奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … ·...

7
奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰・陽)の基礎 奇経には3つの作用がある。 1.経絡の間の連係補助(十二経脈の間を縦横に交錯する) 2.十二経脈の気血を調節(十二経脈は大河。奇経は湖) 十二経脈の 気血旺盛→奇経に注ぎ込んで貯蓄 気血不足→奇経から補填 3.八脈は肝腎に隷す ・奇経と肝、腎、いくつかの奇恒の腑と関係が密接 また、脳、子宮などは奇経によって直接連係している 【基本機能】 ■任脈 (1)陰経の海。一身の陰経を総任する→陰経に対する調節作用がある 足の三陰経は小腹で任脈と相交する。 左右の陰経は任脈を通じて相互に連絡する。 (2)任主胞胎 月経を調節して胎児を孕育する。 ■督脈 (1)陽脈の海。一身の陽経を総督する→陽経に対する調節作用がある (2)脳と脊髄の生理・病理を反映。脳、脊髄と生殖器官を相互に連絡。 ■衝脈 経脈の海→気血を調節する 衝為血海 →主な機能は月経調節なので。 ■帯脈 各経脈を束ねる。 ■陰維脈 各陰脈を集める(連係する)。 ■陽維脈 各陽脈を集める(連係する)。 ■陰蹻脈、陽蹻脈 (1)左右のバランスをとる。 (2)眼瞼の開閉(目の開け閉め)。 (3)筋肉の運動制御。

Transcript of 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … ·...

Page 1: 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … · 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎

奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰蹻・陽蹻)の基礎

奇経には3つの作用がある。1.経絡の間の連係補助(十二経脈の間を縦横に交錯する)2.十二経脈の気血を調節(十二経脈は大河。奇経は湖) 十二経脈の 気血旺盛→奇経に注ぎ込んで貯蓄 気血不足→奇経から補填3.八脈は肝腎に隷す ・奇経と肝、腎、いくつかの奇恒の腑と関係が密接  また、脳、子宮などは奇経によって直接連係している

【基本機能】

■任脈(1)陰経の海。一身の陰経を総任する→陰経に対する調節作用がある   足の三陰経は小腹で任脈と相交する。   左右の陰経は任脈を通じて相互に連絡する。(2)任主胞胎   月経を調節して胎児を孕育する。

■督脈(1)陽脈の海。一身の陽経を総督する→陽経に対する調節作用がある(2)脳と脊髄の生理・病理を反映。脳、脊髄と生殖器官を相互に連絡。

■衝脈経脈の海→気血を調節する衝為血海 →主な機能は月経調節なので。

■帯脈各経脈を束ねる。

■陰維脈各陰脈を集める(連係する)。

■陽維脈各陽脈を集める(連係する)。

■陰蹻脈、陽蹻脈(1)左右のバランスをとる。(2)眼瞼の開閉(目の開け閉め)。(3)筋肉の運動制御。

Page 2: 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … · 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎

■任脈宗:列欠、絡:鳩尾

【基本機能】(1)陰経の海。一身の陰経を総任する→陰経に対する調節作用がある   足の三陰経は小腹で任脈と相交する。   左右の陰経は任脈を通じて相互に連絡する。(2)任主胞胎   月経を調節して胎児を孕育する。

【主要症状】・疝気、少腹腫塊(男子内結七疝、女子帯下積じゅ)・月経不調、無月経、白帯、流産、不妊・遺尿

【循行経路】1.胞中(骨盤内の生殖器)に起こる。

2.下って会陰に出る。

3.腹部正中線を上行(陰部、腹部、胸部、 頚部を経て下口唇下部)

4.ここで左右2枝に分かれる。

5.顔面部を経て目の下(承泣)に終わる。

Page 3: 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … · 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎

■督脈 宗:後谿、絡:長強

1.胞中(骨盤内の生殖器)に起こる。

2.下って会陰に出る。

3.背部正中線を上行

4.脳に属する。5.頭部、鼻から上内唇小帯へ。

支脈は腎に絡し、心を貫く。

【基本機能】(1)陽脈の海。一身の陽経を総督する→陽経に対する調節作用がある   6つの陽経はすべて大椎で督脈と交会する。(2)脳と脊髄の生理・病理を反映。脳、脊髄と生殖器官を相互に連絡。   督脈は脳に属し、腎に絡する。   腎→髄を生じる   脳=髄海

