支援の目標としてのエンパワーメント (自己・権利...

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1 地域自立生活支援・エンパワー メント・自立支援法 そして日中活動のゆくえ 東洋大学ライフデザイン学部 教授 北野誠一 地域自立生活支援とは? ①自立生活支援 ②地域生活支援 ③地域(共感力)支援 の3要素が 紡ぎ出す エンパワーメントされた地域社会 の創出にむけた支援 まず最初に、支援・援助・サービ ス等の定義をしておこう! 支援や援助は、する側の意識や意図が予 期された表現 サービスやプログラムは、それ自身の意味 を持ちうるが、それを行う側の意識や意図 に規定されるという意味では、ニュートラル (価値中立) ここでは支援を「本人の意思決定を促した り、容易にするための働きかけを含む、最 大限の本人の意思をふまえた、本人の価 値実現のニーズに対する働きかけ」と、エ ンパワーメント指向的に定義する。 支援の目標としてのエンパワーメント (自己・権利実現)を定義しておこう! 「①本人(家族・支援者)が、どうせ私(達)は障害 者(年寄り・子ども・女・その家族・その支援者)だか らと、諦め(がまん)させられている希望・社会参加・ 市民的役割・選択(肢)・人権(地域で普通に暮らす 権利)・自分らしさ・可能性・愛し愛されること・仲間 で助け合う力・成熟する力・自然治癒力等を自覚し、 明確にすると共に ②その心理的・組織的・社会的・経済的・法的・政 治的阻害要因(ICFの阻害的環境要因)と対決して、 問題を解決する力を高め、 ③必要な支援(ICFの促進的環境要因)を活用する 力を高めること」 つまり、『自分らしく・人間らしく生きる力を高めること』 資料4

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 地域自立生活支援・エンパワーメント・自立支援法

そして日中活動のゆくえ

東洋大学ライフデザイン学部 教授 北野誠一

地域自立生活支援とは?

①自立生活支援

      +

 ②地域生活支援

      +

 ③地域(共感力)支援

の3要素が紡ぎ出す

エンパワーメントされた地域社会

の創出にむけた支援

まず最初に、支援・援助・サービス等の定義をしておこう!

• 支援や援助は、する側の意識や意図が予期された表現

• サービスやプログラムは、それ自身の意味を持ちうるが、それを行う側の意識や意図に規定されるという意味では、ニュートラル(価値中立)

• ここでは支援を「本人の意思決定を促したり、容易にするための働きかけを含む、最大限の本人の意思をふまえた、本人の価値実現のニーズに対する働きかけ」と、エンパワーメント指向的に定義する。

支援の目標としてのエンパワーメント(自己・権利実現)を定義しておこう!• 「①本人(家族・支援者)が、どうせ私(達)は障害者(年寄り・子ども・女・その家族・その支援者)だからと、諦め(がまん)させられている希望・社会参加・市民的役割・選択(肢)・人権(地域で普通に暮らす権利)・自分らしさ・可能性・愛し愛されること・仲間で助け合う力・成熟する力・自然治癒力等を自覚し、明確にすると共に

• ②その心理的・組織的・社会的・経済的・法的・政治的阻害要因(ICFの阻害的環境要因)と対決して、問題を解決する力を高め、

• ③必要な支援(ICFの促進的環境要因)を活用する力を高めること」つまり、『自分らしく・人間らしく生きる力を高めること』

資料4

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①自立生活支援とは

• 「サービス提供者等の支援者が、サービス利用者のエンパワーメントを支援することが原理的かつ構造的に想定されたシステムのもとで、自分で選んだ普通の市民生活を求める障害者等に、それぞれの自立生活に必要な支援を行うこと」

• それは、自己決定・選択している障害者の当事者主権を支援するというだけでなく、どんな重度の障害をもつ人も自己決定・選択する地域生活主体であること(となること)を支援することである。

では、自立生活ってなんだ• それは、 自分でやりにくい時や、分かりづらい時などに、仲間や支援者等の支援を活かして、 自分で選んだ自分らしいまちでの暮らしを生きること 

• それは、必要な支援をなくしてゆく身辺自立でも、 何でも自分一人で決める自己決定でもない。

・ それは、自分でできなかったり、分からないことを  問題にしていない。やりにくい、分かりにくい関係性 を問題にしていることに注目!!

②地域生活支援とは

• 「地域で普通の市民生活を営むにあたって、障害があるがゆえに必要な支援」

• その中身は、〔図ー1〕のとうり、「グループホームやアクセシブル住宅や地域介助サービスは勿論のこと、就学・就労への支援や社会活働への支援、さらに移動(交通)支援やアフターファイブやウイークエンド活動への支援等」が含まれる。

医療・職リハ訓練等

住宅サービス 介護サービス

日常生活マネジメント及びサービスコーディネーション

地域自立生活(支援)センター

自立生活プログラム及び

サービスコーディネーション支援

社会活働支援就学・就労支援

ウィークエンド・アフターファイブ活動支援

地域介護サービス

グループホームケア付住宅

アクセシブル住宅サービス

入所(院)サービス

移動・交通

サービス

地域医療

地域自立生活支援

【図-1】

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なぜ地域生活支援ではなく地域自立生活支援なのか

• Finkelsteinによれば、 「地域サービスでは、障害者の生活に対する、専門家の評価や介入の範囲は、医療モデルよりも、拡大する。

 このことは、専門家が目立つこと無く、障害者は自分で決めることがほとんど残されていない状態に追い込まれることを意味する。

 地域のサービス提供者は、地域生活に必要な住宅改造や福祉機器のたぐいから、人間関係やセックスの悩みのアドバイスにいたるまで、なんでも提供してしまう。」(地域の施設化!!)

地域自立生活支援は、在宅生活支援とは、違う!  

