省は,第8b条に基づき,連邦参議院の承認があれば法規命令によって,

その職務権限を私法人に委任することができる。②委任を受けた者は連邦司

法当局の職務上の地位を取得する。③委任を受けた者が認証を作成するには

職務印を使用する。第1文に基づき,詳細につき法規命令で定めることがで

きる。④権限委任期間には期限を設けなければならない。当該期間は,5年

を下回ることはできない。重大な事情に基づく解約権限は予定されなければ

ならない。⑤私法人は,資本市場法上の情報開示や裁判上の告知,特に商業

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登記簿のデータに関する基本的な経験を有し,かつ,長期間,安全に企業登

記簿を管理できるだけの十分な技術上・財政上の基盤が利用できるものであ

る場合に限り,委任を受けることができる。

⑵ ①連邦司法・消費者保護省は,連邦参議院の承認があれば法規命令によっ

て,州当局と企業登記簿との間における,データの書式の基準を含む情報伝

送に関する個別的事項について定めることができる。②州法により手続規定

について別段の定めを置くことはできない。

⑶ ①連邦司法・消費者保護省は,連邦参議院の承認なくして,法規命令によ

り,企業登記簿の構成及び管理に関する技術的事項,データ書式の基準を含

む情報伝送に関する事項で本条第2項に該当しないもの,企業登記簿に登録

されたデータの抹消期間,企業登記簿に対する連邦金融監督庁の監督権限で

あって汎ヨーロッパ情報登録ネットワークの構成の枠内における他のEU加

盟国又は欧州経済圏協定締約国の公的情報登録システムとの協働を含む,

資本市場法に関するデータについての伝送,調整,処理及び回復に関するも

の,さらに,企業登記簿の管理と結びつけられた本法に基づく事務からは逸

脱する,企業登記簿に蓄積されたデータに関する情報サービスの許容性及び

その種類や範囲に関して,規定を置く権限を有する。②資本市場法に関する

データに関して規定する場合,第1文に基づく法規命令は連邦財務省と合意

の上で発しなければならない。③第1文に基づく法規命令は,企業の正当な

利益に資するように利用されなければならず,登記簿に登記された情報の目

的外使用が排除されるように扱われなければならない。

第9b条(汎ヨーロッパ情報登録ネットワークシステム,法令による委任)

⑴ ①商業登記簿の登記と商業登記簿に提出された書類,及び第325条に基づ

く決算書類は,それに関わる資本会社又はその支店が他のEU加盟国又は欧

州経済圏協定締約国の法の適用を受ける限り,e-Justice ポータルサイトから

もアクセスし得る。②このため,州司法省は商業登記簿の情報を,企業登記

簿の管理者は決算書類のデータを,欧州中央プラットフォーム(2009年9月

16日の欧州議会・理事会指令2009/101/EC「加盟国及び第三者の保護のため

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に,加盟国に要求される条約第48条第2項の意味における会社のセーフガー

ドの均質化を目指すセーフガードの協調に関する指令」(2009年1月20日付

け官報258,11ページ),最終改正2013/24/EU (2013年10月6日付け官報158,

365ページ) 第4a条第1項により設置されるプラットフォーム)に伝送する。

ただし,e-Justiceポータルのインターネットサイトの検索サービスにおいて

原本データへのアクセス開始のために必要である場合に限る。

⑵ ①登記裁判所は,第1項第1文の意味における資本会社又はその支店の登

記申請書を取り扱うことにより,欧州中央プラットフォームの登記に関する

情報交換に参加する。②この目的のために,欧州単一識別子が本条第1項第

1文の意味における資本会社又はその支店に割り当てられる。③登記裁判所

は次項に従って,次の情報を欧州中央プラットフォームに伝送する。

⒈ 会社財産の倒産手続の開始,停止又は終結の登記

⒉ 会社の解散登記,及び清算結了,あるいは会社の継続に関する登記

⒊ 会社の財産欠如による解散

⒋ 組織変更法(UmwG)第122a条に基づく合併の効力

⑶ ①州司法省は,商業登記簿からデータにアクセスし(本条第1項),及び

登録簿間における情報交換の枠組みにおいてデータの送受信を行う(本条第

2項)電磁的情報通信システムを決定し,また,本条第1項第2文の企業登

記簿管理人の権限は留保した上で,本条第1項及び第2項に基づき情報通信

の処理についての権限を有する。②第9条第1項第3文から第5文はこれに

適用する。

⑷ 連邦司法・消費者保護省は,連邦参議院の承認のもと,法規命令によっ

て,以下に関する規定を設けることができる。

⒈ 欧州単一識別子の構成,割当て及び使用

⒉ 登記簿と送付されるべきデータのリストとの間の情報交換に関する通知

義務の範囲

⒊ データの書式や支払態様の要件を含む,本条第1項及び第2項による電

磁的データ通信の詳細

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⒋ 初回のデータ送信の時期

第10条(商業登記簿の公告) ①裁判所は,州司法省が指定した電磁的情報通

信システムに,商業登記簿の登記事項を登記後一定の期間内に公告する。こ

のとき第9条第1項第4文及び第5文を適用する。②法により別段の定めが

なされていない限り,登記事項はその全部を開示する。

第11条(EU加盟国の公用語による公開) ⑴ ①商業登記簿に提出されるべき

書類及び登記事項の内容はEU加盟国それぞれの公用語でも提出できる。②

翻訳は適切になされなければならない。③ここでも第9条が適用される。

⑵ 提出された翻訳がオリジナル版から相違してしまった場合,翻訳版をもっ

て第三者に対抗することはできない。ただし,第三者がオリジナル版を知っ

ていたと登記申請者が証明した場合を除き,第三者は提出された翻訳版を信

頼することができる。

第12条(登記申請及びその提出手続) ⑴ ①商業登記簿への登記申請は公的に

認証された書式を利用して電磁的に行われるものとする。②代理申請を行う

場合の代理権の証明にも同様に公的に認証された書式を必要とする。③連邦

公証人法第21条第3項に基づく公証人による証明をもって,代理権証明に代

えることもできる。④当事者の地位を承継した者は,当該承継につき,公的

書類で実施可能な範囲で承継を証明しなければならない。

⑵ ①申請書は電磁的手法により提出されるものとする。②原本又は単純コ

ピーを提出しなければならない場合,又は当該書類につき特定の書式がある

場合は,それらの書類の電磁的記録の提出で足りる。公証人が作成した文書

又は公的な認証のある写しを提出しなければならない場合には,単純電子認

証(公正証書作成法第39a条)が付された書面を提出すべきものとする。

第13条(国内に所在する支店)⑴ ①支店を設置した場合,個人商人あるい

は法人の場合は本店所在地の裁判所で,商事会社の場合は当該会社の本拠地

の裁判所で,支店の住所地又は国内業務所在地,及び支店の商号に付記がさ

れている場合にはその付記を申告して,登記を申請しなければならない。②

支店に関連する事項で変更があった場合も同様に登記しなければならない。

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⑵ 管轄裁判所は,本店登記に付記して,又は支店の商号に付記がされている

場合には支店の住所地あるいは国内業務所在地の登記に付記して,支店を登

録する。ただし,支店が明らかに設置されていない場合を除く。

⑶ 本条第1項及び第2項は支店を廃止する場合にも適用される。

第13a条から第13c条(削除)

第13d条(住所地又は本店が外国に所在する場合)⑴ 個人商人又は法人の本

店,あるいは商事会社の本拠が外国にある場合,国内の支店に関連する登録

申請,提出及び登記は,当該支店を管轄する区域の裁判所において行われる。

⑵ 支店設置の登記には支店の住所地及び国内業務所在地が含まれていなけれ

ばならない。支店の名称に付記がされている場合には,その点について登記

されなければならない。

⑶ その他の点について,本店又は会社の本拠にある営業所に適用される規定

は,外国法が別異の規定を必要としていない限り,個人商人,商事会社,あ

るいは法人(ただし,株式会社,株式合資会社,及び有限会社を除く。)の

支店について登録申請,書類提出,登記,公告及び申請内容の変更に準用さ

れる。

第13e条(外国に本拠が所在する資本会社の支店)⑴ 第13d条に加えて,外

国に本拠が所在する株式会社及び有限会社の支店には,以下の規定が適用さ

れる。

⑵ ①株式会社の支店を設置する場合,取締役会が商業登記簿に登記申請を行

い,有限会社の支店の設置の場合は,業務執行者が申請しなければならな

い。②申請の際,当該会社の存在を証明しなければならない。③申請には,

支店の国内所在地及び目的についても含まれていなければならない。④ま

た,会社に対する意思表示や通知を受領する権限のある人物について,その

国内の住所を商業登記簿に登記しなければならない。受領権限は,商業登記

から抹消され,抹消が公示されるまで,第三者に対して効力を保持する。た

だし,当該第三者が受領権限のないことを知っていた場合を除く。⑤申請書

には以下の内容が含まれる。

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⒈ その会社の住所地における法が予定する範囲において,会社が登録しよ

うとする登記簿(の名称)と登録番号

⒉ 会社の法的形式

⒊ 常任の代表者として,支店の行為につき裁判上及び裁判外の事項に関し

会社を代理する権限を持つ者の氏名と,合わせてその有する権限の表示

⒋ 会社にEU加盟国の法も欧州経済圏協定締約国の法も適用されない場

合,当該会社が適用を受ける国の法

⑶ ①本条第2項第5文第3号に該当する者については,その者が交代するご

とに,またその者の代理権限に変更が生じるごとに,商業登記簿に登記しな

ければならない。②会社の法的な代表者に対しては,支店に関し,株式法第

76条第3項第2文・3文,及び有限会社法第6条第2項第2文・3文が準用

される。

(3a) ①本条第2項第5文に該当する者は会社の代表者として,商業登記簿に

登記された支店の国内の業務所在地における意思表示を受領でき,書類の宛

先となる。②この点によらず,本条第2項第4文により当該権限ある者の登

記済の住所にも,意思表示や送達ができる。

⑷ 本条第2項第5文第3号に該当する者,又はそのような者がいなければ会

社の法的な代表者は,倒産手続又はそれに類する会社財産に係る手続の開始

又は開始の却下につき,登記しなければならない。

⑸ ①会社が国内に複数の支店を設置する場合,定款及びその改正は,会社の

選択により一つの支店の商業登記においてのみ,登録されていればよい。②

このとき本条第2項第1文によりその他の支店について商業登記簿への登記

申請義務を負う者は,会社が選んだ登記簿に,設置した支店の数を合わせて

登記するものとする。

⑹ 州司法省は,外国に本拠を置く資本会社の情報が,汎ヨーロッパ情報登録

ネットワークシステム(第9b条)が受信した範囲で,当該会社の国内支店に

つき管轄する登録裁判所のもとに伝送されることを保障する。

第13f条(外国に本拠が所在する株式会社の支店) ⑴ 外国に本拠のある株式

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会社の支店に対しては以下の補充規定を適用する。

⑵ ①登記を申請する際,公的に認証された定款の写し,及び定款がドイツ語

で書かれていない場合は認証済みの翻訳文とを添付しなければならない。②

株式法第37条第2項・第3項の規定が適用される。③外国法において異なる

取扱いが求められていない限り,株式法第23条第3項・第4項,及び第24条

第25条第2文の規定により要求される内容を含んだ定款規定,及び取締役構

成に関する定款規定についても,登記申請時の添付書類に含まれるものとす

る。また,申請が当該会社の住所地の商業登記簿に会社が登記されてから最

初の2年間になされたものであるとき,株式法第26条,第27条による確定額

の表示,株式の発行価額,及び発起人の氏名と住所が,含まれていなければ

ならない。④また,会社の住所地に対してなされた裁判所の公告も,申請書

に添付するものとする。

⑶ 支店設立の登記は,株式法第39条により要求される事項,及び本法第13e

条第2項第3文から第5文までにより要求される事項も含まれていなければ

ならない。

⑷ ①外国会社の定款変更は,取締役によって,商業登記簿に登記申請されな

ければならない。②外国法において異なる取扱いが要求されていない限り,

申請には株式法第181条第1項・第2項の規定が準用される。

⑸ その他の事項については,外国法において異なる取扱いが要求されていな

い限り,株式法第81条,第263条第1文,第266条第1項・第2項,第273条

第1項第1文が準用される。

⑹ 支店の廃止の際には,支店設置に関する規定が準用される。

⑺ 外国に本拠を置く株式会社の支店に関する条項は,株式法第278条から第

290条までの規定により,あるいは取締役を設置していないことにより,別

段の取扱いを受ける場合でなければ,外国に本拠を置く株式合資会社の支店

にも準用される。

第13g条(外国に本拠が所在する有限会社の支店) ⑴ 外国に本拠が所在する

有限会社の支店に対しては以下の補充的規定が適用される。

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⑵ ①登記を申請する際,公的に認証された定款の写し,及び定款がドイツ語

で書かれていない場合は認証済みの翻訳文とを添付しなければならない。②

有限会社法第8条第1項第2号と第3項・第4項の規定が適用される。③外

国法において異なる取扱いが要求されない限り,支店の設置に関する登記申

請が,当該会社の住所地の商業登記簿に会社が登記されてから最初の2年以

内になされたものであるとき,申請書には有限会社法第5条第4項による額

面が含まれていなければならない。

⑶ 支店設置の登記は,有限会社法第10条により要求される事項,及び本法第

13e条第2項第3文から第5文までにより要求される事項も含まれていなけ

ればならない。

⑷ ①外国会社の定款変更は,業務執行者によって,商業登記簿に登記申請さ

れなければならない。②外国法において異なる取扱いが要求されていない限

り,申請には有限会社法第54条第1項・第2項の規定が準用される。

⑸ その他の事項については,外国法において異なる取扱いが要求されていな

い限り,有限会社法第39条,第65条第1項第1文,第67条第1項第2項,第

74条第1項第1文が準用される。

⑹ 支店の廃止の際には,支店設置に関する規定が準用される。

第13h条(国内の本店所在の変更) ⑴ 個人商又は法人の本店所在地,あるい

は商事会社の本拠を国内において変更した場合,従前の本店又は従前の本拠

の裁判所において変更登記を申請しなければならない。

⑵ ①本店所在地又は本拠が,従前の管轄裁判所の管轄外に変更された場合,

従前の管轄裁判所から新しい本店所在地又は新しい本拠の管轄裁判所へ速や

かに通知されなければならない。②通知は,従前の本店所在地又は本拠にお

ける登記事項と,従前の管轄裁判所が保管していた証書とともになされるも

のとする。③新しい本店所在地又は新しい本拠の裁判所は,本店所在地又は

本拠が有効に変更されていること,及び本法第30条が遵守されていることを

調査しなければならない。④これらを満たす場合,変更を登記し,さらに調

査することなく送付された商業登記簿の記載事項を引き継ぐものとする。

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⑤変更登記後,従前の本店所在地又は本拠の裁判所にその旨通知する。⑥ま

た,これらの裁判所は職権により必要事項を登記しなければならない。

⑶ ①本店が,従前の所在地の管轄裁判所の管轄内で移転した場合,当該裁判

所が,移転が有効か,本法第30条を遵守しているかを調査しなければならな

い。②その点が満たされたら,所在地の変更を登記するものとする。

第14条【強制金の確定】 ①登記又は商業登記簿への書類提出にかかる義務に

違反した者は,登記裁判所から強制金を課せられる。②強制金は1回あたり

5000ユーロを超えないものとする。

第15条【商業登記簿の公示】⑴ 商業登記簿に登記すべき事項が登記も公告

もされていないとき,登記義務者は第三者に登記すべき事項について対抗す

ることができない。ただし,第三者が登記すべき事項につき悪意の場合はこ

の限りでない。

⑵ ①登記すべき事項が登記され,公告された後は,第三者にも対抗できる。

②この点は,第三者が登記事項を知らず,知るべきであったとはいえない場

合で,公表後15日以内になされた取引の法的効力には適用されない。

⑶ 登記すべき事項につき不正確な事実が公告された場合,第三者は登記義務

者に対して,公表された事実を信頼した旨,主張できる。ただし,第三者が

公表内容が不正確であることにつき悪意の場合はこの限りでない。

⑷ 外国に本拠または本店が所在する会社の支店で,商業登記簿に登記された

ものとの間の取引については,関連する規定に従って,支店を管轄する裁判

所が,登記及び公告につき決定する。

第15a条(公示送達) ①国内の業務所在地を商業登記簿に登記するよう義務

付けられている法人に対し,登記された場所において,又は通知権限ある人

物の住所として登記された住所地において,意思表示を到達させることがで

きず,あるいは他の国内所在地となり得るものとして特に調査することなく

知られている場所において意思表示を到達させられない場合,民事訴訟法の

規定に従った公示送達を利用することができる。②会社の国内業務所在地と

して登記された場所を管轄する地方裁判所が,これを行う権限を持つ。③本

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条によっても民法典第132条の適用は否定されない。

第16条【受訴裁判所の判断】⑴ ①受訴裁判所による既判力又は執行力ある

判決により,商業登記簿への申告に協力すべき義務を確定したとき,又は登

記事項となるような法律関係について複数の関係者のうちの1名について確

定した場合,登記に関してはその他の関係者のなす申請手続で足りる。②そ

のような登記を命じる判決が取り消された場合には,関係者のうちの1名の

申立てにより,商業登記簿にこの旨登記されなければならない。

⑵ 受訴裁判所による既判力又は執行力のある判決により,登記が不適法であ

ると宣言された場合,当該判決を受けた者の異議に反して,登記することは

できない。

第3章 商号

第17条【定義】⑴ 商人の商号とは,商人がそれをもって事業に関する取引

を行い,署名をなす名称をいう。

⑵ 商人はその商号をもって,訴え,又は訴えられることができる。

第18条【商人の商号】⑴ 商号は,商人を識別するために適当なものでなけ

ればならず,他のものと区別が可能でなければならない。

⑵ ①商号には,関連する取引圏の関係者にとって重大な業務上の事情につい

て混同を招くような事柄を含めてはならない。②誤認混同が明らかな場合に

のみ,登記裁判所の手続においてその誤認混同の可能性が考慮される。

第19条【個人商人,合名会社,又は合資会社の商号の表示】⑴ 商号は,本

法第21条,第22条,第24条又は他の法律の規定による商号の継続使用があっ

た場合でも,次の語が含まれなければならない。

⒈ 個人商の場合は「登記済み商人」,又はこの呼称につき一般に普及して

いる略語,特に「e.K.」,「e.Kfm.」又は「e.Kfr.」

⒉ 合名会社の場合は,「合名会社」又はこの呼称につき一般に普及してい

る略語

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⒊ 合資会社の場合は,「合資会社」又はこの呼称につき一般に普及してい

る略語

⑵ 合名会社又は合資会社に人的責任を負う自然人が存在しない場合,商号

は,本法第21条,第22条,第24条又は他の法律の規定による商号の継続使用

があった場合でも,責任制限を示す呼称が含まれていなければならない。

第20条(削除)

第21条【氏名の変更時の商号の継続使用】 自己の氏名を商号に使用している

個人事業主又は社員につき,当事者が変更されることなく氏名のみが変更さ

れる場合,従前の商号の使用を継続できる。

第22条【事業承継における商号の継続使用】⑴ 既存の事業を,生存中又は

死亡による処分によって取得する者は,その商号に前の事業主の氏名を使用

していた場合でも,従前の商号の使用を継続できる。このとき前の事業主又

はその相続人が商号の継続について明示的に同意していれば,承継関係を表

示する付加語を付し,又は付さずに使用できる。

⑵ 用益権,賃借権又はそれに類する関係に基づいて事業が承継されたとき,

本条の規定を準用する。

第23条【譲渡禁止】 商号が使用されている場合,事業を伴わずに商号だけ分

離して移転させることはできない。

第24条【社員構成の変更と商号の継続使用】⑴ 現在の事業に社員として加

入し,又は商事会社に新たな社員として加入し,若しくは社員がそのような

事業から退社した場合,そのような変更にもかかわらず,従前の事業主や社

員の名前を商号に使用している場合であっても,従前の商号の使用を継続で

きる。

⑵ 自己の氏名が商号に含まれている社員が退社したとき,従前の商号を継続

的に使用するには,当該社員又はその相続人の明示の承諾を要する。

第25条【商号の継続使用における承継者の責任】⑴ ①生存中に事業を引き

継いだ者で,従前の商号の使用を継続する者は,承継関係を示す付加語を使

用している場合もそうでない場合も,従前の事業主のなした事業において生

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じた一切の債務について責任を負う。②従前の事業主又はその相続人が明示

的に商号の継続使用に同意していた場合,事業に起因する債務は,債務者に

対しては,事業の取得者に移転されたものとみなす。

⑵ これと異なる合意は,商業登記簿に登記及び公告された場合か,あるい

は,取得者又は譲渡人が第三者に通知した場合に限って,第三者に対し効力

を有する。

⑶ 商号の使用が継続されない場合,事業の承継者は,特別な債務負担根拠が

存在する場合,特に承継者が債務の引き受けを商慣習法上の方法により広告

した場合にのみ,従前の事業上の債務についての責任を負う。

第26条【第25条による責任の期間】⑴ ①事業の取得者が,商号の継続使用,

又は第25条第3項による広告に基づき,従前の事業主の事業上の債務に関す

る責任を負うべき場合,従前の事業主は,5年以内に弁済期が到来し,かつ,

民法典第197条第1項第3号から5号までに示された方法により確定されて

いるか,又は裁判上ないし行政庁による執行手続が行われ若しくは当該手続

が申し立てられた場合,これらの債務につき責任を負う。公法上の債務につ

いては,行政行為の発布をもって足りる。②責任期間の始期は第25条第1項

の場合は,新しい事業主が本店所在地の裁判所にある商業登記簿に商号を登

記した日の終了時から,第25条第3項の場合は事業承継が公示された日の終

了時から起算する。③消滅時効に関する民法典第204条,206条,210条,211条,

212条第2項及び第3項の規定が準用される。

⑵ 従前の事業主が書面をもって債務の存在を認めている場合には,民法典第

197条第1項第3号から第5号に示される方法によって確定される必要はな

い。

第27条【事業承継における承継人の責任】⑴ 相続人が遺産に属する事業を

承継したとき,従前の事業における義務に関する相続人の責任には,第25条

の規定を準用する。

⑵ ①第25条第1項による無限責任は,相続人が相続の事実を知って取得した

日から3か月以内に承継した事業の継続を停止した場合,発生しない。②こ

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の期間の経過につき民法典第210条による消滅時効の規定を準用する。③3

か月の期間の経過にあたり相続放棄の権利が消滅していないとき,相続放棄

期間が経過する前にこの期間は終了しない。

第28条【個人商人の事業への入社】⑴ ①無限責任社員,あるいは有限責任

社員として個人商人の事業に加わる者は,従前の商号を継続使用しない場合

であっても,従前の事業主(個人商人)の事業経営の中で生じた一切の義務

について,会社として責任を負う。②事業経営の中で生じた債務は,債務者

との関係では,会社に移転したものとみなす。

⑵ これと異なる合意は,商業登記簿に登記及び公告された場合か,あるい

は,社員が第三者に通知した場合に限って,第三者に対し効力を有する。

⑶ ①従前の事業主が有限責任社員となり,会社が事業経営の中で生じた義務

の責任を引き継いだ場合,第26条の規定が準用され,その責任を限定するこ

とができる。このとき,会社が商業登記簿に登記された日の終結時を第26条

第1項に規定される期間の起算点とする。②この点は,従前の事業主が,当

該会社の経営に積極的に関わり,又は社員として当該会社に従属する企業の

経営に積極的に関わっている場合も同様である。③有限責任社員としての責

任は影響を受けない。

第29条【商号の登記】 商人は,その商号,所在地,及び国内の営業所の所在

地を,その営業所所在地を管轄する地域の裁判所の商業登記簿に登記する義

務がある。

第30条【区別可能であること】⑴ 新たな商号は,同じ地域又は同じ市町村

内において,既に存在し,かつ,商業登記簿又は組合登記簿に登記されてい

る商号と,明確に区別できなければならない。

⑵ 商人が,既に登記されている商人と同姓同名であって,かつ,自らの氏名

を商号として利用することを希望する場合,登記済みの商号と明確に区別さ

れ得るような付加文字を商号に付さなければならない。

⑶ 支店を設置しようとする地域又は市町村において,既に登記済みの同一の

商号が存在しているとき,支店の商号には第2項に基づく付加文字を付さな

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ければならない。

⑷ 州政府は,隣接する地区又は市町村をもって,本条における同一の地区又

は市町村とみなす旨規定することができる。

第31条【商号の変更,廃止】⑴ 商号の変更,事業主の変更,営業所の地域

外転出,国内の事業所在地の変更については,第29条の規定により,商業登

記簿に登記されるものとする。

⑵ ①商号を廃止する場合も同様である。②第14条に示された手法によったと

しても,登記義務者が登記済み商号の廃止につき登記しない場合,裁判所は

職権により,廃止を登記しなければならない。

第32条【倒産手続】⑴ ①商人の財産につき倒産手続が開始された場合,裁

判所は職権でこれを商業登記簿に登記しなければならない。②また,以下の

点についても同様である。

⒈ 倒産手続開始決定の取消し

⒉ 債務者に対し,追加的に,一般的な財産処分禁止が発せられている場

合,又は,仮倒産管財人の同意がある場合についてのみ債務者による財産

処分が有効となる旨命じられている場合,仮倒産管財人の選任及びそのよ

うな保護措置の終了

⒊ 債務者による自己管理命令とその取消し,及び債務者の特定の法律行為

につき承認を要する旨の命令

⒋ 手続の開始及び終結

⒌ 倒産計画の履行の監視と監視の終了

⑵ ①本条の登記は公告されない。②第15条の規定は適用されない。

第33条【法人】⑴ 事業の目的,又はその種類や範囲に関し商業登記簿への

登記が義務付けられている法人は,取締役全員により登記申請を行わなけれ

ばならない。

⑵ ①登記申請にあたり,法人の定款,取締役の選任に関する書類の原本又は

公的に認証された写しを添付しなければならない。また,取締役がどのよう

な代表権を持つのかも申告しなければならない。②商号,法人の所在地,企

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業の目的,取締役及びその代表権について,登記の時に申告しなければなら

ない。③定款に企業の存続期間に関する特別の規定を置いている場合は,そ

れも同様に登記されなければならない。

⑶ 支店の設置は取締役により登記されるものとする。

⑷ 本条第1項の意味における法人につき,第37a条の規定が準用される。

第34条【変更登記と申請】⑴ 第33条第2項第2文・第3文により登記すべき

事項又は定款規定に変更があったとき,倒産手続の開始によらず法人が解散

したとき,清算人の変更及び清算人の代理権限の変更があったときには,商

業登記簿に登記するため,申請しなければならない。

⑵ 定款の変更を登記するに当たり,それが第33条第2項第2文・第3文に規

定された事項に関する変更でなければ,変更につき,裁判所に提出された書

類の引用で足りる。

⑶ 取締役,又は最初の清算人の申請後初めて登記する場合は,清算人が変更

登記を申請しなければならない。

⑷ 裁判所において選任された取締役又は清算人の登記は職権で行われる。

⑸ 倒産手続の場合は,第32条の規定が適用される。

第35条及び第36条(削除)

第37条【商号の不正使用】⑴ 本章の規定に基づき自己に帰属する商号では

ない商号を使用する者に対し,登記裁判所は過料を課して,そのような商号

の使用をやめるよう命じるものとする。

⑵ ①他人による商号の不正使用によって,自らの権利が侵害された者は,当

該(侵害した)他人に対し,商号の使用をやめるよう請求することができる。

②他の規定に基づく損害賠償請求権は影響を受けない。

第37a条【文書中の表示】⑴ 特定の受領者に向けた形式を有する商人の全て

の業務信書は,等しく商号,第19条第1項第1号に示される表示,営業所の

場所,商号を商業登記簿に登記した際の登記裁判所と登記番号を明示しなけ

ればならない。

⑵ 前項の事項は,既存の業務関係の間で発せられた通知や報告書には不要で

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あり,あらかじめ印刷された書式を利用して,必要なら特定の事項につき個

別に挿入することで足りる。

⑶ ①注文書は本条第1項の意味における業務信書とみなす。②前項の規定は

適用されない。

⑷ ①本条第1項の義務に従わない者に対し,登記裁判所は過料を課して,こ

れに従うよう命じるものとする。②第14条第2文が準用される。

第4章 商業帳簿

第38条から第47b条(削除)

第5章 支配権及び商事代理権

第48条【支配権の授与,共同支配権】⑴ 支配権は営業主又はその法定代理

人に限り,かつ,明示的な意思表示によってのみ,付与することができる。

⑵ 支配権は,複数人に対して共同に付与することができる(共同支配権)。

第49条【支配権の範囲】⑴ 支配権は,商業の活動に関する,あらゆる種類

の裁判上及び裁判外の業務,及び法的行為をなす権限を含む。

⑵ 支配人は,不動産の譲渡及び負担については,自己に対し明示的にその権

限を付与されている場合に限って,なすことができる。

第50条【支配権の制限】⑴ 支配権の制限は第三者に対して効力を有しない。

⑵ 特に,支配権を特定の取引又は特定の種類の取引に限定し,あるいは特定

の状況又は特定の期間,若しくは特定の場所に限定する場合も同様である。

⑶ ①営業主の複数の営業所のうちの一つにかかる営業に支配権が制限される

場合,そのような制限は,各営業所が異なる商号のもとに区別されて経営さ

れる限りにおいて,第三者に対して効力を有する。②本条における商号の区

別とは,支店の商号として表示すべき付加語を商号に付することを指す。

第51条【支配人の署名】 支配人は,支配権を示す付加語を付した自らの名前

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を商号に添書する方法により署名しなければならない。

第52条【取消可能・譲渡不能・営業主の死亡】⑴ 支配権は,その授与の原

因となる法律関係にかかわらず,いつでも取り消し得る。このことは,契約

上の報酬請求権を損なうものではない。

⑵ 支配権は譲渡できない。

⑶ 支配権は営業主の死亡によっても消滅しない。

第53条【支配権の授与と消滅・支配人の署名】⑴ ①支配権の授与をしたと

き,営業主は商業登記簿にその旨登記しなければならない。②また,共同支

配権として支配権を授与したときも,営業主はその旨登記しなければならな

い。

⑵ 支配権の消滅の場合も,支配権の授与と同様の方法で登記しなければなら

ない。

第54条【商事代理権】⑴ 支配権の授与以外で,商業の遂行,又は商業に属

する種類の取引,若しくは商業に属する個々の取引につき委任された場合,

その者の代理権(商事代理権)は,そのような商業の遂行又はそのような取

引行為に通常伴うべき一切の取引及び法的行為に及ぶ。

⑵ 土地の譲渡又は担保設定,手形債務の負担,消費貸借の締結,及び訴訟の

追行については,商事代理人はこれらの権限につき特に授与を受けた場合に

のみ,これをなし得る。

⑶ 商事代理権に関するその他の制限は第三者に対して効力を有しない。ただ

し,第三者がこれを知り又は知り得べき場合はこの限りでない。

第55条【締約代理権者】⑴ 締約代理商又は商業使用人として,営業主の事

業所外で営業主の名前で取引を行う商事代理人にも,第54条の規定が適用さ

れる。

⑵ これらの締約代理権を与えられた者に,既に締結された契約を修正する権

限,特に支払時期を延期する権限は認められない。

⑶ これらの者は,特に授権されている場合に限り,支払を受領する権限を有

する。

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⑷ これらの者には,商品の瑕疵に関する通知,商品の処分の意思表示,及び

それらに類する,瑕疵のある給付であったことから生じる権利につき第三

者がなす請求又は留保に関する意思表示を受領する権限があるものとみな

す。またこれらの者は,証拠の保全のために,営業主(本人)に属する権限

を主張することができる。

第56条【店舗従業員又は倉庫従業員】 店舗又は一般の用に供される倉庫の使

用人は,その店舗又は倉庫において通常行われる販売又は受領を行う権限を

有する。

第57条【商事代理人の署名】 商事代理人は,その署名の際,支配権の存在を

示すような付加語を使用してはならない。商事代理人は,代理関係を示す付

加語を付して署名しなければならない。

第58条【商事代理権の譲渡不能】 商事代理人は,営業主の承認なくして,そ

の商事代理権を他人に譲渡することはできない。

第6章 商業使用人及び商業徒弟

第59条【商業使用人】 ①商業に関し,商人的な労務に従事してその対価とし

て報酬を得る者(商業使用人)は,その労務の種類及び範囲や自己の報酬に

関して特別の合意のない限り,その地方の慣習に従って労務を提供し,また

その地方の慣習に従った報酬を請求する。②地方の慣習がない場合には,当

事者は当該事情のもとで相当の給付につき合意したものとみなす。

第60条【法律上の競業の禁止】⑴ 商業使用人は,営業主の同意がない限り,

商業を営み,又は自己又は第三者の計算で営業主の事業の部類に属する行為

をすることはできない。

⑵ 使用人の雇用時に,使用人が商業を営んでいることを営業主が知ってお

り,かつ,明示的にその営業を放棄する旨合意していない場合には,営業主

は使用人が商業を営むことにつき同意したものとみなす。

第61条【競業の禁止違反】⑴ 商業使用人が第60条による義務に違反したと

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きは,営業主は損害賠償を請求できる。営業主は,損害賠償に代えて,商業

使用人が自己の計算でなした行為を営業主のためになしたものとみなすこ

と,及び商業使用人が他人のためになした行為から取得した報酬を営業主に

引き渡すこと,又はそのような報酬請求権を営業主に譲渡することを,請求

することができる。

⑵ 前項の請求権は,営業主が当該行為の締結を知ったとき,又は重過失なか

りせば知り得た時から3か月で時効により消滅する。これを知っていたか,

重過失により知らなかったかにかかわらず,行為の締結の時から5年で時効

により消滅する。

第62条【営業主の配慮義務】⑴ 営業主は,営業の性質の許す限り,健康に

対する危険から使用人を守り,また善良な道徳及び品行の維持を確保するた

めに,営業の場所,業務に用いられる特定の設備や器具を準備し,これを維

持し,さらに業務や就業時間を規定する義務がある。

⑵ 商業使用人が営業主の家庭に同居するとき,営業主は,その居室及び寝

室,就業時間及び休憩時間につき,使用人の健康,道徳,宗教の観点から必

要な範囲で設定し,命じなければならない。

⑶ 営業主が使用人の生活と健康に関する義務を履行しない場合,その損害賠

償責任につき,民法典第842条から第846条による不法行為の規定を準用する。

⑷ 以上の営業主の義務は,あらかじめ契約によって排除したり制限したりす

ることはできない。

第63条(削除)

第64条【給与の支払】 ①商業使用人への給与の支払は毎月の末日に行うもの

とする。②給与の支払を延期する旨のいかなる合意も無効である。

第65条【手数料】 商業使用人が自身による取引行為の締結又は媒介に手数料

を受け取る旨約定した場合,第87条第1項,第3項及び第87a条から第87c条

までの代理商に関する規定を適用する。

第66条から第73条(削除)

第74条【契約による競業の禁止,有償の待機期間】⑴ 営業主と商業使用人

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との間で,雇用関係終了後の一定期間における営業上の行為の制限(競業の

禁止)を合意する場合は書面によってなされ,営業主が署名し,合意した契

約条件を記載した書面を商業使用人に交付しなければならない。

⑵ 競業の禁止は,営業主が禁止期間につき補償金を支払う義務を負う場合に

限り,効力を有する。補償金は,当該商業使用人が受領していた最終の契約

上の給付の少なくとも2分の1に相当する額を,禁止期間中毎年支払わなけ

ればならない。

第74a条【拘束力のない,あるいは無効の競業の禁止】⑴ ①営業主の営業上

の正当な利益を保護するためではない場合,競業の禁止は効力を有しない。

②さらに,支払われた補償額に対し,場所,期間及び対象となる事項からみ

て使用人の生計を不当に害するものである場合も,競業の禁止は無効とな

る。③競業禁止は雇用関係の終了から2年の期間を超えてはならない。

⑵ ①使用人が契約締結当時未成年であった場合,又は営業主が使用人に誓約

又はこれに類似する保障をさせて約束させる場合,競業の禁止は無効であ

る。②使用人が,雇用契約終了後の自己の営業活動を制限する義務を使用人

に代わって第三者に引き受けさせる契約も無効である。

⑶ 公序良俗に反する法律行為の無効に関する民法典第138条の規定の適用を

妨げない。

第74b条【保証金の支払及び計算】⑴ 第74条第2項により商業使用人に支払

われるべき補償金は,毎月月末に支払われるものとする。

⑵ ①使用人に帰属する契約上の給付が,手数料又はその他変動所得である場

合に限り,補償額は,直近3年の平均値により算定されるものとする。②雇

用契約の終了時に適用されるべき契約の存続が3年に達していない場合,当

該契約条項の有効期間の平均値により算定される。

⑶ 労務の遂行により生じる特別の費用の補填のためになされた給付は算定の

基礎に含まれない。

第74c条【他の所得の控除】⑴ ①商業使用人は,補償金が支払われるべき期

間に,自己の労働力を他に使用して取得した所得,又は故意に取得を怠った

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所得について,弁済期の到来した保証金から控除することができる。ただ

し,保証金の額にこれらの金額を加算した額が,使用人が最後に受領した契

約上の給付額の10分の1を超える場合に限られる。②使用人が,競業の禁止

のために,その住所を移さざるを得なくなった場合は,先述の給付額の10分

の1に代えて4分の1とする。③使用人が自由刑に服役していた期間につい

ては補償を請求できない。

⑵ 使用人は,営業主からの請求により,営業主に対しその所得額に関する情

報を提供する義務がある。

第75条【競業の禁止の失効】⑴ 使用人が,営業主の契約違反のために第70条

及び第71条によって雇用関係を終了した場合,解約告知の時から1か月以内

に,使用人が書面によって合意に拘束されない旨を表示した場合,競業の禁

止は無効となる。

⑵ ①営業主の側から雇用契約を終了した場合,競業の禁止は前項と同様の方

法により無効となる。ただし,雇用契約の終了につき使用人個人に重大な原

因があった場合,又は営業主が書面をもって,使用人が最後に取得した契約

上の給付額全額を競業禁止期間にも支払う旨誓約した場合は,この限りでな

い。②後者の場合,第74b条の規定を準用する。

⑶ 営業主が,使用人の契約違反により第70条及び第72条の規定に基づいて雇

用関係を解消した場合,使用人に補償請求権はない。

第75a条【営業主による競業の禁止の放棄】 営業主は,雇用契約の終了前に,

書面による表示をもって,競業の禁止を放棄することができる。このとき,

営業主の意思表示後1年を経過すれば,営業主は補償金支払義務を免れる。

第75b条(削除)

第75c条【違約金】⑴ ①商業使用人が,合意により負担した義務の不履行が

あった場合違約金を支払う旨約束したとき,営業主は民法典第340条の規定

に従った態様による場合にのみこれを請求できる。②不当に多額の違約金の

減額に関する民法典の規定の適用は影響を受けない。

⑵ 合意による義務が営業主の使用人に対する補償金支払義務にかからしめら

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れていない場合で,使用人が第1項による違約金に服する場合,営業主は,

課している違約金のみ請求できる。履行の請求やその他の損害賠償を請求す

ることはできない。

第75d条【逸脱した合意】 ①営業主は,第74条から第75c条の規定から逸脱し

て,商業使用人に対して不利益となるような合意を援用することはできな

い。②相殺又はその他の方法によって,賠償額の最低限度に関する法の規定

を回避しようとする合意についても同様である。

第75e条(削除)

第75f条【使用者間の封鎖協定】 ①営業主が,他の営業主に対して,当該他の

営業主のもとで雇用されている使用人を雇用しない,あるいは特別な条件の

下でのみ雇用するとの義務を負う旨合意をした場合,両当事者は自由にこの

合意を解約することができる。②この合意からは何らの訴権も抗弁も発生し

ない。

第75g条【媒介使用人】 ①第55条第4項の規定は,営業主の営業所の外でそ

の事業を媒介する権限を有する商業使用人にも適用される。②その権限に対

する制限は,第三者がこれを知り,又は知り得べき場合にのみ対抗できる。

第75h条【代理権の不存在につき善意の場合】⑴ 商業使用人が,営業主の営

業所の外で取引を媒介するのみの権限を有しているにもかかわらず,営業主

の名義で取引を締結してしまった場合であって,かつ,第三者がその代理権

限の不存在を知らなかった場合,営業主は,当該取引の締結及び重要事項に

つき商業使用人又は第三者から通知を受けてから遅滞なく取引を否認しなけ

れば,当該取引について承認したものとみなす。

⑵ 商業使用人が取引締結の権限を持ちつつ,営業主の名前で締結する代理権

を持っていなかった場合に,営業主の名前で取引を行ったときも同様であ

る。

第76条から第82条(削除)

第82a条【無給の見習いの競業の禁止】 徒弟として雇用された場合を除き,

職業訓練のために無給で商人の営業に労務を提供するもの(見習い)に対す

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る競業の禁止は,商業使用人に支払われるべき報酬に関する部分以外の点に

つき,商業使用人の規定が適用される。

第83条【その他の従業員】 商業を営むに当たり,商人的な労務以外を提供す

る者については,その者の労務関係において適用される規定のみが適用され

る。

第7章 代理商

第84条【代理商の定義】⑴ ①代理商は,独立の営業主体として,常時,他

の営業主(委託者)のためにその取引を媒介し,又は委託者の名前で契約を

締結する権限を有する者である。②「独立」とは,ある人が本質的に自由に

その活動と労働時間を決定できることを指す。

⑵ 前項の意味における独立性を持たず,常時,委託者のためにその取引を媒

介し,又は委託者の名前で契約を締結する権限を有する者は,従業員とみな

す。

⑶ 委託者も代理商となり得る。

⑷ 本章の規定は,代理商の委託者が,その事業の種類及び規模ゆえに商人的

に組織された方法で営業することを必要としない場合においても適用され

る。

第85条【契約書類】 ①いずれの当事者も,契約内容及びその他契約に関する

追加的な合意につき,相手方当事者の署名を付した書面を要求できる。②こ

の請求権は契約によって排除できない。

第86条【代理商の義務】⑴ 代理商は契約の媒介又は締結に尽力する義務が

ある。その際,代理商は委託者の利益のために行動しなければならない。

⑵ 代理商は委託者に対し,必要な事項を通知しなければならない。特に,取

引の媒介又は締結をした場合はその都度,遅滞なく署名を付した上で通知し

なければならない。

⑶ 代理商は,通常の商人が持つべき注意義務を尽くさなければならない。

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⑷ 本条第1項及び第2項に反するいかなる合意も効力を有しない。

第86a条【委託者の義務】⑴ 委託者は代理商に,見本,図面,価格表,広告

印刷物,取引条件などその職務の遂行に必要な書類を,自由に利用させなけ

ればならない。

⑵ ①委託者は代理商に必要な情報を通知しなければならない。②特に代理商

が媒介した取引や代理権のないまま締結した取引につき承諾するのか拒絶す

るのかを,遅滞なく通知しなければならず,また代理商が媒介又は締結した

取引に不履行があったときも,速やかに通知しなければならない。③さら

に,委託者としては,代理商が通常の状況下で期待できる場合よりも相当小

さい範囲においてのみ,契約締結できる,又はその意思があるという場合

も,遅滞なく代理商に通知しなければならない。

⑶ 第1項及び第2項に反する合意は効力を有しない。

第86b条【履行補償手数料】⑴ ①代理商が取引から生じる義務の履行を保障

した場合,代理商は特別の報酬(履行補償手数料)を請求することができる。

この請求権は事前に排除することはできない。②履行補償は,代理商が媒介

又は締約した特定の取引についてのみ,あるいは特定の第三者との間の取引

についてのみ,引き受けることができる。③この引受けは書面によりなされ

なければならない。

⑵ 履行補償手数料の請求権は取引の締約時に発生する。

⑶ ①第1項の規定は,委託者又は第三者の営業所,又は営業所がない場合に

はその住所地が外国にあるとき,適用されない。②さらに,代理商に契約締

結及び履行に関する制限のない代理権がある場合,その契約には適用されな

い。

第87条【手数料支払義務のある取引】⑴ ①代理商は,代理商契約関係の存

続期間中に,その職務遂行により契約締結に寄与し,あるいは同種の取引の

際に顧客として獲得した第三者と契約を締結したことにより,締約された全

ての取引につき,手数料請求権がある。②手数料が本条第3項により,元代

理商に帰属する場合には,手数料請求権は認められない。

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⑵ ①代理商に特定の地域又は特定の顧客層が割り当てられているとき,代理

商契約関係において指定された地域又は顧客層の相手方の協力なくなされた

取引についても,手数料請求権がある。②ただし,手数料が第3項により元

代理商に支払われるべきであるときには適用されない。

⑶ ①代理商契約関係が終了した後に締結された取引について,代理商は次の

場合にのみ手数料請求権を有する。

⒈ 代理商が取引を媒介し,又は開始し準備して,その取引の締結につき主

として当該代理商の働きに帰せられる場合で,かつ,代理商契約関係の終

了から合理的な期間内に取引が締結されている場合,又は,

⒉ 代理商契約の終了の前に,第三者から,第1項又は第2項第1文により

代理商が手数料請求権を持ち得るような取引の締結申込み,代理商又は委

託者がその申込みを受領していた場合

②特定の状況下において,承継した代理商に対しても公平性の見地から手数

料を割合的に支払うべき場合,承継した代理商にも第1項による手数料請求

権は,割合に応じて帰属する。

⑷ 取引締結時における手数料請求権に加えて,代理商が取立てを委任されて

これを行ったときにはその集金額について,代理商は,取立手数料請求権も

有する。

第87a条【手数料支払の弁済期】⑴ ①代理商は,委託者が取引を実行したら

直ちに,そしてその限りにおいて,手数料請求権を取得する。②これと異な

る合意をすることはできるが,委託者による取引の実行についての相当範囲

での前払請求権につき,遅くともその1か月後の末日をもってその弁済期と

する。③しかし,いかなる合意ともかかわりなく,代理商は,第三者が取引

を締結したら直ちに,そしてその限りにおいて,手数料請求権を取得する。

⑵ 第三者が履行しないことが確実である場合,手数料請求権は発生しない。

既に受け取った金額は返還すべきものとする。

⑶ ①代理商は,委託者が取引を履行しないことが確実であるとき,又は一部

のみ履行することが確実であるとき,あるいは合意した方法で履行しないこ

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とが明らかであるときもまた,手数料請求権を有する。②ただし,不履行が

委託者の支配の及ばない理由に基づく場合に限り,手数料請求権は発生しな

い。

⑷ 手数料は,第87c条第1項により,その請求額の計算がなされた月の末日

を弁済期とする。

⑸ 本条第2項前段,第3項,第4項に反する合意は,代理商にとって不利益

なものである場合,無効となる。

第87b条【手数料額】⑴ 手数料額が特定されていない場合,通常の価額によ

り合意されたものとみなす。

⑵ ①手数料は,第三者又は委託者が支払う義務のある価額をもとに計算され

るべきものとする。②現金払による割引は控除されない。同様に,運送費,

梱包費,関税及び税金のような雑費についても,個別に第三者の負担とする

のでない限り,控除されない。③売上税については,税法上の規定に基づき

計算書の中で別個に示されているだけである場合には,区別して負担させる

べきものではない。

⑶ ①特定期間の使用・用益貸借契約については,手数料は契約期間における

対価として計算される。②契約期間が特定されていない場合,第三者が契約

を終了できる時点までの対価として計算される。代理商は,契約が更新され

ると,それに基づき計算された追加の手数料の請求権を有する。

第87c条【手数料の精算】⑴ ①委託者は,毎月,代理商に支払うべき手数料

額について精算しなければならない。精算のための積算期間は最長3か月ま

で伸張できる。②精算は,遅滞なく,遅くとも翌月の末日までになされなけ

ればならない。

⑵ 代理商は,精算の際,第87条により付与される手数料に関する全ての取引

についての帳簿の抄本を請求できる。

⑶ さらに,代理商は,手数料請求権やその弁済期,及び手数料額に関する重

要事項の全てに関する情報を請求することができる。

⑷ 帳簿の抄本の請求が拒絶され,あるいは精算や帳簿の抄本の正確性や完全

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性に合理的理由をもって疑念がある場合,代理商は,委託者の選択に基づ

き,代理商自身,又は代理商が指定した公認会計士又は宣誓した帳簿鑑定者

が,取引台帳,あるいは精算又は帳簿の正確性や完全性に関する正当性を確

認するために必要な範囲でその他の書類の閲覧することを認めるよう,請求

できる。

⑸ 代理商のこれらの権利は排除したり制限したりすることはできない。

第87d条【費用の償還】 代理商は,商慣習上,通常と認められる範囲で取引

行為により生じた費用のみを請求できる。

第88条(削除)

第88a条【留置権】⑴ 代理商は,事前に法定の留置権を放棄することはでき

ない。

⑵ 契約関係の終了により,代理商は,弁済期の到来した手数料請求権及び費

用償還請求権のためにのみ,一般規定に基づき発生する留置権によって,使

用していた書類(第86a条第1項)を留置し得る。

第89条【代理商契約の終了】⑴ ①代理商契約に特定の期間の定めがある場

合,契約期間が1年の場合は期間経過の1か月前,2年の場合は2か月前,

3年から5年の場合は3か月前の告知により解約できる。②5年以上の契約

期間の場合は6か月前の告知により解約できる。③解約の効果は,他に別段

の合意がなければ,その月の末日にのみ生じる。

⑵ ①前項第1文・第2文による解約告知の期間は,合意により伸張できる。

また委託者からの解約告知の場合,代理商からの解約告知の場合よりも告知

期間を短縮することができない。②委託者からの解約につき告知期間を短縮

して合意した場合,それは代理商からの告知期間について合意したものとす

る。

⑶ ①特定の期間の定めのある契約関係において,契約期間の終了時に両当事

者が継続を合意した場合,期間の定めのない契約として延長されたものとみ

なす。②本条第1項第1文・第2文による契約終了のための解約告知期間の

算定については,契約関係のあった全期間を基準に決定される。

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第89a条【即時の解約告知】⑴ ①代理商契約関係は,重大な理由がある場合,

一定期間前の解約告知がなくとも,一方当事者から解約できる。②この権利

は排除も制限もできない。

⑵ 解約告知が,一方当事者の行為に起因する場合,当該当事者は他方当事者

に対し,契約関係の終了により生じた損害を賠償する義務がある。

第89b条【補償請求権】⑴ ①代理商は,契約期間の満了後,次の場合に限り,

委託者に相当額の補償を請求することができる。

⒈ 委託者が,代理商契約の終了後も,代理商が獲得した新規顧客との取引

関係から相当の利得を得ている場合,かつ,

⒉ 当該顧客との取引から代理商が取得できなくなった手数料など,補償の

支払につきあらゆる事情を勘案した上で公平であると評価される場合

②「新規顧客の獲得」について,代理商が既存の顧客との取引関係を相当程

度拡大させた場合は,新規顧客の獲得と経済的に同等のものと評価する。

⑵ 補償額は,代理商の活動期間の最終の5年間における年間手数料の平均

額,又は年間報酬の平均額を上限とする。契約期間が5年に満たない場合に

は,活動期間における平均額を適用する。

⑶ 次の場合には補償請求権は発生しない。

⒈ 代理商が契約関係を解約したとき。ただしその原因が委託者の行為によ

るものであるとの根拠があるとき,あるいは代理商がその年齢又は健康上

の理由から活動を継続できなくなったときを除く。

⒉ 委託者が代理商との契約関係を解約し,それが代理商の責めに帰すべき

行為を重大な理由とするとき,あるいは,

⒊ 第三者が代理商の代わりに契約に介入するとの合意が代理商と委託者と

の間にあることを理由とする場合。そのような契約は代理商契約関係の終

了前に取り決めることはできない。

⑷ ①補償請求権は事前に排除できない。②当該請求権は,代理商契約の終了

後1年以内に行使しなければならない。

⑸ ①本条第1項,第3項及び第4項は,保険代理商の場合にも適用され,「代

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理商が獲得した新規顧客との取引」を,「保険代理商が新たに媒介した保険

契約」に読み替える。また,保険代理商が既存の保険契約を相当程度拡張し

たことを,経済的には新規に保険契約を媒介したものと評価する点について

も同様である。②保険代理商の補償額は,第2項に代えて,3年分の年間手

数料又は年間報酬に相当する額を上限とする。③本項第1文及び第2文は住

宅貯蓄金融の代理商にも準用される。

第90条【取引及び業務上の秘密】 代理商は,委託者のための営業上の活動を

通じて,代理商に開示された,あるいは知るに至った取引上及び業務上の秘

密を,代理商契約終了後においても,利用したり第三者に伝えたりしてはな

らない。ただし,あらゆる事情からして,通常の商人が職業上当然に持ち得

る基準に相反する場合はこの限りでない。

第90a条【競業に関する合意】⑴ ①代理商がその契約関係終了後においてそ

の営業上の活動を制限する合意は(競業制限特約),書面によってなされな

ければならず,契約条項を記載した書面に委託者が署名した上で,代理商に

交付されなければならない。②この合意は,代理商契約の終了から長くとも

2年を超えない期間においてのみ設定できる。合意は,代理商に割り当てら

れた地理的範囲,あるいは顧客の範囲についてのみ設定されるものとし,か

つ,代理商が委託者のために媒介又は締結に尽力した取引の種類についての

み設定できるものとする。③委託者は代理商に対し,競業を制限する期間に

つき合理的な額の補償金を支払う義務がある。

⑵ 委託者は,代理商契約の終了までに,文書で,競業の制限を有効に放棄す

ることができる。そのような意思表示から6か月の期間の経過後に,委託者

は補償金の支払を免れることができる。

⑶ 代理商契約の一方当事者が,他方当事者の責めに帰すべき重大な理由か

ら,代理商契約を解消した場合,その者が解約後1か月以内に書面によって

意思表示すれば,競業制限特約の拘束を受けない。

⑷ これらの規定につき,代理商に不利益になるような合意をすることはでき

ない。

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第91条【代理商の代理権】⑴ 第55条の規定は,委託者から取引の締結の代理

権を与えられている代理商で,商人でないものにも適用される。

⑵ ①代理商は,取引を締結するための代理権を与えられていなくても,商品

の欠陥に関する通知,商品の処分に関する意思表示,及び,瑕疵ある給付か

ら生じる権利につき第三者が請求又は留保するための類似の意思表示につ

き,受領する権限があるものとされる。また,代理商は,委託者に属する権

利の証拠を保全することもできる。②この権利の制限は,第三者がこれを知

り又は知り得べき場合に限って,第三者に対抗できる。

第91a条【代理権の欠缺】⑴ 取引を媒介する権限のみ与えられている代理商

が,委託者の名前で契約を締結し,かつ,第三者が代理権の欠缺を知らなかっ

た場合で,代理商又は第三者から取引の締結及び重要な内容について知らさ

れた後に遅滞なく第三者に対して取引を拒絶しなかった場合には,取引は委

託者により同意されたものとみなす。

⑵ 代理商が締約代理商であっても,当該取引につき委託者の名で締結する代

理権を有していなかった場合に委託者の名前で取引を締結した時も同様であ

る。

第92条【保険代理商及び住宅貯蓄金融の代理商】⑴ 保険代理商とは,保険

契約を媒介又は締結するための権限を与えられている代理商である。

⑵ 保険代理商と保険者との契約関係には,本条第3項,第4項を除く他,代

理商と委託者との間の契約関係に適用される条項が適用される。

⑶ ①第87条第1項第1文にかかわらず,保険代理商は,その職務の遂行によ

る取引についてのみ手数料請求権を有する。②第87条第2項は保険代理商に

適用しない。

⑷ 保険代理商は,保険契約者が保険料を支払い次第,契約関係に基づき保険

料から算定される手数料を請求する権利(第87条第1項)を有する。

⑸ 本条第1項から第4項までの規定は,住宅貯蓄金融の代理商にも準用され

る。

第92a条【最低労働条件】⑴ ①契約により他の委託者のために活動すること

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が許されていない,あるいは取引活動の種類及び範囲からそれができない代

理商の契約関係について,連邦司法・消費者保護省は,連邦経済エネルギー

省と協力して,代理商団体及び委託者団体による公聴会を経た上で,委託者

が契約上給付すべき最低限度を確定し,これらの代理商や特定の代理商のグ

ループにとって社会的・経済的に必要な物資が確保されるように,法規命令

をもって整備することができる。このとき連邦参議院の承認を要しない。②

確定した給付額は,契約によって排除することも制限することもできない。

⑵ ①前項の規定は,一つ又は複数の契約に基づき,同一の保険コンツェルン

又は既存の組織共同体に属している複数の保険者のために,取引を媒介又は

代理する権限を有する保険代理商にも適用される。ただし,これらの保険者

のうちの一つとの契約関係の終了が,他の保険者との契約関係の終了に影響

を及ぼし得る場合に限る。②さらにこの場合において,全ての保険者が連帯

して又は分割して,あるいは保険者のうちの一人によって確定された給付が

履行されること,及びどのようにして彼らに対する補償が実行されるべきか

について,連邦参議院の承認を要することなく法規命令をもって定めること

ができる。

第92b条【副業としての代理商】⑴ ①第89条及び第89b条の規定は,副業と

して代理商を行う者に適用されない。②契約関係に期間の定めがないとき,

1か月前に解約告知をした上で,暦月の末日に契約を解約することができ

る。解約告知期間として別の合意をする場合,両当事者について同じ内容で

なければならない。③第87条第1項第2文による相当額の前払請求権は合意

によっても排除されない。

⑵ 第1項の規定は,明示的に副業の代理商として,取引の媒介又は代理の権

限を付与した委託者のみが,援用できる。

⑶ 代理商が副業の代理商としてのみ活動するか否かは,取引通念に従い決せ

られる。

⑷ 第1項から第3項までの規定は保険代理商及び住宅貯蓄金融の代理商に準

用される。

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第92c条【欧州共同体の代理商,海事代理商】⑴ 代理商が,その契約上,委

