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実 験 的 ク リプ トコ ッカ ス症 に 対 す る 副 腎 皮 質 ホ ル モ ン の影 響 特にその生体内菌分布に及ぼす影響について 東京大学医学部上田内科(主 任:上 田英雄教授) (昭和34年5月27日 付) クリプトコッカス症 はCγPtpteeeeCUS%θofo7甥 ¢nsの 感 染 に よつ て 惹 起 され る人 及 び 動 物 の 真菌 症 で あ る。 BUSSE及びBUSCHKE(1894~1896)に よ り初 め て報 告 され て以 来,極 めて稀な疾患 と され て い た が,近 年真菌 症に 対す る関 心 が 急 激 に.たか ま り。更 には抗生物質の広 範 な使用,或 い は 副 腎 皮 質 ホ ル モ ンの普 及 と相倹 つ て,そ の報 告例 も次 第 に増 加 しつ つ あ る。EMONSに よ れ ば, 1952年迄 に す で に221例 以上 の 報 告1)が あ り,ま LITTMANによれ ば1955年に は そ の症 例 数 は3002)を超 した とい わ れ るが,本 邦 に お い て は,渡 辺3)(1952)及 五 斗4)(1916)の 報 告 に 初 ま り,今 日迄 に未 発表 の も の を 含め総数30例5~32)を数 え,近 年 増 加 の傾 向 に あ る。 一 方1950年ve=・一チ ゾ ンが リウ マ チ性 疾 患 の治 療 に 応用 され て か ら,合 併せる感染症或いは結核症の増悪せ る報 告 が相 次 ぎ,以 来コーチゾン系ホルモンの 使用 は感 染症 に 対 して は 禁 忌 と され て きた。併 し感染 に 対 し生 体 の 示 す 防 禦 反 応 に は。特 異 的 部分 と非 特異 的 部 分 とが あ り,前 者 を 化学 療 法 に よつて抑 制 す る の と併 行 して,後 者 が 特 に 生 体に とつ て不 利 で あ る な らば,こ れ を コー チ ゾ ン系 ホル モ ンに よ り積 極 的 に緩 和 さ せ る事 は有 利 と考 え られ,最 近 で は これ を肯 定 す る幾 多 の 報告se~s1)が な され た。即 ち 今 日で は,コ ーチ ゾン系 ホ ルモ ンは 抗 生 物 質 と併 用 の下 に,適 応 を選んで使用すれば,感 染症治療の強力な補助 手段 ともな り得 るとい う事が 出来 よ う。 撫真菌症に対する認一チゾン系ホルモンの影 響については,臨 床例においても動物実験にお い て も否 定的 な もの が 多 く,而 もそ の 報 告 の大 部 分 は カ ン ジ ダ症 に 関 す る もの で,ク リプ トコ ツ勲 ス症 に 関 す る報 告 は 極 め て 少 な い よ うで あ る。著 者 は 実 験 的 ク リプ トコ ッ カ ス症 に 対 し副 腎皮 質 ホ ル モ ンを 投 与 し,そ の 影 響 を 主 と して 生体 内 に お け る菌 分 布 の 面 よ り検討 した の で, 以下その成績を述べる。 実駿方法及び実験成績 1.実 験的 ク リブ トコ ツカス症における 臓 器 内菌 数 の消 長 実験方法 実験 動物 としては16~18gのdd系マ ウスを使用 した。 接 種 菌 株 はCryP彦ococcusneofoγmansDUKE株 を用 い,SABOURAUD寒 天培 地 上 に37。C3日 間培養…した菌体 を集 め,生 理 的 食 塩 水 に て3回 洗 灘 し,BURGER--TtrRK 血 算板 に て0.25cc中 に 菌 体500万を含 む 生 理 的 食 塩 水 浮游液を作製 した(以下菌体の生理的食塩水浮游液の作 製 はす べ て こ の方 法 に よる)。接 種 方 法 は 尾 静 脈 接 種 と した。 接 種 後3日 目毎 に3匹 宛 の マ ウ ろを エ ー テル 麻酔 下 に 解剖 し,そ の脳 ・肺 ・肝 ・腎 ・脾の各臓器切片を無菌的 に捌 出 し,torsionbalanceに て重 量 測 定 後15ccの滅 菌生理的食塩水を加え,ホ モゲナイザーにてエマルジョ ン とな し,その0.5ccにSABOURAUD寒 天10ccを加 表1.臓 内菌 の推 臓制穐 後 102 542 208 344 112 6日 107 23,780 180 711 18 9日 3,351 1,032 12日 4,963 4,860 1,471 1,197 698 15日 無数 16,905 129 736 209 ・8日12・日 無数 20,512 767 3,990 6,112 無数 無数 1,388 3,250 2,153 25日 無数 無数 397 2,476 259 7 2 無数 無数 16 293 44 数字 は臓 器11309当りか ら培養 された集落数 図1臓 番 別 菌数 の消長 1匝==コ=コ== 25600 III88 3200 1§88 188 36912151821252ワ 接 種 后 日数

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実験的 クリプ トコッカス症に対する副腎皮質ホルモンの影響

特にその生体内菌分布に及ぼす影響 について

緒 言

佐 々 隆 之

東京大学医学部上田内科(主 任:上 田英雄教授)

