児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University...

69
Instructions for use Title 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究 Author(s) 井上, 貴雄 Citation 北海道大学. 博士(保健科学) 甲第11429号 Issue Date 2014-03-25 DOI 10.14943/doctoral.k11429 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/55315 Type theses (doctoral) File Information Takao_Inoue.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

Transcript of 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University...

Page 1: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

Instructions for use

Title 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

Author(s) 井上, 貴雄

Citation 北海道大学. 博士(保健科学) 甲第11429号

Issue Date 2014-03-25

DOI 10.14943/doctoral.k11429

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/55315

Type theses (doctoral)

File Information Takao_Inoue.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

Page 2: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

学位論文

児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

井上貴雄

北海道大学大学院保健科学院

保健科学専攻保健科学コース

2013 年度

Page 3: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

目次

要約

第 1 章 緒言

1.1 児童・青年期の気分障害と広汎性発達障害について・・・・・・・・・・・・・・・1

1.1.1 児童・青年期のうつ病性障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1.1.2 児童・青年期の双極性障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

1.1.3 児童・青年期の広汎性発達障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

1.1.4 気分障害と広汎性発達障害と生物学的関連性・・・・・・・・・・・・・・・4

1.1.5 児童・青年期の気分障害と広汎性発達障害・・・・・・・・・・・・・・・・4

1.2 本研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

1.3児童期と青年期について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

第 2章 対象と方法

2.1.1対象(児童・青年に対する調査研究) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

2.1.2対象(一般市民に対する調査研究) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

2.2.1 自己記入式評価尺度(児童・青年に対する調査研究)・・・・・・・・・・・・6

2.2.2 自己記入式評価尺度(一般市民に対する調査研究)・・・・・・・・・・・・・7

2.3.1 方法(児童・青年に対する調査研究)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

2.3.2 方法(一般市民に対する調査研究)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

2.4 解析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

第 3章 結果

3.1.1 QIDS-J(抑うつ症状)の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

3.1.2 QIDS-Jの結果(児童・青年期と一般市民の比較) ・・・・・・・・・・・・・9

3.2 MEDSCI(躁症状)の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

3.3 AQ-J(自閉傾向)の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

3.4 ライフスタイルに関するアンケートの結果 ・・・・・・・・・・・・・・・11

3.5 QIDS-J,MEDSCI,AQ-Jの相関関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

3.6 各スコアとライフスタイルの関連 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

第 4章 考察

4.1 抑うつ症状について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

4.2 躁症状について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

4.3 自閉傾向について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

Page 4: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

4.4 各スコアの相関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

4.5 各スコアとライフスタイルの関連・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

4.6 研究の限界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

第 5 章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

図表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53

業績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61

Page 5: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

要約

【緒言】

近年,児童・青年期の精神科臨床ではうつ病性障害や双極性障害などの気分障害に加え,

広汎性発達障害に対する関心が高まっている.精神疾患の国際的な診断基準である DSM-Ⅲ

に代表される操作的診断により,子どもの気分障害が従来考えられていたよりも多く存在

することが明らかになってきた.一方,広汎性発達障害においても以前より高い有病率が

報告されるようになった.児童・青年期の気分障害と広汎性発達障害はともに近年になっ

てから注目を集めるようになった障害であり,その実態や関連性については未だ不明な点

が少なくない.そこで本研究では,一般の児童・青年における抑うつ症状,躁症状,およ

び自閉傾向の実態を明らかにし,それらの症状の関連性について検討することを目的とし

た.

【対象】

本研究では北海道教育委員会の協力を得て北海道全域の小学校 24 校,中学校 28 校,高

等学校 28校を抽出し,小学 3 年生 650人,小学 5 年生 711人,中学 2 年生 847 人,高校 2

年生 1,527人の計 3,735人を対象とした.また抑うつ症状については千歳市民 4,258人(平

均年齢 60.5±13.4)の結果と比較し,児童・青年期の抑うつ症状について検討を行った.

【方法】

児童・青年の調査では協力を得られた学校に調査票と説明文書を送付し,生徒および保

護者に対して,①プライバシーの厳守,②自由意思による参加の決定,③不参加でも不利

益が生じないこと,④研究成果の発表の 4 点について説明し,同意を得られた者から調査

票の回収を行った.調査票には,簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J),躁病エピソード診断スク

リーニング質問表(MEDSCI),自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)を用いた.

千歳市民の調査では健康診断受診者に QIDS-Jの質問紙を送付し,調査への協力が得られた

受診者には記載後,健診当日に提出を求めた.

解析には SPSS20.0Jを用い,学年ごとの平均値の比較を行うために Games-Howell 法にて

多重比較を行った.抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向の関連を調べるためにピアソン

の積率相関係数を求めた.

【結果】

QIDS-J の平均スコアは小学 3 年生で 3.1±3.2,小学 5 年生で 3.6±3.2,中学 2 年生で

5.5±4.3,高校 2年生で 6.8±4.4点であった.多重比較より小<中<高校生と平均スコア

が有意に高いことが確認された(p<0.01).また,各学年で約 3.7~19.4%の生徒が抑うつ群

であり,約 2.8~11.1%に自殺念慮が疑われた.同時期に行った一般市民における調査結果

では平均スコアは 3.5±3.4であり,抑うつ群の割合は約 4.6%であり,約 2.4%に自殺念慮

が疑われた.各世代の一般市民と比較して中・高校生の平均スコアが高く,抑うつ症状や

自殺念慮が疑われる者の割合が高いことが確認された.項目別の平均スコアでは自己評価

Page 6: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

に関する「自分についての見方」の項目でスコアが高かった.MEDSCIの結果から,小・中・

高校生では全体の平均スコアは 4.3±4.1 であり,各学年で約 2.6~13.2%の生徒に躁症状

が疑われた.AQ-J では全体の平均スコアは 20.4±6.1 であり,小<中<高校生とスコアが

有意に高いことが確認された(p<0.01).また各学年で約 3.0~7.8%の生徒に自閉傾向が疑

われ,中・高校生で割合が高かった.AQ-J の平均スコアと同様に下位尺度のコミュニケー

ションで小<中<高校生と平均スコアが高いことが確認された(p<0.05).次に,各症状の関

連を調べるために QIDS-J と MEDSCI,および AQ-J の各スコア間でピアソンの積率相関係数

を求めた.その結果,QIDS-Jと MEDSCIにおいて正の相関関係が確認され,児童・青年期で

は抑うつ傾向のスコアが高ければ躁傾向のスコアも高くなることが確認された(相関係数

0.40,p<0.01).また,QIDS-Jと AQ-Jの正の相関関係が確認され,児童・青年期では抑う

つ傾向のスコアが高ければ自閉傾向のスコアも高くなることが確認された(相関係数 0.36,

p<0.01). しかし,MEDSCI-AQ-J では意味のある相関関係は認められなかった(相関係数

0.13,p<0.01).

【考察】

抑うつ症状について,中・高校生では他の年代と比較して抑うつ症状のスコアが高くな

り,抑うつ群の割合が増え,自殺念慮が疑われる者の割合も高いことが確認された.この

理由として,中・高校生は抑うつや死についての関心が高まる時期であること,自己評価が

低く将来や対人関係で不安や悩みが生じやすくなっていることなどが考えられた.また,

児童・青年のうつ病性障害が見逃されている可能性が高いのでないかと考えられた.年代

別の死因で 10 歳~14 歳では 3 位(11.3%)が,15 歳~19 歳では 1 位(31.2%)が自殺となっ

ているとの報告がある.以上より一般の中・高校生では自殺念慮を有する者が一定数存在

し,死因として自殺が多いことから,学校や家庭において上記のような認識を持ちながら

対応する必要があると考えられる.

自閉傾向について,広汎性発達障害の有病率は約 1%とされているが今回の AQ-J の結果

では各学年で約 3.0~7.8%と高い割合で自閉傾向が疑われ,小<中<高校生とスコアが高

いことが明らかになった.臨床的には年齢が上がるにつれて自閉傾向は減少するが,自己

記入式の評価尺度では自閉傾向的要素に関する自己意識を問うことになり,小学生に比べ

て中・高校生の方が自身の自閉傾向的要素を認識しやすくなっているのではないかと考え

られる.また,普通学級において知的発達に遅れはないものの,学習面や行動面で著しい

困難を示す児童・生徒の割合は 6.3%であったという報告もあり,今回の調査で自閉傾向が

疑われた者と重なる者も含まれるのではないかと考えられた.

各症状の関連について,QIDS-J と MEDSCI および QIDS-J と AQ-J のスコアで正の相関関係

が確認された.児童・青年期の気分障害では約 20%~30%の確率でうつ病性障害から双極

性障害に発展する,という報告があり,成人と比べてその可能性が高いと考えられる.

QIDS-J と MEDSCIの正の相関関係は,児童・青年期のうつ病性障害と双極性障害との関連を

示唆するものであると考えられる.また,児童・青年期の広汎性発達障害の comorbidity

Page 7: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

の研究ではうつ病性障害を 6.0~22.9%の割合で併存することが報告されており,児童・青

年期のうつ病性障害の comorbidity の研究では広汎性発達障害を 36.2%の割合で併存して

いたことが報告されている.今回 QIDS-J と AQ-J で正の相関関係が確認されたことは,児

童・青年期ではうつ病性障害と広汎性発達障害が併存しやすいことに対する裏付けになっ

たと考えられる.

【結論】

本研究によって中・高校生で抑うつ傾向が高まり,自殺念慮が疑われる者の割合が高い

こと,自閉傾向を認識する者が多いことが確認された.また児童・青年期における抑うつ

症状と躁症状,および抑うつ症状と自閉傾向との関連が示唆された.

Page 8: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

1

第 1 章 緒言

1.1 児童・青年期の気分障害と広汎性発達障害について

1.1.1 児童・青年期のうつ病性障害

うつ病性障害,とりわけ大うつ病性障害は 2 週間以上継続する「抑うつ気分」と「興味

や喜びの喪失」のいずれかの症状を一つ以上含み,その他の「不眠あるいは睡眠過多」や

「精神運動性性の焦燥あるいは制止」などの 7 項目から計 5 項目以上の症状を満たすこと

が診断基準となっている(American Psychiatric Association,2000).子どものうつ病性

障害の診断基準は成人と同一の基準が用いられるが,1)「抑うつ気分」の代わりに子ども

では「いらいら気分」を診断基準に含めていること,2)体重の減少の代わりに期待される

体重増加が見られないことでも子どもの場合体重の障害とみなされる (American

Psychiatric Association,2000).

