天然ガス・LNGを巡る動向( 2020年) · 2020. 12. 11. ·...

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調査部 天然ガス・LNGを巡る動向(2020年) 2020924

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  • 調査部

    天然ガス・LNGを巡る動向(2020年)

    2020年9月24日

  • 免責事項

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

  • • 2020年代は、新型コロナウイルスの蔓延と油価暴落により波乱の幕開けとなった。グローバル化の加速する天然ガス・LNG市場にとっても、これまで水面下で進んできた変化が顕在化する、激動の10年となろう。

    • 新型コロナウイルスの蔓延は、引き続き、世界経済を大きく減速させたままである。当初言われていたV字回復予測はもはや語られず、未だ出口は見えていない。中期的にも人々の生活を不可逆的に変化させるという見方もある。石油需要ほどではないものの、天然ガス・LNGの需要も低下し、アジアスポットLNG価格、欧州パイプラインスポットガス価格は、史上最低価格を更新した。ほぼ同時に発生した油価下落に対処するため、メジャーズは、投資を削減し、生き残りをかけてプロジェクトの選択と集中を進めている。

    • ここでは、まず、全エネルギーに対する天然ガス・LNGの位置づけと、現在、および、中長期的な需給等を確認する。次に、2020年断面において、北米、欧州、ロシア、中東、アフリカ、アジア・太平洋の世界各地で起こっている、天然ガス・LNGに関する最新のトピックスを網羅的に紹介していきたい。

    はじめに3

  • • BP統計によれば、2019年、世界の1次エネルギー消費(583.90EJ)中、天然ガスは1/4を占めた(141.45EJ、24.2%)。石油(193.03EJ、33.1%)、石炭(157.86EJ、27.0%)に次ぎ第3位。この10年間、2.5%/年で成長。

    • 地域別1次エネルギー消費は、アジア太平洋地域(257.56EJ、44.1%)が大きな割合を占め、次いで、北米(116.58EJ、20.0%)、欧州(83.82EJ、14.4%)と続く。ガスの使用割合は、それぞれ、1割、3割、2割程度。

    • 発電用燃料として、北米では生産されたガスの4割が使用されるが、アジア太平洋地域の発電では石炭の使用割合が高く、天然ガスは1割強と少ない。

    • IEAによれば、再生可能エネルギーとベストミックスなエネルギーとして、天然ガス消費は今後も1.4%/年で引き続き拡大。石炭から天然ガスへの転換が進み、2030年には石炭を抜き第2位の1次エネルギーになるとの予測。

    (出所:bp、IEA他)

    エネルギー種別 2019 - 40年成長率(%)

    Oil 0.4

    Natural gas 1.4

    Coal -0.1

    Nuclear 1.1

    Hydro 1.7

    Bioenergy 1.4

    Other renewables 7.1

    Stated Policy Scenario in IEA Gas 2019

    世界の1次エネルギー消費(2019年) 4

    世界の1次エネルギー消費推移 地域別1次エネルギー消費割合(淡色は発電向け内数)

    (%)(EJ)

    100EJ

  • 5世界の天然ガスパイプライン・LNG貿易(2019年)

    (出所:bp)

    パイプラインガス、LNGの主要取引フロー(2019 年, Bcm)

    • 2019年、世界の天然ガス生産(3,989.3Bcm)のうち、4分の1がトレーディングされた(984.4Bcm、24.7%)。

    • 地域間パイプライン(499.4Bcm、50.7%)、および、LNG(485.1Bcm、49.3%)によって、それぞれ半数が取引された。

  • 6月、IEAは、2020年の世界の天然ガス需要を、対前年比150Bcm、4%の減少と予測。主要因は、新型コロナウイルスの影響による、欧州、北米、ユーラシア等の成熟市場の発電需要の低下。(リーマンショックが発生した2009年は対前年比2%の減少)

    世界のガス需要(2020年) 6

    国・地域 需要実績

    日本 • 4月7日の緊急事態宣言以降、需要が大幅に減少。2020年上半期のLNG輸入量は、3,640万トンと10年振りの低水準。

    • 配船後ろ倒しやDQTを行使したものの、消費の落ち込みが激しく、LNG在庫量は対前年比1割以上増加。• 7月、長梅雨で需要が伸びず、8月は、猛暑により電力需要増加したが、工業用需要回復は遅れ。

    中国 • 4月、武漢の都市封鎖解除以降、ガス需要回復。第2四半期から輸入を拡大。• 6 月、安価なスポットLNGの輸入を拡大(対前年比29.2%)。内需低く、地下ガス貯蔵が高在庫。パイプライン

    ガス輸入と国内産ガスの生産を圧迫。• 1-7月期、天然ガス輸入量は5,571万トン(76.82Bcm、対前年同期比1.9%増加)。前年同期の10.8%増加と比

    べ伸び鈍化。

    韓国 • 新型コロナウイルス蔓延に伴う景気減速で電力需要が低迷。KOGASの2020年上半期のLNG販売量は、前年同期比9.1%減の1,790万トン。

    • 4月以降、環境対策で冬場停止していた石炭火力発電所を再稼働させたため、LNG火力発電所の稼働率が低下。冷夏で冷房用電力需要の伸びも低かった。9~10月に原発9基が再稼働し、LNG需要を430万トン引き下げる可能性あり。

    (出所:IEA、Platts他)

  • 世界のガス需要(2020年) 7

    国・地域 需要実績

    インド • 3月25日から2カ月半に亘りロックダウン。• 第2四半期、電力・肥料部門や都市ガス需要が急減し、天然ガス消費は、対前年同期比14.3%減の13.5Bcm

    となった。• 6月から徐々に規制を緩和し始めた結果、電力・肥料部門の需要改善により、徐々に需要増加。• 7月はLNG輸入は、対前年同月比6%増加し、220万トンに回復。

    台湾 • 2020年上半期のLNG輸入量は869万トンで、対前年比12.6%増。6月は、前年同月比40%増の160万トンに達した。

    • 早期の新型コロナウイルス対策が奏功し、経済への影響は極めて軽微。石炭からのガス転換政策が進み、発電部門のLNG需要が増加。安価なスポットLNGも需要拡大を促進している。

    欧州 • 3月の各国ロックダウン以降、4月に入り欧州ガス需要は、対前年比2割減少。LNGとの競合の結果、パイプラインガス供給量が大きく減少した。(ロシア2割減、ノルウェー1割減、アルジェリア3割減)。

    • 5月以降の米国産LNGの大量キャンセルに加え、8月に入り、北海からのパイプライントラブル等によるガス供給の減少によりTTFは下支えられたものの、需要は十分には回復しておらず、現在地下貯蔵在庫は90%に到達。

    (出所:IEA、他)

  • 世界のガス需要(2020年)

    (出所:Platts、SIA、Eurostat他)

    8

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    Japan China S Korea India Taiwan Europe

    (Bcm)(MT)

    LNG PLガス 域内・国内生産ガス

    主要国・地域別 ガス需要

    ← 一部推定値

  • 9HH、TTF、JKM価格推移(2020年2-8月)

    HH

    TTF

    JKM

    • 穏やかな気候と堅調なガス生産に、新型コロナウイルスによる需要減少が重なり、HHガス価格は、20203月31日、一旦、史上最低の1.663USD/MMBtuをつけた。6月25日には、LNGカーゴキャンセルによる需要の減退に加え、米国のCOVID-19による企業活動再開遅延への懸念から、1.482USD/MMBtuと、最低価格を更新した。

    • その後、油価下落によるガス生産減少と、新型コロナウイルスとカーゴキャンセルによる需要減少がバランスし、HHガス価格は低位安定。夏期になり、発電需要が高まった結果、価格は上昇基調。

    • 地下貯蔵容量は5年平均レベルを2割近く上回り、10月末には過去最大レベルの4.2Tcfに達するとの予測。

    • 2018年冬期以降、世界の余剰LNGを受け入れ、TTFガス価格は徐々に低下。3月中旬以降、新型コロナの影響により需要大幅低下。

    • 5月末、史上最低価格(1.158USD/MMBtu)をつけた後、アジアの需要増加、ガス田やパイプラインの定期修理による供給低下のため回復。

    • 8月に入り、ガス田やパイプラインガスの定期修理やトラブルが多発し、TTFガス価格は上昇。

    • 暖冬の影響もあり、1月からJKMは下降基調。• 2月、中国のFM宣言でJKMが低下。3月下旬、インドがフォース・マジュール宣言した結果、JKMは一気に下降。

    4月28日のJKMは、1.825USD/MMBtuと、過去最低価格を更新。• 7月末の豪Gorgon LNGトラブルにより一気に上昇。猛暑も重なり、4USD/MMBtuレベルを回復している。

  • 10

    (各種資料によりJOGMEC作成)

    8月下旬 米国産10月9隻キャンセル

    3/25 インドロックダウン、FM宣言

    4月 アジア買主各社配船後ろ倒し →2020年後半再余剰懸念

    2月中旬 インド、タイスポットカーゴ購入

    2/5 中国FM宣言

    3/6 OPECプラス不調

    4/16 日本全国緊急事態宣言

    4月下旬 米国産6月35隻キャンセル

    3月末 欧州寒気

    5月下旬 米国産7月45隻キャンセル

    1/23 武漢ロックダウン

    4/8 武漢都市封鎖解除

    4/28 JKM最低価格更新$1.825/MMBtu 5/27 TTF最低価格更新$1.158/MMBtu4/25-5/6 GWで取り引き停滞

    4/12 OPECプラス減産合意

    4月 キャメロンLNGT3スタートアップ

    3/13 WHO、欧州新型コロナ流行震源地宣言

    3月下旬 米国産5月12隻キャンセル2月下旬 米国産4月2隻キャンセル

    5/1 フリーポートT3商業運転開始

    2月 欧州暖冬

    4月中旬-5月中旬 USガス生産減少(93→88bcfd)

    5/20 大西洋→アジア仕向地変更

    5/21-6/15 ヤマルLNGT2、3定修5/22- ガスプロムESP停止か?

