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看護師の目線にたった医師指示電子化の試み中川里恵

1)武田理宏

1)藤井歩美

1)池辺良重

1)近藤里志

2)森章生

3)

松原重雄4)

松村泰志1)

大阪大学医学部附属病院医療情報部1)

インフォコム株式会社2)

株式会社オネスト3)

NECシステムテクノロジー株式会社4)

Development of a system for giving and receiving instruction with themindset of clinical nurse

Nakagawa Rie1) Takeda Toshihiro1) Fujii Ayumi1) Ikebe Yoshie1)

Kondoh Satoshi2) Mori Akio3) Matsubara Shigeo4) Matsumura Yasushi1)

Department of Medical Informatics,Osaka University Hospital1) INFOCOM CORPORATION2)

HONEST Co. Ltd,3) NEC System Technologies. Ltd,4)

Nurses prepare nursing care schedules based on instructions issued by physicians and the nursing plans they preparethemselves, and implement these schedules. Physicians’ instructions are noted on instruction slips that are provided to thenurses. However, the instructions are usually written in a disorganized manner, and the revision history is difficult toascertain. In addition, the instructions need to be transcribed when preparing the nursing schedules. As such, human errorcan occur, and this has been an issue in the past.

Our team introduced a system that resolves these issues in the course of converting the instructions to electronic form.When physicians issue instructions in the form of free comments, it allows a greater degree of freedom in creating the

instructions. On the other hand, nurses might find it difficult to clarify points that have changed when they receive theseinstructions, and they need to input the nursing care schedule again. As such, the issues involved in the management ofpaper medical records cannot be resolved. Consequently, we decided to adopt templates for inputting instructions.

Instruction items (bed rest level, body temperature measurement, etc.) were unified for the entire hospital, and one templatewas prepared for each instruction item. When an instruction is changed, it is written over the previous one. This facilitatesconfirmation of the changes made, and prevents duplicate instructions if the termination of instructions is inadvertentlyomitted.

Input instructions are displayed in calendar form with the instructions issued the previous day and week listed, whichallows the history of changes and currently active instructions to be easily discerned.

Each instruction template item was assigned an external reference code, and a correlation table with the nursing care masterwas prepared. This enables it to be linked to the nursing care schedule when instructions are received. The scheduled careitems, time and number of times are displayed on the screen, so the nurses need only to register the instructions whenconfirming the schedule. They do not need to transcribe the instructions, so operations are simplified.

In this system, the nursing system and care schedule are also linked. Around 2,000 types of physicians’ instructions and 60,000 care plan items have been linked with the care schedule.

Physicians’ instructions and care items scheduled based on the nursing plan are displayed on the screen for inputting thecare undertaken, and are indicated on the temperature record table.

As discussed above, the preparation of a care schedule based on the physicians’ instructions and nursing diagnosis, theexecution of care and indication on the temperature record table can now be carried out seamlessly.

Keywords: instructions , nursing care

1.1.1.1.1. はははははじじじじじめめめめめににににに指示は一般指示、処方指示、注射指示に大別される。一般指示とは、患者のADLやケアの方法、観察や測定などの看護に関連する指示や、処置・検査に関連する指示を指し、看護ケアに大きく関わる。当院では、オーダエントリシステムが導入された後も、指示は用紙運用を行ってきた。実際の運用では、医師が指示簿に指示記載日、指示開始日、指示の区分（開始、変更、終了等）、指示内容、指示医のサインを記載し、看護師はこれを確認して、必要に応じてケアスケジュール（看護オーダ）を作成し、指示受けしていた（図１）。新規指示や、指示変更がある場合は、指示簿に追記し、終了指示は、該当の指示に終了日時と指示医のサインを記載していた。この為、入院が長い患者や、指

示が頻繁に変わる患者の場合、どの指示が終了し、どのように変更され、どの指示が現在アクティブなのかなどの把握が困難であった。指示変更の際には、前回の指示を終了する必要があるが、しばしば終了忘れによる二重指示が発生することがあった。診療科によっては、指示を簡易に入力できるように、予め指示内容を印刷した指示用紙を作成して使用していた。医師は、自由に指示を記載できるため、あいまいな指示表現となり、正確に指示伝達できないケースが時々見られた。特に転棟・転科した場合には転棟先の看護師には指示が伝わりにくい問題があった。また、看護師は、指示受けの際に指示用紙を確認しながら電子カルテ上で指示に対応したケアスケジュールの登録を行うため、転記作業が生じており、転記ミスが生じることが