(昭和34年5月27日 受 付)

ク リプ トコ ッ カ ス 症 はCγPtpteeeeCUS%θofo7甥 ¢nsの

感 染 に よつ て 惹 起 され る人 及 び 動 物 の 真菌 症 で あ る。

BUSSE及 びBUSCHKE(1894~1896)に よ り初 め て報 告

され て以 来,極 め て稀 な疾 患 と され て い た が,近 年 真菌

症に 対す る関 心 が 急 激 に.たか ま り。更 に は抗 生 物 質 の 広

範 な使用,或 い は 副 腎 皮 質 ホ ル モ ンの普 及 と相倹 つ て,そ

の報 告例 も次 第 に増 加 しつ つ あ る。EMONSに よれ ば,

1952年 迄 に す で に221例 以 上 の 報 告1)が あ り,ま た

LITTMANに よれ ば1955年 に は そ の症 例 数 は3002)を 超

した とい わ れ るが,本 邦 に お い て は,渡 辺3)(1952)及 び

五斗4)(1916)の 報 告 に 初 ま り,今 日迄 に未 発表 の も の を

含め総数30例5~32)を 数 え,近 年 増 加 の傾 向 に あ る。

一 方1950年ve=・ 一チ ゾ ンが リウ マ チ性 疾 患 の治 療 に

応用 され て か ら,合 併 せ る感 染 症 或 い は結 核 症 の増 悪 せ

る報 告 が相 次 ぎ,以 来 コ ー チ ゾ ン 系 ホ ル モ ン の

使用は感染症 に対 しては禁忌 とされ てきた。併

し感染に対 し生体の示す防禦反応には。特 異的

部分 と非特異 的部分 とがあ り,前 者を化学 療法

によつて抑制す るの と併 行 して,後 者が特に生

体に とつて不利 であるな らば,こ れ を コーチ ゾ

ン系ホルモンに よ り積極的 に緩和 させる事 は有

利と考え られ,最 近では これ を肯定す る幾 多の

報告se~s1)がなされ た。即 ち今 日では,コ ーチ

ゾン系ホルモ ンは抗生物質 と併用 の下に,適 応

を選んで使用すれば,感 染症治療の強力な補助

手段 ともな り得 るとい う事が 出来 よ う。

撫真菌症に対す る認一チ ゾン系ホルモ ンの影

響については,臨 床例において も動物実験にお

いても否定的な ものが多 く,而 もその報告 の大

部分はカンジダ症 に関す るもので,ク リプ トコ

ツ勲ス症に関す る報告は極めて少ない よ うであ

る。著 者は実験的 ク リプ トコッカス症に対 し副

腎皮質ホルモ ンを投与 し,そ の影響を主 として

生体内におけ る菌 分布の面 よ り検討 したので,

以下その成績を述べ る。

実駿 方法及び 実験成績

1.実 験的 ク リブ トコ ツカス症における

臓器 内菌数 の消長

実 験 方 法

実験 動物 としては16~18gのdd系 マ ウスを使用 した。

接種菌株はCryP彦ococcusneofoγmansDUKE株 を 用

い,SABOURAUD寒 天培 地上に37。C3日 間培養…した菌体

を集 め,生 理的食塩水に て3回 洗灘 し,BURGER--TtrRK

血 算板 にて0.25cc中 に菌体500万 を含む生理的食塩水

浮游液 を作製 した(以 下菌体 の生理的食塩水浮游 液の作

製 はす べてこの方法 に よる)。接 種方法は尾静脈接種 と

した。

接種後3日 目毎に3匹 宛 のマウろをエ ーテル麻酔 下に

解剖 し,そ の脳 ・肺 ・肝 ・腎 ・脾の各臓器切片を無菌的

に捌 出 し,torsionbalanceに て重量測定後15ccの 滅

菌生理的食塩水を加え,ホ モゲナイザ ーにてエマルジ ョ

ン とな し,そ の0.5ccにSABOURAUD寒 天10ccを 加

表1.臓 器 内 菌 数 の 推 移

臓制穐 後

102

542

208

344

112

6日

107

23,780

180

711

18

9日

3,351

1,032

12日

4,963

4,860

1,471

1,197

698

15日

無 数

16,905

129

736

209

・8日12・ 日

無 数

20,512

767

3,990

6,112

無 数 ・

無 数

1,388

3,250

2,153

25日

無 数

無 数

397

2,476

259

日72

無数

無数

16

293

44

数字 は臓 器11309当 りか ら培養 された集落数

図1臓 番別菌数の消長

1匝==コ=コ==数

25600

III883200

1§88

188

36912151821252ワ

接 種 后 日数

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310 CHEMOTHERAPY SEP↑.1959

え,37℃3日 間平板培養 した。培 地

上 の集落はその数が大な る時は熊谷式

集 落計算盤にて 算 定 し,臓 器1/309

当 りに換算 した(以 下臓器内菌数の測

定 はすべて この方法に よる)。

実 験 成 績

各臓器 の培 養に よつて得 られた集落

数 の推移 は第1表 に示され,こ れ を図

示 す ると第1図 の如 くなる(第1表,

表 2

876543210

麦数そ種接

ウス

マ9101112131415161718192021

 