    5月中旬-6/17 スノービットLNG定修

    6月初 ノルウェーPL減量

    5月 北海航路利用開始

    アジア暖冬

    6/6 OPECプラス協調減産継続合意

    4/20 WTI史上初の-37.63/bbl

    減産実施、経済活動再開

    8月後半 アジア猛暑

    7/22 ゴーゴンLNG T2プロパン容器割れ、9月末修理完了(T1、10月、T3、1月修理予定)

    8月初 韓国冷夏長雨

    7月下旬 日本長梅雨

    7/3 METI非効率石炭火力の2030年フェーズアウト発表

    7月初 マレーシア第2四半期LNG輸出を27%カット

    8/24 韓国政府コロナ再燃でレベル3ロックダウン検討

    8月後半 米国空調需要増加

    8/14 熱波でカリフォルニア輪番停電

    8/10 キャメロンLNG T3商業運転開始

    8月下旬 ハリケーンローラ、マルコ接近

    8/26 キャメロンLNGシャットイン(ハリケーン対応)

    8/25-9/10 サビンパスLNGシャットイン(ハリケーン対応)

    7月下旬 米国産9月26隻キャンセル6月下旬 米国産8月45隻キャンセル

    8/24 Kollsnessガスプラント、Aasta Hansteenガス田トラブル8/6 Aasta Hansteenガス田トラブル

    8/4 スロバキア-ウクライナ国境からのロシアPLガス減量8/3 ノルウェーTrollガス田メンテナンス

    8/28 オランダガス貯蔵容量拡大、フランス原発定期修理延長、タンス価格上昇、ロシアPLガス供給減少

    8/25 Kollsnessガス供給減、Bacton SEAL PLガス供給減

    8/31 イギリスCulzeanガス田修理、Alwynガス田定修延長

    6/19 オランダ鉱業規制機関が11月以降のGroningenガス田生産量追加削減(11.8→9.3Bcm)を進言

    6月末 Groningenガス田6月生産量470Mcm、過去最低記録を更新6/29 Snovit LNG定期修理完了

    8月下旬 米国産10月9隻キャンセル

    HH、TTF、JKM価格推移(2020年2-8月)

    ($/MMBtu)

    6/25 HH史上最低価格更新$1.482/MMBtu

  • 11天然ガス中長期供給予測

    Rystadは、新型コロナと油価暴落の影響により、2020年の世界のガス生産量見通しを、3,962Bcmに下方修正。非随伴型ガスの生産量が多い北米が最も影響を受けた地域である。ロシアの供給もわずかに減少。豪州と中東にほとんど影響がない。

    地域別天然ガス供給見通し

    国別 中長期天然ガス供給見通し

    豪州 洋上ガス田での生産量が増加。トレイン増設でLNG輸出も増加。

    アジア 中国のシェールガス供給が、既存ガス田の生産減退を置換。旺盛なガス需要を満たすには大量のガス輸入が必要。

    中東 イラン、カタール、サウジアラビアの海洋ガス田開発が生産量増加を牽引。カタールは、LNG輸出量大幅拡大。カタール以外は、ほぼ内需向け。

    アフリカ モザンビークでの生産増加。北アフリカの生産減少を補完。LNG輸出量、大幅増加。

    南米 ブラジル海洋ガス田とアルゼンチンのシェールガス田が主な成長源。供給とともに需要も増加するため、輸出は限定的。

    北米 2020年生産量は102Bcm、8.6%の減少を予測。長期的にも影響があり、2030年生産量も4.5%の下方修正となるが、米国とカナダのシェールガス生産は2035年まで大きく成長し、LNG輸出量の増加をバックアップする。

    欧州 グローニンゲンガス田の生産停止により、域内生産量は急減。ノルウェー生産量も長期的には減少。輸入ガスへの依存度が高まる。

    ロシア 陸上ガス田からの生産が主体。新たな海洋ガス田開発も継続。欧州や中国へのガス輸出が増加していく。

    (出所:Rystad Energy)

    (Bcm)

    (出所:Rystad Energy)

  • 12天然ガス中長期需要予測

    (出所:Rystad Energy)

    世界の天然ガス需要は2019年の3,952Bcmから2040年には4,856Bcmに成長(23%増)。電力・産業部門が成長を牽引。

    地域別天然ガス需要見通し 国別 中長期天然ガス需要見通し

    豪州 発電における石炭からガスへの燃料転換により増加。

    アジア 再生可能エネルギーが増加するものの、急増する電力需要に対応するためにガスが必要。産業分野の需要も増加。

    中東 発電用燃料の石油からのガス転換が需要拡大を牽引。

    アフリカ 経済発展による電力需要の増加で需要は増加。ただし、供給設備上の制約が需要の伸びを制約する可能性も。

    南米 ガス埋蔵量は大きいものの、インフラの不足により需要の伸びは限定的。

    北米 生産量の増加が中長期的な需要を牽引。発電では石炭からのガス転換が進む。再生可能エネルギー増加の影響で長期的には減少。

    欧州 再生可能エネルギー増加により、2024年に需要のピークを迎える。ただし、再生可能エネルギーのバックアップ用需要があり、その後の減少は緩やか。

    ロシア 経済成長により需要は着実に増加。

    (Bcm)

  • 13各社の中長期需要予測(2020-40年)

    • 各社の中長期需要予測をまとめる。• ShellのHighケースが最も高い。IOCの予測は、時に、販売

    目標とも見做される。また、2030年、ShellのHigh/Lowケースの差は1億トンにものぼる。今後の環境により大きく変化すると見ていることがわかる。

    • Energy Intelligenceは、2020年時点では低く、その後、2020年代後半にかけて、ShellのHighケースに迫る。

    • Wood Mackenzie、Rystadは、ShellのLowケースに近い。• IEAは、最も低い予測となっており、Shell Lowケースより-

    2,600万トン、Highケースより4,300万トンも低い(2023年)。

    各社中長期需要予測比較(2020 年-2040年)

    (各種資料によりJOGMEC作成)

  • 14小括

    地域等 トピックス 担当

    需給、価格 コロナでガス需要減少、長期では安定成長 白川

    米国 シェールガスけん引でLNG輸出国へ、伝統的LNG市場に新風も 竹下

    米州太平洋岸 今年唯一のFID、期待のCosta Azulでなにが? 舩木

    欧州 さらなるガス市場整備も、ロシアPLガス依存脱却への厳しい道のり 川田

    ロシア、CIS 世界の天然ガス覇権を目指すロシア、その野望の行方やいかに? 原田

    中東 カタール拡張、実は背水の陣? 猪原

    北アフリカ エジプトStop & Go、東地中海をつなぐのはChevron?、存続を目指すアルジェリア 芦原

    アフリカ ナイジェリア、モザンビーク順調か?モーリタニア・セネガルは先駆け進展中 橋本

    豪州、東南アジア 豪州資産組み替え、マレーシアスポット市場参入 庄子

    中国、インド 中国の需要けん引役不動、インフラ・市場化に注目 竹原

  • 米国:シェールガスに牽引され世界最大の天然ガス生産国へ台頭 15

    米国天然ガス生産推移 HH価格推移と見通し(USD/MMbtu)

    (出所:EIA)

    • 米国の天然ガス生産は、シェールガス(全体の7割)が牽引して過去10年で1.8倍に拡大し、世界最大の生産国へ。2017年には天然ガス純輸出国に転換も、9割は国内で消費され、天然ガス生産の伸びに従って発電向け国内需要が成長。

    • 油価の影響を受ける随伴ガスは、パーミアンを中心に天然ガス生産全体の3割程度。LNG輸出量は天然ガス生産全体の1割程度とLNG向け原料ガスは潤沢と言える。

    • EIAによれば、2020年天然ガス生産量は、油価・ガス価格下落に伴う減産が影響し、前年比3%減の89.2Bcf/d、2021年生産量も引き続き前年比6%減を見込むが、2021年Q4には85.6Bcf/dに回復見込み。 LNG輸出量は8月時点に3.7Bcf/dまで減少も、11月にはコロナ前水準に回復し、2020年12月から2021年2月にかけて9Bcf/dまで増加すると予測。

    • HH価格について2020年6月に史上最安値の1.42USD/MMBtuを付けたが、減産と冬季需要増加に伴いガス価格は2020年下期から上昇し、2020年平均1.93USD/MMBtu、2021年平均3.1USD/MMBtuと予測。

    • 天然ガス輸出については、メキシコでのガス火力発電とパイプライン整備に伴い、メキシコ向け輸出量が増加見込み。

    (USD/MMBtu)米国天然ガス輸出入予測

    LNG輸出

    メキシコPL輸出

    カナダPL輸出

    カナダPL輸入

    LNG輸入

    (Tcf)

    シェールガス生産分

    (出所:EIA)(出所:EIA)

    STEO Forecast

    NYMEX futures price

  • 米国:主要LNG輸出国に成長、米国産LNGが需給調整弁として機能 16

    • 2000年代初頭、米国は天然ガス生産量が減少傾向にあり、カタール等からのLNG輸入のための受入基地建設が進展したが、シェール革命により状況が一変。既存設備を活用した液化設備の建設が始まり、2016年にLNG初輸出。

    • 1stウェーブ案件(2012-2016年のFID)は合計年産7,000万トン、2ndウェーブ案件は全体で年産1.8億トン規模。油価・ガス価格低迷の厳しい市況が2ndウェーブ案件の立ち上げに追い打ちをかけ、FID案件は現状3,000万トンにとどまるも、2025年にはカタール・豪州を抜いて世界最大LNG輸出国となる可能性が高い。

    • 米国産LNGは、仕向地フリー、HHリンク価格、液化費用を支払うことで事前通知によりカーゴのキャンセルが可能という点で、LNG買主に幅広い選択肢(柔軟性)を提供。実際に足元の市況に対応して今夏は国内の液化設備稼働率は前年の80%から30%へと低下、LNG輸出量も2020年上期で半減した。2020年4月から10月分まで約170カーゴ(LNG1,300万トン相当)がキャンセルされ、スポットガス価格の底抜けを抑止し、米国産LNGが需給調整弁として機能したと言える。

