研修医のための保険診療のルール -...
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京都府医師会 新研修医総合オリエンテーション
2011.04.02
研修医のための保険診療のルール理事 小野晋司
これだけは知っておきたい保険診療の基礎経済行為としての保険診療
病院経営と保険診療
DPCの概要
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療病棟業務の流れ
入院時の保険診療
入院中の保険診療
退院時の保険診療
退院後の保険診療
研修医のための保険診療のルール本日の内容
これだけは知っておきたい保険診療の基礎経済行為としての保険診療
病院経営と保険診療
DPCの概要
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療病棟業務の流れ
入院時の保険診療
入院中の保険診療
退院時の保険診療
退院後の保険診療
研修医のための保険診療のルール本日の内容
経済行為としての保険診療
1.医療行為、薬剤には「定価」が決まっている採血 → 13点(130円)(入院では0点)腰椎穿刺 → 150点(1,500円)骨髄穿刺(胸骨)→260点(2,600円)
2.入院料や検査料など一定の条件がないと請求できないものがある入院基本料・・・「入院診療計画書」が算定の条件尿中マイクロアルブミン・・・3ヶ月に1回に限り算定
病院経営と保険診療
病棟担当医に求められるのは・・・
1.無駄のない検査や投薬DPC制度のもとでは無駄な検査や投薬は全て病院の持ち出し
2.病状に応じた早めの退院どの病院も「平均在院日数」の短縮を求めている
3.診療手技の習得患者さん・・・「若い先生、上手にカテーテル入れてね」病院・・・「先生、カテーテル何本も使わないで下さいね」
診療報酬の請求には、診療行為を一つづつ積み上げて計算していく「出来高方式」とそれらの行為をある部分についてまとめて評価する「包括支払い方式」があります。
DPCとは(Diagnosis Procedure Combination)のことで
「診断群分類」を表しています。これは日本で開発された診断群分類です。
分類作成の基本的な原則
・・・ 臨床的類似性と手間のかかり具合の均一性を加味
分類の論理的構造傷病名
処置・手術
合併症
重症度・補助療法等
臨床現場における思考過程
➀ 傷病名(507分類)
② 処置・手術の選択
③ 重症度や合併症により追加的な診療行為を実施
(包括評価対象の診断群分類 1,880分類)
DPCによる「包括評価」の概要
DPC制度の診療報酬(1)
手術等 リハビリ
心臓カテーテル、
内視鏡検査、生検等
入院料等 検査注射
投薬 処置画像診断
手術等 リハビリ
心臓カテーテル、
内視鏡検査、生検等
【出来高評価部分】
DPC毎の1日あたりの点数
在院日数
医療機関別係数
×
×
【包括評価部分】
++
従来の診療報酬額 DPC病院の診療報酬額
DPC制度の診療報酬(2)
「包括評価」で求められている傷病名
・主傷病名主治医が専門性の見地から最終診断としたもの
・入院の契機となった傷病名主治医が入院を必要と判断し、必要な治療や診療行為を投入すべきと
考える傷病名(疑い病名を含む)
・医療資源を最も投入した傷病名医療資源を最も投入したと判断した傷病名(判断できない場合は
マンパワーの投入量を加味)
・入院時併存症入院時、又は治療開始時に既に患者が持っていた病態で、主傷病の
治療に影響をもたらす疾患、又は全体的な資源投入量に影響を
もたらす疾患病態
・入院後発症疾患入院後、又は治療開始後に発症した病態で、主傷病の治療に直接
関連した疾患病態
これだけは知っておきたい保険診療の基礎経済行為としての保険診療
病院経営と保険診療
DPCの概要
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療病棟業務の流れ
入院時の保険診療
入院中の保険診療
退院時の保険診療
退院後の保険診療
研修医のための保険診療のルール本日の内容
入院時 入院中 退院時 退院後
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
入院時の指示は診療報酬上も重要
①病名 → 主病名、合併症、既往症はDPCコーディングに重要②安静度③バイタルチェック④食事 → 「特別食」は「普通食」と診療報酬が異なる
対応する「病名」が必要⑤入院時検査⑥その他:蓄尿・心電図モニター
入院時指示
入院時 入院中 退院時 退院後
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
入院診療計画書
最初は・・・1枚作成すると3,500円加算
2000年4月~作成しないと3,500円減算
2006年4月~入院患者全員に作成することが義務化
①平易な言葉で記載する②空欄がないように
入院時 入院中 退院時 退院後
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
食事指示
例) 腎臓食・・・腎臓疾患、心臓疾患や妊娠中毒症などに対し減塩食療法を行う場合
胃潰瘍食・・・胃潰瘍、十二指腸潰瘍
栄養士の努力を無にしないため
特別食を出すときは必ず対応病名を登録する
「普通食」は1食あたり640円(入院時食事療養(I))「特別食」は1食あたり76円加算される
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
個室料(いわゆる差額ベッド)
個室料を徴収できるのは患者側からの希望のある場合に限られる。下記の場合は、徴収できない:1.治療上の必要のある場合
重症で個室管理が必要、感染症のための隔離が必要2.病院側の都合
個室しか部屋が空いていない
個室料の問題は事務職や看護職に相談なく発言すると誤解を招く恐れがある
入院時 入院中 退院時 退院後
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
カルテ記載:算定要件
カルテに書いていなければ診療報酬は支払われない
入院中 退院時 退院後入院時
例)「呼吸心拍監視」*・・・“心電図モニター”医師の行う「検査」に対して診療報酬は支払われる
①心電図モニターをつける・・・だけでは請求できない
②医師がモニターの観察結果の要点を1日ごとに記載・・・することが必要
2011.04.03 午前中 HR70~90/minのAfで概ね安定動悸などの自覚症状特になし 循内 ○野
*1日につき150点(1,500円)(3時間を超えた場合;7日以内の場合)
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
カルテ記載:DPC病院
DPCだからカルテ記載を省いてよいわけではない
入院中 退院時 退院後入院時
「呼吸心拍監視」はDPCでは包括対象の「検査」に該当するそれならカルテ記載は適当でよい?