• 在宅(居宅)生活支援は、• これまで、すべて家族に押しつけられてきた介護の、一部を肩代わりするというイメージを、払拭できないだけでなく、

• 介護保険の在宅支援のような、家のなかでのサービスやデイサービスを超えて、

• 教育・就労・余暇を含めて、社会で活動・活躍することを支援するという、社会生活支援のイメージに欠ける。

では、施設生活支援とは何なのか①

• 入所施設は、〔図ー1〕にもあるように、 本人自身では管理できない、本人達の日常生活を強制的に管理し、本人自身ではコーディネーションできない、三種類のサービスを画一的にコーディネーションすることによって、

 トータルに生活を支援しているところと思われている。

• ところが、実際は、その強制と画一化のために、地域で生活する際に最も必要な、自分の日常生活を自分で組み立てて、自分に必要なサービスをコーディネーションする力(エンパワーメント)が、支援されるどころか、奪われてしまっている。

では、施設生活支援とは何なのか②

• 例えば、自分の日常生活の諸活動を自分で組み立てる「時間管理」や、そのために必要な費用を、月々の生活費との関係で調整する「金銭管理」や、「服薬管理」(not投薬管理)などが、身につかないどころか阻害されている。

• それゆえに、〔図ー3〕にもあるように、そのことを支援する自立生活プログラムと、ケース(ケア)マネジメントが必要となるが、施設・病院内でそれをすることは、不可能。

• 同じ職員や、同じ管理システムや、同じ環境・雰囲気の中で、ある部分だけ本人の自己管理を徹底することなど、絵に描いた餅でしかない。

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「無力な障害者」の保護から      「役割を担う存在」の支

援へ• これからの私達には、入所施設(病院)のもつ「安全」「効率」といった価値を超えた、地域自立生活の「社会参加・変革・労働」の持つ「共立」の価値理念の市民合意形成が必要。

• その際、これまでの恩恵・保護が、「一方的に与えられる、何も生まない福祉」であり、これからの地域自立生活支援が、「参加・参画によっ

て、社会の中で、確かな役割(労働)を担う存在への支援」であることを、アピールする必要がある。

地域生活支援は、生活の広がりの支援

• 〔図ー1〕を見れば分かるように、入所施設サービスでは生まれ得ない、様々な選択肢と、それに対する支援が、地域生活支援では展開される。

• ウィークエンドやアフターファイブ活動への支援や移動・交通サービスがそれに当る。

• さらに、一般・保護雇用に対する様々な支援も、多様に展開される。

「自立支援法」は地域生活支援をどう捉えているのか?

• 「自立支援法」の、施設体系の見直しによる職住分離(日中活動支援+住まいの場支援) =地域生活支援という理解は誤り

• 【図ー1】を見ても分るように、地域生活支援は基本的に三分割されている。

• 地域生活支援=日中活動支援+Weekend/After5活動支援+夜間の住まいでの暮らし支援

<現行サービス> <新サービス>

ホームヘルプ(身・知・児・精)

デイサービス(身・知・児・精)

ショートステイ(身・知・児・精)

グループホーム(知・精)

重症心身障害児施設(児)

福祉ホーム(身・知・精)

自立訓練

訓練等給付

ホームヘルプ(居宅介護)

ショートステイ(短期入所)

生活介護

重度障害者等包括支援

児童デイサービス

障害者支援施設での夜間ケア(施設入所支援)

ケアホーム(共同生活介護)

就労移行支援

就労継続支援

グループホーム(共同生活援助)

療養介護

通勤寮(知)

居宅サービス

生活訓練施設(精)

療護施設(身)

更生施設(身・知)

授産施設(身・知・精)

福祉工場(身・知・精)

重度訪問介護

行動援護

第5条第2項

第5条第6項

第5条第7項

第5条第8項

第5条第9項

第5条第10項

第5条第11項

第5条第3項

第5条第4項

第5条第5項

第5条第13項

第5条第14項

第5条第15項

第5条第16項

※この他、地域生活支援事業として移動支援、地域活動支援センター・福祉ホーム等を制度化

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「生活介護」と「地域活動支援センター」の問題

• たとえいかなる重度の障害者においても、 ICFの「活動」と「(社会)参加」の概念を使って、「就労支援」以外の日中活動支援は、「生活介護」ではなく「社会参加・活動支援」と表現されるべき

• もしそれが介護保険との整合性にゆえに出来なかったのだとすれば、介護保険のデイサービスとはいったい何なのか?

• さらに、個別給付なき「地域生活支援」とは、いったい何なのか?

③地域(共感力)支援とは• 「障害者や痴呆高齢者を閉じ込めたり、追いやる地域ではなく、地域で普通に生きる彼・彼女らの生き方を、共感的にささえることができる地域作りを支援すること」であり、さらにそれは 

• 「地域住民のそれぞれが、お互いの障害や弱さを受け入れ、認め合い、またお互いの支援の必要性と可能性を理解し、共感しあえる地域作りの支援」を意味する。

③地域(共感力)支援とは、「共に生きる力」を育むこと 

• 障害者や痴呆高齢者を、閉じ込めたり、追いやったために、本人達の主体的な生き方だけでなく、地域もまた、その主体的で共感的な想像力(共に生きる力)を封印されてきた。

• 「まち」で自分らしく主体的に生きる中でこそ、何がほんとうに必要な支援で、何が不必要な支援か、重い障害をもつといわれる人にも見えてくる。

• それは、お互いの共感力を、傷つきやすさから解放してあげることであり、傷つきやすさに溺れて閉じこもってしまわない「共に生きる力=共感力」を、確かめながら育むことでもある。 

③地域(共感力)支援とは、 地域のエンパワーメント支援

• 地域内に「いつも支援するグループ」と「いつも支援されるグループ」を作らないことが地域(共感力)支援の鉄則

• ソーシャルワーカー(コミュニティーワーカー)には、そのためのスキルのみならず、その事態が生み出す住民間の差別構造や権力構造やコンフリクトに対するセンシティビティーや共感力が求められる。

• 「地域福祉計画」は、主にこのような地域のエンパワーメントを支援するための計画

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では、地域自立生活支援とは

• 自分達のまちで、自分らしく暮らすために、さまざまな支援を必要とする人と人が、共に創り出す支援を、地域自立生活支援という。

• 障害や傷つきやすさの程度にかかわらず、自分らしく生きるための支援を地域に求め、働きかける人は、それにふさわしい支援を共に創造する人なのである。

地域自立生活支援と脱施設化

• 〔図ー1〕で明らかなように、入所施設の四つのサービスが、全て地域において提供できるということは、全ての入所施設利用者の地域生活移行は可能であることを意味する。

• それゆえ、地域自立生活支援の展開とともに、入所施設サービスの占める位置はどんどん縮小していき、やがてなくなることになる。

• また、これからしばらくは拡大するであろう、グループホームやケア付住宅といった、住宅サービスと介助サービスがドッキングした形態も、徐々に縮小されていくものと思われる。