    1st ウェーブ7,000万トン

    2nd ウェーブFID済3,000万トン

    米国LNG生産量実績と見通し

    2nd ウェーブpre-FID1.5億トン

    (百万トン)

    (各種資料によりJOGMEC作成)

    LNG輸出設備稼働率(2019年・2020年) LNG輸出量(2019年・2020年)(Bcf/d)

    (出所:EIA)(出所:EIA)

  • 米国:未FIDの2nd ウェーブ案件は苦境も、米国産LNGが市場流動性に貢献

    • 2ndウェーブ案件は、パイプライン容量をはじめ既存設備が不十分な環境下で、小規模・複数トレインによる供給柔軟性の拡大や、パイプライン建設を含む上流参加による原料ガス調達コスト低減等の工夫が目立つ。

    • オフテイク確保(=ファイナンス)と新興市場へのアクセスを目的に、2ndウェーブ案件では契約ストラクチャーの多様化が進展。1stウェーブ案件ではHH価格リンクのFOB SPA方式とトーリング方式が契約容量を二分するも、2ndウェーブ案件ではトーリング方式が減少し、Golden Pass案件のエクイティ方式SPAに加え、買主に応じたHH価格以外の複数のインデックスによるSPA方式が模索されている(TellurianのJKMリンク販売、Shellのブレントリンク販売等)。また、買主に資本参加を求めるなどの新たな商業モデルも登場している(TellurianのDriftwood LNG、 SempraのPort Arthur LNG等) 。

    • 足元でのガス価格低迷とLNG供給過剰により、2ndウェーブ案件の立ち上げ遅延やFIDに向けたオフテイク交渉は難航も、米国産LNGが伝統的LNG市場に契約多様化・柔軟性の新風を吹き込んでおり、LNG市場流動性に貢献。

    FID・未FID案件のオフテイク状況1st /2ndウェーブ案件の契約内訳

    Calcasieu Pass

    メキシコ湾岸地域の2ndウェーブ案件位置図

    (出所:WoodMackenzie, dated 11 June 2019から一部(Calcasieu pass をFID済に変更) JOMGEC編集)

    17

  • ☑ 化石燃料業界への規制強化☑ 気候変動対応政策を重視☑ 化石燃料の生産・輸出減少☑ 国際協調路線か☑ 対イラン・ベネズエラ制裁の緩和可能性

    ☑ 化石燃料業界に引き続きサポーティブ☑ 連邦政府の気候変動対策・規制に変更なし☑ 化石燃料の生産・輸出増加☑ 米中貿易摩擦の継続☑ 対イラン・ベネズエラ制裁の継続

    米国:大統領選挙が分かつ気候変動対応と天然ガス事業への影響は

    共和党 ドナルド・トランプ 民主党 ジョー・バイデン

    • 11月3日の米国大統領選挙で石油・天然ガス業界に影響するのは、主にシェール開発規制、気候変動対応、経済制裁、貿易関係。連邦議会選挙(上院は共和・民主で拮抗)の動向にも注視が必要。

    • バイデン候補は、2020年7月に2兆ドルのクリーンエネルギー計画を発表。2035年までに発電をカーボンフリーに、2050年までに100%クリーンエネルギー経済とGHG排出量ネットゼロの達成を掲げ、パリ協定に再参加して気候変動対策において主導的な役割を果たすとしている。

    • フラッキング規制への懸念から、連邦政府所有地での石油・ガス掘削許認可の駆け込み申請の増加が報じられるも、連邦政府所有地における天然ガス生産量は13%程度で、シェールガス生産への影響は小さいとされる。バイデン氏は3月の“No more no new fracking”発言を取り消し、 フラッキングの全面的禁止については8月に否定した。

    • LNG関連では、規制強化により新規のパイプラインやLNG液化設備建設にかかる許認可手続きに影響が出るとの見方もあるが、対中関係が改善されれば、中国向けLNG輸出が拡大する可能性がある。

    • バイデン氏は超党派の政策立案アプローチを取ることで知られ、急進的な政策には切り替わらないという見方も根強い。

    18

  • 19米州太平洋岸:COVID-19 等影響によりいずれのLNGプロジェクトも遅延

    プロジェクト 会社、参加者 液化能力(万トン/年)

    生産開始 場所

    LNG Canada(FID済み)

    Shell、Petronas、PetroChina、三菱商事、KOGAS

    1,400 2020年代中頃

    British Columbia州Kitimat

    Woodfibre LNG(FID済み)

    Woodfibre 210 2023年 BC州Squamish

    Jordan Cove LNG(未FID)

    Pembina Pipeline 780 2025年 Oregon州Coos Bay

    Energia CostaAzul Liquefaction(未FID)

    Sempra Energy、Pemex

    240 2022年 Baja California州Ensenada

    米州太平洋岸の主要なLNGプロジェクト

    横浜までのタンカー輸送日数

    カナダKitimat

    10日

    ドバイ 22日

    シドニー 15日

    米国メキシコ湾

    20日

    • メリット:アジア市場までの輸送日数が短く、パナマ運河を経由しない。輸送ルートが政治的に安定。• LNG Canada:2018年10月1日にFID。2020年初時点で建設準備中。3月、COVID-19対策で現地スタッフを半減させた。• Woodfibre LNG:2020年夏に建設開始予定だったが、COVID-19の影響で部品を製造するアジア企業が閉鎖されたこと、米

    国建設請負業者が連邦破産法第11章の保護を申請したことにより、建設開始を2021年下半期に遅らせる。• Jordan Cove LNG:2020年3月にFERCが建設・運営計画を、7月にDOEが非FTA締結国への輸出を承認するが、環境問題へ

    の懸念から地元住民や環境保護活動家が反対。• Energia Costa Azul Liquefaction:COVID-19感染拡大により2020年1Qに予定していたFIDを2Qに延期。メキシコ政府の許可

    が発出されず、FIDに至らず。政府は許可の見返りにTopolobampoにも液化施設を建設することを要望との報道あり。

    (各種資料によりJOGMEC作成)

  • 欧州:COVID-19で需要減少も、米国LNGの流入で記録的な高在庫

    • 2020年、欧州のガス消費量は、COVID-19の流行によるロックダウンにより商業用・産業用を中心に落ち込んだ。消費の落ち込みは、ロシアのパイプラインガスの輸入量減少に繋がった。一方で同時期、スポット価格の下落により、パイプラインガスより安価になったLNGの輸入が増加した。2020年Q1・Q2について、域内生産量とパイプラインガスの輸入量は前年同期比で減少しているのに対し、LNGの輸入量は増加している。

    • 欧州は大きなガス貯蔵施設を有する。過去一年、市場からあふれたLNGが欧州に向かい、貯蔵施設の使用量が過去5年を大きく上回り、昨年の秋には100%近くに達した。他方、欧州のトレーダーは、ウクライナの貯蔵施設の空きに目をつけ、今年から利用を始めた。米国産LNGカーゴのキャンセルと共に、ウクライナの施設の有効活用により、欧州の施設は容量満杯になる事態を避けられる見込み。

    (出所: FGE)

    欧州の天然ガス供給源内訳 欧州とウクライナの天然ガス貯蔵施設使用量

    20

    (Bcm)

    (各種資料によりJOGMEC作成)

  • 欧州:需要は長期的に微減、ロシアPLガスへの依存が高まる

    • 欧州における1次エネルギー需要は、2040年にかけて減少する見込み。ガス需要は、2040年にかけて緩やかに減少するも、エネルギーミックスにおいて4分の1以上を占める見込み。

    • 欧州におけるガス生産量は、2020年代からオランダ(グローニンゲンガス田)・英国を中心に減退が始まる。長期的にはノルウェーの生産も減少傾向となり、探鉱・開発は急務。

    • 域内ガス生産量の減退により、LNG・パイプラインガス輸入が増加。新規LNG受入基地の建設や新規パイプライン開設(TANAP・TAP:アゼルバイジャン)による輸入先の多様化も進むが、依然としてロシアへのガス依存は中長期的に続く。

    • 欧州委員会は、かつてはガスセキュリティ重視だったが、近年は気候変動対応や景気回復にも配慮したエネルギー政策を取る。

    欧州のガス需給バランス見通し

    (出所: IEA Gas 2020)

    欧州の1次エネルギー需要見通し

    (出所: IEA Energy Outlook, Stated Policies Scenario)

    21

  • 欧州:周辺国LNG輸入開始、脱ロシアPLガスへ

    • 欧州各地で新規LNG受入基地の建設が進んでいる。特に、東欧やバルト三国におけるLNG輸入の伸びは顕著であり、2020年第1四半期のポーランド・リトアニア・ギリシャにおけるLNG輸入量は過去最高となった。これらの国々は、長い間西欧ガス市場との接続が乏しく、ロシアへのガス依存もしくは限られた市場へのアクセスに苦しめられており、クロアチアのKrk受入基地などEUの支援を受けているものもある。これらの国々は現在、LNG受入基地を持つことによって安価なLNGスポット価格の恩恵を受けている。

    • 米国のLNG輸入は伸びており、ポーランドやギリシャのLNGの伸びはほぼ米国の輸出によるものである。• バルト三国や東欧におけるLNG輸入の伸びは一時的なものとなる可能性あり。西欧ガス市場と比較すると需要が小さい

    ことに加えて、新たに開通したパイプライン(露・Turk Streamやアゼル・TANAP)との競争があるためである。しかし、ガスの輸入方法を複数持つことは、セキュリティの確保や比較的安価なガスへのアクセスに繋がるというメリットがある。

    欧州LNG受入基地

    (出所: GIE)

    バルト三国・東欧諸国のLNG受入基地22

    (各種資料によりJOGMEC作成)

  • 欧州:EUのエネルギー・環境政策(気候法案、グリーンディール、水素)