託者のためになすべき活動を欧州共同体圏外で執行しなければならないと

き,又は欧州経済圏協定の他の締約国で執行しなければならないとき,本章

の全ての条項は,本章とは異なる合意をすることができる。

⑵ 代理商が,船積,通関,又は船舶の艤装,あるいは航路の予約に関する取

引を媒介又は代理する権限を与えられた者であるときも,同様に適用され

る。

第8章 商事仲立人

第93条【定義】⑴ 契約関係に固定されることなく,業として他人のために,

物品又は有価証券の買入又は売却,貨物運送,船舶賃貸借,又はその他商取

引の対象とされている事柄につき,仲介を引き受けている者は,商事仲立人

の権利義務を有する。

⑵ 上記に掲げた行為以外の仲介,特に不動産に関する取引の仲介について

は,商事仲立人により行われたとしても,本章の規定の適用はない。

⑶ 本章の規定は,商事仲立人の企業が,その種類及び量において,商人的に

組織化された営業活動を必要としない場合であっても,適用される。

第94条【結約書】⑴ 商事仲立人は,当事者がその交付を免除せず,又は取

引目的物の種類からその地域の慣習上免除される場合を除き,取引の締結後

遅滞なく,自らの署名を付した結約書を両当事者に交付しなければならな

い。結約書には,両当事者の氏名,取引の目的物及び取引条件,特に物品又

は有価証券の販売の場合には,その種類及び量,並びに価額及び引渡時期に

ついて記載されていなければならない。

⑵ 直ちに履行すべき取引ではない場合,結約書は両当事者に署名のために交

付することを要する。このとき,それぞれ一方当事者の署名済みの結約書が

他方当事者に送付されるものとする。

⑶ 一方当事者が結約書の受取又は署名を拒否したとき,商事仲立人は他方当

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事者に遅滞なく通知しなければならない。

第95条【通知の留保】⑴ 商事仲立人が一方当事者の氏名の表示を留保した

結約書を,他方の当事者が受け取ったとき,後日結約書に当事者氏名を記載

されるべき当事者と取引を締結したものとする。ただし,相応の理由を持っ

て当事者が異議を申し立てる場合はこの限りではない。

⑵ 他の当事者の氏名は,その地域の商慣習に基づく期間内に記載されなけれ

ばならない。そのような期間がない場合には,個別の事情において合理的な

期間内に記載されるものとする。

⑶ ①当事者の氏名が明かされないままのとき,あるいは記載された者又は会

社に対して異議を申し立てる相応の理由があるとき,当事者は商事仲立人に

対し,取引の履行を請求することができる。②当事者が商事仲立人の催告に

対し,履行請求の有無につき遅滞なく意思表示を行わなかった場合,この請

求権は排除される。

第96条【見本の保管】 ①商事仲立人は,当事者双方が免除し,又は取引目的

物の種類からその地域の商慣習上免除される場合を除き,仲立人の媒介によ

り見本売買によって販売された商品の見本の交付を受けている場合,商品が

品質に関する異議を申し立てられることなく受領され,又は他の方法により

取引が完了したといえるまで,これを保管しなければならない。②商事仲立

人は見本を識別できるようにしておかなければならない。

第97条【集金に関する権限の不存在】 商事仲立人は,支払の受領,又は契約

によって定められたその他の給付を受領する権限を有しないものとみなす。

第98条【両当事者に対する責任】 商事仲立人は,両当事者の双方に対して,

自己の過失によって生ずる損害につき責任を負う。

第99条【両当事者に対する報酬請求権】 当事者間でいずれが仲立人に報酬を

支払うべきかにつき特に合意をしていなければ,これと異なる地域の商慣習

がない限り,両当事者が半額ずつ支払うものとする。

第100条【日記帳】⑴ ①商事仲立人は,日記帳を作成して,全ての締結した

取引に関し,日々記帳する義務を負う。②記帳は時系列で行われなければな

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らない。また第94条第1項に掲げる事項につき記載されなければならない。

③記帳につき,商事仲立人は毎日これに署名し,又は民法典第126条第1項

による電子署名を付さなければならない。

⑵ 商業帳簿の作成及び保存に関する第239条及び第257条の規定は,商事仲立

人の日記帳に適用される。

第101条【日記帳の抄本】 商事仲立人は,当事者の求めに応じていつでも,

当事者の双方に対して,日記帳の抄本を交付する義務を負う。その抄本に

は,商事仲立人の署名が付され,仲立人が媒介した取引に関して記載したあ

らゆる事項が含まれていなければならない。

第102条【訴訟手続における文書提出】 訴訟係属中,裁判所は,当事者から

の請求がない場合でも,結約書,その抄本,その他の証拠と比較するために

日記帳の提出を命じることができる。

第103条【秩序違反行為】⑴ 商事仲立人が以下の行為をした場合は,秩序違

反行為とする。

⒈ 故意又は過失によって,締結された取引に関する日記帳を作成・保存せ

ず,又は第100条第1項により指定された手法に従った日記帳を作成しな

かった場合,又は,

⒉ 法定の保存期間の終了前に日記帳を破棄した場合

⑵ 秩序違反行為があった場合,5000ユーロまでの過料に処することができる。

第104条【小規模商事仲立人】 ①小規模な商品取引の媒介を行う者に対して,

結約書及び日記帳に関する規定は適用されない。②保険契約及び住宅貯蓄契

約の媒介を行う者に対して,日記帳に関する規定は適用されない

第9章 過料規定

第104a条(過料規定)⑴ ①故意又は過失によって第8b条第3項第1文第2

号に掲げられた事項につき記載していない場合,又は記載が不正確,あるい

は不完全である場合には,秩序違反行為があったものとする。②秩序違反行

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為に対しては,20万ユーロまでの過料に処することができる。

⑵ 秩序違反行為法第36条第1項第1号の意味における行政庁は,連邦金融監

督庁とする。

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第2編 商事会社及び匿名組合

第1章 合名会社

第1節 会社の設立

第105条【合名会社の概念・民法典の適用】⑴ 共通の商号の下で商業を営む

ことを目的とする会社であって,いずれの社員も会社債権者に対する責任を

制限されないものは,合名会社とする。

⑵ ①その営業が第1条第2項によっても商業とされない会社,又はただ自己

の財産を管理するのみの会社は,その企業の商号が商業登記簿に登記されて

いる場合に限り,合名会社となる。②第2条第2文及び第3文は,この場合

に準用する。

⑶ 民法典の組合に関する規定は,本章に異なる定めがない限り,合名会社に

適用する。

第106条【商業登記簿への申請】⑴ 会社は,その本拠を管轄する裁判所に対

し,商業登記簿への登記のために申請を行わなければならない。

⑵ 申請は,次の内容を含まなければならない。

⒈ 各社員の姓,名,生年月日,及び居住地

⒉ 会社の商号,本拠地,及び内国の事業上の住所

⒊ (削除)

⒋ 社員の代表権

第107条【申請を要する変更】 会社の商号を変更する場合,会社の本拠を異

なる場所に移転する場合,内国の事業上の住所を変更する場合,新たに社員

が加入する場合,又は社員の代表権を変更する場合,いずれも商業登記簿へ

の登記のために申請を行わなければならない。

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第108条【全社員による申請】 申請は,総社員により行われなければならない。

第2節 社員相互間の法律関係

第109条【定款】 社員相互間の法律関係は,定款に従う。第110条から第122条

までの規定は,定款が異なる定めを置いていない場合に限り,適用される。

第110条【費用及び損失の補償】⑴ 社員が,会社に関する事項につき,その

状況に応じ必要と判断される費用を投下し,又は業務執行ないしこれと不可

分の危険により損失を負担した場合,会社は当該社員に対しこれを補償する

義務を負う。

⑵ 会社は,費用として投下された金銭について,その費用投下の時点から利

息を付す義務を負う。

第111条【利息を付す義務】⑴ 適時に金銭の出資を行わず,受け取った会社

の金銭を適時に会社の金庫に引き渡さず,又は権限なく会社の金庫から自己

のために金銭を引き出した社員は,出資が行われるべきであった日,金銭の

引渡しがなされるべきであった日,若しくは金銭の引き出しがなされた日か

ら利息を支払わなければならない。

⑵ その他の損害の主張は,排除されない。

第112条【競業の禁止】⑴ 社員は,他の社員の承諾を得ることなく,会社の

事業の部類に属する取引に参加し,又は他の同種の商事会社に人的に責任を

負う社員として参加することはできない。

⑵ 社員が他の会社に入社する場合において,他の社員が当該社員が人的に責

任を負う社員として参加することを知っており,かつ,それにもかかわらず

当該出資を断念すべきことが明示に約されない場合,当該社員による他の会

社への入社の承諾が与えられたものとみなす。

第113条【競業の禁止に対する違反】⑴ 社員が第112条により課された義務

に違反した場合,会社は損害賠償を請求することができる。会社は,損害賠

償請求に代わり,当該社員に対して,当該社員が自らの計算で行った取引を

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会社の計算で行った取引とみなし,かつ,第三者の計算で行われた取引に関

する報酬を引渡し,又は当該報酬に対する当該社員の請求権を移転するよう

請求することができる。

⑵ 会社による請求権の主張は,その他の社員の決議により行う。

⑶ 当該請求権は,取引の締結又は社員による他会社への参加をその他の社員

が認識した時点,若しくは重過失がなかったならばこれを認識できた時点か

ら3か月の経過をもって時効により消滅する。当該認識があった場合又は重

大な過失により認識できなかった場合でも,当該請求権の発生時から5年の

経過をもって時効により消滅する。

⑷ 社員による会社解散を求める権利は,これらの規定により影響を受けな

い。

第114条【業務執行】⑴ 会社の業務執行は,全ての社員がその権限を有し,

またその義務を負う。

⑵ 定款の定めにより業務執行を一又は複数の社員に委任した場合,その他の

社員は業務執行から排除される。

第115条【複数社員による業務執行】⑴ 業務執行の権限が全社員又は複数の

社員に属する場合,当該社員の各自が一人でこれを行う権限を有する。ただ

し,その他の社員がある行為の実行に異議を唱えた場合,当該行為は行われ

てはならない。

⑵ 定款の定めにより業務執行の権限を有する社員が共同でのみ行為できる場

合,各業務は業務執行の権限を有する全ての社員の同意を要する。ただし,

危険が差し迫っている場合はこの限りでない。

第116条【業務執行の権限の範囲】⑴ 業務執行の権限は,会社の商業にかか

る通常の業務に当然に随伴する全ての行為に及ぶ。

⑵ これを越える行為の実行は,総社員の決議を要する。

⑶ ①支配人の選任は,業務執行の権限を有する全ての社員の同意を要する。

ただし,危険が差し迫っている場合はこの限りでない。②支配権の撤回は,

当該権限の付与にかかる権限ある社員又は当該権限の付与に関与する権限の

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ある社員のいずれかにより行うことができる。

第117条【業務執行の権限の剝奪】 業務執行の権限は,重大な事由がある場

合,他の社員の申立てに基づき,裁判上の決定により,社員からこれを奪う

ことができる。当該重大な事由とは,特に重大な義務違反がある場合,又は

秩序に従った業務執行をする能力を欠く場合をいう。

第118条【社員の監督権】⑴ 社員は,業務執行から排除された場合であって

も,会社に関する事項について情報を獲得し,会社の商業帳簿及び書類を閲

覧し,かつ,これらを用いて貸借対照表並びに年次決算を作成することがで

きる。

⑵ 前項の権利を排除し又は制限する合意がある場合でも,不誠実な業務執行

がなされたとの理由が存在する場合,当該権利の主張は妨げられない。

第119条【決議】⑴ 社員により決議をすべき場合,当該決議に関与するため

に招集された社員全員の同意を要する。

⑵ 定款の定めにより多数決により決定をすべきものとされた場合であっ

て,疑義が生じた場合,その多数は社員の数に従い計算する。

第120条【利益及び損失】⑴ 各事業年度末に貸借対照表に基づき当該年度の

利益又は損失を確定し,各社員のこれに対する割合を計算する。

⑵ ある社員に帰属すべき利益は,当該社員の資本持分に繰り入れる。ある社

員が負担すべき損失及び当該事業年度において資本持分から引き出された金

銭は,当該資本持分から控除する。

第121条【利益及び損失の分配】⑴ ①年次の利益から,まず各社員の資本持

分の100分の4の額に当たる分配分が,各社員に帰属する。②年次の利益が

これに足りない場合,当該分配分は,比例的に低い割合により定められる。

⑵ ①第1項により社員に帰属すべき利益の分配分を計算するに際し,当該社

員が年度内に出資として行った給付がある場合,当該給付時から経過した期

間を割合的に考慮する。②当該社員が年度内に金銭を資本持分から引き出し

た場合,当該引出額は当該引出しまでに経過した期間に従って割合的に考慮

する。

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⑶ 第1項及び第2項により計算された利益の分配分を越える年次利益の部

分,及び当該事業年度の損失は,社員の頭数に従い分配する。

第122条【金銭の引出し】⑴ 各社員は,直近の事業年度において確定された

自らの資本持分の100分の4の額に至るまで,自らの負担において,会社金

庫より金銭を引き出す権限を有し,及び会社に明白な損害をもたらすもので

ない限り,当該額を超えて前年度利益に対して有する割合分の支払を求める

こともできる。

⑵ 以上の場合を除くほか,社員は,他の社員の同意なしに自己の資本持分を

減ずることはできない。

第3節 社員の第三者に対する法律関係

第123条【第三者に対する関係での効力】⑴ 合名会社の効力は,第三者との

関係では,当該会社が商業登記簿に登記された時点をもって生じる。

⑵ 会社がその業務を登記の前に開始した場合,会社の効力は当該業務開始の

時点で生じる。ただし,第2条又は第105条第2項により異なる結果が生じ

ない場合に限る。

⑶ より遅い時点で会社を開始する旨の合意は,第三者に対しては効力を生じ

ない。

第124条【法的独立性,会社財産に対する強制執行】⑴ 合名会社は,自己の

商号の下で権利を取得し,債務を負い,不動産に対する所有権その他物的権

利を取得し,裁判上訴え,又は訴えられることができる。

⑵ 会社財産に対する強制執行を行うには,会社に対し裁判に基づく執行可能

な債務名義を要する。

第125条【会社の代表】⑴ 各社員は,会社を代表する権限を有する。ただし,

定款の定めにより当該社員が代表権から排除されている場合を除く。

⑵ ①定款の定めにより,全社員又は複数の社員が共同してのみ会社を代表す

ることができる旨定めることができる(共同代表)。②共同代表の権限を与

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えられている社員は,当該社員のうち個別の者に特定の業務又は特定の種類

の業務を行う権限を与えることができる。③会社に対する意思表示がなされ

るべき場合,代表に関して協働する権限ある社員の一人に対して意思表示が

なされれば足りる。

⑶ ①複数の社員が共同して行為をしない場合,定款の定めにより,社員が支

配人と共同してのみ会社を代表することができる旨定めることができる。第

2項第2文及び第3文はこの場合に準用する。

第125a条【業務信書における明示事項】⑴ ①特定の受領者に向けた形式を

有する会社の全ての業務信書は,等しく会社の法的形式及び本拠,登記裁判

所,並びに会社の商業登記簿における登記番号を明示しなければならない。

②社員に自然人を有しない会社においては,以上に加え業務信書において,

社員の商号,及び有限会社法第35a条又は株式法第80条により業務信書につ

いて規定する事項を当該社員に関して明示しなければならない。③会社の社

員に合名会社又は合資会社が存在し,当該合名会社又は合資会社において人

的責任を負う社員が自然人である場合,第2文による明示は要しない。

⑵ あらかじめ印刷された書式用紙又は注文票については,第37a条第2項及

び第3項を,会社の代表権を有する社員又はその機関上の代表者及び清算人

に対する過料については,第37a条第4項を準用する。

第126条【代表権の範囲】⑴ 社員の代表権は,不動産の譲渡及び負担,並び

に支配権の付与及び撤回を含め,全ての裁判上及び裁判外の業務及び法的行

為に及ぶ。

⑵ 代表権の範囲の制限は,第三者に対して効力を有しない。これは,特に代

表権が特定の業務及び業務の種類にのみ及ぶとする制限,又は代表権が特定

の状況,あるいは特定の時ないし個別の場所においてのみ生ずるとする制限

に妥当する。

⑶ 会社の複数の営業所のうちの一にかかる営業に代表権が制限される場

合,第50条第3項の規定を準用する。

第127条【代表権の剝奪】 代表権は,重大な事由がある場合,他の社員の申

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立てに基づき,裁判上の決定により,ある社員からこれを奪うことができ

る。当該重大な事由とは,特に重大な義務違反がある場合,又は秩序に従っ

た業務執行をする能力を欠く場合をいう。

第128条【社員の人的責任】 ①社員は,債権者に対して,会社の債務につき,

連帯債務者として人的に責任を負う。②これに反する合意は,第三者に対し

ては効力を有しない。

第129条【社員の抗弁】⑴ 会社の債務について社員に対する請求が行われた

場合,当該社員は,自己の人的な理由に基づかない抗弁であって,会社であ

れば提出できたであろうものに限り,主張することができる。

⑵ 社員は,会社の債務の基礎となる法律行為を取り消す権利が会社に属する

場合,債権者に対する弁済を拒むことができる。

⑶ 社員は,債権者が会社の弁済期にある債権との相殺を通じて満足を受けら

れる場合,同様に相殺をなす権限を有する。

⑷ 社員に対する強制執行は,会社に対する裁判に基づく執行可能な債務名義

により行うことはできない。

第129a条(削除)

第130条【加入社員の責任】⑴ 既に存在する会社に入社する者は,第128条及

び第129条の基準に従い,自らの入社より前に確定した会社の債務について,

商号の変更の有無にかかわらず,他の社員と同様に責任を負う。

⑵ これに反する合意は,第三者に対しては効力を有しない。

第130a条【支払不能又は債務超過時の倒産手続申立義務】⑴ ①社員に自然

人を有しない会社において,支払不能となり又は債務超過の状態となった後

は,会社の代表権を有する社員の機関上の代表者及び清算人は,会社のため

に支払を行ってはならない。②当該時点の後であっても,秩序に従い誠実な

業務管理者の注意義務に合致する支払については,この限りでない。③社員

に対する支払は,これが会社の支払不能を惹起すべきものである限りにおい

て,第1文と同様とする。ただし,第2文に示す注意義務を考慮しても,認

識できなかった場合にはこの限りでない。④第1文から第3文は,会社の社

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員に合名会社又は合資会社が存在し,当該合名会社又は合資会社において人

的責任を負う社員が自然人である場合,適用しない。

⑵ ①倒産法第15a条第1項に反し倒産手続開始の申立てがされず又は適時に

されない場合,若しくは第2項に反し支払がされた場合,会社の代表権を有

する社員の機関上の代表者及び清算人は,会社に対し,連帯債務者としてこ

れにより生じた損害を賠償する義務を負う。②これらの者が,秩序に従い誠

実な業務管理者の注意義務を尽くしたか否かに争いがある場合,これらの者

が立証責任を負う。③当該損害賠償義務は,社員との合意により制限し又は

排除することはできない。④会社債権者に対する弁済のために損害賠償が必

要である場合,当該損害賠償義務は,会社が放棄又は和解をなし,若しくは

社員の決議により消滅させることはできない。⑤損害賠償義務者が支払不能

であり,かつ,倒産手続の適用によりその債権者との合意が成立した場合,

又は損害賠償義務が倒産計画により規律される場合,第4文は適用しない。

⑥本条による請求権は,5年の経過をもって時効により消滅する。

⑶ 第1項及び第2項にいう機関上の代表者が社員に自然人を有しない会社で

ある場合,又は同様の会社の結合が連なる場合,その趣旨に従い本条を適用

する。

第130b条(削除)

第4節 会社の解散及び社員の退社

第131条【解散事由】⑴ 合名会社は,次の場合に解散する。

⒈ 会社が存続する期間の満了

⒉ 社員の決議

⒊ 会社財産に対する倒産手続の開始

⒋ 裁判上の決定

⑵ ①人的責任を負う社員が自然人ではない合名会社は,次の場合にも解散す

る。

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⒈ 財団不足により倒産手続の開始が拒絶される旨の決定の法的効力

⒉ 家事事件及び非訟事件の手続に関する法律第394条に基づく財産欠如

(Löschung)

②人的責任を負う社員が他の合名会社又は合資会社であって,その人的責任

を負う社員が自然人である場合,これは適用しない。

⑶ ①特段の契約上の定めがない場合,社員は次の事由により退社する。

⒈ 社員の死亡

⒉ 社員の財産に対する倒産手続の開始

⒊ 社員による解約告知

⒋ 社員の私的債権者による解約告知

⒌ 定款で予定された事情の発生

⒍ 社員の決議

②社員は当該事由の発生をもって退社するが,解約告知の場合,解約告知期

間の経過前には退社しない。

第132条【社員の解約告知】 会社が期間の定めなく存続する場合,社員の解

約告知は,事業年度の終了をもってのみこの効果が生じる。当該解約告知

は,効果発生の時点より少なくとも6か月前に行われなければならない。

第133条【裁判上の決定による解散】⑴ 重大な事由が存する場合,社員の申

立てに基づき,裁判所の決定により,定められた存続期間の経過前又は存続

期間の定めのない会社の場合でも会社の解散を宣告することができる。

⑵ 当該重大な事由が特に存在する場合とは,他の社員が故意又は重大な過失

により定款の規定により自らに課された本質的な義務に違反し,又は当該義

務の履行が不可能な場合をいう。

⑶ 社員の会社解散を請求する権利を排除し,又は本規定に反してこれを制限

する合意は,無効とする。

第134条【社員の生存期間にかかる会社,会社の継続】 社員の生存期間を存

続期間とする会社,又は存続期間の経過後もそのまま継続している会社は,

第132条及び第133条の定める存続期間の定めのない会社と同様に扱う。

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第135条【私的債権者による解約告知】 社員の私的債権者において,直近の

6か月間以内に社員の動産に対する強制執行が成功しなかった後,単なる仮

執行力にとどまらない執行力ある債務名義に基づき,財産分割の手続により

社員に属する財産への請求権の差押え及び転付を得た場合,当該私的債権者

は,会社の存続期間の有無にかかわらず,事業年度終了の6か月前に,事業

年度終了時点で解約する旨の告知を会社に対して行うことができる。

第136条から第138条(削除)

第139条【相続人との継続】⑴ 定款の規定により社員の死亡時においてその

相続人と会社を継続することとした場合,各相続人は,会社にとどまるにあ

たり,従前の利益持分を保持しつつ,有限責任社員としての地位が認めら

れ,かつ,被相続人の出資のうち,自らの相続分を有限責任社員としての出

資とすることを条件とすることができる。

⑵ 他の社員が相続人による当該申立てを認めない場合,当該相続人は,解約

告知期間を設けることなく退社の意思表示をすることができる。

⑶ ①本条の権利は,相続人において,その相続開始を知った時から3か月の

期間内にのみ行使することができる。②期間の経過に関しては,時効に関し

て適用される民法典第210条の規定を準用する。③相続の放棄にかかる権利

が3か月の経過の時点でなお失われていない場合,本条の期間は相続放棄期

間の満了前には終了しない。

⑷ 第3項の期間内に相続人が退社した場合,又は当該期間内に会社が解散

し,若しくは相続人に有限責任社員としての地位が認められた場合,当該相

続人は,その時点までに発生した会社債務について,民法典の相続財産債務

に対する相続人の責任に関する規定の基準に従い,責任を負う。

⑸ 定款の規定により,第1項から第4項の規定の適用を排除することはでき

ない。ただし,相続人が会社にとどまる条件を有限責任社員としての地位が

認められることにかからせた場合において,当該相続人の利益持分を被相続

人の利益持分と区別して定めることはできる。

第140条【社員の除名】⑴ ①第133条の規定により,会社の解散を請求する

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権利を他の社員に認める事情がある社員に人的に生じた場合であって,裁判

所は,当該他の社員からのその旨の申立てがあった場合,会社の解散に代え

て,当該ある社員の会社からの除名を宣告することができる。②除名の訴え

は,除名後に社員が1名となることを妨げない。

⑵ 会社と除名される社員との間での財産分割については,除名の訴えが提起

された時点における会社の財産状態に従う。

第141条及び第142条(削除)

第143条【解散及び退社時の申請】⑴ ①会社の解散は,総社員により商業登

記簿への登記のため,申請がされなければならない。②これは,会社財産に

関する倒産手続の開始又は開始の拒絶(第131条第1項第3号及び第2項第

1号)の場合には適用しない。③この場合,裁判所は,解散及びその理由を

職権により登記しなければならない。④財産欠如による解散(第131条第2

項第2号)の場合,解散の登記は要しない。

⑵ 第1項第1文は,社員の会社からの退社に準用する。

⑶ 社員の死亡により解散又は退社の結果が生じる場合であって,特段の障害

により相続人との協働が妨げられている場合,申請に際して相続人との協働

がなくとも登記を行うことができる。

第144条【倒産後の会社の継続】⑴ 会社がその財産に対する倒産手続の開始

により解散したが,債務者の申立てにより当該手続が中止され,又は会社の

継続を予定する倒産計画の確認により当該手続が廃止された場合,社員は会

社の継続を決議することができる。

⑵ 当該継続は,総社員により商業登記簿への登記のため,申請がされなけれ

ばならない。

第5節 会社の清算

第145条【清算の必要性】⑴ 会社が解散した場合,社員間で財産分割の方法

について異なる方法を合意していないか,又は会社財産について倒産手続が

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開始していないのであれば,清算が開始する。

⑵ 社員の債権者の解約告知により,又は社員の財産に対し倒産手続が開始し

たことにより会社が解散した場合,当該債権者又は倒産管財人の同意がある

場合に限り,清算は中止する。倒産手続が自己管理とされている場合,債務

者の同意が倒産管財人の同意に代わる。

⑶ 財産欠如による解散を理由として会社が解散する場合,当該財産欠如によ

る解散の後,分配に足る財産の存在が明らかになった場合に限り,清算を行

う。

第146条【清算人の選任】⑴ ①清算が社員の決議を通じて行われない場合,

又は定款の規定により個別の社員又は第三者に委任されない場合,総社員が

清算人として清算を行う。②社員の複数の相続人は,共同で代理人を選任し

なければならない。

⑵ ①重大な事由がある場合,関係者の申立てに基づき,会社が本拠を有する

地を管轄する裁判所が清算人を任命する。この場合,裁判所は,社員ではな

い者を清算人として任命することができる。②当該関係者には,社員のほ

か,第135条の場合における解約告知を行った債権者が該当する。③第145条

第3項の場合,関係者の申立てに基づき,裁判所が清算人を任命しなければ

ならない。

⑶ 社員の財産について倒産手続が開始し,かつ,倒産管財人が選任された場

合,当該倒産管財人が社員の地位に就く。

第147条【清算人の解任】 清算人の解任は,第146条第2項及び第3項の定め

る関係者全員一致の決議によって行う。重大な事由がある場合,関係者の申

立てに基づき,裁判所により解任することもできる。

第148条【清算人の申請】⑴ ①清算人及びその代表権は,総社員により,商

業登記簿への登記のため,申請がされなければならない。②清算人及びその

代表権の変更の場合も同様とする。③社員の死亡の場合であって,特段の障

害により相続人との協働が妨げられている場合,申請が事実に合致している

ことを前提とできるならば,申請に際して相続人との協働がなくとも登記を

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行うことができる。

⑵ 裁判により選任された清算人の登記,及び裁判により行われた清算人の解

任の登記は,職権により行う。

⑶ (削除)

第149条【清算人の権限及び義務】 ①清算人は,継続中の取引を終了し,債

権を取り立て,その他の財産を金銭に換価し,かつ,債権者に弁済をしなけ

ればならない。不確定な状態にある取引を終了させるため,清算人は,新た

な取引を行うことができる。②清算人は,自らの任務の範囲において,会社

を裁判上及び裁判外で代表する。

第150条【複数の清算人】⑴ 複数の清算人が存する場合,清算に関する行為

は,各自の清算人がこれをすることができる旨の決定がない限り,共同での

みすることができる。

⑵ ①第1項の規定は,清算人のうち個別の者に特定の業務又は特定の種類の

業務を行う権限を与えることを妨げない。②会社に対する意思表示がなされ

るべき場合,第125条第2項第3文の規定を準用する。

第151条【権限の非限定】 清算人の権限の範囲の制限は,第三者に対しては

効力を有しない。

第152条【指示による拘束】 清算人は,これが裁判所により選任された場合

であっても,第146条第2項及び第3項の規定に基づく関係者において,業

務執行に関して全員一致で決議した指示を受け入れなければならない。

第153条【署名】 清算人は,清算商号として表示されるべき従前の商号に自

らの名を添書する方法により署名しなければならない。

第154条【貸借対照表】 清算人は,清算の開始及び終了に際して,貸借対照

表を作成しなければならない。

第155条【会社財産の分配】⑴ 債務の清算後に残存する会社財産は,最終の

貸借対照表に基づき明らかになる資本持分の割合に従い,社員間で分配す

る。

⑵ ①清算のために必要のない金銭は,事前に分配する。②弁済期の到来しな

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い債権又は争いのある債権に対する引当てのため,並びに最終の分配に際し

て社員に帰属すべき額の担保のため必要となる財産は,留保しなければなら

ない。③第122条第1項の規定は,清算の間,適用しない。

⑶ 会社財産の分配について社員間で争いが生じた場合,争いが解決するまで

分配を止めなければならない。

第156条【社員の法律関係】 清算の終了まで,従前の社員相互間の法律関係

及び会社の第三者に対する法律関係に関する第2節及び第3節の規定は,本

章又は清算の目的に反する結果が生じない限りにおいて,適用する。

第157条【抹消の登記,帳簿】⑴ 清算人は,清算の終了後,商号の抹消を商

業登記簿に登記するため,申請をしなければならない。

⑵ ①解散した会社の帳簿及び書類は,社員のうちの1名又は第三者において

保管する。②当該社員又は第三者は,その了解が得られない場合,会社が本

拠を有する地を管轄する裁判所により決定される。

⑶ 社員及びその相続人は,当該帳簿及び書類を閲覧し,また利用する権利を

有する。

第158条【異なる財産分割の方法】 社員が清算に代わり異なる財産分割の方

法を合意した場合,なお分割されていない会社財産がある限り,第三者に対

する関係では清算に適用となる規定を準用する。

第6節 時効・責任の時的限定

第159条【社員に対する請求権】⑴ 会社債務に関する社員に対する請求権は,

会社解散から5年の経過をもって時効により消滅する。ただし,会社に対す

る請求権が短期の消滅時効に従う場合を除く。

⑵ 時効は,会社の本拠地を管轄する裁判所の商業登記簿に会社解散の登記が

なされた日の終了をもって開始する。

⑶ 登記をもって弁済期の到来する債権者の会社に対する請求権は,弁済期の

到来時から時効が開始する。

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⑷ 解散した会社に対する時効の新たな開始,又は民法典第204条によるその

停止は,会社解散の時点で当該会社の社員であった者に対しても及ぶ。

第160条【退社した社員の責任,時効期間,有限責任社員としての責任】⑴ 

①会社から退社した社員は,退社後5年の経過前に会社の債務にかかる弁済

期が到来し,かつ,民法典第197条第1項第3号から第5号までに示された

方法により当該社員に対する当該債務に基づく請求権が確定し,又は裁判上

ないし行政庁による執行手続が行われ,若しくは当該手続が申し立てられた

場合,退社の時点までに成立した会社の債務について責任を負う。公法上の

債務については,行政行為の発布をもって足りる。②時効の期間は,会社の

本拠地を管轄する裁判所の登記簿に退社の登記がなされた日の終了をもって

開始する。③時効に対して適用となる民法典第204条,第206条,第210条,

第211条,及び第212条第2項並びに第3項は,これに準用する。

⑵ 民法典第197条第1項第3号から第5号に示された方法による確定は,社

員が書面により請求権を承認した場合,これを要しない。

⑶ ①社員が有限責任社員となった場合,商業登記簿に変更の登記がされた時

点において存在する債務に対するその責任の限定について,第1項及び第2

項の規定を準用する。②これは,当該社員が当該会社又は自らが社員である

企業において業務執行を行っている場合であっても,同様とする。③当該社

員の有限責任社員としての責任は,これにより影響を受けない。

第2章 合資会社

第161条【合資会社の概念・合名会社の規定の適用】⑴ 共通の商号の下で商

業を営むことを目的とする会社であって,社員の1名又は複数名が会社債権

者に対する責任を一定の財産出資額に限定され(有限責任社員),他方で社

員のその他の者には当該責任の限定が行われないもの(人的に責任を負う社

員)は,合資会社とする。

⑵ 合名会社に関する規定は,本章に異なる定めがない限り,合資会社に適用

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する。

第162条【商業登記簿への申請】⑴ ①会社による申請は,第106条第2項に

規定された事項のほか,有限責任社員の名称及び各有限責任社員の出資の額

を含まなければならない。②民法典上の組合が有限責任社員である場合,当

該社員及びその構成の事後の変更も,第106条第2項に従い,登記のため申

請をしなければならない。

⑵ 会社の登記の公告に際して,有限責任社員に関する内容はこれを要しな

い。第15条の規定は,この限りにおいて適用しない。

⑶ 本条の規定は,既に存在している商事会社に有限責任社員が入社する場

合,及び合資会社から有限責任社員が退社する場合に準用する。

第163条【社員相互間の関係】 社員相互の関係については,定款に異なる規

定がない場合,第164条から第169条までの特別の規定を適用する。

第164条【業務執行】 ①有限責任社員は,会社の業務の執行から排除される。

有限責任社員は,人的に責任を負う社員の行為に異議を出すことはできな

い。ただし,当該行為が会社の商業にかかる通常の業務に関して行われる場

合を除く。②第116条第3項の規定は,これにより影響を受けない。

第165条【競業の禁止】 第112条及び第113条は,有限責任社員には適用しない。

第166条【監督権】⑴ 有限責任社員は,年次決算の謄本による通知を求め,

帳簿及び書類の閲覧によりその正確性を検査する権限を有する。

⑵ 第118条において業務執行から排除された社員に認められる権利は,有限

責任社員にはこれを認めない。

⑶ 重大な事由がある場合,裁判所は,有限責任社員の申立てに基づき,いつ

でも貸借対照表,及び年次決算並びにその他の説明資料の通知,帳簿及び書

類の提出を命ずることができる。

第167条【利益及び損失】⑴ 利益及び損失の計算に関する第120条の規定は,

有限責任社員にも適用する。

⑵ ただし,有限責任社員に帰属する利益は,その資本持分が約定した出資額

に満たない場合に限りにおいて,当該資本持分に繰り入れる。

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⑶ 有限責任社員は,損失について,自己の資本持分の額及びなお未払の出資

額までに限り,これを分担する。

第168条【利益及び損失の分配】⑴ 社員の利益に関する分配分は,当該利益

が資本持分の100分の4の額を超えない場合に限り,第121条第1項及び第2

項に従い決定する。

⑵ 当該額を超える利益及び損失に関しては,特段の合意がない限り,事情に

応じ持分の適切な割合をもって約定されたものとみなす。

第169条【利益の支払】⑴ ①第122条は,有限責任社員には適用しない。②

有限責任社員は,自らに帰属する利益の支払にかかる請求権のみを有する。

自己の資本持分が,損失により約定された出資に基づく履行額より下回って

いる場合,又は利益の支払によってこの額を下回ることとなる場合,利益の

支払を求めないこともできる。

⑵ 有限責任社員は,受け取った利益について,後の損失のために払戻しを義

務付けられることはない。

第170条【合資会社における代表権】 有限責任社員は会社を代表する権限を

有しない。

第171条【有限責任社員の責任】⑴ 有限責任社員は,会社債権者に対して,

自らの出資の額まで直接に責任を負う。出資が履行されている限りにおい

て,当該責任から免れる。

⑵ 会社財産について倒産手続が開始された場合,当該手続が継続している

間,第1項に基づき会社債権者に属する権利は,倒産管財人又は監督人が行

使する。

第172条【責任の範囲】⑴ 有限責任社員の出資は,会社債権者との関係では,

商業登記簿への登記に基づき,登記において示された額を通じて確定する。

⑵ 商業登記簿において示された出資額を登記なしに増加した場合,当該増加

が商習慣に従って告知され,又は会社から債権者に対してその他の方法で伝

達されたときに限り,債権者はこれを援用することができる。

⑶ 有限責任社員に対してその出資を免除し,又は猶予する社員の合意は,債

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権者に対しては効力を有しない。

⑷ ①有限責任社員の出資が払い戻された場合,債権者に対しては出資が履行

されていないものとみなす。②有限責任社員が,損失により自己の資本持分

が約定された出資に基づく履行額より下回っているにもかかわらず利益分配

分を引き出した場合,又は当該引出しによって資本持分が表示額を下回る場

合,これと同様とする。③第2文に基づく資本持分の計算に際しては,第

268条第8項に規定する額は考慮しない。

⑸ 善意で作成された貸借対照表に基づき,有限責任社員が善意で利益として

受領したものは,いかなる場合においても払戻しを義務付けられない。

⑹ ①人的責任を負う社員が自然人ではない会社の債権者に対しては,有限

責任社員の出資が人的に責任を負う社員への持分にもたらされていない限

り,当該出資は履行されていないものとみなす。②合名会社又は合資会社が

人的に責任を負う社員として存在し,当該合名会社又は合資会社において人

的責任を負う社員が自然人である場合,この限りでない。

第172a条(削除)

第173条【有限責任社員としての入社に際しての責任】⑴ すでに存在する商

事会社に有限責任社員として入社する者は,第171条及び第172条の基準に従

い,自らの入社より前に確定した会社の債務について,商号の変更の有無に

かかわらず,責任を負う。

⑵ これに反する合意は,第三者に対しては効力を有しない。

第174条【出資額の減少】 有限責任社員の出資額の減少は,会社の本拠を管

轄する裁判所の商業登記簿に登記されない限り,債権者に対しては効力を有

しない。登記の時点までに債権を有する債権者については,出資額の減少を

自らに対して適用されてはならない。

第175条【出資額の変更に関する申請】 ①出資額の増加又は減少は,商業登

記簿に登記するため,総社員により申請をしなければならない。②第162条

第2項は,これに準用する。③会社の本拠地の商業登記簿に登記をする場

合,第14条の規定は適用しない。

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第176条【登記前の責任】⑴ ①会社の本拠を管轄する裁判所の商業登記簿に

登記をする前に会社が業務を開始した場合,当該業務開始に同意した有限責

任社員は,登記までに成立した会社の債務について,人的に責任を負う社員

と同様の責任を負う。ただし,その有限責任社員としての参加について,債

権者が知っている場合に限る。②第2条又は第105条第2項により異なる結

果が生じる場合,本規定は適用しない。

⑵ 既に存在する商事会社に有限責任社員が入社する場合,第1項第1文の規

定は,その入社と商業登記簿への登記との間に生じた会社の債務について準

用する。

第177条【有限責任社員の死亡】 有限責任社員が死亡した場合,会社は,こ

れと異なる契約上の規定がない限り,相続人とともに継続する。

第177a条【業務信書における明示事項,支払不能又は債務超過時の倒産手続

申立義務】 ①第125a条から第130条までの規定は,有限責任社員が自然人で

ある会社について適用する。ただし,第130a条は,第172条第6項第2文に

代えて適用されるべきものとする。②第125a条第1項第2文において社員に

対して規定されている事項は,会社の人的に責任を負う社員に対してのみ要

求されるものとする。

第178条から第229条(削除)

第3章 匿名組合

第230条【匿名組合の概念と本質】⑴ 他の者が営む商業に匿名組合員として

財産の出資を行う者は,それが営業者の財産に移転するよう出資を給付しな

ければならない。

⑵ 営業者は,営業上締結する取引に関し,自己のみが権限を有し,義務を負

う。

第231条【利益及び損失】⑴ 匿名組合員の利益及び損失に対する分配分が約

定されていない場合,事情に応じ持分の適切な割合をもって約定されたもの

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とみなす。

⑵ 匿名組合契約において,匿名組合員は損失を負担しないものとすることが

できる。匿名組合員の利益に対する参加分は排除することができない。

第232条【利益及び損失の計算】⑴ 毎事業年度の終了に際して,利益及び損

失を計算し,匿名組合員に帰する利益が支払われる。

⑵ ①匿名組合員は,損失について,自己の資本持分の額及びなお未払の出資

額までに限り,これを分担する。②匿名組合員は,受け取った利益について,

後の損失のために払戻しを義務付けられることはない。ただし,自己の出資

が損失により減少した場合,年次の利益は当該損失の補填に用いる。

⑶ 匿名組合員から支払を求められなかった利益は,特に異なる合意のない限

り,匿名組合員の出資を増加させない。

第233条【匿名組合員の監督権】⑴ 匿名組合員は,年次決算の謄本による通

知を求め,帳簿及び書類の閲覧によりその正確性を検査する権限を有する。

⑵ 民法典第716条において業務執行から排除された組合員に認められる権利

は,匿名組合員にはこれを認めない。

⑶ 重大な事由がある場合,裁判所は,匿名組合員の申立てに基づき,いつで

も貸借対照表,及び年次決算並びにその他の説明資料の通知,帳簿及び書類

の提出を命ずることができる。

第234条【匿名組合の解約告知,匿名組合員の死亡】⑴ ①組合員の一人又は

匿名組合員の債権者による匿名組合の解約告知は,第132条,第134条及び第

135条の規定を準用する。②重大な事由に基づき解約告知期間なしに組合の

解約告知をする権利に関する民法典第723条の規定は,これにより影響を受

けない。

⑵ 匿名組合は,匿名組合員の死亡によって解散しない。

第235条【財産分割】⑴ 匿名組合の解約により,営業者は,匿名組合員と財

産分割を行い,その残高を金銭により弁済しなければならない。

⑵ ①解約の時点において未履行の取引は,営業者が清算する。②匿名組合員

は,当該取引から生ずる利益又は損失を分担する。

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⑶ 匿名組合員は,毎事業年度の終了時に,当該期間に終了した取引に関する

説明,自らに帰属する額の支払,及びなお未履行となっている取引の状況に

関する情報を求めることができる。

第236条【営業者の倒産】⑴ 営業者の財産について倒産手続が開始した場合,

匿名組合員の出資額が自らに帰属する損失の負担分の額を上回るならば,匿

名組合員は,当該出資額について倒産債権者として債権の主張ができる。

⑵ 出資が未払となっている場合,匿名組合員は,自己の損失の分担分を補填

するに必要な額まで,当該未払となっている出資額を倒産財団に対して支払

わなければならない。

第237条(削除)

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第3編 商業帳簿

第1章 全ての商人のための規定

第1節 簿記,財産目録

第238条(簿記義務)⑴ ①全ての商人は,帳簿を作成し,その中において商

人の商取引及び財産状態を正規の簿記の諸原則に従い明らかにしなければな

らない。②簿記は,専門的知識を有する第三者に対して相応の時間内に業務

上の事象と企業状態についての概観を伝達できるようになされなければなら

ない。③業務上の事象については,その発生と進行を追跡できるようにしな

ければならない。

⑵ 商人は,発出した商業信書の原本と一致する複製(複写,復刻,模写,そ

の他書面,図像その他のデータ記録媒体上にする文言内容の複製)を保管し

なければならない。

第239条(商業帳簿の作成)⑴ ①商業帳簿の作成その他必要な記録を行うに

際しては,商人は現に使用されている言葉を用いなければならない。②略

語,符牒,文字又は記号を用いる場合,個々の場合についてその意味を一義

的に定めなければならない。

⑵ 帳簿への記帳その他必要な記録は網羅的に,正確に,適時に,かつ,整然

と行われなければならない。

⑶ ①記帳又は記録は,その記帳又は記録の原初の内容を確定できないような

方法で変更されてはならない。②また,かかる変更は,それが原初のもので

あるか後になされたものであるかを判別できないような性状でなされてはな

らない。

⑷ ①商業帳簿及びその他必要な記録は,そのような簿記の形式が,用いられ

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る作成手続も含めて正規の簿記の諸原則に適合している限りにおいて,証拠

書類の整然とした保存によることも,またデータ記録媒体上で行うこともで

きる。②簿記その他必要な記録をデータ記録媒体上で行う場合には,それら

のデータが保管期間の間利用可能であり,相応の期間内に閲読可能な状態に

なし得ることを特に確保しなければならない。③第1項から第3項までは,

準用される。

第240条(財産目録)⑴ 全ての商人は,その商業の開始時に,土地,債権債務,

現金の額その他の資産を正確に表示するとともに,個々の資産及び債務の価

値を付さなければならない。

⑵ ①商人は,各事業年度の終了後,同様の財産目録を作成しなければならな

い。②事業年度の期間は12か月を超えてはならない。③財産目録の作成は,

正規の業務執行に合致する期間内になされなければならない。

⑶ ①固定資産たる資産,並びに原料,補助材料及び貯蔵品は,規則的に取り

替えられ,かつ,その総額が企業にとって副次的な重要性のみ有するもので

ある場合には,その量,価値及び構成が僅かに変化するのみである限りにお

いて,不変の数量及び不変の価格で計上することができる。②ただし,原則

として3年に1度,実地棚卸を行わなければならない。

⑷ 棚卸資産である同種の資産,その他の同種の又は近似的に同価値といえる

動産及び負債は,それぞれ一群としてまとめた上で,加重平均価値により計

上することができる。

第241条(棚卸簡略手続)⑴ ①財産目録の作成に際して,資産の有高は,そ

の種類,数量,価額について,一般に認められた数理統計学の手法を用いて,

抽出検査に基づき算定してもよい。②この手続は,正規の簿記の諸原則に適

合していなければならない。③この方法により作成された財産目録の言明価

値は,実地棚卸に基づいて作成された財産目録の言明価値と同等でなければ

ならない。

⑵ 事業年度終了時における財産目録の作成において,正規の簿記の諸原則に

適合する他の方法の適用により当該時点における実地棚卸を行わずとも資産

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の有高をその種類,数量,価額につき確定できるときには,当該時点におけ

る実地棚卸の実施を要しない。

⑶ 次の各号を全て満たす場合には,事業年度終了時の財産目録において当該

資産を表示することを要しない。

⒈ 商人が,事業年度終了の3か月前から2か月後の期間に含まれる日にお

ける臨時財産目録において,実地棚卸又は本条第2項により認められた手

続により,その資産の種類,数量,価額を表示していること。

⒉ 臨時財産目録をもとに正規の簿記の諸原則に適合する継続記録法又は逆

算法を適用することにより,事業年度の終了時に存在する資産の有高を,

当該時点につき正規に評価できることが保証されていること。

第241a条(簿記義務及び財産目録作成義務の免除) ①連続する2事業年度の

決算日において売上高が各年度とも60万ユーロを超えず,かつ,年度利益が

各年度とも6万ユーロを超えない個人商人には,第238条から第241条の適用

を要しない。②新規創立の場合において,新規創立後最初の決算日において

第1文の額を超えていないときには,同様の法的効果が生じる。

第2節 開業貸借対照表,年度決算書

第1款 総則第242条(作成義務)⑴ ①商人は,その商業の開始時及び各事業年度の終了

時に,その資産と負債の関係を示した決算書(開業貸借対照表,貸借対照表)

を作成しなければならない。②開業貸借対照表については,貸借対照表に関

連する限りにおいて,年度決算書に関する規定が準用される。

⑵ 商人は,各事業年度の終了時に,その事業年度の費用と売上げの対比(損

益計算書)を作成しなければならない。

⑶ 貸借対照表と損益計算書は,年度決算書を構成する。

⑷ ①本条第1項から第3項までは,第241a条に掲げる個人商人には適用しな

い。②新規創立の場合において,新規創立後最初の決算日において第241a条

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第1文の額を超えていないときには,同様の法的効果が生じる。

第243条(作成原則)⑴ 年度決算書は正規の簿記の諸原則に従って作成され

なければならない。

⑵ 年度決算書は明瞭で整然としていなければならない。

⑶ 年度決算書は正規の業務運営に応じた期間内に作成されなければならな

い。

第244条(言語,通貨単位) 年度決算書はドイツ語で,ユーロを通貨単位と

して作成されなければならない。

第245条(署名) ①年度決算書は,商人により,日付の記載とともに署名が

なされなければならない。②人的に責任を負う社員が複数存在する場合,当

該社員全員が署名しなければならない。

第2款 計上規定第246条(完全性,相殺の禁止)⑴ ①年度決算書には,法に別段の定めがあ

る場合を除き,全ての資産,負債,計算限定項目,費用及び収益が含まれて

いなければならない。②資産は所有権者の貸借対照表に計上されなければな

らない。ただし,ある資産が所有権者ではなく他の者に経済的に帰属すると

認められる場合には,当該他の者はその貸借対照表の中で当該資産を計上し

なければならない。③負債は債務者の貸借対照表に計上されなければならな

い。④事業譲受の対価が譲受の時点における事業の個別の資産の価値から負

債の額を差し引いたものを超える分(有償で取得した営業価値又はのれん価

値)については,時間的に限られた範囲で利用可能な資産として認められる。

⑵ ①借方項目は貸方項目と,費用は収益と,土地の権利は土地の負担と,

相殺してはならない。②他の債権者による差押えから隔離され,専ら老齢年

金債務又はこれに相当する長期債務の履行のために用いられる資産について

は,かかる債務と相殺されなければならず,割引及び相殺されるべき財産か

ら生じる費用及び収益についても,同様に取り扱われなければならない。③

資産に付すべき時価が負債の額を上回るときは,その超過額を別の項目とし

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て借方に計上しなければならない。

⑶ ①先行する年度決算書で適用された計上方法は,維持されなければならな

い。②第252条第2項は準用される。

第247条(貸借対照表の内容)⑴ 貸借対照表には,固定資産,流動資産,自

己資本,負債及び計算限定項目が区別して計上され,かつ,十分に分類され

なければならない。

⑵ 固定資産には,持続的に事業に用いられるよう定められた物のみを計上し

なければならない。

⑶ (削除)

第248条(貸借対照表への計上禁止,選択権)⑴ 貸借対照表においては,以

下のものを借方項目として計上してはならない。

⒈ 企業を設立するための費用

⒉ 自己資本を調達するための費用

⒊ 保険契約を締結するための費用

⑵ ①自己の創設に係る無体資産であって固定資産たるものは,借方項目

として計上することができる。②自己の創設に係る商標,出版物の題名

(Drucktitel),出版権,顧客名簿又はこれに相当する無体資産で固定資産た

るものは,計上してはならない。

第249条(引当金)⑴ ①引当金は,不確定債務及び履行の完了していない取

引から生じるおそれのある損失について設定しなければならない。②さらに

引当金は,次の事項についても設定しなければならない。

⒈ 当該事業年度にはなされなかった維持補修のための支出であって次事業

年度の3か月以内に行われるもの,又は当該事業年度にはなされなかった

表土除去であって次事業年度に行われるもの

⒉ 瑕疵担保であって法律上の義務なく提供されたもの

⑵ ①第1項に掲げる以外の目的のために引当金を設定してはならない。②引

当金は,設定の基礎が消滅した限りにおいて取り崩すことができる。

第250条(計算限定項目)⑴ 決算日に先立ってなされた支出は,当該支出が

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当該決算日以降の一定の期間についての費用である限りにおいて,借方に計

算限定項目として計上しなければならない。

⑵ 決算日に先立って生じた収入は,当該収入が当該決算日以降の一定の期間

についての収益である限りにおいて,貸方に計算限定項目として計上されな

ければならない。

⑶ ①債務の弁済価額が発行価額よりも高い場合には,その差額について借方

に計算限定項目として計上することができる。②当該差額は,計画的に毎年

減価償却しなければならない。償却額は当該債務の全存続期間に配分するこ

とができる。

第251条(責任関係) ①貸借対照表の枠外には,貸方に計上する必要がない

限りにおいて,手形の振出及び譲渡,保証,手形保証及び小切手保証,瑕疵

担保並びに他人の債務に対する担保の設定による責任関係を記載しなければ

ならない。当該額は一金額として記載することができる。②責任関係は,そ

れと等価値の求償権を有する場合であっても,記載しなければならない。

第3款 評価規定第252条(一般的評価原則)⑴ 年度決算書に計上される資産及び負債の評価

については,とりわけ以下の原則が適用される。

⒈ 事業年度の開始貸借対照表における価値評価は,その前事業年度の閉鎖

貸借対照表における価値評価と一致しなければならない。

⒉ 事実上の又は法律上の状態に反しない限り,評価に際しては企業活動の

継続を前提としなければならない。

⒊ 資産と負債は,決算日に個別に評価しなければならない。

⒋ 保守的に評価しなければならず,とりわけ全ての予見可能なリスク及び

損失であって決算日までに生じたものは,仮にそれが決算日と年度決算書

作成日の間に初めて判明したものであっても計上しなければならない。利

益は決算日までに実現した場合に限って計上することができる。

⒌ 事業年度の費用及び収益は,その収支の時点にかかわらず年度決算書に

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計上しなければならない。

⒍ 先行する年度決算書で適用された評価方法は,維持されなければならな

い。

⑵ 根拠のある例外事例においてのみ,第1項の諸原則から逸脱することがで

きる。

第253条(初次評価,後続評価)⑴ ①資産は,購入費用又は製造費用を上限

とし,第3項から第5項による減価を行って,評価されなければならない。

②負債はその履行価額で,引当金は思慮深い商人の判断に従えば必要とされ

る履行価額で,評価されなければならない。③老齢年金債務の額が専ら第

266条第2項A.Ⅲ.5の意義における有価証券の付すべき時価によって決まる

場合には,当該時価が保証最低額を上回っている限り,これに対する引当金

はそれらの有価証券に付すべき時価によって評価されなければならない。④

第246条第2項によって相殺すべき資産は,その付すべき時価によって評価

されなければならない。⑤最小資本会社(第267a条)は,第264条第1項第

5文,第266条第1項第4文,第275条第5項及び第326条第2項に定められ

た軽減措置を用いていない場合には,付すべき時価について単一の評価を行

うことができる。⑥最小規模資本会社が第5文に掲げた軽減措置のうち最低

一つを利用している場合には,資産の評価は,第246条第2項第2文による

相殺が考慮されている限りにおいて,第1文に従う。

⑵ ①残余償還期間が1年を超える引当金は,その残余償還期間について,

老齢年金債務のための引当金の場合には過去10事業年度の,その他の引当金

の場合には過去7事業年度の,平均市場利子率で割り引かれなければならな

い。②第1文にかかわらず,老齢年金債務又はこれに相当する長期債務の

ための引当金は,仮定存続期間を15年とした場合における平均市場利子率に

よって一括して割り引くことができる。③第1文及び第2文は,定期金債務

に基づく負債であってその反対給付をもはや期待できないものについて準用

される。④第1文及び第2文において適用される割引利子率は,法規命令に

従ってドイツ連邦銀行により算定され,月毎に告知される。⑤連邦司法・消

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費者保護省は,第4文による法規命令において,連邦参議院の同意を得る必

要なく,ドイツ連邦銀行と協議の上で,算定方法とその基礎,告知の形式そ

の他割引利子率の算定についての細目を決定する。

⑶ ①固定資産である資産であってその利用が時間的に限定されているものに

ついては,その購入費用又は製造費用を計画的に減額しなければならない。

②当該計画においては,当該購入費用又は製造費用を当該資産が利用され得

ると予見される事業年度に配分しければならない。③例外的な場合において

自己の創設に係る無体資産であって固定資産たるものの予想利用期間を信頼

できる程度に見積もることができないときは,製造費用の計画的な減額は10

年の期間で行われなければならない。④第3文は,有償で取得された営業権

又は暖簾にも準用される。⑤その利用が時間的に限定されているかどうかに

かかわらず,固定資産である資産について持続的であると見込まれる価値減

少がある場合には,当該資産を決算日において当該資産に付すべき低価で評

価するために,計画外減額をしなければならない。⑥財務固定資産について

は,持続的ではないと見込まれる価値減少についても計画外減額をすること

ができる。

⑷ ①流動資産である資産については,低価であって決算日の取引所価格又は

市場価格である額によって当該資産を評価するために,減額しなければなら

ない。②取引所価格又は市場価格を測定できず,かつ,購入費用又は製造費

用が決算日において当該資産に付すべき価値を超過している場合には,当該

価値まで減額しなければならない。

⑸ ①第3項第3文若しくは第4文又は第4項による低価評価は,その根拠が

存在しなくなった場合には,維持してはならない。②有償で取得した営業権

又は暖簾の低価評価は維持しなければならない。

⑹ ①老齢年金債務のための引当金については,過去10年間の平均市場利子率

による引当金評価額と過去7年間の平均市場利子率による引当金評価額との

差額を,事業年度ごとに計算しなければならない。②利益は,配当がなされ

た後に残存する自由可処分引当金に利益の額を加算し,損失の額を減算した

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額が,少なくとも第1文による差額と同額である場合に限り,配当すること