1980 年以前,児童・青年期のうつ病はほとんど脚光を浴びることなく,きわめて稀な疾

患であると考えられてきた.DSM-Ⅲ(American Psychiatric Association,1980)に代表

される操作的基準が用いられるようになると,成人と同じ抑うつ症状をもつ子どもの存在

が注目されるようになり,児童・青年期のうつ病がこれまで認識されているよりもはるか

に多く存在することが明らかになってきた(傳田,2008).児童・青年期のうつ病性障害の

有病率について,Harrington(1994)は気分障害の総説において,欧米でのこれまでの疫

学研究をまとめると,うつ病性障害の一般人口における有病率は,児童期では 0.5~2.5%,

青年期では 2.0~8.0%の範囲にあると述べている.Costello ら(2006)は構造化面接を用

いた研究のメタ解析を行い,その有病率は児童期では 2.8%,青年期では 5.6%と報告してい

る.Hasin ら(2005)の疫学調査では,15 歳における有病率は成人とほぼ同じという結果

となっている.DSM-IV-TR (American Psychiatric Association, 2000)によると,成人に

おける時点有病率は大うつ病性障害では女性で 5~9%,男性で 2~3%とされ,気分変調性障

害では約 3%とされる.性差は,児童期では男性優位という報告がみられ,青年期までには

成人と同じような女性に多い現象がみられるようになるという(傳田,2008).

このように,児童・青年期のうつ病の有病率は,児童期は少ないが,12 歳頃から急激に

増加して,15~16 歳では成人並みの割合になると指摘されている(Hasin ら, 2005; 傳田

ら, 2012).しかし,傳田(2002; 2008)によると,わが国においては,精神科医の間でさ

え,児童・青年期のうつ病に対する認識は依然乏しく,現在においても児童・青年期のう

つ病という現象は見逃されていると言わざるを得ない状況にあるという.

近年,うつ病の状態像の多様性が指摘され,非定型的な病態やサブクリニカルな状態に

対する議論が起こっており,診断の重要性が改めて問題になっている(傳田,2008; 傳田

ら,2011; 樽味,2005).児童・青年期のうつ病は適切な治療が行われなければ,成人にな

って再発したり,対人関係や社会生活における障害が持ち越されてしまう場合もあるため,

きちんと診断し,適切な治療と予防を行うことが急務とされている.

Page 9: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

2

1.1.2 児童・青年期の双極性障害

双極性障害における躁病エピソードは「自尊心の誇大」,「睡眠欲求の減少」,「多弁」,

「観念奔逸」,「注意散漫」,「活動の増加」,「快楽的活動に熱中」の 7 つの症状のうち 4

つ以上の症状が 1 週間以上持続する場合に診断基準を満たす(American Psychiatric

Association, 2000).

双極性障害についても,これまで欧米においては,きわめて稀な疾患と考えられてきた.

DSM-IV-TR では大うつ病性障害の診断基準に児童・青年特有の症状項目が設けられ,テキ

ストにも子どものうつ病性障害の臨床的特徴が詳しく記載されるようになった.一方,双

極性障害においては,DSM-IV-TR では,平均発症年齢が 20 歳と記載されているにもかかわ

らず,児童・青年特有の臨床像の記載はなく,成人の診断基準をそのまま使用することに

なっている(傳田,2011a).

児童・青年期の双極性障害の有病率について,Lewinsohn ら(1995)は,一般人口の 14歳

から 18 歳の青年 1,709 人を対象として調査した結果,双極性障害の生涯有病率は 0.94%,

時点有病率は 0.64%であった.これは成人における有病率とほぼ同じである.また,

Lewinsohn ら(1995)はエピソード的な高揚気分または易刺激性をともなうが,双極性障

害の診断基準を満たさないものを閾値下双極性障害(subsyndromal bipolar disorder)と

して定義しており,5.7%に認められたという.Costello ら(1996)による,9 歳から 13 歳

までの児童 4,500 人を対象とした有病率の調査では,双極 I 型障害の児童は 0.0%であり,

双極 II 型障害の児童は 0.1%であった.Kessler ら(1998)の調査では,15 歳から 24 歳ま

での 1,769 人の双極 I 型障害の生涯有病率は 0.5%であった.成人を含めた有病率は,

DSM-IV-TR によると,双極 I 型障害の生涯有病率は 0.4~0.6%,双極 II 型障害の生涯有病

率はおよそ 0.5%と報告されている.また,Kessler ら(2005)が DSM-Ⅳ-TR の診断基準を用

い地域住民を対象とした調査では 12 か月有病率が 2.6%,生涯有病率が 3.9%であったと

報告されている.以上をまとめると,大規模な疫学調査の結果からは,双極性障害の診断

を満たす児童期の症例はきわめて少なく,青年期になって診断基準を満たす症例が出現し,

0.5~1%と成人の有病率に近くなっていくということができる(傳田,2011a).

一方,最近になって病院への外来受診あるいは入院レベルにおける双極性障害の患者数

が増加しているという報告がされるようになってきた(傳田,2011a).Blader ら(2007)は,

1996 年から 2004 年までの米国の国立病院の入院患者における精神科主診断を調査した.

その結果,双極性障害という診断がついた患者は直線的に増加していた.特に児童期にお

いては 1996 年の割合が一般人口 1 万人あたり 1.4 人であるのに対し,2004 年では 7.3人

と 5 倍以上に増加していた.青年期では 1996 年が 1 万人あたり 5.1 人に対し,2004 年

では 20.4 人と約 4 倍増加していた.成人期の場合は 1 万人あたり 10.4 人が 16.2 人と増

加していた.Moreno ら(2007)は,1994~1995 年と 2002~2003 年における米国の国立病院

の外来患者の精神科主診断を調査した.その結果,一般人口 10 万人に対して,19 歳以下

の児童・青年期の双極性障害は 1994~1995 年の 25 人から,2002~2003 年では 1,003 人

Page 10: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

3

と,8 年間で約 40 倍に増加していた.一方,20 歳以上の成人期では 10 万人あたり 905

人から 1,679 人に増加していた.このように児童・青年期の双極性障害の有病率は増加傾

向にあるといえる.

また,2000 年以降になってから,北米の一部の研究グループを中心に,児童期および前

青年期の双極性障害に関する論文が数多く報告されるようになった(Biederman ら, 2003;

Geller ら, 2005).児童・青年期の双極性障害の臨床像はこれまで認識されていた成人に

おける古典的な躁うつ病像とは大きく異なり,児童・青年期特有の臨床像を呈することが

明らかとなってきた.

このように,ようやく最近になって,児童・青年期特有の双極性障害の存在が認められ

るようになり,うつ病からの移行,双極スペクトラム障害という概念などに注目が集まっ

てきている(傳田ら,2011).

1.1.3 児童・青年期の広汎性発達障害

広汎性発達障害とは,対人相互反応の質的な障害,コミュニケーションの質的な障害,

反復的で常同的な限局された行動と興味の3主症状を有する発達障害である(American

Psychiatric Association,2000).

近年,広汎性発達障害,特にアスペルガー障害や高機能広汎性発達障害に対する関心が

高まっている.広汎性発達障害の過剰診断の問題も生じているが,精神疾患の診断におい

て,従来の内因性,心因性,外因性という要因に,新たな発達障害の視点を加える必要が

生じてきたことは間違いのない事実である(傳田,2008; 傳田ら,2010).

児童・青年期の広汎性発達障害の有病率について,DSM-IV-TRでは,疫学研究による自閉

性障害の有病率の中央値は,10,000人に対して 5例であり,報告された値は 10,000人に対

して 2~20 例の範囲にある.ここで,高い値が方法論の違いを反映しているのか,この疾

患の頻度の増加を反映しているのか明らかではないとしている.また,自閉性障害以外の

広汎性発達障害の有病率は不明とされている.英国の Chakrabarti ら(2005)が,DSM-Ⅳに

基づく診断基準を用い,ロンドン近郊の 15500人の 2.5~6.5歳児を対象とした疫学調査で

広汎性発達障害の有病率は 0.63%であると報告している.彼らの研究では,その広汎性発

達障害児の 75.8%が高機能とされており,高機能広汎性発達障害の有病率は 0.47%となり,

統合失調症の約 1/2の有病率であったとされている.Bairdら(2006)によって発表された英

国の調査では,9~10 歳の 56,946 人の中で,広汎性発達障害と診断されている 255 例と,

可能性がある 1,515 人について検討が行われた.その結果,10,000 人あたり 116.1 例とい

う多くの広汎性発達障害の子どもたちが存在することが明らかとなった.わが国でも,河

村ら(2009)が行った豊田市における 12,589人の児童(診断確定時の平均年齢は 3歳 4カ月)

に対する調査では,広汎性発達障害の累積発生率は 1.81%,すなわち 10,000 人あたり 181

例という高い値が示された.近年の欧米の疫学調査を概観すると,広汎性発達障害の有病

率は約 1%という値がコンセンサスとなっていると考えられる(栗田,2008).

Page 11: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

4

1.1.4気分障害と広汎性発達障害の生物学的関連性

広汎性発達障害の家族研究では自閉性障害の子どもを持つ家族における気分障害の集積

の報告が多い(Bolton ら, 1998; Piven ら, 1999).Smalley ら(1995)の研究では,自閉性

障害児の家族では 37.5%に第一親等内でうつ病の発症がみられ,40.3%の親が生涯のある時

点で大うつ病性障害を発症し,その 64%は自閉性障害の子どもが出生前の発症であった.対

象群となった自閉性障害以外の遺伝疾患(結節性硬化症やけいれん性疾患など)を持つ子

どもの家族でのうつ病発症と生涯有病率はそれぞれ 11.1%および 19.2%で一般人口と同程度

であった. Delong ら (2002)は選択的セロトニン再取り込み阻害薬( selective

serotoninreuptake inhibitor: SSRI)の治療効果の研究に参加した自閉性障害児の家族歴

を調査した結果,74%に二親等以内に大うつ病性障害または双極性障害の病歴がみられ,子

どもの SSRI への治療反応性,家族内のうつ病発症,理数系の特別な高い能力を持つ親族の

存在の 3 要因に強い相関が見られたという.