• スエーデン・カナダ・アメリカ等では、この方向が特に明確である。

アメリカにおける脱施設化(De-institutionalization)の定義

• 脱施設化は、一般的には、3つの構成要素で定義される。

• ①不必要な施設入所や長期入所を防止すること• ②施設にとどまる必要のない障害者に、地域で  の適切な住宅・介助・教育・就労支援等のサー ビスを発見し、創出すること

• ③地域サービスの現状では施設ケアの必要な人々 に対して、施設の環境条件、ケア及びリハビリ 等の質を改善すること

• 脱施設化は②だけでなく①③でもあることに注意

障害を持つアメリカ人法(ADA)と   脱施設化の進展

• 1999年の、知的障害と精神障害を持つ原告の施設・精神病院入所(院)をめぐる

Olmstead裁判の連邦最高裁判決の一文「不必要な施設入所は、家族との関係、社会との関係、労働関係、さらなる教育、豊かな文化的楽しみといった日常生活の諸活動から、障害者を切り離してしまうがゆえに、それは障害者に対する差別と見なされる。」

 それは「もっとも統合された環境(the most integrated setting)において、本人が利用するサービスを提供しなければならない」としたADAの施行規則に基づく画期的な判決であった。

この判決が各州に求める「包括的で効果的な地域移行実行計画」によって、アメリカ各州の脱施設化は、さらに進展しそうな勢いである。

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我が国の、支援費に基づく入所施設の指定要件も、捨てたもんじゃないぞ

• 知的障害者入所更生施設の入退所の基準は、「指定施設は、心身の状況等に照らして、指定居宅支援等を利用することにより、居宅において日常生活を営むことができると認められる入所者に対し、その者の希望等を勘案し、その者の円滑な退所のために必要な援助を行わなければならない」。

• この表現は、入所施設からの地域移行において、地域でのサービスを使って地域自立生活することを当然とした、我が国では画期的な表現

• 問題は、誰が、どのようにして、本人の心身の状況と、本人の真の希望を受けとめうるかだ。

結局、地域自立生活支援の展開・充実がすべて

• 脱施設化・地域移行は、先進諸国の大きな流れとはいえ、地域自立生活支援の展望が不可欠

• 結局、地域生活支援がなければ、またぞろ家族への介護の押しつけと、究極の施設頼み

• 結局、自立生活支援がなければ、サービス提供者がコントロールするケアマネジメントや在宅介護やグループホームやデイサービスや訪問看護・リハや住宅改造やショートステイとなるのがおち

• 結局、地域(主体・共感・創造)支援がなければ、障害者を追いつめ、支援を拒む「まち」のまま

地域自立生活支援の展開の3つの段階

• 1,地域生活に必要な支援の類型と   ケアマネジメント

• 2,本人を中心とした地域自立生活    に必要な支援

• 3,本人を中心とした地域自立生活と    様々な関係性の改善・調整の必要性

1は、どうしてもサービス提供者中心のイメージ

2は、どうしても様々なサービスや支援をしてもらうだけのイメージになりがち。3は、様々な社会関係や人間関係の中で、してもらうだけでなく、働きかける主体的・能動的な市民のイメージが展開可能。

医療看護

介助

生活技術・智慧活用支援

権利擁護

PT・OTST等

ケアマネジメント

Sー1 地域生活に必要な支援の類型とケアマネジメント

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本人の自立と自己実現(本人中心ケアマネを含む)

医療 介助

生活技術・智慧活用支援

生活(就労を含む)技術等活用支援

日常生活支援

生命活動安定・保持  支援

Sー2 本人を中心とした地域自立生活に必要な支援

住まいの世界

遊びの世界

医療の世界

仕事の世界

当事者活動の世界

教育の世界

家族の世界

息子

住人

旅行者

患者

CILのピアカウンセラー

××グループのメンバー

〇〇大学の学生

様々な支援を活用しながら、様々な社会関係と人間関係の中で普通に生きる

自立生活者AさんSー3本人を中心とした地域自立生活と、様々な関係性の改善・調整の必要性

関係性の改善・調整の必要性

ではこの地域自立生活支援を、西宮市で展開すれば、どうなるのか

①障害者の自立生活主体の確立

③地域住民の共感力の確立

②一人ひとりの地域生活の確立

西宮市における地域自立生活の確立

①自立生活主体の確立とは

• 自立生活センター『メインストリーム協会』   「自立生活障害者がスタッフとなって、

 自立生活を求める障害者に対するピアサポートやピアアドボカシー(仲間権利擁護)や自立生活プログラムによる、本人主体の形成・確立支援」

• 社会福祉協議会が運営する最重度障害者活動拠点『青葉園』

 「支援者や家族が、徹底して障害者一人ひとりの主体的な生き方や、本人が主人公の人生ドラマを構築することを支援することによる、自立生活主体の確立支援」

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②一人ひとりの地域生活の確立• ①の活動をふまえて作られた、『本人中心の地域自立生活支援計画(PC-IPP)』に基づいて、一人ひとりにみあった地域で暮らす仕組み作りがなされる。

• そこでは、主にフォーマルなサービスを中心にコーディネイトされた支援プランと、主にインフォーマルなネットワークを中心とする『支援の輪(Circle of Support )』の統合された展開がなされる。

• 〔詳しくは、本人中心ケアマネを本気で!Part2を参照のこと〕

③地域住民の共感力の確立

• 「青葉園」の最重度障害者市民を、憐れみからではなく、同じ市民生活を生きる市民として受け入れようとすることは、地域住民の全体としてのセンシティビティと共感力を高める。

• 公民館の集いや地域の運動会や夏祭り等に「お客さん」としてではなく、仲間や住民として参加・参画するためには、地域住民の巻き込みと協働の力(エンパワーメント)なくしては成立しない。

• そしてそのことが、障害者のみならず、障害以外のことに困難をかかえるすべての市民や、これから困難をかかえるかもしれない市民にとって、しのぎやすい、生きやすい地域を紡ぎ出すはず

インクルージョン社会・西宮の実現

自立生活主体の確立

地域生活の確立地域住民の共感力の確立

本人中心の地域

自立支援計画

地域住民との協働と参画

CommunityInvolvement

一人ひとりが地域で

暮らせる仕組み作り

Person-CenteredCare Management

In-dependence

Inter-dependence

NormalizationInclusive Society

最重度障害者

活動拠点青葉園

(介助供給

システム・K)

自立生活センター

メインストリーム協会

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障害者自立支援法における、本人中心ケアマネジメントの役割とは

ーー ICFの考え方をふまえて ーー

東洋大学 ライフデザイン学部 

教授 北野誠一

ICF(国際生活機能分類)とは?