    • 欧州委員会は、COVID-19後の経済復興計画案を発表した。キーワードはグリーン・デジタル・レジリエントであり、エネルギー分野も対象となっている。欧州のエネルギー政策は、歴史的にはセキュリティが主であるが、近年ではクリーンエネルギーが、そして今回は経済復興の要素が組み合わさっている。

    • 関連して、欧州委員会は2020年7月、「エネルギーシステム統合に関するEU戦略」及び「欧州水素戦略」を発表。2050年までにカーボンニュートラルを実現するための水素利用を促進するものである。

    • 欧州委員会は続々と方針や法案を打ち出すも、エネルギーの中のガスの立ち位置、水素の製造方法(グリーンorブルー)など議論がなされている。ガス企業の団体は、安価で安定したエネルギートランジションのためのガスの役割を欧州委員会に対してアピールしている。また、巨額の予算をどう確保するのか課題となる。

    • 欧州の政策の行方は、ガスの輸出国も注視するところ。一番の輸出国であるロシアも、水素の輸出を検討している。

    (出所: European Commission)

    グリーン復興 水素戦略

    (出所: EU)

    23

  • ロシア及びCIS諸国:ロシアはウクライナ迂回ルート構築・LNGプロジェクトの推進による販路拡大を、CIS諸国は中国によるPL建設を契機に対中偏重を強める。

    ロシアは2006年及び2009年と発生したウクライナとの天然ガス供給途絶問題を契機に、ウクライナ迂回ルートの構築であるNord Stream(2011年)、Turk Stream(2020年)、Nord Stream 2(現在サスペンド)を進め、また、2007年に採択された東方ガスプログラムを受けて、中国を中心とするアジア市場への進出を図り、サハリン-2(2009年)及び対中天然ガスPLであるシベリアの力(2019年)の稼働を達成。更に、ヤマルLNG(2017年)に代表されるロシア企業が最初から主導する北極海からのLNGプロジェクト推進により、欧亜双方のLNG市場への参画を成し遂げている。

    結果、2009年当時のパイプラインガス及びLNG輸出量(各176.5BCM・6.6BCM)は、2019年には同217.2BCM・39.4BCMへ1.4倍に増加。

    他方、CIS諸国は自国産ガスを輸出できるも、ロシアが主導権を握るロシア経由欧州向けルートのみには頼れず、豊富な中国の資金獲得の観点からも新たな対中ルートを構築し、欧州を代替する以上に対中輸出依存度を深めている。

    CIS諸国全体の2009年当時の天然ガス輸出総量(49.9BCM)は、2019年には83.8BCMと1.7倍に増加。

    ロシアCIS諸国からの天然ガス輸出相手国の変化(2009年vs2019年) ※青字は減少したもの。赤字は大きく増加したもの。

    出典 : BP統計

    産ガス国 アゼル カザフ トルクメ ウズベク ロシア

    需要国 PL PL PL PL PL LNG欧州 2.0 × × × 173.4 新規20.5トルコ 9.2 14.6

    ベラルーシ 19.0ウクライナ ×

    中国 新規6.5 新規31.6 新規4.9 新規0.3 3.4イラン 0.3 ×

    他アジア諸国 14.5

    産ガス国 アゼル カザフ トルクメ ウズベク ロシア

    需要国 PL PL PL PL PL LNG欧州 1.8 0.5 0.3 3.6 119.1トルコ 5.0 17.3

    ベラルーシ 15.9ウクライナ 24.2

    中国 0.3イラン 0.4 5.8

    他アジア諸国 5.9

    2009年 2019年

    2009年:露・宇ガス供給途絶

    2009年:S-2LNG稼働

    2009年:中トルクメPL稼働

    2011年:Nord Stream稼働

    2017年:ヤマルLNG稼働

    2019年:中露ガスPL稼働

  • ロシア:ソ連時代から欧州市場へのPL輸出を柱としてきたロシアが、世界市場を相手にできるLNGに本腰。PLの王者からLNGを含む天然ガス世界市場の王者へ。

    2017年、ロシア企業が初めてプロジェクトの開始から主導する世界最北端のLNGプロジェクト・ヤマルLNGが2013年のFIDから4年弱で稼働を開始。2014年の欧米対露制裁にも関わらず、制裁対象ではないLNGプロジェクトはロシア各地で進む。ヤマルLNGの後には同プロジェクトの拡張(オビLNG)、日本企業も参画するアルクチクLNG-2(さらに1及び3)、極東ではRosneftの極東LNG、GazpromのウラジオLNG、欧州でもGazpromによるバルチック(ウスチ・ルーガ)LNGが計画中(但し、昨今の市況を受けてどこまでFIDできるか)。

    NOVATEKは2030年までにこれらプロジェクト稼働により北極圏から日本の需要量にも匹敵する最大7千万トンのLNG生産を目指す。また、ロシア政府は2035年時点でロシアからのLNG輸出量を8千万トンから1.4億トンと野心的に見通す。

    他方、同地域は液化効率は高いとはいえ、極寒僻地への資機材輸送、永久凍土開発、砕氷船機能と積み替えターミナルを必要とする北極海航路というハードルを抱え、ロシア政府による史上最大の優遇税制なくしては成立しないのも事実。

    NOVATEKが進める北極圏のLNGプロジェクト ロシアで進むLNGプロジェクト ※赤実線は稼働中。青実線は建設中。破線は計画中。

    出典 : NOVATEK及びGazpromプロジェクト資料から作成

  • ロシア:ドル箱欧州市場における異変。ウクライナ問題を受けて、欧州はロシア産ガスの締出しを画策。足元ではコロナ禍と世界的なガス供給過多から価格が低迷。

    欧州向け天然ガスのルート別供給先と国内輸送費 欧州向け露産ガス価格の構成

    ウクライナガス供給途絶問題によって欧州はロシア産ガスへの依存を警戒し、中央アジア産ガスやLNGへのシフトを進め、ロシアはドル箱・欧州の取り込み(独:Nord Stream、仏:NOVATEKとのLNGプロジェクト、伊・墺・土:Turk Stream)と新規パイプライン+LNGによるウクライナ迂回ルートを構築する方向に動いている。

    更に、将来的に縮小していく欧州市場を代替するべく、2007年に政府承認を受けた、「東方ガスプログラム」をベースに中国を中心とするアジア太平洋市場の開拓を進めており、2009年のサハリン-2、2011年のサハリン・ハバロフスク・ウラジオストクPL、2017年のヤマルLNG(対中供給)、そして2019年のシベリアの力開通に結実。

    現下の低価格(現在3ドル/MMBTU後半で推移)の情勢では、低い生産コストとソ連時代のインフラ活用によって価格競争力があるGazpromも利益を出せない。中国向けでは巨額パイプライン建設コストと上流開発コストを回収したい一方で、対中価格は「LNG価格マイナス中国国内輸送費」で設定されている様子。アジアのLNG価格との競争に晒されている。

    <参考>対中ガス価格の比較(対中PL稼働以降)

    出典 : Gazprom公開資料及び中国通関統計等から作成

    国名 20年5月価格 20年6月価格 20年7月価格 2019年12月からの平均トルクメニスタン 6.02 6.01 6.06 6.46ウズベキスタン 5.61 5.61 5.63 5.80カザフスタン(中国国境接続) 5.25 5.18 - 5.75ミャンマー 9.68 9.61 9.57 9.74

    ロシア 4.84 4.86 4.79 5.19

    国名 20年5月価格 20年6月価格 20年7月価格 2019年12月からの平均カタール 8.05 5.95 6.28 8.92オーストラリア 7.55 6.89 7.43 7.92インドネシア 7.47 6.63 2.90 6.87マレ-シア 5.91 5.23 4.99 5.88ナイジェリア 5.54 2.49 6.09 6.93トリニダード・トバゴ - - 8.83パプアニューギニア 7.27 7.11 7.30 8.65米国 7.06 5.63 5.92 5.57

    ロシア(サハリン-2及びヤマル) 6.39 5.96 7.07 6.77対中LNG平均価格 6.98 6.32 6.64 7.59

    参考:欧州向け露産ガス平均価格 1.58 1.75 1.80 2.64

    対中パイプライン供給国(単位:ドル/MMBTU)

    対中主要LNG供給国(単位:ドル/MMBTU)

  • ロシア:米国制裁によって中断したNord Stream 2が、デンマーク政府の許可により建設再開に向けて前進。露独以外の思惑に振り回される同PL完成は来年にずれ込む見通し。

    Nord Stream 2に対して激化する欧米の攻撃 Nord Stream 2は、2019年内の完成を目指していたものの、米国による対露制裁発動により、現在に至るまで半年以上に亘って、サスペンドしてきたが、7月、デンマーク政府はGazpromが再度申請した建設計画を承認。

    この動きを受けて、関係国の動きが活発化。---ウクライナを支援しつつ、天然ガス供給源の多様化を進め、生産者と輸送者分離を規定するガス指令を堅持する欧州政府。

    ---当事者ながら米国による制裁に対して非難するも実効的な対応策は示さず、さらにNord Stream 2だけでなく既に稼働するNord Streamに対してもガス指令適用判断を示し、Gazpromに逆風を吹かせているドイツ。

    ---北海からデンマーク経由でポーランドへ天然ガスを供給するBaltic Pipe Project建設を進めつつ、その領海建設許可という立場からNord Stream 2の命運を握るデンマーク。

    ---反露を掲げ、訴訟攻撃でGazpromと公に敵対し、米国産LNG等供給源・供給ルート多様化を図るロシア産ガス通過国のポーランド及びウクライナ。

    ---欧州のエネルギー安全保障を建前として、本音では自国産シェールLNGを売り込む市場を確保すべくロシア外しを画策し、新たな制裁発動を匂わせる米国。

    出典 : JOGMEC取り纏め

  • ロシア:パイプライン及びLNGで欧州・中国市場のガス需要を取り込みつつ、欧州の化石燃料排除の動きには新たに水素供給により対応。

    2020年6月、2035年長期エネ戦略を政府が承認 欧州全体の需要見通し

    世界最大の天然ガス埋蔵量を背景に、天然ガスの生産・輸出拡大を進め、欧州・中国を中心とする世界市場での供給シェア拡大を目指す。生産量は現在の728BCMから、2035年時点で最大1兆CM超。欧州の輸入見通し(2035年時点で387BCM)、中国の輸入見通し(同324BCM)と合計711BCMに対して、2035年時点でロシアからの輸出量見通しは363~489BCMと、現在の容量では2倍程度、35%程度の欧州の対露ガス依存度を更に高める野心的な見通しを、価格競争によるシェア拡大で実現する方針。

