犬のStrongyloides sp.感染症例に対するフェバンテ …犬のStrongyloides...

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犬のStrongyloides sp.感染症例に対するフェバンテル配合 剤の治療効果 誌名 誌名 日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association ISSN ISSN 04466454 巻/号 巻/号 616 掲載ページ 掲載ページ p. 453-458 発行年月 発行年月 2008年6月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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犬のStrongyloides sp.感染症例に対するフェバンテル配合剤の治療効果

誌名誌名 日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association

ISSNISSN 04466454

巻/号巻/号 616

掲載ページ掲載ページ p. 453-458

発行年月発行年月 2008年6月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

|短報|

犬の Strongyloidessp. 感染症例に対する

フェバンテル配 合剤の治療効果

伊藤直之川 村岡登21 河又 淳 31 青木美樹子41 板垣匡41

1)青森県 開業(干039-1212 三戸郡階上町蒼前酋7-9-2932)

2)秋田県 開業(干013-0065 横手市猪岡字長瀞11)

3)福島県 開業(干960-8055 福島市野田町3-1-18)

4)岩手大学農学部(〒020-8550 盛岡市上回 3-18-8)

(2007年5月25日受付 ・2007年10月30日受理)

要 約

犬のStrongyloidessp.感染に対するフ ェパンテル配合剤の治療効果を検討した.フェパンテルとして 15mg/kg体重

のI回経口投与では,糞便内のStrongyloidessp.第1期幼虫検出を指標とした場合の有効率が50.0% (2/4)であっ

た. 1回経口投与で効果がみられなかった2頭に対して,同用量の2回目投与を実施したがやはり効果は認められなか

った.他方,フェパンテルの 15mg/kg体重1日1回3日関連続投与を 1回実施した場合の有効率は, 63.6 % (7/11)

であった.1回目の3日関連続投与で効果がみられなかった4頭に対して,同プロトコールの2回目を実施したところ,

50.0%の有効率であり, 1回目と 2回目をあわせた延べ有効率は81.8% (9/11)であった.

一一キーワー ド:犬,フェパンテル,Strongyloides sp..

一一一一一一一一一一一一一一一一一 日獣会誌 61, 453 -458 (2008)

日本国内の犬に寄生する Strongyloides属線虫は, S

stercoralis (糞線虫)とS.Planiceps (猫糞線虫)の2

種であり,ペットショップ/繁殖施設由来の犬ではS.

stercoralis,野生食肉動物やこれらの動物と直接的ある

いは間接的に接触のある犬では S.planicepsが主体であ

ることが明らかにされている[1-3J. S. stercoralisの

感染した犬では臨床症状を示さずに経過する例が多い

が,慢性の下痢や血便,急性致死などの重篤な症状を示

すこともある [1,4J.また, S. stercoralisは人と動物

に共通感染性である こと [5,6],および人との接触機会

が多い室内飼育犬で感染率が高い [3J ことから,感染

個体に対する駆虫が必要で、ある.これまで犬のStrongy-

loides sp.感染症例に対する治療と しては,チアベンダ

ゾールをはじめとした数種のベンズイミダゾール系薬剤

とアベルメクチン誘導体であるイベルメクチンが応用さ

れ,各薬剤jの効果が明らかにされている [1,7-9]. い

っぽう,ベンズイミダゾール系薬剤の一つで,フェンベ

ンダゾールのプロドラッグであるフェパンテルは,犬の

消化管内寄生虫に対して広い殺虫スペク トルを持つこと

が示されている[10,11Jが,犬のStrongyloidessp.感

染に対する効果は明らかにされていない.本報告では,

犬の Strongyloidessp.感染症例にフェパンテル配合剤

を応用し,その効果について検討した.

材料および方法

症例犬:症例は来院までの 1週間以内に下痢使または

軟便の病歴を有し,来院時に実施した新鮮使の検査で

Strongyloides sp.の第l期幼虫 [2,12Jが検出された 1

カ月齢-1歳齢の犬15頭 (9品種,雄7頭,雌8頭)で

ある (表1).これらの症例犬は,すべてがペットショッ

プ/繁殖施設から購入され, 一般家庭の室内で飼育され

ていた.来院時の糞便性状は6頭が下痢使, 8頭が軟便,

残り l頭は固形使であった.