ができる。③第1文による差額は,事業年度ごとに附属説明書中に,又は貸

借対照表の下に記載しなければならない。

第254条(評価単位の設定) ①資産,負債,未済取引又は高い蓋然性のある

取引行為を,対照可能なリスクから生じる反対方向の価値変化又はキャッ

シュフローを減殺するために金融商品と組み合わせる場合(評価単位),

第249条第1項,第252条第1項第3号第4号,第253条第1項第1文及び第

256a条は,反対方向の価値変化又はキャッシュフローを減殺する範囲及び期

間において適用されない。②第1文における金融商品には,商品の取得又は

譲渡に係る先物取引も含まれる。

第255条(評価基準)⑴ ①購入費用は,資産に個々に帰属させることができ

る限りにおいて,資産の購入及びその設置のために支出された費用のことで

ある。②購入費用には付帯費用や事後的購入費用も含む。③購入価格値引き

であって資産に個々に帰属させることのできるものは,控除されなければな

らない。

⑵ ①製造費用は,資産の製造,拡張,又は元来の状態を上回るような重要な

改善に向けた財の消費及び役務の使用によって生じた費用のことである。②

これには材料費,製作費,製作特別費,並びに材料共通費,製造共通費又は

製造によって生じた限りでの固定資産の価値費消の相応部分が含まれる。

③製造費用の算定に際して,一般管理費の相応する部分並びに企業の福利施

設,任意の福利給付,企業老齢年金の相応部分は,それらが製造期間に割り

当てられる限りにおいて,算入することができる。④研究費及び販売費は,

算入してはならない。

(2a) ①自己の創設に係る無体資産であって固定資産たるものの製造費用は,

その開発によって生じる第2項の費用である。②開発とは,財又は方法の新

たな開発又は重大な変更による財又は方法の更なる発展のためになされる研

究成果その他の学識の適用のことである。③研究とは,学問的又は技術的な

新しい知見又は一般的な性質の経験の独自かつ計画的な探求であって,その

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技術的な利用可能性や経済的な成功の見込みについて原則として言明し得な

いもののことである。④研究と開発を信頼できる程度に相互に区別すること

ができない場合,借方計上は排除される。

⑶ ①他人資本に対する利息は製造費用には含まれない。②他人資本であって

資産の製造の資金として使用されたものについての利息は,それが製造期間

に割り当てられる限りにおいて算入することができ,この場合には当該利息

は資産の製造費用とみなす。

⑷ ①付すべき時価は,市場価格による。②市場価格を表示し得る活発な市場

がない限りにおいて,付すべき時価は一般に認められた評価方法によって定

められる。③第1文と第2文のいずれによっても付すべき時価を表示できな

いときは,第253条4項による購入費用又は製造費用が適用される。④第1

文又は第2文によって直近に表示された付すべき時価は,第3文における購

入費用又は製造費用とみなす。

第256条(評価簡易化手続) ①正規の簿記の諸原則に合致する限りにおいて,

在庫資産である同種の資産の価値評価に際して,最初に又は最後に購入され

又は製造された資産が最初に消費又は販売されたものと仮定することができ

る。②第240条第3項及び第4項は,年度決算書にも適用することができる。

第256a条(通貨の換算) ①外国通貨建ての資産及び負債は,決算日の外国

為替相場における売り市場と買い市場の中間額で換算されなければならな

い。②かかる資産及び負債であってその残余償還期間が1年又は1年未満の

ものについては,第253条第1項第1文及び第252条第1項第4号後段は適用

されない。

第3節 保存及び提出

第257条(資料の保存,保存期間)⑴ 全ての商人は,以下の資料を整理して

保存する義務を負う。

⒈ 商業帳簿,財産目録,開業貸借対照表,年度決算書,第325条第2a項に

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基づく単体決算書,状況報告書,コンツェルン決算書,コンツェルン状況

報告書及びそれらの理解に必要な作業指示書その他の組織資料

⒉ 受領した商業信書

⒊ 発信した商業信書の写し

⒋ 第238条第1項により作成すべき帳簿への記帳の証拠(記帳証憑)

⑵ 商業信書とは,商行為に関する文書のことである。

⑶ ①開業貸借対照表と決算書を除いて,第1項に列挙された資料は,それが

正規の簿記の諸原則に合致し,かつ,次の各号に定める条件を満たすとき

は,画像記憶媒体又はデータ記憶媒体上の写しとして保存することができ

る。

⒈ それらの写し又はデータを閲読可能にした際に,受領した商業信書と記

帳証憑についてはその画像が,その他の資料についてはその内容が一致す

ること。

⒉ それらの写し又はデータを保存期間の間利用可能であり,相応の期間内

に閲読可能にすることができること。

②資料が第239条第4項第1文に基づいてデータ記憶媒体上で作成されたと

きは,データ記憶媒体に代えて当該データを印刷して保存することができ,

この印刷された書類もまた第1文に従って保存することができる。

⑷ 第1項第1号及び第4号に列挙した資料は10年間,第1項に列挙されたそ

の他の資料は7年間保存しなければならない。

⑸ 保存期間は,当該商業帳簿へ最後の記帳がされ,財産目録が作成され,開

業貸借対照表又は年度決算書が確定され,第325条第2a項に基づく単体決算

書又はコンツェルン決算書が作成され,商業信書が受領又は発信され,又は

記帳証憑が生成された暦年の終結により開始する。

第258条(訴訟における提出)⑴ 訴訟の進行中,裁判所は申立てにより又は

職権により,当事者の商業帳簿の提出を命じることができる。

⑵ 文書提出についての訴訟の相手方の義務についての民事訴訟法の規定は適

用されない。

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第259条(訴訟における提出に際しての抜粋) ①訴訟において商業帳簿が提

出された場合,争点に関連する限りでその内容を当事者との協議のもと閲覧

をさせるとともに,適当な場合には抜粋を作成しなければならない。②帳簿

のそれ以外の内容は,当該帳簿が正規に作成されているかどうかの検証のた

めに必要である限りにおいて,裁判所に公開されなければならない。

第260条(財産分割のための提出) ①財産分割,特に相続事件,夫婦財産事件,

会社分割事件に際しては,裁判所はその内容の閲読のために商業帳簿の提出

を命じることができる。

第261条(画像記憶媒体・データ記憶媒体上の資料の提出) 保存すべき資料

について画像記憶媒体又はデータ記憶媒体上の写しの形式でのみ提示するこ

とができる者は,その費用負担において資料を閲覧可能にするために必要な

補助手段を自由に使用できるようにしなければならず,また必要な限りにお

いて,その費用負担において印刷するか,又は補助手段なしに閲覧可能な複

製物を用意しなければならない。

第4節 州法

第262条(削除)

第263条(州法規定の留保) 市町村,市町村連合又は目的連合の企業であっ

て法人格を有しないものについては,本章の規定とは異なる州法の規定があ

るときにはこれによる。

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第2章 資本会社(株式会社,株式合資会社及び有限会社)及び特定人的会社についての補充規定

第1節 資本会社の年度決算書と状況報告書

第1款 総則規定第264条(作成義務)⑴ ①資本会社の法律上の代表者は,貸借対照表及び損

益計算書と一体をなす附属説明書をもって年度決算書(第242条)を補充す

るとともに,状況説明書を作成しなければならない。②資本市場を指向する

資本会社であってコンツェルン決算書の作成を義務付けられていないものの

法律上の代表者は,貸借対照表,損益計算書及び附属説明書と一体をなす

キャッシュフロー計算書及び自己資本明細書をもって年度決算書を補充しな

ければならない。また,セグメント報告書をもって年度決算書を補充するこ

とができる。③年度決算書と状況報告書は,法律上の代表者によって,終了

した事業年度について次の事業年度の当初3か月以内に作成されなければな

らない。④小規模資本会社(第267条第1項)においては状況報告書を作成

する必要はない。小規模資本会社は,それが正規の業務執行に合致する場合

は年度決算書を遅れて作成してもよいが,事業年度の開始から6か月以内で

なければならない。④最小規模資本会社(第267a条)においては,次の各号

に掲げる記載をいずれも実施しているときには,附属説明書をもって年度決

算書を補充する必要はない。

⒈ 第268条第7項に定める記載

⒉ 第285条第9号c)に定める記載

⒊ 株式会社である場合には株式法第160条第3項第2文に定める記載

(1a) ①年度決算書には,商号,本拠,登記所及び当該会社が商業登記におい

て登録される番号が示されなければならない。②会社が清算中である場合に

は,その事実も示されなければならない。

⑵ ①資本会社の年度決算書は,正規の簿記の諸原則を遵守し,資本会社の財

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産,財務及び収益の状況について事実の諸関係に合致した写像を表示しなけ

ればならない。②年度決算書が第1文の意味における事実の諸関係に合致し

た写像を表示していないといえるような特別な状況があるときは,附属説明

書において追加的な記載がなされなければならない。③資本会社であって有

価証券取引法第2条第7項の意味における内国発行者であり本法第327a条の

意味における資本会社でないものの法律上の代表者は,知り得る限りにおい

て年度決算書が第1文の意味における事実の諸関係に対応した写像を表示し

ていること,又は附属説明書が第2文による記載を含んでいることを,署名

のある書面により確認しなければならない。④最小規模資本会社が第1項第

5文による軽減措置を用いた場合には,本項第2文により必要とされる記載

は貸借対照表の枠外になされなければならない。⑤最小規模資本会社のため

の軽減措置を考慮して作成された年度決算書は,第1文の要求に合致してい

ると推定する。

⑶ ①欧州連合加盟国又は欧州経済圏協定締約国に本拠を有する親企業のコン

ツェルン決算書に子会社として組み入れられた資本会社において以下の各号

に掲げる条件を全て満たす場合には,本節及び第3節,第4節の規定は適用

されない。

⒈ 当該子企業の全ての社員が事業年度ごとに適用除外を認めていること。

⒉ 親企業が,決算日までに子企業が負担することとなる次事業年度の債務

について保証することを既に表明していること。

⒊ 親企業のコンツェルン決算書とコンツェルン状況報告書が,当該親企業

が本拠を有する国の法令に従い,かつ,以下に掲げる指令に調和して作成

され,監査されていること。

a) 一定の法形式の企業の年度決算書,連結決算書及びこれらに付随す

る書類について定めるとともに欧州議会及び欧州理事会指令2006/43/

EGを改正し理事会指令78/660/EWG及び83/660/EWGを廃止するための

2013年6月26日欧州議会及び欧州理事会指令2013/34/EU(ABl. L 182

vom 29. 6. 2013, S. 19)

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b) 指令2013/34/EU(ABl. L 182 vom 29. 6. 2013, S. 19)によって改正さ

れた,年度決算書及び連結決算書について定め理事会指令78/660/EWG

及び理事会指令84/253/EWGを改正するための2006年5月17日欧州議会

及び欧州理事会指令2006/43/EG(ABl. L 157 vom 9. 6. 2006, S. 87)

⒋ 子企業の適用除外について親企業のコンツェルン決算書の附属説明書に

記載されていること。

⒌ 子企業に対して第325条第1項から第1b項によって以下が公示されるこ

と。

a) 第1号による決定

b) 第2号による宣言

c) コンツェルン決算書

d) コンツェルン状況書

e) 親企業のコンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書についての

第3号による証明の付記

②既に親企業が第1文第5号に掲げた書類のいずれか又は全てを公示してい

る場合,それらを子企業の名義で連邦公報に発見することができるときに

は,子企業は新たに当該書類を公示する必要はない。第326条第2項はこの

公示に適用されない。③第2文は,親企業が当該書類をドイツ語又は英語で

公示した場合,又は子企業が追加的に当該書類の認証付翻訳を第325条第1

項から第1b項によって公示された場合にのみ適用される。

⑷ 第3項は,公開法の規定によりコンツェルン決算書を作成する親企業であ

り,当該コンツェルン決算書において公開法第13条第3項第1文の選択権が

行使されているものの子企業である資本会社には適用されない。第314条第

3項は適用されない。

第264a条(一定の合名会社及び合資会社への適用)⑴ 第2章第1節から第

5節までの規定は,合名会社又は合資会社であって,その無限責任社員が次

の各号のいずれにも該当しないか,同様の会社に関係するものではないもの

にも適用する。

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⒈ 自然人

⒉ 合名会社,合資会社,その他の人的会社であって,無限責任社員として

自然人のいるもの

⑵ 本章の規定においては,代表される会社を代表する権限を有する機関の構

成員を,合名会社及び合資会社の構成員とみなす。

第264b条(第264a条の意味における合名会社及び合資会社への本章の規定の

適用免除) 第264a条第1項の意味における人的商事会社は,次の各号に掲

げる条件を全て満たすときは,年度決算書及び状況報告書を本章の規定に

従って作成し,監査を受け,公示する義務を免除される。

⒈ 当該会社が次のいずれかの会社のコンツェルン決算書及びコンツェルン

状況報告書に組み入れられていること。

a) 当該会社の無限責任社員

b) そのコンツェルン決算書において企業のより大きい総体が組み入れ

られている場合には,欧州連合加盟国又は欧州経済圏協定締約国に本拠

を有する親企業

⒉ 第264条第3項第1文第3号に掲げられた条件を満たすこと。

⒊ 人的商事会社の適用免除がコンツェルン決算書の附属説明書に記載され

ていること。

⒋ 人的商事会社に対してコンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書及

び証明の付記が第325条1項から第1b項によって公示されていること。第

264条第3項第2文及び第3文は準用される。

第264c条(第264a条の意味における合名会社及び合資会社への特別規定)

⑴ ①社員に対する貸付け,債権及び債務は,原則として,その旨を個別に区

別して計上するか,附属説明書に記載しなければならない。②別の項目とし

て計上された場合,その性質を注記しなければならない。

⑵ ①第266条第3項Aは,自己資本として以下の項目に区別して計上するも

のとして適用される。

Ⅰ.資本持分

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 Ⅱ.準備金

 Ⅲ.繰越利益額/繰越損失額

 Ⅳ.年度利益/年度損失

②「引受済資本金」の項目の代わりに無限責任社員の資本持分が計上されな

ければならない。これらは一括して計上されてもよい。③ある無限責任社員

の資本持分にその事業年度に割り当てられる損失は,当該資本持分から控除

されなければならない。④損失が資本持分を超過する場合には,支払義務が

存する限りにおいて,「無限責任社員の払込義務」の項目名で債権として区

別して計上しなければならない。⑤支払義務が存しない場合には,その額は

「財産出資によって補填されない無限責任社員の損失持分」と項目名をつ

け,第268条第3項により計上しなければならない。⑥第2文から第5文は

有限責任社員の出資に準用され,その際にはこれらは無限責任社員の出資持

分に対して全て区別されなければならない。⑦有限責任社員に対する債権

は,払込義務が存する限りにおいてのみ計上される。有限責任社員の資本持

分が損失により履行済出資を下回っているにもかかわらず利益持分を引き出

したとき,又は資本持分の引出しにより当該額を下回った場合も同様であ

る。⑧準備金としては,会社法上の取決めに基づいて設定された額のみが計

上されなければならない。⑨附属説明書には,商業登記に第172条第1項に

基づいて登記された出資の額が,それが履行されていない限りにおいて,記

載されなければならない。

⑶ ①社員の他の財産(私的財産)は貸借対照表に記載されてはならず,私的

財産について生じた費用及び収益を損益計算書に記載してはならない。②た

だし,損益計算書においては,「年度利益/年度損失」の項目で,合資会社

の無限責任社員である会社の税率に応じた社員の租税費用について控除し又

は算入することができる。

⑷ ①合資会社の無限責任社員である会社の持分は,貸借対照表においては借

方側の項目A.Ⅲ.1又はA.Ⅲ.3に計上されなければならない。②第272条第4項

は,当該持分に対して,借方計上した額で,「自己資本」項目の次に,「借方

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計上した自己持分」との名称による特別項目として設定する限りにおいて適

用される。

⑸ ①会社が第266条第1項第3文又は第4文による選択権を行使した場合

は,簡易貸借対照表の構成は選択権の行使に従う。②前各項による貸借対照

表の表示は適用されない。

第264d条(資本市場を指向する資本会社) 有価証券取引法第2条第5項の意

味における組織された市場に対し,その発行する有価証券取引法第2条第1

項の意味における有価証券を上場しているもの,又は組織された市場におけ

る取引のために係る有価証券の許可を申請している資本会社は,資本市場を

指向しているものとする。

第265条(項目区分の一般原則)⑴ ①叙述の形式,とりわけ連続する貸借対

照表と損益計算書の項目区分は,特別な状況のために逸脱が必要となるよう

な例外的な場合でない限り,維持されなければならない。②逸脱は,附属説

明書において記載され,理由づけられなければならない。

⑵ ①貸借対照表及び損益計算書においては,それぞれの項目に前事業年度の

対応する額を記載しなければならない。②額が比較可能でない場合には,そ

の旨を附属説明書に記載し,説明を加えなければならない。③前年度の額を

修正するときは,その旨も附属説明書に記載し,説明を加えなければならな

い。

⑶ ある資産又は負債が貸借対照表の複数の項目に該当するときは,それが明

瞭かつ整然とした年度決算書の作成に必要である場合には,計上された項目

において他の項目にも帰属する旨を注記するか,又は附属説明書において記

載しなければならない。

⑷ ①複数の営業部門が存在し,これにより異なる項目分類規定に従った年度

決算書の区分が必要となる場合には,年度決算書はある事業部門のために定

められた項目区分によって作成した上で,他の事業部門のために定められた

項目区分によって補足されなければならない。②補足は,附属説明書におい

て記載され,説明されなければならない。

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⑸ ①項目の更なる分割は許容される。ただし,定められた項目区分を遵守し

なければならない。②新しい項目や中間小計は,その内容が規定されている

項目区分に含まれない場合に限り付加することができる。

⑹ 資本会社の特別な事情に基づき明瞭かつ整然とした年度決算書の作成に必

要であるときは,貸借対照表及び損益計算書の項目区分及びアラビア数字を

付された項目の名称は変更されなければならない。

⑺ 貸借対照表及び損益計算書においてアラビア数字が付された項目について

は,特別な様式が定められていない限り,次の各号に定める条件のいずれか

を満たす場合には,統合して記載することができる。

⒈ 当該項目が,第264条第2項の意味における事実の諸関係に対応した写

像の表示において重要ではない額であるとき。

⒉ 統合によって叙述の明瞭性が向上するとき。ただしこの場合には,統合

された項目は附属説明書において区別して記載されなければならない。

⑻ 貸借対照表及び損益計算書の項目のうちその額がないものは,前事業年度

の当該項目に額が付されている場合を除き,記載することを要しない。

第2款 貸借対照表第266条(貸借対照表の項目区分)⑴ ①貸借対照表は,勘定形式で作成され

なければならない。②中規模資本会社及び大規模資本会社(第267条第2項

及び第3項)は,第2項に定められた項目を借方に,第3項に定められた項

目を貸方に,区別して,かつ,定められた順序で記載しなければならない。

③小規模株式会社(第267条第1項)では,第2項及び第3項にアルファベッ

ト又はローマ数字を付されて定められた項目を区別して,かつ,定められた

順序で記載した簡易貸借対照表を作成すればよい。④最小規模資本会社(第

267a条)では,第2項及び第3項にアルファベットが付されて定められた項

目を区別して,かつ,定められた順序で記載した簡易貸借対照表を作成すれ

ばよい。

⑵ 借方

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 A.固定資産

 Ⅰ.無体資産

⒈ 自己が創設した営業上の保護権並びに同様の権利及び価値

⒉ 有償で取得した営業許認可,営業上の保護権及び同様の権利及び価

値並びにそれらの権利及び価値のライセンス

⒊ 営業権又は暖簾

⒋ 前払金

 Ⅱ.有形固定資産

⒈ 土地,土地類似の権利,他人の土地上の建物も含めた建物

⒉ 技術設備及び機械

⒊ その他の設備,経営上及び業務上の備品

⒋ 建物に対する前払金及び投資

 Ⅲ.財務固定資産

⒈ 結合企業に対する持分

⒉ 結合企業に対する貸付け

⒊ 資本参加

⒋ 資本参加関係のある企業に対する貸付け

⒌ 固定資産に属する有価証券

⒍ その他の貸付け

 B.流動資産

 Ⅰ.棚卸資産

⒈ 原材料,補助材料及び貯蔵品

⒉ 仕掛品,半成工事

⒊ 製品及び商品

⒋ 前払金

 Ⅱ.債権その他の資産

⒈ 売掛金

⒉ 結合企業に対する債権

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⒊ 資本参加関係のある企業に対する債権

⒋ その他の資産

  Ⅲ.有価証券

⒈ 結合企業に対する持分

⒉ その他の有価証券

  Ⅳ.現金,連邦銀行預金,金融機関預金及び小切手

 C.計算限定項目

 D.繰延税金資産

 E.資産相殺による借方計上差額

⑶ 貸方

 A.自己資本

  Ⅰ.引受済資本

  Ⅱ.資本準備金

  Ⅲ.利益準備金

⒈ 法定準備金

⒉ 支配企業・多数参加企業の持分に対する準備金

⒊ 定款に基づく準備金

⒋ その他の利益準備金

  Ⅳ.繰越利益額/繰越損失額

  Ⅴ.年度利益/年度損失

 B.引当金

⒈ 年金及び同種の義務に対する引当金

⒉ 租税引当金

⒊ その他の引当金

 C.負債

⒈ 社債

   うち転換社債

⒉ 金融機関に対する負債

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⒊ 受取前受金

⒋ 買掛金

⒌ 為替手形の引受け又は約束手形の振出による負債

⒍ 結合企業に対する負債

⒎ 資本参加関係のある企業に対する負債

⒏ その他の負債

   うち租税負債

   うち社会保障負債

 D.計算限定項目

 E.繰延税金負債

第267条(規模の画定)⑴ 小規模資本会社とは,次の各号に掲げる三つの基

準のうち,いずれか二つ以上について超過しないもののことである。

⒈ 貸借対照表の額600万ユーロ

⒉ 決算日前12か月の売上高1200万ユーロ

⒊ 年間平均従業員数50名

⑵ 中規模資本会社とは,第1項各号に掲げる三つの基準のうちいずれか二つ

以上を超過し,かつ,次の各号に掲げる三つの基準のうちいずれか二つ以上

について超過しないもののことである。

⒈ 貸借対照表の額2000万ユーロ

⒉ 決算日前12か月の売上高4000万ユーロ

⒊ 年間平均従業員数250名

⑶ ①大規模資本会社とは,第2項各号に掲げる三つの基準のうちいずれか二

つ以上について超過するもののことである。②第264d条に該当する資本会社

は,常に大規模であるとみなす。

⑷ ①第1項から第3項までによる基準値による法的効果は,連続する2事業

年度の決算日において上回り又は下回った時にのみ生じる。②組織再編又は

新規設立の場合,第1項,第2項又は第3項の条件を組織再編又は新規設立

後最初の決算日に満たすときには,すぐにその効果が生じる。③第2文は,

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組織変更であって,変更する法主体が資本会社又は第264a条第1項に規定す

る人的商事会社である場合には適用しない。

(4a) ①貸借対照表の額は,第266条第2項AからEに掲げられた項目で構成

される。②借方に計上された損失額(第268条第3項)は,貸借対照表の額

に含まれない。

⑸ 平均従業員数は,3月31日,6月30日,9月30日及び12月31日の各日にお

ける被用従業員であって,外国における被用従業員を含み,職業訓練のため

の被用者を除いた者の数の合計の4分の1とする。

⑹ 他の法律による被用者代表の情報権及び解説請求権は,変更されない。

第267a条(最小規模資本会社)⑴ ①最小規模資本会社とは,小規模資本会

社であって,次の各号に掲げる三つの基準のうち,いずれか二つ以上につい

て超過しないもののことである。

⒈ 貸借対照表の額35万ユーロ

⒉ 決算日前12か月の売上高70万ユーロ

⒊ 年間平均従業員数10名

②第267条第4項から第6項は,準用される。

⑵ 本法において小規模資本会社(第267条第1項)について規定する特別規

定は,別段の定めがない限り,最小規模資本会社にも準用される。

⑶ 次の各号に掲げるものは,最小規模資本会社ではない。

⒈ 資本投資法典第1条第11項の意味における投資会社

⒉ 企業出資会社法第1a条第1項の意味における企業出資会社

⒊ 管理を直接に行うか間接に行うかにかかわりなく,また管理の際に株主

又は社員としての権利を行使するかどうかを考慮せず,その唯一の目的が

他の企業の持分を取得し,当該持分を管理運用することにある企業

第268条(貸借対照表の個別の項目についての規定,貸借対照表注記)⑴ ①

貸借対照表は,年度業績の全部又は一部の処分を考慮して作成することがで

きる。②年度業績の一部処分を考慮して貸借対照表を作成する場合,「年度

利益/年度損失」項目と「繰越利益額/繰越損失額」項目の間に「貸借対照

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表利益/貸借対照表損失」項目が入る。現存する利益額又は損失額を「貸借

対照表利益/貸借対照表損失」に算入し,貸借対照表に区分して記載されな

ければならない。③記載は,附属説明書にすることもできる。

⑵ (削除)

⑶ 自己資本が損失によって消尽し,貸方項目の合計額が借方項目の合計額を

超えているときは,当該額を貸借対照表の末尾の借方に区分して「自己資本

によって塡補されない欠損額」の名称で計上しなければならない。

⑷ ①存続期間が1年を超える債権の金額は,区分され計上される項目ごとに

注記されなければならない。②「その他の資産」項目に決算日後に法的に発

生することになる資産の額が計上されている場合に,多額であれば当該額を

附属説明書において注記しなければならない。

⑸ ①存続期間が1年以内である負債と1年を超える負債の金額は,区分され

計上される項目ごとに注記されなければならない。②受取前受金は,棚卸資

産に対する前受金が「棚卸資産」項目から明示的に控除されない場合は,負

債として区別して計上しなければならない。③「負債」項目に決算日後に法

的に発生することになる負債の額が計上されている場合に,多額であれば当

該額を附属説明書において注記しなければならない。

⑹ 第250条第3項により借方の計算限定項目に記載される差額は,貸借対照

表において区分して計上されるか,附属明細書に記載されなければならな

い。

⑺ 第251条に定められた責任関係は,次のように扱われなければならない。

⒈ 貸方に計上する必要のない債務及び責任関係の記載は附属明細書にしな

ければならない。

⒉ その際,責任関係は提供した質権とその他の保証の記載のもとそれぞれ

区分して記載しなければならない。

⒊ また老齢年金に関する債務及び結合企業又は連結企業に対する債務

は,それぞれ区分して注記されなければならない。

⑻ ①自己の創設にかかる無体資産であって固定資産たるものが計上される場

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合には,配当後に任意に処分できる準備金に繰越利益額を加え繰越損失額を

控除した額が,当該計上総額から当該資産について計上された繰延税金負債

を控除した額に少なくとも相応している場合に限り,利益を配当することが

できる。②繰延税金資産が計上される場合には,第1文は,繰延税金資産が

繰延税金負債を上回る額について適用されなければならない。③第246条第

2項第2文の意味における資産については,第1文は当該額から当該資産の

ために計上された繰延税金負債を控除した額について適用されなければなら

ない。

第269条(削除)

第270条(特別項目の設定)⑴ 資本準備金の積立て及びその取崩しは,貸借

対照表作成時において既になされていなければならない。

⑵ 貸借対照表が年度業績の全部又は一部の処分を考慮して作成されるとき

は,法律,会社契約又は定款に従って行われ又はそのような規定に従って決

定される利益準備金の取崩し又は利益準備金の積立ては,貸借対照表作成時

において既に考慮されていなければならない。

第271条(資本参加,結合企業)⑴ ①資本参加とは,他の企業の持分であって,

当該企業との持続的結合関係の生成によって自己の業務に役立てられるもの

をいう。②その際,当該持分が有価証券の形で書面化されているかは重要で

はない。③他の企業の持分が合計で当該他企業の額面資本の5分の1,又は

額面資本がない場合には当該他企業の全ての資本持分の合計の5分の1を超

えている場合には,資本参加が推定される。④この算出には株式法第16条第

2項及び第4項が準用される。登記協同組合の組合員たる地位は,本編にお

いて資本参加とは扱わない。

⑵ 本編において結合企業とは,親企業又は子企業(第290条)として親企業

のコンツェルン決算書に完全連結の規定に従って収容されるべき企業であっ

て,作成されていない場合も含め当該親企業が最上位の親企業として最も

広い範囲のコンツェルン決算書を第2節に従って作成しなければならない

か,第291条又は第292条による免除コンツェルン決算書を作成し,又は作成

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できるものであるものをいう。第296条によって収容されない子企業も,同

様に結合企業である。

第272条(自己資本)⑴ ①引受済資本は,額面額と一致しなければならない。

②引受済資本のうちまだ請求されていない未払込分は,「引受済資本」項目

から明示的に控除されなければならない。当該残額は「請求される資本」項

目として貸方の第1段に計上しなければならない。請求されたものの,いま

だ支払われていない額は,債権として区分して計上し,相応の名称を付さな

ければならない。

(1a) ①有償で取得された自己持分の額面額,額面がない場合には計算上の価

値は,第2段において明示的に「引受済資本」から控除されなればならない。

②額面額又は計算上の価値と自己持分購入額との差額は,任意に処分できる

準備金と相殺されなければならない。③取得の付随費用である支出は,当該

事業年度の費用である。

(1b) ①自己持分の譲渡の後は,第1a項第1文による計上は消除される。②譲

渡収益のうち額面額又は計算上の価値を超える差額については,任意に処分

可能な準備金と相殺した額の限度において当該準備金に算入されなければな

らない。③当該限度を超える差額については,第2項第1号による資本準備

金に算入されなければならない。④譲渡の付随費用は,当該年度の費用であ

る。

⑵ 以下の各号に掲げるものは,資本準備金として計上されなければならな

い。

⒈ 持分(持分引受権を含む。)の発行に際して額面額(額面額がない場合

には計算上の価値)を超えて支払われた額

⒉ 債券の発行に際して持分取得のための転換権又はオプション権に対して

支払われた額

⒊ 社員がその持分の優先権確保に対して行った追加支払の額

⒋ 社員が自己資本について行ったその他の追加支払の額

⑶ ①利益準備金には,当該事業年度又はそれ以前の事業年度において利益と

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して形成された額のみを計上することができる。②これには,法律,会社契

約又は定款に基づいて成果から形成されるべき準備金及びその他の利益準備

金が含まれる。

⑷ ①支配企業又は多数参加企業の持分について準備金を設定しなければなら

ない。②当該準備金には,貸借対照表の借方において支配企業又は多数参加

企業の持分として表示した額に合致する額を算入しなければならない。③貸

借対照表の作成の際に既に設定しなければならないものとなっている準備金

については,現存する任意に処分できる準備金から設定することができる。

④当該準備金は,支配企業又は多数参加企業の持分が譲渡され,交付され,

徴収され,又は借方においてより低い額で計上される限りにおいて,取り崩

される。

⑸ ①損益計算書の年度利益のうち資本参加に割り当てられる部分が,配当又

は利益持分として支払われた額又はその支払について資本会社が請求権を有

する額を超える場合には,当該差額は準備金に算入されなければならず,当

該準備金は分配されてはならない。②当該準備金は,資本会社が当該額を受

領するか,その支払について請求権を取得した限りで取り崩される。

第273条(削除)

第274条(繰延税金資産,繰延税金負債)⑴ ①資産,負債及び計算限定項目

の商法上の価値評価とその税法上の価値評価に差異があり,後年度において

当該差異が減少することが見込まれるときは,そこから生じている租税負担

増加の総額は,繰延税金負債(第266条第3項E)として貸借対照表に計上

しなければならない。②そこから生じている租税負担軽減の総額は,繰延

税金資産(第266条第2項D)として貸借対照表に計上することができる。

③生じている租税負担増加と生じている租税負担軽減は,相殺せずに計上す

ることもできる。④租税上の繰越損失額は,繰越税金資産の計算に際しては

次年度以降5年以内に予測される損失差額の程度で考慮されなければならな

い。

⑵ ①生じている租税負担増加及び租税負担軽減は,企業個別の税率をもって

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差異の解消の時点で評価されなければならず,割り引かれてはならない。②

計上された項目は,当該租税負担増加又は租税負担軽減が生じたか又はもは

や予期されないときは,直ちに解消されなければならない。③貸借対照表上

の繰延税金資産又は繰延税金負債の変更による費用又は収益は,損益計算書

において「所得及び収益からの租税」項目として区分して計上されなければ

ならない。

第274a条(規模による軽減措置) 小規模資本会社は,以下の各号に掲げる規

定の適用から免除される。

⒈ 附属説明書での特定の債権についての注記義務に関する第268条第4項

第2文

⒉ 附属説明書での特定の債務についての注記に関する第268条第5項第3

⒊ 第250条第3項による計算限定項目に関する第268条第6項

⒋ 繰延税金資産及び繰延税金負債の範囲に関する第274条

第3款 損益計算書第275条(項目区分)⑴ ①損益計算書は,報告形式により,総費用法又は売

上費用法により作成されなければならない。②その際,第2項又は第3項に

掲げられた項目を記載された順序で区分して表示しなければならない。

⑵ 総費用法を適用する場合には,以下のように表示しなければならない。

⒈ 売上高

⒉ 製品及び仕掛品有高の増加額又は減少額

⒊ その他の借方計上自己負担

⒋ その他の営業収益

⒌ 材料費

a) 原材料,補助材料,貯蔵品及び仕入商品の費用

b) 仕入役務の費用

⒍ 人件費

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a) 賃金及び給与

b) 社会給付又は老齢年金及び扶助の費用

うち老齢年金の費用

⒎ 減価償却

a) 固定資産中の無体資産及び有形固定資産の減価

b) 資本会社における通常の減価を超過する限りにおいて,流動資産の

減価

⒏ その他の営業費用

⒐ 資本参加から生じる収益

うち結合企業から生じる収益

10.財務固定資産中のその他の有価証券及び貸付けから生じる収益

  うち結合企業から生じる収益

11.その他の利息及び同種の収益

  うち結合企業から生じる収益

12.財務固定資産及び流動資産たる有価証券の減価

13.利息及び同種の費用

  うち結合企業に対する費用

14.所得及び収益からの租税

15.課税後の成果

16.その他の租税公課

17.年度利益/年度損失

⑶ 売上費用法を適用する場合には,以下のように表示しなければならない。

⒈ 売上高

⒉ 売上高実現のために供された業務執行の製造費用

⒊ 売上総収益

⒋ 販売費

⒌ 一般管理費

⒍ その他の営業収益

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⒎ その他の営業費用

⒏ 資本参加から生じる収益

うち結合企業から生じる収益

⒐ 財務固定資産中のその他の有価証券及び貸付けから生じる収益

うち結合企業から生じる収益

10.その他の利息及び同種の収益

 うち結合企業から生じる収益

11. 財務固定資産及び流動資産たる有価証券の減価

12. 利息及び同種の費用

うち結合企業に対する費用

13. 所得及び収益からの租税

14. 課税後の成果

15. その他の租税公課

16. 年度利益/年度損失

⑷ 資本準備金及び利益準備金の変更は,「年度利益/年度損失」項目の後ろ

で初めて表示されることができる。

⑸ 最小規模資本会社(第267a条)は,第2項及び第3項の報告形式に代えて,

以下に示すような損益計算書を表示することができる。

⒈ 売上高

⒉ その他の収益

⒊ 材料費

⒋ 人件費

⒌ 減価

⒍ その他の費用

⒎ 租税公課

⒏ 年度利益/年度損失

第276条(規模による軽減措置) ①小規模及び中規模資本会社(第267条第1

項,第2項)は,第275条第2項第1号から第5号まで又は第3項第1号か

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ら第3号まで及び第6号の項目を「粗成果(Rohergebnis)」の名称で一括す

ることができる。②第1文による軽減措置は,第275条第5項の規定を利用

する最小規模株式会社(第267a条)には適用されない。

第277条(損益計算書の個別項目に関する規定)⑴ 売上高には,資本会社に

よる商品の売却及び使用賃貸又は用役賃貸並びに用役行為の提供から生じた

売上から,売上控除額及び売上税その他の売上と直接に結びつけられた租税

公課を差し引いた額を計上しなければならない。

⑵ 製品及び仕掛品有高の変化には,数量の変化も価値の変化も考慮されなけ

ればならない。減額については,それが資本会社において通常生じる減額を

超えない場合に限る。

⑶ ①第253条第3項第5文及び第6文による計画外の減価は,その都度区分

して計上するか,附属説明書に計上しなければならない。②損失引受から生

じる収益及び費用,並びに利益共同体,利益引渡契約又は部分利益引渡契約

に基づいて受領され又は引き渡された利益は,その都度区別して相応の名称

で計上されなければならない。

⑷ (削除)

⑸ ①割引から生じた収益は損益計算書に区分して「その他の利息及び同種の

収益」項目の下に,また生じた費用は区分して「利息及び同種の費用」項目

の下に計上しなければならない。②通貨換算から生じる収益は損益計算書に

区分して「その他の営業収益」項目の下に,また,生じた費用は「その他の

営業費用」項目の下に計上しなければならない。

第278条(削除)

第4款(削除)第279条ないし第283条(削除)

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第5款 附属説明書第284条(貸借対照表及び損益計算書の説明)⑴ ①附属明細書には,貸借対

照表又は損益計算書の個々の項目について定められている事項の記載をしな

ければならない。当該記載は貸借対照表又は損益計算書の個々の項目の順序

で表示されなければならない。②附属説明書には,貸借対照表又は損益計算

書において記載されなかった選択権行使についても記載をしなければならな

い。

⑵ 附属説明書では,以下の各号に定めることがされなければならない。

⒈ 貸借対照表又は損益計算書の項目に適用した計上方法及び評価方法の記

⒉ 計上方法及び評価方法からの逸脱及びその理由の記載。その際,逸脱に

よる財産,財務及び収益の状況への影響が区分して記載されなければなら

ない。

⒊ 第240条第4項又は第256条第1文による評価方法の適用に際して,当該

評価が決算日前に確認された最終の取引所価格又は市場価格に基づく評価

と比較して重大な差異があるときは,それぞれの群で一括して表示した当

該差額の記載

⒋ 製造費用に組み入れた他人資本への利息支払額の記載

⑶ ①附属説明書においては,固定資産の個々の項目の増減を区分された内訳

により表示しなければならない。②この場合,総購入費用及び総製造費用か

ら始めて,当該事業年度の数量増加による増大額,数量減少による減少額,

固定資産項目間の振替額,価値の増減による増額及び減額を区別して列挙し

なければならない。③価値の減少による減額については以下の各号に掲げる

事項を区別して記載しなければならない。

⒈ 当該事業年度の期首及び期末における減額の総額

⒉ 事業年度期間中になされた減額

⒊ 事業年度期間中になされた数量増加による額の増大,数量減少による額

の減少,額の振替に関連する減額変更の総額

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④製造費用に他人資本への利息が組み入れられたときは,各固定資産項目ご

とに,当該事業年度において当該利息としてどの程度の額が借方計上された

かが記載されなければならない。

第285条(その他の義務的記載) さらに附属説明書には以下の各号に定める

事項が記載されなければならない。

⒈ 貸借対照表に計上された負債に関する次の事項

a) 存続期間が1年を超える負債の総額

b) 質権又は同種の権利を通じて保証されている債務につき,担保の種

類と方式を示してその総額

⒉ 定められた区分枠組みに従ってなされる,各負債項目についての第1号

で求められた記載の内訳

⒊ そのリスクと利点が重大であってその公開が企業の財務状態の判断に必

要である限りにおいて,貸借対照表に包含されていない取引の種類と目

的,リスク,利点及び財務上の影響

3a.その記載が企業の財務状態の判断に必要である限りにおいて,貸借対照

表に包含されておらず,かつ,第268条第7項又は本条第3号によって記

載が求められていないその他の財務上の義務の総額。そのうち老齢年金に

関する義務及び結合企業又は連結企業に対する義務については,それぞれ

区分して記載されなければならない。

⒋ 資本会社による商品の売却及び使用賃貸又は用役賃貸並びに用役行為の

提供についての組織を考慮して業務範囲及び地理的に決定された市場が相

互に大きく異なる限りにおいて,業務範囲別及び地理的に決定された市場

別による売上高の内訳

⒌ (削除)

⒍ (削除)

⒎ 種類別に区分された事業年度間平均労働者数

⒏ 売上費用法(第275条第3項)を適用する場合における次の事項

a) 第275条第2項第5号の区分に従って記載された,当該事業年度の材

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料費

b) 第275条第2項第6号の区分に従って記載された,当該事業年度の人

件費

⒐ 業務執行機関,監査役会,委員会又は同様の組織の構成員に関し,それ

ぞれの人的グループごとの次の事項

a) ①その職務執行に対して当該事業年度において与えられた報酬総額

(給与,利益分配,新株引受権その他の株式を基礎とした報酬,費用

補償,保険料,手数料及び各種の付随給付)。②報酬総額には,支払わ

れるのではなく,他の請求権に転換され又は他の請求権の増額に用いら

れる報酬も含まれなければならない。③当該事業年度に対する報酬の他

に,当該事業年度に支払われた報酬であって過去の年度決算書において

記載されていないものも記載されなければならない。④新株引受権その

他の株式を基礎とした報酬は,その数及び付与の時点において付すべき

時価を記載しなければならない。行使条件の変更によって生じるその後

の価値変化は考慮されなければならない。⑤上場株式会社においては追

加的に,氏名の明示のもと,個々の取締役構成員の報酬を,業績とは独

立の部分及び業績に連動する部分並びに長期的インセンティブ効果を伴

う部分とに分割して記載しなければならない。⑥以下についても同様で

ある。

aa) 取締役構成員に対して当該構成員の活動が予定前に終了した場合に

ついて約定された給付

bb) 取締役構成員に対して当該構成員の活動が通常どおりに終了した場

合について約定された給付とその現金価値,並びに会社から事業年度

中にそのために支出され又は返還された額

cc) 事業年度中に合意されたこれらの約定の変更

dd) 元取締役構成員に対する給付であって,当該構成員の活動が当該事

業年度の期間中に終了し,かつ,当該活動との関係において約定さ

れ,当該事業年度中に履行されたもの

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⑦個々の取締役構成員に対する第三者からの給付であって,当該構成員の

取締役構成員としての活動を顧慮して約定され又は履行されたものは,同

様に記載されなければならない。⑧年度決算書が特定の報酬についての一

般的な記載を含むときは,それについて追加的に個別に記載されなければ

ならない。

b) ①列挙された機関の元構成員及びその遺族への報酬の総額(一時金,

年金,遺族給付及び類似した種類の給付)。②a)第2文及び第3文は準

用される。③加えて,これらの人的グループに向けて積み立てられた継

続的年金及び年金承継権のための引当金,並びにそれらのためにまだ積

み立てられていない引当金が記載されなければならない。

c) 給付された前払金及び信用(利子率,重要な条件,当該事業年度中に

返済又は免除された場合にはその額も記載すること)並びに当該人員に

対して有利になるように引き受けられた責任関係

10.①当該事業年度中又はその後に辞任した場合も含めて,業務執行機関及

び監査役会の全ての構成員につき,姓と少なくとも一つにつき略記されて

いない名,果たした職務,及び上場会社においては監査役会及び株式法第

125条第1項第5文の意味における他の監督委員会の構成員。②監査役会

議長,監査役会議長代行,及び業務執行機関に議長を置くときは当該議長

について,そのように記載されなければならない。

11.当該資本会社が他の企業に対して第271条第1項の意味における資本参

加をしているか,他の者が当該資本会社の計算においてかかる持分を有し

ている場合における,当該他の企業の名称,本拠,資本持分の有高,年度

決算書が損する直近の事業年度における自己資本と損益

11a.当該資本会社が無限責任社員となっている企業の名称,本拠,法形態

11b.上場資本会社においては,大規模資本会社への資本参加であって議決

権の5パーセントを超えるものは記載されなければならない。

12.貸借対照表において「その他の引当金」項目において区分せずに計上さ

れている引当金は,重大でないとはいえない範囲を有するときは,説明さ

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れなければならない。

13.有償で取得された営業権又は暖簾それぞれについて,それらが償却され

る期間についての説明

14.当該資本会社の親企業であって企業の最大範囲につきコンツェルン決算

書を作成するものの名称及び本拠,並びに当該親企業により作成されたコ

ンツェルン決算書を入手できる場所

14a.当該資本会社の親企業であって企業の最小範囲につきコンツェルン決

算書を作成するものの名称及び本拠,並びに当該親企業により作成された

コンツェルン決算書を入手できる場所

15.第264a条第1項の意味における人的商事会社の年度決算書の附属説明書

に関する限りにおいて,無限責任社員である会社の名称及び本拠並びに当

該社員の引受済資本

15a.享益証券,享益権,転換社債,オプション証券,オプション権,優先

証券又は同様の有価証券又は権利,その数及びそれが与える権利内容

16.株式法第161条によって定められた説明がなされたか,及びどこで公に

入手可能とされているか

17.下記の項目に区分して,決算監査人から当該事業年度について請求され

た報酬の総額

a) 決算書監査業務

b) その他の確認業務

c) 税務相談業務

d) その他の業務

 ただし,当該企業を組み込んでいるコンツェルン決算書に記載されてい

ない場合に限る。

18.財務固定資産(第266条第2項A.Ⅲ.)に属する金融資産であって付すべ

き時価が計上されるものについて,第253条第3項第6文による計画外減

価がなされない場合における次の事項

a) 個々の資産又は適当に分類したグループの簿価及び付すべき時価

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b) 価値低下が持続しないと見込まれることを示唆する根拠を含め,減

価を行わない理由

19.付すべき時価によらずに計上される金融派生商品の範疇それぞれについ

て,次の事項

a) その種類と範囲

b) 第255条第4項により信頼して表示できる限りにおいて,その付すべ

き時価を,適用された評価方法の記載とともに。

c) 簿価及び存在する限りにおいて当該簿価が計上されている貸借対照表

項目

d) 付すべき時価を確定することができない理由

20.第340e条第3項第1文により付すべき時価をもって評価された金融商品

についての次の事項

a) 一般に認められた評価方法を用いた付すべき時価の決定において根拠

とされた基礎的前提

b) 将来のキャッシュフローの額,時点及び確実性に影響を及ぼし得る

重要な条件を含め,金融派生商品の各範疇の範囲と種類

21.緊密な企業又は個人との間で少なくとも市場の通常の条件によらずに成

立した取引のうち,重要なものであるものを,その関係の性質,取引の価

値及び財務状態の判断にとって必要な他の記載とともに。ただし,間接又

は直接に100%の持分を所有しているコンツェルン決算書に連結されてい

る企業との間の取引は除く。取引の記載は,記載の分離が当該取引の財務

状態への影響の判断にとって必要でない限りにおいて,取引の種類ごとに

まとめて記載できる。

22.第248条第2項による借方計上の場合,当該事業年度における研究費及

び開発費の総額及びそのうち自己の創設に係る無体資産であって固定資産

たるものに割り当てられる費用

23.第254条の適用に関する次の事項。ただし,当該事項が状況報告書に記

載されない場合に限る。

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a) 資産,負債,未済取引又は高い蓋然性のある取引行為それぞれについ

て,いかなる額で,いかなるリスクの防護のために,いかなる種類の評

価単位に組み合わされているか及び評価単位によって防護されているリ

スクの大きさ

b) 防護されているリスクそれぞれにつき,なぜ,どの範囲で,どの期間,

反対方向の価値変動又はキャッシュフローが将来において減殺されると

見込まれるか及びその算出の方法

c) 高い蓋然性のある取引行為であって評価単位に組み入れられたものに

ついての説明

24.年金引当金及び同種の義務について,適用された保険数理上の算定方法

並びに利子率,予想される賃金及び給与の上昇,基礎とした死亡率表その

他の算定について基礎に置いた仮定

25.第246条第2項による資産と負債の相殺をする場合における当該相殺さ

れる資産の購入費用及び付すべき時価,当該相殺される負債の履行価額,

並びに相殺された費用と収益。第20号a)は準用される。

26.資本投資法典第1条第10項の意味における特別財産の持分又は資本投資

法典第108条から第123条の意味における可変資本投資株式会社の投資株式

又は同様のEU投資資産又は同様の外国の投資資産であって10分の1以上

を有するものにつき,投資目的別に分類して,その資本投資法典第168条

及び第278条又は2013年7月21日まで施行されていた投資法第36条又は市

場価値の表示に関する同様の外国の規定の意味における価値,簿価との差

異及び当該事業年度に取得した配当並びに即日返還の可能性の制限。その

他に,価値減少が持続しないと見込まれると示唆する根拠を含め,第253

条第3項第6文による減額を行わない理由。この限りで第18号は適用され

ない。

27.第268条第7項第1号によって附属説明書に記載されるべき債務及び責

任関係について,請求権のリスクの見積りの理由

28.自己の創設に係る無体資産であって固定資産たるものとして借方計上さ

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れた額,繰延税金資産の額及び時価を付すべき資産の借方計上とに区分し

た第268条第8項の額の総額 

29.繰延税金資産又は繰延税金負債の原因となる差異あるいは租税上の繰越

損失,及び評価に用いた税率

30.繰延税金負債が貸借対照表に計上されている場合,事業年度末における

繰延税金残高及び当該事業期間において生じたかかる残高の変化

31.その額が従属的な意味であるとはいえない限りにおいて,異例な大きさ

である又は異例の事柄により生じる収益又は費用の額と種類

32.その額が従属的な意味であるとはいえない限りにおいて,他の事業年度

に帰属すべき個々の収益又は費用についての額及び種類に関しての説明

33.特別な意義を有する事象であって事業年度の終結後に生じ,損益計算書

及び貸借対照表において顧慮されていないもの。その種類と財務的影響の

記載を付すこと。

34.成果の処分に関する提案,又は処分の決定

第286条(記載の中止)⑴ 報告は,ドイツ連邦共和国又はその州の福祉のた

めに必要である限りにおいては,中止されなければならない。

⑵ 第285条第4号による売上高の内訳記載は,健全な商人の判断により当該

内訳記載によって資本会社に相当な不利益を与えると判断されるときは,行

わないことができる。この例外規定を適用したことは,附属説明書に記載さ

れなければならない。

⑶ ①第285条第11号及び第11b号による記載は,以下の各号のいずれかに該当

するときは,行わないことができる。

⒈ 第264条2項に基づく資本会社の財産,財務及び収益の状況の表示にとっ

て従属的な意味である場合

⒉ 健全な商人の判断により,資本会社又は他の企業に相当な不利益を与え

ると判断されるとき。

②自己資本と年度成果の記載は,報告されるべき企業がその年度決算書を公

開する義務を負わず,各報告する資本会社が当該企業に対して支配力を行使

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できない場合には,行わないことができる。③第1文第2号は,資本会社又

はその子企業(第290条第1項及び第2項)が決算日において第264d条の意

味において資本市場を指向しているときには,適用されない。④その他の場

合,第1文第2号による例外規定を適用したことは,附属説明書に記載され

なければならない。

⑷ 上場株式会社ではない会社においては,第285条第9号a)及びb)におい

て定める,同号に規定された者に対する総額についての記載は,それらの記

載によってそれらの期間の構成員個人の額が明らかになるときは,行わない

ことができる。

⑸ ①第285条第9号a)第5文から第8文において求められる記載は,株主総

会が決議した場合には,行われない。②決議は,最長5年間について決定で

き,その可決には決議時に出席した基本資本の4分の3以上の多数が必要で

ある。③株式法第136条第1項は,その取締役構成員としての収入が当該決

議に関連している株主について準用する。

第287条(削除)

第288条(規模による軽減措置)⑴ 小規模資本会社(第267条第1項)にお

いては,次の各号に掲げる事項を行うことを要しない。

⒈ 第264c条第2項,第265条第4項第2文,第284条第2項第3号,第3項,

第285条第2号,第3号,第4号,第8号,第9号a)及びb),第10号から

第12号まで,第14号,第15号,第15a号,第17号から第19号まで,第21号,

第22号,第24号,第26号から第30号まで,第32号から第34号までに基づく

記載

⒉ 第285条第7号の記載におけるグループによる分割

⒊ 第285条第14a号の記載に際して,親企業が作成したコンツェルン決算書

を入手できる場所の記載

⑵ ①中規模資本会社(第267条第2項)においては,第285条第4号,第29号

及び第32号による記載をすることを要しない。②中規模資本会社が第285条

第17号による記載を行わないときは,そのことを公認会計士協会に対して,

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その書面による求めに応じて通知しなければならない。③中規模資本会社に

おける第285条第21号による記載については,取引が当該会社の社員,当該

会社が自ら参加する企業,又は業務執行機関,監査機関又は管理機関の構成

員との間で直接又は間接に締結される場合に限り記載すれば足りる。

第6款 状況報告書第289条(状況報告書の内容)⑴ ①状況報告書には,業務の成果及び資本会

社の状況を含めた業務の経過を,事実の諸関係に対応した写像が表示される

ように叙述しなければならない。②状況報告書には,衡平かつ包括的で業務

活動の範囲と複雑性に応じてなされた業務の経過及び会社の状況の分析を含

まなければならない。③当該分析には,業務活動について最も重要な財務上

の執行指標(Leistungsindikatoren)を取り入れなければならず,年度決算

書に計上された額及び記載と関連づけて説明されなければならない。④さら

に状況報告書には,予測される展開について,その重要な機会とリスクを判

断し,説明しなければならない。その基礎となる仮定を記載しなければなら

ない。⑤第264条第2項第3文の意味における資本会社の法律上の代表者は,

その最善の知識において状況報告書に業務の成果及び資本会社の状況を含め

た業務の経過が事実の諸関係に対応した写像が表示されるように叙述されて

いること及び第4文の意味における重要な機会とリスクが記載されているこ

とを保証しなければならない。

⑵ 状況報告書には,以下の各号に定める事項も含まれなければならない。

⒈a) 全ての重要な取引種類の防護の方法であって保全措置の貸借対照表計

上の構造において把握されたものを含めた,会社のリスク管理の目標と方

b) 会社がさらされている価格変動リスク,減損リスク,流動性リスク

及びキャッシュフロー変動から生じるリスク

 それぞれにつき会社による金融商品の使用と関連づけて,また,それらが状

況や予測される展開の判断にとって重要なものに限る。

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⒉ 研究及び開発の範囲

⒊ 会社に存在する支店

⒋ ①上場株式会社である場合には,第285条第9号に挙げられた総報酬に

ついての当該会社の報酬制度の基本的特徴。②この際に第285条第9号a)

第5文から第8文に対応する記載がなされる場合には,これらの事項は附

属説明書に記載することを要しない。

 附属説明書に株式法第160条第1項第2号による記載がされなければならな

いときは,状況報告書においてそれを参照するよう指示しなければならな

い。

⑶ 大規模資本会社(第267条第3項)においては,第1項第3文は,例えば

環境利益や被用者利益についての情報などの財務上のものではない執行指標

についても,それらが業務の経過や状況の理解にとって重要な限りで準用さ

れる。

⑷ ①株式会社及び株式合資会社であって,有価証券の購入及び引受けに関す

る法律第2条第7項の意味における組織化された市場に対してその発行した

議決権付株式により請求権を有するものは,状況報告書に以下の事項を記載

しなければならない。

⒈ 引受済資本の構成。異なる種類の株式がある場合には,附属説明書に記

載されていない限りにおいて,各種類につきその権利及び義務並びに会社

資本に対する割合を記載しなければならない。

⒉ 議決権又は株式譲渡についての制限。それが社員間の合意によって生じ

る場合であっても,会社の取締役が知る限りにおいて記載しなければなら

ない。

⒊ 資本に対する直接又は間接の参加であって議決権の10パーセントを超え

るもの。ただし,当該記載が附属説明書になされていない場合に限る。

⒋ 支配権限を与えるような特別の権利を伴う株式の所有者。当該特別の権

利は記載されなければならない。

⒌ 被用者が資本に参加しており,その支配権が直接に行使されない場合

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は,議決権支配の種類

⒍ 取締役構成員の任命と解任及び定款の変更に関する法律上の規定及び定

款の規定

⒎ 取締役の権限,特に株式の発行又は再取得の可能性に関するもの

⒏ 買収提案の結果として生じる支配変更を条件として存在している,会社

の重要な定めとそこから生じる効果。記載によって会社に相当な不利益を

与えると判断されるときは,記載を行わないことができる。他の法律上の

規定による記載義務には影響しない。

⒐ 記載が附属説明書になされていない限りにおいて,買収提案の場合にお

いて取締役構成員又は被用者との間で締結された補償合意

 ②第1文による記載が附属説明書になされている場合は,状況報告書におい

てそれを参照するよう指示しなければならない。

⑸ 第264d条の意味における資本会社は,状況報告書において会計過程におけ

る内部統制システム及びリスク管理システムの重要な特徴について記述しな

ければならない。

第289a条(企業運営の説明)⑴ ①上場株式会社,及び株式以外の有価証券

のみを有価証券取引法第2条第5項の意味における組織化された市場におい

て取引させている株式会社であって,その発行する株式が自己の主導により

有価証券取引法第2条第3項第1文第8号の意味における多数当事者間取引

システムにおいて取引されたものは,その状況報告書において,異なる節を

立てた上で,企業運営の説明を掲載しなければならない。②企業運営の説明

は,会社のインターネットサイトにおいて公に入手可能とすることができ

る。③この場合,状況報告書には,インターネットサイトの記載を含んだ関

連づけが掲載されなければならない。

⑵ 企業運営の説明には,以下の各号に掲げる事項を掲載しなければならな

い。

⒈ 株式法第161条による説明

⒉ 法律上の要求を超えて適用される企業運営実務についての重要な記載及

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びそれがどこで入手可能であるかについての指摘

⒊ 取締役及び監査役会の職務執行の方法並びにそれらの委員会の構成及び

職務執行の方法。これらの情報が会社のインターネットサイトで公に入手

可能であるときは,それを参照するよう記載することができる。

⒋ 上場株式会社においては,株式法第76条第4項及び同法第111条第5項

の決定,並びに決定した目標値を実施期間のあいだに達成されたかどうか

の記載,されなかった場合は理由の記載

5. 次のいずれかに該当する会社について,会社が監査役会の構成をするに

際して,女性と男性それぞれについて関係する期間において最小割合を遵

守していたかどうか,もし遵守していなかった場合にはその理由

a) 上場株式会社であって,株式法第96条第2項及び第3項に基づいて最

小割合を遵守すべきもの

b) 上場ヨーロッパ会社(SE)であって,ヨーロッパ会社施行法第17条

第2項又は第24条第3項に基づいて最小割合を遵守すべきもの

⑶ 上場株式合資会社には,第1項及び第2項が準用される。

⑷ ①他の企業であって,その代表機関及び監査役会が有限会社法第36条若し

くは第52条,又は保険監督法第34条第2文及び同法第35条第3項第1文が準

用する株式法第76条第4項,又は保険監督法第35条第3項第1文が準用する

株式法第111条第5項によって,女性が占める割合の目標値及びその達成時

期を決定しなければならないものは,状況報告書において異なる節を立て,

第2項第4号に定める決定と記載を伴う企業運営の説明を掲載しなければな

らない。第1項第2文及び第3文は準用される。②状況報告書の公開を義務

付けられていない会社は,第2項第4号に定める決定と記載を伴う説明を作

成し,第1項第2文に従って公表しなければならない。③当該会社は,この

義務を第1文に従って作成された状況報告書の公表によって満たすこともで

きる。

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第2節 コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書

第1款 適用範囲第290条(作成義務)⑴ ①国内に本拠を有する資本会社(親企業)の法律上

の代表者は,他の企業(子企業)に対して直接又は間接に支配力を行使でき

るときは,コンツェルン事業年度の開始後5か月以内に,前コンツェルン事

業年度についてコンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書を作成しな

ければならない。②親企業が第325条第4項第1文の意味における資本会社

であるときは,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書はコンツェ

ルン事業年度の開始後4か月以内に前コンツェルン事業年度について作成さ

れなければならない。

⑵ 次の各号のいずれかに該当する場合,親企業の支配力が存在するものとす

る。

⒈ 他の企業についてその議決権の多数を保有しているとき。

⒉ 他の企業について,財務政策及び事業政策を決定する管理機関,執行機

関又は監査機関の構成員の多数を任命し解任する権利を保有し,かつ当該

企業の社員であるとき。

⒊ 他の企業と締結した支配契約によって,あるいは他の企業の定款の定め

に基づいて,他の企業の財務政策及び事業政策を決定する権利を有すると

き。

⒋ ①経済的に観察して,当該企業が他の企業のリスク及び機会の多数を

担っており,当該他の企業が狭く限定され詳細に定義された親会社の目的

に奉仕するものであるとき(目的会社)。②企業と並んで,その他の私法

上の法人又は私法上の非独立的特別財産も,投資法第2条第3項の意味に

おける適格特定財産又はこれに相当する外国の投資財産,又は特別財産と

して設定された確定投資条件付公開内国特別代替投資ファンド又はこれに

相当するEU投資財産又は確定投資条件付公開内国特別代替投資ファンド

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に相当する外国の投資会社を除いて,目的会社足り得る。

⑶ ①他の子企業が有する権利及び親企業又は子企業の計算において行動する

者が有する権利も,第2項によって親企業が有する権利とみなす。②親企業

自身又はその子企業が他の企業の社員との合意に基づいて当該他の企業に対

して行使できる権利は,親企業が他の企業に対して有している権利に加えら

れる。③以下の権利は,控除されなければならない。

⒈ 親企業又はその子企業が他の者の計算において保有している持分と結び

つく権利

⒉ 担保として提供されている持分と結びつく権利であって,当該権利が担

保提供者の指示によって,又は金融機関が当該持分を貸付けに対する担保

として有する場合に,担保提供者の利益のために行使されるもの

⑷ ①議決権のどの程度を企業が有しているかは,第2項第1号による多数の

計算においては,当該企業に属する持分に基づいて行使できる議決権の数

と,全ての議決権の総数との比較によって定める。②全ての議決権の総数か

らは,子企業自身,子企業の子企業,又はそれらの企業の計算による者に帰

属する自己持分は除外されなければならない。

⑸ 親企業は,第296条によってコンツェルン決算書に収容する必要のない子

企業のみを有するときは,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書

を作成すべき義務を免除される。

第291条(EU又は欧州経済圏のコンツェルン決算書の免除的効力)⑴ ①親企

業であって同時に欧州連合加盟国又は欧州経済圏協定締約国に本拠を有す

る親企業の子企業であるものは,その親企業の第2項の規定に合致するコン

ツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書並びにその証明の付記又は証明

拒絶が,省略されるコンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書につい

て基準となる規定に従い,ドイツ語で開示されたときは,コンツェルン決算

書及びコンツェルン状況報告書を作成することを要しない。②免除コンツェ

ルン決算書及び免除コンツェルン状況報告書は,当該企業が欧州連合加盟国

又は欧州経済圏協定締約国に本拠を有する資本会社として免除親企業とその

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子企業とを連結したコンツェルン決算書を作成することを義務付けられてい

た場合には,各企業ともその法形式及び規模にかかわりなく作成され得る。

⑵ ①欧州連合加盟国又は欧州経済圏協定締約国に本拠を有する親企業のコン

ツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書は,以下の各号のすべてに適合

する場合,免除的効力を有する。

⒈ 免除親企業とその子企業が免除コンツェルン決算書に第296条に反する

ことなく連結されていること。

⒉ 親企業に適用される法に従った免除コンツェルン決算書が指令2013/34/

EUに調和して又は第315a条に掲げる国際的会計基準に調和して作成さ

れ,かつ,指令2006/43/EGに調和して監査されていること。

⒊ 親企業に適用される法に従った免除コンツェルン状況報告書が指令

2013/34/EUに調和して作成され,かつ,指令2006/43/EGに調和して監査

されていること。

⒋ 免除されるべき企業の年度決算書の附属説明書に以下の記載がされてい

ること。

a) 免除コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書を作成する親企

業の名称及び本拠

b) コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書を作成すべき義務

からの免除についての指摘

c) 免除コンツェルン決算書においてドイツ法から逸脱して適用されてい

る計上方法,評価方法及び連結方法についての説明

 ②第1文は金融機関及び保険企業に準用される。免除コンツェルン決算書及

び免除コンツェルン状況報告書の作成は,第1文の他の条件に反することな

く,かつ,金融機関においては銀行及びその他の金融機関の年度決算書及び

連結決算書に関する1986年12月8日理事会指令86/635/EWG(ABl. EG Nr. L

372 S. 1)に調和して,また保険企業においては保険企業の年度決算書及び

連結決算書に関する1991年12月19日理事会指令91/674/EWG(ABl. EG Nr. L

374 S. 7)に調和して,それぞれに適用される形式で行われなければならない。

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⑶ 第1項による免除は,第2項の条件が満たされる場合であっても,次の場

合には親企業は行使することができない。

⒈ 免除されるべき親企業が有価証券取引法第2条第5項の意味における組

織化された市場に対して,自身により発行された有価証券取引法第2条第

1項の意味における有価証券によって権利を有する場合

⒉ 免除されるべき親企業の社員のうち株式会社及び株式合資会社におい

ては10パーセント以上の,また有限会社においては20パーセント以上の者

が,コンツェルン事業年度の終了の6か月前までにコンツェルン決算書及

びコンツェルン状況報告書の作成を要求した場合

第292条(第三国のコンツェルン決算書の免除的効力)⑴ ①親企業であって,

かつ,欧州連合加盟国でも欧州経済圏協定締約国でもない国に本拠を有する

親企業の子企業であるものは,当該他の親企業が第291条第2項第1号に合

致するコンツェルン決算書(免除コンツェルン決算書)及びコンツェルン状

況報告書(免除コンツェルン状況報告書)を作成するほか,以下の全ての条

件を満たすときは,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書を作成

することを要しない。

⒈ 免除コンツェルン決算書が以下のいずれかに従って作成されること。

a) 欧州連合加盟国又は欧州経済圏協定締約国の法に準じて指令2013/34/

EUに調和して作成されること。

b) 第315a条第1項に掲げる国際的会計基準に調和して作成されること。

c) a)に掲げられた基準に従って作成されたコンツェルン決算書と等価

値であるように作成されること。

d) 委任規則(EU)Nr. 310/2012 (ABl. L 103 vom 13. 4. 2012, S. 11)によっ

て改正された,欧州議会及び欧州理事会指令2003/71/EG及び2004/19/

EGに従ってなされる第三国発行者に適用される会計原則の同価値性の

査定のメカニズムの整備に関する2007年12月21日委員会規則(EG)Nr.

