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畜産農場における消毒マニュアル (根室地区版) 北海道根室家畜保健衛生所

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畜産農場における消毒マニュアル

(根室地区版)

北海道根室家畜保健衛生所

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目 次 ページ

Ⅰ 消毒について 1-6

1 消毒とは 1

2 通常の消毒と伝染病対策のための消毒 1

(1) 通常の消毒 1

(2) 伝染病対策のための消毒 1

3 消毒薬による消毒の利点と欠点 1-2

(1) 利点 1

(2) 欠点 2

4 消毒効果に影響を与える要因 2

5 消毒薬について 2-5

(1) 両性石けん 2

(2) 逆性石けん 3

(3) 塩素剤 3

(4) ヨード剤 3

(5) オルソ剤 3

(6) 強アルカリ剤 3-4

(7) グルタラール製剤 4

6 対象物に応じた消毒方法 4-5

表1 消毒薬の種類と使用対象について 6

Ⅱ 畜 産 農 場 に お け る 伝 染 病 侵 入 防 止 の た め の 消 毒

7-12

1 農場出入口の消毒方法 7-8

(1) 農場出入口の限定と立ち入り規制 7

(2) 車両用の消毒ゾーンの設置 7-8

2 牛舎出入口の消毒方法 8-9

(1) 部外者の立ち入りの制限 8

(2) 踏み込み消毒槽 8

(3) 牛舎専用の作業着、長靴 9

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(4) 消毒マットの設置 9

3 牛舎内の消毒 10-12

(1) 消毒薬の種類と特性 10

(2) 発泡消毒 10-11

(3) 牛舎消毒の頻度 11

(4) 牛舎消毒の注意点 12

Ⅲ 伝染病発生時の消毒 13-17

1 畜産農場における消毒 13-15

(1) 石灰乳塗布 13-14

(2) 消石灰散布 15

(3) 塩素剤の散布 15

2 消毒ポイントにおける消毒 15-17

(1) 車両消毒 15-17

(2) 車内で実施する消毒 17

Ⅳ 厳冬期の消毒 18-19

1 農場出入口の消毒 18

2 畜舎出入口の消毒 19

Ⅴ イベント等における消毒 20-21

1 駐車場、会場出入口の消毒 20

2 建物出入口の消毒 21

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Ⅰ 消毒について

1 消毒とは

物体に付着し、あるいは含有している病原微生物を死滅させ、その物

体を病原的に無害な状態にする(感染性を失わせる)ことをいう。

言い換えれば、人または動植物に有害な微生物を殺して無害にするこ

と。

2 通常の消毒と伝染病対策のための消毒

(1) 通常の消毒

清浄度の維持と向上、細菌数レベルを下げること

(ゼロにする必要はない。頻度が重要。)

目的:家畜の健康維持、乳質改善

使用消毒薬:常用消毒薬

(2) 伝染病対策のための消毒

伝染病(感染症)対策

病原菌やウイルスをゼロにする

対象の微生物:病原微生物の完全除去、清浄化

使用消毒薬:目的とする病原体に有効な薬剤

※(2)は消毒のレベルが極めて高い。

徹底度、丁寧度、綿密度が重要。

絶対にやり残しが許されない。

3 消毒薬による消毒の利点と欠点

(1) 利点

時間、場所を選ばずに手軽に実施できる

大きな物品、広い場所で対応できる

対象物をいためることが少ない

効果の発現が早い

多くの病原体を消毒できる

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(2) 欠点

それぞれの特性を理解して使用しないと、消毒対象に対して効果が

発揮されないことがある

消毒薬によっては特定の病原体にしか効果がない

4 消毒効果に影響を与える要因

(1) 濃 度 適正濃度で使用する

(2) 量 対象物に対し十分な量を使用する

(3) 時 間 できるだけ長く病原体と接触させる

(4) 温 度 一般的に高温で使用するほど効果が高い

高温ほど殺菌力は

強くなる

消毒薬によっては温度が

上がりすぎると殺菌力が

低下する場合もある

(5) pH 消毒薬毎に至適pHがある

(6) 有機物 血液、糞便、土等の存在下では効果が減じる

5 消毒薬について

(1) 両性石けん

利点:効力は逆性石けんより弱いが、広いpH 領域で効果を示す

毒性、刺激性、金属腐食性が低い

用途:畜舎消毒、器具等

主な薬品名:パステン、キーエリア A

消毒薬の効力と温度との関係

低 温度 高

効力

一般の消毒薬

ヨード剤

塩素剤

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(2)逆性石けん

利点:毒性、刺激性、金属腐蝕性が低い

アルカリ側で効果が強い

用途:機械器具類、畜鶏舎、飲水消毒等

主な薬品名:パコマ、アストップ、クリアキル、ロンテクト

(3)塩素剤

利点:多くの病原体に有効

欠点:蒸発しやすく高温では効力が低下

pH、温度、紫外線等により濃度が低下しやすい

繊維、金属、ゴム、皮膚に腐食性あり(一部発錆性あり)