糞便検査:新鮮使19を用いたホルマリン ・酢酸エチ

ル沈澱法 [13Jにより,Strongyloides sp.の第I期幼虫

および他の消化管内寄生虫について検査した.

投薬プロトコール:症例犬4頭にはフェパンテル配合

剤(ドロンタールプラス錠,バイエルメデイカル(械,東

連絡責任者 (現所属):伊藤直之(北里大学獣医学部小動物第I内科学教室)

〒034-8628 十和田市東23-35-1 会 0176-23-4371 FAX 0176-23-8703

E.mail: [email protected]

453一一一 日獣会誌 61 453 -458 (2008)

犬のStrongyloidessp 感染に対するフエノtンテルの効果

Stro悶~loides sp.感染犬に対するフ ェパンテル配合斉IJの l回目の投薬効果表 l

投薬前

性別年齢体重(kg) 種ロ

ロロ症例番号 11!!.の

寄生虫糞便性状

Strong;井

loides sp.

使

下痢便

軟便

+

+

I回投与群

S-1 ヨークシャー・テリア

ポメラニアン

スコッティッシュ ・テリア

チワワ

軟+ 削t

8カ月齢

2カ月齢

3カ月齢

1.7

1.0

2.5

S-2

S-3

便軟+

oo

dATRυιv

nhu

-

-

-

-

-

nuη4

'ーに1vti

lsospora

犬回虫使軟+ 雄5カ月齢18.2

lsospora

使

固形使

下痢使

下痢使

3日関連続投与群

T-1 チワワ

T-2 ノfピヨン

T-3 ポメラニアン

T-4 ノf グf

T-5 ミニチュア ・ダックスフンド

ラブラドール・レトリバー

シェットランド・シープドッグ

ノfピヨン

チワワ

ヨークシャー・テリア

ポメラニアン

Giardia 下痢使

軟便

軟便

軟便

下痢使

+

+

+

+

+

3カ月齢

3カ月齢;

5カ月齢

5カ月齢

4カ月齢

2カ月齢

1.2 S-4

T-6

]1次+

+

+

+

2カ月齢

1歳齢

2カ月齢

1カ月齢

1.6

dqnLnU

-

-

-

qJ

1A14

T-7

T-8

T-9

T-lO

下痢使+ 調t1カ月齢0.8 T-ll

1回目の投薬終了からの経過日数

28日21日14日7日

他の

寄生虫糞便性状

Stro叩ト

loides sp

他の

寄生虫糞便性状

Strongy-loides sp.

他の

寄生虫糞便性状

Strong;井

loides sp. {也の

寄生虫糞便性状

Strong;トloides sp

図形便

図形使

問形f更

使軟

使軟+

1回投与r.f

S-1 ヨークシャー・テリア

ポメラニアン

スコッテイ 7シュ・テリア

チワワ

S-2

S-3

図形使

固形便

固形便

軟 便

固形使

軟 便

悶形使固形使

匿|形使図形使

固形使

固形使

軟 便

3日間連続投与群

T-1 チワワ

T-2 ノTピヨン

T-3 ポメラニアン

T-4 ノf グ

T-5 ミニチュア ・ダックスフンド

ラプラドール・レトリバー

シェットランド ・シープドッグ

ノTビヨン

チワワ

ヨークシャー・テリア

ポメラニアン

固形使

図形使

固形使

固形便

図形便

固形使

+ S-4

T-6

+

+

+

T-7

ハU

oon汐

'i

市ん{

軟+

場合を有効とした.1回目の検査で第 1期幼虫が検出さ

れた場合には無効と判定し,ただちに 2回目の同じ投薬

プロトコールを実施してその効果を調べた.なお,糞便

検査で同時にIsospora属原虫の寄生が認められた2症例

T-ll

京) をフェパンテルとして 15mg/kg体重 を 1回経口投

与し.11頭には同用量 を 1日I回 3日間経口投与した.

薬剤の効果判定は投与終了後.7または 14日間隔で糞便

検査を実施し,連続して第 I期幼虫が検出されなかった

454 453 -458 (2008) 61 日獣会誌

伊藤直之村岡登河又 i享他

表2 Strongyloides sp.感染犬に対するフェバンテル配合剤の 2回目の投薬効果

2回目の投薬終了からの経過日数

症例番号 7日

Strongyloides sp 糞便性状

1回投与群 S-3

S-4

3日関連続投与群 T-8 図形便

T-9 固形便

T-lO + 固形便

T-ll + 固形便

には,スルファモノメトキシン(ダイメトンシロップ,

埼玉第一製薬側,埼玉)50mg/kg体重を 1日I回10日

間経口投与した.