1-C-3-31-C-3-31-C-3-31-C-3-31-C-3-3 一一一一一般般般般般口口口口口演演演演演/1-C-3:/1-C-3:/1-C-3:/1-C-3:/1-C-3:一一一一一般般般般般口口口口口演演演演演４４４４４

医療情報学 30(Suppl.),2010 301

あった。指示を電子化する際、紙運用と同様に指示をフリー

テキストで入力した場合、医師にとっては自由度が高く簡易であっても、看護師にとっては、医師の独自の指示表現や、指示漏れ、指示の終了忘れ等の問題が解決されない。当院では、電子カルテのシステム更新に伴い、これ

らの問題を解決した指示システムを開発、導入した。このシステムは、看護師にとって、医師の指示が分かりやすく表示され、コミュニケーションエラーが防止できるものである。本稿では、一般指示システムに焦点を当て報告する。

図1 指示の用紙運用

2.2.2.2.2. 方方方方方法・法・法・法・法・結結結結結果果果果果指示の入力には、テンプレートを使用する。入力された指示は、自然言語変換され、指示カレンダーに表示される。指示の内容は、指示カレンダーで確認できる。指示受けは、指示一覧画面から行う。指示受けをすると、対応する看護のケアスケジュールに値が入った状態でスケジュール画面が開く。ケアスケジュールされた項目は実施入力画面へ表示され、実施入力を行うと熱型表に反映する（図２）。

図2 指示システムの概要


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2.2.2.2.2.11111 指指指指指示示示示示出出出出出ししししし指示入力に使用するテンプレートは、必要と思われ

る指示項目（安静度や、バイタルサイン測定など）を各科より募集し、これを統合して、指示項目毎に作成した。指示テンプレートは、入院時や、検査・手術前に必要な指示項目をセット化することができる（図3）。セットテンプレートは、各科毎に指示項目を選択できるようになっている。これらの指示項目の作成や、セットテンプレートの選択は、各病棟の指示ワーキングのメンバーで行った。ワーキングのメンバーには看護師も含まれており、どのような指示がわかりやすいのかという看護師の目線から、指示項目の作成を行った。

図3 セットテンプレート枠内が一つの指示項目を指す。入院時に必要な指示項目がセットになっている。

2.2.2.2.2.22222 指指指指指示示示示示表表表表表示示示示示指示テンプレートで出された指示は、指示カレン

ダーに表示される。指示の内容は、この指示カレンダーから確認できる。指示カレンダーは、過去一日から1週間分の指示を一覧表示し、左の列には指示項目をグループ毎に集約して表示するようにした。最初の日にちの列には指示項目に対する指示を表示し、以後、変更のない指示は「→」のマークを、変更があった場合は、変更個所には新しい指示を表示することとした。終了した指示は「→」が消え、空白のセルとなる（図4）。カレンダー表示の場合、表示枠が制限されるため、指示の詳細内容は、セルにカーソルをあてた際にツールチップで表示するか、一日詳細画面で確認できるようにした（図5）。一日詳細画面では選択した日の全てのアクティブな指示が詳細表示される。また、一日の中での指示変更の履歴は、詳細表示画面（図6）から確認できるようにした。指示受けの進捗はセルの色で表示し、カーソルをあ

てると指示医、指示受け者がツールチップで表示され、指示カレンダーから指示受けがされているかが確認できるようにした。

図4 指示カレンダーテンプレートで入力された指示は、指示カレンダーに表示される。



図5 指示詳細表示指示変更の履歴が表示される。

図6 一日詳細表示当日のすべての指示の詳細が表示される

2.2.2.2.2.33333 指指指指指示示示示示変変変変変更更更更更指示テンプレートでは指示項目の値ごとに外部参

照コードを割り振り、指示カレンダー表示マスタを介して、指示カレンダーへの表示を制御している。指示修正は、指示カレンダー上で、変更したい指示項目の該当する日付けのセルから指示テンプレートを起動し、内容を修正する。この操作で、前回指示が前日で終了し、この日から修正後の指示が新たに開始される。新規指示で既存と同じ項目の指示を入力した場合でも、同様に処理される。これにより、前回指示の終