1569/2007 (ABl. L 340 vom 22. 12. 2007, S. 66)に従い,それぞれに適用

される形式で確立された国際的会計基準に合致するように作成されるこ

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と。

⒉ 免除コンツェルン状況報告書が第1号aに示された準則に従って作成さ

れるか,又は当該準則によって作成されたコンツェルン状況報告書と同価

値であること。

⒊ 免除コンツェルン決算書が,当該決算書を作成した企業の基礎となって

いる国の法規定に基づいて年度決算書の監査を行うことが認められる1名

若しくは複数の決算監査人又は1つ若しくは複数の監査法人により監査さ

れていること。

⒋ 免除コンツェルン決算書,免除コンツェルン状況報告書及び証明の付記

が,省略されるコンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書について

基準となる規定に従いドイツ語で公開されること。

⑵ ①免除的効力は,免除される企業の年度決算書の附属説明書に第291条第

2項第1文第4号に示された記載がなされており,かつ,追加的に第1項第

1号に示された準則のいずれにより,また場合によりいずれの国の法によっ

て免除コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書が作成されたかにつ

いて記載された場合に限り,生じる。②その他の点については第291条第2

項第2文及び第3項が準用される。

⑶ ①第1項により認められるコンツェルン決算書が指令2006/43/EGの規定

に従って認められるのではない決算監査人によって監査された場合は,当該

指令が要求するところと同等の能力を当該監査人が有しており,かつ,当該

コンツェルン決算書が第3節の要求するところと合致した方法で監査されて

いる場合に限り,免除的効力が生じる。②指令2006/43/EGの規定に従って

認められるのではない決算監査人であり,その監査対象である企業が会計監

査人法第3条第1項第1文の意味における第三国に本拠を有する企業であ

り,かつ,当該企業の有価証券取引法第2条第1項の意味における有価証券

が内国証券市場において規制市場で取引されることを認められたものである

ときは,当該決算監査人は,公認会計士協会によって公認会計士法第134条

第1項に基づき登録されるか,又は公認会計士法第134条第4項によって同

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質性が認められる場合に,当該指令が要求するところと同等の能力を有して

いるものとする。③第2文は,専ら有価証券取引法第2条第1項第3号の意

味における負債証券であって,その最小額面価額が5万ユーロ又は他の通貨

でこれと等価の額のものが内国証券市場において規制市場で取引されること

を認められたものであるときは,適用されない。④第2項に規定する場合に

おいては,第1項第4号の証明の付記とともに,決算監査人の登録について

の公認会計士法第134条第2a項による公認会計士協会の証明,又は登録義務

の免除に関する公認会計士法第134条第4項第8文による公認会計士協会の

確認を公開しなければならない。

第292a条(削除)

第293条(規模による免除)⑴ ①以下の各号のいずれかに該当するときは,

親企業は,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書を作成すべき義

務を免除される。

⒈ ある事業年度の決算日及びその直前の事業年度の決算日において,次に

掲げる3つの基準のうち少なくとも2つを満たす場合

a) 親企業及びコンツェルンに組み入れられるべき子企業の貸借対照表の

貸借対照表額が,その総計で2400万ユーロを超えないこと。

b) 親企業及びコンツェルンに組み入れられるべき子企業の売上額が,

決算日の前12か月において総計で4800万ユーロを超えないこと。

c) 親企業及びコンツェルンに組み入れられる子企業が,決算日の前12か

月における年間平均で250名を超える従業員を雇用していないこと。

⒉ 当該企業によって作成されるべきコンツェルン決算書の決算日及びその

直前の決算日において,次に掲げる3つの基準のうち少なくとも2つを満

たす場合

a) 貸借対照表額が2000万ユーロを超えないこと。

b) 売上額が,決算日の前12か月において総計で4000万ユーロを超えない

こと。

c) 親企業及びコンツェルンに組み入れられる子企業が,決算日の前12か

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月における年間平均で250名を超える従業員を雇用していないこと。

②従業員の平均数の算定については第267条第5項が適用される。

⑵ 貸借対照表額の算定については第267条第4a項が準用される。

⑶ (削除)

⑷ ①第1項の場合のほか,親企業は,第1項の条件を決算日又はその直前の

決算日にのみ満たしており,かつ,直前の決算日においてコンツェルン決

算書及びコンツェルン状況報告書を作成する義務を免除されていた場合に

は,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書の作成を免除される。

②第267条第4項第2文及び第3文が準用される。

⑸ 第1項及び第4項は,当該親企業又はそのコンツェルン被組入子企業が第

264d条の意味における資本市場を指向するものである場合,又は第4章第1

節又は第2節の適用を受ける場合には,適用されない。

第2款 連結範囲第294条(組み入れられるべき企業,提出・情報提供義務)⑴ コンツェルン

決算書には,組入れが第296条によって行われないものでない限り,親企業

と全ての子企業が,その子企業の本拠及び法形式にかかわらず組み入れられ

なければならない。

⑵ コンツェルン決算書被組入企業の構成がその事業年度中に大きく変化した

場合には,コンツェルン決算書において,連続するコンツェルン決算書が有

意に比較可能となるような記載がされなければならない。

⑶ ①子企業は親企業に対し,その年度決算書,第325条第2a項に基づく単体

決算書,状況報告書,コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書,決算

監査がなされた場合には監査報告書,中間決算書を作成すべき場合にはコン

ツェルン決算書の決算日において作成された決算書を遅滞なく提出しなけれ

ばならない。②親企業は,全ての子企業に対し,コンツェルン決算書及びコ

ンツェルン状況報告書の作成に必要なあらゆる説明及び証拠を要求すること

ができる。

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第295条(削除)

第296条(組入れの放棄)⑴ 以下の各号のいずれかに該当するときは,子企

業は,コンツェルンに組み入れられることを要しない。

⒈ 重大かつ継続的な障害により,子企業の財産又は業務執行に対する親企

業の権利の行使が持続的に妨げられる場合

⒉ コンツェルン決算書の作成に必要な事項について,過度に高額の費用又

は不相当な遅れなしに入手することができない場合

⒊ 子会社の持分を専ら転売の目的で保有している場合

⑵ ①子企業は,それがコンツェルンの財産,財務及び収益の状況について事

実の諸関係に合致した写像を表示すべき義務にとって副次的な意義のもので

あるときには,コンツェルン決算書に組み入れられることを要しない。②複

数の子企業が第1項の条件に該当する場合,それらが総体で副次的な意義を

持つにとどまらないときは,それらの企業はコンツェルン決算書に組み入れ

られなければならない。

⑶ 第1項及び第2項の適用については,コンツェルン附属説明書において理

由づけられなければならない。

第3款 コンツェルン決算書の内容及び形式第297条(内容)⑴ ①コンツェルン決算書は,コンツェルン貸借対照表,コ

ンツェルン損益計算書,コンツェルン附属説明書,キャッシュフロー計算書

及び自己資本明細書をもって構成される。②セグメント報告書をもって年度

決算書を補充することができる。

(1a) ①コンツェルン決算書には,商号,本拠,登記所及び当該親企業が商業

登記において登録される番号が示されなければならない。②親企業が清算中

である場合には,その事実も示されなければならない。

⑵ ①コンツェルン決算書は,明瞭かつ整然と作成されなければならない。

②コンツェルン決算書は,正規の簿記の諸原則を遵守し,コンツェルンの財

産,財務及び収益の状況について事実の諸関係に合致した写像を表示しなけ

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ればならない。③年度決算書が第2文の意味における事実の諸関係に合致し

た写像を表示していないといえるような特別な状況があるときは,コンツェ

ルン附属説明書において追加的な記載がなされなければならない。④親企業

であって有価証券取引法第2条第7項の意味における内国発行者であり本法

第327a条の意味における資本会社でないものの法律上の代表者は,知り得る

限りにおいてコンツェルン決算書が第1文の意味における事実の諸関係に対

応した写像を表示していること,又はコンツェルン附属説明書が第3文によ

る記載を含んでいることを,署名のある書面により確認しなければならな

い。

⑶ ①コンツェルン決算書においては,組み入れられた企業の財産,財務及び

収益の状況を,あたかも総体で一つの企業であるかのように表示しなければ

ならない。②前年度のコンツェルン決算書で適用された連結方法は,維持さ

れなければならない。③第2文からの逸脱は,例外的な場合に許容される。

④逸脱は,コンツェルン附属説明書に記載されなければならない。⑤コンツェ

ルンの財産,財務及び収益の状況に対する逸脱の影響は,記載されなければ

ならない。

第298条(適用すべき規定の軽減)⑴ コンツェルン決算書については,その

条文の本質上逸脱が認められないか,後の条文で別途定められていない限り

において,年度決算書に関する第244条から第256a条,第264c条,第265条,

第266条,第268条第1項から第7項,第270条,第271条,第272条第1項か

ら第4項,第274条,第275条及び第277条,並びにコンツェルン決算書被組

入企業であって本法の適用領域に本拠を有するものの法形式及び業務分野に

適用される規定は,大規模資本会社に適用される条文である限りで,準用さ

れる。

⑵ ①コンツェルン附属説明書及び親企業の年度決算書の附属説明書は,統合

することができる。②この場合,コンツェルン決算書と年度決算書は一緒に

公開されなければならない。③統合された附属説明書においては,いずれの

記載がコンツェルンに関するもので,いずれの記載が親企業にのみ関するも

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のであるか,読み取れなければならない。

第299条(作成の基準日)⑴ コンツェルン決算書は,親企業の年度決算書の

決算日を基準として作成されなければならない。

⑵ ①コンツェルン決算書被組入企業の年度決算書は,コンツェルン決算書の

決算日に作成されなければならない。②企業の決算日がコンツェルン決算書

の決算日の前3か月より前にあるときは,当該企業はコンツェルン決算書の

決算日及び期間により作成された中間決算書に基づいてコンツェルン決算書

に組み入れられなければならない。

⑶ 期日のずれた決算日において,企業がコンツェルン決算書の決算日及び期

間に作成された中間決算書に基づかずにコンツェルン決算書に組み入れられ

た場合には,コンツェルン決算書被組入企業の財産,財務及び収益の状況に

とって特別の意義のある事象であって当該企業の決算日とコンツェルン決算

書の決算日の間に生じたものについて,コンツェルン貸借対照表又はコン

ツェルン損益計算書において顧慮するか,コンツェルン附属説明書に記載し

なければならない。

第4款 完全連結第300条(連結原則,完全性の要求)⑴ ①コンツェルン決算書においては,

親企業の年度決算書は子企業の年度決算書と統合されなければならない。②

組み入れられるべき子企業の資産,負債,計算限定項目及び特別項目は,親

企業に適用される法によれば計上可能であり,かつ,コンツェルン決算書の

本質上逸脱が認められないか,後の条文で別途定められていない限りにおい

て,親企業の有する連結子会社持分に代わって計上される。

⑵ ①組み入れられるべき子企業の資産,負債,計算限定項目並びに収益及び

費用は,親企業に適用される法による計上禁止や計上選択権が存在しない限

り,当該子企業の年度決算書において考慮されているかどうかに関わりな

く,完全に計上されなければならない。②親企業に適用される法によって認

められる計上選択権は,コンツェルン決算書において,当該コンツェルン決

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算書被組入子企業で行使されているかどうかに関わりなく,行使され得る。

③金融機関又は保険企業に対する業務分野の特性による規定の適用に基づく

計上は,維持され得る。この例外の適用については,コンツェルン附属説明

書において指摘されなければならない。

第301条(資本連結)⑴ ①コンツェルン決算書被組入子企業の持分のうち親

企業に帰属するものの価額は,子会社の自己資本の当該持分に対応する額と

相殺される。②自己資本は,コンツェルン決算書に計上されるべき資産,負

債,計算限定項目及び特別項目について,第2項による相殺において基準と

なる時点において付すべき時価に対応する額をもって計上されなければなら

ない。③引当金は第253条第1項第2文,第3文及び第2項により,繰延税

金資産及び繰延税金負債は第274条により,評価されなければならない。

⑵ ①第1項による相殺は,当該企業が子企業とされた時点の価値評価に基づ

いてなされなければならない。②当該時点での価値評価を確定的に算出でき

ないときは,当該時点以後12か月以内に適応されなければならない。③親企

業が初めてコンツェルン決算書を作成するときは,子企業が当該コンツェル

ン決算書の作成される年に子企業となったのでない限り,コンツェルン決算

書への子企業組入れの時点での価値評価を基礎としなければならない。④同

様のことは,それまで第296条によって放棄されていた子企業の初次組入れ

にも適用する。⑤例外的事例においては,第1文による価値評価が第3文及

び第4文の場合においても基礎とされることができる。この場合には,コン

ツェルン附属説明書に記載され,理由づけられなければならない。

⑶ ①相殺の後に残る差額は,借方側に存在するときは営業権又は暖簾とし

て,また貸方側に計上するときは「資本連結から生じる差額」項目として自

己資本の後に計上しなければならない。②当該項目と前年からの重大な変更

については,コンツェルン附属説明書において説明されなければならない。

⑷ コンツェルン決算書被組入子企業に帰属する親企業持分は,コンツェルン

貸借対照表に親企業の自己持分として額面金額,そのようなものが存しない

場合にはその会計上の価値により第2段において明示的に「引受済資本」か

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ら控除されなければならない。

第302条(削除)

第303条(債務連結)⑴ コンツェルン決算書被組入企業間での貸付け及びそ

の他の債権,引当金及び負債並びに対応する計算限定項目は,消去されなけ

ればならない。

⑵ 第1項は,消去されるべき額がコンツェルンの財産,財務及び収益の状況

について事実の諸関係に合致した写像を表示するのに副次的な意義のみを有

する場合には,適用することを要しない。

第304条(中間成果の取扱い)⑴ コンツェルン決算書に計上されるべき資産

であって,その全部又は一部がコンツェルン決算書被組入企業間の給付又は

役務の提供に基づくものであるときは,コンツェルン貸借対照表において,

コンツェルン決算書被組入企業が法的に単一の企業であった場合に当該企業

の年度決算書としてコンツェルン決算書の基準日に作成される年度貸借対照

表に付される額を計上されなければならない。

⑵ 第1項は,第1項による中間成果の取扱いがコンツェルンの財産,財務及

び収益の状況について事実の諸関係に合致した写像を表示するのに副次的な

意義のみを有する場合には,適用することを要しない。

第305条(費用及び収益の連結)⑴ コンツェルン損益計算書においては,次

の措置をとらなければならない。

⒈ 売上高について,コンツェルン決算書被組入企業に対する給付又は役務

の提供による売上につき,それが製品及び仕掛品の有高の増加として,又

はその他の借方計上される自己給付として計上されるべきものでない限り

において,それに対応する費用と相殺すること。

⒉ コンツェルン決算書被組入企業に対する給付又は役務の提供によるその

他の収益につき,それがその他の借方計上される自己給付として計上され

るべきものでない限りにおいて,それに対応する費用と相殺すること。

⑵ 費用と収益は,消去されるべき額がコンツェルンの財産,財務及び収益の

状況について事実の諸関係に合致した写像を表示するのに副次的な意義のみ

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を有する場合には,第1項により消去されることを要しない。

第306条(繰延税金資産,繰延税金負債) ①本款の規定に基づいて実施され

た措置によって資産,負債及び計算限定項目の商法上の価値評価とその税法

上の価値評価に差異が生じ,かつ,後年度において当該差異が再び減少する

ことが見込まれるときは,そこから生じている租税負担増加の総額は,繰延

税金負債として,そこから生じている租税負担軽減の総額は,繰延税金資産

として貸借対照表に計上しなければならない。②生じている繰延税金負債と

生じている繰延税金資産は,相殺せずに計上することができる。③第301条

第3項による残差額の初次計上から生じる差異については,顧慮しないもの

とする。④同様のことは,子企業,関連企業又は第310条第1項の意味にお

ける共同企業への参加についての税法上の価値評価と,コンツェルン決算書

に計上された純資産の商法上の価値評価との間に生じる差異についても適用

する。⑤第274条第2項は準用される。⑥項目は,第274条に基づく項目と統

合することができる。

第307条(他の社員の持分)⑴ コンツェルン貸借対照表においては,コンツェ

ルン決算書被組入子企業の持分のうち親企業に帰属しないものについて,他

の社員の持分についての調整項目として,自己資本に対するその持分の有高

を「非支配持分」項目の名のもと,自己資本の一部として区別して計上しな

ければならない。

⑵ コンツェルン損益計算書においては,年度成果に含まれる,他の社員に

属すべき利益又は他の社員に対応する損失については,「年度利益/年度損

失」項目の下に「非支配持分」項目名のもと区別して計上されなければなら

ない。

第5款 評価規定第308条(統一的評価)⑴ ①コンツェルン決算書において第300条第2項に

より計上されるコンツェルン決算書被組入企業の資産及び負債は,親企業の

年度決算書に適用される評価方法に従って統一的に評価されなければならな

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い。②親企業に適用される法により認められる評価選択権は,コンツェルン

決算書において,コンツェルン決算書被組入企業の年度決算書での行使の有

無にかかわりなく行使され得る。③親企業の年度決算書に適用される評価方

法からの逸脱は,コンツェルン附属説明書において記載され,理由づけられ

なければならない。

⑵ ①コンツェルン決算書に計上されるべき親企業又は子企業の資産及び負債

が,当該企業の年度決算書において,コンツェルン決算書において適用され

るべき評価方法又は親企業の法律上の代表者によってコンツェルン決算書に

おける評価選択権の行使として適用される評価方法と異なる方法により評価

されたときは,異なる方法により評価された資産又は負債は,コンツェルン

決算書に適用された評価方法により新たに評価し,新たになされた価値評価

によってコンツェルン決算書に計上されなければならない。②金融機関又は

保険企業に対する業務分野の特性による規定の適用に基づく評価は,維持さ

れ得る。この例外の適用については,コンツェルン附属説明書において指摘

されなければならない。③第1項による統一的評価は,その効果がコンツェ

ルンの財産,財務及び収益の状況について事実の諸関係に合致した写像を表

示するのに副次的な意義のみを有する場合には,行われることを要しない。

④さらに,例外的な場合には逸脱が許容される。この場合には,コンツェル

ン附属説明書に記載され,理由づけられなければならない。

⑶ (削除)

第308a条(外国通貨で作成された決算書の換算) ①外国通貨で作成された貸

借対照表の借方項目及び貸方項目は,自己資本について歴史的為替相場によ

りユーロに換算すべきことを例外として,決算日の外国為替市場における売

り市場と買い市場の中間額で換算されなければならない。②損益計算書の項

目は平均相場によりユーロに換算されなければならない。③生じた換算差額

はコンツェルン自己資本の中で引当金の後ろに「通貨換算から生じる自己資

本差額」項目の名で計上しなければならない。④子企業の部分的又は全面的

な除去に際しては,当該項目はそれに応じた額で損益作用的に消去しなけれ

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ばならない。

第309条(差額の取扱い)⑴ 第301条第3項により計上されるべき営業権又

は暖簾の減価は,第1章の規定により定まる。

⑵ 第301条第3項により貸方に計上すべき差額は,かかる措置が第1章の規

定に関連して第297条及び第298条の諸原則に合致する限りにおいて,損益作

用的に消去され得る。

第6款 比例連結第310条(比例連結)⑴ あるコンツェルン決算書に組み入れられるべき親企

業又は子企業が,他の企業を当該コンツェルン決算書に組み入れられない1

又は複数の企業と共同で運営する場合には,当該他の企業を当該コンツェル

ン決算書において当該親企業に帰属する資本の持分に応じて組み入れること

ができる。

⑵ 比例連結については,第297条から第301条まで,第303条から第306条まで,

第308条,第308a条及び第309条が準用される。

第7款 関連企業第311条(定義,免除)⑴ ①コンツェルン被組入企業によって,当該企業が

第271条第1項の意味における資本参加をしている非組入企業の業務政策及

び財務政策に対して重要な影響力が行使されるときは(関連企業),当該資

本参加は,コンツェルン決算書において相応の名称を伴う特別な項目として

計上されなければならない。②ある企業が他の企業において社員の議決権の

少なくとも5分の1を有している場合,重要な影響力が推定される。

⑵ 関連企業に対する資本参加については,当該資本参加がコンツェルンの財

産,財務及び収益の状況について事実の諸関係に合致した写像を表示するの

に副次的な意義を有する場合には,第1項及び第312条を適用することを要

しない。

第312条(資本参加の価値評価及び差額の取扱い)⑴ ①関連企業に対する資

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本参加は,コンツェルン貸借対照表に簿価をもって計上されなければならな

い。②簿価と関連企業において対応する自己資本との差額及びそれに含まれ

る営業権又は暖簾又は貸方計上差額については,コンツェルン附属明細書に

記載されなければならない。

⑵ ①第1項第2文による差額は,その付すべき時価が簿価に対して高額であ

るか低額である限りにおいて,関連会社の資産,負債,計算限定項目及び特

別項目の価値評価に帰属させなければならない。②第1文によって帰属した

差額は,関連企業の年度決算書における資産,負債,計算限定項目及び特別

項目の取扱いに対応して,コンツェルン決算書において維持され,減額さ

れ,又は消去されなければならない。③第1文により帰属の後に残存する営

業権又は暖簾又は貸方計上差額については,第309条が準用される。④第301

条第1項第3文は準用される。

⑶ ①資本参加及び差額の価値評価は,当該企業が関連企業となった時点での

価値評価に基づいて表示されなければならない。②当該時点での価値評価を

確定的に算出できないときは,当該時点以後12か月以内に適応されなければ

ならない。③第301条第2項第3文及び第4文は準用される。

⑷ ①第1項によって表示された資本参加の価値評価は,後年,関連企業の資

本のうち親企業に帰属する持分部分に相応する自己資本変更に従い,増額又

は減額されなければならない。資本参加に対してなされた利益分配は控除さ

れなければならない。②コンツェルン損益計算書においては,関連資本参加

に相応する成果は,区分された項目として計上されなければならない。

⑸ ①関連企業がその年度決算書においてコンツェルン決算書と異なる評価方

法を適用したときは,異なる方法で評価された資産又は負債は,第1項から

第4項までの目的のために,コンツェルン決算書において適用された評価方

法によって評価されることができる。②評価を適応させない場合には,その

旨をコンツェルン附属説明書に記載しなければならない。③第304条及び第

306条は,判定の基準となる事実関係が既知であるか入手可能である限りに

おいて準用する。

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⑹ ①関連企業の最新の年度決算書が,その都度ごとに基礎とされなければな

らない。②関連企業がコンツェルン決算書を作成する場合は,年度決算書に

よらず当該コンツェルン決算書によらなければならない。

第8款 コンツェルン附属説明書第313条(コンツェルン貸借対照表及びコンツェルン損益計算書の説明,資本

参加の所在の記載)⑴ ①コンツェルン附属明細書には,コンツェルン貸借

対照表又はコンツェルン損益計算書の個々の項目について定められている事

項の記載をしなければならない。当該記載は貸借対照表又は損益計算書の

個々の項目の順序で表示されなければならない。②附属説明書には,貸借対

照表又は損益計算書において記載されなかった選択権行使についても記載を

しなければならない。③コンツェルン附属説明書では,以下の各号に定める

事項がされなければならない。

⒈ コンツェルン貸借対照表又はコンツェルン損益計算書の項目に適用した

計上方法及び評価方法の記載

⒉ 計上方法,評価方法及び連結方法からの逸脱,及びその理由,及び当該

逸脱がコンツェルンの財産,財務及び収益の状況へ与える影響についての

記載

⑵ コンツェルン附属説明書には,その他に以下の各号について記載されなけ

ればならない。

⒈ ①コンツェルン決算書被組入企業の名称及び本拠,子企業の資本に対す

る持分であって親企業,コンツェルン決算書被組入子企業に帰属し又はこ

れらの企業の計算によって取り扱う者によって保持されているもの,並び

にコンツェルン決算書への組入れが資本の参加に応じた議決権の多数保有

に基づくものでない場合における,コンツェルン決算書への組入れを義務

付ける事実関係。②これらの記載は,第296条により組み入れられない子

企業についてもなされなければならない。

⒉ ①関連企業の名称及び本拠,関連企業の資本に対する持分であって親企

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業,コンツェルン決算書に組み入れられた子企業に帰属し又はこれらの企

業の計算によって取り扱う者によって保持されているもの。②第311条第

2項の適用については,それぞれ記載され,理由づけられなければならな

い。

⒊ 第310条によりコンツェルン決算書に比例的にのみ組み入れられた企業

の名称及び本拠,当該規定の適用のもととなった事実,並びに当該企業の

資本に対する持分であって親企業,コンツェルン決算書に組み入れられた

子企業に帰属し又はこれらの企業の計算によって取り扱う者によって保持

されているもの

⒋ 他の企業に対する持分が第271条第1項の意味における資本参加に該当

するか,又はかかる持分が親企業又はその他のコンツェルン決算書被組入

企業の計算において保有する者に帰属する場合における,当該他の企業の

名称及び本拠,資本に対する持分高,当該企業の最新の年度決算書におけ

る自己資本及び成果

⒌ それを保有するものが上場親企業,上場子企業又はそれらの企業の計算

において保有する者である場合における,大規模資本会社に対する第1号

から第4号に該当しない資本参加であって,議決権の5パーセントを超え

るもの

⒍ 親企業又はその他のコンツェルン決算書被組入企業が無限責任社員と

なっている企業の名称,本拠及び法形式

⒎ 親企業が子企業として属している企業範囲のなかでもっとも大きいもの

についてのコンツェルン決算書を作成している企業の名称と本拠,及び当

該他の親企業により作成されたコンツェルン決算書が公開されている場合

には当該コンツェルン決算書を入手できる場所

⒏ 親企業が子企業として属している企業範囲のなかでもっとも小さいもの

についてのコンツェルン決算書を作成している企業の名称と本拠,及び当

該他の親企業により作成されたコンツェルン決算書が公開されている場合

には当該コンツェルン決算書を入手できる場所

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⑶ ①第2項が求める記載は,その記載によって親企業,子企業又はその他の

第2項に掲げられた企業に重大な不利益が生じ得ることが健全な商人の判断

により見込まれる場合には,することを要しない。②この例外規定の適用に

ついては,コンツェルン附属説明書に記載されなければならない。③第1文

は,親企業又はその子企業が第264d条の意味における資本市場を指向するも

のである場合には,適用しない。④第2項第4号及び第5号による記載は,

当該記載がコンツェルンの財産,財務及び収益の状況について事実の諸関係

に合致した写像を表示するのに副次的な意義である場合には,することを要

しない。⑤第2項第4号に基づく自己資本及び成果の記載義務は,持分を所

有されている企業がその年度決算書を公開していないときは,履行されるこ

とを要しない。

⑷ 第284条第2項第4号及び第3項は準用されなければならない。

第314条(その他の義務的記載)⑴ さらにコンツェルン附属説明書には以下

の各号に定める事項が記載されなければならない。

⒈ コンツェルン貸借対照表に計上された債務であってその存続期間が5年

を超えるものの総額,及びコンツェルン貸借対照表に計上された債務で

あってコンツェルン決算書被組入企業により質権又は同種の権利を通じて

保証されているものにつき,担保の種類と方式を示してその総額

⒉ そのリスクと利点が重大であってその公開がコンツェルンの財務状態の

判断に必要である限りにおいて,貸借対照表に包含されていない取引で

あって親企業及びコンツェルン被組入子企業のものであるものの種類と目

的,リスク,利点及び財務上の影響

2a.その記載が企業の財務状態の判断に必要である限りにおいて,コンツェ

ルン貸借対照表に包含されておらず,かつ,第298条第1項が準用する第

268条第7項又は本条第2号によって記載が求められていないその他の財

務上の義務の総額。そのうち老齢年金に関する義務及び結合企業又は連結

企業に対する義務については,それぞれ区分して記載されなければならな

い。

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⒊ コンツェルンによる商品の売却及び使用賃貸又は用役賃貸並びに用役行

為の提供についての組織を考慮して業務範囲及び地理的に決定された市場

が相互に大きく異なる限りにおいて,業務範囲別及び地理的に決定された

市場別によるコンツェルンの売上高の内訳

⒋ 種類別に分類され,第310条により比例的にのみ連結された企業を区別

した,コンツェルン被組入企業の事業年度間平均労働者数,並びに,そ

れらがコンツェルン損益計算書に区分して計上されていない場合におけ

る,当該事業年度における総人件費。この場合,賃金及び給与,社会保障

費用及び老齢年金費用に分類して記載しなければならない。

⒌ (削除)

⒍ 親企業の業務執行機関,監査役会,委員会又は同様の組織の構成員に関

し,それぞれの人的グループごとの次の事項

a) ①親企業及び子企業での職務の遂行に対して当該事業年度において与

えられた報酬総額(給与,利益分配,新株引受権その他の株式を基礎と

した報酬,費用補償,保険料,手数料及び各種の付随給付)。②報酬総

額には,支払われるのではなく,他の請求権に転換され又は他の請求権

の増額に用いられる報酬も含まれなければならない。③当該事業年度に

対する報酬の他に,当該事業年度に支払われた報酬であって過去のコン

ツェルン決算書において記載されていないものも記載されなければなら

ない。④新株引受権その他の株式を基礎とした報酬は,その数及び付与

の時点において付すべき時価を記載しなければならない。行使条件の変

更によって生じるその後の価値変化は考慮されなければならない。⑤親

企業が上場株式会社である場合には,追加的に,氏名の明示のもと,個々

の取締役構成員の報酬を,業績とは独立の部分及び業績に連動する部分

並びに長期的インセンティブ効果を伴う部分とに分割して記載しなけれ

ばならない。⑥以下についても同様である。

aa) 取締役構成員に対して当該構成員の活動が予定前に終了した場合

について約定された給付

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bb) 取締役構成員に対して当該構成員の活動が通常通りに終了した場

合について約定された給付とその現金価値,並びに会社から事業年度

中にそのために支出され又は返還された額

cc) 事業年度中に合意されたこれらの約定の変更

dd) 元取締役構成員に対する給付であって,当該構成員の活動が当該

事業年度の期間中に終了し,かつ,当該活動との関係において約定さ

れ,当該事業年度中に履行されたもの

 ⑦個々の取締役構成員に対する第三者からの給付であって,当該構成員

の取締役構成員としての活動を顧慮して約定され又は履行されたもの

は,同様に記載されなければならない。⑧コンツェルン決算書が特定の

報酬につき一般的な記載を含むときは,それについて追加的に個別に記

載しれなければならない。

b) ①列挙された機関の元構成員及びその遺族に対して親企業及び子企

業での職務の遂行の対価として給付された報酬の総額(一時金,年金,

遺族給付及び類似した種類の給付)。②a)第2文及び第3文は準用され

る。③加えて,これらの人的グループに向けて積み立てられた継続的年

金及び年金承継権のための引当金,並びにそれらのためにまだ積み立て

られていない引当金が記載されなければならない。

c) 親企業又は子企業から給付された前払金及び信用(当該事業年度中に

返済又は免除された場合にはその額も記載すること)並びに当該人員に

対して有利になるように引き受けられた責任関係

⒎ 親企業,子企業又はコンツェルン決算書被組入企業の計算において行動

する者が取得し,又は担保として徴求した親企業持分の有高。その際,当

該持分の数,額面金額又は会計上の価値,及びそれらの資本に対する割合

を記載しなければならない

7a.株式の種類ごとに,事業年度の間に授権資本制度のもとで引き受けられ

た親企業株式の数

7b.親企業が義務を負っている享益証券,転換社債,新株予約権付社債,

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新株予約権又はこれらに類する証券又は権利の存在,その数及び権利内容

⒏ コンツェルンに組み入れられた上場企業それぞれについて,株式法第

161条により求められる宣言として公表された事項,及びその公表場所

⒐ 下記の項目に区分した,コンツェルン決算書の決算監査人から当該事業

年度について請求された報酬の総額

a) 決算書監査業務

b) その他の確認業務

c) 税務相談業務

d) その他の業務

10.財務固定資産(第266条第2項A.Ⅲ.)に属する金融資産であって,コン

ツェルン貸借対照表において付すべき時価が計上されるものについて,第

253条第3項第6文による計画外減価がなされない場合における次の事項

a) 個々の資産又は適当に分類したグループの簿価及び付すべき時価

b) 価値低下が持続しないと見込まれることを示唆する根拠を含め,減

価を行わない理由

11.付すべき時価によらずに計上される金融派生商品の範疇それぞれについ

ての次の事項

a) その種類と範囲

b) 第255条第4項により信頼して表示できる限りにおいて,その付すべ

き時価,及び適用された評価方法

c) 簿価及び存在する限りにおいて当該簿価が計上されている貸借対照表

項目

d) 付すべき時価を確定することができない理由

12.第340e条第3項第1文により付すべき時価をもって評価された金融商品

についての次の事項

a) 一般に認められた評価方法を用いた付すべき時価の決定において根拠

とされた基礎的前提

b) 将来のキャッシュフローの額,時点及び確実性に影響を及ぼし得る

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重要な条件を含め,金融派生商品の各範疇の範囲と種類

13.親企業又はその重要な子企業が緊密な企業又は個人との間で少なくとも

市場の通常の条件によらずに行った取引。この場合,その関係の性質,取

引の価値及び財務状態の判断にとって必要な他の記載もしなければならな

い。ただし,コンツェルン決算書に連結されている企業間の取引は,当該

取引が連結によって消去された場合には,除外される。取引の記載は,記

載の分離が当該取引の財務状態への影響の判断にとって必要でない限りに

おいて,取引の種類ごとにまとめて記載できる。

14.第248条第2項による借方計上の場合,コンツェルン被組入企業の当該

事業年度における研究費及び開発費の総額及びそのうち自己の創設にかか

る無体資産であって固定資産たるものに割り当てられる費用

15.第254条のコンツェルン決算書への適用に際して,その記載がコンツェ

ルン状況報告書になされない限りにおいて,次の事項

a) 資産,負債,未済取引又は高い蓋然性のある取引行為それぞれについ

て,いかなる額で,いかなるリスクの防護のためにいかなる種類の評価

単位に組み合わされているか及び評価単位によって防護されているリス

クの大きさ

b) 防護されているリスクそれぞれにつき,なぜ,どの範囲で,どの期間,

反対方向の価値変動又はキャッシュフローが将来において減殺されると

見込まれるか並びにその算出の方法

c) 高い蓋然性のある取引行為であって評価単位に組み入れられたものに

ついての説明

16.コンツェルン貸借対照表に計上された年金引当金及び同種の義務につい

て,適用された保険数理上の算定方法並びに利子率,予想される賃金及び

給与の上昇,基礎とした死亡率表その他の算定について基礎に置いた仮定

17.第246条第2項によりコンツェルン貸借対照表に計上された資産と負債

の相殺をする場合における当該相殺される資産の購入費用及び付すべき時

価,当該相殺される負債の履行価額,並びに相殺された費用と収益。第12

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号a)は準用される。

18.コンツェルン貸借対照表に計上された,資本投資法典第1条第10項の意

味における特別財産の持分又は資本投資法典第108条から第123条の意味に

おける可変資本投資株式会社の投資株式又は同様のEU投資資産又は同様

の外国の投資資産であって10分の1以上を有するものにつき,投資目的別

に分類して,その資本投資法典第168条及び第278条又は2013年7月21日ま

で施行されていた投資法第36条又は市場価値の表示に関する同様の外国の

規定の意味における価値,簿価との差異及び当該事業年度に取得した配当

並びに即日返還の可能性の制限,及び価値減少が持続しないと見込まれる

と示唆する根拠を含め,第253条第3項第6文による減額を行わない理由。

第10号はこの限りで適用されない。

19.第268条第7項第1号によってコンツェルン附属説明書に記載されるべ

き債務及び責任関係について,請求権のリスクの見積もりの理由

20.有償で取得した営業権又は暖簾が償却される期間についての個別の説明

21.繰延税金資産又は繰延税金負債がいかなる差異あるいは租税上の繰越損

失に基づいているか,及びいかなる税率により評価がなされているか。

22.繰延税金負債がコンツェルン貸借対照表に計上されている場合,事業年

度末における繰延税金残高及び当該事業期間において生じたかかる残高の

変化

23.その額が従属的な意味であるとはいえない限りにおいて,異例な大きさ

である又は異例の事柄により生じる収益又は費用の額と種類をその都度ご

とに。

24.その額がコンツェルンの財産,財務及び収益の状況の判断において従属

的な意味であるとはいえない限りにおいて,他のコンツェルン事業年度に

帰属すべき個々の収益又は費用についての額及び種類に関しての説明

25.特別な意義を有する事象であってコンツェルン事業年度の終結後に生

じ,コンツェルン損益計算書及びコンツェルン貸借対照表において顧慮さ

れていないもの,その種類及び財務的影響

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26.親企業の成果の処分に関する提案,又は親企業の成果の処分についての

決定

⑵ 親企業であって,そのコンツェルン決算書をセグメント報告書をもって補

充しているものは,第1項第3号による記載義務を免除される。

⑶ ①第1項第6号a第5文から第8文による記載義務については,第286条第

5項が準用される。②第1項第6号a)及びb)による記載義務については,

第286条第4項が準用される。

第9款 コンツェルン状況報告書第315条(コンツェルン状況報告書の内容)⑴ ①コンツェルン状況報告書に

は,業務の成果及びコンツェルンの状況を含めた業務の経過を,事実の諸関

係に対応した写像が表示されるように叙述しなければならない。②コンツェ

ルン状況報告書には,衡平で包括的で業務活動の範囲と複雑性に応じてなさ

れた業務の経過及びコンツェルンの状況の分析を含まなければならない。

③当該分析には,業務活動について最も重要な財務上の執行指標を取り入れ

なければならず,コンツェルン決算書に計上された額及び記載と関連づけて

説明されなければならない。④第3文は,例えば環境利益や被用者利益につ

いての情報など財務上のものではない執行指標についても,それらが業務の

経過や状況の理解にとって重要な限りで準用される。⑤さらにコンツェルン

状況報告書には,予測される展開について,その重要な機会とリスクを判断

し,説明しなければならない。その基礎となる仮定を記載しなければならな

い。⑥第297条第2項第4文の意味における親企業の法律上の代表者は,そ

の最善の知識においてコンツェルン状況報告書に業務の成果及び資本会社の

状況を含めた業務の経過が事実の諸関係に対応した写像が表示されるように

叙述されていること,及び第5文の意味における重要な機会とリスクが記載

されていることを保証しなければならない。

⑵ コンツェルン状況報告書には,以下の各号に定める事項も含まれなければ

ならない。

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⒈a) 全ての重要な取引種類の防護の方法であって保全措置の貸借対照表計

上の構造において把握されたものを含めた,コンツェルンのリスク管理の

目標と方法

b) コンツェルンがさらされている価格変動リスク,減損リスク,流動

性リスク及びキャッシュフロー変動から生じるリスク

  それぞれにつきコンツェルンによる金融商品の使用と関連づけて,また

それらが状況や予測される展開の判断にとって重要な限りで,である。

⒉ コンツェルンの研究及び開発の範囲

⒊ コンツェルン被組入企業の全体のなかで,コンツェルンの状況との関係

で重要な支店

⒋ ①親企業が上場株式会社である場合には,第314条第1項第6号に挙げ

られた総報酬についての報酬制度の基本的特徴。②この際に第314条第1

項第6号a)第5文から第8文に対応する記載がなされる場合には,これ

らの事項はコンツェルン附属説明書に記載することを要しない。

⒌ コンツェルン被組入子企業の一つ又は親企業が第264d条の意味における

資本市場を指向するものである場合には,コンツェルン会計過程における

内部統制システム及びリスク管理システムの重要な特徴

⑶ コンツェルン附属説明書と附属説明書の統合に関する第298条第2項は準

用される。

⑷ ①親企業であって,有価証券の取得及び買収に関する法律第2条第7項の

意味における組織化された市場に対してその発行した議決権付株式により請

求権を有するものは,状況報告書に以下の事項を記載しなければならない。

⒈ 引受済資本の構成。異なる種類の株式がある場合には,コンツェルン附

属説明書に記載されていない限りにおいて,各種類につきその権利及び義

務並びに会社資本に対する割合を記載しなければならない。

⒉ 議決権又は株式譲渡についての制限。それが社員間の合意によって生じ

る場合であっても,親企業の取締役が知る限りにおいて記載しなければな

らない。

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⒊ 記載がコンツェルン附属説明書になされていない限りにおいて,資本に

対する直接又は間接の参加であって議決権の10パーセントを超えるもの

⒋ 支配権限を与えるような特別の権利を伴う株式の所有者。当該特別の権

利は記載されなければならない。

⒌ 被用者が資本に参加しており,その支配権が直接に行使されない場合

は,議決権支配の種類

⒍ 取締役構成員の任命と解任及び定款の変更に関する法律上の規定及び定

款の規定

⒎ 取締役の権限,特に株式の発行又は再取得の可能性に関するもの

⒏ 買収提案の結果として生じる支配変更を条件として存在している,親企

業の重要な定めとそこから生じる効果。記載によって親企業に相当な不利

益を与えると判断されるときは,記載を行わないことができる。他の法律

上の規定による記載義務には影響しない。

⒐ 記載がコンツェルン附属説明書になされていない限りにおいて,買収提

案の場合において取締役構成員又は被用者との間で締結された親企業の補

償合意

⑸ ①第289a条第1項の意味における親企業は,コンツェルンについて,企業

運営の説明を作成し,コンツェルン状況報告書において異なる節を立てた上

で掲載しなければならない。②第289a条は準用される。

第10款 国際的会計基準によるコンツェルン決算書第315a条【国際的会計基準の適用】 ⑴ 第1款の規定によりコンツェルン決算

書を作成しなければならない親企業が,当該時点で適用される欧州議会及び

欧州理事会規則(EC)Nr.1606/2002第4条により,同規則第2条,第3条及

び第6条に掲げられる国際的な会計基準を適用すべきことを義務付けられて

いる場合には,第2款から第8款までの規定のうち第294条第3項,第297条

第1a項,第2項第4文,第298条第1項が準用する規定のうち第244条及び第

245条,第313条際2項及び第3項,第314条第1項第4号,第6号,第8号

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及び第9号,第3項並びに第9款の規定及びコンツェルン決算書又はコン

ツェルン状況報告書に関連する本節の他の規定のみが準用される。

⑵ 第1項に該当しない親企業は,当該企業につき決算日までに有価証券取引

法第2条第1項の意味における有価証券について,国内において有価証券取

引法第2条第5項の意味における組織された市場での取引の許可が申請され

ていた場合には,そのコンツェルン決算書を第1項で述べられた国際的な会

計基準及び諸規定に従って作成しなければならない。

⑶ ①第1項又は第2項に該当しない親企業は,そのコンツェルン決算書を第

1項で述べられた国際的な会計基準並びに諸規定に従って作成することがで

きる。②この選択権を行使する企業は,第1項で述べられた基準及び諸規定

に完全に従わなければならない。

第3節 監査

第316条(監査義務)⑴ ①第267条第1項の意味における小規模資本会社に

該当しない資本会社の年度決算書と状況報告書は,決算監査人により監査さ

れなければならない。②監査が行われない場合には,年度決算書は確定され

得ない。

⑵ ①資本会社のコンツェルン決算書とコンツェルン状況報告書は,決算監査

人により監査されなければならない。②監査が行われない場合には,コンツェ

ルン決算書は正当なものとされ得ない。

⑶ ①年度決算書,コンツェルン決算書,状況報告書又はコンツェルン状況報

告書が監査報告書の提出の後に変更された場合は,決算監査人はこれらの書

類を,変更によって必要となった範囲で新たに監査しなければならない。②

監査の結果については,報告されなければならない。証明の付記は,これに

応じて補足されなければならない。

第317条(監査の対象と範囲)⑴ ①年度決算書の監査においては,簿記もそ

の対象に含まれなければならない。②年度決算書及びコンツェルン決算書の

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監査は,法律上の諸規定及びこれを補充する会社契約又は定款の規定が遵守

されているかという点に及ばなければならない。③監査は,良心的な職務執

行により,第2文に掲げられた規定についての誤謬及び違反であって,それ

により第264条第2項によって明らかにされるべき企業の財産,財務及び収

益の状況についての写像の表示に重要な影響を与えるものが明らかになるよ

うに行われなければならない。

⑵ ①状況報告書及びコンツェルン状況報告書は,状況報告書につき年度決算

書及び場合によっては第325条第2a項による単体決算書と,コンツェルン状

況報告書につきコンツェルン決算書と,並びに監査の際に決算監査人が得た

知見と調和しているか,及び状況報告書が総じて当該企業の状況の的確な写

像を,コンツェルン状況報告書が総じて当該コンツェルンの状況の的確な写

像を表示しているかについて,監査されなければならない。②状況報告書及

びコンツェルン状況報告書の監査は,状況報告書又はコンツェルン状況報告

書の作成に関する法律上の諸規定が遵守されているかという点に及ばなけれ

ばならない。③第289a条第2項及び第315条第5項の記載については,監査

に含まれない。監査の中においては,当該記載がなされているかどうかのみ

が確認されなければならない。

⑶ ①コンツェルン決算書の決算監査人は,コンツェルン決算書に統合された

年度決算書についても,とりわけ連結への適応について,第1項を準用して

監査しなければならない。②これらの年度決算書が異なる決算監査人によっ

て監査されていた場合には,コンツェルン決算監査人は当該監査を検証し,

これを文書にしなければならない。

⑷ 上場株式会社においては,監査の中において,取締役が株式法第91条第2

項によって義務付けられている措置を適切な形で講じているか,及びそれに

よって整備すべき監督システムがその責務を果たしているかについても判断

されなければならない。

⑸ 監査の実行に際して,決算監査人は,欧州委員会が,年度決算書及び連結

決算書について定め欧州理事会指令78/660/EWG及び83/349/EWGを変更し

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理事会指令84/253/EWGを廃する2006年5月17日欧州議会及び欧州理事会指

令2006/43/EG(ABl. EU Nr. L 157 S. 87)第26条第1項による手続において

受け入れられた国際的な監査基準を適用しなければならない。

⑹ 連邦司法・消費者保護省には,それが決算監査の範囲によって条件づけら

れ,かつ,第1項から第4項に掲げた監査目的に資する場合には,連邦経済

エネルギー省と協力して,決算監査の実行に際して第5項により適用される

べき国際的な監査基準に更なる決算監査要件を加え,又は国際的な監査基準

の一部を適用しない旨を定める,連邦参議院の同意を要しない法規命令を規

定する権限が与えられる。

第318条(決算監査人の選任と解任)⑴ ①年度決算書の決算監査人は社員ら

により選出される。コンツェルン決算書の決算監査人を選ぶのは親企業の社

員らである。②有限会社並びに第264a条の意味における合名会社及び合資会

社においては,会社契約により異なる定めをすることができる。③決算監査

人は,当該監査人が監査活動をすべき事業年度の満了前に選出されなければ

ならない。④その監査役会につき権限を有する法律上の代表者は,選任の

後,遅滞なく監査委託をしなければならない。⑤監査委託は,第3項に基づ

き他の監査人が選任された場合にのみ解除することができる。

⑵ ①コンツェルン決算書の決算監査人において,他に監査人が選任されない

ときには,当該監査人は,当該コンツェルン決算書に組み入れられる親企業

年度決算書の監査のために選任されたものとみなす。②組入れが中間決算に

基づくときは,他の監査人が選任されないときは,コンツェルン決算書基準

日前に作成された最終の親企業年度決算書の監査のために選任されたものと

みなす。

⑶ ①裁判所は,選任された監査人に人的に存在する理由により,とりわけ第

319条第2項から第5項,第319a条及び第319b条に基づく除斥事由が存在す

ることより,異なる監査人を選任することが望ましいと認めるときは,法律

上の代表者,監査役会又は社員(株式会社及び株式合資会社においては,当

該社員の持分が申立ての時点において合計で資本の20分の1又は市場価格50

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万ユーロに達している場合に限る。)の申立てにより,利害関係人及び選任

された監査人を審問した上で,異なる監査人を選任しなければならない。

②申立ては,決算監査人の選出の日から2週間以内になされなければならな

い。株主は,議決において決算監査人の選出に対して異議を表明していなけ

ればならない。③不公正事由が選出の後に明らかになった場合,又は不公正

事由が選出の後に発生した場合には,当該不公正を基礎づける状況について

申立てを基礎づける知識を得た日,又は重過失がなければ得られるべき日か

ら2週間以内に申立てをしなければならない。④株主が申立てを行う場合に

は,決算監査人の選出の日の少なくとも3か月前から株式の所有者であるこ

とを疎明しなければならない。⑤疎明については,公証人の面前での宣誓に

代わる保証をもって足りる。⑥会社が国家の監督を受けている場合には,監

督官庁もまた申立てを行うことができる。⑦申立ては,証明の付記の付与(第

316条第3項に基づく追加監査の場合には,証明の付記の補充)の後には,

行うことができない。⑦決定に対しては抗告することができる。

⑷ ①決算監査人が事業年度の終了までに選出されなかった場合,裁判所は,

法律上の代表者,監査役会又は社員の申立てにより,決算監査人を選任しな

ければならない。②選出された決算監査人が監査委託の受託を拒絶した場

合,消滅した場合,又は正しい時期に監査を終了することができず,かつ,

他の決算監査人が選出されていない場合も,同様である。③法律上の代表者

は,申立てを行わなければならない。④裁判所の決定に対しては抗告が許さ

れる。決算監査人の選任は争うことができない。

⑸ ①裁判所により選任された決算監査人は,適切な費用の弁償と活動に対す

る報酬について請求権を有する。②弁償額と報酬額は裁判所が定める。③決

定に対しては抗告が許される。法律抗告は認められない。④既判力ある決定

については民事手続法による強制執行が認められる。

⑹ ①決算監査人によって受託された監査委託は,決算監査人からは重大な理

由によってのみ解約することができる。②証明の付記の内容,意見の限定,

又は意見の拒否について見解の相違があることは,重大な理由とはみなされ

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ない。③解約は,書面をもって理由づけられなければならない。④決算監査