    脱化石燃料を進める欧州に対しては、新たに天然ガスや安価な電力をベースに水素をロシアで生産し、既存ガスパイプランでの混送輸出することを模索中。

    中国需要とPL・LNG別調達見通し試算

    出典 : ロシア政府(エネルギー省)、BP統計及びIEA統計

    項目 単位 2018年下限 556 下限 490上限 560 上限 555

    ※原油生産量(上記下限値のMMBD換算) MMBD 11.11

    下限 267.2 下限 243.7上限 269.2 上限 251.9

    ※生産量に占める割合(上記下限値比較) % 47%

    下限 795.1 下限 859.7上限 820.6 上限 1000.7

    LNG生産量 MMt 18.9

    下限 243.9 下限 255.4上限 250.4 上限 300.6

    LNG輸出量 下限 59.8 下限 108.0※第三国トレーディングを含む可能性あり 上限 65.1 上限 189.0

    下限 496.2 下限 505.3上限 509.9 上限 520.1

    ※生産量に占める割合(上記下限値比較) % 68%

    国内ガス化の比率 % 69%

    輸出PLの容量 BCM 240 欧州向けPLの容量 BCM 240 アジア太平洋向けPLの容量 BCM -

    下限 303.7 下限 363.4上限 315.5 上限 489

    水素エネルギー輸出量 MMt 0 0.2 2

    325 32538 80

    ロシア産ガスの輸出量合計 BCM 247.5

    75% 83%

    363 405

    国内の天然ガス消費量 BCM 494.2

    62% 59%

    天然ガス輸出量(PL) BCM 220.6

    BCM 26.9

    天然ガス生産量 BCM 727.6

    46~65 80~140

    原油輸出量 MMt 260.6

    48% 50%

    2024年 2035年

    原油生産量 MMt 555.7

    11.12~11.20 9.80~11.12

    欧州のロシア産ガス依存度の推移

  • カタール:国内外でLNG能力増強を計画、下流事業にも積極参加

    • 今後5‐7年以内に、国内のLNG年間液化能力を現行の7,700万トンから、液化プラント4系列を増設し、年産1.1億トンに拡張し、さらに第2段階で2系列を増設し年産1.26億トンに拡張する計画が進捗中。ただし、コロナ禍の影響で4系列増設に係るEPC契約の締結が今年第4四半期に延期となり、生産開始も2025年に1年延期。今後の進展に要注目。

    • Qatar Petroleum(QP)はExxonMobilと共同で、テキサス州でGolden Pass LNG(年産約1,600万トン)を建設中。最終的には、拡張プロジェクトと合わせ、カタールは年産約6,400万トンのLNGを新たに市場に供給。

    • QPは、今年2月に仏モントワールLNG受入基地での年間300万トンの使用権を確保するなど、主に欧州の受入基地事業に積極的に参画。LNGセクターにおける国際的な「垂直統合」(上流企業の下流事業への進出)を推進。

    • 6月には、韓国造船3社とLNG船100隻超建造(190億ドル規模)で合意。2028年までの世界のLNG船建造能力の60%を確保し、カタールは、LNG拡張プロジェクトを予定通り実施する方針であることをあらためてアピール。

    プロジェクト名液化能力

    (万トン/年)生産開始 出資者

    Qatargas-1 320X3 1996年QP、ExxonMobil、Total

    三井物産、丸紅Qatargas-2 780X2 2009年 QP、ExxonMobilQatargas-3 780 2010年 QP、ConocoPhillips、三井物産Qatargas-4 780 2011年 QP、Shell

    RasGas 1 330X2 1999年QP、ExxonMobil、KORAS

    伊藤忠、エルエヌジージャパンRasGas 2 470X3 2004年 QP、ExxonMobil、CNCRasGas 3 780X2 2009年 QP、ExxonMobil

    拡張プロジェクト(1) 780X4 2025-2027年 QP他(未定)拡張プロジェクト(2) 780X2 2027-2028年 QP他(未定)

    Golden Pass LNG 780X2 2025-2026年 QP、ExxonMobil

    内QP分South Hook(英) ※ 15.4 10.4

    Dragon(英) 5.6 1.15Isle of Grain(英) 14.3 2.0

    Gate(蘭) 17.6 2.55Zeebrugge(白) 13.2 6.6

    Adriatic(伊) ※ 5.6 4.6Montoir(仏) 7.4 3.0

    Golden Pass(米) ※ 15.7 11.0FSRU(バングラ) ※ 3.8 2.1

    ターミナル QP出資受入能力

    (MMT/年)

    カタールのLNGプロジェクト

    QPが使用権を有する受入基地

    カタール洋上油・ガス田分布

    29

    (各種資料によりJOGMEC作成)

    Sheet1

    プロジェクト名 メイ液化能力(万トン/年) エキカ ノウリョク マン ネン生産開始 セイサン カイシ出資者 シュッシシャ

    Qatargas-1320X31996年 ネンQP、ExxonMobil、Total三井物産、丸紅 ミツイ ブッサン マルベニ

    Qatargas-2780X22009年 ネンQP、ExxonMobil

    Qatargas-37802010年 ネンQP、ConocoPhillips、三井物産 ミツイ ブッサン

    Qatargas-47802011年 ネンQP、Shell

    RasGas 1330X21999年 ネンQP、ExxonMobil、KORAS伊藤忠、エルエヌジージャパン イトウチュウ

    RasGas 2470X32004年 ネンQP、ExxonMobil、CNC

    RasGas 3780X22009年 ネンQP、ExxonMobil

    拡張プロジェクト(1) カクチョウ780X42025-2027年 ネンQP他(未定) ホカ ミテイ

    拡張プロジェクト(2) カクチョウ780X22027-2028年 ネンQP他(未定) ホカ ミテイ

    Golden Pass LNG780X22025-2026年 ネンQP、ExxonMobil

    Sheet1

    ターミナルQP出資 シュッシ受入能力(MMT/年) ウケイレ ノウリョク ネン

    内QP分 ウチ ブン

    South Hook(英) エイ※15.410.4

    Dragon(英) エイ5.61.15

    Isle of Grain(英) エイ14.32.0

    Gate(蘭) ラン17.62.55

    Zeebrugge(白) ハク13.26.6

    Adriatic(伊) イ※5.64.6

    Montoir(仏) フツ7.43.0

    Golden Pass(米) ベイ※15.711.0

    FSRU(バングラ)※3.82.1

  • • 2019年のカタールの実質GDP成長率は0.1%(IMF)とほぼゼロ成長に落ち込み。LNG輸出は7,780万トンと3年ぶりの高水準であったが、LNG価格下落の影響で輸出収入は大幅減となり、2019年の石油・ガス部門GDPは実質1.9%減。

    • アジアのLNGバイヤーは、価格引き下げ、油価リンク価格設定方式の見直しや数量減を要請。カタールは欧州のスポット市場向け販売を拡大し、販売量確保の戦略。カタールは値引き要請には応じないとされたが、8月31日、QatargasがSinopecと競合相手を下回る低価格で10年間の長期契約締結との報道。方針を転換し、今後の供給能力拡大を見据え、マーケットシェア拡大を優先する競合相手との「価格戦争」に踏み切ったか?

    • 2025年にかけて合計3,000万トン超の長期契約が期限を迎える。価格の不透明感から、契約更新時に長期契約回避(契約期間短縮)の動きが強まっているが、契約更新の状況および拡張分の新規(長期)契約確保の動向にも注目。

    • QPは「CAPEX・OPEX削減」や外国人解雇などのコスト合理化策を打ち出すも、LNG大増産の方針は堅持。カタールは圧倒的な生産コストの低さを背景に、経済回復への起爆剤としての期待から、LNG能力増強を続け、ライバル国のFIDは延期や中止が相次いだ。サアド・アル・カービエネルギー相は「需要に問題があれば、コストの高い生産者が先に退場する。カタールのように最もコストの低い生産者であり続けることができる事業者こそが、このビジネスの勝者となる」と強調。

    2025~2028年の新規供給見通し2020~2025年に期限を迎える長期契約

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    2020 2021 2022 2023 2024 2025

    MN T/Y

    7.815.6 15.6

    7.8

    5.2

    10.4

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    2025 2026 2027 2028

    MN T/YNew Trains Golden Pass

    (各種資料によりJOGMEC作成)

    30カタール:価格下落、経済悪化にも関わらず、LNG能力増強方針は堅持

    0

    5

    10

    15

    20%

    カタールGDP成長率推移(IMF)

    56.8 52.4

    16.4 23.51.22.4 1.9

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    2018 2019

    MN T/Y

    中東

    北米

    欧州

    アジア

    地域別カタールLNG輸出量

  • 31エジプト:中長期的な生産を望むエジプト政府とIOCの思惑が合致し、沖合未探鉱エリアで活動活発化の兆し

    • ガス輸出国でありながらかつて純輸入国に転じた経験あり。アラブの春を発端とする財政危機に陥った2010年代前半には多額の対IOC債務未払いが発生。現在COVID -19パンデミックによる経済危機への対策としてIMFが緊急融資を実施中

    • Zohrガス田(21Tcf、2015年発見、2017年生産開始)により輸出国へ復帰。その後周辺地域(東地中海)でもガス開発が活発化。ただし2020年代後半より再び国内需要が生産量を上回ると予想