A

K

K

群2020202019191817171715108777542221

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数字 はマ ウスの生存数

第1図)。図 は横

軸 に菌 接種後の 日数を と り,縦 軸には得 られた菌数を4●を底数 とす る対数に よつて表わ した

即 ち,接 種 された真菌は先ず肺に急速に増え,脳 の菌

数 はこれ にお くれて増加 して くるが,菌 接種 後12日 日

に 肺,脳 の菌数 が大略同数 とな り,以 後脳の菌数の方が

大 とな り,脳,肺 の順 に菌 が無数に増加す る。こ れに対

し,肝 ・腎 ・脾 の菌 数は=概ね平行 し,終 始高い値 を示 さ

な かつた。

IL実 験的ク リプ トコ ツカス症に対 する副 腎皮質

ホルモ ンの影 響

実 験 方 法

接種菌株はCryptoeeccusneofermansDUKE株 を用

~・,そ の菌体62万5千 を0.25cc生 理的食塩 水浮游液

と し,マ ウス尾静脈 より接種 した。

副腎皮質 ホルモ ンとしては米国Schering社 製 ブ レ ド

ニ ン注射用懸濁液 を用 い,こ れ を 注射用蒸溜水に て10

mg/ccの 濃度に稀釈 し,そ のO. .2cc,即 ち2mg/マ ウ

スを菌接 種後7日 日に皮下注射 した。実 験動物 のマウス

は14~ 工6gのdd系 δを使 用 し,各 群に次の如 き処置

を 施 した。

A群:マ ウス20匹

i)Cryptococcusneo∫07mans62.5万 接種

i三)プ レ ドニ ン2mgを 菌接種後7日 目に投与

K2群=マ ウス20匹

lOO

1,。

墓6。

老40

20

函2生 存率 に及13'すアLド ニゾUン の影 響

フ。

i)CrPtptOCoccusneoformans62.5万 接種

K2群:マ ウス10匹

i)プ レ ドニン2mgをA群 と同 じ日に投与

尚菌数 計算 用 として,Ki群 と全 く同様 に処置 したマ

ウス20匹 を別 に用意 した。

菌数計算はプ レ ドニ ン投与群 では死亡せ るマウスにつ

き死亡後直ちに,コ ン トロール群 では菌数計算用 として

別に同様に処置 された生存せ るマ ウス各4匹 につ き脳.

肺 ・肝」臓各器 か ら行なつた。

実 験 成 績

1)マ ウスの生存率に及ぼす影響

この成績 は表2,図2に 示 され る。図 は横軸 に菌接種

後 日数 を,縦 軸 にはマ ウス生存率を百分率 で表 した。

即 ち21日 間の観察に よ り,プ レ ドニ ン投与群 ではそ

の生存率が5%に 迄 低下 したのに対 し,菌 のみ接種 した

コン トロール群 では 尚60%の 生存率を示 し,明 らかに

有意の差 を認め た。尚 プ レ ドニンのみ投与 した コント世

一ル群の生存率は100%を 示 した。

2)生 体内菌分布に及ぼす影響ノ

肝 ・腎 ・脾各臓器 内の菌数 の消長 は表3,図3・4に

示 され る(第3表,第3図 ・第4図)。図3は プ レドn

ン投 与群の,図4は コン トロール群 のそれ ぞれ各臓器内

の菌数の推 移を示 してい る。尚 図 は横に 菌 接 種 後 日数

を,縦 軸 には得 られた菌数の値を4を 底数 とす る対数で

表 した。

図に よつて明 らかの如 く,コ ン トロール群に おいては,

菌は肺,脳 の順に増 えて無数 に増加す るが,プ レド昌

ン投与群におい ては,肺 ,脳,肝 揃つて同時に。コ ン

表3臓 器内菌数 の推 移の比較

5101520

捺捜毎9数 一一噸

鯛 響}7日i・ ・日}・2日

 

ロ与

一群

レゾ

…群

#

一ン

fii

肺12,920ill,OOO

{肝8661,201

鵬}

423,7,25015,970

1}

日31

48

6

75

4

・4日1・6日i・7同

06

1

無数 撫数

無数 無数

無数 無数

辮 は麟 ・15・9当りから駿 された緬 一 一

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VQL.7NO.5 CHEMOTHERAPY 311

図3臓 春 内菌数 の消長(3)ト ロー・iし群)