また,近年の精神疾患に対する遺伝子研究のメタ解析から統合失調症,双極性障害,う

つ病性障害,広汎性発達障害,注意欠如・多動性障害に共通する遺伝子座が存在すること

が明らかになった(Cross-Disorder Group of the Psychiatric Genomics Consortium,2013).

その共通する遺伝子座は脳内のカルシウムイオンチャンネルの活性・不活性に寄与する場

合が多いとされており,5つの疾患の関連性を示唆している(Cross-Disorder Group of the

Psychiatric Genomics Consortium,2013).

1.1.5 児童・青年期の気分障害と広汎性発達障害

DSM-IV-TR によると,広汎性発達障害をもつ者が,いじめ被害を受けること,対人的に

孤立させられること,自己を認識する能力が増大することにより,抑うつや不安が発現す

る場合があるとされる.広汎性発達障害に気分障害が併存した場合,広汎性発達障害の症

状そのものをねらいとした薬物はなく,薬物療法は対症的なものとならざるを得ない(牛

島ら,2011).気分障害が一度寛解しても,社会性の障害による対人関係の問題から,再度,

いじめ被害や対人的孤立の状態に置かれ, 気分障害が再発する可能性がある.

DSM-IV-TR によると,広汎性発達障害は持続的で一生続く障害とされており,広汎性発

達障害をもつ児童・青年は,成人になってからも対人関係の問題から,気分障害を発症す

るリスクを抱えているといえる.治療的アプローチについては,傳田ら(2010)が診断を

確定したら,適切な心理教育を行い,治療の動機づけをうながしていく必要があること,

そして精神療法の工夫と原則,集団プログラムへ参加することの利点について,具体例を

交えながら紹介している.広汎性発達障害に伴う気分障害の治療については単発の症例報

告は多数あるが,体系的な研究報告はないともいわれている(牛島ら,2011).また,PDD

の comorbidityに関する研究が行われ(Ghaziuddin ら,1998;Kimら,2000;Leyferら,2006;

Simonoffら,2008;Mattila ら,2010),それらの結果などから,気分障害と発達障害が相

互に関連するのではないかという点について検討されるようになってきた(傳田ら,2011b).

Page 12: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

5

しかし,児童・青年期の気分障害と広汎性発達障害はともに近年になってから注目を集

めるようになった障害であり,その関連性については未だ不明なことが少なくないのであ

る.

1.2 本研究の目的

上記のように近年では児童・青年期のうつ病性障害や双極性障害の有病率が以前に考え

られていたよりも高いことが明らかとなり, 広汎性発達障害においても関心が高まり,そ

れらの相互の関連について検討されるようになってきた.しかし一般の児童・青年におけ

る抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向について同時に調査された大規模な疫学研究に関

する報告は本邦ではまだなく,詳細については不明な点が多い.また,児童・青年期の気分

障害と広汎性発達障害との関連について一般の児童・青年を対象に調査された報告もみら

れない.以上から普通学級の児童・青年における抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向の

実態について明らかにし,相互の関連について検討を行う必要があると考えられる.また,

これらの点について検討することで児童・青年期の気分障害および広汎性発達障害に対す

る早期の発見や介入,適切な治療方法確立の一助になると考える.そこで本研究では,自

己記入式の簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS –

J),躁病エピソード診断スクリーニング質問表(Manic Episode Diagnostic Screening

Inventory:MEDSCI),自閉性スぺクトラム指数日本語版 (Autism-Spectrum Quotient

Japanese Version:AQ-J)を用いた調査を行い,第 1に現在の一般の小・中・高校生の抑う

つ症状,躁症状,および自閉傾向の実態について明らかにすること,第 2 に抑うつ症状,

躁症状,および自閉傾向における相互の関連について検討を行うことを目的とした.

1.3 児童期と青年期について

本論文では「児童・青年期」という言葉を用いた.児童期と青年期の区別については,

欧米では“childhood”または“very-early-onset”が 12 歳以下,“childhood and adolescence”

または“early-onset”が 17 歳以下と使用されていることが多いことを参考とし,「児童期」

を 12 歳以下,「青年期」を 13 歳以上 17 歳以下の時期とした.また,小・中・高校という

学校文化の影響についても考慮した分け方となっている.

Page 13: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

6

第 2章 対象と方法

本研究では児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向を調査するために普通

学級に通う児童・青年を対象に調査研究を行った.また,抑うつ症状に関しては一般市民

を対象とした調査結果から,児童・青年期における抑うつ症状について検討を行った.

2.1.1対象(児童・青年に対する調査研究)

普通学級に通う児童・青年の抑うつ症状,躁症状,及び自閉傾向を検討する調査研究の

の対象を表 1に示す.本調査は北海道教育委員会の協力を得て北海道全域の小学校 24校(第

3 学年,第 5 学年),中学校 28 校(第 2 学年),高等学校 28 校(第 2 学年)を抽出し,小学 3

年生 650 人,小学 5 年生 711 人,中学 2 年生 847 人,高校 2 年生 1,527 人の計 3,735 人を

対象とした.

2.1.2 対象(一般市民に対する調査研究)

一般市民における抑うつ症状を検討する調査研究では,2011 年度に千歳市が行った健康

診断の受診者 4,870 名のうち,調査への協力を得られた 4,258 名を対象とした.調査対象

の内訳を表 2 に示す.男性は 1,590 名,女性は 2,668 名で女性の方が多く,年齢別に見る

と 60歳代が 1,473名と最も多くなっている.平均年齢は 60.5±13.4歳である.

2.2.1 自己記入式評価尺度(児童・青年に対する調査研究)

以下にあげる自己記入式評価尺度およびライフスタイルに関する質問紙からなる調査票

を用いた.

1) QIDS-J(資料 1)

Rush AJ ら(2003)によって開発された簡易抑うつ症状尺度( Quick Inventory of

Depressive Symptomatology:QIDS)を藤澤ら(2010)が翻訳した.QIDS-J は,16 項目の自

己記入式の評価尺度で,DSM-IV の大うつ病性障害の診断基準に対応しており,睡眠,食欲

/体重,精神運動,その他 6 項目を合わせて 9 項目の合計点数 0-27 点でうつ病の重症度

を評価することができる.重症度の判別は,正常:0-5,軽度:6-10,中等度:11-15,重

度:16-20,極めて重度:21-27 点で行われる.成人のうつ病性障害の改善度を把握するた

めに作成されたものであるが,児童・青年期を対象としたうつ病性障害の診断基準に沿っ

た自己記入式の評価尺度が存在しないため今回の調査ではこの評価尺度を用いた.

2) MEDSCI(資料 2)

躁症状を評価する自己記入式の評価尺度で,DSM-Ⅳ-TRの診断基準やヤング躁病評価尺度

(Young RC ら,2000)の質問項目を参考にし,稲田らによって作成された(稲田,2012).

24 点満点の加点式で 12 点がカットオフスコアであり,現在(最近 1~2 週間)と過去の状態

について同様の質問が行われる.

Page 14: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

7

3) AQ-J(資料 3)

英国の Baron-Cohen らが開発した自閉症スペクトラム指数(Autism-Spectrum Quotient;

AQ)は,一般人にも存在する自閉傾向を把握することを意図して作成された性格傾向尺度で

あるとともに,高機能 PDD のスクリーニング尺度としての機能も意図したものである

(Baron-Cohen ら, 1995;Baron-Cohen ら, 2001).今回は AQ の日本語版である,AQ-J を

用いた.AQ-J は社会的スキル,注意の切換,細部への注意,コミュニケーション,想像の

5 つの領域からなっており,各領域 10問ずつ計 50 項目から構成されている.また,回答形

式は 4 肢選択(そうである,どちらかといえばそうである,どちらかといえばそうではない,

そうではない)の強制選択法になっている.採点法は,各項目で自閉傾向とされる側に該当

する回答をすると 1点が与えられる.AQ-Jのカットオフスコアについて栗田らは 30点,若

林らは 33点と定義していることから,本研究においてはカットオフスコア 30 点と 33点の

両方で比較検討した(Wakabayasi ら,2006;栗田ら,2004).なお,今回の調査にあたり AQ-J

の使用許可を若林から得た.

4)ライフスタイルに関するアンケート

児童・青年の日常生活およびライフスタイルを知るために睡眠時間,外遊びの時間,ゲ

ームの時間,テレビ鑑賞の時間,朝食摂取の有無を問う質問紙を作成した.

2.2.2 自己記入式評価尺度(一般市民に対する調査研究)

一般市民の抑うつ症状を評価するために児童・青年期に対する調査と同様に QIDS-Jを用

いた.

2.3.1 方法(児童・青年に対する調査)

児童・青年に対する調査は北海道教育委員会の協力のもと,全道 80校から調査の同意を

得た.同意を得られた学校へ調査票と説明文書を送付し,児童・生徒への配布を依頼した.

調査票の記入は各家庭で行った.本調査を実施するにあたり,児童・生徒のプライバシー

や人権に十分に配慮し,児童・生徒および保護者に対して以下のように説明した.①調査

票は無記名であり,個人のプライバシーは厳守されること,②調査への協力は本人・保護

者の自由意思で決めてもらうこと,③協力したくない場合は,記入・提出をしなくてもか

まわないこと,④調査に協力しない場合でも本人の不利益にはならないこと,⑤調査によ

って得られた研究の成果は,学会発表や学術雑誌などで公表されることがあるが,それ以

外の目的には使用しないこと,である.調査への同意が得られた場合のみ調査票の記入・

提出を依頼し,調査票の提出をもって調査への同意は得られたものと判断した.また,北

海道教育委員会の意向により本調査においては性別の記載を避けた.

なお,児童・青年に対する調査研究は北海道大学大学院保健科学研究院の倫理委員会の

承認を得ている(11-7).本調査の調査票の配布と回収は 2011年 6~7月にかけて実施した.

Page 15: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

8

2.3.2 方法(一般市民に対する調査)

一般市民に対する調査は千歳市の自殺予防対策の一環として行った.千歳市保健センタ

ーにおける 2011年度の集団健康診断受診者に,予め問診票とともに「こころの健康チェッ

ク票」として QIDS-Jの質問紙を送付し,調査への協力が得られた受診者には記載後,健診

当日に提出を求めた.対象者に対する説明は児童・青年に対する調査に則った.

