世界の至宝 サヌカイトhasegawa/OC2009/sanukite.pdf世界の至宝 サヌカイト 図3...

1
世界の至宝 サヌカイト 図3 中国四国に流通したサヌカイト石器 図5 坂出市金山東斜面の石器塚 図7 金山の地質断面 図11 琮(Sou) 図10 琴(Kin) 図13 琅 (Rou) 図15 磬 (Kei) 図6 旧石器時のハイテク基地金山東斜面 図8 サヌカイトの物理特性 図9 サヌカイト楽器の創作者 前田仁博士(1929 ~2008) サヌカイトは約1300万年前に噴出したガラス質古銅輝 石安山岩です。 ドイツの地質学者ナウマン が持ち帰っ た岩石を鑑定したヴァインシェンクは、極めて細粒緻密 な特殊な岩石のため、讃岐の地名にちなんで1891年 に「サヌカイト」と命名しました。サヌカイトは、坂出市から 高松市にある五色台、城山、金山の山頂に分布してい ます。サヌカイトには普通の火山岩に含まれる班晶がほ とんど含まれません。また、Mg成分の多い古銅輝石,斜 長石と磁鉄鉱の微小な結晶を含むのが特徴です。 縄文時代~弥生時代にか けて、坂出市金山産のサヌカ イトが、瀬戸内から、高知県 や日本海まで流通しました。 サヌカイトを打撃によって割る と、ナイフ型石器などを容易 に作ることができます。しか も、エッヂが鋭く、他の石と比 較して切れ味が抜群です。 サヌカイトは叩くと金属音がでるため、 地元では「かんかん石」と親しまれてきま した。サヌカイトは、吸水率が約0.04%,P 波伝播速度が約6km/sと最高級石材の庵治石 と比較しても非常に緻密です。これが、サ ヌカイトから金属音が出る理由です。 前田仁博士(1929~2008)は、これまでのかんかん石のイメージを超えたサヌカイト楽器を創作しました。楽器の種類も豊富で、石琴(Kin)、釣鐘状の琮 (Sou)、水が石をたたくような琅 (Rou)、中国古来の石の楽器である磬 (Kei)など、同じ石から多様な音色が創作されています。そして、サヌカイトの楽器は世界 の有名な音楽祭や宗教行事で演奏され、世界中の音楽家だけでなく,宗教家,学者などからも「太古の音色」「天使の響き」と絶賛されています。 サヌカイトは通常丘陵の山頂部にあるのですが、金山東斜面では地すべりによって天然採石場が形成され ました。このため、金山は山腹でサヌカイトを容易に採取加工でき、しかも海が間近で搬出が容易という好条 件がありました。 図1 五色台周辺のサヌカイト(香川県教育委員会資料より) 2.中国四国を席巻したサヌカイト石器 1.サヌカイトとは 3.石器時代のハイテク基地・金山東斜面 4.かんかん石の特長 5.楽器になったサヌカイト 香川大学工学部 長谷川研究室 図2 サヌカイトの偏光顕微鏡写真 (上:オープンニコル,下:クロスニコル) 図12 琮(Sou) 図14 琅 (Rou) 図16 磬 (Kei) 図4 サヌカイト製石器 (前田宗二氏所蔵) サヌカイト石器塚 五色台 坂出市 金山東斜面 【謝辞】豊和開発(株)前田宗一会長から全面的な協力をいただきました。

Transcript of 世界の至宝 サヌカイトhasegawa/OC2009/sanukite.pdf世界の至宝 サヌカイト 図3...

Page 1: 世界の至宝 サヌカイトhasegawa/OC2009/sanukite.pdf世界の至宝 サヌカイト 図3 中国四国に流通したサヌカイト石器 図5 坂出市金山東斜面の石器塚

世界の至宝 サヌカイト

図3 中国四国に流通したサヌカイト石器 図5 坂出市金山東斜面の石器塚

図7 金山の地質断面

図11 琮(Sou) 図10 琴(Kin)

図13 琅 (Rou) 図15 磬 (Kei)

図6 旧石器時のハイテク基地金山東斜面

図8 サヌカイトの物理特性

図9 サヌカイト楽器の創作者 前田仁博士(1929 ~2008)

サヌカイトは約1300万年前に噴出したガラス質古銅輝

石安山岩です。 ドイツの地質学者ナウマン が持ち帰っ

た岩石を鑑定したヴァインシェンクは、極めて細粒緻密

な特殊な岩石のため、讃岐の地名にちなんで1891年

に「サヌカイト」と命名しました。サヌカイトは、坂出市から

高松市にある五色台、城山、金山の山頂に分布してい

ます。サヌカイトには普通の火山岩に含まれる班晶がほ

とんど含まれません。また、Mg成分の多い古銅輝石,斜

長石と磁鉄鉱の微小な結晶を含むのが特徴です。

縄文時代~弥生時代にか

けて、坂出市金山産のサヌカ

イトが、瀬戸内から、高知県

や日本海まで流通しました。

サヌカイトを打撃によって割る

と、ナイフ型石器などを容易

に作ることができます。しか

も、エッヂが鋭く、他の石と比

較して切れ味が抜群です。

サヌカイトは叩くと金属音がでるため、

地元では「かんかん石」と親しまれてきま

した。サヌカイトは、吸水率が約0.04%,P

波伝播速度が約6km/sと最高級石材の庵治石

と比較しても非常に緻密です。これが、サ

ヌカイトから金属音が出る理由です。

前田仁博士(1929~2008)は、これまでのかんかん石のイメージを超えたサヌカイト楽器を創作しました。楽器の種類も豊富で、石琴(Kin)、釣鐘状の琮

(Sou)、水が石をたたくような琅 (Rou)、中国古来の石の楽器である磬 (Kei)など、同じ石から多様な音色が創作されています。そして、サヌカイトの楽器は世界

の有名な音楽祭や宗教行事で演奏され、世界中の音楽家だけでなく,宗教家,学者などからも「太古の音色」「天使の響き」と絶賛されています。

サヌカイトは通常丘陵の山頂部にあるのですが、金山東斜面では地すべりによって天然採石場が形成され

ました。このため、金山は山腹でサヌカイトを容易に採取加工でき、しかも海が間近で搬出が容易という好条

件がありました。

図1 五色台周辺のサヌカイト(香川県教育委員会資料より) 2.中国四国を席巻したサヌカイト石器

1.サヌカイトとは

3.石器時代のハイテク基地・金山東斜面 4.かんかん石の特長

5.楽器になったサヌカイト

香川大学工学部 長谷川研究室

図2 サヌカイトの偏光顕微鏡写真

(上:オープンニコル,下:クロスニコル)

図12 琮(Sou)

図14 琅 (Rou) 図16 磬 (Kei)

図4 サヌカイト製石器

(前田宗二氏所蔵)

サヌカイト石器塚

五色台

坂出市

金山東斜面

【謝辞】豊和開発(株)前田宗一会長から全面的な協力をいただきました。