1一64000

露6000

t4000

●1000

51015接種后B数 一

下ロール群 より早 く菌 が無数 となる。こ こで特に注 目す

ぺ きは,肝 の菌数 の受け る影響 が顕著 な事 で,ヲ ント導

一ル群では終始高値 を示 さなかつたのに対 し。プ レ ドニ

ン投与群 では脳 ・肺 と同時 に早期 に無数 に増加 している。

3)病 理組織学=的所 見に及 ぼす影響

マ ウス各臓器 のCryptecoccusneofeymansに よ る肉

眼的病変は一般 に乏 しく,只 脳 髄膜 炎を起 して くる と,

脳 の弾力が低下 し,軟 化す るのを認 めた程 度である。

染色法 として はHaeMatoxylin-Eosin染 色 及びPe-

hodicacidSchiff染 色を行 なつ たが,菌 体 染色には後

者 が最 も良い と思われ る。

肺 の変化は大 ・中 ・小種 々の大 きさの嚢 腫形成 が著 明

であ り,そ の中に多数の菌体を認めた。嚢 腫形成 の著 明

な ものでは,浮 腫以外の部分は嚢腫で一杯 で,呼 吸面 の

殆 ん ど認 め られぬ もの もあつた。そ の 他 に は 局所性 出

血,浮 腫を多 くの例に認めた。又 細胞反 応 は 認 め な い

か,又 あつて も極 く軽 度の主 として リンパ球 による浸潤

を認めるのみであつた。

脳 における変化 も主 として嚢腫 の形成 であ り,そ の中

に菌体多数 を認 めた。又 脳 ではか な り巨大 な嚢腫を形成

す るものが あつた。

肝における主な変化は嚢腫形成と壊死巣であり,1

嚢腫の中セこは菌体を,壊 死巣の周囲には軽度の細胞 舞

浸潤 を認 めた。6

プ レドニ ンを投与 しない コン ト冒一ル群の組織像

も概ね同様 の変化を認め,只 嚢腫形成,嚢 腫内の菌1

体 数等に おい て,そ の程度が何れ もプ レドニン投与

群 に比 し軽度であつたが,菌 数の消長に見 られ る様'なはつ き りした相違は認め られなかつた

III.ア ンフ ォテ リシ ンによる実験的ク リプ ト

コ ヅカス症の感染防禦実験に及 ぼす副 腎皮

質ホルモ ンの影響

ア ンフォテ リシ ンBはStreptemycesの1種 か ら

産生 され る新抗かび抗生剤で,1955年 ア メリカにお

いて発見 され た。原 末は親液性の黄色粉末で,従 来

用 い られ て来た抗かび抗生剤 トリコマイシ ン,ニ ス

タチン同様 ポ リエ ン系抗生荊(Polyeneantibiotics)

で ある。マ ウスに対す る静 注 に よる急性毒性LDso

は4.0~4.3mg/kgと いわれ,抗 かび抗 生剤 として

そ の毒性 は極め て低い。

1)抗 生 物 質 を主 とす る各薬剤のCryPtococcus

neoformansに 対す る最低発育阻止濃度

実 験 方 法

被検菌 は当教室 にて分 離 せ るCrPtptoeoccusneo・

fermans田 坂株を使用 した。

薬剤 はポ リミキシ ンB,ニ スタチ ン,ト リコマイ

シ ン,ア クチジオ ン及び アンフォテ リシンBの 抗生物質

を主 とし,男軽に色素剤 としてゲンチ アナ紫,水 銀剤 とし

てマーゾニ ンを加 えた。

各薬剤 の稀釈系列 は,ポ リミキ シンA,ア クチ ジオ ン,

ゲ ンチアナ紫,マ ーゾニンにおいては注射用蒸溜水にて,

ニスタチ ンは特定 の溶解液 で,ア ンフォテ リシンBは 静

注用薬液を用 いて,ト リコマイシ ンはpH9.2のKOH

水に て,そ れぞれ所用濃度 の10倍 に調製 し,そ の1cc

をpH6.0のSABOURAUD液 体培地 の9ccに 加えた。

尚出来上 りの トリコマイ シンの 稀 釈 系 列 のpHは&2

であつた。

次に この稀釈系列に,CryPtococcusneofoγmansの1

白金耳 を50ccの ブ イヨンに浮游 せ しめた菌液の1滴 を

滴下 し,37。C48時 間後肉眼的 判定 に よつて全 く清澄 な

るものを発育阻止 とし,最 低発 育阻止濃 度を求 めた。

実 験 成 績'

各薬剤のCrPtpteceCCUSneeformans最 低発育 阻 止 濃

度は表4の 通 りで,各 薬剤 にかな りの発育 阻止 作用 を認

め,特 にア クチジオ ン,マ ー ゾニ ン,ト リコマイシ ンが

優 れていた。δ

図4臆 番 内醜歎 の消長(プしドニン役 与群)一5 IOl5

接檀 后 日数 一 一り

Page 4: 糞}lll:1:lll:器lll1111器1器1}lllllllll - Chemotherapyfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/07/5/7_309.pdf糞}lll:1:lll:器lll1111器1器1}lllllllll 数字はマウスの生存数 第1図)。図

312 CHEMOTHERAPY SEPT.1959

表4各 薬剤 のク リプ トコヅ

カス最低発育阻止濃度

薬 剤 名

マ ー ゾ ニ ン

ゲ ン チ ア ナ 紫

ポ リミキ シ ンB

ト リコマ イ シ ン

ア ン フオ

テ リシ ンBユ ス タ チ ン

ア ク チ ジ オ ン

最低発育阻止濃度(/cc)