①いつも「DPC病院」で勤務するとは限らない②長期入院では「包括」から外れる場合もある
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
無駄な検査
DPCでは無駄な検査をすればするほど患者さんへの負担だけでなく病院に経済的損害をもたらす
入院中 退院時 退院後入院時
「療養担当規則」第20条・ 各種の検査は、診療上必要があると認められる場合に行う。・ 各種の検査は、研究の目的をもって行ってはならない。
無駄な検査をオーダーしないために、①病歴聴取、身体所見をしっかりとる②検査の意味(適応、評価)を十分理解して行う
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
腫瘍マーカー
腫瘍マーカー検査の乱発は臨床医としても、保険医としても
見識を疑われる
入院中 退院時 退院後入院時
スクリーニング検査としての腫瘍マーカー検査は一部を除き適切ではない
例外)PSA・・・高齢男性(前立腺癌)AFP, PIVKA II・・・肝炎患者(肝細胞がん)
・ 査定の対象となりえる・ DPC病院では包括対象
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
薬の適応・禁忌・用法・用量
指導医の指示する処方でも鵜呑みにせず確認する
入院中 退院時 退院後入院時
原則として、「禁忌」、「適応外」、「用法外」、「過量」の投与は認められない
例)アーチスト
1.25mg錠
20mg錠
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
輸血は手術!?
DPC病院でも輸血は「手術」なので出来高算定となる
入院中 退院時 退院後入院時
輸血は診療報酬上の区分では「手術」に含まれる
例)保存血輸血(200mlごとに)1回目 450点2回目以降 350点注 輸血の必要性、危険性等を文書で説明した場合に算定
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
アルブミン製剤
DPC病院では、アルブミン製剤の不適切な投与は患者さんへのリスクと共に病院経営にも負担となる
入院中 退院時 退院後入院時
貴重で高価な血液由来製剤の使用にあたっては適応を十分考慮し、決して漫然と投与しない
不適切な使用①蛋白質源としての栄養補給②脳虚血③単なるアルブミン濃度の維持④末期患者への投与
参考)アルブミン製剤25%(50ml)
6,000円~9,000円
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
コメディカルの仕事も医師の指示・同意から
「指示」や「同意」を与える立場・・・だからといって、自分が「偉い」と勘違いしな
い
入院中 退院時 退院後入院時
栄養士・・・入院栄養食事指導料(130点)要件:「特別食」(厚労大臣指定)
医師の指示入院中2回限度(概ね15分以上、1週間に1回限度)
薬剤師・・・薬剤管理指導料(325~430点)
要件:施設基準(厚労大臣指定)医師の同意週1回限り、月4回限度
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
長期入院の問題
長期入院は患者さんにとっても病院にとっても負担が大きい
入院中 退院時 退院後入院時
診断群分類ごとの1日当り点数
同じ疾患(診断群)でも入院期間が長くなるほど診療報酬は減尐する
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
退院時指示
退院が決まったら速やかにその準備を!
退院時入院中 退院後入院時
①退院処方・・・会計締め切り後の追加はレッドカード!②診療情報提供書・・・かかりつけ医としっかり連携!③病名入力の確認・・・先生の診断が診療報酬を決める!④退院サマリー・・・サマリーは認定医取得の資料だけではない!
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
診療情報提供書
医師が書けばこそ紙1枚で4,500円それに見合った丁寧な情報提供を!
退院時入院中 退院後入院時
診療情報提供料(I)・・・250点患者の同意を得て診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合月1回限り
患者の退院月または翌月に他院後の治療計画、検査結果、画像情報その他の必要な情報を添付
200点加算
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
退院サマリー
退院サマリー作成から逃れることは出来ない
退院時入院中 退院後入院時
診療録管理体制加算・・・30点(入院初日)退院時要約が全患者について作成されていることが必要
某病院・・・1年間の退院患者6,000人とすると300円×6,000件=180万円
入院中から退院時要約の作成に取りかかることにより、問題点の取りこぼしを防ぎ、系統的な診療にも役立つ
病院スタッフに迷惑をかけない保険診療
傷病詳記
臨床対応が困難な症例ほどレセプト対応も手間がかかる・・・
退院後入院中 退院時入院時
高額なレセプト請求(例えば100万円/月)
なぜ高額にならざるを得なかったのか?なぜ高額な薬剤使用が必要だったのか?なぜ長期療養が必要だったのか?その効果は?・・・
高額な“請求書”を納得させる具体的な記載が求められる
Take Home Message
「保健医」、「保健医療機関」として診療(請求)するには守るべきルールがある
研究目的の検査を保険診療で請求することは出来ない
①退院サマリーは患者さんの適切な診療継続のため迅速に作成する
②退院サマリー作成は診療報酬算定の条件
患者さんのためなら全て保険でカバーされる?
大学病院なら研究目的の検査もOK?
退院サマリーは退院後にじっくり作成するもの?
ご静聴ありがとうございました
研修医のための保険診療のルール