なお,一般市民に対する調査研究は北海道大学大学院保健科学研究院の倫理委員会の承

認を得ている(11-40-1).

2.4 解析方法

解析には SPSS20.0J を用い,学年ごとの平均値の比較を行うために一元配置分散分析と

Games-Howell 法,および Steel-Dwass 法による多重比較を行った.抑うつ症状,躁症状,

および自閉傾向の関連を調べるために各尺度のスコアにおいてピアソンの積率相関係数を

求めた.また抑うつ症状,躁症状および自閉傾向とライフスタイルの関連を調べるために

重回帰分析を行った.

Page 16: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

9

第 3章 結果

3.1.1 QIDS-Jの結果(児童・青年)

QIDS-Jの結果を表 3 および図 1に示した.QIDS-Jの対象者全体の平均スコアおよび標準

偏差は 5.2±4.3 で,小学 3 年生で 3.1±3.2,小学 5 年生で 3.6±3.2,中学 2 年生で 5.5

±4.3,高校 2年生で 6.8±4.4点であった.QIDS-J のスコアが 11点以上である中等度以上

の者を抑うつ群とすると,全体では 12.4%,小学 3年生では 3.7%,小学 5年生では 3.9%,

中学 2年生では 13.4%,高校 2年生では 19.4%が抑うつ群となった.学年があがるごとに

抑うつ群の割合が増加していた.

QIDS-Jの各項目の平均スコア(全体)を図 2に示した.高得点の順に列挙すると項目 11.

「自分についての見方」,項目 7.「食欲増進」,項目 1.「寝つき」,項目 5.「悲しい気持ち」,

項目 16.「落ち着かない」となった.項目 11.「自分についての見方」は配点 0点が「自分

のことを,他の人と同じくらい価値があって,援助に値する人間だと思う」,1 点が「普段

よりも自分を責めがちである」,2 点が「自分が他の人に迷惑をかけているとかなり信じて

いる」,3 点が「自分の大小の欠陥について,ほとんど常に考えている」で自責感や自己評

価の低さを問う質問項目である.

項目 12.「死や自殺についての考え」は自殺念慮を推測するうえで重要な質問であり,他

の質問紙を用いた研究でも類似項目の結果について報告されている(傳田ら,2004).配点

0 点が「死や自殺について考えることはない」,1 点が「人生が空っぽに感じ,生きている

価値があるかどうか疑問に思う」,2 点が「自殺や死について,1 週間に数回,数分間にわ

たって考えることがある」,3点が「自殺や死について 1日に何回か細部にわたって考える,

または,具体的な自殺の計画を立てたり,実際に死のうとしたりしたことがあった」であ

る.学年ごとの結果は図 3に示すように,2点以上の者を自殺念慮ありとすると全体で 8.1%,

小学 3 年生で 2.8%,小学 5 年生で 3.9%,中学 2 年生で 10.6%,高校 2 年生で 11.1%に

自殺念慮が認められた.また,3 点回答者の割合は全体で 2.5%,小学 3 年生で 0.3%,小

学 5 年生で 0.9%,中学 2 年生で 4.5%,高校 2 年生で 3.2%であり中学 2 年生で最も高い

割合となった.

QIDS-Jのスコアを学年ごとに比較するために一元配置分散分析および Games-Howell法を

用いて多重比較を行った.その結果を表 4~7 に示した.小学 3 年生<小学 5 年生<中学 2

年生<高校 2年生と学年があがるごとに QIDS-Jのスコアが有意に高くなることが確認され

た(p<0.05).

3.1.2 QIDS-Jの結果(児童・青年期と一般市民の比較)

一般市民おける QIDS-Jの平均得点を図 4に示す.児童・青年と一般市民の結果を比較す

ると,平均得点は高校 2年生で最も高く,千歳市民の平均得点は小学生と同程度であった.

一般市民における抑うつ群の割合を図 5 に示した.成人全体と比べて高校 2 年生,中学 2

Page 17: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

10

年生の割合が高かった.また,自殺念慮に関しても,高校 2 年生と中学 2 年生は成人全体

と比べて高い割合を示した(図 6).千歳市民の項目別の平均得点は図 7 に示した通りであ

る.

3.2 MEDSCIの結果

MEDSCIの結果を表 8 および図 8に示した.MEDSCIでは,躁症状があると判断されるカッ

トオフスコアは 12点である.対象者全体における MEDSCI(現在)の平均スコアおよび標準偏

差は 4.3±4.1であり,小学 3年生で 2.9±3.3,小学 5年生で 4.1±3.9,中学 2年生で 4.9

±4.2,高校 2 年生で 4.8±4.3 点であった.MEDSCI(現在)の値で躁症状が疑われた者は,

表 4 で示すように全体では 6.5%,小学 3 年生で 2.7%,小学 5 年生で 4.9%,中学 2 年生

で 7.4%,高校 2年生で 8.3%であった.対象者全体における MEDSCI(過去)の平均スコアお

よび標準偏差は 4.5±4.3であり,小学 3年生で 2.7±3.2,小学 5年生で 3.7±3.7,中学 2

年生で 5.0±4.4,高校 2年生で 5.3±4.6点であった.MEDSCI(過去)で躁症状が疑われた者

は表 4 で示すように,全体で 8.5%,小学 3 年生で 2.6%,小学 5 年生で 4.2%,中学 2 年

生で 8.9%,高校 2年生で 13.2%であった.

QIDS-J 同様に多重比較を行った結果,表 7 に示すように MEDSCI(現在)および MEDSCI(過

去)では中学 2年生-高校 2年生間では有意な差は認められなかったが,小学 3年生<小学

5 年生<中学 2年生,及び小学 3年生<小学 5年生<高校 2年生で学年が上がるごとに有意

にスコアが高くなることが確認された(p<0.05).

MEDSCI の項目別の平均得点を図 9 に表示する.「気分の高揚」,「観念奔逸」,「注意散漫」

に該当する項目で高得点になっている.

3.3 AQ-Jの結果

AQ-J の結果を表 9 および図 10 に示した.AQ-J の平均スコアおよび標準偏差は,全体で

は 20.4±6.1,小学 3年生は 18.5±6.5,小学 5年生は 19.0±6.0,中学 2年生は 20.7±6.0,

高校 2 年生は 21.7±5.7 点であった.AQ-J スコア≧30 点となった者は全体で 5.7%,小学

3 年生で 3.0%,小学 5 年生で 3.1%,中学 2 年生で 6.6%,高校 2 年生で 7.5%であった.

AQ-Jスコア≧33点となった者は,全体で 1.8%,小学 3年生で 1.2%,小学 5年生で 0.9%,

中学 2 年生で 2.0%,高校 2 年生で 2.3%であった.学年ごとの AQ-J のスコアを比較する

ために多重比較を行った.その結果は表 7 に示すように,小学 3 年生-小学 5 年生間では

有意な差は認められなかったが,小学生<中学 2 年生<高校 2 年生と学年が上がるごとに

AQ-Jのスコアが有意に高くなることが確認された(p<0.01).

図 11 に各学年の平均 AQ-J スコアを下位尺度のスコアで示した.また,多重比較の結果

を表 10に示した.多重比較の結果,コミュニケーションと注意の切替の下位項目で,AQ-J

スコア同様に,小学生<中学 2 年生<高校 2 年生と学年が上がるごとに有意にスコアが高

くなることが確認された(それぞれ p<0.05,p<0.01).他の下位項目においても学年によ

Page 18: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

11

っては有意な差が認められるような結果が得られた.しかし他の下位項目については全体

として学年の変化との関連がうかがえる結果は認められなかった.

AQ-Jの項目別の平均スコアを図 12に示した.「人の外見や状況の差異に気づけない」,「一

度に 2 つのことをすることが苦手」,「新しい状況が苦手」に該当する項目などが高得点に

なった.

また,Wakabayashi らの調査研究(2006)から得られた平均年齢 20.3 歳(SD=1.9;範囲:

18-41)の大学生 1050 人の AQ-J 平均スコアは 20.7±6.4 点であった.大学生の平均スコア

=20.7 を検定値として高校 2 年生の平均スコアで 1 群の t 検定を行った結果,高校 2 年生

の AQ-J 平均スコアの方が有意に高いことが確認された(下限=0.6,上限=1.3,p<0.01).

3.4 ライフスタイルに関するアンケートの結果

ライフスタイルの平均時間および標準偏差を表 11に示した.睡眠時間は全体で 7.8±1.5

(時間)で,小学 3 年生で 9.3 ±0.7,小学 5 年生で 8.9±0.8,中学 2 年生で 7.7±1.2,

高校 2年生で 6.8±1.3であり学年が上がるごとにばらつきは大きくなり,睡眠時間は多重

比較から有意に小学 3 年生>小学 5 年生>中学 2 年生>高校 2 年生で学年が上がるごとに

短くなっていることが確認された(p<0.01).外遊びの時間は小学生>中・高校生で小学生

が有意に長くなることが確認された(p<0.05).朝食摂取習慣の割合は小学生>中学生>高

校生で有意に高くなることが確認された(p<0.01).他の項目においても学年によっては有

意な差が認められるような結果が得られた.しかし他の項目については全体として学年の

変化との関連がうかがえる結果は認められなかった.多重比較の結果を表 12に示した.

3.5 QIDS-J,MEDSCI,AQ-Jの相関関係

抑うつ傾向,躁傾向,自閉傾向の相互の関連を調べるために QIDS-J,MEDSCI(現在),AQ-J

の各スコア間において,ピアソンの積率相関係数を求めた.その結果を表 13 に示した.p

値<0.05 かつ相関係数>0.3 以上の場合を「意味のある相関がある」と判断すると全体の

QIDS-J-MEDSCI(現在)で正の相関関係が示唆された(相関係数 0.40,p<0.01).また,全

体の QIDS-J-AQ-Jでも正の相関関係があるという示唆が得られた(相関係数0.36,p<0.01).

しかし,全体の MEDSCI(現在)-AQ-J では意味のある相関関係は認められなかった(相関係

数 0.13,p<0.01).相関関係が示唆された QIDS-J-MEDSCI と QIDS-J-AQ-J については散

布図を図 13,図 14として示す.