主な薬品名:ビルコン、クレンテ

(4)ヨード剤

利点:多くの病原体に有効

欠点:高温で使用すると有効成分が蒸発しやすく効力が低下

紫外線、有機物により著しく効力が低下

金属腐食性あり

用途:畜舎消毒、乳頭ディッピング

主な薬品名:クリンナップ A、ヨードホール

(5)オルソ剤

利点:コクシジウムに有効

欠点:臭いが強い

紫外線により分解されやすい

排水規制がある

主な薬品名:タナベゾール、ネオクレハゾール

(6)強アルカリ剤

利点:非芽胞性細菌やウイルスに効果がある

有機物や脂肪が付着した場合も有効

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欠点:人体、畜体に吸入または直接接触した場合、炎症を起こすこ

とがあるため、取扱いに注意が必要。

用途:畜舎周辺の消毒、石灰乳塗布消毒

主な薬品名:生石灰、消石灰

※生石灰の保管及び取り扱いについて

生石灰は水に触れると発熱等の危険を伴います。牛舎で保管中の生

石灰が雨水と化学反応を起こしたことにより発熱、出火したと見ら

れる火災も発生していますので、事故防止のため、以下のことに注

意して、適正な保管、慎重な取り扱いをお願いします。

・生石灰は水に触れることがないよう、台の上に積み上げて保管

しましょう。

・ドアや窓付近など、雨で濡れる場所を避けて保管しましょう。

・袋に破損がないことを確認しましょう。

・近くに燃えやすいものがないか確認しましょう。

・散布時の火傷等に注意しましょう。

(7)グルタラール製剤

利点:有機物の影響を受けにくい

抗菌スペクトルが広く効果が強い

腐食性が低い

欠点:皮膚や粘膜に対して刺激が強く、取扱いに注意が必要。

pH 調整が必要。

主な薬品名:グルタクリーン、グルターZ

6 対象物に応じた消毒方法

(1)作業着、靴 消毒薬噴霧、浸漬、踏み込み消毒槽

(2)車両 噴霧器による消毒 発泡消毒 タイヤ消毒槽

自動消毒装置

(3)器材 浸漬

(4)敷料・飲水 発泡消毒 消石灰散布 次亜塩素酸ソーダ

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(5)飼料 有機酸の添加 加熱処理

<参考>消毒液の作成方法:適切な濃度で使用する

例)パコマ(畜舎、搾乳器具の消毒:500~2000 倍で使用)

<1000 倍の消毒液の作製>

バケツ1杯(約 20 リットル)の水道水に、計量カップで

パコマの原液 20 ミリリットルを入れてよく混ぜる。

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◎ 注1

○◎

皮膚

や粘

膜に

対し

て刺

激が

強く

、取

り扱

いに

注意

が必

要。

◎◎

○◎

◎◎

一部

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ウイ

ルス

に対

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効果

がな

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2。

◎◎

○◎

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◎ 注5

◎○

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塩素

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る。

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、高

濃度

希釈

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◎ 注5

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腐食

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続性

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い。

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○○

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○○

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要。

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摘さ

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いる

出典

:「酪

農場

の防

疫 バ

イオ

セキ

ュリ

ティ

酪農

学園

大学

教授

永幡

 馨

編著

酪農

総合

研究

畜 舎

器 具

畜 体

手 指

車 両

畜舎

消毒

では

石灰

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布と

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る。

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スペ

クト

ルが

広く

、効

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の影

響を

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い。

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物の

影響

を受

けに

くい

有機

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影響

を受

けに

くい

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マリ

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蒸で

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る。

抗菌

スペ

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広く

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が強

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用に

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2

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3

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に記

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4

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5

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説明

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使用

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健衛

生所

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 蹄

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6

) 製

品名

は平

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10月

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農林

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 品

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4、

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ル、

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4、

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エイ

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ル、

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、パ

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ショ

ット

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ペル

バン

注4

塩 素 系

クレ

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、 ス

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ル、

ハイ

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ト、

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ピュ

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グル

タラ

ール

製剤

グル

タク

リー

ン、

グル

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Z、

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スカ

ット

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逆性

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、ク

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クリ

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ーム

、デ

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ック

、パ

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ック

、パ

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ック

ス、

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ル、

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ルホ

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ド、

ロン

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パコ

マ、

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スカ

ット

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スパ

ン、

プロ

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ル、

ゼッ

ト注

表1 

消毒

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 品

  