0.12mcg

3.2mcg

12.Omcg

O.31u

1.2u

8.Ou

O.12mcg

2)ア ンフォテ リシ

ンBに よる実験的 ク リ

プ トコッカ ス症の感染

防禦 実験

最新の抗かび抗生剤

であ るア ンフォテ リシ

ンBは,Cryptecoccus

neOfomaans最 低 発育

阻止濃 度において,ア

クチジオ ン,ト リコマ

イシ ンに.は,や や劣 る

が,そ の毒性 の極 めて低い点か らこれを取 上げ,実 験 的

ク リプ トコ ヅカス症 に対す る感染防禦 実験 を試 みた。

実 験 方 法

実験動物は14~17gの 系dd♂ マウスを用い,1群

は20匹 とした。

接種菌株はCryPteeoccusneofemans田 坂 株 とし,

500万/0.25ccの 菌体生理的食塩 水浮游液 を尾静 脈 よ り

接種 した。

アンフォテ リシ ンBは そ の原末 を注射 用蒸溜水 にて1

mg/cc,2mg/cc,4mg/ccの 濃度 に懸濁せ しめ,そ の

O.25cc,即 ち0.25mg/マ ウス,o.5mgノ マ ウス,1mg1

マ ウスの3段 階をそれぞれ異 るマウス群 に,各 群菌接種

の翌 日か ら14日 間毎 日,腹 腔 内に投与 した。尚 ア ンフ

ォテ リシンB懸 濁液は,毎 日投与前 に新 しく調製 した も

のを用いた。

実 験 成 績

各群 マ ウスの生存数は表5に,生 存率は図5に 示 され

る。図 の横軸には菌接種後 日数を,縦 軸にはマ ウスの生

存 率を百分率で表 した。

これ より明 らかの如 く,菌 のみ接種 したマ ウス群 の生

存 率は急速に低下 し,12日 目迄には全 マウスが 死 亡 し

たのに対 し,ア ンフォテ リシ ンBに よる治療群はかな り

高い生存率を示 した。ヌ 治 療効果 は,こ の 実 験 で は,

1mg小 日及び0.25mgノ 日投与群が,0.5mgノ 日投 与 群 よ

りやや優 れてい るよ うであつた。

3)感 染防禦 実験 に及ぼす副腎皮質ホルモ ンの影響

実 験 方 法

表 5

IOO

18。

暮6。

妻)40

20

 

図5ア ン7オテリシンBに樋 実験的ワサフト〕ッ力入

5 lOl520

接 程 后8歎 一 一り

接種菌株はCryptoceCCUSneofOrmans田 坂株 を 使用

し,そ の125万/O.25cc生 理的食塩水浮游液 をマウス尾

静脈 よ り接種 した。

副腎皮質 ホルモ ンはプ レ ドニ ン注射用懸濁液 を用い,

1.25mg/ccの 濃度 に注射用蒸溜水 にて稀釈 した 後,そ

の0.2cc即 ちO.25mgノ マ,ウスを菌接種 後24時 間,48

時間の2回 に亘 り皮下注射 した。ア ンフォテ リシンBは

原末を1mg/ccの 濃度 に注射用蒸溜水に懸濁 せ しめ,そ

のO.25cc,即 ち0.25mg/マ ウスを,菌 接種翌 日より毎

日腹腔 内に投与 した。尚 アンフォテ リシ ンB懸 濁液は,

毎 日投 与前新 しく調 製 した ものを用いた。

実験 動物 のマ ウスは15~18gのdd系 ♂ を使用 し,

各群 に次 の如 き処 置を施 した。

A群:i)菌125万 接 種

ii)プ レ ドニ ン0.25mgを 菌接種後24時 間

及び48時 間に2回 投与

iii)

B群:i)

ii)

C群:i)

ii)

ア ン フォ テ リシ ンBO.25mgノ 日毎 日投 与

菌125万 接 種

ア ン フオ テ リシ ンBO.25mgi日 毎 日投 与

菌125万 接 種

プ レ ドニ ンO、25mgを 菌 接 種 後24時 間

及48時 間 に2回 投 与

Ki群:i)菌125万 接 種

K2群:i)プ レ ドニ ン025mgをA,C群 と 同時に

2回 投 与

K3群:i)プ レ ド ニ ンO.25mg

をA,C群 と 同時 に2求1.00mg/日 投 与 群

0.50mg小 日投 与 群

0.25mg/日 投 与 群

コ ン トロ ール 群

1234567891011121314151617181920

2020161616161615151515151515151515151515

2020121212121212121212111111111111111111

2020151515151515151515151515151515151515

20201515141211766630

数字はマ ウスの生存数

回投 与

ii)ア ン フォ テ リシ ンB

O25mg/日 毎 日投 与

K4群:i)ア ン フオ テ リシ ンB

O・25mgノ 日毎 日投 与

以上 各群 の 中,A,B,C,K1の 各群

Page 5: 糞}lll:1:lll:器lll1111器1器1}lllllllll - Chemotherapyfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/07/5/7_309.pdf糞}lll:1:lll:器lll1111器1器1}lllllllll 数字はマウスの生存数 第1図)。図

V◎L.7NO.5 CHEMO「rHERAPY 313

表6

按租後日数

噂ウス群

群群

群群

のる

 り

 

A

B

C

K

K

K

01234567891011

202020191919191918181818

202020202020191919191919

2020181818146'32110

202020202018151410865

101010101010101010101010

101010101010101010101010

群数字 はマウスの生存数

0

0

nU

《U

OU

血U

411

)

40

20

図6実 験論ワワブトコッワス症1:対する鳳染防禦実験

アンフォテリシン8と フ。しドニゾロンプ プ春 る

コ ロ ロ   ロ ロ ロ のコ コ ロロ  も

の           ロの コ  へ  で 

\ 、\

\ \\\ 、、

。κ、(菌のみ)