なお,飼育者には排池後早期に糞便を処理することと

飼育環境ならびに動物の体を衛生的に管理するよう要請

した.

成 績

フェパンテル配合剤を l回投与した 4頭(症例番号

S-I-S-4)のうち 2頭 (S-l, S-2)は,投与終了後に

実施した2回の糞便検査でStrongyloidessp.の第l期幼

虫が検出されなかったが,他の2頭 (S-3,S-4)では l

回目の糞便検査で第 1期幼虫が検出され, 1回投与の有

効率は50.0%(2/4)であった(表1).有効と判定され

た2頭では,糞便性状も投薬前の軟便と下痢便から 2回

目の検査時には固形使へ改善が認められた.いっぽう,

無効であった 2頭のうち S-4は固形使に改善 したが,

S-3は軟便のままであった.これらの2頭には, 2回目

の1回投薬を実施したが, 2頭ともに2回目の投薬後 14

日の検査でStrongyloidessp.の第 1期幼虫が検出され,

再投薬の有効性は認められなかった(表2).なお,これ

ら2頭については飼育者が希望しなかったことから,そ

の後の治療は実施できなかった.

フェパンテル配合剤を 3日間連続投与した 11頭(症

例番号T-I-T-11)のうち, 7頭 (T-I-T-7)では2

回の糞便検査でStrongyloidessp.の第 1期幼虫が検出

されなかったが,他の4頭 (T-8-T-11)の糞便から

は第 1期幼虫が検出され, 3日間連続投与を 1回実施し

た場合の有効率は63.6% (7/11)であった(表1).こ

れらの 11頭では,投薬前から固形便であった1頭 (T-8)

を除いた 10頭でStrongyloidessp.の検出の有無にかか

わらず投薬後に糞便性状の改善が認められた.Strongy-

loides sp.が検出された4頭には,ふたたび同薬剤を 3

日関連続投与した.その結果, 2頭 (T8,T9) では

Strongyloides sp.の第 l期幼虫が検出されなかったこと

から, 2回目投薬の有効率は 50.0% (2/4)であり,フ

ェパンテル配合剤を 3日関連続投与した場合, 1回目と

455

14日

他の寄生虫 Strongyloides sp. 糞便性状 他の寄生虫

+ 固形便

+ 固形使

固形使

国形便

2回目投薬をあわせた延べ有効率は 81.8% (9/11) で

あった.TI0とT11では再投薬後も Strongyloidessp.

の第1期幼虫が検出されたが,糞便性状は軟便から固形

便に改善した.なお,これらの 2頭(TlO,T11) は,

飼育者がその後の治療を希望しなかった.症例犬のT-l

は投薬前に Giardia属原虫のシスト, T-6には犬回虫

(Toxocara canis)の虫卵が検出されたが,これらは l

回目のフェパンテル配合剤の3日関連続投与終了から 7

日日およびその後の検査でも検出されなかった.なお,

T-5およびT-9で検出されたIsospora属原虫のオーシ

ストも同様にスルファモノメトキシンの投与後は検出さ

れなかった.観察期間中,フェパンテル配合剤の 1回投

与および3日間連続投与にともなう副作用は認められな

かった.

考 察

これまでに日本国内では犬の Strongyloidessp.感染

症例に対する治療として,線虫類の消化管粘膜上皮細胞

の微小管構築を妨げて駆虫効果を示すベンズイミダゾー

ル系薬剤[14Jのパーベンダゾール,チアベンダゾール

[1, 7Jおよびアルベンダゾールと線虫類のグルタミン酸

伝達神経のクロライドイオンチャンネルに作用して神経

や筋を麻癖させるアベルメクチン誘導体[10,15Jのイ

ベルメクチンの効果が評価されている [7]. その結果,

パーベンダゾール 30mg/kg体重1日l回3日間の経口

投与では,Strongyloides spの駆虫効果がまったく期待

できないことが示されている [1,7]. また,チアベンダ

ゾール75mg/kg体重l日1回3日間の経口投与,ある

いはアルベンダゾール25mg/kg体重1日2回2日間の

経口投与はいずれも 60%の有効率である [7J. いっぽ

う,イベルメクチンは2例のみの成績であるが, 200μ

g/kg体重l回の経口投与で 100%の有効率が得られて

いる[7].海外でも犬のStrongyloidessp.感染症例に対

するチアベンダゾール,アルベンダゾールおよびイベル

メクチンの効果が検討され,チアベンダゾールの

25mg/kg体重1日2回3日間経口投与は,まったく効

果がないこと [8Jやイベルメクチンの200μg/kg体重

日獣会誌 61 453 -458 (2008)