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Ⅱ 畜産農場における伝染病侵入防止のための

消毒

1 農場出入口の消毒方法

(1) 農場出入口の限定と立ち入り制限

道 路 か ら の 農 場 エ

リアと居住エリアの出入口

を明確に分けましょう。

農場外車両の農場出入口を

1ヵ所に限定し、畜舎から

離れた場所に駐車場所を決

めましょう。

出入口には、「一般車両進

入禁止」「無断立入禁止」

等の看板を設置し、不特定

多数の人及び車両の進入

を制限します。

(2)車両用の消毒

ゾーンの設置

農場出入口には、消

石灰を散布し石灰帯を

作り、管理エリアに入

る車両については、タ

イヤの消毒を行い、車

両による病原微生物の

持ち込み、持ち出しを防ぎましょう。動力噴霧器を併用すれば、より効果的

です。車内のフロアマットの洗浄、消毒も徹底しましょう。

人については、農場入口で専用長靴に履き替えてもらい、履物の洗い場や

踏み込み消毒槽を設置するなどして、消毒を実施しましょう。

農場外部

◆居住スペース

道路 農

場エリア

居住エリア住宅、庭、乗用車車庫、等

管理エリア消毒ゾーン、事務所、飼料庫、

堆肥舎、機械庫、等

畜舎エリア畜舎、パーラー、

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*消石灰を散布する際は、散布

場所を清掃し、車輪跡がつく

十分な量を散布しましょう。

また、人体に害を与える場

合がある為、散布する時は、

風向き等も考慮しましょう。

2 牛舎出入口の消毒方法

(1)部外者の立ち入りの制限

牛舎出入口には、「部外者立入禁止」のポスター等を掲げることによ

り、無用な侵入を防げます。

(2)踏み込み消毒槽

十分量の水を入れた水槽を設置し、踏み込み消毒槽に入る前に長靴

についた汚れを落とすと、消毒液が効果的に作用します。

・塩素系の消毒薬、逆性石鹸、消石灰等

・消毒液は必ず適正な濃度に希釈し、汚れたら交換しましょう。

少なくとも 1 日 1 回の交換が必要です。

・踏み込み消毒槽の中にふたを浮かべることにより、紫外線や蒸発

による変質を防ぐことができます。

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(3)牛舎専用の作業着、長靴

・専用の作業着、長靴を設置しておくと、外部からの病原体を持ち

込む機会が少なくなり、病原体の侵入防止に効果的です。

・獣医師、授精師等、頻繁に出入りする部外者に対して専用の長靴

を置くことは、他の農場からの病原体を持ち込むことを防止する

ために大変重要なことです。

(4)消毒マットの設置

・牛舎を訪問する人の中には、革靴、スニーカー等長靴以外の靴で

訪問する人もいます。これらの靴は長靴のように踏み込み消毒槽

で消毒することができず、消毒を怠りがちです。消毒液を染み込

ませた消毒マットを設置して消毒してもらうか、外来者専用の長

靴に履き替えてから牛舎内に入るよう、依頼しましょう。

・オーバーシューズの利用もより効果的です。

消毒マット

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オーバーシューズ

3 牛舎内の消毒

定期的な牛舎消毒を実施することにより、飼養環境中の病原細菌や

ウイルスを低減させ、感染症の発生を予防することができます。

(1) 消毒薬の種類と特性

①逆性石鹸…かなり低濃度でも一般的な細菌に対しては高い効果がある。

一部発泡消毒に利用が可能。

②塩素系の消毒薬…ウイルスから細菌まで高い消毒効果を発揮。

幅広く消毒できる。

③グルタラール製剤…ほとんどあらゆる病原体に有効。

ただし、人体や家畜に対する害も強く、取扱いには注

意が必要。

④消石灰…日常的に通路や牛床に散布するのに適している。

⑤生石灰…石灰乳塗布することにより、洗浄しきれない汚れや、その中の

細菌やウイルスを封じ込めて殺菌することができる。石灰乳作

製時には発熱するため、注意が必要。また、強アルカリのため、

直接触れると炎症を起こすことがあるので、注意が必要。

(2) 発泡消毒

発泡消毒は、消毒液を塗布した部分が目に見えるため、散布ムラがな

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いこと、消毒液の感作時間が長いため、消毒効果が高く、散布量も少