人は,それまでの監査の成果について報告しなければならない。第321条が

準用される。

⑺ ①決算監査人が第6項により監査委託を解約した場合には,法律上の代表

者は監査役会,その後に行われる最初の社員総会,又は有限会社における場

合には社員に通知しなければならない。②法律上の代表者は,退任した決算

監査人の報告書を遅滞なく監査役会に提出しなければならない。③監査役会

の各構成員は,当該報告書を閲覧する権利を有する。④報告書は監査役会の

各構成員に対して,又は監査役会の決議がある場合において委員会の構成員

に対して交付されなければならない。⑤監査委託が監査役会によってなされ

た場合は,法律上の代表者の義務は,法律上の代表者の通知を含めて,監査

役会の義務となる。

⑻ 決算監査人及び被監査会社の法律上の代表者は,公認会計士協会に対し,

遅滞なく,かつ,書面により理由づけをして,監査委託の解約又は撤回を通

知しなければならない。

第319条(決算監査人の選択と除斥事由)⑴ ①公認会計士及び監査法人は,

決算監査人となることができる。②中規模の有限会社(第267条第2項)又

は中規模の第264a条の意味における人的会社の年度決算書及び状況報告書

については,宣誓帳簿監査士(vereidigte Buchprüfer)及び帳簿監査士法人

(Buchprüfungsgesellschaft)も決算監査人となることができる。③第1文

及び第2文による決算監査人は,公認会計士協会が例外的許可を与えた場合

を除き,公認会計士法第57a条による質管理(Qualitätkontrolle)への参加に

ついての有効な証明書を有していなければならない。

⑵ 公認会計士又は宣誓帳簿監査士は,それによって不公正の危険が生じる理

由,とりわけ業務上,財務上又は人的な関係がある場合には,決算監査人か

ら除斥される。

⑶ ①公認会計士又は宣誓帳簿監査士は,本人又は本人がともに職務を行う者

が次の各号に該当するときは,特に決算監査から除斥される。

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⒈ 被監査会社に対する持分又はその他の重要でないとはいえない財務上の

利益,又は被監査会社を結合し又はその持分の100分の20以上を有する企

業への資本参加を有する場合

⒉ 被監査会社,又は被監査会社を結合し若しくはその持分の100分の20以

上を有する企業の法律上の代表者,監査役会構成員又は従業員である場合

⒊ 監査活動の他に,被監査会社に関して,監査すべき事業年度内に,又は

証明の付記の付与までに,次の行為のいずれかを行った場合。ただし,こ

れらの行為が従属的な意義のみを有するとはいえない場合に限る。

a) 帳簿の作成又は監査されるべき年度決算書の作成に協力すること。

b) 内部監査の執行において責任ある立場で協力すること。

c) 経営行為又は財務に関するサービス業務を提供すること。

d) 監査される年度決算書において重要でないとはいえない程度の影響

を有するような独自の保険数理業務又は評価業務を提供すること。

 本号の各行為が,公認会計士又は宣誓帳簿管理士が法律上の代理人,従業

員,監査役会構成員若しくは業務執行者である企業,又はその議決権の100

分の20を超える部分を有する企業により,監査すべき資本会社に提供された

場合も同様である。

⒋ 第1号から第3号により決算監査人となることのできない者を監査に際

して使用すること。

⒌ 最近5年間の各年において専門職としての活動から生じる収入総額の

100分の30以上を被監査資本会社及び当該会社がその持分の100分の20以上

を有する企業から得ており,かつ,当該年度においても同様のことが予期

される場合。過酷な場合を回避するために公認会計士協会は期限を付した

例外的許可を与えることができる。

 ②除斥は,配偶者,又は共同生活者が第1文第1号,第2号若しくは第3号

を満たす場合にも適用される。

⑷ ①監査法人及び帳簿監査士法人は,法人自身,その法律上の代表者の一

人,その社員であって社員の議決権の100分の20以上を有する者,結合企業,

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監査に際して責任ある立場で使用される社員,又はその他使用される者で

あって監査の結果に影響を与えることができる者が第2項又は第3項によっ

て除斥される場合には,決算監査から除斥される。②第1文は,監査役会の

構成員の一人が第3項第1文第2号により除斥される場合,又は合計して社

員の議決権の100分の20以上を有する複数の社員が,個々に若しくは総体で

第2項又は第3項により除斥される場合にも適用される。

⑸ 第1項第3文及び第2項から第4項は,コンツェルン決算書の決算監査人

に準用される。

第319a条(公益企業における特別の除斥事由)⑴ ①公認会計士は,第319条

第2項及び第3項に掲げられた理由以外に,次の各号のいずれかに該当する

ときは,第264d条の意味における資本市場を指向する企業の決算監査から除

斥される。

⒈ 最近5年間の各年において専門職としての活動から生じる収入総額の

100分の15以上を被監査資本会社及び当該会社がその持分の100分の20以上

を有する企業から得ており,かつ,当該年度においても同様のことが予期

される場合

⒉ 監査対象となる事業年度において監査活動の他に,行動の選択肢の提示

を超えるものであり,監査されるべき年度決算書の財産,財務,収益の状

況の表示について直接かつ重大でないとはいえない程度の影響を与えるよ

うな法律顧問業務又は税務顧問業務を提供した場合

⒊ 監査活動の他に,監査対象となる事業年度において会計情報システムの

開発,開設及び導入に協力した場合。ただし,それらの活動が従属的な意

義とはいえない場合に限る。

⒋ 当該企業の決算監査を7回又はそれ以上行っていた場合。ただし,年度

決算書監査への最後の関与から2年以上経過している場合を除く。

 ②第319条第3項第1文第3号後段,第2文及び第4項は,本条第1項に掲

げられた除斥事由について準用される。③第1文第1号から第3号は,公認

会計士が職務を共同して行う者について,当該箇所に掲げられた除斥事由が

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満たされる場合にも適用される。④第1文第4号は,監査法人においては,

当該法人が企業の決算監査において,第1文第4号により決算監査人になる

ことのできない公認会計士を責任監査者として使用した場合について適用す

る。⑤責任監査者とは,証明の付記に第322条により署名した者又は監査法

人の公認会計士として決算監査の執行において優先的に責任を負うと定めら

れた者のことである。

⑵ ①第1項は,コンツェルン決算書の決算監査人に準用される。②コンツェ

ルンの面における責任監査者には,公認会計士として重要な子企業の面にお

いて決算監査の執行において優先的に責任を負うと定められた者も含まれ

る。

第319b条(ネットワーク)⑴ ①決算監査人は,そのネットワークの構成員

が第319条第2項,第3項第1文第1号,第2号又は第4号,第3項第2文

又は第4項を満たすときは,当該ネットワーク構成員が決算監査の結果につ

いて何らの影響を与ええない場合を除いて,決算監査から除斥される。②決

算監査人は,そのネットワークの構成員が第319条第3項第1文第3号又は

第319a条第1項第1文第2号又は第3号を満たすときは,除斥される。③ネッ

トワークは,個々人がその職務執行に際して共同の経済的利益の追求のため

に一定の期間協働するときに,存在する。

⑵ 第1項は,コンツェルン決算書の決算監査人に準用される。

第320条(提示義務,情報獲得権)⑴ ①資本会社の法律上の代表者は,決算

監査人に対して,年度決算書及び状況報告書を,作成の後,遅滞なく提示し

なければならない。②法律上の代表者は決算監査人に対して,資本会社の帳

簿及び書類,並びに資産及び負債,とりわけ現金,有価証券及び商品の有高

を監査することを許可しなければならない。

⑵ ①決算監査人は法律上の代表者に対して,入念な監査に不可欠な全ての説

明と証拠を請求することができる。②決算監査の準備に必要である限りにお

いて,決算監査人は,年度決算書作成の前であっても,第1項第2文及び本

項第1文に基づく権利を有する。③入念な監査に不可欠である限りにおい

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て,決算監査人は親企業及び子企業に対しても第1文及び第2文に基づく権

利を有する。

⑶ ①コンツェルン決算書を作成すべき資本会社の法律上の代表者は,コン

ツェルン決算書の決算監査人に対して,コンツェルン決算書,コンツェルン

状況報告書,年度決算書,状況報告書並びに親会社及び子会社に対して監査

がなされていた場合における監査報告書を提出しなければならない。②決算

監査人は,親企業及び子企業に対して第1項第2文及び第2項に基づく権利

を,また親企業及び子企業の決算監査人に対して第2項に基づく権利を有す

る。

⑷ 前任の決算監査人は,後任の決算監査人に対して,書面の照会書により以

前の監査の結果について報告しなければならない。第321条は準用される。

第321条(監査報告書)⑴ ①決算監査人は,監査の方法及び範囲並びに結果

について,書面により必要な明確さをもって報告しなければならない。②被

監査資料及び状況報告書からそのような判断が許される限りにおいて,報告

書において法律上の代表者による企業又はコンツェルンの状態に対する判断

について意見を表明しなければならず,その際にとりわけ状況報告書を顧慮

しつつ企業の継続性と将来の発展について,親企業のコンツェルン決算書の

監査においてはコンツェルン状況報告書を顧慮しつつコンツェルンの継続性

と将来の発展について説明しなければならない。③このほかに決算監査人

は,監査の執行に際して確認した不正又は法規違反,並びに被監査企業又は

被監査コンツェルンの存続を脅かす事実,それらの発展を著しく害し得る事

実又は法律上の代表者又は従業員による法律,会社契約又は定款に対する重

大な違反と判断される事実を報告しなければならない。

⑵ ①監査報告書の主部においては,簿記及び広く監査された資料,年度決算

書,状況報告書,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書が法律の

規定及び会社契約又は定款の補充的規定に適合しているかを確認しなければ

ならない。②ここにおいて,それが業務執行及び被監査企業の監督に対して

意義のあるものである限りにおいて,証明の付記の限定又は拒否に至らない

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程度の異議についても報告しなければならない。③当該決算書が総体におい

て正規の簿記の諸原則又はその他の基準となるべき会計原則を遵守し,資本

会社又はコンツェルンの財産,財務及び収益の事実の諸関係に対応した写像

を表示しているかについても説明しなければならない。④これに加えて,重

要な評価の基礎,並びに計上及び評価における選択権の行使及び自由裁量の

行使,並びに状況に応じた措置を含めた評価の基礎の変更が総体において財

産,財務及び収益の状況の表示にどのような影響を持つかについて説明しな

ければならない。⑤さらに,年度決算書及びコンツェルン決算書の各項目に

ついて,附属説明書において記載されていない限りにおいて,区分され十分

に説明されなければならない。⑥法律上の代表者が求められた説明と証拠を

提供したかどうかを表示しなければならない。

⑶ ①監査報告書の別の段落において,監査の対象,方法及び範囲を説明しな

ければならない。②その際,適用された会計原則及び監査原則についても説

明しなければならない。

⑷ ①監査において第317条第4項に基づく判断をした場合には,その結果を

監査報告書の別の段落において表示しなければならない。②内部統制システ

ムを改善するための措置が必要であるかどうかについても,説明しなければ

ならない。

(4a) 決算監査人は監査報告書においてその独立性について確認しなければな

らない。

⑸ ①決算監査人は報告書に署名し,法律上の代表者に提出しなければならな

い。②監査役会が委託をした場合には,報告書は監査役会に提出しなければ

ならない。取締役に対しては提出に先立って意見表明の機会が与えられなけ

ればならない。

第321a条(特別な場合における監査報告書の公開)⑴ ①会社財産について

倒産手続が開始された場合又は倒産手続の申立てが財産不足を理由に棄却さ

れた場合には,債権者又は社員は,自ら又はその者によって決定される公認

会計士,又は第319条第1項第2文の場合に限り宣誓帳簿監査士を通じて,

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直近3事業年度の年度決算書について法に基づいて行われるべき監査につい

ての決算監査人の監査報告書を,当該監査報告書が第321条に基づき求めら

れる報告に該当する限りにおいて,閲覧する選択権を有する。②この請求権

は,その所在地において監査報告書を保管している者に対して行使される。

⑵ ①株式会社又は株式合資会社においては,第1項第1文に基づく社員の権

利は,当該社員の持分が請求権の行使に際して合計で資本の100分の1又は

市場価格にして10万ユーロに達している場合にのみ与えられる。②決算監査

人には,第1項第1文に掲げられた者に対して監査報告書を説明することが

認められる。

⑶ ①倒産管財人又は債務者の法律上の代表者は,その公開が会社に相当な不

利益を与えるものと認められる場合には,秘密,特に企業秘密又は業務上の

秘密の開示について異議を述べることができる。②第323条第1項及び第3

項は,その他の点において影響されない。③第1文に関わりなく,第1項第

1文による権限を有する者は,第1項第1文により閲覧した書類の内容につ

いて秘密を保持することが義務付けられる。

⑷ 第1項から第3項は,債務者がコンツェルン決算書及びコンツェルン状況

報告書の作成を義務付けられている場合に準用される。

第322条(証明の付記)⑴ ①決算監査人は,監査の結果を年度決算書又はコ

ンツェルン決算書に対する証明の付記において簡略に述べなければならな

い。②証明の付記は監査の対象,方法及び範囲について述べなければなら

ず,その際に適用された会計原則及び監査原則について記載しなければなら

ない。さらに,証明の付記には監査結果についての評価が含まれなければな

らない。③最初の段落において少なくとも監査の対象の叙述及び適用された

会計原則の記載がなされなければならない。

⑵ ①監査結果の評価は,次の各号のいずれであるのかを,疑問の余地のない

ように明らかにしなければならない。

⒈ 無限定の証明の付記を与える。

⒉ 限定付き証明の付記を与える。

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⒊ 異議に基づき証明の付記を拒否する。

⒋ 決算監査人が監査の判断を行うべき状態にないことを理由に証明の付記

を拒否する。

 ②監査結果の評価は,法律上の代表者が責任を負うべき状況を考慮して,平

明かつ問題指向的になされなければならない。③企業又はコンツェルン企業

の継続性を危うくするリスクについては特に記載されなければならない。④

子企業の継続性を危うくリスクについては,当該子企業がコンツェルンの事

実の諸関係に合致した財産,財務及び収益の状況の写像の表示において副次

的な意義のみを有するものである場合には,親企業のコンツェルン決算書の

証明の付記において記載されることを要しない。

⑶ ①無限定の証明の付記(第2項第1文第1号)においては,決算監査人は,

当該監査人によって第317条に従い実施された監査において何らの異議も生

じなかったこと,及び会社の法律上の代表者により作成された年度決算書又

はコンツェルン決算書が,監査により得られた決算監査人の知見に基づきそ

の評価として法律上の規定に適合しており,正規の簿記の諸原則又はその他

の基準となる会計原則を遵守して企業又はコンツェルンの事実の諸関係に合

致した財産,財務及び収益の状況の写像を表示していることを明言しなけれ

ばならない。②決算監査人はこれに加えて,証明の付記が限定されることと

ならないよう特別な方法で注意を払った状況についての指摘を行うことがで

きる。

⑷ ①異議を述べるべき場合においては,決算監査人は第3項第1文に基づく

言明を限定(第2項第1文第2号)又は拒否(第2項第1文第3号)しなけ

ればならない。②拒否は,付記のなかにおいて,それが証明の付記として引

用されないように,なされなければならない。③証明の限定又は拒否は,理

由づけられなければならない。④限定付き証明の付記は,監査された決算書

が,決算監査人の述べる,その射程範囲の明確な限定に注意を払うことで事

実の諸関係に大体において合致した財産,財務及び収益の写像を表示してい

る場合にのみ与えることができる。

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⑸ ①証明の付記は,決算監査人が事実の解明のための全ての相当な機会を利

用したのちなお監査の判断を行うべき状態にない場合(第2項第1文第4

号)においても,拒否されなければならない。②第4項第2文及び第3文は

準用される。

⑹ ①監査結果の評価は,状況報告書又はコンツェルン状況報告書が決算監査

人の判定において年度決算書,場合によっては第325条第2a項による単体決

算書又はコンツェルン決算書と調和しているか,状況報告書又はコンツェル

ン状況報告書の作成についての法律上の規定が遵守されているか,及び状況

報告書又はコンツェルン状況報告書が総体として企業又はコンツェルンの状

況の的確な写像を表示しているかについても及ばなければならない。②その

際には,将来の発展についての機会及びリスクが的確に表示されているかに

ついても記載されなければならない。

⑺ ①決算監査人は,証明の付記又は拒否の付記について場所と日付を付して

署名しなければならない。②証明の付記又は拒否の付記については監査報告

書にも記録されなければならない。③決算監査人が監査法人である場合に

は,署名は,被監査会社の決算監査を執行した公認会計士によってなされな

ければならない。④第3文は,帳簿監査士法人について準用される。

第323条(決算監査人の責任)⑴ ①決算監査人,その補助者及び監査に際し

て協力した監査法人の法律上の代表者は,誠実で公正な監査及び秘密の保持

が義務付けられる。公認会計士法第57b条は,これに影響されない。②これ

らの者は,その活動によって知った業務上又は経営上の秘密を権限なく利用

してはならない。③故意又は過失によりその義務に違反した者は,資本会社

及び結合企業が損害を被った場合には当該企業に対して,義務違反から生じ

た損害を賠償すべき義務を負う。④損害賠償義務を負う者が複数いるとき

は,連帯債務者として責任を負う。

⑵ ①過失により損害賠償義務を負う者の責任は,1回の監査につき100万ユー

ロに制限される。②その株式について規制市場での取引が許可されている株

式会社の監査に際しては,過失により損害賠償義務を負う者の責任は,第1

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文の規定にかかわらず1回の監査につき400万ユーロに制限される。③以上

のことは,監査に複数の者が参加していた場合,又は複数の者が賠償義務を

基礎づける行為に関与していた場合にも同様であり,かつ,他の関与者が故

意に行為したどうかにはかかわらない。

⑶ 守秘義務は,決算監査人が監査法人である場合には,当該監査法人の監査

役会及び監査役会構成員に対しても生じる。

⑷ 本条の規定に基づく賠償義務を契約により排除又は制限することはできな

い。

⑸ (削除)

第324条(監査委員会)⑴ ①第264d条の意味における資本会社であって

株式法第100条第5項の条件を満たすべき監査役会又は経営管理委員会

(Verwaltungsrat)を有しないものは,特に株式法第107条第3項第2文に

規定する任務に従事する,第2項の意味における監査委員会を設置しなけれ

ばならない。②ただし,以下の各号に該当する場合には,適用しない。

⒈ 第1文の意味における資本会社であって,その目的が専ら有価証券取引

法第2条第1項の意味における有価証券であって財産をもって担保されて

いるものを発行することにある場合。この場合,附属説明書に,いかなる

理由で監査委員会を設置しないのかを説明しなければならない。

⒉ 第340条第1項の意味における金融機関であって,有価証券取引法第2

条第5項の意味における組織化された市場について有価証券取引法第2条

第1項第3号aの意味における負債証券の発行についてのみ請求権を有す

る場合。ただし,その額面額が1億ユーロを超えず,かつ,有価証券目論

見書法に基づく目論見書交付義務を負わない場合に限る。

⑵ ①監査委員会の構成員は,社員から選出しなければならない。②構成員の

少なくとも1名は株式法第100条第5項の条件を満たさなければならない。

③監査委員会の代表者は業務執行を委託されてはならない。④株式法第124

条第3項第2文,同法第171条第1項第2文及び第3文は,準用される。

第324a条(第325条第2a項に基づく単体決算書に対する適用)⑴ ①本節の規

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定で年度決算書に関するものは,第325条第2a項に基づく単体決算書に準用

される。②第316条第1項第2文に代わって,第316条第2項第2文が準用さ

れる。

⑵ ①年度決算書の監査のために選任された監査人は,第325条第2a項に基づ

く単体決算書の決算監査人として選任されたものとみなす。②第325条第2a

項に基づく単体決算書のための監査報告書は,年度決算書のための監査報告

書と統合することができる。

第4節 開示,連邦官報の運営者による監査

第325条(開示)⑴ ①資本会社の法律上の代表者は,会社のために以下の各

号に定める事項をドイツ語で開示しなければならない。

⒈ 作成し又は承認した年度決算書,状況報告書及び証明の付記又は拒否の

付記

⒉ 監査役会報告書及び株式法第161条により規定された説明

②これらの書類は,連邦官報の運営者に対して,その公告が可能な形式によ

り電磁的に提出されなければならない。

(1a) ①第1項第1文による書類は,当該書類に係る事業年度の決算基準日後

1年以内に提出されなければならない。②第1項第1文第2号による書類が

当該期間内に提出されない場合には,その提出後,遅滞なく第1項により開

示されなければならない。

(1b) ①年度決算書又は状況報告書が変更された場合には,当該変更もまた第

1項第1文により開示されなければならない。②年度決算書に年度業績の処

分に関する提案のみが記載されている場合には,提出後になされた年度業績

の処分に関する決議は第1項第1文により開示されなければならない。

⑵ 資本会社の法律上の代表者は,会社のために第1項に掲げられた書類をそ

の提出後に遅滞なく連邦官報において公告されるようにしなければならな

い。

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(2a) ①第2項に基づく開示に際しては,年度決算書に代えて,第315a条第1

項に掲げられた国際的な会計原則に従って作成された単体決算書を用いるこ

とができる。②この選択権を使用した企業は,先に述べた基準に完全に従わ

なければならない。③かかる決算書については第243条第2項,第244条,第

245条,第257条,第264条第1a項,第2項第3文,第285条第7号,第8号b,

第9号から第11a号,第14号から第17号,第286条第1項,第3項及び第5項

が適用される。④第289条に基づく状況報告書は,必要な範囲で第1文に基

づく決算書に関連させなければならない。⑤第1章第2節の残りの規定,及

び第2章第1節の残りの規定はその限りで適用されない。⑥第286条第1項

が附属説明書に適用されたことにより第2文に掲げられた条件を遵守するこ

とができない時は,第1文に基づく選択権は消滅する。

(2b) 第2a項に基づく単体決算書の開示に関する免除的効力は,以下の各号の

全てに該当する場合に生じる。

⒈ 年度決算書の決算監査人が付与した証明の付記又は拒否の付記に代わっ

て,第2a項による決算書に対する相応の証明が第2項に基づく開示に引用

されていること。

⒉ 年度業績の処分の提案及び場合によってはその処分の決議について,

年度利益又は年度損失を示しつつ第2項に基づく開示に引用されているこ

と。

⒊ 年度決算書及びその証明の付記又は拒否の付記が第1項第1文から第4

文に基づき開示されていること。

⑶ 第1項から第2項まで及び第4項第1文は,コンツェルン決算書及びコン

ツェルン状況報告書を作成しなければならない資本会社の法律上の代表者に

も準用する。

(3a) コンツェルン決算書が親企業の年度決算書又は親企業により作成された

第2a項に基づく単体決算書とともに公告された場合には,第322条に基づく

決算監査人の証明は2つの決算書について統合することができる。この場

合,それぞれの決算報告書も統合することができる。

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⑷ ①第264d条の意味における資本会社であって,第327a条の意味における資

本会社でないものについては,第1a項第1文に基づく期間は最長4か月とす

る。②第1文及び第1a項第1文に基づく期間の遵守の判断については,書類

の提出の時点が基準とされる。

⑸ 法律,会社契約又は定款に基づき,会社に対して年度決算書,第2a項に基

づく単体決算書,状況報告書,コンツェルン決算書又はコンツェルン状況報

告書を他の方法により公告し,提出し,又は各人に利用可能にするよう定め

られた義務は,なお適用される。

⑹ 第11条及び第12条第2項は,連邦官報の運営者に対して提出された書類に

ついて準用される。第325a条第1項第3文及び第340l条第2項第6文は,な

お適用される。

第325a条(外国に本拠を有する資本会社の支社)⑴ ①欧州連合の他の加盟

国又は欧州経済圏協定締約国に本拠を有する資本会社の内国支店において

は,第13e条第2項第4文第3号に掲げる者,そのような者がいない場合に

は会社の法律上の代表者は,会社のために,本店において適用される法に基

づき作成され,監査され,開示又は寄託された本店の会計書類を第325条,

第328条,第329条第1項及び第4項に従って開示しなければならない。②書

類はドイツ語で提出されなければならない。③ドイツ語が本店所在地の公用

語でない場合には,本店の書類については以下の各号により提出することが

できる。

⒈ 英語

⒉ 本店の登記所により認証された謄本

⒊ 登記所への同様の提出制度が存在しない,又は登記所に認証の権限が与

えられていない場合には,登記所への同様の提出制度がない,又は登記所

が認証の権限を与えられていない旨の説明を付して,公認会計士により証

明を付された謄本

  登記所の認証については,認証されたドイツ語への翻訳が提出されなけれ

ばならない。

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⑵ 本条は,第340条の意味における信用機関又は第341条の意味における保険

企業に分類される支店には適用されない。

⑶ ①第1項の適用に際しては,資本会社を小規模資本会社(第267a条)とし

て格付けるか,及び会計において軽減措置が適用されるか否かについては欧

州連合の他の加盟国又は欧州経済圏協定締約国の法が基準となる。②小規模

資本会社が当該会社において基準となる法によりその開示義務を貸借対照表

の寄託により履行することができる場合には,当該会社は第1項による開示

を同様に寄託により行うことができる。③第326条第2項が準用される。

第326条(開示における小規模資本会社・最小規模資本会社に対する規模に基

づく軽減措置)⑴ ①小規模資本会社(第267条第1項)については,第325

条第1項は,法律上の代表者は貸借対照表及び附属説明書のみを提出すれば

足りるものとして適用される。②附属説明書には,損益計算書に関する記載

をする必要はない。

⑵ ①最小規模資本会社(第267a条)の法律上の代表者は,第325条第1項か

ら第2項により生ずる義務について,貸借対照表を電磁的形式により永続的

な寄託のために連邦官報の運営者に提出し,かつ,寄託指図を与えることに

よっても履行することができる。②第325条第1項第2文,第1a項及び第1b

項は準用される。③最小規模資本会社は,連邦官報の運営者に対して第267a

条第1項に掲げられた3つの基準のうち2つを第267条第4項に基づいて基

準となる決算基準日において超過していないことを通知した場合にのみ,第

1文に定められた権利を行使することができる。

第327条(開示における中規模資本会社への規模に基づく軽減措置)⑴ 中規

模資本会社(第267条第2項)については,第325条は次の措置を伴って適用

される。

⒈ ①法律上の代表者は貸借対照表について,小規模資本会社のために第

266条第1項第3文によって定められた形式により連邦官報の運営者に対

して提出しなければならない。②ただし,貸借対照表又は附属説明書にお

いて第266条第2項及び第3項の以下の項目について追加的に区別して記

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載しなければならない。

  借方において

AI1 自己が創設した営業上の保護権並びに同様の権利及び価値

AI2 営業権又は暖簾

AII1 土地,土地類似の権利,他人の土地上の建物も含めた建物

AII2 技術設備及び機械

AII3 その他の設備,経営上及び業務上の備品

AII4 建物に対する前払金及び投資

AIII1 結合企業に対する持分

AIII2 結合企業に対する貸付け

AIII3 資本参加

AIII4 資本参加関係にある企業に対する貸付け

BII2 結合企業に対する債権

BII3 資本参加関係にある企業に対する債権

BIII1 結合企業に対する持分

  貸方において

C1 社債

   うち転換社債

C2 金融機関に対する負債

C6 結合企業に対する負債

C7 資本参加関係にある企業に対する負債

⒉ 法律上の代表者は,第285条第2号及び第8号a),第12号に基づく記載

のない附属説明書を連邦官報の運営者に提出することができる。

第327a条(一定の資本市場を指向する資本会社における軽減措置) 第325条

第4項第1文は,専ら組織化された市場での取引を許可された有価証券取

引法第2条第1項第3号の意味における債務証券のみをその最低額面額10万

ユーロ又は発行日において他の通貨でそれと同価値の額で発行する資本会社

については適用しない。

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第328条(開示における書類の形式と内容,公刊及び謄写)⑴ ①年度決算書,

第325条第2a項に基づく単体決算書,コンツェルン決算書又は状況報告書又

はコンツェルン状況報告書の開示に際しては,これらの決算書及び状況報告

書は,第326条及び第327条に基づく軽減措置が行使され,又は第4項に基づ

く連邦司法・消費者保護省の法規命令により逸脱が認められるのではない限

り,それらの作成について基準となる規定に適合するように再現されなけれ

ばならない。②それらはその範囲で完全かつ正確でなければならない。③第

1文及び第2文は,部分的開示又は会社契約又は定款に基づく他の形式によ

る公刊又は謄写の場合にも適用する。

(1a) ①第1項第1文に掲げられた決算書の確定又は承認の日付は,告知され

なければならない。②決算書が法律上の規定に基づいて決算監査人により監

査された場合には,それぞれその証明の付記又は拒否の付記の完全な文面が

再現されなければならない。年度決算書につき軽減措置の利用により部分的

に開示され,かつ,証明の付記が完全な年度決算書をカバーしているとき

は,その旨を注意喚起しなければならない。③年度決算書,第325条第2a項

に基づく単体決算書又はコンツェルン決算書の開示に際して,当該開示が第

325条に基づき開示すべき他の全ての書類と同時に行われないときは,その

旨を注意喚起しなければならない。

⑵ ①法律,会社契約又は定款に定められずに行われる決算書の公刊又は謄写

が第1項に定められたものではない形式でなされる場合には,それぞれ表題

において,法律上の形式に適合した公刊ではない旨を注意喚起しなければな

らない。②証明の付記は,添付されてはならない。③ただし,法律上の規定

に基づいて決算監査人により監査が行われたときは,第322条第2項第1文

に掲げられた監査結果の総合評価のうちどれを会計監査人が法律上の形式に

基づいて作成された決算書について採用したか,及び証明の付記に第322条

第3項第2文に基づく指摘が含まれているかどうかについて告知しなければ

ならない。④さらに,書類が連邦官報の運営者に提出されているかどうかに

ついても告知しなければならない。

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⑶ ①第1項は状況報告書,コンツェルン状況報告書,成果の処分の提案及び

その処分の決議について準用される。②第1文に掲げられた書類が年度決算

書又はコンツェルン決算書と同時に開示されないときは,それらが遅れて公

開されるごとに,いずれの決算書に関するものであるか,及び決算書がどこ

で開示されているかについて告知しなければならない。証明の付記又は拒否

の付記が遅れて開示される場合も,同様である。

⑷ 第330条第1項第1文,第4文及び第5文に基づく法規命令は,連邦官報

の運営者に対し,第266条第1項第1文に基づく勘定形式からの逸脱を認め

ることができる。

⑸ 最小規模資本会社における貸借対照表の寄託(第326条第2項)について

は,第1項が準用される。

第329条(連邦官報の運営者の検査・通知義務)⑴ ①連邦官報の運営者は,

提出されるべき書類が期限を守り,そろって提出されたか否かを検査する。

②企業登記の運営者は連邦官報の運営者に対し,その第1項に基づく職務の

遂行に必要な限りにおいて,第8b条第3項第2文に基づき州司法行政機関か

ら伝達された情報の利用を認める。③当該情報は,連邦官報の運営者におい

て,第1文に掲げられた目的のためだけに使用されなければならない。

⑵ ①検査により,資本会社の規模による軽減措置又は第327a条に基づく軽減

措置を要求され得なかったとの推定が生じたときは,連邦官報の運営者は資

本会社から相当の期間内に売上高(第277条第1項)及び平均従業員数(第

267条第5項)の報告又は第327a条の意味における資本会社としての性質に

ついての告知を求めることができる。②資本会社が期間内の報告を行わない

ときは,軽減措置は違法に利用されたものとみなす。

⑶ 第325a条第1項第3文及び第340l条第2項第6文に該当する場合,ドイツ

語への翻訳の提出を求めることができる。

⑷ 第1項第1文に基づく検査により,開示されるべき書類が全く提出されて

いない,又は不完全に提出されていることが明らかになったときは,そのこ

とをその都度第335条,第340o条及び第341o条に基づく課徴金手続の執行を

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担当する行政庁に通知しなければならない。

第5節 様式及びその他の規定の制定権限

第330条【様式制定権限,その他の権限】⑴ ①連邦司法・消費者保護省は,

事業の種類により第266条又は第275条から逸脱するような年度決算書又はコ

ンツェルン決算書の項目区分,若しくは第1章又は第2章第1節及び第2節

の規定から逸脱する規範が必要であるときには,連邦財務省及び連邦経済エ

ネルギー省の了解を得て,連邦参議院の同意を得ることを要しない法規命令

により,資本会社のために様式を規定し,若しくは年度決算書又はコンツェ

ルン決算書の項目区分又は附属説明書,コンツェルン附属説明書,状況報告

書又はコンツェルン状況報告書の内容について定める権限を有する。②第1

文に掲げられた書類について当該逸脱規定により生じる規定内容は,大規模

資本会社(第267条第3項)に対して第1章及び第2章第1節及び第2節の

規定並びに当該事業に対して適用される規定により生じる規定内容と同等で

なければならない。③適用される法を超える規定内容は,欧州連合理事会の

法的行為により認められる場合にのみ定めることができる。④第1文に基づ

く法規命令は,第266条第1項第1文に基づく勘定形式からの逸脱を許すこ

とができる。⑤第4文は,その事業の種類において第266条及び第275条から

逸脱した項目区分が必要でない場合にも適用される。

⑵ ①第1項は,信用制度法第1条第1項の意味における信用機関(同法第2

条第1項,第4項,第5項により適用が除外されないものに限る。),信用

制度法第1条第1a条の意味における金融サービス機関(同法第2条第6項又

は第10項により適用が除外されないものに限る。),並びに支払サーヴィス監

督法第1条第2a項の意味における機関について,第3文及び第4文の条件に

従って,その法形態に関わりなく適用される。②第1文は,欧州共同体加盟

国でなく,かつ,欧州経済圏協定締約国でない国に本拠を有する企業の支店

についても,当該支店が信用制度法第53条第1項により信用機関又は金融機

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関とみなされる限りにおいて,適用される。③法規命令には連邦参議院の同

意を要しない。連邦財務省の協力とドイツ連邦銀行との協議を経て公布され

なければならない。④第1文に基づく法規命令においては,連邦金融サービ

ス監督庁又はドイツ連邦銀行の任務を遂行するため,とりわけ信用機関及び

金融サービス機関が遂行する銀行業務及び提供する金融サービスの評価の統

一的基礎を獲得するために必要な限りにおいて,年度決算書,コンツェルン

決算書,第340a条による中間決算書及び第340i条によるコンツェルン中間決

算書の項目区分につき規定された様式との関連において,年度決算書及びコ

ンツェルン決算書の作成についてより狭い規定を設けることができる。

⑶ ①第1項は,保険企業について,第3文及び第4文の条件に従って,その

法形態にかかわりなく適用される。②第1文は,他国に本拠を有する保険企

業の本法適用領域における営業所についても,当該営業所が直接保険の営業

についてドイツ保険監督当局による認可を要する場合には,適用される。

③法規命令には連邦参議院の同意を要し,かつ,連邦財務省の協力のもとに

公布しなければならない。④第1文に基づく法規命令においては,年度決算

書,コンツェルン決算書,第340a条による中間決算書及び第340i条によるコ

ンツェルン中間決算書の項目区分につき規定された様式,並びに保険技術上

の引当金,とりわけ近似手続の計上及び評価に関する規定との関連におい

て,年度決算書及びコンツェルン決算書の作成についてより狭い規定を設け

ることができる。⑤法規命令が専ら第1項第4文及び第5文に基づく例外を

認める目的のためのものである場合には,連邦参議院の同意を要しない。

⑷ ①第3項が準用する第1項の法規命令においては,保険企業であって当該

企業に対して指令2009/138/EG第4条及び第7条に基づき当該指令が適用さ

れないものについて,保険企業の規模との関係において不相当な負担を回避

するために必要な限りにおいて,第4章第2節の規範から完全に又はその一

部につき免除される旨を定めることができる。第1項第2文はその限りで適

用されない。②法規命令には,それらの保険企業に対して,年度決算書及び

コンツェルン決算書の項目区分,附属説明書,状況報告書,コンツェルン附

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属説明書及びコンツェルン状況報告書の作成並びに開示について,その規模

に相応の簡略化を認めることができる。

⑸ 第3項及び第4項は,年金基金(保険監督法第236条第1項)に準用される。

第6節 刑罰及び過料の規定,秩序違反金

第331条(不正な表示) 次の各号に該当する者は,3年以下の懲役刑又は罰

金刑により罰せられる。

⒈ 資本会社の代表権限ある機関又は監査役会の構成員として,開業貸借対

照表,年度決算書,状況報告書又は第340a条第3項に基づく中間決算書に

おいて資本会社の事情を不正確に再現し,又は誤導的に再現した者

1a.資本会社の代表権限ある機関又は監査役会の構成員として,第325条第

2a項第1文及び第2b項に基づく免除の目的で,第315a条に掲げられた国際

的な会計基準に従って作成された単体決算書であって資本会社の事情を不

正確に再現し,又は誤導的に再現したものを,故意又は重過失により開示

した者

⒉ 資本会社の代表権限ある機関又は監査役会の構成員として,コンツェル

ン年度決算書,コンツェルン状況報告書又は第340i条第4項に基づくコン

ツェルン中間決算書においてコンツェルンの事情を不正確に再現し,又は

誤導的に再現した者

⒊ 資本会社の代表権限ある機関又は監査役会の構成員として,第291条第

1項及び第2項又は第292条に基づく免除の目的で,コンツェルンの事情

を不正確に再現し,又は誤導的に再現したコンツェルン決算書又はコン

ツェルン状況報告書を故意又は重過失により開示した者

3a.第264条第2項第3文,第289条第1項第5文,第297条第2項第4文又

は第315条第1項第6文に反して不正に確認を付した者

⒋ 資本会社の代表権限ある機関の構成員若しくはその子企業(第290条第

1項,第2項)の代表権限ある機関の構成員又は代表権限ある社員とし

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て,第320条に基づき資本会社,結合企業又はコンツェルンの決算監査人

に対して与える説明又は証拠において,不正確な言明をし,又は資本会

社,子企業又はコンツェルンの事情を不正確に再現し,又は誤導的に再現

した者

第332条(報告義務違反)⑴ 決算監査人又は決算監査人の補助者として資本

会社の年度決算書,第325条第2a項に基づく単体決算書,状況報告書,コンツェ

ルン決算書,コンツェルン状況報告書,又は第340a条第3項に基づく中間決

算書又は第340i条第4項によるコンツェルン中間決算書の監査の結果につい

て不正確に報告をし,監査報告書(第321条)において重要な事情を秘匿し,

又は内容の不正確な証明の付記(第332条)を付与した者は,3年以下の懲

役刑又は罰金刑により罰せられる。

⑵ 行為者が対価を得て,若しくは自己又は第三者の利益を図り又は第三者を

害する意図をもって行為を行った場合には,5年以下の懲役刑又は罰金刑と

する。

第333条(秘密保持義務違反)⑴ 資本会社,子企業(第290条第1項,第2項),

共同運営企業(第310条)又は関連企業(第311条)の秘密,とりわけ経営上

又は業務上の秘密であって決算監査人又は決算監査人の補助者の資格におい

て年度決算書,第325条第2a項に基づく単体決算書又はコンツェルン決算書

の監査に際して知るに至ったものを権限なく漏洩した者,又は経営上又は業

務上の秘密又は企業に関する知識であって第342b条第1項の意味における検

査機関の従業者として知ったものを権限なく漏洩した者は,1年以下の懲役

刑又は罰金刑により罰せられる。

⑵ ①行為者が対価を得て,若しくは自己又は第三者の利益を図り又は第三者

を害する意図をもって行為を行った場合には,2年以下の懲役刑又は罰金刑

とする。②第1項に掲げられた性質の秘密,とりわけ経営上又は業務上の秘

密であって第1項の条件により知ったものを権限なく利用した者も,同様に

罰せられる。

⑶ 行為は,資本会社の告訴によってのみ訴追される。

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第334条(過料規定)⑴ 代表権限ある機関又は監査役会の構成員として次の

各号に掲げるいずれかの場合において各号に掲げる規定のいずれかに反した

者は,秩序違反として扱う。

⒈ 年度決算書の作成又は確定の場合

a) 形式又は内容に関する第243条第1項又は第2項,第244条,第245条,

第246条,第247条,第248条,第249条第1項第1文又は第2項,第250

条第1項又は第2項,第251条又は第264条第1a項又は第2項の規定

b) 評価に関する第253条第1項第1文,第2文,第3文,第4文,第5

文又は第6文,第2項第1文(第2文との関連を含む),第3項第1文,

第2文,第3文,第4文又は第5文,第4項又は第5項,第254条又は

第256a条の規定

c) 区分に関する第265条第2項,第3項,第4項又は第6項,第266条,

第268条第3項,第4項,第5項,第6項又は第7項,第272条,第274条,

第275条又は277条の規定

d) 貸借対照表内,貸借対照表の下部,又は附属説明書においてなされ

るべき言明に関する第284条又は第285条の規定

⒉ コンツェルン決算書の作成の場合

a) 連結範囲に関する第294条第1項の規定

b) 内容又は形式に関する第297条第1a項,第2項又は第3項又は第298条

第1項が準用する第244条,第245条,第246条,第247条,第248条,第

249条第1項第1文又は第2項,第250条第1項又は第251条の規定

c) 連結原則又は完全性の要求に関する第300条の規定

d) 評価に関する第308条第1項第1文が準用する本条第1号b)所掲の

規定,第308条第2項又は第308a条の規定

e) 関連企業の取扱いに関して第312条との関連における第311条第1項第

1文の規定

f) コンツェルン附属説明書においてなされるべき言明に関する第308条

第1項第3文,第313条又は第314条の規定

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⒊ 状況報告書の作成の場合 状況報告書の内容に関する第289条又は第

289a条の規定

⒋ コンツェルン状況報告書の作成の場合 コンツェルン状況報告書の内容

に関する第315条第1項,第2項,第4項又は第5項の規定

⒌ 開示,寄託,公刊又は謄写の場合 形式又は内容に関する第328条の規

⒍ 第330条第1項第1文に基づいて認められた法規命令において,それが

特定の構成要件について本過料規定を参照している場合 当該法規命令の

規定

⑵ 第319条第2項,第3項,第5項,第319a条第1項第1文,第2項,第

319b条第1項第1文又は第2文によってその者自身が,又は第319条第4項

(第319a条第1項第2文との関連における場合を含む。),又は第319a条第1

項第4文,第5文,第319b条第1項によりその者がそのために活動する監査

法人又は帳簿監査士法人が決算監査人となることができないにもかかわら

ず,法の規定に基づいて監査しなければならない年度決算書,第325条第2a

項に基づく単体決算書又はコンツェルン決算書に対して第322条に基づく証

明を付与した者は,秩序違反として扱う。

⑶ 秩序違反は,5万ユーロ以下の過料により罰せられる。

⑷ 第1項及び第2項において,秩序違反行為法第36条第1項第1号の意味に

おける行政庁は,連邦司法庁である。

⑸ 第1項から第4項は,第340条の意味における信用機関及び第341条の意味

における保険企業には適用しない。

第335条(秩序違反金の決定)⑴ ①次の各号のいずれかに該当する規定に従

わなかった資本会社の代表権限を有する機関の構成員に対しては,義務に反

して適時の開示を怠ったことに関して連邦司法庁(連邦庁)により第2項か

ら第6項に基づく秩序違反金手続が執行される。第2号の場合においては,

第13e条第2項第4文第3号に掲げられた者が届け出られた後は,その者が

資本会社の代表権限を有する機関の構成員に代わって適用を受ける。

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⒈ 年度決算書,状況報告書,コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告

書及びその他の会計の書類の開示義務に関する第325条

⒉ 本店の会計書類の開示義務に関する第325a条

②秩序違反金手続は,資本会社の代表権限を有する機関の構成員がそのた

めに第1号及び第2号の義務を履行すべきであった資本会社に対しても執

行されることができる。③開示に先行する義務,とりわけ年度決算書又は

コンツェルン決算書の作成又は遅滞なき監査委託の実施,が履行されてい

ないことは,秩序違反金手続を妨げない。④秩序違反金は2500ユーロ以上

2万5000ユーロ以下の額とする。⑤徴収された秩序違反金は連邦庁に与え

られる。

(1a) ①資本会社が第264d条の意味における資本市場を指向するものである場

合,秩序違反金は次の各号の額のうち最も高いものを最高額とする。

⒈ 1000万ユーロ

⒉ 官庁の決定に先立つ事業年度において法人又は社団が稼得した年度総売

上の5パーセント

⒊ 怠った開示から導かれる利得の2倍。経済的利得には稼得された利益及

び減少した損失が含まれ,また推計によることができる。

②秩序違反金が資本会社の法律上の代表機関の構成員に課される場合は,第

1文にかかわらず,秩序違反金は次の各号の額のうち最も高いものを最高額

とする。

⒈ 200万ユーロ

⒉ 怠った開示から導かれる利得の2倍。経済的利得には稼得された利益及

び減少した損失が含まれ,また推計によることができる。

(1b) ①第1a項第1文第2号の意味における総売上とは,次の各号に定める通

りである。

⒈ 第340条の意味における信用機関,支払期間及び金融サービス機関の場

合には,当該機関に適用される内国法であって銀行及びその他の金融機関

の年度決算書及び連結決算書に関する1986年12月8日理事会指令86/635/

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EWG(ABl. L 372 vom 31. 12. 1986, S. 1)第27条第1号,第3号,第4号,

第6号及び第7号又は第28条第B1号,第B2号,第B3号,第B4号及び第B7

号に合致するものにより算定される総額から,売上税その他当該額に直接

課される租税を減算したもの

⒉ 保険企業の場合には,当該保険企業に適用される内国法であって保

険企業の年度決算書及び連結決算書に関する1991年12月19日理事会指令

91/674/EWG(ABl. L 374 vom 31. 12. 1991, S. 7)第63条に合致するものに

より算定される総額から,売上税その他当該額に直接課される租税を減算

したもの

⒊ その他の企業の場合には,第277条第1項による売上高又は当該企業に

適用される内国法であって指令2013/34/EUに合致するものに準拠した純

売上額

 ②法人又は社団として親企業又は子会社が問題となる場合には,当該資本会

社の総売上に代わり,最も広い範囲の企業で作成された親企業のコンツェル

ン決算書における総売上が基準となる。③最も広い範囲の企業でのコンツェ

ルン決算書が第1文に掲げられた規定に基づいて作成されていない時は,総

売上は第1文第1号から第3号までと対比可能なコンツェルン決算書項目に

準じて算出しなければならない。④基準となるべき事業年度の年度決算書又

はコンツェルン決算書を使用できない時は,その年に直接先行する事業年度

の年度決算書又はコンツェルン決算書が基準となる。それも利用できない場

合には,総売上を推計することができる。

(1c) 連邦庁に秩序違反金の額についての裁量が与えられるに際しては,関係

者の以前の違反行為についても考慮しなければならない。

(1d) ①連邦庁は,第1項に基づき第264d条の意味における資本会社又はその

代表機関の構成員に対して決定された秩序違反金について,遅滞なく連邦金

融サービス監督庁に通知する。②かかる秩序違反金決定に対して異議が申し

立てられた場合には,連邦庁は連邦金融サービス監督庁にその状況及び異議

手続の結果について通知する。

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⑵ ①手続については,家事事件及び非訟事件の手続に関する法律第15条から

第19条,第40条第1項,第388条第1項,第389条第3項,第390条第2項か

ら第6項,並びに行政手続法第11条第1号及び第2号,第12条第1項第1号

から第3号,第2項及び第3項,第14条,第15条,第20条第1項及び第3項,

第21条第1項,第23条及び第26条が,後の各項に対応しつつ準用される。②

秩序違反金手続は,司法行政手続である。③公認会計士,宣誓帳簿監査士,

税理士,納税代理人,税理士法第3条第4号の意味における個人又は団体,

及び税理士法第3条第2号及び第3号の意味における社団であって税理士法

第3条第1号の意味における個人によって運営されているものも,当事者を

代理することができる。

(2a) ①電子的記録処理及び電子的通信に関しては,秩序違反行為法第110a条

第1項,第110b条第1項第1文,第2項から第4項,第110c条第1項及び第

110d条が準用される。②秩序違反行為法第110a条第2項第1文及び第3文,

並びに第110b条第1項第2文及び第4文は,連邦司法・消費者保護省が法規

命令を連邦参議院の同意なく制定できるとの条件で準用される。連邦司法・

消費者保護省は,この権限を法規命令によって連邦司法庁に委譲することが

できる。

⑶ ①第1項第1文及び第2文に掲げられた関係人に対して,具体的な額を示

す秩序違反金の告知を通知し,当該告知の到達から6週間の期間内にその法

律上の義務を履行するか,又は処分に対する異議によって義務の不履行を正

当化できるようにしなければならない。②秩序違反金の告知とともに,当該

関係人に対して手続費用を課さなければならない。③関係人による異議は,

費用に関する決定に対する抗弁に限定することができる。④秩序違反金の告

知又は費用の決定に対する異議申立ては,当該処分を停止する効力を有しな

い。⑤異議により手続が停止された場合には,同時に第2文に基づく費用の

決定も破棄されなければならない。

⑷ ①関係人が告知の到達から遅くとも6週間の間に法律上の義務を履行する

か,又は異議によって不履行を正当化しようとしない時は,秩序違反金が確

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定し,同時に以前の処分が新たな秩序違反金の告知により繰り返されなけれ

ばならない。②関係人がその法律上の義務を6週間の期間の満了の後に履行

した場合には,連邦庁は次の各号に従って秩序違反金を軽減しなければなら

ない。

⒈ 関係人が第326条第2項に基づく最小規模資本会社の権利を利用してい

た場合には500ユーロ

⒉ 第267条第1項の意味における小規模資本会社が問題となっている場合

には1000ユーロ

⒊ 2500ユーロを超える秩序違反金が告知されており,かつ,第1号及び第

2号のいずれの条件にも該当しない場合には2500ユーロ

⒋ 関係人が6週間の期限をわずかに超過した場合には,上記各号よりも少

ない金額

 ②軽減に際しては,連邦庁の決定の前に生じていた事情のみが考慮されなけ

ればならない。

⑸ ①関係人がその責に帰することのできない事由により第4項に基づく6週

間の期間の間に異議を申し立てること又はその法律上の義務を履行すること

を妨げられた場合には,連邦庁は申立てによりその者に対し元の地位への復

権を認めなければならない。②代理人の過失は,被代理者に帰せられる。

③法律上の救済の教示がなされなかった場合又は瑕疵あるものであった場合

には,過失がないことが推定される。④復権の申立ては,妨げる事情が止ん

だ時から2週間以内に,書面をもって連邦庁に対してなされなければならな

い。⑤申立てを基礎づける事実は,申立ての際に又は申立てに対する手続に

おいて疎明されなければならない。⑥徒過の取扱いについては,妨げる事情

が止んだ時から遅くとも6週間以内になされなければならない。⑦第4項に

基づく6週間の期間の満了から1年以内に復権が申請されず,徒過の取扱い

もなされなかったときは,復権は認められない。⑧復権を認める決定を争う

ことはできない。⑨関係人が復権を申し立てなかった場合又は復権の申立て

を却下する決定が確定した時は,当該関係人が6週間の期間の間に異議を申

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し立てること又はその法律上の義務を履行することについてその者の責めに

帰することのできない事由により妨げられたことを抗告をもって主張するこ

とができない。

(5a) (削除)

⑹ ①第1項から第5項に基づく手続において,連邦庁に対して第267条第1

項から第3項又は第267a条の意味における会社の区分についての根拠が提出

されない時は,連邦庁は第1項第1文及び第2文に掲げられた関係人に対

し,関係する事業年度及び会社区分のために必要な各事業年度について,借

方に計上された損失額(第268条第3項)を控除した貸借対照表合計額,売

上高(第277条第1項)及び年間平均従業員数(第267条第5項)を申告すべ

きことを命じることができる。②第1文に基づく申告がなされない時は,そ

の後の手続においては,第326条及び第327条に基づく軽減措置は行使されえ

ないものと推定される。③第1文及び第2文は,コンツェルン決算書及びコ

ンツェルン状況報告書について,第267条,第326条及び第327条に第293条が

代わるとの条件のもと準用される。

第335a条(秩序違反金の確定に対する抗告,法律抗告,規則制定権限)⑴ 秩

序違反金を確定し,異議又は元の地位への復権の申立てを却下する決定,若

しくは第335条第3項第5文に基づく決定に対しては,次項以下において別

段の定めがない限り,家事事件及び非訟事件の手続に関する法律の規定に基

づいて抗告することができる。

⑵ 抗告は2週間の期間の間になされなければならない。当該抗告について

は,連邦庁の所在地について管轄権を有する地方裁判所が審理する。②重大

な手続遅滞の回避又は過度な業務負担の調整のため,連邦庁が所在する州の

州政府は,法規命令をもって,第1項に基づく上訴の審理を他の一又は複数

の地方裁判所に移譲する権限を有する。③州政府は当該権限を州司法行政に

移譲することができる。④地方裁判所に商事部が設置されているときは,当

該部が民事部に代わって職務を行う。⑤抗告が民事部が審理するときは,

民事訴訟法第348条及び第348a条が準用される。商事部に係属した抗告につ

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いては裁判長が審理する。⑥地方裁判所は公正な評価の後に,関係人に対し

て,適切な訴訟追行のために重要であった裁判外の費用について,その全部

又は一部を国庫から償還すべきことを決定することができる。⑦第6文は,

連邦庁が抗告により決定を是正した場合に準用される。⑧民事訴訟法第1項

第2文及び第103条から第107条は準用される。⑨第335条第2項第3文は適

用されなければならない。

⑶ 地方裁判所が認める場合には,抗告についての決定に対して法律抗告をす

ることが認められる。②法律抗告については,本項に別段の定めがない限

り,家事事件及び非訟事件の手続に関する法律の規定が準用される。③法律

抗告については,地方裁判所の所在地を管轄する上級地方裁判所が審理す

る。④連邦庁も法律抗告を行うことができる。⑤上級地方裁判所において

は,関係人は弁護士により代理されなければならない。連邦庁についてはこ

の限りではない。⑤第2項第6文及び第8文は準用される。

⑷ ①第1項から第3項までに基づく裁判所の電子的記録処理及び裁判所との

電子的通信に関しては,秩序違反行為法 第110a条第1項,第110b条第1項

第1文,第2項から第4項,第110c条第1項及び第110d条が準用される。②

秩序違反行為法第110a条第2項第1文及び第3文,並びに第110b条第1項第

2文及び第4文は,連邦庁が所在する州の州政府が法規命令を制定でき,か

つ,当該権限を法規命令により州司法行政に移譲できるとの条件において適

用される。

第335b条(特定の合名会社及び合資会社に対する刑罰,過料,及び秩序違反

金の規定の適用) ①第331条から第333条までの刑罰規定,第334条の過料規

定,並びに第335条の秩序違反金の規定は,第264a条第1項の意味における

合名会社及び合資会社にも適用する。②この場合,第335条に基づく手続は

無限責任社員又は無限責任社員について代表権限を有する機関の構成員に対

してなされなければならない。③当該手続は,合名会社又は合資会社に対し

ても行うことができる。④第335a条は準用される。

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第3章 登記済協同組合についての補充規定

第336条【年度決算書・状況報告書作成義務】⑴ 協同組合の取締役は,貸借

対照表及び損益計算書と一体をなす附属説明書をもって年度決算書(242条)

を補充しなければならず,また状況報告書を作成しなければならない。②年

度決算書及び状況報告書は事業年度の最初の5か月の間に,前事業年度につ

いて作成しなければならない。

⑵ ①年度決算書及び状況報告書については,本章に特段の定めがない限り,

以下の各号の規定が準用される。

⒈ 第264条第1項第4文第1段及び第1a項,第2項

⒉ 第265条から第289条。ただし第277条第3項,第4項及び第285条第17号

を除く。

⒊ 協同組合法第9条第3項に対応した第289a条第4項

②その他の規定であって,支店を通じて義務付けられるものについては,影

響を及ぼさない。③協同組合であって第267a条第1項の最小規模資本会社の

基準を満たすもの(最小規模協同組合)については,第337条第4項及び第

338条第4項による詳しい条件により最小規模資本会社の軽減措置を適用す

ることができる。

⑶ 法規命令の発布に関する第330条第1項は準用される。

第337条(貸借対照表に関する規定)⑴ ①引受済資本の代わりに,組合員の

貸分の額を計上しなければならない。②その際には,事業年度の満了ととも

に脱退する組合の貸分の額を区別して記載しなければならない。③持分のう

ち払込時期に遅滞している払込みが貸借対照表において貸分として計上され

ている場合には,当該額について借方に「持分のうち払込時期に遅滞してい

る払込み」の項目のもと計上しなければならない。④いずれの場合も,当該

額は額面額で計上されなければならない。⑤定款において定められている最

低資本は区別して記載しなければならない。

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⑵ 利益準備金に代わって収益準備金を計上し,以下のとおり区分しなければ