� ICF(International Classification ofFunctioning, Disability and Health)は、

� ある健康状態にある人に関連する、様々な生活機能(Functioning)の領域(Domains)を、系統的に分類すること。

� 様々な生活機能とは、心身機能・構造、活動、参加のすべてを含む。

� 同様に、障害(Disability)とは、機能障害、活動制限、参加制約のすべてを含む。

� それを図示すれば【図ー1】のようになる。

機能障害

変調・病気

促進因子vs阻害因子

活動制限 参加制約

①健康状態

②心身機能・身体構造 ③活動 ④参加

⑥環境因子

⑤個人因子

【図ー1】国際生活機能分類(ICF)の構成要素間の相互作用

領域(Domains)

評価点

実行状況

能力d1 学習と知識の応用(読む・書く・計算)

d2 一般的な課題と要求(ストレスの対処)

d3 コミュニケーション(理解・表現・技法)

d4 運動・移動(移乗・歩行・移動・運転)

d5 セルフケア(着替え・排泄・食事・洗面)

d6 家庭生活(掃除・調理・日用品の管理)

d7 対人関係(家族・友人関係・公的関係)

d8 主要な生活領域(教育・仕事・取引)

d9 コミュニティライフ・社会生活・市民生活(レジャー・宗教・人権・政治活動)[図表ー2]活動(Activities)領域と参加(Participation)領域の一括表

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ICFの問題点 その1

� ICFは、医療・リハ専門家の医療モデルと、障害当事者の社会モデルのある種の緊張関係の中で形成された妥協の産物であり、そのために、「活動」領域と「参加」領域の違いが、把握しにくい。[図表ー2参照]

� たとえば、オーストラリアICFチームは、

 「障害関係者は、多くの生活領域で、参加と言う概念に馴染んでいるので、参加という概念が限定されることに我慢ならないだろう。一方、高齢関係者は、活動支援に焦点をあてているので、活動の領域を狭められることを、望まないだろう。」と、両者の区別の困難性を指摘している。

ICFの問題点 その2

� 私見では、ICFの理解をつきつめれば、「活動(Activities)」とは、本人にとって、有意味な行為の集合であり、

「参加(Participation)」とは、その行為の集合の、人間関係・社会関係的側面の意味づけである。

� たとえば、「食べる」ということは、本人に取って有意味な行為の集合という「活動」の側面と、アパートでホカベンを一人で食べようと、家族や仲間と会食しようと、それぞれの場面場面で、それなりの人間関係・社会関係的意味合い(役割と参加)を帯びているのだ。

� 何を食べたかだけでなく、その役割と参加が、ほんとうに本人の望んでいるものかどうかが、エンパワーメントの支援では大切なのだ。

医療・リハモデルが使用するICFの問題点①

� ICFdraft2に追加された、「活動」における「実行状況(Performance)」と「能力?(Capacity)」の区別は、「している活動」と「できる(はずの)活動」の区別とされてしまい、医療・リハ関係者は、そこからリハ計画における目標としての「する活動」が形成されるという。

� 現在のつらい状況でもある、「している活動」と、専門家集団に「それ、ほんとはできるんでしょう」といわれる「できる活動」との間に、「する活動」が設定されるとすれば、 「する活動」が、いかに参加レベルの目標の具体像といわれても、それはもう、リハビリ訓練モデル以外あり得ないのだ。 [図ー3参照]

図 活動向上訓練思考過程の矢印は,まず活動レベルの目標として「する活動」を設定し,その実現に向けていかに「できる活動」と「している活動」とを向上させていくかを計画するという意味。実行過程の矢印は,この目標に向けて活動向上訓練を行なっていくという意味。

[図ー3]大川弥生週間医学界新聞2003年11月10日号より

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サービス利用者と提供者の対等の関係とは?

� 【図ー3】が問題なのは、それがサービス提供者とサービス利用者との二者関係ですらなく、専門家主導の「医療モデル」そのものだからである。

� 二者関係なら、専門家による、「している活動」「できる活動」「する活動」の評価・設定だけでなく、まず利用者の「ほんとは、したい、やりたい活動・役割・参加」が、最初に位置付けられていなければならないはず。

医療・リハモデルが使用するICFの問題②

� 障害者・高齢者の地域自立生活支援(モデル)は、そのような医療・リハモデルによる指導・訓練の押しつけではなく、本人の希望する、あたりまえの地域生活に必要な、各種の支援を提供・開発することを、その理念の中心とするものである。

� できなくとも、その部分は支援が補ってくれるからこそ、本人は何とか、自分の「ほんとうは、したい・やりたい活動・役割・参加」を表明できるのだ。

医療・リハモデルが使用するICFの問題③

� さらに言えば、本人の治療・訓練ではなく、本人の実行状況を制限する環境因子上の阻害要因を改善し、促進要因を創出するのが、ICFの正しい用い方のはず。

� WHOは「能力(できるはずの活動)と実行状況(している活動)の間のギャップは、現在の環境と標準的な環境の差を反映し、したがって、実行状況を改善するために個人の環境に対して何をなすべきかについての有用な手引きを提供する。」としている。

ICFの活動制限・参加制約について考える

� 結局、活動制限や参加制約は、本人の生活状況と、その社会で標準的な(普通の)市民の生活状況との解離を示す、比較概念でしかない。

� ということは、本人の現在の活動や参加の制限や制約状況を、普通の市民と同様の活動や参加にできる限り近づけるために、本人の環境に対して何をなすべきか(改造と支援)を示しているのが

 ICFの活動制限・参加制約と言えよう。

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医療・リハモデルが使用するICFの問題④

� 実際には、目標としての「する活動」の決定に際して、現状の「している活動」、専門家の言う「できる活動」、本人の望む「したい・やりたい活動・役割・参加」だけでなく、もうひとつの大きな誘導因子が働く。

� それが、家族等のまわりの希望・期待と言う名の「やってほしい活動」である。

� たとえば、本人が施設から家に早く帰りたいと望んでいたとしても、家族から「元通りになってきてね」と言われてしまえば、泣く泣く諦めるか、それとも死に物狂いのリハトレ励みの「する活動」になる可能性が高い。