ないことが特徴です。写真は、専用の発泡消毒器で散布している様子で、

アルファーフォーム(泡消火薬剤)とパコマを混合して散布したものです。

逆性石けんには界面活性剤が含まれているため、単独でも専用のノズルを

使えば泡をつくることはできます。しかし、アルファーフォームを加える

ことにより、泡の状態がシェービングクリーム状になり、泡も長時間持続

します。適応として、液体ではすぐに垂れてしまう天井や柱や柵の消毒に

良いと思います。使用できる消毒薬は、逆性石けんとグルタラール製剤で

す。

(3)牛舎消毒の頻度

・牛舎全体の洗浄・消毒…1 ヵ月に1~2回程度

・牛舎全体の石灰乳塗布…1年に1~2回程度

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(4)牛舎消毒の注意点

・牛舎内を洗浄後、十分乾燥させてから消毒薬を使用すると効果が高い。

・作業時はゴーグル、マスク等の保護具を着用する。

・消毒後、牛舎に牛を入れる前に舎外で牛体を水洗するとよい。

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Ⅲ 伝染病発生時の消毒

1 畜産農場における消毒

飼養場所等 消毒方法

施設

パドック

ミルキングパーラー

生乳処理室

哺育・育成牛舎

飼槽、給水器

除糞、堆肥使用機材

牛舎周辺の土壌

踏み込み消毒槽

消毒薬散布、石灰乳塗布、消石灰の散布

消石灰の散布

消石灰の散布(器具は塩素剤使用)

消毒薬散布、塩素剤の散布

消毒薬散布、石灰乳塗布、消石灰の散布

洗浄、塩素剤の散布(給餌機器は石灰乳使用)

石灰乳塗布

消石灰の散布

消石灰、塩素剤

(1)石灰乳塗布

<塗布量の目安>

1m2 当たり、石灰乳 1 リットル

(石灰乳 粉末生石灰1:水4の割合で調整)

<方法>

①舎内の不要物を撤去し、牛舎内を徹底的に清掃します。

②高圧洗浄機等により牛舎内を洗浄します。

③電気機器や換気扇、ウォーターカップ等の金属製の機器および蛍光

灯や窓ガラス等をビニール等で覆います。

④石灰乳塗布を行います。(石灰消毒の作業手順を参照)

※石灰塗布機、洗車ブラシ、モップ等を使用し、すみずみまで塗

布します。

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~石灰乳塗布の作業手順~

等を使用できます。 洗車ブラシ、モップ等も使用できます。

(2)消石灰散布

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(2)消石灰散布

<必要量の目安>

1m2 当たり、消石灰1kg散布(1袋 40kg 入あたり40m2)

<方法>

1㎡当たり1kgを目安に散布し、竹箒等で均一に広げます。地面の

表面がムラ無く白くなる程度まで広げてください。

※牛床等への散布は、乳牛の乳房等に炎症を起こすことがあります

ので、牛を牛舎に入れる前に石灰を掃き出したり、敷料を多めに

入れる等の注意が必要です。

(3)塩素剤散布

<必要量の目安>

1m2 当たり、5リットルを散布

<方法> 例)生乳処理室等への散布

①不要物の除去および清掃を行います。

②水道水等で十分に洗浄します。

③乾燥後、塩素剤を散布し、10 分間放置後、水道水等で洗い流します。

※飼槽や給水器は塩素剤に浸漬後、水道水等で洗い流し、乾燥後使用し

ます。

2 消毒ポイント等における消毒

(1) 車両消毒

<手順>

①準備するもの

動力噴霧器、水槽タンク、タンク収納用物置、

②消毒

動力噴霧器を用い車両全体の消毒を行います。あわせて運転手の靴、

足下マットも消毒します。

③ 使用する消毒薬

口蹄疫:4%炭酸ナトリウム液(別名:4%炭酸ソーダ液)

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<使用場所>

・農場入口(農場に入る前に全ての車両や器具等の消毒)

・畜舎出入口の踏み込み槽(汚れたら直ちに交換してください)

