矢板壁,土留め壁,埋設管...1 矢板壁,土留め壁,埋設管 2016. 5. 17 澁谷啓...

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1 矢板壁,土留め壁,埋設管 2016. 5. 17 澁谷 地盤基礎工学 1 土留め壁? 2 土留め(山留め)は, 地下構造物を築造するために地盤を掘削する際,土留め壁や切梁,腹起しなどの支持構 造物を設けて周囲の地盤の崩壊を防ぐごとを土留めあるいは山留めという. (地盤工学用語辞典,地盤工学会) 土留め壁(山留め壁)は, 掘削工事において,土砂の崩壊を防ぐために掘削面の 周囲に設ける壁をいう. (地盤工学用語辞典,地盤工学会) 矢板は, 矢板は土圧や水圧など外力を受ける壁で土留め壁ともいい, 切梁および腹起しは,矢板の転倒を防ぐ構造物である. (地盤工学用語辞典,地盤工学会) 土留め壁(山留め壁) (出典:土質力学 7版,著者:河上房義, 森北出版株式会社)

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矢板壁,土留め壁,埋設管

2016. 5. 17

澁谷 啓

地盤基礎工学

1

土留め壁?

2

• 土留め(山留め)は,

地下構造物を築造するために地盤を掘削する際,土留め壁や切梁,腹起しなどの支持構

造物を設けて周囲の地盤の崩壊を防ぐごとを土留めあるいは山留めという.

(地盤工学用語辞典,地盤工学会)

• 土留め壁(山留め壁)は,

掘削工事において,土砂の崩壊を防ぐために掘削面の

周囲に設ける壁をいう.

(地盤工学用語辞典,地盤工学会)

• 矢板は,

矢板は土圧や水圧など外力を受ける壁で土留め壁ともいい,

切梁および腹起しは,矢板の転倒を防ぐ構造物である.

(地盤工学用語辞典,地盤工学会)

土留め壁(山留め壁)(出典:土質力学 第7版,著者:河上房義, 森北出版株式会社)

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土留め壁?

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(出典:道路土工仮設構造物工指針 )

土留めの名称図

土留め壁?

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阿倍野A1地区第2種市街地再開発事業

出典: http://building-pc.cocolog-nifty.com/map/2009/08/

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土留め壁?

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阪急今津線 連続立体交差事業(高架化)

出典: http://building-pc.cocolog-nifty.com/map/2009/08/

土留め壁の設計用の土圧の設定方法には,

-理論式による方法

:ランキン土圧やクーロン土圧の算定式を用いて求める.

-実側値に基づく簡易な方法

:基準類によっても異なる.

土留め壁の安定

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• 道路土工の仮設構造物工指針では,支保工(切りばり,腹起し,火打ちなど)の断面

計算に用いる荷重として,図の断面決定用土圧を規定している.

• 設計の慣用法を前提として,多数の土圧測定結果を整理して得られた土圧分布であり,

標準的な地盤,掘削深さ,施工法に対する土圧とされている.

土留め壁の安定-設計土圧

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図-断面の決定用土圧:仮設構造物工指針

• 建築基礎構造の山留め設計指針では,

図のように山留め壁算定用の側圧を式 𝑃𝑎 = K𝛾𝑡𝑧 の三角形分布で与えているが,

同式と理論式のいずれを採用するかは技術者の判断とされる.

• Kは側圧係数であるが,幅のある数値なので地盤特性を十分に考慮することが必要である.

土留め壁の安定

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図-設計土圧:山留め設計施工指針

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土留め壁は深さ方向に数段の切りばりを設置して,水平支持されるが,

各切りばりに受け持たせる軸力の設定方法を図に示す.

ー 地盤が良好な場合:各支点間の中央までの荷重を支持すると考える1/2分担法

ー 地盤が軟弱な場合:下の段の切りばり支点までの全荷重を支持すると考える下方分担法

土留め壁の安定

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図-切りばりの軸力の分担法

土留め壁の変状

10図-山留め壁に関係する地盤変状

地表面を掘削してゆくと,掘削側と背面側の力の不均衡が増大し,掘削底面など

の安定が損なわれて,図のようにボイリング,パイピング,ヒービング,盤膨れなど

の種々の地盤変状が発生する.

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ボイリング

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ボイリングは,

透水性が大きい砂質土地盤において,

遮水性の土留め壁を用いて掘削する場合,掘削の進行に伴って,土留め背面側と

掘削側の水位差が次第に大きくなる.