三者(四者)関係論再考

� さらに、もうひとつの誘因が働くこともある。

� それは、サービス提供側の、経営・管理サイドの利害要因である。

� たとえば、終結すべきケースを、管理上必要以上に引き延ばしたり、その逆だったり

� あるいは、経営や利益のために、不必要なあるいは適切でないサービスを提供し続ける、と言ったことも起こりうる。【図ー4参照】

サービス利用者(したい・やりたい活動・役割・参加)

家族(やってほしい活動)

医療・リハスタッフ(本来できるはずの活動)

【図ー4】福祉サービスにおける三者(四者)関係図

サービス経営・管理者(施設でして欲しい活動・役割)

現状の

している

活動

自立生活で

の活動・

役割・参加

本人中心のケアマネジメント

リハ計画は、本人自立生活支援計画に基づくサービス計画の一つ

� 何度も言うように、ケアマネジャの命は、利用者本位である。

� ケアマネジャは、リハ計画を立てるのではなく、トータルな本人の自立生活支援計画を立てるのである。

� 家族等が、「これ以上手が掛からない用に、何とか本人をリハして欲しい」と望む部分の多くは、ホームヘルプ等の支援でも十分補うことが可能である。

� 本人の本当の思いを中心に据えて、何とか家族等の関係者の理解と協力を生み出し、そこにむけて可能な限りの社会資源を動員してゆくことこそが、ケアマネジャの本来業務である。

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ICFは使いよう!

� ここまで、ICFの問題点を強調しすぎたともいえる。

� 何度も言うように、ICFは医療モデルと社会モデルの妥協の産物なので、どのようにでも解釈できるし、応用できる。

� これまで、わが国では、医療・リハチームによる、医療モデルのICF解釈のみが、まかり通って来た。

� 今後は、「参加」と「環境因子」をうまく活用すれば、後の[図ー5]の図式のような、本人を中心とした地域自立生活支援の展開も拓きうる。

人間関係と社会関係への参加としてのICFと、本人中心ケアマネジメント

� 障害者や高齢者が、様々な支援を活用しながら、様々な社会関係と人間関係の中で、普通に生きることを支援すれば、

� それは、障害や病気ゆえのがまんや諦めの生活ではなく、

� まして、病気や障害の治療や訓練のためにいきているのでもなく、

� 障害や病気とうまく付き合いながら、本人らしいやり方とペースに基づく、社会関係と人間関係への「役割と参加」であり、してもらう(サービスの餌食になる)だけの人生ではない、創造的な人生だと言えよう。

病気のAさんや障害のBさんを支援するんじゃない!

� 私達の最大の過ちは、「OOの病気をもつAさん」や「XXの障害をもつBさん」の事例検討や支援計画を立てる所からうまれる。

� それでは、そもそも「医療リハモデル」の認識構造にどっぷりとはまり込んでいるのだ。

� そうではなく、本人のエンパワーメントの支援者は、「ほんとうは、OOの活動に参加したいAさん」や「やっぱり、XXの役割をやりたいBさん」の自立生活支援をするのだ。

やっぱり、病気のAさんや障害のBさんを支援するんじゃない!

�だから私達は、「OOの活動に参加したいAさん」「XXの役割をやりたいBさん」を支援するがゆえに、まず本人の希望に基づく自立生活支援計画を立て、Aさん・Bさんの障害や、病気が、Aさん・Bさんの希望を裏切らないように、医療・リハ計画等にも必要な敬意と努力を払うわけである。

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ケアマネジャーの本来業務とは?

� 「本人の望む、本人らしい生活の各場面での役割や参加の仕方の支援」であり

� それが、「本人のエンパワーメント支援」

� つまり、「親(子)として、夫(妻)として、父(母)として、友(仲間)として、近隣(自治会)として、市民(選挙民)として、サークル(趣味)のメンバーとして、学生(教習生)として、労働者(消費者)等々として、これら尊厳ある人間としての様々な役割や参加が可能となるように、トータルに支援する」のが、【図ー5】に見るように、ケアマネジャーの本来業務 

住まいの世界

遊びの世界

医療の世界

仕事の世界

当事者活動の世界

教育の世界

家族の世界

息子

住人

旅行者

患者

CILのピアカウンセラー

××グループのメンバー

〇〇大学の学生

様々な支援を活用しながら、様々な社会関係と人間関係の中で普通に生きる

自立生活者Aさん

関係性の改善・調整の必要性

【図ー5】本人の地域生活におけ様々な参加や役割関係上の問題の改善・調整

SW的ケアマネの必要性

では、障害者ケアマネジメントをどうする

� 本人や家族のことをよく分かって、本人の立場に立って必要なサービスのコーディネーションを支援する機能(業務)を必要とする人には、それが必要不可欠

� しかし、現状の介護保険のような、サービス提供機関と家族中心のケアマネではないことを明確にするために

� それを、本人中心ケアマネジメントと呼ぶ。

� 一方、基本的に本人が必要なサービスを自分でマネジメントする場合を、セルフ(ケア)マネジメントと呼ぶ。

� エンパワーメント支援としての本人中心ケアマネジメントは、セルフマネジメントをめざす支援であることに注意!!

介護保険のケアマネジャーは、現在の制度をどう思っているのか?

� 全国介護支援専門員連絡協議会の調査で、� 給付管理等の業務に忙殺されて、利用者宅への訪問等の利用者中心の支援や、サービス担当者会議の重要性は分かっているが、実行できていないことが、明らかとなっている。

� 同じ調査で、中立・公正に仕事がしたいから、現在の事業所から独立した方がよいと思う人が、半数いる。

� さらに、独立しなくてもよいと考える人の多くは、現在の報酬単価のゆえであり、今のセールスマン(ウーマン)化が、利用者支援という本来業務と矛盾していることに、苦しんでいる。

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施設・病院移行支援では、なぜケース(ケア)マネジメントが必要なのか

� 例えば、自分の日常生活の諸活動を自分で組み立てる「時間管理」や、そのために必要な費用を、月々の生活費との関係で調整する「金銭管理」や、「服薬管理」(not投薬管理)などが、身につかないどころか阻害されている。