3.6 各スコアとライフスタイルの関連

ライフスタイルと抑うつ症状,躁症状および自閉傾向との関係をみるために,QIDS-J,

MEDSCI(現在),AQ-Jのスコアを従属変数とし,睡眠時間,外遊びの時間,テレビ鑑賞時間,

ゲーム時間,朝食の有無を独立変数として重回帰分析を行った.その結果を表 14 に示す.

調整済み決定係数が 0.5 以上となるような予測性の高い重回帰式は得られなかった.他と

Page 19: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

12

比較して QIDS-Jでは調整済み決定係数がやや高く,睡眠時間の減少や朝食の未摂取が抑う

つ症状と関連するのではないかという示唆が得られた.重回帰式のライフスタイル項目を

標準化係数が高い順に並べたが,調整済み決定係数は低い値となっている.

Page 20: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

13

第 4章 考察

4.1.1 抑うつ症状について

QIDS-Jでは学年が上がるごとに抑うつ群の割合が増えることが確認された.また,QIDS-J

の学年別平均スコアは学年が上がるごとに有意に高くなっていた.傳田ら(2004)の研究で

は小学生で 7.8%,中学生で 22.8%が抑うつ傾向を示したと報告されている.今回の研究

では評価尺度は異なるが小学 3 年生で 3.7%,小学 5 年生で 3.9%,中学 2 年生で 13.3%,

高校 2 年生で 19.4%が抑うつ群であった.小・中・高校生では年齢が上がるごとに抑うつ

傾向を示す者の割合が高くなると考えられる.

項目別の平均点では項目 11.「自分についての見方」が最も高得点であり,項目 11.は

自責感や自信のなさを問う質問項目である.日本青少年研究所(2011)が行った調査で日本

の高校生はアメリカ・中国・韓国と比較して自己評価が低い,と報告されている.今回の

結果でも項目別の平均スコアでみると自己評価が低いと推察され,児童・青年期では自己

評価の低さが抑うつ傾向と関連しているのではないかと考えられた.

項目 12.「死や自殺についての考え」では,2 点,3 点回答者を自殺念慮ありとすると,

各学年でおよそ 3~11%に自殺念慮が存在することが確認された.傳田ら(2004)がバールソ

ン自己記入式抑うつ評価尺度を用いて小・中学生を対象に実施した調査では,「生きていて

も仕方がない」という質問に対し「ときどきそうだ」と「いつもそうだ」と答えた者を合

わせると 18.8%に自殺念慮が認められ,「いつもそうだ」と答えた者は 4%であったと報告

されている.今回の結果から一般の小・中・高校生には自殺念慮を有する生徒が一定数存

在すると考えられる.平成 23年度版自殺対策白書(厚生労働,2011)で年代別の死因を見る

と 10 歳~14 歳では 3 位(11.3%)が,15 歳~19 歳では 1 位(31.2%)が自殺となっている.

また,50 代を中心とした中高年の自殺率は減少傾向にあるが思春期・青年期の自殺率は増

加傾向にある.以上より一般の小・中・高校生では自殺念慮を有する者が一定数存在し,

死因として自殺が多く,自殺率も高くなってきていることから,学校や家庭において上記

のような認識を持ちながら早急に対応する必要があると考えられる.

また,筆者らが行った千歳市民における調査の結果と児童・青年期の結果を比較すると,

千歳市民と比べ中・高校生の方が QIDS-Jの平均得点は高く,抑うつ群の割合も高く,自殺

念慮を有するとされる者の割合も高かった(大澤ら,印刷中).この理由としては,中・高

校生は抑うつや自殺への興味・関心が特に高まる年代であることが可能性として考えられ

る.また,自己の評価が低いため将来に対して不安になりやすく,友人関係で悩みを抱え

るこが多くなるのではないかと考えられる.

抑うつ傾向に関して,小学生で他の年代と同程度であり,特に中学生・高校生では高い

抑うつ傾向を示した.我が国の児童・青年期のうつ病性障害の有病率については未調査で

はあるが児童・青年のうつ病性障害が見逃されている可能性が高いのでないかと考えられ

る.

Page 21: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

14

4.2 躁症状について

MEDSCI では学年が上がるごとにカットオフスコアを超える者の割合が増えることが確認

された.また,MEDSCI の学年別平均スコアは現在と過去ともに中学 2 年生-高校 2 年生を

除いて学年が上がるごとに有意に高くなっていた.今回の自己記入式のアンケート調査で

はカットオフスコア以上の者の割合が各学年でおよそ 3~8%存在することが明らかになっ

た.傳田(2011a)は,子どもの躁状態は,健常発達の子どもの落ち着きのなさ,はしゃぐこ

と,衝動的行動,いたずら,大げさな発言などと鑑別しなければならない,と述べている.

児童・青年期では以上のような行動は仲間やメディアの影響,ライフイベントや環境因(修

学旅行やクリスマスなど)により,状況誘発的に生じやすい.今回は自己記入式の評価尺度

を用いたため,以上のようなエピソードに誘発された変化によって MEDSCIが高得点となっ

た者も含まれていることを考慮する必要があると考えられる.

4.3 自閉傾向について

AQ-J のスコアは小学 3 年生-小学 5 年生では有意な差は認められなかったが,小学生<

中学 2 年生<高校 2年生と学年が上がるごとに AQ-Jのスコアが有意に高くなることが確認

された.また,広汎性発達障害の有病率は約 1%とされているが(hondaら,2005)今回の AQ-J

の結果では各学年で約 3.0~7.8%と高い割合で自閉傾向が疑われ,学年が上がればスコア

も高くなることが明らかになった.臨床的には年齢が上がるにつれて自閉傾向は減少する

が,自己記入式の評価尺度では自閉傾向的要素に関する自己意識を問うことになり,小学

生に比べて中・高校生の方が自身の自閉傾向的要素を認識しやすくなっているのではない

かと考えられる.さらに AQ-Jスコアと同様に下位項目のコミュニケーションにおいても小

学生<中学 2 年生<高校 2 年生と学年が上がるごとに平均スコアが有意に高くなることが

確認された.このことからコミュニケーションに対する困難さを自覚することと,自らの

自閉傾向的要素に気づくことに関連があるのではないかと考えられる.

次に Wakabayashiら(2006)の研究で得られた大学生の AQ-Jの平均スコア=20.7を検定値

として本調査における高校 2年生の AQ-J平均スコアについて 1群の t検定を実施した結果,

高校 2 年生のスコアが有意に高くなることが確認された(下限=0.6,上限=1.3,p<0.01).

したがって,高校生における自閉傾向の自己認識は大学生よりも高い傾向にあるというこ

とが考えられる.しかし本調査は 2011 年に実施され,Wakabayashi らの調査よりも 5 年以

上の差があるため,高校生の方が大学生よりも AQ-Jのスコアが高いという結果を裏付ける

には,時代の影響を考慮し,今後も領域を広げて比較検討する必要があると考えられた.

また,文部科学省が平成 14年に「通常学級に在籍する特別な教育支援を必要とする児童・

生徒に関する全国実態調査」を実施した結果,知的発達に遅れはないものの,学習面や行

動面で著しい困難を示す児童・生徒の割合は 6.3%であることが明らかになった.この 6.3%

のうち学習面で著しい困難を示す児童・生徒の割合が 4.5%,行動面で著しい困難を示す児

Page 22: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

15

童・生徒の割合が 2.9%,学習面と行動面ともに著しい困難を示す児童・生徒の割合が 1.2%

という結果であった(文部科学省,2003).本調査でも,小・中・高校の普通学級において,

各学年およそ 3~7%の割合で AQ-J高得点者が存在することが明らかとなり,上記の報告と

重なる部分があると考えられる.普通学級に通う児童・生徒においても自閉傾向的要素に

よって,学習面や行動面で生きづらさを感じている児童・生徒がいることを認識する必要

があると考えられた.

4.4 各スコアの相関

全体の QIDS-J-MEDSCI(現在)で正の相関関係が示唆された(相関係数 0.40,p<0.01).

つまり児童・青年期では抑うつ傾向のスコアが高ければ躁傾向のスコアも高くなると考え

られる.井上ら(2007)は成人では初発のうつ病性障害の少なくとも 10%は双極性障害に発

展するとしている.児童では Gellerら(1994)が 6~12歳の大うつ病性障害の児童を追跡調

査し,31.7%(25 名)が双極性障害に発展したと報告している.また青年では Rao ら(1995)

は平均年齢 15.4±1.3歳の大うつ病性障害 28名を追跡調査し 19%が双極性障害に発展した

と報告している.以上のようにうつ病性障害は双極性障害に発展する可能性があり,児童・

青年では成人と比較してその可能性が高いと考えられる.今回の調査では児童・青年期で

は抑うつ傾向のスコアが高くなれば躁傾向のスコアも高くなるという結果になった.これ

は児童・青年期のうつ病性障害と双極性障害との関連を示唆するものではないかと考えら

れる.

また,全体の QIDS-J-AQ-J の正の相関関係が示唆された(相関係数 0.36,p<0.01).つ

まり,児童・青年期では,抑うつ傾向のスコアが高ければ自閉傾向のスコアも高くなると

考えられる.児童・青年期の PDD 症例を対象とした comorbidity の研究では,大うつ病性

障害を併存する症例が存在することが確認されている.Ghaziuddin ら(1998)はアスペルガ

ー障害をもつ米国の 35例(8~51歳,平均年齢 15.1 歳)のうち 22.9%に大うつ病性障害の併

存がみられたと報告している.Kimら(2000)の調査ではアスペルガー障害または高機能自閉

症をもつカナダの児童・青年 59例(9~14歳,平均年齢 12.0歳)の 16.9%にうつ病が確認

された.Leyferら(2006)の調査では PDDをもつ米国の児童・青年 109例(5~17歳,平均年

齢 9.2歳)のうち,10.1%に大うつ病性障害が併存していた.Mattilaら(2010)によると,ア

スペルガー障害または高機能自閉症をもつフィンランドの児童・青年 50 例(9~16 歳,平

均年齢 12.7歳)の中で,大うつ病性障害は 6.0%に確認されたと報告している.また,最近

の研究では佐藤ら(2013)が大うつ病性障害の診断を受けた 47 例(男子 21 例,女子 26 例,

平均初診時年齢 14.3±2.3 歳,年齢範囲 7~17 歳)を対象とした研究で comorbidity とし

て PDD を有する者が 36.2%(15 名)であったと報告している.さらに DSM-Ⅳ-TR(American

Psychiatric Association,2000)では,PDD者は思春期において自閉傾向の認識が促される

ことにより,抑うつ症状や不安の発現を招く可能性があると述べられており,近年の精神

疾患に対する遺伝子研究のメタ解析から,うつ病性障害と広汎性発達障害に共通する遺伝

Page 23: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

16

子座が存在することも明らかになっている(Cross-Disorder Group of the Psychiatric

Genomics Consortium,2013).今回の児童・青年期では抑うつ傾向のスコアが高くなれば

自閉傾向のスコアも高くなるという結果は,児童・青年期ではうつ病性障害と広汎性発達

障害が併存しやすいことへの裏付けになり,上記の報告を示唆する結果になったと考えら

れる.