この水位差により掘削底面下の地盤内で上向きの浸透流が発生し,浸透圧が

地盤の有効重量を超えると,砂が湧きたつ状態になるが,これらがボイリングである.

対策は,

ボイリングに対する安定を照査し,

土留め壁の根入れ長の増加や背面の地下水位低下などにより安定を図る.

ボイリング-限界動水勾配

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図-浸透流による砂地盤のボイリングの発生機構(第5章 p80. 図5.14)

ボイリングが生じたときの動水勾配(限界動水勾配と呼ぶ):𝒾𝒸

ボイリングは砂質土地盤に特有な現象

粘性土地盤は浸透圧によって地盤がふくれ上がるヒービンぐという現象がある

𝒾𝒸 =

𝑟𝑠𝑟𝑤

− 1

1 + e=𝐺𝑠 − 1

1 + e

𝐺𝑠:比重

𝑟𝑠:土粒子の単位体積重量

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ヒービング

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ヒービングは,

土留め壁の背面土の重量や土留め壁に近接した地表面の上載荷重などにより,

掘削底面の隆起,土留め壁の張り出し,周辺地盤の沈下が発生する現象である.

対策は,

ヒービングに対する安定照査し,

土留め壁の根入れ長の増加や地盤改良などにより安定を図る.

パイピング

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パイピングは,

高い地下水位を有する砂質土地盤において,

杭や矢板の打設,引抜きやボーリングの調査孔跡などによって地盤が緩められた場

合,その付近の土粒子が浸透流によって洗い流され,水みちが形成され,

水と土砂が噴出す現象である.

対策は,

パイピングに対する安定を照査し,地下水位低下などに安定を図る.

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盤膨れ

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盤膨れは,

掘削底面下の粘性土のような難透水層,不透水層の下に被圧地下水位がある場

合,被圧地下水の力により掘削底面が変形を起こして膨れあがる現象である.

対策は,

地膨れに対する安定を照査し,

土留め壁の根入れ長の増加や被圧地下水層の揚水による水圧低下などにより

安定を図る.

地中構造物に作用する土圧

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• トンネルや地中埋設管などの地中構造物に作用する土圧は複雑で不明なことが多い

• トンネルに作用する鉛直土圧の考え方

:図のようにトンネル上部から崩落する土塊重量とすべり抵抗との大小関係で定まるとする.

①トンネルが深い位置にあるとき,

:図の(a)の状態の崩落土塊を考えると崩落重量は大きいが

すべり抵抗力も大きい

②土がぶり厚がある程度以上に厚くなると,

:図の(b)の状態の方が危険になる.

図-トンネルに作用する鉛直土圧の考え方

(出典:土質力学 第7版,著者:河上房義, 森北出版株式会社)

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埋設管に作用する土圧

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直径1m前後の小径管に作用する土圧は管の設置方法によって異なる.

剛性の管を,

①地盤を掘削した土の中に設置して埋し戻した場合の鉛直土圧[図-(a)]

②自然地盤上に設置してその上に盛土をした場合の鉛直土圧[図-(b)]

③自然地盤を管径程度掘削してその上に盛土をする場合の鉛直土圧[図-(c)]

図-埋設管の設置形態

(出典:土質力学 第7版,著者:河上房義, 森北出版株式会社)

埋設管に作用する土圧

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①地盤を掘削した土の中に設置して埋し戻した場合の鉛直土圧[図-(a)]

(出典:土質力学 第7版,著者:河上房義, 森北出版株式会社)

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埋設管に作用する土圧

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②自然地盤上に設置してその上に

盛土をした場合の鉛直土圧[図-(b)]

③自然地盤を管径程度掘削してその上に

盛土をする場合の鉛直土圧[図-(c)]

:土かぶり重量が全部作用すると考え

(出典:土質力学 第7版,著者:河上房義, 森北出版株式会社)

埋設管に作用する土圧

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• 水平土圧は無視する方が安全側であるので小径管に対しては無視する.

• 大径管の場合には主働土圧が作用するものとして計算する.

• たわみ性の管に作用する鉛直土圧は管の鉛直方向の圧縮性と

周囲の土の鉛直方向の圧縮性の大小関係によって異なる.

• たわみ性の管に作用する土圧については不明な点が多く,

土かぶり重量がそのまま管に作用すると考える方が良い.

(出典:土質力学 第7版,著者:河上房義, 森北出版株式会社)