【主要症候】実証:背部の強い拘縮(脊椎強痛)、厥証(手足の冷え)、癇(精神異常)、角弓反張虚証:頭が重くふらふらする、腰背膝の悪寒、癲(精神異常)など

Page 4: 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … · 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎

■衝脈

1.胞中(骨盤内の生殖器)に起こる。

2.下って会陰に出る。

4.胸部に至り、胸中に散布

3.鼠蹊部で腎経と並び、上行。

5.喉にいたり、口唇をめぐる

少腹部に一分枝あり、脊柱内を上行する。

【基本機能】経脈の海→気血を調節する衝為血海 →主な機能は月経調節なので。

【主要症候】婦人科疾患(崩漏、無月経、月経不順、流産、小腹痛、乳汁分泌少)吐血、気逆上衝

※一源而三岐任脈、督脈、衝脈はすべて胞中に起こることから。この3つは生殖機能を調節している・調理衝任→月経治療のメイン・温養任督→生殖機能減退治療のメイン

Page 5: 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … · 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎

■帯脈

【循行経路】1.季肋(章門)に起こる。帯のように身体を一回りする。

腹部の帯脈は下方に下り、少腹に至る。

【基本機能】縦に走る各経脈を束ねる。

【主要症候】白帯、子宮下垂、腹部張満、腰軟無力など。

腰溶溶として水中に座るみたい。裏急後重(便意は頻繁にあるけど、排便あまりしない)

Page 6: 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … · 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎

■陽維脈(衛気の盛衰と関係)宗:外関、郄:陽交

■陰維脈(営気の盛衰と関係)宗:内関、郄:築賓

1.諸陽の会(金門)に起こる。

2.胆経と併行

3.腋下後部から肩に上る4.頚部、頬部を経て前額へ

5.前額部から頭頂を経て後頭部へ

循行途中に、前後して・手足太陽・手足少陽・督脈・陽きょう脈と交会

2.下肢内側を上行

1.諸陰の交(築賓)に起こる。

3.腹部で脾経と同行

4.脇部で肝経と合う

5.咽喉に至り、任脈と出会う

【基本機能】・諸陽の会に起こり、一身の表を主る・諸陽は皆頭に会す→各陽脈を集める(連係する)。

【主要症候】寒熱が長く続く、突発性眩暈癇証

【基本機能】・諸陰の交に起こり、一身の裏を主る・諸陰は皆胸腹に交す→各陰脈を集める(連係する)。

【主要症候】心痛、脇痛、腰痛(♂:腰中痛、♀:陰中痛)裏証、癲証

Page 7: 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎 奇 … · 奇経八脈(任・督・衝・帯・陽維・陰維・陰䋳・陽䋳)の基礎

■蹻脈(1)左右のバランスをとる。(2)眼瞼の開閉(目の開け閉め)。(3)筋肉の運動制御。

陰蹻脈 宗:照海、郄:交信 陽蹻脈 宗:申脈、郄:附陽

・癲癇、臓躁などの疾病中に出現する抽ちく(筋肉がピクピクひきつる)手足が伸縮抽動して止まらない・眼瞼開閉異常

・腎経別絡、一身左右の陰を主る・諸陰(五臓、任脈)に絡む

【主要症候】陽が緩んで陰が急(小腹痛、裏急、陰中痛)。股関節冷痺(下肢の屈伸困難)、皮膚淫痺(皮膚の強張り)癲(抑うつ状態、感情乏しい、言語錯乱、沈黙痴呆、)寒熱、♂:陰疝、♀:漏下不止

・膀胱経別絡、一身左右の陽を主る・諸陽(六腑、督脈)に絡む

【主要症候】陰が緩んで陽が急。腰背痛、精神疾患(寝ていると、鬼を見たように驚く)癇(興奮状態、騒がしく多言)

2.内果を経て下肢内側後方を上行

2.外果を経て下肢外側後方を上行

1.どちらも足跟から起こる

4.鎖骨上窩を貫いて喉頭の傍に沿う

3.前陰部を経て腹部(前)を上行

5.目の内側で陽陽蹻脈と会合

4.肩部、頚部外側を経て口角を挟む

3.腹部(横)を経て胸部外側後部に沿う

6.膀胱経にそって額を上がり、項部後方で胆経と会う

参考文献中医学基礎/ 上海中医学院編針灸学【経穴篇】/東洋医学学術社難経/ たにぐち書店