ならない。

⒈ 法定準備金

⒉ その他の収益準備金。協同組合法第73条第3項に基づく収益準備金と,

当該収益準備金から脱退組合員に対して払い戻されるべき額については記

載されなければならない。

⑶ 収益準備金については,貸借対照表又は附属説明書において以下の各号に

掲げる事項を個別に記載しなければならない。

⒈ 組合員総会が前年の貸借対照表利益から繰り入れた額

⒉ 当該事業年度の年度利益から繰り入れられた額

⒊ 当該事業年度において減少せられた額

⑷ 第266条第1項第4文に基づく最小規模資本会社のための軽減措置を使用

する最小規模協同組合は,その組合員の貸分の額及び法定準備金を貸借対照

表において貸方の項目A自己資本において以下のように計上しなければなら

ない。

 そのうち:

  組合員の貸分 法定準備金

第338条(附属説明書に関する規定)⑴ ①附属説明書においては,事業年度

中に加入し又は脱退した組合員の数及び協同組合の事業年度の終結時におい

て所属している組合員の数について記載しなければならない。②さらに,当

該年において組合員の貸分及び責任金額が増減したその総額,及び年度末に

おいて全組合員が負担すべき責任金額の総額を記載しなければならない。

⑵ 附属説明書にはさらに以下の各号について記載しなければならない。

⒈ 協同組合が加入している所轄監査組合(Prüfungsverband)の名称及び

所在地

⒉ 取締役及び監査役会全ての構成員(それらの者が事業年度中又はその後

に退任した場合も含む。)について,その姓及び少なくとも一つの省略さ

れていない個人名。監査役会議長がある場合には,そのことを示さなけれ

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ばならない。

⑶ ①第285条第9号に定められた機関構成員に対して履行された報酬,前払

金及び信用の記載に代えて,協同組合が取締役又は監査役会の構成員に対し

て認めている債権を記載しなければならない。②これらの債権の額は,各機

関ごとに合計額によってまとめて記載することができる。

⑷ 最小規模協同組合においては,貸借対照表に以下の各号の記載が全てなさ

れているときは,附属説明書によって年度決算書を補充することを要しな

い。

⒈ 第251条及び第268条第7項に定められた記載

⒉ 本条第1項,第2項第1号及び第3項に定められた記載

第339条(開示)⑴ ①取締役は,年度決算書に関する組合員総会の後,遅滞

なく,ただし遅くとも決算日に続く事業年度の第12番目の月の満了の前に,

確定した年度決算書,状況報告書及び監査役会報告書を連邦官報の運営者に

対して電子的に提出しなければならない。②協同組合法第58条第2項に基づ

く証明の付記の付与がなされた場合には,当該証明の付記も年度決算書とと

もに提出されなければならない。監査組合が年度決算書の証明を拒否した場

合には,その旨を提出された年度決算書に付記するとともに,監査組合の拒

否の付記を添書きしなければならない。③年度決算書の監査が第1文に基づ

く書類の提出の時点において終結していない時は,証明の付記又は拒否の付

記は監査の終了後遅滞なく提出されなければならない。④年度決算書又は状

況報告書が提出の後に変更された場合には,変更後の版も提出されなければ

ならない。

⑵ ①第325条第1項第2文,第2項,第2a項及び第6項,並びに第326条から

第329条までは,準用される。②最小規模協同組合において第326条第2項に

基づく最小規模資本会社のための軽減措置を使用する場合には,第9条第6

項第3文が準用される。

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第4章 特定の業務を営む企業のための補充規定

第1節 信用機関及び金融サービス機関のための補充規定

第1款 適用範囲第340条【適用範囲】⑴ ①本節は,信用制度法第1条第1項の意味における

信用機関であって同法第2条第1項,第4項及び第5項により適用が除外さ

れないもの,及び欧州共同体の加盟国でなく,かつ,欧州経済圏協定締約国

でもない国に本拠を有する親企業であって,当該支店が信用制度法第53条第

1項に基づき信用機関とみなされるものについて適用される。②これに加え

て,第340l条は,信用制度法第53b条第1項第1文及び第7項及び同法第53c

条第1号に基づく法規命令の意味における支店に対しても,当該支店が同法

第1条第1項第2文第1号から第5号及び第7号から第12号までの意味にお

ける銀行業を営んでいる限りにおいて,適用されなければならない。③法形

態に基づいて,又は支店について存在する規定に基づく追加的な定めについ

ては,影響しない。

⑵ 本節は,信用制度法第2条第1項第4号及び第5号に掲げられた性質の企

業に対して,当該企業がその固有の業務としてではなく銀行業務を営む限り

において,補充的に適用される。

⑶ 本節は,貯蓄業務を扱う住宅企業に対しては適用されない。

⑷ ①本節は,信用制度法第1条第1a項の意味における金融サービス機関で

あって同法第1条第6項又は第10項により適用が除外されないもの,及び欧

州共同体の加盟国でなく,かつ,欧州経済圏協定締約国でもない国に本拠

を有する親企業であって,当該支店が信用制度法第53条第1項に基づき金融

サービス機関とみなされるものについても適用される。②第340c条は,金融

サービス機関及び信用機関であって取引所法第27条第1項第1文の意味にお

ける清算機関であり,かつ,信用制度法第1条第3d項第1文の意味における

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CRR-信用機関(CCR-kreditinstitute)ではないものについては適用されない。

③法形態に基づいて,又は支店について存在する規定に基づく追加的な定め

については,影響しない。

⑸ ①本節は,支払サービス監督法第1条第2a項の意味における機関に対して

も適用される。②法形態に基づいて,又は支店について存在する規定に基づ

く追加的な定めについては,影響しない。

第2款 年度決算書,状況報告書,中間決算書第340a条(適用すべき規定)⑴ ①信用機関は,資本会社の法形態によらず

に事業を営んでいる場合であっても,本節の規定において別段の定めがない

限り,その年度決算書については第2章第1節に規定する大規模資本会社に

適用される規定を適用しなければならない。②信用機関は,状況報告書につ

いても大規模資本会社に適用されるべき規定に従って作成しなければならな

い。

⑵ ①第265条第6項及び第7項,第267条,第268条第4項第1文,第5項第

1文及び第2文,第276条,第277条第1項,第2項,第3項第1文,第284

条第2項第3号,第285条第8号及び第12号,第288条は適用されない。②第

247条第1項,第251条,第266条,第268条第7項,第275条,第284条第3項,

第285条第1号,第2号,第4号,第9号c及び第27号については,これらに

代わって法規命令により公布される様式その他の規定が適用される。③第

246条第2項は,逸脱規定が存在する限りにおいて適用されない。④第264条

第3項及び第264b条は,信用機関が当該規定の条件のもとで第2章第4節の

規定を適用することを要しない,という条件の下で適用される。⑤第285条

第31号は適用されない。「異例の収益」又は「異例の費用」の項目については,

通常の業務外において生じる収益及び費用を計上しなければならない。⑥附

属説明書においては,計上された額が収益状況の判断にとってその意義が副

次的であるとはいえない限りにおいて,当該額とその性質について説明しな

ければならない。

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⑶ ①信用機関が,信用機関及び有価証券企業に対する監督要求及び規則

(EU)Nr.646/2012の改正に関する欧州議会及び欧州理事会規則(EU)

Nr.575/2013(ABl. L 176 vom 27. 6. 2013, S. 1)第26条第2項の意味における

中間成果算定のための中間決算書であって監査的検査に服すべきものを作

成するときは,年度決算書に適用される会計原則を適用しなければならな

い。②決算監査人の選任に関する規定は監査的検査について準用する。③監

査的検査は,誠実な職務執行によって,中間決算書が重要な点において適用

すべき会計原則に違反することを不可能にするように行われなければならな

い。④決算監査人は監査的検査の結果を証明書に要約しなければならない。

⑤第320条及び第323条は準用される。

⑷ 加えて信用機関は,年度決算書の附属説明書に次の各号に掲げる事項を記

載しなければならない。

⒈ 法律上設置すべき大規模資本会社(第267条第3項)の監査委員会にお

いて,法律上の代表者又はその他の職員によって引き受けられた全ての議

⒉ 大規模資本会社に対する資本参加であって,議決権の100分の5を超える

全て

第340b条(買戻条件付契約)⑴ 買戻条件付契約とは,信用機関又は信用機

関の顧客(買戻権者)が,その者の所有する資産を他の信用機関又はその顧

客(買戻権授与者)に一定の金額の支払と引換えに引き渡すとともに,同時

に,当該資産を後に受領した金額又はあらかじめ合意した別の金額の弁済と

引換えに買戻権授与者に対して返還しなければならない又は返還することが

できることを約する契約である。

⑵ 買戻権授与者が,資産をある特定の時点又は買戻権者が決定すべき時点に

おいて返還すべき義務を負っているときは,これを真正買戻条件付契約とす

る。

⑶ 買戻権授与者が,あらかじめ定められた時点又は買戻権授与者自身が決定

する時点で返還する権限を有しているに過ぎないときは,これを不真正買戻

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条件付契約とする。

⑷ ①真正買戻条件付契約においては,引き渡された資産は買戻権者の貸借対

照表に引き続き計上されなければならない。②買戻権者は,資産の引渡しと

引換えに得た額を買戻権授与者に対する債務として計上しなければならな

い。③返還に際してより多額又はより少額を支払うべきことを合意している

ときは,当該差額を買戻条件付契約の存続期間に配付しなければならない。

④買戻権者は,買戻しの対象となっている資産の簿価を附属説明書に記載し

なければならない。⑤買戻権授与者は,買戻しの対象として受け入れた資産

についてその貸借対照表に計上することを要しない。買戻権授与者は,資産

の引渡しと引換に支払った額について買戻権者に対する債権として貸借対照

表に計上しなければならない。⑥返還に際してより多額又はより少額を受け

取ることを合意しているときは,当該差額を買戻条件付契約の存続期間に配

付しなければならない。

⑸ ①不真正買戻条件付契約においては,引き渡された資産は買戻権者の貸借

対照表ではなく,買戻権授与者の貸借対照表に計上しなければならない。②

買戻権者は,貸借対照表の下部に返還される場合の合意支払額を記載しなけ

ればならない。

⑹ 為替支払契約,金融支払契約及び類似の契約並びに短期間の間になされる

固有の債務約束による引渡しについては,本条の意味における買戻条件付契

約とはみなさない。

第340c条(損益計算書及び附属説明書のための規定)⑴ ①取引勘定の収益

と費用として,取引勘定に属する金融商品の取引及び貴金属の取引から生じ

た全ての収益と費用の差額並びに増額記入から生じた収益と減額記入から生

じた費用を計上しなければならない。②差額計算においては,これに加えて

第1文に掲げた業務についての損失の危険に対する引当金の積立てのための

費用及びかかる引当金の取崩しから生じる収益を組み入れなければならな

い。

⑵ ①資本参加,結合企業持分及び投資資産として取り扱われる有価証券の減

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額記入から生じた費用は,当該資産の増額記入から生じる収益と相殺し,単

一の費用項目又は収益項目に計上することができる。②第1文に基づく差額

計算においては,当該資産の取引から生じる費用及び収益を含めることがで

きる。

⑶ 責任自己資本に2013年12月31日まで通用していた信用制度法第10条2b項

第1文第6号又は第7号に基づく非実現準備金を組み入れている信用機関

は,それらの準備金を責任自己資本に組み入れている額を,貸借対照表の附

属説明書及び損益計算書の附属説明書に記載しなければならない。

第340d条(期間による分類) ①債権及び債務は附属説明書において期間によ

り区別されなければならない。②期間による区別においては,貸借対照表基

準日における残存期間が基準となる。

第3款 評価規定第340e条(資産の評価)⑴ ①信用機関は,結合企業持分を含めた資本参加,

営業許認可,営業上の保護権及び同様の権利及び価値並びにそれらの権利及

び価値のライセンス,土地,土地類似の権利及び他人の土地上の建物を含め

た建物,技術設備及び機械,その他の設備,経営上及び業務上の備品及び建

物に対する投資について,継続的に業務に使用しないことを決定した場合を

除いて,固定資産に適用される規定に基づいて評価しなければならない。継

続的に業務に使用しないことを決定した場合には,第2文に従って評価しな

ければならない。②その他の資産,特に債権や有価証券については,継続的

に業務に使用することを決定した場合を除いて,流動資産に適用される規定

に基づいて評価しなければならない。継続的に業務に使用することを決定し

た場合には,第1文に従って評価しなければならない。③第253条第3項第

6文は,第1文の意味における資本参加及び結合企業持分並びに第2文の意

味における有価証券及び債権であって継続的に業務に使用するものと決定さ

れたものにのみ適用される。

⑵ ①第253条第1項第1文にかかわらず,抵当貸付及びその他の債権につい

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ては,その額面金額と支払金額又は購入費用との差額が利息としての性格を

有する限りにおいて,額面金額で計上することができる。②額面金額が支払

金額又は購入金額よりも高い場合には,その差額は貸方の計算限定項目とし

て記録しなければならない。当該差額は計画的に減額されなければならず,

その都度ごとの額を貸借対照表又は附属説明書において区別して記載しなけ

ればならない。③額面金額が支払金額又は購入費用よりも低い場合には,そ

の差額を借方の計算限定項目として計上することができる。当該差額は計画

的に減額されなければならず,その都度ごとの額を貸借対照表又は附属説明

書において区別して記載しなければならない。

⑶ ①取引勘定の金融商品は,付与すべき時価からリスク割引額を控除した額

で評価しなければならない。②取引勘定への区分変更は排除される。③同様

に,取引勘定からの区分変更も,異常な状況,特に金融商品の取引可能性へ

の重大な侵害により信用機関がその取引意図を放棄する場合を除き,排除さ

れる。④取引勘定の金融商品は,追加的に評価単位に組み入れられることが

できる。評価単位が終了した時には,当該金融商品は再び取引勘定に区分変

更されなければならない。

⑷ ①貸借対照表においては,第340g条に基づく特別項目である「一般的銀行

リスクのための基金」に,取引勘定の純収益の少なくとも100分の10に相当

する額を繰り入れるとともに,区分して表示しなければならない。②当該項

目は,次の各号のいずれかに該当する場合に限り取崩すことができる。

⒈ 取引勘定の純費用を補填する場合

⒉ 前年度の繰越利益額によっては補うことのできない年度損失を補填する

場合

⒊ 年度利益によっては補うことのできない前年度の繰越損失額を補填する

場合

⒋ 直近の過去5年間の取引勘定の純収益の平均額の100分の50を上回って

いる場合

③第2文に基づく取崩しは,附属説明書に記載し,説明しなければならない。

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第340f条(一般的銀行リスクのための準備)⑴ 信用機関は,信用機関及び顧

客に対する債権,債券及びその他の金利の固定された有価証券,並びに株式

その他の金利の固定されていない有価証券であって,固定資産として扱われ

るものでも取引勘定の一部でもないものについては,健全な商人の判断に基

づき信用機関の業務部門の特別なリスクに対する保護のために重要であると

認められる限りにおいて,第253条第1項第1文及び第4項により定められ

又は認められる価額よりも低い価額により計上することができる。②この方

法により積み立てられた予防的準備金(Vorsorgereserve)の額は,第1文

に掲げられた資産を第253条第1項第1文及び第4項に基づき評価した総額

の100分の4を超えてはならない。③低い価値評価は,維持することができる。

⑵ (削除)

⑶ 第1項の適用及び第1項に掲げた有価証券の取引から生じる費用及び収

益,これらの有価証券の減額記入から生じる費用及び増額記入から生じる収

益については,債権の減額記入,偶発債務及び信用リスクのための引当金へ

の組入れから生じる費用及び債権の増額記入又は一部又は全部の減額記入後

に生じた入金,及び偶発債務及び信用リスクのための引当金の取崩しから生

じる収益と相殺し,損益計算書において単一の費用項目又は収益項目として

計上することができる。

⑷ 第1項に基づく予防的準備金の積立て及び取崩しの記載並びに第3項に基

づき行われた相殺は,年度決算書,状況報告書,コンツェルン決算書及びコ

ンツェルン状況報告書においてなされることを要しない。

第340g条(一般的銀行リスクのための特別項目)⑴ 信用機関は,健全な承

認の判断に基づけば信用機関の業務部門の特別なリスクのために重要である

限りにおいて,その貸借対照表の貸方に一般的銀行リスクからの保護のため

に特別項目「一般的銀行リスクのための基金」を設けることができる。

⑵ 特別項目への組入れ又は特別項目の取崩しによる収益は,損益計算書にお

いて区別して計上しなければならない。

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第4款 通貨の換算第340h条(通貨の換算) 第256a条は,通貨の換算から生じる収益は,資産,

負債又は先物取引が同種の通貨による資産,負債又は他の先物取引によって

特に補填されている限りにおいて損益計算書において考慮されなければなら

ないとの条件により適用される。

第5款 コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書,コンツェルン中間決算書

第340i条(作成義務)⑴ ①信用機関は,本節の規定において別段の定めがな

い限り,資本会社の法形式によらずに事業を行っている場合であっても,そ

の規模にかかわらず,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書に関

する第2章第2節の規定に基づくコンツェルン決算書及びコンツェルン状況

報告書を作成しなければならない。②法形式に関連して存在する規定を根拠

とする追加的な要求については,変更されない。

⑵ ①コンツェルン決算書については,その性質上適用除外が前提とされない

限りにおいて,年度決算書に関する第340a条から第340g条,及びコンツェル

ン決算書に連結される企業であって本法の適用領域に本拠を有するものの法

形式及び業務部門に対して適用される規定が,大規模資本会社に適用される

規定である限りにおいて,準用される。②第293条,第298条第1項,第314

条第1項第1号,第3号,第6号c及び第23号は,適用されない。③第315a

条第1項の場合においては,第1項に述べられた規定のうち第290条から第

292条及び第315a条のみが適用される。本項第1文,第2文及び第340j条は

適用されない。④第315a条が第314条第1項第6号cの規定を引用する限りに

おいて,その代わりに1998年12月11日公示に係る信用機関会計規則(BGBl. I

S.3658)第37条と結びついた同規則第34条第2項第2号の各時点において通

用している規定が適用される。⑤その他については,信用機関会計規則は第

315a条の場合については適用されない。

⑶ 子企業に対する資本参加を取得し,当該資本参加を管理利用することを唯

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一の目的とする親企業についても,当該子企業が専ら又は主として信用機関

として存在している限りにおいて,本款の意味における信用機関とされる。

⑷ ①信用機関が規則(EU)Nr.575/2013第11条と結びついた第26条第2項の

意味におけるコンツェルン中間成果算定のためのコンツェルン中間決算書で

あって監査的検査に服すべきものを作成するときは,コンツェルン決算書に

適用される会計原則を適用しなければならない。②年度決算書の選任に関す

る規定は監査的検査に準用される。③監査的検査は,誠実な職務執行によっ

て,中間決算書が重要な点において適用すべき会計原則に違反することを不

可能にするように行われなければならない。④決算監査人は監査的検査の結

果を証明書に要約しなければならない。⑤第320条及び第323条は準用される。

第340j条(組み入れられるべき企業) 信用機関が,信用機関である子会社を

第296条第1項第3号に基づきそのコンツェルン決算書に組み入れておら

ず,かつ,当該企業の株式又は持分の一時的な所有が当該企業の健全化又は

救護に向けた財務的支援のためである場合には,当該企業の年度決算書をそ

のコンツェルン決算書に添付し,コンツェルン附属説明書において財務的支

援の方法及び条件について追加的な記載をしなければならない。

第6款 監査第340k条【監査義務等】⑴ ①信用機関は,その規模にかかわらず,その年

度決算書及び状況報告書並びにそのコンツェルン決算書及びコンツェルン状

況報告書を,信用制度法第28条及び第29条の規定にかかわりなく,監査に関

する第2章第3節の規定に基づいて監査させなければならない。第319条第

1項第2文は適用されない。②監査は,決算基準日に続く事業年度の5か月

満了の前に行われなければならない。③年度決算書は,決算の後,遅滞なく

確定されなければならない。

⑵ ①信用機関が協同組合又は権利能力ある営利社団である場合には,当該監

査組合の理事会の業務執行構成員の過半数が公認会計士である限りにおい

て,監査は第319条第1項第1文にかかわらず当該信用機関が構成員として

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属する監査組合により監査されなければならない。②監査組合が2名の理事

会構成員のみ有する場合には,そのうち1名が公認会計士でなければならな

い。③第319条第2項及び第3項並びに第319a条第1項は,監査組合の法律

上の代表者及び監査組合に雇用されている者であって監査の結果に影響を与

えることができるもの全員に対して準用される。第319条第3項第1文第2

号は,決算監査人が監査を当該監督機関の指示から独立して実施できること

が確保されている限りにおいて,監査組合の監督機関の構成員について適用

しない。④親企業が協同組合である場合には,当該協同組合が所属する監査

組合は,第1文から第3文の条件のもと,コンツェルン決算書及びコンツェ

ルン状況報告書の決算監査人にもなる。

(2a) ①第2項に掲げられた信用機関の年度決算書に対する監査組合による監

査に際しては,法律上定められた証明の付記は公認会計士によってのみ署名

されることができる。②監査組合において活動する公認会計士は,その監査

活動を独立して,誠実に,秘密を厳守し,かつ,自己責任により行わなけれ

ばならない。③公認会計士は特に監査報告書の作成に際しては公平に行動し

なければならない。④公認会計士の監査活動に関して,公認会計士ではない

者から公認会計士に対して指示が与えられてはならない。⑤監査組合におい

て活動している公認会計士の数は,証明の付記に証明する公認会計士が監査

を責任をもって遂行されるものとして算定されなければならない。

⑶ 信用機関が貯蓄銀行である場合には,第1項により定められた監査は

第319条 第 1 項 第 1 文 に か か わ ら ず 貯 蓄 銀 行 振 替 組 合(Sparkassen-und

Giroverband)の監査部局(Prüfungsstelle)によってなされることができる。

②監査部局による監査は,監査部局の部局長が第319条第1項第1文及び第

2文の条件を満たす場合にのみ遂行されることができる。第319条第2項,

第3項及び第5項並びに第319a条は,貯蓄銀行振替組合に雇用されている者

であって監査の結果に影響を与えることができるもの全員に準用される。③

これに加えて,決算監査人が監査を貯蓄銀行振替組合の機関の指示から独立

して遂行することができることが確保されなければならない。④州法におい

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て別段の定めがされない限りにおいて,第319条第1項第3文は,監査部局

の証明書が与えられていなければならないとの条件により適用される。

⑷ 金融サービス機関及び支払サービス監督法第1条第2a項の意味における機

関であってその基準日における貸借対照表の額が1億5000万ユーロを超えな

いものについては,第319条第1項第2文に掲げられた者によって監査され

ることができる。

⑸ ①信用機関は,資本会社の法形態によらずに業務を行う者であっても,第

264d条の意味における資本市場を指向するものであり,株式法第100条第5

項の条件を満たすべき監査役会又は経営管理委員会を有さない場合には,第

324条を適用しなければならない。②第3項の意味における貯蓄銀行及びそ

の他の州法による公法上の信用機関についても,州法が別段の定めをおかな

い限りにおいて,同様である。

第7款 開示第340l条【開示義務等】⑴ ①信用機関は,年度決算書及び状況報告書並びに

コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書及びその他第325条に掲げ

られた書類を,第325条第2項から第5項,第328条,第329条第1項及び第

4項に従い開示しなければならない。②信用機関であって支店ではないもの

は,第1文に掲げられた書類を,他の欧州共同体加盟国及び他の欧州経済圏

協定締約国であって当該信用機関が支店を設立したものそれぞれにおいて開

示しなければならない。③第2文に基づく開示は各加盟国又は締約国の法に

基づいて規律される。

⑵ ①他の国に本拠を有する企業の本法適用領域における支店は,その本店の

第1項第1文に掲げられた書類であってその法に基づいて作成され監査され

たものを,第325条第2項から第5項,第328条,第329条第1項,第3項及

び第4項に従い開示しなければならない。②公認会計士法第3条第1項第1

文の意味における第三国に本拠を有する企業であって,その有価証券取引法

第2条第1項の意味における有価証券が内国証券取引所における規制市場で

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の取引を許可されたものであるものは,それに加えて決算監査人の登録に関

する公認会計士法第134条第2a項による公認会計士協会の証明書又は登録義

務の免除に関する公認会計士法第134条第4項第8文による公認会計士協会

の証明を開示しなければならない。③第2文は,専ら有価証券取引法第2条

第1項第3号の意味における債務証券であって最低額面価額が5万ユーロ又

は他通貨でこれに相当する額であるものについて内国証券取引所における規

制市場での取引を許可された場合には適用されない。④欧州共同体の加盟国

でなく,かつ,欧州経済圏協定締約国でない国に本拠を有する企業の本法適

用領域における支店は,第1文及び第2文に基づき公開すべき書類が指令

86/635/EWGに適合した法に従い作成され監査された場合,又はそのような

法に従い作成されたのと等価値である場合には,その固有の業務に関連した

第1項第1文に基づく特別な会計書類を開示することを要しない。⑤書類は

ドイツ語で提出されなければならない。⑥ドイツ語が本店所在地の公用語で

ない場合には,本店の書類については以下の各号により提出することができ

る。

⒈ 英語

⒉ 本店の登記所により認証された謄本

⒊ 登記と同様の提出制度が存在しない,又は登記所に認証の権限が与えら

れていない場合には,登記と同様の提出制度がない,又は登記所が認証の

権限を与えられていない旨の説明を付して,公認会計士により証明を付さ

れた謄本

 登記所の認証については,認証されたドイツ語への翻訳が提出されなければ

ならない。

⑶ 第339条は,協同組合である信用機関には適用しない。

⑷ 信用機関が第325条第2a項第1文による選択権を利用した場合には,第325

条第2a項第3文及び第5文は,以下の各号に定める条件により適用される。

⒈ 第325条第2a項第3文に掲げられた第3編第2章第1節の規定は,資本

会社の法形式によらずに業務を行う信用機関にも適用される。

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⒉ 第285条第8号b)は適用されない。ただし,当該事業年度の人件費は,

その記載が損益計算書において区別して記載されていない場合には,第

325条第2a項に基づく単体決算書の附属説明書において,1998年12月11日公

示に係る信用機関会計規則(BGBl. I S.3658)の様式3の項目「一般管理費」

の下位項目a「人件費」による分類について各時点で定められている規定

に従って記載しなければならない。

⒊ 第285条第9号c)に代わって1998年12月11日公示に係る信用機関会計規

則(BGBl. I S.3658)第34条の各時点で定められている規定が適用される。

⒋ 附属説明書については追加的に第340a条第4項の規定が適用される。

⒌ その余の点については,本節第2款から第4款の規定及び信用機関会計

規則の規定は適用されない。

第8款 刑罰及び過料の規定,秩序違反金第340m条(刑罰規定) ①第331条から第333条の刑罰規定は,資本会社の法形

式によらずに業務を行う信用機関,第340条第4項の意味における金融サー

ビス機関及び第340条第5項の意味における機関にも適用される。②第331条

は次の各号に定める者による義務違反に対しても適用される。

⒈ 資本会社の法形式によらずに業務を行う信用機関又は第340条第4項第

1文の意味における金融サービス機関の業務執行権者(信用制度法第1条

第2項第1文)

⒉ 資本会社の法形式によらずに業務を行う第340条第5項の意味における

機関の業務執行権者(信用制度法第1条第8項第1文及び第2文)

⒊ 個人商人の法形式で業務を行う信用機関又は第340条第4項の意味にお

ける金融サービス機関の所有者

⒋ 信用制度法第53条第2項第1号の意味における業務執行権者

第340n条(過料規定)⑴ 信用制度法第1条第2項第1文又は第53条第2項

第1号の意味における業務執行権者として,又は個人商人の法形式で業務

を行う信用機関若しくは第340条第5項の意味における金融サービス機関の

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所有者として,又は第340条第5項の意味における機関における支払サービ

ス監督法第1条第8項第1文及び第2文の意味における業務執行権者とし

て,又は前述の企業の監査役会の構成員として,次の各号に掲げるいずれか

の場合において各号が定める規定のいずれかに違反した者は,秩序違反とし

て扱う。

⒈ 年度決算書の作成又は確定に際して,又は第340a条第3項による中間決

算書の作成の場合 以下の各規定

a) 形式又は内容に関する第243条第1項又は第2項,第244条,第245条,

第246条第1項又は第2項,第340a条第2項第3文と結びついた同項,

第246条第3項第1文,第247条第2項又は第3項,第248条,第249条第

1項第1文又は第2項,第250条第1項又は第2項,第264条第1a項又は

第2項,第340b条第4項又は第5項,又は第340c条第1項

b) 評価に関する第253条第1項第1文,第2文,第3文又は第4文,第

2項第1文,第2文と結びついた場合の同文,第3項第1文,第2文,

第3文,第4文又は第5文,第4項又は第5項,第254条,第256a条,

第340e条第1項第1文又は第2文,第3項第1文,第2文,第3文又は

第4文第2段,第4項第1文又は第2文,第340f条第1項第2文又は第

340g条第2項

c) 区分に関する第265条第2項,第3項,第4項第268条第3項又は第6

項,第272条,第274条又は第277条第3項第2文

d) 附属説明書になすべき記載に関する第284条第1項,第2項第1号,

第2号又は第4号,第3項又は第285条第3号,第3a号,第7号,第9号a)

又はb),第10号から第11b号,第13号から第15a号,第16号から第26号,

第28号から第33号又は第34号

⒉ コンツェルン決算書又は第340i条第4項によるコンツェルン中間決算書

の作成の場合 以下の各規定

a) 連結範囲に関する第294条第1項

b) 形式又は内容に関する第297条第1a項,第2項又は第3項,又は本項

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第1号a)に掲げられた各規定と結びついた第340i条第2項第1文

c) 連結原則又は完全性の原則に関する第300条

d) 評価に関する本項第1号b)に掲げられた各規定と結びついた第308

条第1項第1文,第308条第2項又は第308a条

e) 関連企業の取扱いに関する第312条と結びついた第311条第1項第1文

f) コンツェルン附属説明書になすべき記載に関する第308条第1項第3

文,第313条又は第314条

⒊ 状況報告書の作成の場合 状況報告書の内容に関する第289条又は第

289a条の規定

⒋ コンツェルン状況報告書の作成の場合 コンツェルン状況報告書の内容

に関する第315条第1項,第2項,第4項又は第5項の規定

⒌ 開示,公刊又は謄写の場合 形式又は内容に関する第328条の規定

⒍ 第330条第1項第1文と結びついた第2項に基づいて認められた法規命

令において,当該法規命令が特定の構成要件について本過料規定を参照し

ている場合 当該法規命令の規定

⑵ 第319条第2項,第3項,第5項,第319a条第1項第1文,第2項,第

319b条第1項によってその者自身が,又は第319条第4項,第319a条第1項

第2文と結びついた同項,又は第319a条第1項第4文,第5文,第319b条第

1項によってその者がそのために執務する監査組合又は監査課が,決算監査

人となることができないにもかかわらず,法律上の規定に基づいて監査を受

けるべき年度決算書,第325条第2a項に基づく単体決算書又はコンツェルン

決算書に対して第322条第1項に基づく付記を付与した者は,秩序違反とし

て扱う。

⑶ 秩序違反は,5万ユーロ以下の過料をもって罰せられ得る。

⑷ 第1項及び第2項において,秩序違反行為法第36条第1項第1号の意味に

おける行政官庁は,連邦金融サービス監督庁である。

第340o条(秩序違反金の確定) ①以下の各号に掲げる者が各号に掲げる規定

に従わなかった場合,その者はこれについて連邦司法庁により秩序違反金の

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確定に付される。

⒈ 信用機関又は第340条第4項第1文の意味における金融サービス機関の

信用制度法第1条第2項債1文の意味における業務執行権者,又は第340

条第5項の意味における機関の支払サービス監督法第1条第8項第1文の

意味における業務執行権者,又は個人商人の法形式により信用機関若しく

は第340条第4項第1文の意味における金融サービス機関の所有者 年度

決算書,状況報告書,コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書及

びその他の会計書類の開示義務に関する第325条第2項から第5項,第328

条,第329条第1項と結びついた第340l条第1項第1文

⒉ 信用制度法第53条第1項の意味における支店の業務執行権者 会計の書

類の開示に関する第340l条第1項又は第2項

②第335条から第335b条は準用される。

第2節 保険企業及び年金基金に対する補充規定

第1款 適用範囲第341条【適用範囲】⑴ ①本節は,別段の定めのない限り,保険事業を目的

とするものであり,社会保険の運営者ではない企業(保険企業)に適用する。

②第1文は,保険企業であって,法律,労働協約又は定款に基づいて専らそ

の構成員又は法律又は定款によって認められた者に対して給付を行うもの又

は権利能力なき制度としてその費用を賦課方式により填補するものについて

は適用しない。ただし,株式会社,保険相互組合又は権利能力ある地方自治

体の損害保険企業である場合はこの限りではない。

⑵ ①他国に本拠を有する保険企業の本法適用領域における支店も,直接保険

事業の営業にドイツの保険監督官庁の許可を必要とする場合には,第1項の

意味における保険企業である。②欧州連合加盟国又は欧州経済圏協定締約国

に本拠を有する保険企業の支店であって直接保険事業の営業にドイツの保険

監督官庁の許可を要しないものは,資産と債務の査定と評価に関する本節第

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1款から第4款までの規定及び保険企業計算規則の各時点における規定を適

用しなければならない。

⑶ 法形式により,又は支店のために存する規定に基づく追加的な要求につい

ては,変更されない。

⑷ ①本節第1款から第7款までの規定は,第1項第2文を除いて年金基金(保

険監督法第112条第1項)に準用される。②第341d条は,被用者及び使用者

の計算及びリスクのために保有される資本投資について,慎重性の原則を考

慮して時価で評価しなければならないとの条件のもとに適用される。第341b

条,第341c条は,その限りにおいて適用されない。

第2款 年度決算書,状況報告書第341a条(適用すべき規定)⑴ ①保険企業は,第2章第1節の大規模資本

会社に適用される規定に基づく年度決算書と状況報告書を,前事業年度のも

のにつき事業年度の最初の4か月の間に作成し,決算監査人に対して監査の

実施のために提出しなければならない。第264条第1項第3文の期間は適用

しない。②保険企業が第325条第4項第1文の意味における資本会社であり,

かつ,同時に第327a条の意味における資本会社ではない場合には,第1文に

基づく期間は4か月とする。

⑵ ①第265条第6項,第267条,第268条第4項第1文,第5項第1文及び第

2文,第276条,第277条第1項及び第2項,第285条第8号a)及び第288条

は適用しない。②第247条第1項,第251条,第265条第7項,第266条,第

268条第7項,第275条,第284条第3項,第285条第4号及び第8号b)並び

に第286条第2項に代わって,法規命令により認められた様式及び他の規定

が適用される。③第246条第2項は,例外規定が存する限りにおいて適用さ

れない。④第264条第3項及び第264b条は,保険企業が掲げられた条件のも

とにおいて第2章第4節の規定を適用する必要がないとの措置を伴い適用さ

れる。⑤第285条第3a号は,保険事業の構造において存する財務上の義務に

ついては記載を要しないという措置を伴い適用される。⑥第285条第31号は

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適用されない。項目「非経常的収益」及び「非経常的費用」においては,

通常の業務執行の範囲外から生じる収益及び費用を計上しなければならな

い。⑦附属説明書においては,これらの項目につき,計上された額が収益状

況の判断にとって副次的な意義のみを有するのではない限りにおいて,その

額とその性質に関して説明しなければならない。

⑶ その疾病保険事業が専ら又は主として生命保険の方式に基づいて運営され

ている疾病保険企業には,その生命保険企業の会計に適用される規定を準用

する。

⑷ 株式会社,株式合資会社又は小規模組合ではない保険企業には,株式法第

152条第2項及び第3項並びに第170条から第176条までを準用する。

⑸ ①専ら再保険を運営する保険企業,又は再補填のために引き受けた保険か

ら生じる保険料がその他の保険料を超過する保険企業においては,第1項第

1文第1段に掲げた4か月の期間は,事業年度が暦年と一致する限りにおい

て,10か月に延伸される。年度決算書を受領し又は確定すべき株主総会又は

上級代表者会議(Versammlung der obersten Vertretung)は,株式法第175

条第1項第2文の規定にかかわらず前事業年度の終結から遅くとも14か月以

内に行われなければならない。②第1項第2文に基づく4か月の期間は,第

1文の場合に延伸されない。

第3款 評価規定第341b条(資産の評価)⑴ ①保険会社は,有償で獲得された無形資産,土地,

土地類似の権利及び他人の土地上の建物を含めた建物,技術設備及び機械,

その他の設備,経営上及び業務上の備品,建物に対する投資及び前払金につ

き,固定資産に適用される規定に基づいて評価しなければならない。②第1

文は,資本参加,結合企業持分,結合企業又は資本参加関係のある企業に対

する貸付け,記名債券,抵当権付貸付及びその他の債権及び権利,再補填の

ために引き受けられた保険取引から生じたその他の貸付け寄託債権が問題と

される限り,第2項及び第341c条を留保して資本投資にも適用される。③第

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253条第3項第6文は,第2文において掲げられた資産についてのみ適用さ

れる。

⑵ 資本投資は,自己持分を含めた株式,投資資産たる持分又は株式及びその

他の固定金利又は非固定金利の有価証券については,それらが継続的に事業

運営に使用されると決定されない限り,流動資産に適用すべき第253条第1

項第1文,第4項及び第5項,第256条を適用しなければならない。継続的

に使用されると決定された場合,固定資産に適用される規定に基づいて評価

しなければならない。

⑶ 不変価格による評価に関する第240条第3項と結びついた第256条第2文に

ついては,土地,建築済及び建築中の投資については適用しない。

⑷ 生命保険企業の年金基金によって年金受給権者に対する債務を補填するた

めに締結された契約は,慎重性の原則を顧慮して時価により評価しなければ

ならない。第1項から第3項まではその限りにおいて適用されない。

第341c条(記名債券,抵当権付貸付及びその他の債権)⑴ 第253条第1項第

1文にかかわらず,記名債券はその額面価額により計上されなければならな

い。

⑵ ①額面価額がその購入原価を上回る場合には,その差額を貸方の計算限定

項目に計上し,計画的に減額するとともに,その都度の額を貸借対照表又は

附属説明書に区別して記載しなければならない。②額面価額が購入原価を下

回る場合には,その差額を借方の計算限定項目に計上することができる。当

該差額は計画的に減額するとともに,その都度ごとの額を貸借対照表又は附

属説明書において区別して記載しなければならない。

⑶ 抵当権付貸付及びその他の債権については,取得原価に当該取得原価と償

還額の間の差額につき実効利率法を適用した累積消却額を加算又は減算した

額を計上することができる。

第341d条(基金に結びつけられた生命保険の投資保有高) 生命保険の所有者

の計算及びリスクのために保有される資本投資であって,その投資リスクが

保険契約者によって負担されるものは,慎重性の原則を考慮して時価で評価

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しなければならない。第341b条及び第341c条は適用しない。

第4款 保険技術上の準備金第341e条(一般的な貸借対照表原則)⑴ ①保険企業は,慎重な商人の判断

に従い,保険契約から発生する義務の継続的な履行可能性を確保するために

重要であると認められるときは,保険技術上の準備金を積み立てなければな

らない。②この場合においては,保険監督法第74条から第87条を除いて,被

保険者の利益のために定められた,適用すべき算定利率を含む,準備金の算

定に際し用いるべき計算原則,及び一定の資本収益の準備金への配付に関す

る監督法上の規定を顧慮しなければならない。③準備金は決算基準日におけ

る価値関係に基づいて評価しなければならず,第253条第2項に基づく割引

をしてはならない。

⑵ 保険技術上の準備金は,第341f条から第341h条に規定する場合のほか,特

に次の各号の場合に積み立てられなければならない。

⒈ 決算基準日後の一定の時点における収益として表示される保険料の部分

(保険料繰越高)

⒉ 専ら払戻しの目的のために準備金が使用されることが法律,定款,業務

計画上の宣言又は契約上の合意により保障される限りにおいて,準備金の

使用成果に依存した,又は成果に依存しない保険金の払戻し(払戻準備金)

⒊ 決算基準日後に,事業年度の終了までに締結された契約から生じたもの

として計算されるべき損失(保険業務から生じる潜在的損失のための準備

金)

⑶ 第252条第1項第3号又は第240条第4項に基づく評価が不可能であるかそ

の費用が過大となる限りにおいて,個別的算定とほぼ同様の結果が生じると

認められる場合には,準備金を近似法に基づいて算定することができる。

第341f条(補填準備金)⑴ ①補填準備金は,生命保険事業及び生命保険の方

法により営まれる保険事業から生じる義務について,保険数理的に計算さ

れた価値の額に利息として集積された剰余部分を除く既分配剰余部分を加

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え,保険数理的に算出された将来保険料の純価値を差し引いたものを積み立

てなければならない(予測的方法)。②将来の義務及び将来の保険料の価値

の算出ができないときは,先行する事業年度において生じた受領額と支出額

に基づいて計算をしなければならない(回顧的方法)。

⑵ 補填準備金の積立てに際しては,目下の又は期待される企業の資産価値の

収益が義務の補填に十分でない限りにおいて,被保険者に対して引き受けた

利息支払義務を考慮しなければならない。

⑶ ①生命保険の方法により営まれる疾病保険においては,補填準備金として

老齢化準備金を積み立てなければならない。保険料払戻準備金並びに老齢に

よる保険料割引権の構造に寄与する繰入れから既に補給された額がこれに帰

属する。②その算出に際しては,プレミアムの算出に適用される監督法上の

規定を考慮しなければならない。

第341g条(既発生未報告保険事故に対する準備金)⑴ ①既発生未報告保険

事故に対する準備金は,事業年度の終了までに発生したがいまだ報告されて

いない保険事故から生じる義務に対して,積み立てなければならない。②こ

こにおいては,総損害補償支出を考慮しなければならない。

⑵ ①決算基準日までに発生していたが財産目録の作成までに報告されなかっ

た保険事故は準備金に概算して評価しなければならない。②その際,決算基

準日後に報告された保険事故及びそれと結びついた支払高に関する過去の経

験を考慮しなければならない。

⑶ ①疾病保険企業においては,準備金は統計的近似法に従って算出しなけれ

ばならない。②その際,決算基準日前に生じた保険事故に対して決算基準日

に続く事業年度の第1月において生じた支払を基礎としなければならない。

⑷ 共同引受保険に際しては,準備金はその引受割合に応じて,少なくとも,

主導的な保険者が活動することになる州の規定又は慣習に基づく額を積み立

てなければならない。

⑸ 保険給付が既判力ある判決,和解又は承認に基づいて年金の形式により提

供されるべき場合には,準備金の額は認められた保険数理的方法により計算

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されなければならない。

第341h条(変動準備金)⑴ 変動準備金は,将来の年度における損害の推移

の変動を均一化するために,とりわけ次の各号の全てに該当するような場合

に,積み立てなければならない。

⒈ 当該保険分野における経験に基づいて年度間の保険事故に対する支出の

重大な変動が見込まれること。

⒉ 変動が保険料によって均一化されないこと。

⒊ 変動が再保険によって補填されないこと。

⑵ 同様の性質のリスクであって,給付と反対給付の均衡が個々の事象におけ

る高い損害リスクのために保険数理的原則に基づき事業年度ではなく決算基

準日によっては定められない期間に基づいて確保される場合には,準備金を

積み立て,貸借対照表において「同種の準備金」として変動準備金の下に計

上しなければならない。

第5款 コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書第341i条(作成,期間)⑴ ①保険企業は,本節の規定において別段の定めが

ない限り,資本会社の法形式によらずに事業を行っている場合であっても,

その規模にかかわらず,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書を

作成しなければならない。②法形式に関連して存在する規定を根拠とする追

加的な要求については,変更されない。

⑵ 子企業に対する資本参加を取得し,当該資本参加を管理し利潤を上げるこ

とを唯一の又は主要な目的とする親企業についても,当該子企業が専ら又は

主として保険企業として存在している限りにおいて,本款の意味における保

険企業とされる。

⑶ ①親企業の法律上の代表者は,第290条第1項にかかわらず,最後に作成

されコンツェルン決算書に組み入れられるべき決算書の作成期間の終了後2

か月以内,しかしながらコンツェルン決算書の基準日後12か月以内に,前年

度のコンツェルン事業年度につきコンツェルン決算書及びコンツェルン状況

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報告書を作成し,コンツェルン決算書の決算監査人に提出しなければならな

い。親企業が第325条第1項第1文の意味における資本会社であって同時に

第327a条の意味における資本会社ではない場合,最長12か月の期間の代わり

に最長4か月の期間とする。②第299条第2項第2文は,企業の年度決算書

の基準日はコンツェルン決算書の基準日の7か月以上前に設定してはならな

いとの条件のもとに適用される。

⑷ コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書は,株式法第175条第1

項第1文にかかわらず,コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書の

作成期間の満了後最も近く招集される株主総会であって親企業の年度決算書

が受領され又は確定しなければならないものに提出されなければならない。

第341j条(適用すべき規定)⑴ ①コンツェルン決算書とコンツェルン状況報

告書については,コンツェルン決算書とコンツェルン状況報告書に関する第

2章第2節の規定,及びコンツェルン決算書の特性による適用除外を要しな

い限り,年度決算書に関する第341a条から第341h条の規定並びにコンツェル

ン決算書に組み込まれた本法適用領域内の企業の法形式及び業務部門につい

て適用される規定が,大規模資本会社に対して適用される規定である限り

において,適用される。②第293条,第298条第1項並びに第314条第1項第

3号及び第23号は適用されない。③第314条第1項第2a号は,保険事業の枠

内にある財務的義務については記載されてはならないという条件で適用さ

れる。④第315a条の場合においては,第1文にかかわらず第290条から第292

条及び第315a条のみが適用される。本項第2文及び第3文並びに第2項,第

341i条第3項第2文,1994年11月8日保険企業会計規則(BGBl. I S.3378)並

びに2003年2月25日年金基金計算規則(BGBl. I S.246)の各時点における規

定は適用されない。

⑵ 第304条第1項は,給付又は役務の提供が通常の市場条件を前提とされて

おり保険契約者の法的請求権に基づいている場合には,適用することを要し

ない。

⑶ 保険企業であって株式会社,株式合資会社,小規模社団でないものについ

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ては,株式法第170条第1項及び第3項が準用される。

第6款 監査第341k条【監査義務等】⑴ ①保険企業はその規模にかかわらず,その年度

決算書及び状況報告書,並びにそのコンツェルン決算書及びコンツェルン状

況報告書を第2章第3節の規定に基づき監査させなければならない。②監査

がなされない場合,年度決算書は確定されない。

⑵ ①第318条第1項第1文は,年度決算書及びコンツェルン決算書の決算監

査人は監査役会により決定されるという条件で適用される。②第318条第1

項第3文及び第4文は準用される。

⑶ 第321条第1項第3文の場合には,決算監査人は監督官庁に対して遅滞な

く通知しなければならない。

⑷ ①保険企業は,資本会社の法形態によらずに業務を行う者であっても,第

264d条の意味における資本市場を指向するものであり,株式法第100条第5

項の条件を満たすべき監査役会又は経営管理委員会を有さない場合には,第

324条を適用しなければならない。②州法に基づく公法上の保険企業であっ

ても,州法において別段の定めがされない限り,同様である。

第7款 開示第341l条【開示義務等】⑴ ①保険企業は,年度決算書及び状況報告書並びに

コンツェルン決算書,コンツェルン状況報告書及びその他第325条に掲げら

れた書類を第325条第2項から第5項,第328条,第329条第1項及び第4項

に基づき開示しなければならない。②第341a条第5項に述べられた保険企業

については,第325条第1項は,連邦官報の運営者に対する書類の提出期間

は15か月であり,第325条第4項第1文の場合には4か月とするという条件

により適用される。第327a条は適用される。

⑵ 親企業の法律上の代表者は,第325条第3項の規定にかかわらず,コンツェ

ルン決算書及びコンツェルン状況報告書を提出すべき株主総会又はこれに相

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当する上級代表者集会の後遅滞なく,ただし遅くともそれらの集会の終結の

翌月までに,証明の付記又は拒否の付記を付けたコンツェルン決算書及び持

分占有一覧表を除くコンツェルン状況報告書を,連邦官報の運営者に対して

電子的に提出しなければならない。

⑶ 第1項第1文が第325条第2a項第3文及び第5文を参照している限りにお

いて,次の各号に定める措置又は追加的規定が適用される。

⒈ 第325条第2a項第3文に述べられた第3編第2章第1節の規定は,資本

会社の法形式によらずに業務を行う保険企業に対しても適用される。

⒉ 第285条第8号b)に代わってひな型第2号を伴った1994年11月8日保険

企業会計規則(BGBl. I S.3378)第51条第5項の各時点での規定が適用され

る。

⒊ 第341a条第4項は,同条が本法第325条第2a条に基づく単体決算書に関

する株式法第170条,第171条及び第175条を参照する限りにおいて適用す

る。

⒋ その他の点については,本節第2款から第4款まで並びに保険企業計算

規則の規定は適用されない。

第8款 刑罰及び過料の規定,秩序違反金第341m条(刑罰規定) ①第331条から第333条の刑罰規定は,資本会社の法形

式によらずに業務を行う保険企業及び年金基金にも適用される。②第331条

は,主任代理人(保険監督法第106条第3項)による義務違反についても適

用される。

第341n条(過料規定)⑴ 保険企業若しくは年金基金の代表権限ある機関の

構成員又は監査役会の構成員,又は主任代理人(保険監督法第106条第3項)

として,以下の次の各号に掲げるいずれかの場合において各号が定める規定

のいずれかに違反した者は,秩序違反として扱う。

⒈ 年度決算書の作成又は確定の場合 以下の各規定

a) 形式又は内容に関する第243条第1項又は第2項,第244条,第245条,

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第246条第1項又は第2項,第341a条第2項第3文と結びついた同項,

第246条第3項第1文,第247条第3項,第248条,第249条第1項第1文

又は第2項,第250条第1項又は第2項,第264条第1a項又は第2項,第

341e条第4項又は第5項,又は第341f条,第341g条,又は第341h条

b) 評価に関する第253条第1項第1文,第2文,第3文又は第4文,第

2項第1文,第2文と結びついた同文,第3項第1文,第2文,第3文,

第4文又は第5文,第4項又は第5項,第254条,第256a条,第341b条

第1項第1文又は第341d条

c) 区分に関する第265条第2項,第3項又は第4項,第268条第3項又は

第6項,第272条,第274条又は第277条第3項第2文

d) 附属説明書になすべき記載に関する第284条,第285条第1号,第2号

又は第3号,第341a条第2項第5文と結びついた同号,第285条第3a号,

第7号,第9号から第14a号,第15a号,第16号から第33号又は第34号

⒉ コンツェルン決算書の作成に際して,以下の各規定

a) 連結範囲に関する第294条第1項

b) 形式又は内容に関する第297条第1a項,第2項又は第3項,又は本項

第1号a)に掲げられた各規定と結びついた第341j条第1項第1文

c) 連結原則又は完全性の原則に関する第300条

d) 評価に関する本項第1号b)に掲げられた各規定と結びついた第308

条第1項第1文,第308条第2項又は第308a条

e) 関連企業の取扱いに関する第312条と結びついた第311条第1項第1文

f) コンツェルン附属説明書になすべき記載に関する第308条第1項第3

文,第313条又は第341j条第1項第2文又は第3文と結びついた第314条

⒊ 状況報告書の作成に際して,状況報告書の内容に関する第289条又は第

289a条の規定

⒋ コンツェルン状況報告書の作成に際して,コンツェルン状況報告書の内

容に関する第315条第1項,第2項,第4項又は第5項の規定

⒌ 開示,公刊又は謄写に際して,形式又は内容に関する第328条の規定

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⒍ 第330条第1項第1文と結びついた第2項に基づいて認められた法規命

令の規定(当該規定が特定の事実について本過料規定を参照している場合

に限る。)

⑵ 第319条第2項,第3項,第5項,第319a条第1項第1文,第2項,第

319b条第1項によってその者自身が,又は第319条第4項,第319a条第1項

第2文と結びついた同項,又は第319a条第1項第4文,第5文,第319b条第

1項によってその者がそのために執務する監査法人が,決算監査人となるこ

とができないにもかかわらず,法律上の規定に基づいて監査を受けるべき年

度決算書,第325条第2a項に基づく単体決算書又はコンツェルン決算書に対

して第322条第1項に基づく付記を付与した者は,秩序違反として扱う。

⑶ 秩序違反は,5万ユーロ以下の過料をもって罰せられ得る。

⑷ ①第1項及び第2項において,秩序違反行為法第36条第1項第1号の意味

における行政官庁は,保険企業及び年金基金であって連邦金融監督庁の監督

に服すべきものについては,連邦金融監督庁である。②保険企業及び年金基

金が州当局の監督に服するときは,当該州当局が権限を有する。

第341o条(秩序違反金の確定) ①以下の各号に掲げる者が各号に掲げる規定

に従わなかった場合,その者はこれについて連邦司法庁により秩序違反金の

確定に付される。

⒈ 保険企業又は年金基金の代表権限ある機関の構成員又は監査役会の構成

員として,年度決算書,状況報告書,コンツェルン決算書,コンツェルン

状況報告書及びその他の会計書類の開示義務に関する第325条と結びつい

た第341l条

⒉ 主任代理人(保険監督法第106条第3項)として,会計の書類の開示に

関する第341l条第1項

②第335条から第335b条は準用される。

第341p条(刑罰規定,過料規定,秩序違反金規定の年金基金への適用) 第

341m条の刑罰規定,第341n条の過料の規定及び第341o条の秩序違反金の規

定は,第341条第4項第1文の意味における年金基金に対しても適用される。

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第3節 原料分野における特定の企業のための補充規定

第1款 適用範囲,定義規定第341q条(適用範囲) ①本節は,国内に本拠を有する資本会社で,鉱物採取

産業を行っているか原始林木材伐採を業としているものであって,当該会社

に対して第3編の規定に基づき第2節における大規模資本会社に適用すべき

規定が適用されるものに対して適用される。②第1文は第264a条第1項の意

味における人的商事会社に準用される。

第341r条(定義規定) 本節では,次の各号に掲げる語は次のように定義する。

⒈ 鉱物採取産業における活動:鉱物,石油及び天然ガスの鉱脈その他の

産業部門における原料であって,産業統計分類NACE改訂版2の作成及び

理事会規則(EWG)Nr.3037/90及び統計の一定の範囲に関するいくつか

の欧州共同体の規則を変更するための2006年欧州議会及び欧州理事会規則

(EG)Nr.1893/2006(ABl. L 393 vom 30. 12. 2006, S. 1)の付表I第B章第

05部から第08部に掲げられているものの探索,試掘,開発,発見,再開発

及び採掘

⒉ 原始林木材伐採を業とする資本会社:資本会社であって,規則(EG)

Nr.1893/2006(ABl. L 393 vom 30. 12. 2006, S. 1)の付表I第A章第02部第02.