<作り方>

<取扱上の注意>

ホルマリンとは混ぜないでください。

高病原性鳥インフルエンザ:逆性石鹸(1000 倍希釈で使用)

炭酸ナトリウムの量

(Na2CO3)

水の量 容器の参考例

80g 2リットル 2Lのペットボトル

100g 2.5リットル

200g 5リットル

400g 10リットル

720g 18リットル 一斗缶(普通の石油缶)

1kg 25リットル

7.2kg 180リットル ドラム缶

①道路から消毒対象車

をポイントに誘導

③動力噴霧器で消毒

(*手順の詳細は下記参照)

②運転手の靴底を

消毒マットで消毒

④消毒終了後、

道路に誘導

防疫テント

消毒ポイント

~消毒ポイントでの消毒手順~

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(2) 車内で実施する消毒

長靴消毒槽

使用した長靴は、運転中に消毒液に浸すと、

次の農場へ行く間に消毒を行えます。

作業終了後は運転席のマットを洗浄、消毒しま

す。

~車両消毒手順~

車両の前面から消毒液を散布、続いて左側面、後方、右側面の順に実施します。

(消毒は、車両のタイヤ周りと車底を中心に実施します)

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Ⅳ 厳冬期の消毒

1 農場出入口の消毒

消石灰は乾燥した場所で使用すると一週間以上効果(pH12 以上)は持続

しますが、水に濡れた後乾燥すると pH は低下し消毒効果が薄れます。除雪後

に散布をしましょう。

※車両が通行する場所に 1m2 当たり 1kg を目安に、ホウキ等で均一に散布し

ましょう。また、消石灰を散布する幅は3m 以上にしましょう。

※取扱上の注意

散布時は、直接、皮膚・口・呼吸器等に付着しないよう、マスク、メガネ

(ゴーグル)、ゴム手袋等を着用してください。

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2 畜舎出入口の消毒

従来どおりビルコン S やクレンテを使用する場合は凍結防止のため畜舎内側

に踏み込み消毒槽を設置しましょう。踏み込み消毒槽の中にふたを浮かべるこ

とにより、ある程度凍結防止の効果があります。また、消石灰が靴底に万遍な

く付く量をバットに入れて使用する方法もあります。

冬季は畜舎出入口の消毒液が凍結するため、畜舎毎に専用の長靴を使用する

ことも大変効果的な方法です。

<参考> 消毒液にウォッシャー液を添加することによる凍結防止効果

ビルコンS (500倍希釈)の場合

水+ウォッシャー液(1:1)混合 半凍結 pH 2.0(酸性)

ウォッシャー液のみ 凍結無 pH 2.3(酸性)

クエン酸(0.2%)の場合

水+ウォッシャー液(1:1)混合 半凍結 pH 2.4(酸性)

ウォッシャー液のみ 凍結無 pH 2.6(酸性)

炭酸ソーダ(4%)の場合

水+ウォッシャー液(1:1)混合 凍結 pH 10.6(アルカリ性)

ウォッシャー液のみ 半凍結 pH 10.5(アルカリ性)

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Ⅴ イベント等における消毒

1 駐車場、会場出入口の消毒

駐車場、会場への出入口には石灰帯を設けましょう。車のタイヤが1回転以上

して十分消毒されるよう、3m以上の長さで散布してください。

雪が降った場合は、充分に除雪した後に、散布するようにし

ましょう。

* 石灰は、体内に吸い込むと有害となる恐れがあります。風

が強く石灰が舞う危険がある場合は、塩素系消毒薬を染み

込ませた消毒マット等(ムシロ、じゅうたん等でも可)で

消毒を実施しましょう。冬期はマットの凍結防止のため融

雪マットを下に敷きましょう。

*厳冬期の消毒については18ページを参照してください。

融雪マット 車両用、歩行用あり

車両消毒マット

石灰帯

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2 建物出入口の消毒

建物の出入口には消毒用マットを設置し、入

場者の靴底消毒を徹底しましょう。冬季間は積

雪があるため、その際は、右図のように屋内に

設置するか、下に融雪マットを敷いてください。

消毒用マットの形態は様々ですが、理想的なものは、右図のように靴底にしっ

かり消毒液が浸み込む厚手のタイプですが、靴

の中まで濡れる恐れがあります。上右図の起毛

タイプは、消毒薬含量は少なくなりますが、靴

の中まで濡れる恐れはなくなります。