了忘れを防止できる。医師は指示カレンダーで、正しく指示修正が行えた

かを確認する。指示カレンダーに表示する事で、変更内容の把握が容易となる。

2.2.2.2.2.44444 指指指指指示示示示示受受受受受けけけけけ看護師は、指示が出されると、別の画面で指示受け

を行う。指示がフリーコメントで出されている場合、これに関連したケア項目のスケジュールを新たに登録する必要があるが、テンプレーでは指示項目の値に外部参照コードを割り振り、指示カレンダー表示マスタから看護ケアとの連携マスタを介して、対応する看護ケアに連動する仕組みとした。これにより、指示受けを行うと、ケア項目、時間や回数をスケジュールした状態でケアスケジュール画面が表示されるため、看護師は確認して登録するだけでケアスケジュールが登録される。これにより、転記作業がなくなり、作業の簡略化が図られた（図7）。指示から連動したケア項目は、看護師の判断で変更した場合には、項目の前に「＊」を付けて区別できるようにした。ケアスケジュールは、指示からの連動だけでなく、看護計画からの連動も可能としている。医師の指示や看護計画から連動してスケジュールしたケア項目は、実施日にケアの実施入力画面に表示される。実施入力をする事で、熱型表に反映される。項目によっては、コスト連携する。

図6 指示からケアスケジュールへの連動指示から連動してきたものについては★がつく。これを確認して確定すると指示受けした事になる。

2.2.2.2.2.55555 マママママスススススタタタタタ作作作作作成成成成成今回、カレンダーへの表示や、看護のケアスケジュールへの連動を実現するために、指示テンプレート、看護のケアマスタの他に、カレンダー表示マスタ、看護ケア連動マスタの二つのマスタを作成している。指示テンプレートは約370件作成した。指示テンプレートには約2000個の値があり、指示カレンダーに表示される。指示テンプレートの値と看護ケア項目とは1：ｎの関係にあり、約3000個のケア項目に連動させた（図8）。


304 第30回医療情報学連合大会 30th JCMI (Nov., 2010)

図8 カレンダー表示マスタと看護ケア連動マスタ

3.3.3.3.3. 結結結結結果果果果果及及及及及びびびびび考考考考考察察察察察今回、指示入力にテンプレートを使用したことで、医

師の指示記載の自由度は低くなったが、予め選択項目が決まっているため、統一した指示表現、形式とすることができた。また、指示テンプレートの作成には看護師が関わり、看護師の目線から指示項目を選択し、表現を決めた。これにより、指示の把握が容易となった。必要な指示項目はセットテンプレートで表示できる

ため、指示漏れが発生しにくくなった。セットテンプレートは、用紙で記載していたのと同じ感覚で、簡易に入力できるため、医師の入力の負担は大きくないと考える。また、テンプレートによる指示入力により、指示を指

示項目毎にカレンダー形式で表示する事が可能となった。カレンダー形式の場合、追記した指示のリスト表示とは異なり、変更履歴や、現在アクティブな指示の把握が容易となる。しかし、カレンダー形式では、表示枠に制限があるため、一日の中での指示変更を表示する事ができない。本システムでは、詳細表示から履歴を確認できるようにしているが、頻繁に指示が変更される集中治療領域においては、把握しやすい別システムの開発が望まれる。フリーテキストによる指示では、指示変更の際には、

前の指示を終了し、新規指示を追記する必要があり、紙運用と同様に、指示の終了忘れが生じる危険性が

ある。一方、テンプレートによる指示入力では、前回指示は自動的に終了される為、終了忘れによる二重指示はなくなった。一般指示では、看護ケアが発生するものは少なくな

い。ケアスケジュールを指示毎に行っていたのでは、効率も悪く、転記ミスが生じる可能性が高い。このため、看護ケアへの連動は、きわめて重要である。今回、テンプレートを用いたことで、看護ケアへの連動が可能となった。この方法であれば、発生源からの連動となるため、転記ミスがなくなり、無駄な作業を省くことができ、看護師の業務量が軽減されたと考える。さらに、実施入力することにより熱型表に自動反映するため、指示出しから記録までが一連の流れで行えるようになった。これらを実現するためには、膨大な量のマスタが必

要であり、その管理方法については今後の課題である。

4.4.4.4.4. まままままとととととめめめめめテンプレートによる指示入力を行う事によって、指示の統一ができた。指示カレンダー表示により、指示がわかりやすく表

示されるようになった。また、医師指示や看護計画からケアスケジュールが連動して作成され、更に作成された実施入力枠で実施入力をすると熱計表に反映される。このように指示から記録までが一連の流れで行えるようになった。



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