稲WCS収穫・調製の手引き...収穫は夜露が乾いてから...

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稲WCSとは 作業体系と機械の選定 <専用機械のダイレクト収穫体系> 作業内容 密封 運搬 保管・貯蔵 ラッピング マシーン ベールグリッパ等 搬送トラック ベールグリッパ 特徴 <牧草用機械の予乾収穫体系> 作業内容 刈り倒し 反転集草 梱包 密封 運搬 保管・貯蔵 モーア テッダー レーキ ロールベーラ ベールラッパー ベールグリッパ等 搬送トラック ベールグリッパ 特徴 <利点> ・専用収穫機械を用いることで刈取り、細断、梱包形成を同時に行い作業時間が短くできます。 ・作業行程が専用収穫機械に1台に集約されていいるため機械の準備・保管が容易です。 ・足回りがクロラー式のため湿田や急傾斜の進入路、狭い圃場でも作業が可能です。 <欠点> ・ダイレクトで刈取り梱包形成を行うため、稲体の水分が70%以下の熟期にならないと収穫作 業ができません。 ・専用収穫機械が高額でこまめなメンテナンスが必要です。耐久性は150haが目安です。 ベールラッパー写真出典:浦川修司(農研機構 畜産草地研究所) <利点> ・畜産農家が作業を行う場合、既存の牧草体系の機械が利用できます。 ・予乾作業ができるため、水分が高い時期(出穂期~黄熟期)にも収穫作業ができます。 <欠点> ・トラクタで行うため、湿田や狭い圃場では作業性が低下します。 ・刈り落としの後、予乾と集草作業を行うため、作業日の設定(晴天続きが必要)が困難です。 ・湿田では集草時に泥が混入しやすいので、稲WCSの著しい品質低下を招きます。 稲WCS(ホールクロップサイレージ:Whole Crop Silage)とは、稲の穂と茎葉を同時に収穫し、牛の 飼料用にサイレージ(乳酸発酵させて貯蔵)に加工 したものです。 稲WCSの収穫調整作業は、稲を直接収穫・調製するダイレクトカット体系と、稲を刈り倒し、予備乾燥 して収穫・調製する予乾体系があります。 刈取・梱包 稲WCS収穫・調製の手引き 使用機械 専用収穫機 使用機械

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Page 1: 稲WCS収穫・調製の手引き...収穫は夜露が乾いてから 雑草の多いほ場は高刈り 倒伏したほ場は刈らない 泥田や獣害のひどい圃場 は収穫しない

稲WCSとは

作業体系と機械の選定

<専用機械のダイレクト収穫体系>作業内容 密封 運搬 保管・貯蔵

ラッピングマシーン

ベールグリッパ等搬送トラック

ベールグリッパ

特徴

<牧草用機械の予乾収穫体系>作業内容 刈り倒し 反転集草 梱包 密封 運搬 保管・貯蔵

モーアテッダーレーキ

ロールベーラ ベールラッパーベールグリッパ等搬送トラック

ベールグリッパ

特徴

<利点>・専用収穫機械を用いることで刈取り、細断、梱包形成を同時に行い作業時間が短くできます。・作業行程が専用収穫機械に1台に集約されていいるため機械の準備・保管が容易です。・足回りがクロラー式のため湿田や急傾斜の進入路、狭い圃場でも作業が可能です。<欠点>・ダイレクトで刈取り梱包形成を行うため、稲体の水分が70%以下の熟期にならないと収穫作業ができません。・専用収穫機械が高額でこまめなメンテナンスが必要です。耐久性は150haが目安です。

ベールラッパー写真出典:浦川修司(農研機構 畜産草地研究所)

<利点>・畜産農家が作業を行う場合、既存の牧草体系の機械が利用できます。・予乾作業ができるため、水分が高い時期(出穂期~黄熟期)にも収穫作業ができます。<欠点>・トラクタで行うため、湿田や狭い圃場では作業性が低下します。・刈り落としの後、予乾と集草作業を行うため、作業日の設定(晴天続きが必要)が困難です。・湿田では集草時に泥が混入しやすいので、稲WCSの著しい品質低下を招きます。