2グループに掲げられている分野を,自然に再生される森林において,人

間による侵害の明認可能な兆候を残すことなく,かつ,生態系を重大に攪

乱することのない土着の方法により行っているもの

⒊ 支払:鉱物採取産業又は原始林木材伐採業における活動に関連してなさ

れる金銭の交付又は物の給付として弁済された額であって,次に掲げる理

由によるもの

a) 生産権

b) 資本会社の収益,生産物又は利益に対して課される租税。消費税,

売上税,付加価値税並びに資本会社において雇用されている被用者の給

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与所得税及び同様の租税を除く。

c) 使用料

d) 配当その他の会社持分に対する分配

e) 調印,発見,生産に対する奨励金

f) 免許料,賃貸料,通行料並びにその他の免許又は許諾に対する反対給

g) インフラストラクチャーの改善のための弁済

⒋ 公的官署:欧州連合加盟国,欧州経済圏協定締約国又は第三国の国家,

地域又は地方の官署。官署に支配された部局又は代理人,並びに企業であっ

てこれらの官署が第290条の意味における支配的影響力を行使することが

できるものを含む。

⒌ 計画:操業上の活動の総体であって,公的官署に対する弁済義務の基礎

となる物であり,次に掲げるものにより規律されるもの

a) 単体の契約,免許,賃貸契約,許可又は同種の法的合意

b) 操業的かつ地理的に結びついた契約,免許,賃貸契約又は許可又は

これらと結びついた合意であって公的官署との間でなされたものの総体

であって,重要な点において同種の条件を予定しているもの

⒍ 支払報告書:資本会社が鉱物採取産業の活動又は原始林木材伐採の業務

に関連して公的官署に対して行った支払に関する報告書

⒎ コンツェルン支払報告書:全ての被組入企業が鉱物採取産業の活動又は

原始林木材伐採の業務に関連して公的官署に対して行った支払に関しての

コンツェルンレベルにおける親企業の支払報告書

⒏ 報告期間:支払報告書又はコンツェルン支払報告書を作成しなければな

らない資本会社又は親企業の事業年度

第2款 支払報告書,コンツェルン支払報告書及び開示第341s条(支払報告書作成義務,免除)⑴ 第341q条の意味における資本会

社は,毎年,支払報告書を作成しなければならない。

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⑵ ①資本会社が,当該会社自身の,又は欧州連合加盟国又は他の欧州経済圏

協定締約国に本拠を有する他の企業の作成するコンツェルン支払報告書に組

み入れられている場合は,当該会社は支払報告書を作成することを要しな

い。②この場合には,当該資本会社はその年度決算書の附属説明書におい

て,どの企業が当該企業をコンツェルン支払報告書に組み入れたか,及びど

こで入手可能かを記載しなければならない。

⑶ ①資本会社が,第三国の法規定であってその報告義務が欧州理事会によっ

て指令2013/34/EU第47条に基づく手続に従い等価値であると評価されたも

のに合致した報告書を作成し,当該報告書を第341w条に基づいて開示した

場合には,当該資本会社は支払報告書を作成することを要しない。②この報

告書の開示については第325a条第1項第3文が準用される。

第341t条(支払報告書の内容)⑴ ①支払報告書においては,資本会社は,報

告期間において公的官署に対しその鉱物採取産業の事業活動又は原始林木材

伐採の業務に関連していかなる支払をしたかを記載しなければならない。②

その他の支払は支払報告書に組み入れられてはならない。③支払報告書の作

成を義務付けられている資本会社において,報告期間においてどの公的官署

にも報告義務ある支払をしていない場合には,当該会社は当該報告期間に関

する支払報告書において,支払がなされずに鉱物採取産業の事業活動又は原

始林木材伐採の業務が営まれたことのみを記載しなければならない。

⑵ 資本会社は,支払を直接に提供した公的官署のみを報告しなければならな

い。一つの公的官署が複数の異なる公的官署に対する支払を回収した場合で

あっても同様である。

⑶ 公的官署が資本会社の議決権ある社員又は株主である場合には,支払われ

た配当又は利益分配については,次の各号のいずれかに該当する場合にのみ

考慮しなければならない。

⒈ 対比可能な同種の持分又は株式の所有者である他の社員又は株主と同一

の条件において支払われなかった場合

⒉ 生産権又は利用料の代わりに支払われた場合

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⑷ ①資本会社は,1回の支払としてなされたか複数の一連の支払としてな

されたかにかかわらず,報告期間において10万ユーロを下回る支払について

は,報告書において考慮することを要しない。②定期的な支払に関する合意

がなされている場合には,報告期間における定期的な支払又は率の総額を観

察しなければならない。③報告期間において合計で10万ユーロ未満のみの支

払を受けた公的官署については,支払報告書において考慮することを要しな

い。

⑸ ①支払が物の給付としてなされた場合には,当該物の価値及び場合により

当該物の量を考慮しなければならない。②支払報告書においては,場合によ

り,どのように価値を確定したのかを記載しなければならない。

⑹ ①支払の記載に際しては,当該支払や行為の形式ではなく,その本質と関

連させなければならない。②支払及び行為は,本節の適用を回避するために

作為的に分割し,又は統合してはならない。

第341u条(支払報告書の区分)⑴ ①支払報告書は,国により区分されなけ

ればならない。②資本会社は,各国ごとに,報告期間内に支払を行ったその

国の公的官署を表示しなければならない。③公的官署の表示は,明確な識別

を可能にするように行わなければならない。④通例,当該公的官署の公式の

名称を使用し,加えて当該官署が国のどの地域のどの場所に所在するかを記

載すれば十分である。⑤資本会社は支払につき,当該支払がどの原料につい

てなされたのかに従って分類することを要しない。

⑵ 各公的官署につき,資本会社は次の各号に定める記載をしなければならな

い。

⒈ 当該公的官署に対してなされた全ての支払の合計額

⒉ 第341r条第3号a)からg)に掲げられた支払事由ごとに分類した支払総

額。支払事由の表示については,第341r条第3号で標準とされている各事

項の記載で十分である。

⑶ ある公的官署に対する支払が一を超える計画に対してなされたときは,各

計画について追加的に次の各号に定める記載をしなければならない。

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⒈ 計画の明確な表示

⒉ 当該計画に関連して当該公的官署に対してなされた支払の総額

⒊ 第341r条第3号a)からg)に掲げられた支払事由ごとに分類した,当該

公的官署に対して当該計画に関連して行った支払の総額。支払事由の表示

については,第341r条第3号で標準とされている各事項の記載で十分であ

る。

⑷ 資本会社が特定の計画のためにではなく負うこととなった義務の履行のた

めにした支払については,第3項に基づく記載を要しない。

第341v条(コンツェルン支払報告書,免除)⑴ ①第341q条の意味における

資本会社であって親企業(第290条)であるものは,毎年,コンツェルン支

払報告書を作成しなければならない。②この条件がその子企業にのみ満たさ

れるときも,親企業もまた鉱物採取産業の活動をし又は原始林木材伐採の業

務を行っているものとする。

⑵ 親企業が同時に欧州連合加盟国又は他の欧州経済圏協定締約国に本拠を有

する他の親企業の子企業であるときは,コンツェルン支払報告書作成義務を

有さない。

⑶ コンツェルン支払報告書においては,親企業及びその全ての企業が,その

本拠にかかわらず組み入れられなければならない。次項以下において別段の

定めがない限り,コンツェルン決算書に適用される規定が準用される。

⑷ ①鉱物採取産業の活動を行わず,かつ,原始林木材伐採の業務を営んでい

ない企業は,第3項により組み入れられてはならない。②次の各号に該当す

るときは,当該企業はコンツェルン支払報告書に組み入れられることを要し

ない。

⒈ 第296条第1項第1号又は第3号によりコンツェルン決算書に組み入れ

られない場合

⒉ 第296条第1項第2号によりコンツェルン決算書に組み入れられず,か

つ,コンツェルン支払報告書の作成に必要な記載が過度に高額な費用又は

不相応な遅滞を伴ってのみ行われ得る場合

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⑸ ①コンツェルン支払報告書には第341s条から第341u条が準用される。②コ

ンツェルン支払報告書には,被組入企業がその鉱物採取産業の活動又は原始

林木材伐採に関連して行った,公的官署への全ての支払を連結して記載しな

ければならない。③親企業は,当該支払がどの原料に対してなされたのかに

従って分類することを要しない。

第341w条(開示)⑴ 資本会社の法律上の代表者は,当該会社のために,支

払報告書を遅くとも決算基準日の1年後までに電子的にドイツ語をもって連

邦官報の運営者に対して提出し,提出後遅滞なく連邦官報において告示しな

ければならない。

⑵ 第1項は,コンツェルンを作成すべき親企業の法律上の代表者に準用され

る。

⑶ 第325条第1項第2文及び第6項並びに第328条及び第329条第1項,第3

項及び第4項は準用される。

第3款 過料規定,秩序違反金第341x条(過料規定)⑴ 資本会社の代表権限ある機関又は監査役会の構成

員として次の各号に該当する者は,秩序違反として扱う。

⒈ 支払報告書の作成に際して,支払報告書の内容又は区分に関する第341t

条第1項,第2項,第3項,第5項又は第6項,又は第341u条第1項,第

2項又は第3項の規定に違反した者

⒉ コンツェルン支払報告書の作成に際して,コンツェルン支払報告書の内

容又は区分に関して第341t条第1項,第2項,第3項,第5項又は第6項,

又は第341u条第1項,第2項又は第3項と結びついた第341v条第4項の規

⑵ 秩序違反は,5万ユーロ以下の過料をもって罰せられ得る。

⑶ 第1項において,秩序違反行為法第36条第1項第1号の意味における行政

官庁は,連邦司法庁である。

⑷ 第1項から第3項の規定は,第341q条第2文の意味における人的商事会社

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の法律上の代表機関の構成員に対しても適用する。

第341y条(秩序違反金規定)⑴ ①第341q条の意味における資本会社又は第

341v条の意味における親企業の代表権限ある機関の構成員であって,支払報

告書又はコンツェルン支払報告書の開示に関する第341w条に従わない者に

対して,連邦司法庁は第335条から第335b条を準用して秩序違反金手続を執

行しなければならない。②当該手続は資本会社に対しても行われ得る。

⑵ ①連邦司法庁は資本会社に対して,当該会社が第341q条の意味において鉱

物採取産業の活動を行い,又は原始林木材伐採の業務を行っているかについ

て説明を求め,相応の期限を設けることができる。②説明の要求は理由を付

して行われなければならない。③資本会社が期限内に説明を行わなかった場

合は,第1項に基づく手続の遂行に際しては,当該会社は第341q条の適用範

囲にあることが推定される。④第1文から第3文は,連邦司法庁が,資本会

社が第341v条第1項の意味における親企業であるとの想定の根拠を有する場

合に準用する。

⑶ 前各項は,第341q条第2文の意味における人的商事会社に対して準用す

る。

第5章 民間会計基準委員会,会計審議会

第342条(民間会計基準委員会)⑴ ①連邦司法・消費者保護省は,私法に基

づいて設立された組織を契約によって承認し,以下の任務を委託することが

できる。

⒈ コンツェルン会計の諸原則の適用に関する基準の開発

⒉ 会計条項に関する立法の計画に際しての連邦司法・消費者保護省への助

⒊ 国際的な基準設定機関におけるドイツ連邦共和国の代表

⒋ 第315a条第1項の意味における国際的会計基準の解釈の作成

②ただし,組織を承認するためには,独立に,専ら会計家により,専門的な

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関心を有する公衆が参加した手続によって基準及び解釈が開発され決定され

ることが,その定款に基づいて保証されなければならない。③会計家の企業

又は団体がそのような組織の構成員であるときは,その構成員の権利は会計

家によってのみ行使されなければならない。

⑵ 第1項第1文に基づいて承認された組織の基準で連邦司法・消費者保護省

によって公示されたものが遵守された場合には,コンツェルン会計に関係す

る正規の簿記の諸原則の遵守が推定される。

第342a条(会計審議会)⑴ 連邦司法・消費者保護省は,本条第9項の条件

に従い,第342条第1項第1文の任務を行う会計審議会を設立する。

⑵ 会計審議会は次のように構成される。

⒈ 連邦司法・消費者保護省から会長として代表者1名,連邦財務省から代

表者1名,連邦経済省から代表者1名

⒉ 企業の代表者4名

⒊ 公認会計業の代表者4名

⒋ 大学の代表者2名

⑶ ①会計審議会の構成員は連邦司法・消費者保護省によって任命される。②

会計家のみが構成員として任命されなければならない。

⑷ ①会計審議会の構成員は独立で,かつ,指示によって拘束されてはならな

い。②審議会の職務は無給である。

⑸ 連邦司法・消費者保護省は,審議会の業務規程を定めることができる。

⑹ 審議会は,特定の専門分野について専門委員会及び作業グループを設置す

ることができる。

⑺ ①審議会,その専門委員会及び作業グループは,その構成員の3分の2の

出席により決議を行うことができる。②採決に際しては議決権の多数によ

り,賛否同数の場合は議長の投票による。

⑻ 第342条第2項は,会計審議会の基準に準用する。

⑼ 連邦司法・消費者保護省が第342条第1項によって組織を承認した場合,

会計審議会の設立は行なわれない。

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第6章 会計検査機関

第342b条(会計検査機関)⑴ ①連邦司法・消費者保護省は,連邦財務省の

了解のもと,私法に基づいて設立された会計規定の違反の検査のための組織

を契約により承認し(検査機関),次項以下に定める任務を委託することが

できる。②ただし,組織を承認するためには,検査が独立に,専門的に,秘

密裡に,かつ,定められた手続過程を遵守して行われることが,その定款,

人的構成及び示された手続規程により保証されなければならない。③定款及

び手続規程の変更は,連邦司法・消費者保護省により連邦財務省の了解を得

て認可されなければならない。④検査機関は,その任務の遂行に当たり他の

者を用いることができる。⑤連邦司法・消費者保護省は,検査機関の承認並

びに承認の終了について,連邦官報の行政部において公示する。

⑵ ①検査機関は,第2文の意味における企業において直近に確定された年度

決算書及びこれに附属する状況報告書又は直近に承認されたコンツェルン決

算書及びこれに附属するコンツェルン状況報告書,直近に公開された省略決

算書及びこれに附属する中間状況報告並びに直近に公開された支払報告書又

はコンツェルン支払報告書が,正規の簿記の諸原則を含む法律上の規定又は

その他の法律により認められた会計基準に適合しているかどうかを検査す

る。②検査されるのは,有価証券取引法第2条第1項の意味における承認有

価証券の発行者として,ドイツ連邦共和国を生産国としている企業の決算書

及び書類である。この場合において,持分及び株式が,資本投資法典第1条

第4項の意味における公開投資資産(offene Investvermögen)であるかどう

かは,考慮されない。③検査機関は,以下の各号のいずれかの場合において

検査を行う。

⒈ 会計規定違反についての具体的な根拠がある場合

⒉ 連邦金融監督庁の要求がある場合

⒊ 特別な根拠のない場合(無作為抽出検査法による検査)

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④第3文第1号の場合,検査について明らかに公共の利益が存しない場合

は,検査は実施されない。第3文第3号は,省略決算書及びこれに附属する

中間状況報告書並びに支払報告書及びコンツェルン支払報告書の検査につい

ては適用されない。⑤無作為抽出検査法による検査は,連邦司法・消費者保

護省及び連邦財務省の了解のもと検査機関により定められた原則に基づいて

行われなければならない。⑥連邦財務省は,その了解を与える権限を連邦金

融監督庁に委譲することができる。

(2a) ①第2項第1文に関係する事業年度に先行する事業年度を対象とする決

算書及び報告書をも,第2項に基づく検査の対象とすることができる。②こ

の場合,無作為抽出検査法による検査は認められない。

⑶ ①検査機関による年度決算書及びこれに附属する状況報告書の検査は,株

式法第256条第7項による無効の訴えが係属している場合には,行われない。

②株式法第142条第1項若しくは第2項又は同法第258条に基づき特別検査役

が選任された場合には,特別検査の対象物,検査報告書又は株式法第260条

に基づく特別検査役の終局的確定に達する限りにおいて,検査は行われな

い。

⑷ ①企業が検査機関による検査に際して協力する場合,企業の法律上の代表

者及び協力に際して法律上の代表者が使用するその他の者は,正確で完全な

回答を与え,正確で完全な資料を提供すべき義務を負う。②回答及び資料の

提供は,それによって当該義務者又は刑事訴訟法第52条第1項に定められた

その者の親族を刑事訴追又は秩序違反行為法に基づく手続の危険にさらす場

合には,拒否することができる。③義務者は,その拒否権について告知され

なければならない。

⑸ ①検査機関は,検査の結果を企業に通知する。②検査の結果が会計に瑕疵

がある旨であった場合,その決定について根拠づけなければならず,かつ,

企業に対して一定の期間を定めて,検査機関の結果に同意するかどうかにつ

いて表明する機会を与えなければならない。

⑹ ①検査機関は,連邦金融監督庁に対して以下の各号について報告する。

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⒈ 開始しようとする検査の計画

⒉ 検査に協力することについての関係企業の拒否

⒊ 検査の結果,及び場合により企業が検査結果に同意を表明したか否か

 ②これに対する法的救済手続は認められない。

⑺ 検査機関及びその被用者は,誠実に,かつ,偏りなく検査を行わなければ

ならない。これらの者は,検査行為によって生じた損害については,故意の

場合にのみ責任を負う。

⑻ ①検査機関は,企業の会計に関連して犯罪の疑いの根拠となる事実につい

て,訴追権限のある当局に通知する。②決算監査人による職務上の義務の違

反行為の存在を推認させる事実について,検査機関は公認会計士協会に伝達

する。

第342c条(守秘義務)⑴ ①検査機関の被用者は,企業の業務上及び経営上

の秘密及びその検査行為に際して知ることとなった企業に関する知識につい

て,秘密を保持しなければならない。②法に基づく報告義務が課される場合

には,適用されない。③検査機関の被用者は,その活動によって知ることと

なった,利用権限のない業務上及び経営上の秘密を利用することができな

い。④故意又は過失によりこれらの義務に違反した者は,被検査企業,及び

結合企業が損害を被った場合には当該結合企業に対し,これによって生じた

損害を賠償すべき義務を負う。⑤複数の者が責に任ずる場合には,連帯債務

者として責任を負う。

⑵ ①過失により責に任ずる者の賠償義務は,1回の検査及びそれに関連して

生じた義務違反につき,第323条第2項第2文に掲げられた額に制限される。

②当該検査に複数の者が関与し,又は複数の者が責に任ずべき行為を行った

場合においても,他の被用者が故意に行為したかどうかにかかわらず,同様

である。③第1項の場合において,損害賠償の責に任ずべき行為によって複

数の企業が損害を被った場合,損害賠償義務は全体で第1文の最高限度の2

倍に制限される。④この場合において第1項第1文に基づいて行われるべき

複数の補償が第1文の最高限度の2倍を超えるときは,各補償は補償の総額

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に対する第1文の最高限度の2倍の額の割合に比例して縮減される。

⑶ ①公課法第93条及び第97条は,第1項第1文に掲げられた者に対しては,

その者が第342b条の執行に従事する限りにおいて,適用しない。②当該規定

は,財務当局がその提起につき不可避の公益の存する租税犯則行為のための

手続又はそれと関連する課税手続のために知識を必要とし,かつ,会計違反

の検査を委託された外国機関によって協働された事実に関係しない限りにお

いて,適用される。

第342d条(検査機関の財務) ①検査機関は,その任務の遂行の財務的裏付け

のために必要な手段に関して,次年度の経済計画を連邦金融監督庁の了解の

もとに作成しなければならない。②経済計画は,認可のために連邦司法・消

費者保護省及び連邦財務省に提出されなければならない。③連邦金融監督庁

は検査機関に対して,検査機関において経済計画に基づいて生じると見込ま

れる費用について,金融サーヴィス監督法第17d条第1項第4文により徴収

された分担金から支払うが,その際には経済計画に対する連邦金融監督庁の

予算案の割合に基づく万一の際の不足額と未入金額を負担分に応じて考慮し

なければならない。④予算年度の終了後,検査機関はその年度決算書を作成

しなければならない。⑤連邦司法・消費者保護省と連邦財務省の同意により

検査機関の権限ある機関に対して免責が付与される。

第342e条(過料規定)⑴ 故意又は過失により第342b条第4項第1文に反し

て検査機関に対し不正な若しくは不完全な回答をし,又は不正な若しくは不

完全な資料を提出した者は,秩序違反として扱う。

⑵ 秩序違反は,5万ユーロ以下の過料をもって罰せられ得る。

⑶ 第1項に基づく秩序違反において,秩序違反行為法第36条第1項第1号の

意味における行政官庁は,連邦金融監督庁である。

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第4編 商行為

第1章 総則

第343条【商行為の概念】⑴ 商行為は,自己の商業の経営に属する商人の行

為の全てをいう。

⑵ (削除)

第344条【商行為の推定】⑴ 商人の行う法律行為は疑わしいときは商業の経

営に属するものとみなす。

⑵ 商人の署名する債務証書は証書から反対の結果が生じない限り,自己の商

業の経営において署名されたものとみなす。

第345条【一方的商行為】 両当事者の一方にとって商行為である法律行為は,

規定上別段の結果が生じない限り,商行為に関する規定を両当事者に等しく

適用する。

第346条【商慣習】 商人間においては,作為及び不作為の意義及び効果に関

し,商取引に妥当する慣習及び慣例を考慮しなければならない。

第347条【注意義務】⑴ 自己のために商行為である行為から他人に対して注

意義務を負う者は,通常の商人の注意について責任を負う。

⑵ 一定の場合において債務者が重過失についてのみ責任を負う,又は,自己

の事務において用いるのが通常である注意についてのみ責任を負うとする民

法典の規定は,前項の規定によってその適用を妨げられない。

第348条【違約罰】 商人が自己の商業の経営に当たり約束した違約罰は,民

法典第343条の規定により減ずることはできない。

第349条【先訴の抗弁の不存在】 ①保証が保証人にとって商行為であるとき

は,保証人は先訴の抗弁を有しない。②信用委任により保証人として責任を

負う者に関して,前記の要件が存在するときも同様である。

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第350条【方式自由】 保証,債務約束又は債務承認には,保証が保証人のた

めに,債務約束又は債務承認が債務者のために商行為である限り,民法典第

766条第1文及び第2文,第780条,第781条第1文及び第2文の方式規定は

適用されない。

第351条(削除)

第352条【法定利率】⑴ ①法定利息の額は,遅延利息を除き,双方的商行為

にあっては年5分とする。②双方的商行為による債務につき利率を定めずに

利息が約束された場合も同じである。

⑵ 本法において利率を規定せずに利息の支払義務が定められているとき

は,年5分の利息が定められているものと解さなければならない。

第353条【遅延利息】 ①双方的商行為による債権については,商人はお互い

に弁済期の日より利息を請求することができる。②利息の利息を本規定に基

づいて請求することはできない。

第354条【手数料,倉庫料,利息】⑴ 自己の商業を行うに当たり,他人のた

めに事務を処理し,又は役務を供給した者は,取決めがないときでも,これ

に関して,手数料及び保管が問題となっているときは当該地の通例的な率に

よる倉庫料を要求することができる。

⑵ 貸付金,前払金,立替金及びその他の費用については,給付の日より利息

を計算することができる。

第354a条【金銭債権譲渡の有効性】⑴ ①金銭債権の譲渡が債務者との合意

により民法典第399条に従い排除されているときであっても,当該債権を基

礎づけた法律行為が両当事者のために商行為であるか,又は債務者が公法上

の法人若しくは公法上の特別財産であるときは,譲渡は有効である。②ただ

し,債務者は従前の債権者に対して弁済することができ,これにより債務者

は免責される。③これに逸脱する合意は無効である。

⑵ 信用制度法にいう金融機関を債権者とする貸金契約による債権には第1項

の規定は適用しない。

第355条【継続計算,交互計算】⑴ 取引関係から生ずる双方的な請求権及び

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給付を利息とともに計算に置き,定期的に差し引き計算していずれかの当事

者に生ずる超過額を確定することによってこれを清算するような取引関係が

商人との間にあるときは(継続計算,交互計算),計算の閉鎖に際し超過額

が帰属する者は,計算に利息が含まれる限りにおいても,閉鎖の日から超過

額の利息を請求することができる。

⑵ 計算の閉鎖は,別段の取決めがなされない限り,年に一度行われる。

⑶ 継続計算は,疑わしいときは計算期間中であってもいつでもこれを解除す

ることができ,その効果として,計算による超過額が帰属する者はその支払

を請求することができる。

第356条【担保】⑴ 質,保証,その他の方法により担保されている債権が継

続計算に計上されたときは,継続計算による超過額と当該債権が重なる限り

において担保から弁済を求めることについて,債権者は,計算閉鎖の承認に

よってこれを妨げられない。

⑵ 継続計算に計上された債権につき第三者が連帯債務者として責任を負うと

きは,当該第三者に対する債権の行使について第1項の規定を準用する。

第357条【残高の差押え】 ①継続計算による超過額として継続計算の当事者

に帰属するところを求める当該当事者の請求権につき,当該当事者の債権者

が差押え及び転付を得たときは,この債権者に対しては,差押後に新たな取

引により生じた債務項目はこれを計算におくことができない。②差押えより

前に既に存在する第三債務者の権利,又はこの時点より前に既に存在する第

三債務者の義務に基づきなされた取引は,この規定にいう新たな取引とはみ

なされない。

第358条【給付の時】 商行為にあっては,給付は通常の営業時間内にのみ,

これを行い又は請求することができる。

第359条【合意された給付の時,「8日」】 ⑴ 春,秋,又はこれと類似の方法

で定められる時点が給付の時として合意されたときは,疑わしいときは,給

付の地の商慣習によりこれを決定する。

⑵ 8日の期間を合意したときは,疑わしいときは,満8日と解さなければな

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らない。

第360条【種類債務】 種類によってのみ定められた商品が債務の対象とされ

た場合,中等の種別と品質の商的物品を給付しなければならない。

第361条【容積,重量,通貨,時間計算及び距離】 契約が履行されるべき地

において通用する容積,重量,通貨,時間及び距離は,疑わしいときは契約

に適合するものと解されなければならない。

第362 条【申込みに対する商人の沈黙】⑴ ①他人のために事務を処理するこ

とが自己の営業に伴う商人に,取引関係にある者からそのような事務を処理

すべき旨の申込みが到達したときは,当該商人は遅滞なくこれに回答する義

務を負う。沈黙は申込みの承諾とみなす。②当該商人において,そのような

事務の処理をする旨の申出を行った者からそのような事務を処理すべき旨の

申込みが到達したときも同様である。

⑵ 商人が申込みを拒絶する場合であっても,商人が経費を担保され,かつ,

自己に不利益を生じずになし得る限り,商人は申込みと共に送付された商品

を申込者の負担において当面の間,損害から守らなければならない。

第363条【商人指図証券】⑴ ①金銭,有価証券又は他の代替物の給付に関し

て商人に対し発行された指図証書で,証書において給付が反対給付にかから

せられていないものは,指図文言があるときには,裏書により譲渡すること

ができる。②商人が前記の種別の目的物に関して指図式で発行した義務負担

証書で,証書において給付が反対給付にかからせられていないものに関して

も同様である。

⑵ 前項の他,海上運送人の船荷証券,運送人の貨物引換証,倉庫証券及び運

送保険証券は,指図文言があるときは,裏書により譲渡することができる。

第364条【裏書】⑴ 裏書により,裏書された証券から生ずる全ての権利は被

裏書人に移転する。

⑵ 証券の正当な所持人に対しては,債務者は,証券における自己の意思表示

の有効性にかかわる抗弁又は証券の内容から生ずる抗弁又は所持人に対し直

接に有する抗弁のみを対抗することができる。

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⑶ 債務者は受取記載のある証券の交付と引換にのみ給付をする義務を負う。

第365条【手形法の適用,公示催告手続】⑴ 裏書の方式,所持人の資格,資

格の調査及び所持人の返還義務に関しては,手形条例第11条ないし第13条,

第36条及び第74条の規定が準用される*。

⑵ ①証券を毀滅し又はその占有を失ったときは,当該証券は公示催告手続に

よる無効宣言に服する。②公示催告手続が開始されたときにおいて,無効宣

言がなされる前に権利者が担保を提供する場合は,当該権利者は,債務者に

対し,証券に従った給付を請求することができる。

第366条【動産の善意取得】⑴ 商人が自己の商業の経営に当たり自己に属さ

ない動産を譲渡又は質入れしたときは,取得者の善意が,動産を所有者のた

めに処分する譲渡人又は質権設定者の権限に関するものであるときであって

も,権利を無権利者から承継した者のための民法典の規定が適用される。

⑵ 動産が第三者の権利を負担するものであるときは,権利を無権利者から承

継した者のための民法典の規定は,善意が,動産に関する権利の制約なしに

当該動産を処分する譲渡人又は質権設定者の権限に関するものであるときで

あっても適用される。

⑶ ①問屋,運送人,海上運送人,運送取扱人及び倉庫業者の法定質権は,第

1項による善意の保護に関して,契約により取得された質権と同等である。

②ただし,当該法定質権によって担保されるべき債権を生じさせた契約の目

的でない物品に対する法定質権については第1文は適用されない。

第367条【ある種の有価証券の善意取得】⑴ ①所有者が盗取され,又は紛失

し,その他占有を失った無記名証券が銀行業又は両替業を営む商人に対し譲

渡又は質入されたときは,証券の滅失が譲渡又は質入の時点において連邦官

報に公告され,公示がなされた年の終了より1年が経過していない場合は,

当該商人の善意は排除されたものとみなす。②2007年1月1日より前の公示

に関しては,連邦官報ではなく紙形式の連邦官報とする。③指図文言のある

*�現在は,その後の立法(1933年6月21日法(RGBl.��I�S.�409)第3条第1項)により,手形法第13条,第14条第2項,第16条及び第40条第3項第2文が適用となる。

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借入証券並びに記名株券及び中間証券は白地式裏書が付されている場合には

無記名証券と同視される。

⑵ 取得者の善意は,取得者が特別の事情により公示を知らず,かつ,その不

知が重過失に基づくものでないときは,第1項に基づく公示により排除され

ない。

⑶ 譲渡又は質入後の最初の消却期日以前に満期となる利息証券,定期金証券

及び利益配当証券並びに一覧払の無利息の無記名証券及び銀行券には本条の

規定は適用されない。

第368条【質物売却】⑴ 質権者及び質権設定者のために質入が商行為である

ときは,質物の売却について,民法典第1234条の定める1か月の期間ではな

く1週間の期間が適用される。

⑵ 前項の規定は問屋,運送人,海上運送人,運送取扱人及び倉庫営業者の法

定質権について準用されなければならず,また,運送人,海上運送人及び運

送取扱人の法定質権については,これらの者のためにのみ契約が商行為であ

るときであっても,準用されなければならない。

第369条【商人の留置権】⑴ ①他の商人との間でなされた双方的商行為によ

り弁済期の到来した債権を当該他の商人に対し有する商人は,この債権に基

づき,商行為により債務者の意思で商人が占有するに至った債務者の動産及

び有価証券に対し,特に船荷証券,貨物引換証又は倉庫証券により処分し得

るなど,商人がこれをなお占有する限り,留置権を有する。②目的物に対す

る所有権が債務者から債権者に移転し,又は第三者から債務者のために債権

者に譲渡されたときで,これが債務者に譲り戻されるべきときにも,留置権

は成立する。

⑵ 債務者の目的物引渡請求権に対する抗弁を第三者に対抗し得る限りにおい

て,第三者との関係で留置権は存続する。

⑶ 一定の方法で目的物を処理すべきことにつき債権者が譲渡の前若しくは譲

渡の際に与えた指図又は債権者が引き受けた義務に目的物の留置が抵触する

ときは,留置権は排除される。

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⑷ ①債務者は担保の提供により留置権の行使を回避することができる。②保

証人を立てることによる担保の提供は認められない。

第370 条(削除)

第371 条【弁済を受ける権利】 ⑴ ①債権者は留置権に基づき,留置された目

的物から自己の債権の弁済を受ける権限を有する。②第369条第2項に基づ

き留置権の主張を受ける第三者が目的物に対して権利を有するときは,債権

者が目的物からの弁済について優先する。

⑵ ①弁済は質権に関する民法典の規定に基づいてなされる。②民法典第1234

条の規定する1か月の期間ではなく1週間の期間が適用される。

⑶ ①弁済が強制執行によらずになされる限り,債権者が弁済の受領に関する

自己の権利につき所有者に対する執行名義を取得し,又は目的物が債権者自

身に属するときは,債務者に対する執行名義を取得した後に,弁済は初めて

適法となる。後者の場合においては,弁済に関する民法典の規定で所有者に

関わるものは債務者に準用される。②執行名義を欠くときは目的物の売却は

不適法である。

⑷ 弁済を容認すべきことを求める訴えは,債権者が普通裁判籍又は営業所の

裁判籍を有する管轄地の裁判所に提起することができる。

第372条【弁済を受ける権利における所有の擬制及び確定的効果】⑴ 留置さ

れた目的物からの弁済に関しては,債権者が占有を取得した際に債務者が目

的物の所有者であったときは,債務者が既に所有者でないことを債権者が知

らない限り,債権者のために債務者が引き続き所有者であるとみなされる。

⑵ 債権者の占有取得後に第三者が債務者から所有権を取得したときは,債権

者と債務者との間で弁済の容認につき追行された訴訟において下された確定

判決は,債務者が既に所有者でないことを債権者が訴訟係属の発生に当たり

知っていたのでない限り,これを第三者は受け入れなければならない。

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第2章 商事売買

第373条【買主の受領遅滞】⑴ 買主が商品の受領につき遅滞にあるときは,

売主は当該商品を買主の危険と負担において公の倉庫又は他の安全な方法に

よって供託することができる。

⑵ ①前項の他,売主は,事前の通告の後,商品を公の競売に付することがで

きる。商品が取引所価格又は市場価格を有するときは,事前の通告の後,そ

のような売却につき公的な権限を有する商事仲立人又は公の競売につき権限

を有する者によって現行価格での売却を直接に行うことができる。②商品に

損敗のおそれがあり,その危険が迫っているときは,事前の通告はこれを必

要としない。 他の理由により通告をなし得ないときも同じである。

⑶ 自助売却は遅滞にある買主の計算においてなされる。

⑷ 売主及び買主は公の競売に入札することができる。

⑸ ①公の競売に付するときは売主は買主に競売の時と場所を事前に通知しな

ければならない。売却を実施したときは売却の方法を問わず売主はこれを遅

滞なく買主に通知しなければならない。②通知を怠ったときは売主は損害を

賠償する義務を負う。③通知はこれを行うことができないときは行わないこ

とができる。

第374条【受領遅滞に関する民法典の規定】 買主が受領遅滞にあるときに民

法典に基づき売主に帰属する権限は,第373条の規定によって害されない。

第375条【数量指示売買】⑴ 動産の売買に際して買主が,形式,容積又はこ

れに類する事情についての詳細な指定を留保したときは,買主は留保した指

定を行う義務を負う。

⑵ ①買主が前項の義務の履行につき遅滞にあるときは,売主は買主に代わり

指定を行うこと,給付に代えて民法典第280条,第281条の規定により損害賠

償を請求すること,又は民法典第323条により契約を解除することができる。

②最初の場合には売主は自己の行った指定につき買主に告知し,併せて他の

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指定を行うための適切な期間を買主に設定しなければならない。③買主が当

該期間内に指定をしないときは,売主の行った指定による。

第376条【定期商事売買】⑴ ①一方当事者の給付が正確に確定された時又は

確定された期間内になされるべきことが約定された場合において,給付が定

められた時又は定められた期間内になされなかったときは,他方当事者は契

約を解除するか,債務者が遅滞にある場合において不履行による損害賠償を

履行に代えて請求することができる。②他方当事者が上記の時又は期間の経

過後直ちに相手方に対しあくまで履行を求める旨を通知したときにのみ,他

方当事者は履行を請求することができる。

⑵ 不履行による損害賠償が請求されたときで,商品が取引所価格又は市場価

格を有するときは,売買価格と義務を負う給付の履行の時と地における取引

所価格又は市場価格との差額を請求することができる。

⑶ ①他の方法でなされた売却又は買入れの結果は,商品が取引所価格又は市

場価格を有するときは,約定の給付時又は給付期間が過ぎた後直ちに売却又

は買入れがなされたときにのみ,これを損害賠償の基礎とすることができ

る。②売却又は買入れは公の競売によってなされないときは,そのような売

却又は買入につき,公の権限を有する商事仲立人又は公の競売の権限を有す

る者により時価でなされなければならない。

⑷ ①公の競売による売却には第373条第4項の規定が適用される。②売却又

は買入れについては,債権者は債務者に遅滞なく通知しなければならない。

通知を怠ったときは債権者は損害賠償の義務を負う。

第377条【検査義務及び通知義務】⑴ 売買が双方のために商行為であるとき

は,買主は通常の営業活動に照らして適切である限り,商品を売主による引

渡しの後遅滞なく検査し,瑕疵を発見したときは売主に遅滞なく通知しなけ

ればならない。

⑵ 買主が通知を怠ったときは,商品は承認されたものとみなす。ただし,検

査により認識し得ない瑕疵が問題となっているときはこの限りではない。

⑶ 検査により認識し得ない瑕疵が後に明らかとなったときは,発見後遅滞な

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く通知をしなければならない。通知がないときは商品は当該瑕疵についても

承認されたものとみなす。

⑷ 買主の権利の保存のためには,通知を適時に発信することで足りる。

⑸ 売主が悪意により瑕疵を黙秘したときは,売主は上記の規定を援用するこ

とができない。

第378条(削除)

第379条【一時的保管,緊急売却】⑴ 売買が双方のために商行為であるとき

において,買主は,他の地から送付された商品に異議を述べるときは,その

一時的な保管を注意して行う義務を負う。

⑵ 買主は,商品が損敗のおそれがあり,その危険が差し迫っているときは,

第373条の規定を遵守してこれを売却させることができる。

第380条【風袋重量】⑴ 購入価格が商品の重量によって算定されるべきとき

は,契約又は売主が履行すべき地の商慣習により別段の結果が生じない限

り,包装の重量(風袋重量)は控除される。

⑵ 風袋重量を精密な算出によらず,一定の査定又は割合によって控除すべき

か,控除すべきとしてその額,及び買主のために増量として算定がなされる

べきであるか,なされるべきであるとしてその量,又は,損傷部分若しくは

使用不能部分に関する補償(破損割引)として請求することができるか,及

び,請求することができるとしてその額は,契約又は売主が履行すべき地の

商慣習により決定される。

第381条【有価証券の売買,製造物供給契約】⑴ 商品の売買に関する本章の

規定は,有価証券の売買にも適用される。

⑵ 上記の規定は,製作されるべき又は生産されるべき動産の供給を目的とす

る契約にも適用される。

第382条(削除)

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第3章 問屋営業

第383条【問屋,問屋契約】⑴ 問屋とは自己の名において他人(委託者)の

計算で商品又は有価証券を買入れ又は売却することを業として引き受ける者

をいう。

⑵ ①本章の規定は,問屋の企業がその性質又は範囲に照らして商人的な方法

で調整された経営組織を必要とせず,企業の商号が第2条に基づいて商業登

記簿に登記されないときにも適用される。②この場合,問屋営業に関して

は,第4編第1章の規定も,第348条ないし第350条を除き適用される。

第384条【問屋の義務】⑴ 問屋は引き受けた取引を通常の商人の注意をもっ

て実行する義務を負う。これに当たり,問屋は委託者の利益を擁護しなけれ

ばならず,かつ,その指図を遵守しなければならない。

⑵ 問屋は委託者に対し,必要な通知を行わなければならず,とりわけ取次ぎ

の実行につき遅滞なく通知しなければならない。問屋は委託者に対し取引に

ついて説明する義務及び取引の実行により取得したものを引き渡す義務を負

う。

⑶ 問屋は,取次実行の通知と同時に自己が取引を締結した相手方である第三

者の名前を明らかにしないときは,取引の履行に関し委託者に対し責任を負

う。

第385条【委託者の指図】⑴ 問屋が委託者の指図に従わないときは,委託者

に対し損害を賠償する義務を負う。この場合委託者は当該取引を自己の計算

におけるものとして扱うことを必要としない。

⑵ 民法典第665条の規定の適用は妨げられない。

第386条【価格の制限】⑴ 問屋が指定された価格より廉価に売却をし又は買

入れにつき指定された価格を超えたときにおいて,委託者は,自己の計算に

おいて締結されたものではないとして取引を否認しようとするときは,取引

実行の通知に当たり,この旨を遅滞なく表示しなければならない。表示がな

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されないときは指定された価格からの逸脱は承認されたものとみなす。

⑵ ①問屋が取引実行の通知と同時に差額を補てんする旨を申し出たとき

は,委託者は否認の権限を有しない。②これにより差額を超える損害の賠償

を求める請求権は害されない。

第387条【有利な締約】⑴ 問屋が,委託者に指定された条件よりも有利な条

件で締結をしたときは,このことは委託者の利益に帰する。

⑵ 前項の規定は,とりわけ,問屋の売却価格が委託者の指定する最低価格を

超えるとき,又は買入価格が委託者の指定する最高価格に達しないときに適

用される。

第388条【損傷した物品又は瑕疵ある物品】⑴ 問屋に送付された物品がその

引渡しの際に損傷した状態又は瑕疵ある状態にあり,外見上それが認識可能

であるときは,問屋は運送人又は船長に対する権利を保全し,物品の状態の

証明を手配し,委託者に遅滞なく通知をしなければならない。これを怠った

ときは問屋は損害賠償の義務を負う。

⑵ 物品が損敗のおそれがあるか,又は価値の減少が危惧される物品の事後的

な変化が発生したときにおいて,委託者の指示を受ける時間がないか,又は

委託者が指示を怠っているときは,問屋は第373条の規定に従って物品を売

却することができる。

第389条【供託,自助売却】 状況に照らして委託者が物品を処分すべき義務

を負っているにもかかわらず,委託者がこれを怠るときは,問屋は第373条

により売主に帰属する権利を有する。

第390条【物品に関する問屋の責任】⑴ 問屋は自己の管理下にある物品の滅

失又は損傷について責任を負う。ただし,滅失又は損傷が通常の商人の注意

によって回避し得なかった事情に基づくときはこの限りではない。

⑵ 問屋は,委託者から保険を付するべき旨の指図を受けたときに限り,物品

を保険に付さなかったことにつき責任を負う。

第391条(検査義務及び通知義務,保管,緊急売却) ①双方のために商行為

である買入委託がなされたときは,物品を検査する委託者の義務及び発見し

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た瑕疵を問屋に告知する義務に関して,並びに異議を述べた物品の保管に関

する注意及び損敗が差し迫っている場合の売却に関しては,買主に適用され

る第377条ないし第379条の規定を準用する。②問屋が委託者の計算で物品を

買入れた相手方である第三者に対して問屋が有する権利につき,これを譲り

渡すことを求める委託者の請求権は,瑕疵の告知の遅滞により害されない。

第392条【問屋取引による債権】⑴ 問屋が締結した取引による債権は,委託

者はその譲渡を受けて初めてこれを債務者に対し行使することができる。

⑵ 前項の規定にかかわらず,前項の債権は,譲渡されていないときであって

も,委託者と問屋又はその債権者との間の関係においては委託者の債権とみ

なす。

第393条【前払金,信用】⑴ 問屋が委託者の同意なしに第三者に対し前払金

を給付し又は信用を供与するときは,問屋は自己の危険でこれを行う。

⑵ 前項の規定にかかわらず,取引地における商慣習によれば売買代金の支払

を猶予すべきものである限りにおいて,委託者が別段の指定をしない場合,

問屋もこれを行う権限を有する。

⑶ ①問屋が権限無くして信用による売却をしたときは,問屋は売買代金の債

務者として委託者に対して支払をする義務を負う。②現金による販売であれ

ば価格がより低かったであろうときは,問屋はその安価な代金についてのみ

支払をしなければならず,指定された価格よりもその安価な代金が低いとき

は,これに加えて第386条により差額を補償しなければならない。

第394条【支払保証】⑴ 問屋が委託者の計算において取引をした場合の取引

の相手方である第三者の債務の履行については,問屋が引き受けたとき,又

は営業所の地における商慣習であるときは,その責任を負わなければならな

い。

⑵ ①第三者のために責任を負わなければならない問屋は,契約関係により履

行の請求をなし得る限りにおいて,弁済期到来の時点における履行につき,

委託者に対し直接に責任を負う。②問屋は特別の報酬(取次保証料)を請求

することができる。

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第395条【手形の裏書】 手形の買入を引き受けた問屋がその手形を裏書する

ときは,通常の方法により,かつ,留保を付さずに裏書する義務を負う。

第396条【問屋の手数料,費用の補償】⑴ ①取引が実行に至ったときは,問

屋は,手数料を請求することができる。②取引が実行に至らなかったとき

は,当該地における慣習がある限りにおいて,問屋は,引渡手数料を求める

請求権を有する。問屋の締結した取引につき,委託者に存する理由からその

実行がなされていないに過ぎないときも,問屋は,手数料を請求することが

できる。

⑵ 民法典第670条及び第675条に基づき委託者が問屋の費用に関し支払うべき

補償には,問屋の倉庫室及び運送手段を使用したことに対する報酬も含まれ

る。

第397条(問屋の質権) ①問屋は物品に使用した経費,手数料,物品について

支出した前払金及び貸付金,並びに物品に関して振り出した手形又は他の方

法で生じた債務に基づき,委託者の取次物品又は物品の買入又は売却に同意

した第三者の取次物品に対し質権を有する。②委託者の物品に対しては問屋

は取次行為の継続計算から生ずるあらゆる債権に基づき質権を有する。③た

だし,第1文及び第2文に基づく質権は,問屋が占有する取次物品,又は,

船荷証券,貨物引換証若しくは倉庫証券によって処分し得る取次物品につい

てのみ存する。

第398条【自己の取次物品からの弁済】 問屋は,取次物品の所有者であるとき

であっても,第397条に掲げる債権に関して,質権に適用される規定に従い

当該物品から弁済を受けることができる。

第399条【債権からの弁済】 問屋は,第397条に掲げる債権に関して,委託者

の計算において締結された取引に基づく債権から,委託者とその債権者に優

先してその弁済を受けることができる。

第400条【問屋の介入】⑴ 取引所価格又は市場価格を有する商品の取次ぎ,

及び,取引所価格又は市場価格が公定される有価証券の買入又は販売の取次

ぎについては,委託者が別段の指定をしないときは,問屋は自己が買入れる

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べき物品を自ら売主として供給し又は自己が販売すべき物品を自ら買主とし

て譲り受けることによって,その実行をすることができる。

⑵ ①前項の規定する取次ぎの実行がなされた場合において,買入れ又は売却

の締結に関して説明すべき問屋の義務は,計上される価格が取次実行の時点

における取引所価格又は市場価格に従ったものであることの証明に限定され

る。②問屋が実行の通知を委託者への発信のために交付した時点をもって実

行の時点とみなす。

⑶ 取引所時間又は市場時間中に実行されるべきであった取次ぎにおいて実行

の通知が取引所又は市場の閉鎖後に発信のために交付されたときは,計上さ

れる価格は取引所終了又は市場閉鎖時の価格より委託者にとって不利であっ

てはならない。

⑷ 一定の相場(寄付相場,平均相場,最終相場)で実行されるべき取次ぎに

おいては,問屋が実行通知の発信の時点にかかわらず当該一定の相場を委託

者に対して計上する権限と義務を負う。 

⑸ 取引所価格又は市場価格が公定される有価証券及び商品にあって,問屋が

介入により取次ぎを実行する場合には,問屋は公定価格より不利な価格を委

託者に対して計上することはできない。

第401条【代替取引】⑴ 介入による取次ぎの実行の場合であっても,義務に

合致した注意を用いたならば第400条に基づく価格より有利な価格で取次ぎ

を実行できたときは,問屋は委託者に対してその有利な価格を計上しなけれ

ばならない。

⑵ 介入による取次ぎの実行通知を発信するより前に,問屋が,委託された

取次ぎを契機として取引所又は市場において取引を第三者と締結したとき

は,問屋は,そこで合意された価格より不利な価格を委託者に対して計上し

てはならない。

第402条【強行法規性】 第400条第2項ないし第5項及び第401条の規定は契約

によって委託者の不利益に変更することはできない。

第403条【介入の際の手数料】 物品を自ら売主として供給し又は買主として

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譲り受ける問屋は,通例的な手数料を受ける権利を有し,委託にかかる取引

においてこの他通常生ずる経費を計上することができる。

第404条【法定質権】 第397条及び第398条の規定は,介入による取次ぎの実行

の場合にも適用される。

第405 条【実行の通知及び介入,取次委託の撤回】⑴ 問屋が介入の意図を明

確に示すことなく取次ぎの実行を通知するときは,第三者との取引の締結に

よって委託者の計算において実行がなされた旨の表示とみなす。

⑵ 取次ぎが介入によるものか第三者との取引締結によるものかについての表

示を実行通知の日より後に行うことができる旨の委託者と問屋との間の合意

は無効である。

⑶ 実行通知が発信のために交付されるよりも前に,委託者が取次委託を撤回

し,撤回が委託者に到達したときは,問屋は介入の権利を失う。

第406条【類似の取引】⑴ ①本章の規定は,問屋が自己の商業の経営におい

て第383条に掲げる種類以外の取引を他人の計算において自己の名で締結す

ることを引き受けるときにも適用される。②問屋でない商人が,自己の商業

の経営において,取引を前述の方法で締結することを引き受けるときも同様

である。

⑵ 請負人が調達する材料から製作されるべき非代替物である動産の供給を対

象とする取次委託も,本章における購入委託及び販売委託とみなす。

第4章 運送営業

第1節 総則

第407条(運送契約) ⑴ 運送契約により運送人は物品を一定の地に運送し荷受

人に引き渡す義務を負う。

⑵ 荷送人は合意された運送賃を支払う義務を負う。

⑶ ①本節の規定は,

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⒈ 物品を陸路,内水路,又は航空機によって運送するものとされており,

かつ,

 ⒉ 当該運送が営業的企業の経営に属するとき

 に適用される。

②企業がその性質と範囲に照らして商人的な方法で調整された経営組織を必

要とせず,かつ,企業の商号が第2条により商業登記簿に登記されていない

ときでも,運送営業に関しては,その限りにおいて,第4章第2節の規定が

補充的に適用されなければならない。ただし,第348条ないし第350条に関し

てはこの限りでない。

第408条(運送状,命令への授権) ⑴ ①運送人は,以下の事項を記載した運送

状の発行を請求することができる。

 ⒈ 発行の地及び日

 ⒉ 荷送人の名称及び住所

 ⒊ 運送人の名称及び住所

 ⒋ 物品の引受の場所及び日並びに引渡を予定する場所

 ⒌ 荷受人の名称及び住所並びに申告住所がある場合における申告住所

⒍ 物品の種別の通例的呼称及び包装の種別,危険な物品にあっては危険物

規定の定める呼称,これがないときは一般に認められた呼称

 ⒎ 個貨物の総数,記号,及び番号

 ⒏ 物品の粗重量又は他の方法により表示される数量

⒐ 引渡しに際し負担される運送賃及び引渡しまでに発生する経費並びに運

送賃支払に関する文句

 10.物品の引渡に際して徴収されるべき受取人払の金額

11.物品に対する税関による措置及びその他の公的機関による措置に関する

指示

12.無蓋のシートをかけない運送機材又は甲板による運送についての合意

②運送状には,両当事者が必要と認めるその他の事項を記入することができ

る。

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⑵ ①運送状は荷送人の署名する3通の原複本により発行される。②荷送人

は,運送人も運送状に署名することを請求することができる。③署名は印刷

又は印章による直筆の署名の複製で足りる。④原複本の1通は荷送人が用

い,1通は物品に添付され,1通は運送人が保持する。

⑶ ①運送状と同じ機能を果たす電子記録は,記録の信頼性と完全性が保持さ

れることが保障される限りにおいて,運送状と同視される(電子運送状)。

②連邦司法・消費者保護省は,連邦内務省との合意の下,連邦参議院の同意

が不要な法規命令により,電子運送状の発行,物品への添付,及び呈示に関

する個別的事項並びに電子運送状への事後的な記入の手続に関する個別的事

項を規律する権限を有する。

第409条(運送状の証明力) ⑴ 両当事者が署名した運送状は,反対事実の証

明があるまでは,運送契約の締結及び内容並びに運送人による物品の引受け

に関する証拠となる。

⑵ ①前項の他,両当事者が署名した運送状は,運送人が引き受けた時点にお

ける物品とその包装が外見上良好な状態にあったこと,及び,個貨物の総

数,記号,番号が運送状の記載に合致していることの推定を基礎づける。②

ただし,運送人が運送状に根拠を付した留保を記入したときは,運送状は上

記の推定を基礎づけない。運送人が記載の正確性を検査するための適当な手

段を用いることができなかったことによっても,留保は根拠を付したものと

なる。

⑶ ①物品の粗重量若しくは他の方法で記載された物品の数量又は個貨物の内

容を運送人が検査し,検査の結果が両当事者の署名する運送状に記入され

たときは,重量,数量又は内容が運送状の記載と一致することの推定を基礎

づける。②運送人は,荷送人が要求し,かつ,運送人が検査のための適当な

手段を用いることができるときは,重量,数量又は内容を検査する義務を負

う。運送人は検査の費用の補償を求める請求権を有する。

第410条(危険な物品) ⑴ 危険な物品を運送すべきときは,荷送人は運送人

に対して危険の正確な種別,及び,必要な限りにおいて,講ずべき危険防止

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措置を,テキスト形式で適時に告知しなければならない。

⑵ 運送人は,物品の引受けに際し,危険の種別を知っていた,又は,知らな

かったが告知はされていたという訳ではない限り,

⒈ 危険な物品の荷下ろし,入庫,返送,又は,必要な限りにおける破棄,

無害化をこれにより荷送人に対して賠償義務を負うことなく行うことがで

き,かつ,

⒉ これらの措置に基づき必要な費用の補償を荷送人に対して請求すること

ができる。

第411条(包装,記号) ①荷送人は,合意された運送に鑑みて物品の性質上

包装が必要な限りにおいて,物品が滅失及び損傷から保護されるように,か

つ,運送人にも損害が生じないように物品を包装しなければならない。②物

品がコンテナー,パレット,又は個貨物を一括するために用いられるその他

の輸送用機具に積載の上,運送のために引き渡されるべきときは,荷送人は

運送の安全が確保されるように物品を当該輸送用機具に積載し,これを保全

しなければならない。③荷送人は,さらに,契約に適合した物品の取り扱い

がこれを必要とする限りにおいて,物品に記号を付さなければならない。

第412条(積込み及び積卸し,命令への授権) ①荷送人は,状況又は運輸慣

行から別段のことが生じない限り,物品の搭載,積付及び固定(積込み)を

運送の安全が確保されるように行わなければならず,並びに,その積卸しを

行わなければならない。②運送人は事業上の安全が確保される積込みに注意

しなければならない。

⑵ 異なる合意がないために個々の状況にふさわしい期間に基づいて算定され

る積込期間及び積卸期間に対しては,特別の報酬を要求することはできな

い。

⑶ 運送人が契約上の合意に基づき又は自己の危険領域に帰することのできな

い理由に基づき積込期間又は積卸期間を超えて待機したときは,運送人は適

切な報酬(運送機材留置料)を求める請求権を有する。

⑷ 連邦司法・消費者保護省は,連邦交通・デジタルインフラ省との合意の下

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に,連邦参議院の同意を要しない法規命令によって,運送のために指定され

た運送機材の種別,積み換える物品の種別と数量,積換えに使用可能な技術

的手段及び運輸進行の迅速化の必要を考慮の上,内水航行に関し,積込期間

及び積卸期間の始期,その期間,並びに運送機材留置料の額を定める権限を

有する。

第413条(添付書類) ⑴ 荷送人は,官公庁の処置,とりわけ通関処理のために

物品の引渡前に必要となる全ての書類を運送人に提供し,かつ,情報を与え

なければならない。

⑵ ①運送人は自己に引き渡された書類の滅失若しくは損傷又は誤った使用に

より生じた損害につき責任を負う。ただし,運送人が避けることができな

かった事情であり,かつ,運送人がその結果を防ぐことができなかった事情

に基づいて,書類の滅失,損傷又は誤った使用が生じた場合はこの限りでは

ない。②運送人の責任は,物品の滅失の場合に支払うべき額に限定される。

第414条(特別なケースにおける荷送人の無過失責任) ⑴ 荷送人は,自己に

過失がない場合であっても,運送人に対して,

 ⒈ 不十分な包装又は記号

 ⒉ 運送状に記録された事項の不正確又は不完全

 ⒊ 物品の危険性に関する告知をしなかったこと,又は,

 ⒋ 第413条1項に挙げる書面又は情報の欠如,不完全,不正確

 に起因する損害及び費用を賠償しなければならない。

⑵ 損害又は費用の発生に運送人の行為がかかわっていたときは,賠償義務の

存否及び給付されるべき賠償の範囲は,当該行為が損害と費用の原因となっ

た程度による。

⑶ 荷送人が消費者であるときは,荷送人は,過失がある限りにおいてのみ,

第1項及び第2項により損害及び費用の賠償をしなければならない。

第415条(荷送人による解除) ⑴ 荷送人は運送契約をいつでも解除すること

ができる。

⑵ ①荷送人が運送契約を解除したときは,運送人は,

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⒈ 契約の解消に起因して運送人が費用を免れ又は他の態様で取得し若しく

は悪意によりその取得を怠ったものを控除した上で,合意された運送賃,

運送機材留置料が生じている場合における運送機材留置料,及び,補償さ

れるべき費用,又は,

 ⒉ 合意された運送賃の3分の1(不積み運送賃)

 のいずれかを請求することができる。②運送人の危険領域に帰せられるべき

理由により解除がなされたときは,第1文第2号の不積み運送費の請求権は

生じない。この場合において運送が荷送人にとって利益とならない限りにお

いて,第1文第1号の請求権も生じない。

⑶ ① 契約解除前に物品の積込みがなされていたときは,運送人は,荷送人

の負担で第419条第3項第2文ないし第4文に準じて措置を講ずることがで

き,又は,荷送人に対して物品の積卸しを遅滞なく行うことを請求すること

ができる。②運送人は,物品の積卸しが自己の営業に不利益を生ぜず,かつ,

他の貨物の荷送人又は荷受人に対する損害が生じない限りにおいてのみ,積

卸しを受忍することを要する。③解除が,運送人の危険領域に帰せられるべ

き理由に基づくときは,第1文及び第2文にかかわらず,運送人は,既に積

込みがなされた物品を遅滞なく自己の負担で積卸しする義務を負う。

第416条(一部運送請求権) ①物品の積込みが部分的にのみなされているとき

は,荷送人はいつでも運送人が既に積込みがなされた物品の部分の運送を開

始することを請求することができる。②この場合において,運送人は全運送

賃,運送機材留置料がある場合における運送機材留置料,及び,物品の一部

分が欠けていることによって生じた費用の補償を受ける。ただし,運送人が

積込みがなされなかった物品の代わりに同じ運送手段で運送する物品に関す

る運送賃については,全運送賃からこれを控除する。③この他,運送人は,

物品の一部分が欠けていることにより全運送賃に関する担保を逸した限りに

おいて,他の担保を請求する権限を有する。④物品の全部の積込みがなされ

なかったことが運送人の危険領域に帰せられるべき理由に基づくときは,運

送人は,物品が実際に運送される限りにおいてのみ第2文及び第3文の請求

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権を有する。

第417条(積込期間の不遵守の場合における運送人の権利)⑴ 荷送人が物品

を積込期間内に積込みを行わないとき,又は,荷送人が積込みの義務を負わ

ない場合において積込期間内に物品を積込みのための状態におかないとき

は,運送人は物品の積込みを行い,又は,積込みのための状態におくべき適

切な期間を荷送人に対して指定することができる。

⑵ 第1項に基づき指定された期間が経過するまでに物品の積込みが全くなさ

れず若しくは積込みのための状態に全くおかれないとき,又は,当該期間内

に物品の積込みが全くなされず若しくは積込み可能な状態に全くおかれない

ことが明らかなときは,運送人は契約を解除し,第415条2項に基づく請求

権を行使することができる。

⑶ 第1項に基づき指定された期間内に物品の積込みが部分的にのみなさ

れ,又は積込みのための状態に部分的にのみおかれたときは,運送人は既に

積込みがなされた物品の部分について運送を開始し,第416条第2文及び第

3文の請求権を行使することができる。

⑷ ①荷送人が物品の積込みをし又は積込みのための状態におくことを真摯か

つ最終的に拒むときは,運送人は,期間の指定をしなくとも第2項又は第3

項に基づく権利を行使することができる。②さらに,両当事者の利益衡量

上,契約関係の継続を運送人に期待できない特別の事情があるときは,運送

人は期間の指定をしなくとも第2項により契約を解除することができる。

⑸ 積込期間の不遵守が運送人の危険領域に帰せられるべき理由に基づくとき

は,運送人は上記の権利を有しない。

第418条(事後的な指図) ⑴ ①荷送人は物品に関し処分をする権限を有する。

②荷送人は,とりわけ,運送人が物品の運送を継続しないこと,又は,他の

目的地において,他の引渡場所において,若しくは他の荷受人に対して,物

品を引き渡すことを請求することができる。③運送人は,指図の実行によっ

て自己の企業の経営に関する不利益が生ずるおそれがなく,かつ,他の貨物

の荷送人又は荷受人に損害が生ずるおそれがない限りにおいて,指図に従う

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義務を負う。④運送人は,荷送人に対し,指図の実行により生じた費用の補