    • 国内供給優先のためエジプトはLNGをスポットで販売せざるを得ない →周辺のガス開発が進み埋蔵量が増えれば、国内供給が安定し長期契約の余地が生まれる可能性あり

    • 一方で現在のガス余剰・低価格下においては、LNGの売れ残りやコスト割れ(洋上ガス田およびイスラエルからのPLガス買取価格は4~5USD/MMBtuとかなり高額)を避けるためLNG出荷を停止中。生産ガス余剰状態となり生産調整を実施(IOCは不満)

    • 西部沖合未探鉱エリア(西地中海)へIOC参入相次ぐ -- 「現在は販売を望まない=増産を望まないが将来的には増産を希望する」エジプトの思惑と「現在は投資を抑制したいがポートフォリオ戦略として中長期的なガス生産量を確保しておきたい」IOCの思惑が今は合致

    • 2基あるLNG輸出ターミナルはフル稼働できておらずLNG容量余力は十分。地中海・紅海への好アクセスという立地優位性もあり、エジプトは将来的には地域ハブを目指す考えも

    エジプトのLNG液化プロジェクト

    各種資料を基にJOGMEC作成

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    bcm

    Domestic gas production Gas demand

    参考:エジプトの天然ガス需給予測(2019.11)

    出所:Wood Mackenzie

    プロジェクト 概 要

    Idku(ELNG)

    生産能力 720万トン/年(360万トン×2系列)事業者トレイン1:Shell(35.5%)、Petronas(35.5%)、EGAS(12%)、EGPC(12%)、Total(5%)トレイン2:Shell(38%)、Petronas(38%)、EGAS(12%)、EGPC(12%)経緯 2005年 稼働開始2020年4月 ガス価格の低下により停止(2020年7月に一度出荷)

    Damietta(SEGAS LNG)

    生産能力 500万トン/年事業者 Eni(40%)、Naturgy(40%)、EGAS(10%)、EGPC(10%)経緯 2005年 稼働開始2010年 国内ガス生産減少2012年 需要の増加する国内市場供給優先政策のため稼働停止

  • 32エジプト:参考資料

    エジプト東地中海域の主要天然ガスプロジェクトおよび西地中海域鉱区の付与状況

    各種資料を基にJOGMEC作成

  • 33東地中海(キプロス、イスラエル):出口(販売)のパズルは解けないが、Chevronが起爆剤となるか?

    • 2020年1月イスラエルからヨルダン、エジプト向けにPLガス輸出を開始したものの、抗議行動(ヨルダン)や契約上の納入量削減オプションの行使(エジプト)※などの問題が発生し順調には進んでいない様子 ※Dolphinus(エジプト)とのPLガス供給契約には「ブレント価格が50USD/bblを下回った場合には、最大50%まで納入量を減らすオプション」あり

    • キプロス、イスラエルからの搬出ルートとして ①東地中海PL(欧州向け) ②エジプトLNG輸出ターミナルへPL接続 ③PL接続による域内消費などを検討。しかし新型コロナウイルスの影響による需要減少・油ガス価格下落による投資削減により開発プロジェクト自体に遅延が発生。未だ将来的な見通しは立たず =ボトルネックは高い開発コスト

    • 以前から地政学リスクがいわれていたが関係は少しずつ変化(イスラエルとUAE[2020年8月]・バーレーン[2020年9月]の外交樹立)

    キプロス、イスラエルの主要天然ガス開発プロジェクト 各種資料を基にJOGMEC作成

    イスラエル:• 2020年Q2のガス生産量は前期比2割以上減少。Tamarでの生産量は操業開始以来最低水準• 2020年7月LNGポートフォリオ拡大を目指すChevronがNoble Energyの買収で合意。エジプトLNG輸出ターミナルへの接続について

    Chevronは「イスラエル・Leviathanの開発を優先する考え」と報道

    プロジェクト確認埋蔵量(tcf)

    水深(m)

    事業者下線はオペレーター 発見 FID 生産開始

    生産量(mmcfd)

    ピーク時生産量

    (mmcfd)摘要

    キプロス

    Aphrodite 3.5 1,700 Noble Energy (35.00%), Shell (35.00%), Delek Drilling (30.00%) 2011年22年末

    迄に予定25年迄に予定 0 6502020年内1坑掘削予定が延期?

    Calypso 2.5 2,100 Eni (50.00%), Total (50.00%) 2018年 - - 0 4502020年Q1評価井1坑掘削予定-1年延期Glaucus 4.6 2,100 ExxonMobil (60.00%), Qatar Petroleum (40.00%) 2019年 - - 0 600 2020年Q2探鉱井2坑以上掘削予定-2021年9月に延期

    イスラエル

    Karish and Tanin 3.5 1,700 Energean Israel (100.00%) 2012年 2018年

    21年後半を予定 0 550

    Leviathan 22.9 1,600 Delek Drilling (45.34%), Noble Energy (39.66%),Ratio Oil Exploration (15.00%) 2011年 2017年 2019年20年Q1 63620年Q2 543 1,200

    2020年8月拡張作業(1,200mmcfdへ)完了予定-2020年Q4に遅延

    Tamar 11.9 1,700Isramco Negev 2 (28.75%), Noble Energy (25.00%), Delek Drilling (22.00%), Tamar Petroleum (16.75%), Dor Gas Exploration (4.00%), Harel Group (3.50%)

    2009年 2010年 2013年 20年Q1 78520年Q2 543 1,000

  • 34

    キプロス:ガス田開発には様々な障害あり・高価な開発コスト、投資削減-オペレーター各社は探鉱・開発計画を延期・トルコ掘削船による妨害行為-東地中海ではトルコとギリシャ、キプロスなどの排他的経済水域(EEZ)が未画定。開発に乗り遅れたトルコが2019年よりキプロス沖で探査を開始したことでギリシャ側が強く反発、両者各々近海で軍事演習も実施、対立が深まっている。2020年8月トルコは黒海で大規模ガス田(約11.3Tcf)を発見したと発表、東地中海での探査活動も続ける方針・イスラエルとの境界ガス田紛争-Aphroditeガス田の一部はイスラエル領内Ishai鉱区に及ぶ。2010年に両国はEEZ境界協定を締結したが、国境を越えた油ガス田からの採掘については未合意でイスラエルは開発を阻止する意向•2020年8月発電用LNG輸入に向けてFSRU関連施設建設が着工、2022年央よりLNG輸入開始予定

    (参考)東地中海地域の既発見ガス田からの生産量および域内需要予測

    出所:Wood Mackenzie

    ・エジプトを含む東地中海エリアの埋蔵量は70Tcfともいわれる。既発見ガス田からの生産だけでも地域需要を上回る供給量が期待でき、進展次第では今後さらなる供給も見込まれる。一方で開発に至らない可能性も否めない。利害が異なる複数の国・上流事業者が「共通の輸出ソリューション」に向けて団結し、方策を見出すのは容易ではない・求められるのは全利害関係者(政府、国民、投資家等)にとってバランスのとれた解決策。地域にとって「新たな経済のエンジン」を約束するもの →「(広義での)共同開発」・妥協、協力、パートナーシップが必要 -Chevronの参入が「変化」をもたらす可能性?・Chevronのポテンシャル:【地政学的リスク】メジャーとしてイスラエル初参入なるか?【経済的リスク】参入により開発コスト低減を実現できるか?エジプトを含む域内プロジェクトの立ち上がりは?地域ハブ化にChevronがどのように貢献するか?

    東地中海(キプロス、イスラエル):出口(販売)のパズルは解けないが、Chevronが起爆剤となるか?

  • 35アルジェリア:天然ガス輸出国としての存続を目指し外資との連携を模索

    • 1990年代~2000年代前半にかけて外資参入が活発化。しかし、その後の排他的政策により外資参入意欲は減退。入札を実施するも不調。Sonatrachが独自開発に取り組むものの技術面・資金面で困難に直面

    • 生産量減少の一方で国内需要は拡大し続け、その結果、輸出量が減少。2019年にはついに国内消費量が輸出量を上回り、また2020年代半ばには国内消費量が生産量を上回り、天然ガス輸入国に転じるとも予想される。そのため、アルジェリアは現在、増産・投資拡大に向けて外資の復帰を希望

    • 外資へのインセンティブ拡大を打ち出し、「柔軟性」をアピール:2019年12月「炭化水素法」改正を実施。契約条件の改善や入札/直接交渉による参入機会の拡大を図り、2020年春以降、新規探鉱を視野に入れたIOCとのMoU締結が相次ぐ

    • LNG、PLガス供給契約については、2018年央以降供給契約の再交渉を進めている。中長期契約にこぎつけるものの市場のガス余剰と国内の生産量減少を反映し、契約量は軒並み減少といわれる。欧州を中心とする伝統的バイヤーへの販売が減少する一方で、安価なLNGスポット価格を強みにバングラディッシュ等のアジアを中心とする新規バイヤー向けLNG供給量が増加

    • 今後の展望:IOCを呼び戻し、外資資金・知見活用により新規生産を拡大し減少幅を抑制。天然ガス供給者(PL、LNG)として安定した地位を確立。将来的には経済の石油ガス依存度低減を目指す考え

    各種資料を基に作成

    bcm

    アルジェリアの天然ガス出荷インフラ

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    その他向けLNG

    アジア向けLNG

    アフリカ向けP/L

    欧州向けLNG

    欧州向けP/L

    国内消費量

    生産量

    BP統計を基に一部編集アルジェリアの天然ガス生産量、国内消費量、輸出量の推移

  • 36アルジェリア:参考資料

    締結日 事業者 締結日 事業者

    2020.3.12 Chevron(米) 2020.7.1 ENI(伊)

    2020.4.16 Zarubezhneft(露)、TPAO(土) 2020.7.29 CEPSA(西)

    2020.4.20 ExxonMobil(米) 2020.7.30 OMV(墺)

    2020.5.4 Lukoil(露) 2020.8.17 Wintershall Dea(独)

    事業者 更改時期 契約期間(延長op)契約量

    (bcm/年)出荷形態

    Naturgy(西) 2018年6月 -2030年 9 PLBotas(土) 2018年9月 2019年10月-2024年10月 4.5 LNGEni(伊) 2019年5月 2019年-2027年(+2年) 19.5 → 9 PLEnel(伊) 2019年6月 2019年-2027年(+2年) 6 → 3 PLGalp Energia(葡) 2019年6月 -2029年 2.5 PLEdison(伊) 2019年11月 2019年-2027年 2 →1 PLEngie(仏) 2019年11月 n/a n/a PL, LNG