また,筆者らが行った青年期の広汎性発達障害に対する臨床研究においても対象者の中

にはうつ病性障害を併発している患者が複数人含まれていた.筆者は彼らに対し,コミュ

ニケーション能力に応じたグループによる支援の効果を検討した(井上ら,2012).社会参

加の変化などから支援は有効であると考えられたが,自記式の評価尺度からは有意な変化

は認められなかった.その原因として,青年期の広汎性発達障害に併存するうつ病性障害

の影響を考慮できなかったことも一因ではないかと考えられる.今回の結果を踏まえ,青

年期の広汎性発達障害に対する支援ではうつ病性障害の症状にも配慮する必要性があるの

ではないかと考えられた.

4.5 各スコアとライフスタイルの関連

今回の結果からは予測性の高い重回帰式は得られなかった.QIDS-J に関しては他と比較

すると予測性の高い結果が得られた.しかし今回の調査結果では自由度調節済み決定係数

が小さいため,5 つの変数で QIDS-J スコアが十分に説明出来ないことが示唆された.5 つ

の変数と QIDS-Jスコアの間に有意な関係は見られなかったが,その中でも睡眠時間の減少

や朝食の未摂取が抑うつ傾向を示唆するのではないかという結果が得られた.しかし関連

性を示す決定係数は高くはなく,今後も慎重に検討を行う必要があると考えられる.

4.6本研究の限界

まず今回の調査では抑うつ症状を調査するために QIDS-Jを用いた点である.QIDS-Jは対

象を成人としており,児童・青年を対象に信頼性や妥当性が検証された評価尺度ではない.

児童・青年期を対象にバールソン自己記入式うつ病評価尺度を用いた先行研究があるが,

バールソン自己記入式うつ病評価尺度は DSM-Ⅳなどの診断基準に準じた評価尺度ではない

(Birleson ら,1987).また一般の高校生を対象にバールソン自己記入式うつ病評価尺度を

用いた調査で 35%の生徒に抑うつ傾向が認められたという報告がある(岡田ら,2009).以

上から岡田らはバールソン自己記入式うつ病評価尺度を高校生に用いた場合,高率で抑う

つ傾向を認めてしまうことからカットオフスコアの妥当性について慎重に検討する必要が

あると指摘している.以上の議論に加え,QIDS-Jは DSM-Ⅳの診断基準に準じて作成された

評価尺度であり,質問項目がわかりやすく子どもでも理解できると判断したため,今回の

調査では QIDS-Jを使用した.

次に,一般成人用の AQ-Jを小・中・高校生を対象にして調査を行った点である.児童・

青年向けの自己記入式調査用紙が既存しないため,今回は AQ-Jを用いて調査を行った.質

Page 24: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

17

問紙の記入にあたり,設問の内容によって回答しなくても構わないことを最初に規定した

ことなどから,小学生では未記入項目も多く,AQ-J のスコアは中学生,高校生と比較して

低い値となった.しかしどの学年においても正規分布を示しており,さらに中学生,高校

生においては多くの学生が質問紙に回答したことなどから,今回の AQ-J を用いた調査は,

児童・生徒の自閉傾向をある程度把握するという点で,意味のある研究であると考えられ

る(宮島ら,2012).また,上述したように小学生には未記入項目が多く,難解な設問もあ

ったと思われるため,今後は児童・生徒を対象とした自己記入式評価尺度の作成が望まれ

る.

次に,児童・生徒はエピソード(修学旅行や定期試験)に反応しやすく,調査の実施時期

により結果が大きく左右される可能性があることである.また,自己記入式の評価尺度を

用いたため,検査実施時点の一時的な状態象を反映し,継時的な視点で普段との変化をと

らえられていない可能性がある.さらに自己記入式の評価尺度を用い一定のカットオフス

コアを設定して疾患のスクリーニングを行う場合,false positive が増えるという限界も

ある(染谷,1997).以上のような児童・青年期の特徴や自己記入式評価尺度の限界点を理

解した上で,慎重に結果の解釈を行う必要があると考えられる.

最後に,各評価スコアの相関について分析した結果,全体の QIDS-J-MEDSCI(現在)およ

び QIDS-J-AQ-Jの間に正の相関関係があることが確認された.しかし各評価尺度には少数

ではあるが類似質問項目も含まれており,類似質問項目の影響も踏まえて慎重に検討する

必要があると考えられる.

本調査は上述したような限界がある一方で,小・中・高校生の抑うつ症状,躁症状およ

び自閉傾向を同時に評価したわが国初めての調査であり,対象者数も諸外国の調査を含め

ても大規模なものである.今後も他地域で調査を行うことで,より信頼性の高い結果を報

告できると考えられる.

Page 25: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

18

第 5章 結論

本論文では,児童・青年期の抑うつ症状と躁症状,および自閉傾向に関する調査研究を

行い,一般の児童・青年における抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向とそれらの関連に

ついての検討を試みた. 小・中・高校生 3,735名に対し質問紙による疫学調査を行い,調

査票には,簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J),躁病エピソード診断スクリーニング質問表

(MEDSCI),自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)を用いた.

普通学級に通う児童・青年では抑うつ症状を示すスコアは学年が上がれば高くなること

が確認され,抑うつ症状が疑われる児童生徒が約 3.7%~19.4%の割合で存在することが明

らかになった.また,自殺念慮を有する生徒の割合も高いことが明らかになった.一般市

民の結果と比較しても,中・高校生では抑うつ症状を示すスコアは高くなり,抑うつ群の

割合が増え,自殺念慮を有する者の割合が高くなることが明らかになった.中・高校生で

は抑うつや死に対する関心が高まる時期であること,自己評価の低さから不安や悩みが増

えていることなどが原因ではないかと考えられる.他の年代と比較して小学生では同程度

であり,特に中・高校生では抑うつ傾向が高くなったことから,児童・青年期のうつ病性

障害が見逃されている可能性が高いのではないかと考えられた.また,自殺念慮を有する

と考えられる者の割合も中・高校生では高く,年代別の死因では中・高校生では自殺の割

合も高いことから,学校や家庭において上記のような認識を持ちながら対応する必要があ

ると考えられる.

普通学級に通う児童・青年では自閉傾向が疑われる児童生徒が約 3.0%~7.8%の割合で

存在することが明らかになり,広汎性発達障害の有病率 1%よりも高い割合であることが確

認された.臨床的には年齢が上がるにつれて自閉傾向は減少するが,自己記入式の評価で

は自閉傾向的要素に関する自己意識を問うことになり,小学生に比べて中・高校生の方が

自身の自閉傾向的要素を認識しやすくなっているのではないかと考えられる.また,普通

学級において知的発達に遅れはないものの,学習面や行動面で著しい困難を示す児童・生

徒の割合は 6.3%であったという報告もあり,今回の調査で自閉傾向が疑われた者と重なる

者も含まれるのではないかと考えられた.

各症状の関連について,抑うつ症状のスコアと躁症状のスコアが正の相関を示したこと

から,児童・青年期の気分障害ではうつ病性障害から双極性障害に発展しやすいこととの

関連が示唆されたと考える.また,抑うつ症状と自閉傾向のスコアが正の相関を示したこ

とから,児童・青年期ではうつ病性障害と広汎性発達障害が併存しやすいことへの裏付け

になったと考えられる.

Page 26: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

19

謝辞

本研究は,筆者が北海道大学大学院保健科学院保健科学専攻博士後期課程在学中に,同

大学大学院保健科学研究院生活機能学分野傳田健三教授の指導のもとで行われたものです.

傳田健三教授には,主任指導教員として本論文の全般に渡って,終始一貫して丁寧なご指

導ご鞭撻を賜りました.傳田健三教授に心より敬意と感謝の意を表します.

児童・青年に対する調査研究においてご協力いただいた関係諸機関および担当職員の皆

様に深く感謝申し上げます.

札幌市児童相談所の築島健先生と札幌こころの診療所の中野育子先生には札幌こころの

センターにおける研究について,多大なるご支援,ご指導を賜りましたこと,厚く御礼申

し上げます.また,支援プログラムへの参加やカルテ情報や評価尺度の取り扱いの際にい

ろいろとご配慮いただいた精神保健福祉士や臨床心理士の札幌こころのセンター・スタッ

フの皆様に,心より感謝申し上げます.そして,本調査にご協力いただきました患者様の

皆様に深く感謝申し上げます.

北海道大学大学院保健科学院保健科学専攻の先生方と大学院生の皆様には,リサーチ・

カンファレンスなどを通じて,研究に関する多くの有益なコメントをいただきましたこと,

心より感謝申し上げます.

最後に,院生生活を支えてくれた家族や周囲の方に心からの謝意を記します.

2013年 12月 25日

Page 27: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

20

文献

American Psychiatric Association(1980): Diagnostic and statistical manual of

mentaldisorders,3rd edition (DSM-III). Washington, D.C., American Psychiatric

Association.

American Psychiatric Association(2000): Diagnostic and statistical manual of

mentaldisorders, 4th edition, text revision (DSM-IV-TR) . Washington, D.C.,

American Psychiatric Association.

Baird, G., Simonoff, E., Pickles, A. et al. (2006): Prevalence of disorders of the

autism spectrum in a population cohort of children in South Thames: The Special

Needs Autism Project (SNAP). Lancet , 368, 210-215.

Baron-Cohen S(1995):Mindblindness: an essay on autism and theory of mind. MIT

PressBradford Books,Boston.