稲WCS(ホールクロップサイレージ:Whole Crop Silage)とは、稲の穂と茎葉を同時に収穫し、牛の飼料用にサイレージ(乳酸発酵させて貯蔵)に加工 したものです。

稲WCSの収穫調整作業は、稲を直接収穫・調製するダイレクトカット体系と、稲を刈り倒し、予備乾燥して収穫・調製する予乾体系があります。

刈取・梱包

稲WCS収穫・調製の手引き

使用機械

専用収穫機

使用機械

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汎用コンバイン型<特徴>

<基本性能>車体サイズ刈り幅切断長ロールサイズ

※ロールの重量は水分含量60%目安です

コンバイン型(細断型)<特徴>

<基本性能>車体サイズ刈り幅切断帳ロールサイズ

※ロールの重量は水分含量60%目安です

フレール型<特徴>

<基本性能>車体サイズ刈り幅切断帳ロールサイズ

※ロールの重量は水分含量60%目安です

全長4.4m 重量3.8t150cm10~15cm

直径90cm×85cm 約250㎏

参考機種:SMR1000

参考機種:WB1030DX

参考機種:YWH1500

細断カッターと穂と茎葉を混合するビーターが内蔵され、品質が向上しています。雑草の多い圃場では収穫できないため、不良サイレージの生産が回避できます。

機体がコンパクトサイズで狭い圃場でも操作が容易です。回転刃で穂と茎葉を細断しながら収穫するので、籾も一部破砕されています。雑草の多い圃場や倒伏した圃場でも収穫できるため、品質確認に注意が必要です。

全長5.3m 重量4.2t172~177cm3cm~10cm

直径100cm×85cm 約280㎏

専用収穫調製機械の特徴県内には以下の3機種の稲WCS収穫調製機械が稼働しています。3機種それぞれ特徴があり、地域の状況や供給先の畜産農家のニーズに適した機種選定が必要です。機械の特徴や性能を理解し、適正に使用することで良質な稲WCS生産につなげましょう。

刈取りのアタッチを交換することで稲WCS、トウモロコシ、予乾牧草等の収穫が可能です。ホッパーを装着しているのでノンストップで収穫とロール形成の作業ができます。細断して高密度で梱包されるので品質が安定しています。

刈取り部がコンバインと同じ形状なので、操作が容易です。

全長7.3m 重量5.2t200cm1~3cm

直径100cm×85cm 約300㎏

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収穫は夜露が乾いてから 雑草の多いほ場は高刈り 倒伏したほ場は刈らない

泥田や獣害のひどい圃場は収穫しない

梱包は固めに成形するラップは基本6重巻き、長期保存用は8重巻で

収穫調製作業のポイント

品質の良い稲WCSを作るポイントは、①収穫時の稲体の水分含量が50~65%②泥や雑草の混入をしない③高密度の梱包と密閉をする。の3点です。収穫調製と運搬作業の良否で品質が決定します。

収穫適期ちょっと早い ちょっと遅い

乳糊熟期(水分70%以上)

黄熟期(水分60%前後)

完熟期(水分50%以下)

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ネットが正しく巻けているかチェック

品質向上には乳酸菌の添加が望ましい

刈り取った稲はラップで巻かれ嫌気状態になり乳酸菌が増殖します。乳酸菌が増殖することでPHが4程度まで下がり、他の雑菌の増殖を抑えます。品質を悪くする酪酸菌は土壌中に多く存在し、水分が多いと増殖します。

稲WCSは稲をサイレージ(乳酸発酵)にして保存する生の飼料です。ラップフイルムに穴が開いたり変形して空気が侵入すると、すぐにカビが生えたり腐敗してしまいます。ラップフイルムは破れやすいので取扱いは丁寧に行い、穴が傷ができたら速やかに補修を行いましょう。

 品質を良くするには

サイレージの基礎知識

監修:滋賀県農業技術振興センター

定期的にグリスアップや刈り刃のメンテナンス

ラップの穴はハウス用テープですぐに補修する

ロールは変形させない程度で掴む

ラベルを貼って商品管理を行う