償及び適切な報酬を請求することができる。運送人は指図の遵守を前払金の

支払にかからせることができる。

⑵ ①荷送人の処分権は物品が引渡場所に到着した後は消滅する。②この時点

より第1項に基づく処分権は荷受人が有する。③荷受人がこの権利を行使す

るときは,荷受人は運送人に対し生ずべき増加費用を補償しなければなら

ず,かつ,適切な報酬を支払わなければならない。運送人は指図の遵守を前

払金の支払にかからせることができる。

⑶ 荷受人が自己の処分権の行使により物品を第三者に引き渡すことを命じた

ときは,第三者は自ら他の荷受人を指定する権限を有するものではない。

⑷ 運送状が発行され,これに両当事者による署名がなされているときは,運

送状にその旨の記載がある限り,荷送人は運送状の荷送人複本の呈示と引換

でのみその処分権を行使することができる。

⑸ 運送人が自己に対してなされた指図を遵守しない意図を有するときは,運

送人は指図を与えた者に対して遅滞なくこれを通知しなければならない。

⑹ ①処分権の行使が運送状の呈示にかからせられているときにおいて,運送

人が運送状の荷送人複本を呈示させることなく指図を実行したときは,運送

人は権利者に対し,これにより生じた損害につき責任を負う。②この責任

は,物品の滅失の際に支払われるべき金額を限度とする。

第419条(運送障害及び引渡障害)⑴ ①物品の引受けの後,運送又は引渡し

を契約に適合して行うことができないことが認識可能となったときは,運送

人は第418条又は第446条による処分権者の指図を取得しなければならない。

②荷受人が処分権を有し,かつ,荷受人を確知できないか又は荷受人が物品

の受領を拒むときは,貨物引換証が発行されていない場合における第1文の

処分権者は荷送人とする。処分権の行使が運送状の呈示にかからせられてい

るときであっても,この場合,運送状を呈示する必要はない。③運送人は,

指図が与えられている場合で,かつ,障害が自己の危険領域に帰せられるべ

きものではない場合は,第418条第1項第4文の請求権を行使することがで

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きる。

⑵ 荷受人がその第418条による処分権に基づき物品を第三者に対して引き渡

すべき旨の指図を与えた後に,運送障害又は引渡障害が生じたときは,第1

項の適用に当たっては,荷受人が荷送人の地位となり,第三者が荷受人の地

位となる。

⑶ ①第418条第1項第3文により遵守しなければならない指図を適切な期間

内に運送人が取得できないときは,運送人は処分権者の利益において最善と

考えられる措置を講じなければならない。②例えば,運送人は物品を積卸し

して保管すること,第418条又は第446条による処分権者の計算において第三

者に保管のため預けること,又は,返送することができる。運送人が第三者

に物品を預けるときは,運送人は当該第三者の注意深い選択についてのみ責

任を負う。③運送人は,損敗しやすい商品であるか若しくは物品の状態が当

該措置を正当化する場合又は売却をしなければ物品の価値に対して不相当

な費用が生ずる場合は,第373条第2項ないし第4項に従い物品を売却させ

ることもできる。④利用不能な物品については運送人は破棄することができ

る。⑤物品の積卸しの後,運送は終了したものとみなされる。

⑷ 運送人は第3項により行った措置に基づき必要な費用の補償と適切な報酬

を求める請求権を有する。ただし,障害が運送人の危険領域に帰せられるべ

きものであるときはこの限りではない。

第420条(支払,運送賃の計算)⑴ ①運送賃は物品の引渡しに際して支払わ

れなければならない。②運送人は運送賃の他,物品に関して負担され,かつ,

事情に照らしてそれが必要であると運送人が考えることが相当であった限り

において,費用について補償を求める請求権を有する。

⑵ ①運送賃を求める請求権は,運送が不可能である限りにおいて消滅する。

②運送が運送障害又は引渡障害のために早期に終了したときは,運送人はこ

れまでなされた運送が荷送人にとって利益であるときは,これに関する割合

的な運送賃の権利を有する。

⑶ ①第2項にかかわらず,荷送人の危険領域に帰せられるべき理由,又は,

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荷送人が受領遅滞である時点において生じた理由により運送が不可能となっ

たときには,運送人は運送賃請求権を失わない。②ただし,運送人は,自己

が費用を免れ又は他の態様で取得し若しくは悪意によりその取得を怠ったと

ころのものを控除しなければならない。

⑷ 運送の開始後,引渡場所への到着前に遅延が生じ,その遅延が荷送人の危

険領域に帰せられるべき理由によるときは,運送人は,運送賃のほか,適切

な報酬を求める権利を有する。

⑸ 運送賃が物品の数,重量,又は他の表示による数量によって合意されたと

きは,運送賃の算定に関しては,運送状又は貨物引換証の記載が正しいもの

と推定する。この記載に,記載の正確性を検査するための適当な手段を用

いることができなかった旨の根拠を付した留保が記入されたときであって

も,同様である。

第421条(荷受人の権利,支払義務) ⑴ ①物品が引渡場所に到着した後にお

いて,荷受人は運送人に対し,運送契約による義務の履行と引換に物品を自

らに引き渡すべきことを請求する権利を有する。②物品が損傷し,遅延して

引渡しがなされ,又は滅失したときは,荷受人は運送契約による請求権を自

己の名で運送人に対し行使することができる。荷送人はこれらの請求権の行

使の権利を依然として有する。③この場合,荷受人又は荷送人が自己の利益

において行為するものであるか他人の利益において行為するものであるかは

違いを生じない。

⑵ ①第1項第1文による権利を行使する荷受人は,運送状から明らかとなる

金額を上限として,なお支払義務がある運送賃を支払わなければならない。

②運送状が発行されていないとき,荷受人に対し呈示されなかったとき,又

は運送状から支払うべき運送賃の額が明らかとならないときは,荷受人は荷

送人が合意した運送賃を,当該運送賃が不適切でない限りにおいて,支払わ

なければならない。

⑶ 第1項第1文による権利を行使する荷受人は,前項の他,運送機材留置料

又は第420条第4項による報酬を支払わなければならない。ただし,積込期

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間超過による運送機材留置料及び第420条第4項による報酬は,物品の引渡

しの際に荷受人に対して支払義務のある金額が告知された場合に限る。

⑷ 荷送人は,契約上支払義務のある金額につき支払義務を依然として負担す

る。

第422条(着払金) ⑴ 物品が着払金の徴収と引換にのみ荷受人に引き渡され

るべき旨を当事者が合意したときは,当該金額は現金又はこれと同等の支払

手段によって徴収しなければならないものと解さなければならない。

⑵ 徴収に基づき取得したものは,運送人の債権者に対する関係においては,

荷送人に移転されたものとみなす。

⑶ 物品が着払金を徴収することなく荷受人に引き渡されたときは,運送人

は,過失がない場合であっても,荷送人に対し,これによって生じた損害に

つき責任を負う。ただし,着払金の金額を上限とする。

第423条(引渡期間) 運送人は,合意された期間内,又は合意がない場合は注

意深い運送人が状況を考慮したときに合理的に認められるべき期間内に物品

を引き渡す義務を負う(引渡期間)。

第424条(滅失の推定)⑴ 引渡期間内に物品が引き渡されず,かつ,20日,

国境を越える運送にあっては30日を最低限とする引渡期間と同等な追加的期

間内にも物品が引き渡されなかったときは,請求権者は物品が滅失したもの

とみなすことができる。

⑵ 請求権者が物品の滅失に関する補償を受けるときは,請求権者は,その受

領に際し,物品が発見されたときは遅滞なく通知を受けることを請求するこ

とができる。

⑶ ①請求権者は,物品発見の通知の受領後1か月以内は,補償に経費が含ま

れている場合には当該経費を控除した上,補償の返還との同時履行による引

換えにより物品を自己に引き渡すことを請求することができる。②運送賃支

払義務がある場合における運送賃支払義務及び損害賠償請求権は妨げられな

い。

⑷ 物品が補償の支払後に発見されたときであって,請求権者が通知を要求し

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ていなかったか,又は,通知後に引渡請求権を行使しなかったときは,運送

人は物品を自由に処分することができる。

第425条(物品損害と遅延損害に関する責任,損害の分配)⑴ 運送人は運送

のための引受けから引渡しに至るまでの期間における物品の滅失若しくは損

傷により,又は引渡期間の超過により生じた損害に関し責任を負う。

⑵ 損害の発生に荷送人又は荷受人の行為又は物品の特別な瑕疵が作用してい

るときは,賠償義務及び給付されるべき賠償の範囲は,これらの事情が損害

にどの程度寄与したかによる。

第426条(責任の排除) 運送人は,滅失,損傷又は引渡期間の超過が,最大限

の注意を払ったとしても運送人が避けることのできない事情で,かつ,こ

れによる結果の発生を防ぐことができないような事情に基づく限りにおい

て,責任を免れる。

第427条(特別の責任排除事由)⑴ 運送人は,滅失,損傷又は引渡期間の超

過が以下の危険に帰せられるべきものである限りにおいて責任を免れる。

⒈ 合意による又は慣行に合致する,無蓋でシートを掛けていない運送機材

の使用又は甲板積み

⒉ 荷送人による不十分な包装

⒊  荷送人又は荷受人による物品の取扱,積込み,積卸し

⒋ とりわけ破損,さび,内部的損敗,乾燥,漏出,通常の目減りによって

特に損害を生じさせ易い物品の自然的性状

⒌ 荷送人による個貨物の不十分な記号

⒍ 生動物の運送

⑵ ①事案の事情に照らして第1項に挙げる危険から生じ得る損害が発生した

ときは,この危険から損害が発生したものと推定する。②この推定は,第1

項第1号の事案においては,非通例的に大きい滅失の場合には妥当しない。

⑶ 運送人は,滅失,損傷,又は引渡期間の超過が,運送人が物品の運送に関

する荷送人の特別の指図を遵守しなかったことに帰すべきものではない限り

において,第1項第1号の規定を援用することができる。

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⑷ 運送人が運送契約上,高温,低温,温度変化,湿気,振動又は類似の影響

から特に物品を保護する義務を負うときは,とりわけ特別の設備の選択,保

持及び使用に関して運送人が事情に照らして義務付けられるあらゆる措置を

講じ,特別の指図を遵守した場合に限り第1項第4号を援用することができ

る。

⑸ 運送人は,事情に照らして義務付けられるあらゆる措置を講じ,特別の指

図を遵守した場合に限り,第1項第6号を援用することができる。

第428条(他人に関する責任) ①運送人は,運送人の使用する者がその職務の

遂行において行為するときは,その作為と不作為につき,自己の作為と不作

為と同じ範囲で責任を負わなければならない。②運送の実行に当たり運送人

が用いる他の者の作為と不作為についても同様である。

第429条(価額賠償)⑴ 運送人が物品の全部又は一部の滅失に関し損害賠償

を給付しなければならないときは,運送のための引受けがなされた地と時に

おける価額を賠償しなければならない。

⑵ ①物品の損傷の場合は,運送のための引受けの地と時における損傷してい

ない物品の価額と,損傷した物品が引受けの地と時において有していたであ

ろう価額との差額を賠償しなければならない。②損害軽減と損害除去のため

に用いられた経費は,第1文により算出されるべき差額に相当するものと推

定する。

⑶ ①物品の価額は,市場価格により,さもなくば,同じ種別の同じ状態にあ

る物品の通有的価額によりこれを定める。②運送のための引受けの直前に物

品が売却されていたときは,売主の請求書に表示された購入価格からそこに

含まれる運送費用を差し引いたものが市場価格であると推定する。

第430条(損害確定経費) 物品の滅失又は損傷の場合には,運送人は第429条

に基づき支払うべき賠償の他,損害確定の経費を負担しなければならない。

第431条(最高責任限度額)⑴ 第429条及び第430条に基づき給付されるべき

滅失又は損傷を理由とする補償は,物品の粗重量1キログラム当たり8.33計

算単位の金額に制限される。

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⑵ 物品が複数の個貨物から構成されており(貨物),個別の個貨物のみが滅

失又は損傷したときは,第1項による算定は,

⒈ 貨物全体の価額が減少したときは,貨物全体を基礎とし,

⒉ 貨物の一部のみの価額が減少したときは,貨物のうち価額が減少した部

分のみを基礎としなければならない。

⑶ 引渡期間の超過による運送人の責任は,運送賃の3倍の額に限定される。

⑷ ①第1項及び第2項においてあげた計算単位は,国際通貨基金の特別引出

権をいう。②金額は,運送のための物品の引受の日又は当事者が合意した日

におけるユーロの特別引出権に対する価額に従ってユーロに換算される。③

ユーロの特別引出権に対する価額は,国際通貨基金がその業務と取引に関し

て当該日において適用する算定方法によって算出される。

第432条(その他の経費の賠償) ①滅失又は損傷により運送人が責任を負うと

きは,第429条ないし第431条により支払わなければならない賠償の他,運送

賃,公的賦課,及び,物品の運送を契機として生ずるその他の経費の支払を

しなければならない。ただし,損傷の場合においては,第429条第2項によ

り算定される価額割合においてのみ支払をしなければならない。②この他の

損害については,運送人は賠償することを要しない。

第433条(その他の財産損害における最高責任額) 運送人が物品の運送の実行

と関係する契約上の義務に対する違反に基づき,物品の滅失,損傷又は引渡

期間の超過によらない損害につき責任を負うときで,かつ,物的又は人的損

害以外の損害が問題となっているときは,この場合にも責任は限定され,物

品の滅失の際に支払われるべき金額の3倍を限度とする。

第434条(契約外の請求権)⑴ 本節及び運送契約の定める責任免除及び責任

限定は荷送人又は荷受人の運送人に対する物品の滅失,損傷又は引渡期間の

超過に基づく契約外の請求権にも適用される。

⑵ ①運送人は,物品の滅失又は損傷に基づく契約外の第三者の請求権に対し

ても第1項の抗弁を主張することができる。②ただし,以下のときには抗弁

を主張することができない。

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⒈ それが第449条第1項第1文に挙げる規定を荷送人の不利益に逸脱する

合意に基づくものであるとき。

⒉ 第三者が運送に同意しておらず,かつ,物品を発送する権限を荷送人が

欠いていたことにつき,運送人が知っており,又は重大な過失により知ら

なかったとき,又は,

⒊ 運送のための引受けの前に,第三者又は第三者に由来して物品の占有に

ついての権利を有する者が物品の占有を失っていたとき。

 ③第2文第1号は,第449条により適法な,物品の滅失又は損傷による運送

人の支払うべき補償を法律の定める金額より低い金額に限定する合意に関し

ては,この金額が2計算単位を下回らないときは,適用されない。

第435条(責任免除及び責任限定の失効) 本節及び運送契約において定める責

任免除と責任限定は,運送人又は第428条の挙げる者が,故意に,又は,無

謀にかつ蓋然性をもって損害が発生することを認識しつつ行った作為又は不

作為に損害が帰せられるべきものであるときは適用されない。

第436条(運送人が使用する者の責任) ①物品の滅失,損傷又は引渡期間の超

過に基づく契約外の責任による請求が運送人の使用する者に対してなされた

ときは,その者も本節及び運送契約の定める責任免除及び責任限定を援用す

ることができる。②その者が故意に,又は,無謀にかつ蓋然性をもって損害

が発生することを認識しつつ行為したときはこの限りではない。

第437条(実行運送人)⑴ ①運送の全部又は一部が第三者により実行される

ときは(実行運送人),この者は物品の滅失,損傷又は引渡期間の超過によ

り自己が実行する運送の間に発生した損害に関して,運送人であるのと同一

の責任を負う。②運送人が荷送人又は荷受人との間で行った,自己の責任を

拡張する旨の契約上の合意は,実行運送人が書面によりこれに同意した限り

においてのみ,実行運送人に対して効力を有する。

⑵ 実行運送人は運送人が運送契約に基づき有するあらゆる抗弁を主張するこ

とができる。

⑶ 運送人と実行運送人は連帯債務者として責任を負う。

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⑷ 実行運送人の使用する者に対して請求がなされるときは,第436条がこの

者に関して準用される。

第438条(損害の通知)⑴ ①物品の滅失又は損傷が外見上認識可能であり,

荷受人又は荷送人が運送人に対して滅失又は損傷を遅くとも物品の引渡に際

して通知しなかったときは,物品は完全かつ損傷なしに引き渡されたものと

推定する。②通知は滅失又は損傷を十分明確に示すものでなければならな

い。

⑵ 第1項による推定は,滅失又は損傷が外見上認識可能でなく,かつ,引渡

後7日以内に通知されなかった場合にも適用される。

⑶ 引渡期間の超過に基づく請求権は,荷受人が運送人に対して引渡期間の超

過を引渡後21日以内に通知しなかった場合は,消滅する。

⑷ ①引渡後になされる損害の通知はテキスト形式でなされなければならな

い。②期間の遵守のためには,適時に発信することで足りる。

⑸ 滅失,損傷又は引渡期間の超過が引渡しに際して通知されるときは,物品

を引き渡す者に対して通知をなすことで足りる。

第439条(消滅時効)⑴ ①本節の規定が適用される運送から生ずる請求権は,

1年で時効により消滅する。②故意又は第435条に基づき故意と同視される

過失の場合には,消滅時効期間は3年とする。

⑵ ①消滅時効は,物品が引き渡された日の経過により開始する。②物品が引

き渡されなかったときは,消滅時効は物品が引き渡されなければならなかっ

た日の経過により進行する。③第1文及び第2文にかかわらず,求償権の消

滅時効は,求償権者に対する判決の確定した日又は確定判決が存在しないと

きは,求償権者が請求権につき弁済した日から進行する。ただし,求償権者

が損害及び求償義務者を知った後3か月以内に求償義務者がこの損害につき

知らされなかったときは,この限りではない。

⑶ ①運送人に対する請求権の消滅時効は,荷送人又は荷受人の当該賠償請求

権を行使する旨の表示によっても,運送人が請求権の履行を拒絶する時点ま

で停止する。②請求権の行使及び拒絶はテキスト形式を必要とする。③同一

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の賠償請求権を対象とする再度の表示は消滅時効を改めて停止することはな

い。

⑷ 物品の滅失,損傷又は引渡期間の超過に基づく損害賠償請求権の消滅時効

は,同一の契約当事者間における複数の同種の契約に関して合意がなされる

場合であっても,個別に商議された合意によってのみ軽減又は加重されるこ

とができる。

第440条(運送人の質権)⑴ ①運送人は運送契約から生ずる全ての債権に関

し,運送のために運送人に引き渡された荷送人又は運送に同意した第三者の

物品に対し質権を有する。②荷送人の物品に対しては,運送人は,荷送人と

締結した他の運送契約,海上物品運送契約,運送取扱契約及び倉庫契約に基

づく争いのない全ての債権に関しても質権を有する。③第1文及び第2文に

よる質権は添付書類に対しても及ぶ。

⑵ 運送人が物品を自己の占有におく限り,とりわけ,船荷証券,貨物引換証

又は倉庫証券により物品を処分できる限りは,質権は存続する。

⑶ 運送人が引渡後3日以内に質権を裁判上行使し,かつ,物品が荷受人の占

有下にある場合は,質権は引渡後も存続する。

⑷ ①民法典第1234条第1項に示される質物売却の通告及び民法典第1237条な

いし第1241条の定める通知は,第418条又は第446条により処分権限を有する

荷受人に対してなされなければならない。②当該荷受人を確知できず,又は

当該荷受人が物品の受取りを拒むときは,通告及び通知は荷送人に対してし

なければならない。

第441条(後続運送人)⑴ ①複数の運送人による運送の場合において,最後

の運送人が引渡しに当たり,先行の運送人の債権を徴収すべきときは,最後

の運送人は先行の運送人の権利,とりわけ,質権も行使しなければならな

い。②先行するそれぞれの運送人の質権は,最後の運送人の質権が存続する

限り存続する。

⑵ 先行の運送人が後続の運送人により弁済を受けたときは,先行の運送人の

債権と質権は後続の運送人に移転する。

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⑶ 第1項及び第2項は,運送に関わった運送取扱人の債権と権利に関しても

適用される。

第442条(複数の質権の順序)⑴ 同一の物品に対して,第397条,第440条,

第464条,第475b条及び第495条により基礎づけられる複数の質権が存在する

ときは,物品の運送取扱い又は運送により生じた質権のうち,より後に生じ

た質権が先に生じた質権に優先する。

⑵ 前項の質権は,運送取扱いによって生じたものではない問屋及び倉庫営業

者の質権,並びに,前払金に関する運送取扱人,運送人,及び海上物品運送

人の質権に対して優先する。

第443条(貨物引換証,命令への授権)⑴ ①物品の引渡義務に関して,運送

人は第408条第1項に挙げる事項が含まれるべき貨物引換証を発行すること

ができる。②貨物引換証は運送人により署名されなければならない。署名は

直筆の署名の印刷又は印章による複製で足りる。

⑵ ①貨物引換証が指図式で作成されるときは,物品の引渡しを受けるべき者

を指図する者の名称を含むべきものとする。②名称が記載されないときは,

貨物引換証は荷送人を指図人とするものとして作成されたものとみなさなけ

ればならない。

⑶ ①貨物引換証と同じ機能を果たす電子記録は,記録の信頼性と完全性が保

持されることが保障される限りにおいて,貨物引換証と同視される(電子貨

物引換証)。②連邦司法・消費者保護省は,連邦内務省との合意の下に連邦

参議院の同意が不要な法規命令により,電子貨物引換証の発行,呈示,返還,

及び譲渡に関する個別的事項並びに電子貨物引換証への事後的な記入の手続

に関する個別的事項を規律する権限を有する。

第444条(貨物引換証の効力,正当な所持人)⑴ 貨物引換証は運送人が物品

を貨物引換証に記載されたとおりに引き受けたことの推定を基礎づける。第

409条第2項及び第3項第1文が準用される。

⑵ ①貨物引換証に記載された荷受人で貨物引換証の交付を受けた者に対し

て,運送人は第1項の推定に対する反証をすることはできない。ただし,貨

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物引換証の記載が不正確であることにつき,貨物引換証発行の時点において

荷受人が知っており,又は重大な過失により知らなかったときはこの限りで

はない。②貨物引換証の譲渡を受けた第三者に対しても同様である。③第1

文及び第2文は,貨物引換証による権利者が第437条により実行運送人に対

して請求をしており,貨物引換証が実行運送人又は実行運送人のために貨物

引換証に署名する権限を有する者によって発行されたものでない場合は適用

されない。

⑶ ①貨物引換証において証券化された運送契約上の請求権は貨物引換証によ

る権利者のみがこれを行使することができる。②貨物引換証の正当な所持人

のために,当該所持人が貨物引換証による権利者であると推定される。③貨

物引換証の正当な所持人とは,

⒈ 無記名式の貨物引換証

⒉ 指図式であり,荷受人として所持人を指定するか,又は連続する裏書に

より所持人が荷受人であることを証明する貨物引換証,又は,

⒊ 所持人の名称による記名式の貨物引換証

 を所持する者をいう。

第445条(貨物引換証の返還と引換えにする引渡し)⑴ ①物品が引渡場所に

到着した後は,貨物引換証の正当な所持人は,運送人に対して物品の引渡し

を請求する権利を有する。②貨物引換証の正当な所持人がこの権利を行使す

るときは,第421条第2項及び第3項に準じ,運送賃及びその他の報酬を支

払う義務を負う。

⑵ ①運送人は,引渡しを証明する記載のある貨物引換証の返還及び第421条

第2項及び第3項により支払義務を負う未払金の支払と引換えにのみ物品を

引き渡す義務を負う。②ただし,運送人は,貨物引換証の正当な所持人が貨

物引換証による権利者でないことを知り,又は重大な過失により知らなかっ

た場合は,物品を貨物引換証の正当な所持人に引き渡すことはできない。

⑶ ①運送人が,貨物引換証の正当な所持人以外の者,又は第2項第2文の場

合において貨物引換証による権利者以外の者に物品を引き渡したときは,

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運送人は,これにより貨物引換証による権利者に生じた損害につき責任を負

う。②責任は物品の滅失の場合に支払われるべき金額に限定される。

第446条(指図の遵守)⑴ ①第418条及び第419条による処分権は,貨物引換

証が発行されている場合は,貨物引換証の正当な所持人にのみ帰属する。②

運送人は貨物引換証の呈示がなされた場合に限り指図を実行することができ

る。③ただし,貨物引換証の正当な所持人が貨物引換証による権利者ではな

いことを知り,又は重大な過失により知らなかった場合は,運送人は貨物引

換証の正当な所持人の指図を実行することができない。

⑵ ①貨物引換証を呈示させることなく運送人が指図を遵守したときは,運送

人は,貨物引換証による権利者に対し,これによって生じた損害につき責任

を負う。②責任は,物品の滅失の場合に支払われるべき金額に限定される。

第447条(抗弁)⑴ ①貨物引換証による権利者に対しては,運送人は,貨物

引換証においてなされた表示の有効性に関する抗弁若しくは貨物引換証の内

容から生ずる抗弁,又は貨物引換証による権利者に対し直接に運送人が有す

る抗弁のみを対抗することができる。②貨物引換証中に単に指示されている

に過ぎない合意は貨物引換証の内容に当たらない。

⑵ 実行運送人が貨物引換証による権利者から第437条による請求を受けると

きは,実行運送人も第1項による抗弁を主張することができる。

第448条(貨物引換証の移転的効力) ①貨物引換証に記載された荷受人に対

する貨物引換証の交付は,運送人が物品を占有する限りにおいて,物品に対

する権利の取得に関して物品の引渡しと同じ効力を有する。②第三者に対す

る貨物引換証の譲渡に関しても同様である。 

第449条(責任に関する逸脱的合意)⑴ ①運送契約が信書又は信書類似の貨

物の運送を対象としない限りにおいて,第413条第2項,第414条,第418条

第6項,第422条第3項,第425条ないし第438条,第445条第3項及び第446

条第2項は,同一の契約当事者間における複数の同種の契約に関して合意が

なされる場合であっても,個別に商議された合意によってのみ逸脱すること

ができる。②ただし,運送人は,貨物引換証による権利者に不利益な形で第

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1項に挙げる規定から逸脱する貨物引換証中の規定を,貨物引換証の交付を

受けた貨物引換証に記載された荷受人及び貨物引換証の譲渡を受けた第三者

に対しては援用することができない。

⑵ ①第1項にかかわらず,物品の滅失又は損傷により運送人が支払うべき補

償は,事前に定式化された契約条項によっても,第431条第1項及び第2項

の定める金額以外の金額に限定することが,

⒈ 当該金額が2計算単位から40計算単位までであり,事前に定式化された

契約条項の使用者が,当該条項が法律の定める金額以外の金額を定めるも

のであることにつき,適切な方法で契約相手に対して指摘する場合,又は,

⒉ 当該金額が事前に定式化された契約条項の使用者にとって第431条第1

項及び第2項の定める金額より不利益である場合は,

 できる。②この他,第1項にかかわらず,事前に定式化された契約条項によ

り荷送人が第414条に基づき支払わなければならない補償をその額につき限

定することができる。

⑶ 荷送人が消費者であるときは,第1項第1文に挙げた規定を荷送人に不利

益な形で逸脱することはできない。ただし,運送契約が信書又は信書類似の

貨物の運送を対象とするときはこの限りではない。

⑷ 運送契約が外国法の適用を受けるときであっても,契約によれば物品の引

受けの地及び引渡しの地が国内にあるときは,第1項ないし第3項が適用さ

れなければならない。

第450条(海上物品運送に関する法の適用) 運送契約が内水及び海上の双方

における積換えを伴わない物品の運送を対象とするときは,

 ⒈ 船荷証券が発行されている場合,又は,

 ⒉ 海上における運送路がより長い場合

 には,海上物品運送に関する法が当該契約に適用されなければならない。

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第2節 引越物品の運送

第451条(引越契約) 運送契約が引越物品の運送を対象とするときは,以

下の特別規定又は適用されるべき国際条約が異なることを定めていない限

り,第1節の規定が当該契約に適用されなければならない。

第451a条(運送人の義務)⑴ 運送人の義務は,家具の分解及び組立て並び

に引越物品の積込み及び積卸しをも含む。

⑵ 荷送人が消費者であるときは,運送人の義務には,前項のほか,引越物品

の包装及び記号の付与のような引越に関連するその他の給付の実行も含まれ

る。

第451b条(運送状,危険な物品,添付書類,報告・情報提供義務)⑴ 第408

条にかかわらず,荷送人は運送状を発行する義務を負わない。

⑵ ①引越物品に危険な物品が含まれており,かつ,荷送人が消費者であると

きは,荷送人は第410条の規定にかかわらず,運送人に対し物品から生ずる

危険を一般的に教示する義務のみを負う。教示は方式を必要としない。②運

送人は,荷送人に対し,第1文による荷送人の義務につき教示しなければな

らない。

⑶ ①運送人は,荷送人が消費者であるときは,荷送人に対し,遵守すべき税

関規定及びその他の行政規定に関し教示しなければならない。②運送人は,

荷送人が提供した書類及びその付与した情報が正確かつ完全であることを検

査する義務を負わない。

第451c条(削除)

第451d条(特別の責任排除事由)⑴ 第427条にかかわらず,運送人は,滅失

又は損傷が以下の危険のいずれかに帰せられるべき限りにおいて,その責任

を免れる。

⒈ 貴金属,宝飾品,貴石,通貨,郵便切手,硬貨,有価証券,証書の運送

⒉ 荷送人による不十分な包装又は記号

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⒊ 荷送人による物品の取扱,積込み,積卸し

⒋ 運送人が包装したものではない物品の容器による運送

⒌ 運送人が荷送人に対して事前に破損の危険を指摘した上で,荷送人が給

付の実行に固執した限りにおける,積込み場所又は積卸し場所のスペース

の状況に相応しない大きさ又は重量の物品の積込み又は積卸し

⒍ 生動物又は植物の運送

⒎ とりわけ破損,故障,さび,内的損敗又は漏出によって特に損害を生じ

易い,物品の自然的又は瑕疵ある性状

⑵ 事案の事情に照らして第1項で挙げた危険から生じ得る損害が発生したと

きは,損害はこの危険から発生したものと推定する。

⑶ 運送人は,事情に照らして義務を負う全ての措置を講じ,特別の指図を遵

守したときにのみ,第1項を援用することができる。

第451e条(最高責任額) 第431条第1項及び第2項にかかわらず,滅失又は

損傷を理由とする運送人の責任は契約の履行に必要な貨物室の1立方メート

ルにつき620ユーロの額に限定される。

第451f条(損害の通知) 第438条第1項及び第2項にかかわらず,物品の滅失

又は損傷による請求権は,

⒈ 物品の滅失又は損傷が外見上認識可能であり,運送人に対し遅くとも引

渡しに次ぐ日に通知がなされなかった場合

⒉ 滅失又は損傷が外見上認識可能でなく,引渡し後14日以内に通知がなさ

れなかった場合

 には消滅する。

第451g条(責任免除及び責任限定の失効) ①荷送人が消費者であるときは,

運送人又は第428条に挙げる者は,

⒈ 運送人が荷送人に対し契約の締結に際し責任規定を教示すること,及

び,責任を拡張する合意すること又は物品を保険に付することについての

可能性を指摘することを怠った限りにおいて,第451d条及び第451e条並び

に第1章の定める責任免除及び責任限定を援用することができない。

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⒉ 運送人が,荷送人に対して遅くとも物品の引渡しに際し損害の通知の形

式及び期間並びに損害の通知をしなかったときの法的結果について教示す

ることを怠った限りにおいて,第438条と結びついた451f条を援用するこ

とができない。

②第1文第1号による教示は印刷技術上明瞭な様式で特別に強調されなけれ

ばならない。

第451h条(逸脱的合意)⑴ 荷送人が消費者であるときは,運送人及び荷送

人の責任を規律する本節の規定並びにこれにより引越契約に適用されるべき

第1節の規定は,荷送人の不利益において逸脱することができない。

⑵ ①第1項に挙げる事案以外の全ての事案において,第1項で挙げた規定

は,同一の契約当事者間における複数の同種の契約に関して合意がなされる

場合であっても,個別に商議された合意によってのみ逸脱することができ

る。②ただし,物品の滅失又は損傷に基づいて運送人が支払うべき補償につ

いては,事前に定式化された契約条項の使用者が自己の契約相手に対して,

当該条項が法律の定める金額以外の金額を定めるものであることにつき,適

切な方法で指摘する場合は,第451e条において定める金額以外にこれを限定

することができる。③この他,事前に定式化された契約条項によって,荷送

人が第414条に基づき支払うべき補償をその額につき限定することができる。

⑶ 引越契約が外国法の適用を受けるときであっても,契約上,物品の引受け

の地及び引渡しの地が国内にあるときは,第1項及び第2項が適用されなけ

ればならない。

第3節 異なる種類の運送手段による運送

第452条(異なる種類の運送手段による運送に関する運送契約) ①物品の運送

が統一的な運送契約に基づき異なる種類の運送手段によって実施されるとき

で,もし1個の運送手段によってなされる運送の各部分(部分区間)につき

契約当事者間で別個の契約が締結されたならば,これらの契約の少なくとも

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2つが異なる法規定の適用を受けるであろう場合は,当該契約には,以下の

特別規定又は適用されるべき国際条約が異なる定めをおかない限りにおい

て,第1節の規定が適用されなければならない。②運送のある部分が海上で

実施されるときも同様である。

第452a条(既知の損害地) ①滅失,損傷又は引渡期間の超過を導いた事象が

特定の部分区間において発生したことが確定しているときは,運送人の責任

は,第1節の規定にかかわらず,当該部分区間における運送に関する契約に

適用されるべき法的規定によって決定される。②滅失,損傷又は引渡期間

の超過を導いた事象が特定の部分区間において発生したことに関する証明

は,これを主張する者がその責任を負う。

第452b条(損害の通知,消滅時効)⑴ ①第438条は,損害地が不明であるか

既知であるか,又は後に既知となったかにかかわらず適用されなければなら

ない。②最後の部分区間における運送に関する契約に適用されるべき規定が

遵守されるときは,損害の通知に関して定められた方式と期間の遵守もある

ものとする。

⑵ ①滅失,損傷又は引渡期間の超過による請求権の消滅時効の開始は,引渡

しの時点を基準とすべき場合には,荷受人に対する引渡しの時点によって決

定される。②損害地が既知である場合においても,請求権は,第439条に従

うときより早い時点で時効により消滅することはない。

第452c条(異なる種類の運送手段による運送に関する引越契約) ①運送契約

が異なる種類の運送手段による引越物品の運送を対象とするときは,第2節

の規定が適用されなければならない。②損害が発生した部分区間に関しド

イツ連邦共和国が拘束される国際条約の規定が適用される限りにおいての

み,第452a条が適用されなければならない。

第452d条(逸脱的合意)⑴ ①第452b条第2項第1文の規律は,同一の契約

当事者間における複数の同種の契約に関して合意がなされる場合であって

も,個別に商議された合意によってのみ逸脱することができる。②本節のそ

の他の規律は,そこで引用される規定が逸脱的合意を適法とする限りにおい

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てのみ,契約上の合意により逸脱することができる。

⑵ 第1項にかかわらず,事前に定式化された契約条項によっても,損害地が

既知の場合における責任について(第452a条),

⒈ どの部分区間で損害が発生するかにかかわらず,又は,

⒉ 合意中に挙げられた部分区間における損害発生の場合に関して,

第1節の規定によりこれを定める旨の合意をすることができる。

⑶ ドイツ連邦共和国を拘束する国際条約の,ある部分区間に強行的に適用さ

れる規定の適用を排除する合意は,無効である。

第5章 運送取扱営業

第453条(運送取扱契約)⑴ 運送取扱契約により運送取扱人は物品の発送を

処理する義務を負う。

⑵ 発送委託者は,合意された報酬を支払う義務を負う。

⑶ ①本章の規定は,発送の処理が営業的企業の経営に属するときに限り適用

される。②企業がその性質と範囲に照らして商人的な方法で調整された経営

組織を必要とせず,かつ,企業の商号が第2条により商業登記簿に登記され

ていないときでも,運送取扱営業に関しては,第4章第1節の規定がその限

りにおいて補充的に適用されなければならない。ただし,第348条ないし第

350条に関してはこの限りではない。

第454条(発送の処理)⑴ 発送を処理すべき義務には,運送の手配,とりわけ,

⒈ 運送手段及び運送経路の決定

⒉ 実行企業者の選択,発送に必要な運送契約,倉庫契約及び運送取扱契約

の締結,並びに実行企業者に対する情報の提供及び指図

⒊ 発送委託者の損害賠償請求権の保全

が含まれる。

⑵ ①前項のほか,運送取扱人の義務には,物品の付保及び包装,物品に対す

る記号の付与並びに税関取扱のような運送に関連するその他の合意された給

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付も含まれる。②運送取扱人は,合意からこのことが明らかとなる場合に

は,上記の給付の調達に必要な契約を締結する債務のみを負う。

⑶ 運送取扱人は,自己の名で,又はこれにつき授権のある限りでは委託者の

名で必要な契約を締結する。

⑷ 運送取扱人は,自己の義務の履行に際しては,発送委託者の利益を守り,

かつ,その指図を遵守しなければならない。

第455条(物品の取扱,添付書類,報告義務・情報提供義務)⑴ ①発送委託

者は,物品を,必要な限りで,包装すること,記号を付すること,並びに,

運送取扱人が自己の義務を履行するのに必要な書類を利用可能とすること及

びそのために必要な全ての情報を与えることの義務を負う。②危険な物品が

発送されるべきときは,発送委託者は,運送取扱人に対し,適時にテキスト

形式で危険の正確な種別,及び,必要な限りで,講ずべき危険防止措置につ

いて告知しなければならない。

⑵ ①発送委託者は,自己に過失がないときでも,運送取扱人に対して,

⒈ 不十分な包装又は記号

⒉ 物品の危険性に関する告知をしなかったこと,又は,

⒊ 官公庁による物品の取扱に必要な書類又は情報の欠如,不完全,不正確

に起因する損害及び費用を賠償しなければならない。

 ②第414条第2項が準用されなければならない。

⑶ 発送委託者が消費者であるときは,当該消費者に過失がある限りにおいて

のみ,第2項による損害及び費用を運送取扱人に対して賠償しなければなら

ない。

第456条(報酬の履行期) 報酬は,物品が運送人又は海上運送人に引き渡され

た場合に支払わなければならない。

第457条(発送委託者の債権) ①発送委託者は運送取扱人が発送委託者の計算

において自己の名で締結した契約による債権については,譲渡を受けた後に

初めてこれを行使することができる。②そのような債権及びそのような債権

の履行により取得されたものは,運送取扱人の債権者との関係においては,

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発送委託者に移転されたものとみなす。

第458条(介入) ①運送取扱人は,物品の運送を介入により実行する権限を有

する。②この権限を運送取扱人が行使するときは,運送取扱人は運送に関し

て運送人又は海上運送人の権利及び義務を有する。③この場合において,運

送取扱人は運送取扱人としての活動に関する報酬のほか,通常の運送賃を請

求することができる。

第459条(固定経費による運送取扱) ①報酬として運送に関する経費を含む

一定の額が合意された限りで,運送取扱人は運送に関して運送人又は海上運

送人の権利及び義務を有する。②この場合において,運送取扱人は,それが

通例である限りにおいてのみ,自己の費用の賠償を求める請求権を有する。

第460条(混合積荷)⑴ 運送取扱人は,自己の計算において混合積荷に関し

て締結した運送契約に基づき,他の発送委託者の物品と共にする物品の発送

を行う権限を有する。

⑵ ①運送取扱人がこの権限を行使するときは,運送取扱人は混合積荷による

運送に関し,運送人又は海上運送人の権利及び義務を有する。②この場合

において,運送取扱人は,事情に照らして適切な報酬を請求することができ

る。ただし,個々の物品の運送に関する通常の運送賃を上限とする。

第461条(運送取扱人の責任) ⑴ ①運送取扱人は,自己の管理下にある物品

の滅失又は損傷により生じた損害に関し責任を負う。②第426条,第427条,

第429条,第430条,第431条第1項,第2項,第4項,第432条及び第434条

ないし第436条は,準用されなければならない。

⑵ ①運送取扱人の管理下にある物品の滅失又は損傷によって生じたものでは

ない損害に関しては,運送取扱人が第454条により課せられる義務に違反し

た場合に運送取扱人は責任を負う。②この損害が通常の商人の注意によって

回避できなかったものであるときは,運送取扱人は責任を免れる。

⑶ ①損害の発生に発送委託者の行為又は物品の特別の瑕疵が関与したとき

は,賠償の義務及び支払われるべき賠償の範囲は,これらの事情が損害にど

の程度寄与したかによる。

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第462条(他の者の行為に関する責任) ①運送取扱人は,運送取扱人の使用

する者がその職務遂行において行為するときは,その作為と不作為につき,

自己の作為と不作為と同じ範囲で責任を負わなければならない。②発送を処

理すべき義務の履行に当たり,運送取扱人が用いる他の者の作為と不作為に

ついても同様である。

第463条(消滅時効) 本章の規定の適用を受ける給付による請求権の消滅時

効については,第439条が準用されなければならない。

第464条(運送取扱人の質権) ①運送取扱人は,運送取扱いによる全ての債

権につき,発送のために引き渡された,発送委託者又は物品の発送に同意し

た第三者の物品に対し質権を有する。②発送委託者の物品に対しては,運送

取扱人は,発送委託者と締結した他の運送取扱契約,運送契約,海上物品運

送契約及び倉庫契約に基づく争いのない全ての債権に関しても質権を有す

る。③第440条第1項第3文及び第2項ないし第4項は準用されなければな

らない。

第465条(後続の運送取扱人)⑴ 運送人の他,運送取扱人も運送に関与し,

当該運送取扱人が引渡しをなすべきときは,当該運送取扱人に第441条第1

項が準用されなければならない。

⑵ 先行の運送人又は運送取扱人が後続の運送取扱人により弁済を受けたとき

は,前者の債権と質権は後者に移転する。

第466条(責任に関する逸脱的合意)⑴ 運送取扱契約が信書又は信書類似の

貨物の運送を対象としない限りにおいて,第455条第2項及び第3項,第461

条第1項,並びに第462条及び第463条における責任規定は,同一の契約当事

者間における複数の同種の契約に関して合意がなされる場合であっても,個

別に商議された合意によってのみ逸脱することができる。

⑵ ①第1項にかかわらず,物品の滅失又は損傷により運送取扱人が支払うべ

き補償は,事前に定式化された契約条項によっても,次の場合には,第431

条第1項及び第2項の定める金額以外の金額に限定することができる。

⒈ この金額が2計算単位から40計算単位までであり,事前に定式化された

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契約条項の使用者が,当該条項が法律の定める金額以外の金額を定めるも

のであることにつき,適切な方法で契約相手に対して指摘する場合,又は,

⒉ この金額が事前に定式化された契約条項の使用者にとって第431条第1

項及び第2項の定める金額より不利益である場合

②この他,事前に定式化された契約条項により発送委託者が第455条第2項

又は第3項に基づき支払わなければならない補償をその額につき限定するこ

とができる。

⑶ 第458条第2文,第459条第1文及び第460条第2項第1文は,そこで引用

される規定が逸脱的合意を適法とする限りにおいてのみ,契約上の合意によ

り逸脱することができる。

⑷ 発送委託者が消費者であるときは,第1項第1文に挙げた規定を発送委託

者に不利益な形で逸脱することはできない。ただし,運送契約が信書又は信

書類似の貨物の運送を対象とするときはこの限りではない。

⑸ 運送取扱契約が外国法の適用を受けるときであっても,契約によれば物品

の引受けの地及び引渡しの地が国内にあるときは,第1項ないし第4項が適

用されなければならない。

第6章 倉庫営業

第467条(倉庫営業)⑴ 倉庫契約により倉庫営業者は,物品を蔵置し,かつ,

保管する義務を負う。

⑵ 寄託者は,合意された報酬を支払う義務を負う。

⑶ ①本章の規定は,蔵置及び保管が営業的企業の経営に属するときに限り適

用される。②企業が性質と程度に照らして商人的な方法で調整された経営組

織を必要とせず,かつ,企業の商号が第2条により商業登記簿に登記されて

いないときでも,倉庫営業に関しては,第4編第1章の規定がその限りにお

いて補充的に適用されなければならない。ただし,第348条ないし第350条に

ついてはこの限りではない。

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第468条(物品の取扱,添付書類,報告・情報提供義務)⑴ ①寄託者は,倉

庫営業者に対して,危険な物品が寄託されるべきときは,適時にテキスト形

式で危険の正確な種別と,必要な限りにおいて,講ずべき危険防止措置につ

き告知しなければならない。②このほか,寄託者は,物品を,必要な限りで,

包装,記号の付与,並びに,倉庫営業者が自己の義務を履行するのに必要な

文書及びあらゆる情報の提供を行わなければならない。

⑵ ①寄託者が消費者であるときは,第1項にかかわらず,

⒈ 倉庫営業者は,物品を,必要な限りで,包装し,記号を付与する義務を

負い,

⒉ 寄託者は,物品に由来する危険を一般的に教示する義務のみを負う。

教示は方式を必要としない。

 ②倉庫営業者はこの場合第1文第2号に基づく寄託者の義務について,及

び,物品の公的取り扱いに関する寄託者が遵守すべき行政規定について教示

しなければならない。

⑶ ①寄託者は,過失がないときであっても,

⒈ 不十分な包装又は記号

⒉ 物品の危険性に関する告知の不履行

⒊ 第413条第1項に挙げた書面又は情報の欠如,不完全,不正確

 によって惹起された損害と費用について倉庫営業者に賠償しなければならな

い。

 ②第414条第2項が準用されなければならない。

⑷ 寄託者が消費者であるときは,過失がある限りにおいて,倉庫営業者に対

して損害と費用につき第3項に基づき賠償しなければならない。

第469条(混合寄託) ⑴ 倉庫営業者は,関係する寄託者が明示的に了承する

ときに限り,代替物を同一の種別と品質の他の物と混合する権限を有する。

⑵ 物品を混合する権限を倉庫営業者が有するときは,入庫の時点から,入庫

物の所有者に共有権が帰属する。 

⑶ 倉庫営業者は,他の関係者の承認を必要とすることなく,寄託者に対しそ

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の者に帰する部分を引き渡すことができる。

第470条(物品の受領) 倉庫営業者に送付された物品が受領の際に,損傷した

状態又は瑕疵ある状態でありそれが外見上認識可能なときは,倉庫営業者は

寄託者の損害賠償請求権を保全し,かつ,寄託者に対し遅滞なく通知をしな

ければならない。

第471条(物品の保持)⑴ ①倉庫営業者は,寄託者に対し,物品の点検,見

本の摘出及び物品の保持に必要な行為を営業時間内において許さなければな

らない。②倉庫営業者は,物品の保持のために必要な作業を自ら行う権限を

有し,混合寄託の場合にあっては,その義務も負う。

⑵ ①受領後に,物品の滅失,損傷又は倉庫営業者の損害を予期させるような

変更が物品に生じ,又はそのような変更のおそれがあるときは,倉庫営業者

は,寄託者,又は,倉庫証券が発行されているときは,倉庫営業者の知ると

ころとなった証券の正当な最終の所持人に対して,これを遅滞なく通知し,

その指図を求めなければならない。②倉庫営業者が適切な期間内に指図を得

ることができないときは,倉庫営業者は適切と思われる措置を講じなければ

ならない。③倉庫営業者は,とりわけ物品を第373条に従って売却させるこ

とができる。 倉庫営業者がこの権限を行使したときは,倉庫営業者は,倉

庫証券が発行されているときは,第373条第3項の定める売却の通告及び同

条第5項の定める通知を,倉庫営業者の知るところとなった証券の正当な最

終の所持人に対して行わなければならない。

第472条(保険,第三者方への寄託)⑴ ①倉庫営業者は,物品を寄託者の請

求により保険に付する義務を負う。②寄託者が消費者であるときは,倉庫営

業者はこの者に対して物品を保険に付する可能性について指摘しなければな

らない。

⑵ 倉庫営業者は,寄託者がこれを明示的に許したときに限り,物品を第三者

方に入庫する権限を有する。

第473条(倉庫保管の存続期間)⑴ ①寄託者はいつでも物品の出庫を求める

ことができる。②期間の定めのない倉庫契約が締結されているときは,寄託

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者は1か月の解約告知期間を遵守した場合に限り契約を解除することができ

る。ただし,解約告知期間を遵守せずに契約を解除する権限が生ずるような

重大な理由が存在するときはこの限りではない。

⑵ ①倉庫営業者は合意された倉庫期間の経過後又は期間の定めのない寄託に

あっては1か月の解約告知期間を遵守してなされる契約解除の後に物品の引

取りを請求することができる。②重大な理由が存在するときは,倉庫営業者

は倉庫期間の経過前において,解約告知期間を遵守せずに物品の引取りを請

求することができる。

⑶ 倉庫証券が発行されているときは,解除と引取請求は,倉庫営業者の知る

ところとなった証券の正当な最終の所持人に対して行わなければならない。

第474条(費用の補償) 倉庫営業者は,物品のために支出された費用について

は,事情に鑑み,それが必要であると倉庫営業者が考えることが相当である

限りにおいて,補償を求める請求権を有する。

第475条(滅失又は損傷に関する責任) ①倉庫営業者は,倉庫での蔵置のため

の引受けから引渡しまでの期間における物品の滅失又は損傷により生じた損

害につき責任を負う。ただし,損害が通常の商人の注意によって回避できな

かったものであるときは,この限りではない。②倉庫営業者が第472条第2

項に従って物品を第三者方に入庫したときも同じである。

第475a条(消滅時効) ①本章の規定が適用される蔵置から生ずる請求権の消

滅時効については,第439条が準用される。②全部滅失の場合においては,

倉庫営業者が寄託者に対して,又は倉庫証券が発行されているときにおいて

は倉庫営業者の知るところとなった証券の正当な最終の所持人に対して,滅

失を通知した日が経過することによって消滅時効は進行する。

第475b条(倉庫営業者の質権)⑴ ①倉庫営業者は倉庫契約から生ずる全て

の債権に関し蔵置のために倉庫営業者に引き渡された,寄託者又は蔵置に同

意した第三者の物品に対し質権を有する。②寄託者の物品に対しては,倉庫

営業者は,寄託者と締結した他の倉庫契約,運送契約,海上物品運送契約及

び運送取扱契約に基づく争いのない全ての債権に関しても質権を有する。③

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質権は保険に基づく債権及び添付書類に対しても及ぶ。

⑵ ①指図式倉庫証券が裏書により譲渡されたときは,倉庫証券の正当な所持

人に対しては,倉庫証券から明らかな報酬及び費用,又は,所持人が倉庫証

券の取得の際に知り若しくは重大な過失により知らなかった報酬及び費用に

基づく質権のみが存在する。

⑶ 倉庫営業者が物品を自己の占有におく限りにおいて,とりわけ,船荷証

券,貨物引換証,又は倉庫証券により物品を処分できる限りにおいて,質権

は存続する。

第475c条(倉庫証券,命令への授権)⑴ 物品の引渡義務に関して,倉庫営

業者が物品を受領した後は,倉庫営業者によって倉庫証券が発行されること

ができる。倉庫証券は以下の事項を含むべきものとする。

⒈ 倉庫証券発行の地及び日

⒉ 寄託者の名称及び住所

⒊ 倉庫営業者の名称及び住所

⒋ 入庫の地及び日

⒌ 物品の種別の通例的呼称及び包装の種別,危険な物品の場合には危険物

規定の定める呼称,これがないときは一般に認められた呼称

⒍ 個寄託物の総数,記号,及び番号

⒎ 物品の粗重量又は他の方法により表示される数量

⒏ 混合寄託の場合にはこれに関する文句

⑵ 倉庫証券には倉庫営業者が適切であると考える他の事項を記載することが

できる。

⑶ ①倉庫証券は倉庫営業者により署名されなければならない。②署名は直筆

の署名の印刷又は印章による複製で足りる。

⑷ ①倉庫証券と同じ機能を果たす電子記録は,記録の信頼性と完全性が保持

されることが保障される限りにおいて,倉庫証券と同視される(電子倉庫証

券)。②連邦司法・消費者保護省は,連邦内務省との合意の下に連邦参議院

の同意が不要な法規命令により,電子倉庫証券の発行,呈示,返還及び譲渡

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に関する個別的事項並びに電子倉庫証券への事後的な記入の手続に関する個

別的事項を規律する権限を有する。

第475d条(倉庫証券の効力,正当な所持人)⑴ ①倉庫証券は物品とその包

装が外見上認識可能な状態並びに個寄託物の総数,記号及び番号に関して倉

庫証券に記載されたとおりに引き受けられたとの推定を基礎づける。②物品

の粗重量若しくは他の方法で記述された量又は内容が倉庫営業者によって調

査され,調査の結果が倉庫証券に記入されたときは,この倉庫証券は,重量,

量又は内容が倉庫証券の記載と合致するとの推定も基礎づける。

⑵ ①倉庫証券中に物品の受領権限を有するものとして指定された者に対して

倉庫証券が交付される場合,倉庫営業者は,この者に対して第1項の推定に

対する反証をすることはできない。ただし,倉庫証券中の記載が不正確であ

ることにつき,倉庫証券交付の時点においてこの者が知っており,又は重大

な過失により知らなかったときはこの限りではない。②倉庫証券の譲渡を受

けた第三者に対しても同様である。

⑶ ①倉庫証券中に記載された倉庫契約上の請求権は倉庫証券により権限を与

えられる者のみがこれを行使することができる。②倉庫証券の正当な所持人

のために,当該所持人が倉庫証券により権限を与えられる者であると推定さ

れる。③倉庫証券の正当な所持人とは,

⒈ 無記名式の倉庫証券

⒉ 指図式で発行され,物品の受領権限を有する者として所持人を指定する

か,又は連続する裏書により所持人を物品の受領権限を有する者であるこ

とを証明する倉庫証券,又は,

⒊ 所持人の名称による記名式の倉庫証券

 を所持する者をいう。

第475e条(倉庫証券の返還と引換えにする引渡し)⑴ 倉庫証券の正当な所

持人は,倉庫営業者に対して物品の引渡しを請求する権限を有する。

⑵ ①倉庫証券が発行されているときは,倉庫営業者は引渡しを証明する記載

のある倉庫証券の返還と引換えにのみ物品を引き渡す義務を負う。②倉庫営

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業者は,裏書の真正を調査する義務を負わない。③ただし,倉庫営業者は,

倉庫証券の正当な所持人が倉庫証券による権利者でないことを知り,又は重

大な過失により知らなかったときは,物品を倉庫証券の正当な所持人に引き

渡すことはできない。

⑶ ①物品の一部の引渡しは,倉庫証券への引渡済文句の記入と引換えに行

う。②引渡済文句は倉庫営業者によって署名されなければならない。

⑷ 倉庫営業者は,倉庫証券の返還を受けずに,又は引渡済文句を記入せずに

物品を引き渡したことにより生ずる損害につき,倉庫証券による権利者に対

して責任を負う。

第475f条(抗弁) ①倉庫証券による権利者に対しては,倉庫営業者は,倉庫

証券においてなされた表示の有効性に関する抗弁,若しくは,倉庫証券の内

容から生ずる抗弁,又は,倉庫証券による権利者に対し直接に倉庫営業者が

有する抗弁のみを対抗することができる。②倉庫証券中に単に指示されてい

るにすぎない合意は倉庫証券の内容に当たらない。

第475g条(倉庫証券の移転的効力) ①倉庫証券中に物品の受領権利者として

指定される者に対する倉庫証券の交付は,倉庫営業者が物品を占有する限り

は,物品に対する権利の取得に関して物品の引渡しと同じ効力を有する。②

倉庫証券の第三者に対する譲渡に関しても同様である。 

第475h条(逸脱的合意) 寄託者が消費者であるときは,第475a条ないし第

475e条第4項は,当該消費者の不利益に逸脱することができない。

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法務資料 第465号       平成28年8月発行

法務省大臣官房司法法制部司法法制課

東京都千代田区霞が関一丁目1番1号電話(3580)4111(大代表)

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