    最近締結されたE&Pに関するMoU

    近年更改された天然ガス供給契約の一例

    Sonatrachプレスリリースに基づき作成

    MEES報道等を基に加筆

  • ナイジェリア:サブサハラアフリカ最大の産ガス国

    • Nigeria LNG (NLNG)トレイン7は10年以上遅延してきたが2019年12月にFID。上流ガス供給確保、NNPCの資金不足、治安面での不安は残るが低コストのフィードガスと既存資源を活かした開発(ブラウンフィールド)を強みにサブサハラアフリカで最も競争力のあるプロジェクト。

    • NLNGの第1~3トレインから生産されたLNGは主にポートフォリオプレイヤーが欧州やアジアのバイヤーと長期契約(油価連動)。既存の契約は2021年~2025年に期限が切れる予定で、現在契約更新交渉が進む。

    • 2010年以来、欧米向けの輸出が減少し、アジアや中南米のプレミアム市場への輸出が増加。しかし、他地域からの供給増加に直面し、競争環境は厳しい。

    • 輸送コストを除いた損益分岐点は5USD/MMBtuと見積もられる。コスト面では、カタールのメガプロジェクトやロシアのLNGに及ばないものの、2020年代半ばに新たな買い手を見つけることは可能と言われる。

    Nigeria LNGの概要と経緯年月日 SPA締結相手 備考

    2019年12月9日 Vitol トレイン1~3年間50万トン期間:10年間、DES

    2020年1月21日 Total Gas % Power トレイン1~3年間150万トン期間:10年間、FOB

    2020年1月26日 Eni トレイン1~3年間150万トン期間:10年間、DES及びFOB

    2020年2月2日 Galp トレイン1~3年間100万トン期間:10年間、DES

    Nigeria LNGの最近の契約更新

    (出所:NLNGホームページ)

    Train 1 Train 2 Train 3 Train 4 Train 5 Train6 Train7

    FID 1995年11月

    1995年11月

    1999年2月

    2002年3月

    2002年3月

    2004年7月

    2019年12月

    設備容量(万トン/年)

    320 320 320 410 410 410 800

    稼働開始

    2000年2月

    1999年8月

    2002年11月

    2005年11月

    2006年2月

    2007年12月

    37

  • モザンビーク:新興LNG大国を目指す

    • 2010年以降、モザンビーク北部沖合にて、世界最大規模の天然ガス田が発見された。モザンビークには3つの開発中・計画中のLNGプロジェクトがある。Mozambique LNGはFID済・開発工事中(24年稼働予定)、Coral FLNGも開発工事中(22年稼働予定)。ExxonMobil(2017年に参加)主導のRovuma LNG(Area4)は2020年のFIDを延期と発表(低油価・ガス価の影響)。

    • 3プロジェクトが軌道にのれば、年間3,000万トン以上のLNG生産がされ、新興エネルギー国としての地位を確立。• ただし、LNG事業の行われる北部では武装勢力による襲撃事件が発生しており、開発工事への影響について要注視。

    Mozambique LNG (Area 1)事業者 Total(26.5%)、Mitsui&Co

    (20%)、ENH(15%)、Beas Rovuma Energy Mozambique(10%)、Bharat Petroleum (10%)、ONGC (10%)PTTEP(8.5%)

    FID 2019年6月

    生産量 1,200万トン/年(見込み)

    稼働開始

    2024年(見込み)

    Rovuma LNG (Area4)

    事業者 Mozambique Rovuma Venture*(70%)、ENH(10%)、GalpEnergia(10%)、KOGAS(10%)

    FID 2019年末までになされる予定だったが2020年に後ろ倒しされ、さらに4月ExxonMobilはプレスリリースで延期することを発表した。延期後の時期は不明。

    生産量 1,520万トン/年(見込み)

    稼働開始

    FID遅延により稼働開始も遅延見込み

    Coral FLNG

    事業者 Mozambique Rovuma Venture*(70%)、ENH(10%)、GalpEnergia(10%)、KOGAS(10%)

    FID 2017年6月

    生産量 340万トン/年(見込み)

    稼働開始

    2022年(見込み)

    *Mozambique Rovuma VentureはEni(35.7%)、ExxonMobil(35.7%)、CNPC(28.57%)から構成される。

    各プロジェクトの概要各プロジェクトの位置

    (各種資料よりJOGMEC作成)

    38

  • モーリタニア/セネガル:Tortue LNGプロジェクトが大型プロジェクトに先駆け進展中

    • 2012年に米国独立系のKosmos Energyがモーリタニア・セネガル沖の探鉱に参入しTortueを含む有望なガス層を相次いで発見した。同海域の有望性が明らかになるとBPがオペレーターとして参入しTortueガス田開発が加速した。Tortueガス田はモーリタニア・セネガル国境に跨るものの、両国間の速やかな権利関係確定により順調に開発が進んだ。

    • 極めて順調かつスピーディーに進展していたが、COVID-19によりBPが浮体LNG生産設備の引き取りにつきフォースマジュールを宣言して引き取りを拒否、遅延が見込まれている。

    プロジェクトの経緯 プロジェクトの位置

    (各種資料よりJOGMEC作成)

    年月 イベント

    2018年12月 Greater Tortue Ahmeyim LNG事業のフェーズ1としてLNG生産年間250万トンの計画で最終投資決定(FID)

    2019年2月 Golar LNGがGrater Tortueフェーズ1としてBPにFLNG設備を提供することを発表。Golar LNGの子会社Gimi MSとBPの間でFLNG Gimi号の賃貸・操業契約(LOA)を締結

    2019年3月 2018年4月のFEED契約に引き続き、TechnipFMCがBPからFPSOのEPCIC(Engineering, Procurement, Construction, Installation and Commissioning)契約を受託

    2020年2月 LNGの販売については全量をBPが行うことを発表

    2020年4月 COVID-19により2022年の目標接続期日までに浮体LNG生産設備GIMIを引き取り、据え付け作業する準備ができないとしてBPがGolarにフォースマジュール宣言を発出。1年程度の遅延が見込まれる。

    2022年~2023年 商業生産開始見込み

    39

  • 40

    (出所: FGE Market Snapshots:Oil and Gas Aug,2020) (出所:PIW 他に基づき作成)

    企業 プロジェクト 状況

    BP North West Shelf , Browse 売却検討

    Chevron NWS 売却検討

    ConocoPhillips Darwin LNG, Bayu-Undan 売却

    Australia Pacific LNG(AP LNG) 売却検討

    Eni Darwin LNG, AP LNG 売却準備中

    ExxonMobil Bass Strait 売却準備中

    Shell Queensland Curtis (QCLNG) 売却準備中

    North West Shelf , Browse 売却検討

    FID液化プロジェクト(2006~2020) メジャーズ・独立系の主な売却(検討中)LNGプロジェクト

    • 豪州では2009年から2012年にかけてLNGプロジェクトブームが到来したが、その後新規のFIDはなく、拡張案件やバックフィル(枯渇ガス田の代替開発)案件が計画されている。

    • IOCや米系独立系は資産組み換え組み換えの過程で豪州LNGの売却、撤退を検討。豪州の石油・ガス企業が引き継ぐ。• リスクが限定的で、システムの確立されたLNGインフラを有する豪州は長期的に安定した収益源としてインフラファンドや、

    プライベート・エクイティを惹きつけている。豪州企業と新たなプレイヤーの参入で業界再編の可能性も。

    豪州:油価下落の影響で資産の組み換えが進む

  • 41豪州:西部・北部がガス豊富だが、東部ではガス供給がタイト

    新PL計画

    (国内ガス市場)• 東部は近年恒常的に供給がタイト。FSRUを始めとした複数の

    LNG輸入計画あり。• 国内供給ガスが不足の際に、LNG輸出用ガスを国内に優先的

    に供給させる国内ガスセキュリティーメカニズム制度(ADGSM)2017年制定。これまでのところ、発令の経験は無い。

    • 西部のガスを東部に輸送する東西ガスパイプライン計画は、検討の結果、経済性はないとの判断もでている。

    • 北部-東部間のパイプラインの拡充や、NSW州やVIC州でのLNG受入基地の建設が計画されているが経済性が課題。

    (LNG輸出プロジェクト)• Prelude FLNG、Gorgon LNGで設備の不具合が発生し、現在検

    査・補修中。• Darwin、NWS、PreludeでBackfillガス田の必要性が高まる。

    西豪州東部

    北部

    豪州の天然ガス生産、パイプライン位置図

    (出所:Energy Quarterly June 2020 Report)

  • 42マレーシア: 伝統的LNG輸出国、長契期限を迎え、スポット市場に参入

    (出所:Critical Trends; © 2020 Energy Intelligence Group; Used by Permission.)