犬のStrongyloidessp感染に対するフェパンテルの効果

1回経口投与は有効率が50%であるが,再投薬に より

100%有効であることが報告されている [9J.また,ア

ルベンダゾールは 100mg/kg体重1日2回3日間の経口

投与で 100%の有効率が示されている口6]. これらの

報告から,チアベンダゾールの75mg/kg体重1日I回3

日間の経口投与による有効率 (60%) [7Jは,今回の

試験でフェパン テル配合剤のフェパンテルとして

15mg/kg体重1日I回3日関連続投与を I回実施した場

合の有効率 (63.6%)とほぼ同等であり,再投与による

有効率の上昇も期待される.しかし,チアベンダゾール

の高用量投与や長期投与は,日直吐を誘発しやすいことが

指摘されている [4,11J.イベルメクチンは,複数回の

投与により犬の Strongyloidessp.感染に対して十分な

効果が期待されるが,検討症例数が少ないこと [7,9J

およびコリーなどの犬種ではイベルメクチンに対する重

篤な中枢神経系障害の発生が報告されており [17,18],

適用にあたって留意する必要がある.また,アルベンダ

ゾールでは25mg/kg体重1日2回の5日間投与で骨髄

抑制による 白血球減少が指摘されている [19Jことか

ら,本剤の大量投与に よる犬の Strongyloidessp.感染

症例に対する有効性 [16Jが臨床的に意義あるものと は

思われない.