� それゆえに、そのことを支援する自立生活プログラムと、ケース(ケア)マネジメントが必要となるが、施設・病院内でそれをすることは、ほぼ不可能。

� 同じ職員や、同じ管理システムや、同じ環境・雰囲気の中で、ある部分だけ本人の自己管理を徹底することなど、絵に描いた餅でしかない。

本人中心ケアマネジメントの定義

� 「本人の年齢や障害の種別や程度にかかわらず、本人の希望(への支援)やニーズに基づいて、できる限り地域での自立生活(役割と参加)が可能となるように、必要なサービス(支援)を本人が組み合わせること(エンパワーメント)を支援すると共に、

 不足するサービス等については、創出(開発)及び権利擁護(アドボカシー)を行う、

 一定の権限と方法と手続きに基づく活動の総体」

支援の目標としてのエンパワーメント(自己・権利実現)を定義しておこう

� 「①本人(家族・支援者)が、どうせ私(達)は障害者(年寄り・子ども・女・その家族・その支援者)だからと、諦め(がまん)させられている希望・社会参加・市民的役割・選択(肢)・人権(地域で普通に暮らす権利)・自分らしさ・可能性・愛し愛されること・仲間で助け合う力・成熟する力・自然治癒力等を自覚し、明確にすると共に

� ②その心理的・組織的・社会的・経済的・法的・政治的阻害要因(ICFの阻害的環境要因)と対決して、問題を解決する力を高め、

� ③必要な支援(ICFの促進的環境要因)を活用する力を高めること」

つまり、『自分らしく・人間らしく生きる力を高めること』

ICFの機能障害と社会参加をふまえて、K・J・Mさんの介助問題を考えると

� Kさんは、会社勤めで、早朝から、洗面、整髪、着替え、容姿チェック等の介助が大変

� Jさんは、作業所で、朝は10時からなので、ゆっくリで、それなりのファッションでOK

� Mさんは、日中自宅なので、一応洗面はするが、外行きのファッションもチェックも不要

� この3人が同じ程度の機能障害だったとすれば、障害程度区分は同じでも、介助の時間も中身もずいぶん違ったものになる

� もちろん、この3人は障害程度が同じなので、JさんもMさんも、Kさんのように働けるはずだから、職業訓練を課すべきという、実行状況と能力論が登場する可能性もある

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結局、本人中心ケアマネジメントの中心となる介助(介護+自己決定・理解支援)は、

� ①本人のライフスタイル(役割と参加) X 

 ②環境因子 X③固定的・継続的機能障害 X ④変動的健康(精神・身体)状態            

   の4要因に主に規定されることになる。

� 介護保険の要介護認定は、①ライフスタイルの自由の許されない、②同一環境因子の特養や老健の1分間タイムスタディに基づく。

� 一方、自立支援法においては、勘案すべき①②④等の事項は、障害程度区分においてではなく、サービス利用計画(簡素なケアプラン)に基づく「サービス支給決定」に反映されることになる。

ここで、もう一度、自立支援法におけるサービス利用手続きを、確認しておこうⅠ

� 【図ー6・7】を見れば分るように、介護保険の場合と違って、障害程度区分決定とサービス支給決定の間に、サービス利用意向聴取と簡素なケアプラン(?)の策定というプロセスがある。

� そこでは、本人のライフスタイルや環境要因をふまえて、介護給付のみならず、地域生活支援事業や訓練等給付を含めたトータルな支給決定が、それぞれの市町村ごとの「支給決定基準」に基づいて、決定されことになる。

� その際、厚労省が障害程度区分と介護給付額を、あまりリジットに関係付けると、市町村ごとの「支給決定基準」という裁量は、名目倒れになる。

【図ー6】社会保障審議会障害者部会2004-12-27資料

ニーズの把握)

障害程度区分の認定

障害程度区分に係る認定調査

サービス利用意向の聴取

簡素なケアプランの作成

支給決定

サービス利用計画の作成

サービス利用(の調整)

モニタリング

(サービス利用計画作成費)※相談支援事業に委託できる部分

委託相談支援事業の関与

法定サービスに結びつける支援

法定サービスだけでなく、幅広く自立を支援

ケアマネジメントの質の向上(地域自立支援協議会の機能)

ニーズを充足する方法の検討・社会資源の検討

指定相談支援事業の関与

委託相談支援事業の業務

指定相談支援事業の業務

特に計画的な自立支援

を必要とする者

【図7】障害者自立支援法でのケアマネジメント制度化と相談支援事業

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ここで、もう一度、自立支援法におけるサービス利用手続きを、確認しておこうⅡ

� 障害程度区分と介護給付額がリジッドに設計されるとなれば、

� 市町村は、障害程度区分に、可能な限り③の固定的・継続的な機能障害以外の①②④を組み込もうとせざるを得ない。

� 逆に、厚労省は、モデル事業のように、市町村で、ばらつかれては困るので、

� 介護保険の79項目以外の新27項目をも1次判定ソフトに、暫定的に組み込み、

� 市町村審査会のマニュアル化(形骸化)をはかるものと思われる。

市町村審査会の役割と問題点Ⅰ

� 市町村審査会による障害程度区分の2次判定が、③固定的な機能障害を超えた①②④等をも考慮することではないとすれば、

� 審査員は、106のアセスメント項目と、訪問調査員の特記事項と医師の意見書を見て、その障害者の一般的なイメージが思い浮かぶ位の、地域での障害者支援の経験を十分有する人が、その必要条件

� むしろ、重要なのは、訪問調査員の障害者理解と、訪問調査に対する障害者の側への支援の仕組みである。

市町村審査会の役割と問題点Ⅱ

� 障害程度区分に、サービス利用意向に基づく①②④等の勘案事項を加味して、本人と相談支援事業者との「簡素なケアプラン」が立てられ、それに基づいて市町村ワーカーによって、サービス支給決定がなされる。

� その際、市町村の定めた「支給決定基準」を超える非定型的な案に対する、審査会の意見聴取は、本人の生活実態と支援実態を抜きには判断不可能だと考えられる。

� それは、障害程度区分の2次判定用の審査会の機能や能力を超えており、むしろ本人等が同席の基で行なう「サービス調整会議」のような、生活実態や支援実態の理解に長けたチームが行なうべきであろう。

では、障害程度区分をどうすればいいのか?

� 望ましいのは、障害程度区分に基づく介護給付が、障害者個々人に必要なサービス量を満たすことだが、

� 私たちは、障害程度区分における介護給付の3つの問題を、峻別する必要がある。

Ⅰ 個々人に必要なサービス量としての、①②

  ③④をどう把握するのか?