\繍 糠\ A砂点8=α25賜8毎臼

κ2(ごしドニ》の灘)

聖σ乙に 瑚 聯8)炮療群

盛鎌あホびフtド土)授与群

\ \一一一(クリ;.ト学70Lドニ))

2)臓 器内菌 数の消長 に及 ぼす影響

この成 績は表7,図7・8・9の 通 りであ る。図 はす

べて横軸に菌接種後 目数を と り,縦 軸 には得 られた菌数

を4を 底数 とす る対数で表 した。又 図7は 脳,図8は

肺,図9は 肝におけ る成 績であ る。

脳 ・肺 ・肝共にC群(菌 十プ レドニ ン)及 びK1群

(菌のみ接種)に おいて,臓 器 内菌数 の急速 な増加を 認

め,接 種後10日 以内に何れ も無数 に増加 した。こ れに

対 し治療群Bで は,各 臓 器中の菌数 は一定 以上 には増 え

ない。又 治療 とプ レ ドニンの併 用群AはB群 と概ね平行

す る臓器内菌数の消長を示 し,生 存 率曲線 にみ られ た結

果 と一致 した。

只 アンフォテ リシンBに よる治療 は,A,B両 群 にお

い て,各 臓器中の増殖を抑制はす るが,尚 相当数 の菌数

を数 え,こ れを陰転せ しめ る程の効果 を認 め る事 は出来

なかつた。

尚 この実験においては,脳 ・肺 ・肝 各臓器において,

表7臓 器内菌数の消長に及ぼす治療 とプレ ド

ニ ゾロンの影響

123456789一 接檀後θ数

は,マ ウス各40匹 とし,中20匹 については生存率を

観察 し,残 り20匹 について菌数計算を行 なつた。K2,

Ks,K4の 各群 は,マ ウス各10匹 とした。

菌数計算は菌 接種後3日 目毎に,A,B,C,Ki各 群 の

中菌数計算用に用意 された生存せ るマ ウ ス 各2匹 につ

き,肺.脳。肝 の各臓 器か ら行なつた。

実 験 成 績

1)マ ウス生存率に及ぼす影響

マウス群 の生存数は表6に,生 存率は図6に 示 され る。

図は横軸 に菌接種 後 日数を,縦 軸に生存率を百分率で表

臓器條轟

A

B

C

K

A

B

C

K

A

B

C

K

ノミ

ノモ

接 種後3日

3,700

1,900

180

2,000

650

340

86,240

34,800

4,000

6,700

12,300

46,000

6日

26。000

11,000

95,000

無 数

7,500

3,seo

無 数

86,000

14,000

32,000

18,000

22,400

9日}

21,000

6,500

無 数

無 数

7,000

800

無 数

無 数

34,000

9,500

無 数

無 数

12日

640

610

無 数

1,500

700

無 数

4,800

4,000

無 数

した。

即ち,C群(菌 十プ レ ドニン)の 生存率は急速 に

低下 し,菌 接種 後U日 目迄 に全 マ ウスが死亡 した。

Kl群(菌 のみ接種)は これに次ぎ生存 率低 く,接 種

後11日 圏には25%で あつた。こ れ に対 し治療群

Bは 極 めて高い生存率 を示 し,更 に注 目すべ きはプ

レ ド=ン を併用 したA群(菌+ア ンフォテ リシ ンB

十プ レ ドニ ン)がB群 に劣 らぬ生存率 を示 した事 で

あつた。即 ちこの実験 では,プ レ ドニ ンは ク リプ ト

コッカス症 に対す るア ンフォテ リシ ンBの 治療効果

に何 等の悪 影響 を与えなかつた事 が明 らかである。

尚K2群(プ レ ドニンのみ),K8群(プ レ ドニ ン十

ア ンフォテ リシ ン)及 び 璃 群(ア ンフォテ リシ ン

Bの み)は 何れ も100%の 生存率 を示 した。

1・6日

12,000

8,000

6,300

5,530

1,270

4,000

数字は臓器1小309当 りか ら培養 された集落数

64000

麹6000

↑4。。。}jOOO

.(V

図7月 蘇器 内菌数の消長に及ぼす治療とプしトニ'ブ0ンの影 響

プ ア(脳)