Baron-Cohen S, Wheelwright S,Skinner R.et al.(2001): The Autism-Spectrum Quotient

(AQ): Evidence from Asperger syndrome/ high-functioning autism, males and females,

scientists and mathematicians. Journal of Autism and Developmental Disorders,31,

5-17.

Biederman, J., Mick, E., Faraone, S. et al. (2003): Current concepts in the

validity,diagnosis and treatment of pediatric bipolar disorder. International

Journal of Neuro psychopharmacology , 6, 293-300.

Birlson,P.,Hudson,I.,Buchanan,DG.et al(1987):Clinical evaluation of a self-rating

scale for depressive disorder in childhood(Depression self-rating scale).Journal

of Child Psychology and Psychiatry,28,43-60.

Blader, J.C. & Carlson, G.A. (2007): Increased rates of bipolar disorder diagnoses

amang U.S. child, adolescent, and adult inpatients, 1996-2004. Biological

Psychiatry ,62, 107-114.

Bolton, P., Pickles, A., Murphy, M. et al. (1998): Autism, affective and other

psychiatric disorders: Pattern of family aggregation. Psychological Medicine ,

28,385-395.

Costello, E. J., Angold, A., Burns, B. J. et al. (1996): The Great Smoky Mountains

Study of Yourth: Goals, design, methods, and the prevalence of DSM-III-R

disorders.Archives of General Psychiatry , 53, 1129-1136.

Costello, E. J., Erkanli, A. & Angold, A. (2006): Is there an epidemic of child or

adolescent depression? Journal of Child Psychology and Psychiatry , 47, 1263-1271.

Cross-Disorder Group of the Psychiatric Genomics Consortium(2013):Identifi cation

of risk loci with shared eff ects on fi ve major psychiatric disorders: a genome-wide

Page 28: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

21

analysis. Lancet,381,1371–79

Chakrabarti S,Fombonne E(2001):Pervasive developmental disorders in preschool

children.JAMA285,3093-3099.

Delong, G. R., Ritch, C. R. & Bursch, S. A. (2002): Fluoxetine response in children

with autistic spectrum disorders: Correlation with familial major affective

disorder andintellectual achievement. Developmental Medicine and Child Neurology ,

44,652-659.

傳田健三(2002): 子どものうつ病-見逃されてきた重大な疾患. 東京, 金剛出版.

傳田健三,賀古勇輝,佐々木幸哉 他(2004):小・中学生の抑うつ状態に関する調査-

Birleson自己記入式うつ病評価尺度(DSRS-C)を用いて-.児童青年精神医学とその近接

領域,45,424-436.

傳田健三(2008): 児童・青年期の気分障害の臨床的特徴と最近の動向. 児童青年精神医学

とその近接領域, 49, 89-100.

傳田健三(2011a):子どもの双極性障害-DSM-5への展望-.金剛出版.

傳田健三(2011b):巻頭言(特集:広汎性発達障害と comorbidity). 児童青年精神医学とその

近接領域, 52, 101-102.

傳田健三, 佐藤祐基(2010): 児童・青年期における難治性うつ病-発達障害と bipolarity

の視点から. 精神療法, 36, 621-626.

傳田健三, 佐藤祐基, 井上貴雄他(2011): 広汎性発達障害と気分障害. 児童青年精神医学

とその近接領域, 52, 143-150.

傳田健三, 大澤茉梨恵, 大宮秀淑他(2012): 児童期の抑うつ-臨床的特徴と治療ガイドラ

イン. 精神科治療学, 27, 283-288.

藤澤大介,中川敦夫,田島美幸 他(2010): 日本語版自己記入式簡易抑うつ尺度(日本語版

QIDS-SR)の開発.ストレス科学,25,43-52.

Geller,B.Fox,L.W.,Clark,K.A(1994):Rate and Predictors of prepubertal bipolarity

during follow-up of 6- to 20-year-old depressed children. Journal of the American

Academy of Child and Adolescents Psychiatry,33,461-468.

Gellar, B. & Tillman, R.(2005): Prepubertal and early adolescent bipolar I

disorder:Review of diagnostic validation by Robins and Guse criteria. Journal of

Clinical Psychiatry , 66, 21-28.

Ghaziuddin M, Weidmer-Mikhail E, Ghaziuddin N(1998): Comorbidity of Asperger

syndrome: a preliminary report. J Interllect Disabil Res,4,279-293.

Harrington, R. (1994): Affective disorders. In: Rutter, M., Taylar, E., Hersov, L.

(eds.):Child and adolescent psychiatry: Modern approaches, 3rd edition, Chapter

19 (pp.330-350). Oxford, Blackwell Science.

Hasin, D. S., Goodwin, R. D., Stinson, F. S. et al. (2005): Epidemiology of major

Page 29: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

22

depressive disorder: Results from the national epidemiologic survey on alcoholism

and related conditions. Archives of General Psychiatry , 62, 1097-1106.

Honda H,Shimizu Y,Imai M.et al(2005):Cumulative incidence of childhood autism: a

total population study of better accuracy and precision.Developmental Medicine &

Child Neurology, 47,10–18.

稲田俊也: YMRSを使いこなす.じほう,2012.

井上貴雄, 傳田健三, 中野育子 他(2012):高機能青年期広汎性発達障害者に対する支援

と効果.作業療法,31,109-116

井上猛,田中輝明,鈴木克治 他(2007):治療困難な病態-双極性うつ病-.こころの科

学,131,72-76.

河村雄一, 高橋脩, 石井卓(2009): 広汎性発達障害の累積発症率-豊田市での支援システ

ム確率後の再評価. 精神神経学雑誌, 111, 479-485.

Kessler, R. C. & Walters, E. E. (1998): Epidemiology of DSM-III-R major depression

and minor depression among adolescents and young adults in the national comorbidity

survey. Deppression and Anxiety , 7, 3-14.

Kessler,R.C.,Chiu,W.T.,Demler,O.et al(2005):Prevalence,severity,and comorbidity of

12-month DSM-Ⅳ disorders in the National Comorbidity Survey Replication.Archives

of General Psychiatry,62,617-627.

Kim, J.A., Szatmari, P., Bryson, S.E. et al. (2000): The prevalence of anxiety and

mood problems among children with autism and Asperger syndrome. Autism, 4,117–132.

厚生労働省:平成 23年度版自殺対策白書.

http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2011/pdf/pdf_honpen/p16-18.p

df

栗田広,長田洋和,小山智典 他(2004):自閉症スペクトル指数日本版(AQ-J)のアスペルガ

ー障害に対するカットオフ,臨床精神医学 33,209-214.

栗田広(2008): 診断を中心に: 広汎性発達障害評定システム(PDDAS). 精神神経学雑

誌,110, 962-967.

Leyfer, O. T., Folstein, S.E., Bacalman, S.et al.(2006):Comorbid psychiatric

disorders in children with autism: Interview development and rates of disorders.

Journal of Autism and Developmental Disorders,36,849–861.

Lewinsohn, P. M., Klein, D. N. & Seeley, J. R. (1995): Bipolar disorders in a

communitysample of older adolescents: Prevalence, phenomenology, comorbidity, and

course.Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry , 34,

454-463.

宮島真貴,井上貴雄,佐藤祐基 他(2012); 小・中・高校生の自閉傾向に関する実態調査

‐自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)を用いて-.最新精神医学,4,364-370.

Page 30: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

23

文部科学省ホームページ今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301i.html

Mattila, M.L., Hurtig, T., Haapsamo, H. et al.(2010):Comorbid Psychiatric Disorders

Associated with Asperger Syndrome/High-functioning Autism: A Communityand

Clinic-based Study. Journal of Autism and Developmental Disorders,40,1080–1093.

Moreno, C. Laje, G. Blanco, C. et al. (2007): National trends in the outpatient

diagnosisand treatment of bipolar disorder in youth. Archives of General Psychiatry ,

64,1032-1039.

日本青少年研究所(2011):高校生の心と体の健康に関する調査報告書.

大澤茉梨恵,井上貴雄,安井勇輔 他(印刷中):一般市民における抑うつ傾向.臨床精神医

学.

岡田倫代,鈴江毅,田村裕子(2009):高校生における抑うつ状態に関する調査-Birlson自

己記入式抑うつ評価尺度(DSRS-C)を用いて-.児童青年精神医学とその近接領

域,50,57-68.

Piven, J. & Palmer, P. (1999): Psychiatric disorder and the broad autism

phenotype:Evidence from a family study of multiple-incidence autism families.

American Journal of Psychiatry , 156, 557-563.

Rao U,Ryan ND, Birmaher B.et al(1995):Unipolar depression in adolescents:clinical

outcome in adulthood.Jounal of American Academy of Child and Adolescent

Psychiatry,34,566-578.

Rush AJ, Trivedi MH, Ibrahim HM.et al(2003):The 16-Item Quick Inventory of Depressive

Symptomatology (QIDS), clinician rating (QIDS-C), and self-report (QIDS-SR): a

psychometric evaluation in patients with chronic major depression. Biological

Psychiatry,54,573-583.

佐藤祐基,傳田健三,石川丹(2013):児童・青年期の大うつ病性障害の comorbidity に関す

る臨床的研究.児童青年精神医学とその近接領域,54,27-41.

Simonoff, E., Pickles, A., Charman, T. et al. (2008): Psychiatric disorders in

children with autism spectrum disorders: Prevalence, comorbidity, and associated

factors in a population-derived sample. Journal of the American Academy of Child

and Adolescent Psychiatry , 47, 921-929.

Smalley, S. L., McCracken, J. & Tanguay, P. (1995): Autism, affective disorders and

social phobia. American journal of medical Genetics, 60, 19-26.

染谷俊幸(1997):精神症状評価尺度の合理的な選択方法.こころの臨床アラカル

ト,16,375-378.

樽味伸(2005): 現代社会が生む“ディスチミア親和型”. 臨床精神医学, 34, 687-694.

牛島洋景, 宇佐美政英, 齊藤万比古(2011): 発達障害に伴ううつ病の治療, 臨床精神医

Page 31: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

24

学,40(4), 523-536.

Wakabayashi A, Baron-Cohen S Wheelwright S.et al(2006): The Autism-spectrum Quotient

(AQ) in Japan: A Cross-Cultural Comparison. Journal of Autism and Developmental

Disorders,36,263-270.

Young RC, Biggs JT, Ziegler VE.et al.(2000): Young Mania Rating Scale. Handbook of

Psychiatric Measures. American Psychiatric Association,540-542.