Ⅱ 知的障害者等の「自己決定・理解支援」を、どのように、アセスメントと障害程度区分に反映させるのか?

Ⅲ 障害程度区分と介護給付との関係づけの問題

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障害程度区分問題Ⅰ

� 基本的には、簡便なアセスメントに基づく障害程度区分の決定と、本人の意向やニーズ調査に基づく「本人中心ケアマネジメント」によるサービス支給決定は、自立支援法のごとくに、異なるプロセスが望ましい。

� しかし、障害程度区分と介護給付額がリジッドの設計されたが故に市町村が、障害程度区分に、可能な限り③の固定的・継続的な機能障害以外の①②④を組み込まざるを得ないのは、現場を混乱させる?

� 障害程度区分を超えた、一定の①②④等の勘案事項に基づく市町村決定に、予算を担保する戦略とは?

障害程度区分問題Ⅱ-1

� 例えばGH等の地域で生活をする知的障害者の生活実態を整理すれば、【図ー8】のようになる。

� 【図ー8】の生活場面に対応する支援を考えれば、【図ー9】のようになる。

� さらに、地域生活上の支援を類型化すれば、【図ー10】のようになる。

� つまりは、介護保険の主に身体機能に対する直接的支援を意味する「介護」を中心とするアセスメントに基づく障害程度区分は、知的や精神障害者が必要とする、精神機能に対する直接的支援を意味する「自己決定・理解支援」をほとんど反映しないものとなる。

障害程度区分問題Ⅱ-2

� それは、新27項目といった付け足しでは、真の支援の必要度測定とはならない。

� そこで、厚労省は2009年に向けて、介護保険の1分間タイムスタディを、障害者にも行なうことを、検討中。

� 介護保険と同様に、劣悪な日本の施設の職員配置の基で、1分間タイムスタディを行なえば、知的や精神障害者が必要とする、見守り・傾聴・促し・励まし等の「自己決定・理解支援」は、ほとんど浮かび上がってこない。

� せめて、各種の支援を使いながら、地域で生活する知的障害者等に対して、「自己決定・理解支援」の何たるかを知るスタッフによる調査が望まれる。

居住関連費用(家賃・インテリア・清掃・光熱費等) 情

報・余暇関連費用(外出・旅行・

観戦・ペット・付き合い・サークル・

携帯電話・インターネット・新聞・

雑誌・TV・CD・バイク・車等)

食事関連費用

(材料費・手間ひ

ま・外食等)

個々人の日常生活の実態

他各種生活費用(衣服費・医療費・理容整髪費・仕事関連費用・教育関連費・冠婚葬祭費・貯金等)

地域自立生活とその費用の構成

【図ー8】

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入居・転居支援、家賃準備・支払い支援、清掃・整頓支援、備品管理支援、近隣関係支援

外出・

旅行等計画・

手配支

援、サークル・本人活動支

援、友人・

異性関係支援、

各種買い物支援・

同伴、ガ

イヘル等の調整支援、

栄養・メニュー・

衛生支援、外

食同伴、買い物同伴、調理支

援、HHの調整支援、経費支

払い・

管理支援、

個々人の支援の実態

知的障害者地域支援の構成

【図ー9】

服選び支援、身だしなみ・整容支援健康保持支援、通院同伴、習い事支援、資格取得支援、職場開拓・斡旋、職場内トラブル対応支援、訪問販売対応支援、年金等金銭管理・貯金支援

支援・教育テクノロジー(主に智慧や技術を媒介にした間接的支援

自己決定・理解支援

(主に精神機能に対する

直接的【face to face

】支援)

介護(主に身体機能に対する直接的支援)

医療(主に生命活動の

安定・保持に対する支援)

個々人の支援の実態

地域自立生活支援の構成

【図ー10】

介護保険の要介護区分と介護給付額の算定方式は?

� 在宅サービスの介護給付額の算定方式は

 ①要介護度に基づく区分 × ②要介護度ごとに設定されたモデル事例 × ③モデル事例にそったサービスの種類と回数× ④それぞれのサービスごとに設定された単価

� ②のモデル事例の一番介護度の高い事例に、重度の一人暮らしの事例が適用されなかったために、③④を少々変えても、重度の一人暮らし(女性が多数)の多くは、施設(病院)以外に選択肢なし

障害程度区分問題Ⅲ

� つまり、障害程度区分と介護給付との関係は、� それぞれの障害程度区分に、障害者のモデル事例をあてはめて、

� そのモデル事例にそったサービスの種類や回数とその単価が、想定されることになる。

� 自立支援法は、介護保険のような総体的給付決定ではなく、個別サービスごとの給付決定だが、

� 自立支援法の介護給付が、介護保険の要介護度区分の給付と無関係に想定されることは考えにくい。

� それでも、市町村が「支給決定基準」として、重度の障害程度区分のモデル事例に、1人暮らしの重度障害者を採用できるレベルの介護給付額が、切に望まれる。

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自立支援法と介護保険法のケアマネ問題

� 自立支援法の参議院付帯決議22の「市町村の相談支援事業が適切に実施されるようにするため、在宅介護支援センターなど、高齢者に係る相談支援を行う事業者を含め、専門性と中立・公平性が確保されている相談支援事業者に対し、委託が可能であることを市町村に周知すること 」は【図ー11・12】の相似性からもみえみえだが、それゆえに、致命的な問題。

【図ー11】主管課長会議2005-10-6資料

【図ー12】介護保険の地域包括支援センター(地域包括ケアシステム)のイメージ

「障害者自立支援法」をどう読むのか              まとめその1 

� 「障害者自立支援法」は、介護保険制度と支援費制度の過渡的混合態(アマルガム)

� 現状の介護保険の問題のひとつである、介護支援(ケアマネ)事業が、障害者中心ケアマネにすり替わるのは、国家100年の愚策!!

� ここは、介護保険の地域包括支援センターの将来的展望のためにも、市町村から委託された相談支援事業者が、本人中心ケアマネとして、地域自立支援協議会を活かして全ケアマネをリードし、席巻できる力量と気概を持つべし!!