    • これまでの主なLNG契約は、日本の買主との長期油価リンク契約。• 2027 年までに年間700 万トン近くの契約が期限を迎える。• 2018年に期限切れとなったJERA、東京ガスとの年間740万トンの契約は、半分以下の量での更改となった。• 同様の結果を懸念し、ペトロナスは、韓国や台湾でのポジションを強化するとともに、パキスタン、ミャンマー、バングラデ

    シュ、インドなどの成長市場への進出を目指す。• ただし、カタールも、2020年代にかけて契約期限を迎える他、拡張分の新規(長期)契約確保に向けて、同様の国々を

    ターゲットとしており、競合が予想される。

    プロジェクト名 買主 年間契約量 期限

    MLNG Tiga JAPEX 48万トン 2021

    MLNG Satu Osaka Gas 80万トン 2023

    Petronas Portfolio Jovo 50万トン 2023

    MLNG Tiga Osaka Gas/Toho Gas/Tokyo Gas 80万トン 2024

    MLNG Satu Shikoku Electric 36万トン 2025

    MLNG Dua Tokyo Gas 90万トン 2025

    MLNG Dua JXTG 38万トン 2025

    MLNG Dua Shizuoka Gas 33万トン 2025

    MLNG Tiga Tohoku Electric 50万トン 2025

    MLNG Satu Hiroshima Gas 10万トン 2026

    MLNG Dua Tohoku Electric 37万トン 2026

    MLNG Dua Sendai City Gas Bureau 16万トン 2027

    MLNG Tiga Toho Gas 52万トン 2027

    Petronas Portfolio Toho Gas 42万トン 2027

    2027年までに契約期限を迎えるペトロナスLNG供給契約リスト

    マレーシアのLNG供給先(2015-2019年)

  • 43東南・南アジア:今後の需要ドライバー、LNG受入インフラ整備が課題

    (出所:IEA Gas2020)

    • IEAによれば、アジア太平洋地域は、世界のガス需要の成長に中国に次ぐ第2位の貢献者。増加幅の60%以上を発電セクターが牽引し、2019-25年の間に35Bcm/年の成長を遂げる見込み。ただし、インフラ整備のペースは、各国の政策支援や外部資金の規模に大きく左右され、LNG受入基地プロジェクトが計画通り進捗しない場合、既存の再ガス化インフラだけでは、需要の伸びは半分にとどまると見ている。

    • 逆に、LNG トレーダーやポートフォリオ・プレーヤーがより積極的に参加し、開発銀行や外国政府からの支援を受けて、この地域のインフラを開発すれば、追加需要を掘り起こすことができる。

    南アジア・東南アジアにおける稼働中・計画中のLNG受入基地

    (各種資料からJOGMEC作成)

    アジア新興国におけるガス需要成長見通し(2019-2025)

    新規の受入インフラあり

    新規の受入インフラなし

  • 44中国:世界のLNG市場けん引役の地位不動新たなプレイヤー、PipeChinaのインフラ一元化、トラックLNGに注目

    • セキュリティ強化政策のもと国産ガスの増産が続く。中央アジアからの輸入パイプラインガスは現時点では価格競争力で輸入LNGに劣後。地方政府系・民間事業者などLNGを取り扱う新たな企業が台頭、スポットLNGの調達やIOCとの中長期売買契約が相次ぐ。国有3社と新たなプレイヤーによるLNG受入基地の新増設が進み、中長期的に輸入LNGへの依存が高まる可能性。

    • 政府はエネルギー安全保障と貯蔵能力向上を重視。国有パイプチャイナが設立され、国有3社寡占のパイプラインやLNG受入基地資産・操業権の一部を移譲。政府は公開、競争の進展を期待するが漸進的。地下貯蔵整備も急務。

    • トラック・コンテナLNG市場は地方政府系・民間企業などの事業者多様化で競争激化、運転手等輸送コスト上昇も導管接続のボトルネックがあるため二桁成長が続く。

    • 近年中国のガス需要を急増させた石炭から天然ガスへの転換に一服感はあるが、長期的に需要増加。2030年までに需給ギャップは2億トン超に拡大、2023年頃日本を上回る最大のLNG輸入国に。世界のLNG市場けん引役の地位は不動。

    0 5,000 10,000 15,000 20,000

    受入能力

    LNG輸入量

    2015年 2019年 2025年万t

    中国: LNG輸入量と受入能力

    2025年は見通しSIA、ICIS、IEAに基づき作成

    中国:天然ガス需給見通し

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    2018年 2025年 2030年

    生産 需要

    BCM

    IEA

    IEA WEO2019 公表政策シナリオ(SPS)に基づき作成

    中国: トラックLNG取引推移

    8.5 9.4 11.0

    13.1

    6.2

    5.8

    10.6

    14.2

    16.2

    9.8

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    2016 2017 2018 2019 1H2020

    unit:

    mm

    t

    Trucked LNG Supply by Source

    Land-based LNG Production Trucked LNG Imports

    Source: SIA Energy

    SIAに基づき作成

    0%

    5%

    10%

    15%

    20%

    25%

    30%

    (100)

    400

    900

    1,400

    1,900

    2,400

    2,900

    3,400

    2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 2016年 2018年 20年1-6月

    国産ガス LNG 輸入パイプラインガス 輸出 消費成長(%)(億m3/年)

    中国 :天然ガス需給

    SIA、China OGP他に基づき作成

  • 45上海SHPGXの活用によるガス市場化を目指す中国~カーボンニュートラルグリーンLNG・LNGオンライン取引~

    概要

    カーボンニュートラルLNG取引(2020年6月)バイヤー:CNOOCセラー:Shell

    • カーボンニュートラルLNG2カーゴ(価格プレミアム不明)。• Shell Energyの青海省造林事業等の炭素クレジット認証とのカーボン

    オフセット。• LNGは上海石油天然ガス交易センター(SHPGX)で入札、小分け販売

    輸入LNGオンライン取引試行(2020年8月)バイヤーCNOOC・Sinopecセラー:Total

    • SHPGXで国際LNGトレーディングのオンラインプラットフォームのトライアル運用を開始。取引数量は2カーゴ13万トン(CNOOCがTotalから1カーゴ調達、同日Sinopecも1カーゴを調達)。PetroChina、Total、Glencoreも参加。

    • 上海石油天然ガス交易センター(SHPGX):政府主導で2015年3月上海に設立された天然ガス・LNG現物取引所。• パイプラインガス、LNG、ガソリン、軽油の現物取引ならびにLNG受入基地の容量を開放する“ウィンドウ取引”とし

    て機能。会員企業は約2,400社。天然ガス(LNG)の取引量は国内消費の1割(約2,500万トン)

  • 46インド:ガス需要拡大のカギを握る輸送インフラ整備、価格改革。市場化は進展するか?

    • 政府は2030年にガスの1次エネルギー消費に占める比率を現在の6%から15%に高める目標を設定。需要拡大には価格改革、都市ガスの流通促進、ガス火力の稼働率向上に加え、天然ガスの供給確保、輸入・輸送インフラ整備が必要。

    • 価格統制等現行制度の下では国産ガスの増産は限定的。輸入パイプラインはトルクメニスタン~アフガニスタン~パキスタン~インド(TAPI)パイプラインが有望とされるが、実現には時間を要する。天然ガス消費15%目標達成には輸入LNG拡大が不可欠(30年消費217Bcm、輸入ガス176Bcm≒1.32億トン)。都市ガス導管や幹線パイプライン、LNG受入基地などの輸送・輸入インフラ整備進展。IEAは2030年の天然ガス比率8%(30年消費131Bcm、輸入ガス77Bcm≒5,600万トン)と予測。

    • 2020年6月にはガス取引所Indian Gas Exchange (IGX)発足。当初西岸(Dahej、Hazzira)と東岸(Kakinada)の3つのハブで、スポットとフォワード契約による現物受渡しのガス取引プラットフォーム、指標価格形成を目指すが現状取引は限定的。

    • ガス託送料金における“パンケーキ問題”(ガスが複数のパイプラインを通過する際、各パイプラインタリフが上乗せされ、消費者のコスト負担が増大)も課題として認識。

    石炭55%石油

    30%

    天然ガス6%

    水力4% 再生可能エネ…

    原子力1%

    インド:エネルギー源別消費

    出所:BP Statistical Review of World Energy

    インド : IGX現物取引ハブ

    出所:IGX青は計画

    26.9

    59.7

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0

    40.0

    50.0

    60.0

    70.0

    2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

    天然ガス生産 天然ガス消費

    天然ガス需給 天然ガス需給見通し(ガス15%目標試算)

    0 50 100 150 200 250

    2019年

    2030年(推計)

    国産ガス 輸入LNG

    BCM2019年はBP Statistical Review of World Energy2030年は1次エネルギー消費をインド政府見通しの年4%、国産ガス成長も4%、PNG輸入ゼロの前提で試算

  • 47おわりに

    • 天然ガスの利用は、古来の地域エネルギーから、パイプライン輸送、さらに、LNG化が可能とした遠距離輸送によって、拡大の一途をたどっている。

    • 2000年前後の欧州ガス市場自由化と、その後の米国シェール革命、2010年代以降のLNG市場の拡大をきっかけとして、それまで分断されていた世界のガス・LNG市場が連携し始め、近年、天然ガスに加えて、LNGのコモディティー化も一気に進展しつつある。

    • 一方、2020年、新型コロナウイルスと油価下落の影響も加わり、スポットガス・スポットLNG価格が記録的な水準まで低下したことに象徴されるように、世界中でこれまでにない数々の変化が進行している。

    • 各国各社がどのような戦略をとるにしても、- 広く賦存し、安定的に、安価に供給できる

    - リニューアブルと相性が良く、2050年まで継続的に成長していく

    - 二酸化炭素排出量が少なく、長期的には水素社会への橋渡しを担える

    という特性から、天然ガス・LNG は、今後、ますます重要なエネルギーとなっていくと考えられている。

    • 事業環境がますます厳しくなる中、LNGに携わる人々が知恵を出し合って、さらなるコストダウンを進め、価格を平準化していく等、不断の努力を続けていかねばならない。

    天然ガス・LNGを巡る動向(2020年)�免責事項スライド番号 3スライド番号 4スライド番号 5スライド番号 6スライド番号 7スライド番号 8スライド番号 9スライド番号 10スライド番号 11スライド番号 12スライド番号 13スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16スライド番号 17スライド番号 18スライド番号 19スライド番号 20スライド番号 21スライド番号 22スライド番号 23スライド番号 24スライド番号 25スライド番号 26スライド番号 27スライド番号 28スライド番号 29スライド番号 30スライド番号 31スライド番号 32スライド番号 33スライド番号 34スライド番号 35スライド番号 36スライド番号 37スライド番号 38スライド番号 39スライド番号 40スライド番号 41スライド番号 42スライド番号 43スライド番号 44スライド番号 45スライド番号 46スライド番号 47