510-一 一 接 程 後 日数

!5日

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314 CHEMOTHERAPY SEPT.1959

図6磁 奮摺奮数の消長に及ぽす治療 とアLドニソτじ の影 響

フ。フ。(肺)一64000

落i60eo

4・。。

1000

P510

棲 種 後 日 数

】5B

図9臓 番晒 獅 消長に穂 す瀕 と九ドニ・加)の 影響

プ プ(肝)1↓1熱 数一

640CO集

落160GO

4000

lOGO

接 檀 後 日数

K1群(菌 のみ接種)とC群(菌 十プ レドニン)と の 間

に,臓 器 内菌数 の消長 に関 しては,何 れ も有 意の差を認

め得 なかつた。

考 案

ク リプ トコッカス症の発症に関 しては,古 くは生体に

腐生 す る本菌52・53)より起 るとす る内 因 説 が あ つ た が,

EMONSに よる土壌sa)及 び鳥糞 よ りの本菌の分離証 明以

来,自 然界 よりの本菌55)の侵入に よつて発病す るものと

され ている(外 因説)。

何れ にせ よク リプ トコッカス症 の報告が抗生物質の 出

現,更 に続 いて副 腎皮質ホルモ ンの普及 と期を 同じ うし

て増 えて来 た事 は事 実であ り,そ の理由の大部分が,真

菌症 に対 する関心の急激なたか ま りに よ り,多 くの症例

が正確 に診断 され るよ うになつた事に帰せ られ るか も知

れ ないが,副 腎皮質ホルモ ン使用 の影響 も又そ の凍 因の

1つ と して否 定 し得ない。

真菌症 と副 腎皮質ホルモ ンとの関係については,最 近

そ の報 告 もかな り多 くな されてい るが,そ の大 部 分 は

Candidaに よる動 物実験の否定的な も の で ある56~59)。

併 しSCHERRSO--62)は マ ウスにおけ る実験的 カンジダ症

で。コ ーチ ゾンは軽感染に対 しては これ を増強せ しめ る

が,中 等症には影響 な く,重 症感染に対 してはむ

しろそれ を緩和す る と報 じ,又 カンジダ敗血症 を

トリコマイシン と抗炎症 性ホル モ ンの併 用に より

治療せ しめ得た とい う大 久保の報告63)等,好 影響

をみた とす るもの も少数あ る。

クリプ トコッカス症に対す る副腎 皮質ホルモ ン

の影響 に関 しては,そ の報告は極 めて 少 い が。

LITTMANは コーチ ゾンの大量投与 では悪影響が

ある鋤 といい,又 副腎皮質 ホルモ ンの使用に より,

潜伏 性感染が顕性 となつた臨床 例65)の報告 もあ る。

籾著 者はマ ウスにおけ る実験 的 ク リプ トコッカ

ス症に対す る副腎皮質 ホルモ ンの影響,更 にはア

ンフォテ リシンBに よる感 染防 禦実験に及ぼす該

ホルモ ンの影響を,主 として生体 内菌分布 の面 よ

り検討 し,そ の機序 を解 明せん とした。

マ ウスにCryP:ococcusneoformansDUKE株

500万 接種 した場合 の脳 ・肺.肝 ・腎 ・脾各臓器

中の菌数の推移では,先 ず肺 において菌数 の急速

な増加が見 られてい るが,こ れは接種方法 を静脈

注射 とした関係上当然 の事 と思われ る。こ れに対

し脳 内の菌数は肺に お くれ て増加 し始 め,接 種後

12日 目に両者 の菌数 が大 略同数 とな り,以 後脳

の菌数 の方が大 とな り,脳 ・肺 の順に無数 に増加

してい る。ク リプ トコッカス症 の臨床 例の報告を

み るに,初 感染の肺 の病変は限局性 の比較的良性

の経過 をとる事 もあるが,大 多数におい て結 局は中枢神

経系 の感染 を惹起 し,こ れが直接 の死 因 となつている。

か くの如 く,Cyptococcusneeformansが 中枢神経系に

対 し親和性 を有つ ている事 は諸家 の認 める所 であ り,著

者 のマウスに よる動 物実験で も,同 様 な結果 が得 られた

事は興味深 い。

尚肝 ・腎 ・脾中 の菌数は概ね平行 し,終 始高 い値を示

さなかつ たので,以 後の実験にお いては肝 のみを取 り上

げ,後 の2者 の菌数 計算は省略す る事 とした。

実験 的ク リプ トコッカス症 が副腎皮質 ホルモ ンの使吊

に よ り,そ の生存率 の著 明な低下 をみ る事 は著 者の実験

で 明らか であ り,そ の機 序を追 求す るため,マ ウス各臓

器か らの菌 の定量培 養を併行 し たわ けであ る。Cプ 鉾 伽

coccusneeformansDUKE株62.5万 静脈接種後7日 目

に プ レドニ ゾロン2mgを 皮下投与す る と,肺 ・脳 の菌

数は菌 のみ接種 した コン トロール群 のそれ よ り早 く無数

に増 加 し,更 に コン トロール群 では終始高 い値を示 さな

かつた肝 の菌 数もが,肺 ・脳 と同時に無数に増加 して行

くとい う事 実は,副 腎皮質 ホル モンが生体内の菌の全身

播種 を促進 す るため と解釈す る事 が出来 よ う。こ の事実

は,元 来経 口ない し経皮接趣が 困難 といわ れ るCandlde'

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'VOL. 7. NO. 5 CHEMOTHERAPY 315