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「障害者自立支援法」をどう読むのか             まとめその2

� 「自立支援法」では、障害程度区分が、サービス利用の上限を決定するのではなく、個々の障害者のサービス量を決めるのは、それぞれの市町村の支給決定基準であることに注意

� この仕組みは、介護保険のように、上乗せ、横だしは、第1号保険者である高齢者の保険料負担となる仕組みより、分権的相互支援としては、望ましいのではないか?

� 将来の保険制度と税負担制度の組み合わせに当っては、保険制度を中心とするナショナル・ミニマムの中身の議論と、ローカル・オプティマムのために、地方自治体に真に税源を移譲する方法、たとえば、消費税の地方税制化等が、議論されるべき。

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「ポスト障害者自立支援法」と地域自立生活支援の展望

東洋大学ライフデザイン学部

生活支援学科教授 北野誠一

八方塞りの「自立支援法」

• 利害関係者(Stakeholder)総体を覆う不全感1.障害当事者

2.その家族

3.居宅サービス提供者

4.施設サービス提供者

5.(精神)医療関係者

6.自治体行政関係者

7.政界関係者

1.障害当事者の場合

①支援費と比べたときの使いでの悪さ

②所得保障なき定率負担は、一定の緩和措置があるとはいえ、重度障害者には負担感大

③仕組み全体の分りにくさと、自分がその仕組みのどこに位置し、何を使えるのかの分りにくさ

④障害程度区分が自分のサービスにとってもつ意味の分りにくさと、調査項目の不適切感

⑤2009年や2012年の大きな仕組みの変更の予感と、現状の居心地の悪さ

2.その家族の場合

①またぞろ家族の負担が登場した違和感

②支援費と比べたときの使いにくさ

③本人利害と家族利害の亀裂と軋轢

④医療費・介護給付・補そう具費用・地域生活支援事業費それぞれの積み重ねの利用者負担ゆえのサービス取捨選択の不満

⑤仕組みの分りにくさと、置いてきぼり感

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2

3.居宅サービス提供者の場合

①10月までの待ったなしの転換の無方向感

②サービス提供者性善説から性悪説への180度転換の無謀さ

③障害程度区分と居宅サービス量や地域自立生活に必要な量との関係の分りにくさ

④結局、障害程度区分とリンクする介護給付の国庫負担基準の限定は、市町村の支給決定基準を規定するだけでなく、個別給付なき地域生活支援事業の展望を奪いかねない

4.施設サービス提供者の場合①5年間の執行猶予期間?と、2009年や2012年の構造改革の関係の見えにくさ

②旧体系の今後の単価動向と、新体系への移行土産を天秤にかけざるを得ないやりきれなさ?

③利用者負担や日割り等の経営圧迫

④結局、利用者の個別支援上ではなく、経営上の都合で組み合わされた支援を強いられる悲しいイメージ

⑤サービス提供者性善説から性悪説への180度転換は、結局質の悪い経営者を利することにしかならない

5.(精神)医療関係者の場合①自立支援医療と言う名の、障害者特例の廃止

②医療費負担と介護給付負担の相互抑制作用

③自立支援医療が地域(在宅)医療とリンクしていない、わが国医療実態の悲しさ

④精神病院の転用による「退院支援施設」という、名ばかりの地域移行という悪乗り

⑤治療によって患者を病院から地域に帰すことを仕事にする筈の病院内に「退院支援施設」ができるという、精神病院とは名ばかりの収容施設という実態の露呈

6.自治体行政関係者の場合

①何より、施行スケジュールのずれ込みによる業務の混乱と停滞

②サービス利用者とサービス提供者との板ばさみ

③財政根拠の脆弱な中での、サービス利用者のニーズ把握の困難性

④サ-ビス提供者の転換方向も状況もまったく読めない中での、障害者福祉計画作成の無根拠性

⑤それでも、利用負担や障害程度区分の認定調査や審査会を立ち上げ、実施しなければならない苦しさ

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7.政界関係者の場合①今何が起こっているのかの把握の困難性

②障害当事者団体の、この法律に対する反応の複雑さ(利害や政策の不一致)へのとまどい③=障害者問題に手を出すと火傷をする危険性

④=火傷をしてまで手を出すほどの集票力の不在

⑤さらに、障害当事者団体とサービス提供団体との利害や政策の一致と不一致の問題

⑥サービス提供団体の集金力の脆弱さ

⑦(精神)医療団体の集金力との一定のバランス⑧最後に、わが国の向う方向の読みとのバランス

七夕なんぞに出会いたくはなかった「骨太の方針2006」の評価

• そのメインスローガンである「新たな挑戦の10年:筋肉質の経済構造に変貌した日本経済が立ち向かう3つの挑戦」のセンスの無さ

• これは、わが国の「男女共同参画社会」のめざす「筋肉少女」のブラックジョークなのか?

• さらに、TVや新聞等で今国民の関心を引いている、わが国の「格差社会(化)」一切ふれていないのは、見解の相違では済まされない、国民との意識・感覚のズレ・鈍さの表れ?

3つの課題の相互関係の無関係?• 3つの優先課題(挑戦)とは①成長力・競争力強化

②財政健全化

③安全・安心で柔軟かつ多様な社会の実現

• では、その相互関係とは?「‥‥相互関係を念頭に置き、中長期的に成長力・競争力を極大化するために最大の努力を払いつつ‥‥経済と財政を一体的に捉えて改革を進め『成長力強化と財政健全化が相互に響きあい、強めあう好循環』を実現していくことが必要」なのだそうである。

• オイオイ、いったいこの文書のどこが3つの優先課題の相互関係なのか?

この国の政府は、軍国戦士・企業戦士以外の価値・目標を持てないのか?

• 結局、御用経済学者の経済用語一辺倒による経済至上主義のための「骨太の方針2006」のいう

• 「国の成長力・競争力の極大化が、その政治や政策の目標」というのでは、この国は永遠に「骨太で筋肉質の壮年男子?」が、がむしゃらに国家の競争力強化のために生きるしかないではないか?

• 経済や財政の大切さは誰も否定しない。しかしその大切さは、何のためなのか?

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安全・安心感のある「社会保障・社会福祉システムの構築」に向けて

• 経済や財政の大切さは誰も否定しない。しかしその大切さは、

• 「すべての国民の多様な在り様と可能性を活性化し、すべての国民が安全で安心して働き・学び・遊ぶことの出来る社会」を形成するためにこそ必要なのではないのか?

• そのためにも、「安全・安心感のある社会保障・社会福祉システムの構築」をこそ明確にすべきではないのか?