今回使用 したフェパンテル配合剤は,フェパンテル,

パモ酸ピランテルおよびプラジクアンテルを成分とする

製剤 [10,20Jであり,それらのうち,フェパンテルと

パモ駿ピランテルが消化管内線虫に対する駆虫効果を有

する [10,11, 14, 21].パモ酸ピランテルは神経筋接合

部を脱分極性に遮断し,線虫類に麻療を引き起こすこと

で効果を発揮するが,Strongyloides sp.には無効である

とされている [21].いっぽう,フェパンテルは動物体

内で代謝されてベンズイミダゾール系薬剤jの一つである

フェンベンダゾールに変化する[10,11, 14Jことで線

虫類に対する効果を示す.フェンベンダゾールは水溶性

が低く,腸管内に長期間存在して徐々に溶解することか

ら血中の半減期が長い [22J.長時間の作用により,線

虫類の幼虫や成虫に対する効果が増し [22], 犬回虫や

犬鈎虫 (Ancylostomacaninum)の成虫のみならず,

組織内幼虫の駆除にも有効であることが報告されている

[10J. ただし,犬ではフェンベンダゾールの消化管内通

過が速いために,反復投与が必要とされることがある

[10J.現在,日本国内で、は小動物臨床領域で、使用可能な

フェンベンダゾール製剤が販売されていないため,本試

験ではフェンベンダゾールのプロドラ ッグであるフェパ

ンテルを含むフェパンテル配合斉IJを使用した.今回の試

験でフェパンテルとして 15mg/kg体重を 1回のみ投与

した場合の犬の Strongyloidessp.感染に対する有効率

は50.0% (2/4)であり ,1回の投与で、無効だ、った例に

同様のプロトコールで再投薬しでも有効率の改善は認め

日獣会誌 61 453 -458 (2008) 456

られなかった.これに対して,フェパンテルとして

15mg/kg体重1日1回3日間連続投与を 1回実施した場

合の有効率は63.6%で,1同目で、無効だ、っ た例に3日間

の連続投与を再度実施することで延べ有効率が81.8%

となり,同時に糞便性状も全症例で改善した.このこと

から,フェパンテルとして 15mg/kg体重1日1回3日

間連続投与を,犬のStrongyloidessp.感染症例に対す

る治療法のーっとして考慮すべきであり,必要に応じて

2回目の投与を実施することで有効率の上昇が期待され

ると考えられた.犬のStrongyloidessp.感染症例に対

して,フェパンテル配合剤の3日関連続投与が1回投与

の効果を上回ったことには,フェパンテルの代謝産物で

あるフェンベンダゾールの有効濃度が連続投与によって

長時間維持されたことが関係していると推測された.い

っぽうで,同剤の 1固または3日関連続投与で効果がみ

られなかった例については,Strongyloides sp.のプレパ

テントピリオドが1-2週間であること [4,12Jより再

感染の可能性も否定できないが,飼育者に衛生的管理の

徹底を要請したことから,その可能性は低いと考えられ

た.原因としては宿主の免疫状態 [8JやStrongyloides

sp.の薬剤に対する感受性の違い [23Jなどの要因が複

雑に関与していると考えられた.

なお,フェパンテル配合剤でフェパンテルとしての

15mg/kg体重には,同時にパモ酸ピランテルおよびプ

ラジカンテルがそれぞれ 14.4mg/kg体重および

5mg/kg体重含まれることとなり,消化管内に寄生する

犬回虫,犬鈎虫 (Ancylostomacaninum),犬鞭虫

(Trichuris vulpis)および犬条虫 (Dipylidiumcan-

inum)には1回の投薬で有効である [10,llJ.さらに,

フェパンテルとして 15mg/kg体重のフェパンテル配合

斉IJ1日1回3-5日関連続投与は,Giardia属原虫の駆

除にも有効性が確認されている [20J.本試験でも例数

は少ないが,犬回虫と Giardia属原虫に対するフェパン

テル配合剤の有効性が確認された.特に,犬由来分離株

の一部が人獣共通感染性であると考えられている Giar-

dia属原虫 [24,25Jの疫学的背景は,Strongyloides

sp.のそれと類似しており [3J,ベットショ ップ/繁殖

施設に由来する 6カ月齢以下の室内飼育犬で感染率が高 .

い [26,27J. これらのことよりフェパンテルとして

15mg/kg体重のフェパンテル配合剤 1日1回3日関連

続投与が両寄生虫の感染に対して有効であることの臨床

的意義は大きいと考えられた.フェパンテルの犬での副

作用としては, 1日150mg/kg体重以上の6日間経口投

与で下痢や恒吐がみられている[l1Jが,それ以外の副

作用は報告されておらず,今回の症例においても副作用

は認められなかった.今後,犬のStrongyloidessp.感染

症例にフェパンテル配合剤を応用する際のより効果的な

投与プロトコールについて,さらに検討が必要であろう.

伊藤直之村岡登 i可又 i享 他

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457一一 日獣会誌 61 453 -458 (2008)

犬のStrongyloidessp.感染に対するフ ェバンテルの効果

Treatment with Febantel Combination Drug for Canine Strongyloides sp. Infection

Naoyuki ITOH¥Noboru MURAOKA, Jun KAWAMATA, Mikiko AOKI and Tadashi ITAGAKI

* First Department 01 Small Animal Internal Medicine, Kitasato University, School 01 Veteri-nary Medicine, Higashi 23-35-1, Towada, 034-8628, Japan

SUMMARY

The efficacy 0ぱffたebant句elcombination drug treatment was evaluated in c1inical cases of dogs infected with St1

eradicating first-stage larvae of Strongylωoideωs sp. i凶nthe feces. A second administration of the same dose failed

to improve in the efficacy. In contrast, oral administration of febantel at a dose of 15 mg/kg of body weight

once daily for three connective days was 63.6% (7/11) effective against Strongyloides sp. infection in dogs. A

second administration of the same dose in non-effective cases for three connective days was 50% (2/4) effec

tive, giving a total efficacy of this protocol of 81.8 % (9/11).一-Key words : dog, febantel, Strongyloides sp

↑ Corresρondence to・NaoyukiITOH (First Department 01 Small Animal Internal Medicine) Kitasato Universiか,School 01 Veterinary Medicine, Higashi 23-35-1, Towada, 034-8628, Jaρan

TEL 0176-23-4371 FAX 0176-23-8703 E-mail: [email protected]

]. JPn. Vet. Med. Assoc., 61, 453 ~ 458 (2008)

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日獣会誌 61 453 -458 (2008) 一一一458一一一

研究開発部候般薬開発グループ

剛山