に対 し,コ,一 チゾンを併用す ると全身感染を惹起せ しめ

得 るとい う報告S9 " S9)と も一致す る。

 副腎皮質 ホルモ ンに よる悪影響は,一一般細菌感染,ビ

ール ス感染,更 には結 咳菌感染に もいおて同様に見 られ

る事 であるが,こ れ ら感染症 も副腎皮質 ホルモ ンを有効

な抗生 物質に併用す る時には,そ の治療効果を劇的に増

強 せ しめ得 る場合 もあ る。し か らば真菌症において も,

ふかる併用効果を期待 し得 るや否やの疑問が当然生 じて

よい。

  クリプ トコッカス症 の治療は従来非特異的 のもの とし

て,サ ルファ剤 ・ペ ニシ リン。ヨ ー ドカ リ・芳香族 ジア

ミン ・自家 ワクチ ン ・発熱療法 ・X線 深部治療等 々,千

差万別のものが行なわれて来た。更 に最近に至つては,

晶スタチ ン ・トリコ々イ シン ・アクチ ジオン等 の抗かび

抗生剤に よる治療報告es,6ηもあ る。そ の中には有効であ

つた とい う報告も少な くないが,ク リプ トコッカス症が

その特性 として自然緩解をみ るために,治 療効果の判定

にはかな り困難を伴 うもの であ り,実 際に抗生剤が有効

であつたか否か疑わ しい場合 もあ る。

  臨床上有用 な抗真菌剤 としては,抗 菌力 の大な る事は,

勿論の事,そ れに も増 して毒性 の低い事が強 く要望 され

る。こ の点に関 し,従 来 の抗真菌剤には理想的な ものは

なかつたといつて よい。

  ア ンフオテ リシンBは 最新の抗かび抗生剤の1つ であ

り.,CrPtptecoccus neefermansに 対す る最低発育阻止濃

度において,ト リコマイシン ・アクチ ジナ ンにやや劣 る

とはいえ,そ の毒性 の低い点か ら今 日最 も有望な抗 真菌

剤の1つ といえ よ う。ク リプ トコッカスに対す る治療実

験或 し、は臨床例の肯 定的報告 もあ り31・68~72),著者 の 動

物実験 でも碧 明な感染防禦効果を認あた。

  そこで実験的 ク リプ トコッカス症に対 し,ア ンフォテ

リシンBと 副 腎皮質 ホルモ ンとの併用を試みて,特 に菌

分布 の面 よ りその影響を観察 した ので あ るが,Crフpto-

coccus neoformans田 坂株125万 を接種 し。0・25 mg/

B毎 日のア ンフォテ リシンBに よる治療を行な うと。治

療 群ば非治療群に比 し各臓器中の菌の増殖が著明に阻 止

されてい る。併 し薬剤に より菌増 殖が阻 止 された とはい

え,治 療群マ ウス臓器中菌数 も尚かな り大 であ り,本 剤

の作用はむ しろ静菌的 とい うべ く,本 剤に よる治療 のみ

では完全を期 し難い。

  ここで更に注 泪すベきは,薬 剤の菌 増殖阻 止作用に対

し,プ レ ドニ ゾ戸ンの併用がなん ら悪影響を与 えていな

い事 である。即 ち真菌症 において も,強 力な化学療 法に

併用 した副 腎皮質 ホルモ ンは,そ の使用量 を誤 らなけれ

ば薬物の抗 菌作用に対 し,悪 影響を与 えない事 が知 られ

たわけである。従 つ て本 ホルモ ン併 用の臨床応 用ほ,そ

の抗炎症作用に.よつて,病 巣の滲出機転 ・線維化作 用を

抑制 し,薬 剤 の効果 と相挨つて よ りよき治療効 果が期待

しうるわけ である。

           結   論

  マウスにおけ る実験的 ク リプ トコッカス症 に対す る副

腎皮質 ホル モンの影響を,主 として生体内菌分 布の面 よ

り観察 し,次 の結果を得た。

  1)C「yptoceCCPtS  neefermansは マウス に お け る 実

験的 ク リプ トコッカス症において も,臨 床例 と同様,中

枢 神経系に対 し親和性を有す る。

  2)マ ウスにおけ る実験的 ク リプ トコッカス症 におい

て,副 腎皮質ホルモ ンはマ ウスの生存率を著明に低下 せ

しめ るが,こ れは本ホルモ ンが生体内真菌の全身播種 を

促進す るためであ る。

.3)  アンフォテ リシンBは,実 験的 ク リプ トコッカス

症 に対 し,著 明な感染防禦 効果を有す るが,こ れはア ン

フォテ リシ ンBが 生体内に於いて も真菌の増殖を阻止す

るためであ る。併 し治療群 マウス の各臓器中の生菌数 も

尚かな り高 く,菌 培 養を陰転せ しめ る程の効果はない。

  4)実 験的 ク リプ トコ ッカス症におけ るア ンフォテ リ

シ ンBの 生体内抗菌作 用を,副 腎皮質ホルモ ンは阻害 し

ない。従 つて本症 の治療には,強 力な化学 療法 を行 な う

と共に本ホルモ ンの併 用を行 なえば,そ の抗炎症作用 に

よつて,よ りよい治療効果 を期待 し うる。

  稿を終 るに当つて,上 田教授の御指導並 びに御稿閲,

美甘前教授,上 田内科 福島講師の御指導 を深 く感謝 し.

上 田内科 金 児博士,明 石博 士,池 本博士,'進 藤 博士,

大 塚学=ヒの御協力,病 理学 的検索に当つての東京医大大

高 教授の御援助を感謝する。

  本研 究は文部省科学研究 費に負 う所 が大 きい。

  本論文の要 旨は,昭 和33年5月,34年4月 の第32,

第33回 日本伝染病学会総会,昭 和33年10月 の第2回i

日本医真菌学 会総会に発表 した。

           文    献

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316 CHEMOTHERAPY SEPT. 1959

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