Page 32: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

25

図表

図 1 QIDS-Jの学年別平均得点の比較

*p<0.05 **p<0.01 Games Howell法

0

2

4

6

8

10

12

全体 小3 小5 中2 高2

Score

**

**

Page 33: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

26

図 2 QIDS-J各項目の平均得点(全体)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

寝付くのに30分以上かかることがある

夜はよく眠れる

早く目が覚めすぎることがある

眠りすぎることがある

悲しいと思う気持ちがある

食欲の低下がある

食欲の増進がある

体重の減少(最近2週間で)がある

体重の増加(最近2週間で)がある

集中したり、何かを決める

自分についての見方

死や自殺について考えることがある

興味のあることに変わりがある

自分の中のエネルギーの状態について…

動きが遅くなった気がする

落ち着かないことがある

score

Page 34: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

27

図 3 項目 12.自殺念慮あり群の学年別推移

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

全体 小3 小5 中2 高2

3点回答者

2点回答者

Page 35: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

28

図 4 千歳市民との比較(平均スコア)

0

2

4

6

8

10

12

一般市民

Score

児童・青年

Page 36: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

29

図 5 千歳市民との比較(抑うつ群の割合)

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

18.0%

20.0%

一般市民 児童・青年

Page 37: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

30

図 6 千歳市民との比較(自殺念慮)

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

3点回答者

2点回答者

一般市民 児童・青年

Page 38: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

31

図 7 千歳市民の QIDS-Jの項目別平均スコア

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

寝つき(1)

夜間の睡眠(2)

早く目が覚めすぎる(3)

眠りすぎる(4)

悲しい気持ち(5)

食欲低下(6)

食欲増進(7)

体重減少(8)

体重増加(9)

集中力/決断(10)

自分についての見方(11)

死や自殺についての考え方(12)

一般的な興味(13)

エネルギーのレベル(14)

動きが遅くなった気がする(15)

落ち着かない(16)

score

Page 39: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

32

図 8 MEDSCIの学年別平均の比較

*p<0.05 **p<0.01 Games Howell法

現在のスコアによる有意差のみ表示

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

現在 過去 現在 過去 現在 過去 現在 過去 現在 過去

score

全体 小3 小5 中2 高2

**

**

Page 40: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

33

図 9 MEDSCIの項目別平均得点

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

気分の高揚,楽観的

怒りっぽい

周囲の人と衝突

有能感の増大

睡眠時間が短縮

多弁で早口

アイデアが次々浮かぶ

注意散漫

企画や提案や苦情

迷わず決断して実行

身だしなみが派手

性に対する関心の高まり

行動の変化

score

Page 41: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

34

図 10 AQ-Jの学年別平均得点の比較

*p<0.05 **p<0.01 Games Howell法

0

5

10

15

20

25

30

全体 小3 小5 中2 高2

score

** **

Page 42: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

35

図 11 AQ-J各学年の平均値と下位尺度得点

3.5 3.6 3.5 3.3 3.5

3.7 3.4 3.3 3.7 4.0

4.7 4.1 4.5 5.1 4.8

4.7 4.0 4.1

4.7 5.2

3.9

3.4 3.7

4.0 4.2

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

全体 小3 小5 中2 高2

社会スキル

注意の切替

細部注意

コミュニケーショ

想像

Score

Page 43: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

36

図 12 AQ-J項目別平均スコア(上位 10項目)

0 0.2 0.4 0.6 0.8

相手の興味を引いて話せない

冷静に言いたいことを伝えられる

小さなものとに気付く

いつもと同じ方法を好む

人の誕生日を覚えることが得意

一つの事に熱中して周りが見えない

物語を考えることが苦手

新しい状況が苦手

一度に2つのことをすることが苦手

人の外見や状況の差異に気付けない

score

Page 44: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

37

図 13 QIDS-Jと MEDSCIの散布図

Page 45: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

38

図 14 QIDS-Jと AQ-Jの散布図

Page 46: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

39

表 1 児童・青年期における調査対象の内訳

学校種 対象校 対象者数

小学校 24 校 3年生 650 人

5年生 711 人

中学校 28 校 2年生 847 人

高等学校 28 校 2年生 1,527人

合計 80 校 3,735人

Page 47: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

40

表 2 一般市民における調査対象の内訳

人数 男性 女性

全体 4,258 1,590 2,668

20歳代 64 7 57

30歳代 304 17 287

40歳代 675 163 512

50歳代 621 192 429

60歳代 1,473 600 873

70歳代 1,026 542 484

80歳代 95 69 26

Page 48: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

41

表 3 うつ症状評価尺度(QIDS-J)の平均得点と抑うつ症状程度別の割合

学年 平均得点 正常 軽度 中等度 重度 極めて重度

全体 5.2±4.3 59.5% 28.3% 9.9% 2.2% 0.3%

小 3 3.1±3.2 81.0% 15.3% 3.1% 0.6% 0%

小 5 3.6±3.2 76.5% 19.8% 3.8% 0.1% 0%

中 2 5.5±4.3 57.2% 29.4% 11.2% 1.5% 0.6%

高 2 6.8±4.4 43.4% 37.2% 14.9% 4.2% 0.3%

※今回の研究では中等度以上を抑うつ群とした

Page 49: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

42

表 4 各スコアの一元配置分散分析の結果

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

QIDS全体

グループ間 8694.1 3 2898.0 181.871 .000

グループ内 59117.3 3710 15.9

合計 67811.4 3713

MED全体

グループ間 1953.4 3 651.1 39.751 .000

グループ内 61115.3 3731 16.4

合計 63068.7 3734

AQ全体

グループ間 6106.5 3 2035.5 56.981 .000

グループ内 129637.5 3629 35.7

合計 135744.1 3632

Page 50: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

43

表 5 多重比較における等分散性の検定結果

Levene 統計量 自由度1 自由度2 有意確率

QIDS全体 48.681 3 3710 .000

MED全体 19.012 3 3731 .000

AQ全体 4.167 3 3629 .004

Page 51: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

44

表 6 多重比較における Welchの検定

統計a 自由度1 自由度2 有意確率

QIDS全体 Welch 206.436 3 1819.9 .000

MED全体 Welch 51.559 3 1786.6 .000

AQ全体 Welch 55.241 3 1649.2 .000

Page 52: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

45

表 7 各スコアの多重比較の結果

平均値の

標準誤差 有意確率 95% 信頼区間

下限 上限

QIDS-J 小 3 VS 小 5 -0.5* 0.17 0.02 -0.96 -0.06

中 2 -2.5** 0.19 0.00 -2.97 -1.98

高 2 -3.7** 0.17 0.00 -4.15 -3.28

小 5 VS 中 2 -2.0** 0.19 0.00 -2.46 -1.48

高 2 -3.2** 0.17 0.00 -3.64 -2.78

中 2 VS 高 2 -1.2** 0.19 0.00 -1.72 -0.76

MEDSCI

(現在)

小 3 VS 小 5 -1.2** 0.19 0.00 -1.71 -0.71

中 2 -2.1** 0.19 0.00 -2.59 -1.60

高 2 -1.8** 0.17 0.00 -2.24 -1.37

小 5 VS 中 2 -0.9** 0.21 0.00 -1.42 -0.35

高 2 -0.6* 0.18 0.01 -1.07 -0.13

中 2 VS 高 2 0.3 0.18 0.39 -0.18 0.76

MEDSCI

(過去)

小 3 VS 小 5 -1.0** 0.19 0.00 -1.47 -0.47

中 2 -2.3** 0.20 0.00 -2.84 -1.81

高 2 -2.6** 0.18 0.00 -3.10 -2.17

小 5 VS 中 2 -1.4** 0.21 0.00 -1.89 -0.82

高 2 -1.7** 0.19 0.00 -2.15 -1.18

中 2 VS 高 2 0.3 0.20 0.38 -0.82 0.19

AQ-J 小 3 VS 小 5 -0.5 0.34 0.41 -1.42 0.35

中 2 -2.3** 0.33 0.00 -3.11 -1.41

高 2 -3.2** 0.30 0.00 -3.95 -2.41

小 5 VS 中 2 -1.7** 0.31 0.00 -2.52 -0.94

高 2 -2.6** 0.27 0.00 -3.35 -1.95

中 2 VS 高 2 -0.9** 0.26 0.00 -1.58 -0.26

*p<0.05 **p<0.01

Page 53: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

46

表 8 MEDSIの平均得点と標準偏差,およびカットオフ値以上の割合

学年 全体 小 3 小 5 中 2 高 2

現在平均 4.3±4.1 2.9±3.3 4.1±3.9 4.9±4.2 4.8±4.3

MEDSCI現在≧12 6.5% 2.7% 4.9% 7.4% 8.3%

過去平均 4.5±4.3 2.7±3.2 3.7±3.7 5.0±4.4 5.3±4.6

MEDSCI過去≧12 8.5% 2.6% 4.2% 8.9% 13.2%

Page 54: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

47

表 9 自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)の平均得点とカットオフ値以上者の割合

学年 平均得点±SD AQ-J≧30(%) AQ-J≧33(%)

全体 20.4±6.1 210(5.7) 66(1.8)

小 3 18.5±6.5 19(3.0) 8(1.2)

小 5 19.0±6.0 22(3.1) 6(0.9)

中 2 20.7±6.0 55(6.6) 17(2.0)

高 2 21.7±5.7 114(7.5) 35(2.3)

Page 55: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

48

表 10 AQ-J下位尺度別の多重比較の結果

平均値の

差 標準誤差 有意確率

95% 信頼区間

下限 上限

AQ-J 小 3 VS 小 5 -0.2 0.12 0.17 -0.55 0.06

社会スキル 中 2 -0.6** 0.12 0.00 -0.93 -0.32

高 2 -0.8** 0.11 0.00 -1.04 -0.49

小 5 VS 中 2 -0.4* 0.12 0.01 -0.68 -0.08

高 2 -0.5** 0.10 0.00 -0.79 -0.26

中 2 VS 高 2 -0.1 0.10 0.52 -0.41 0.12

AQ-J 小 3 VS 小 5 -0.1 0.10 0.96 -0.31 0.21

注意の切替 中 2 -0.7** 0.10 0.00 -0.90 -0.41

高 2 -1.2** 0.08 0.00 -1.39 -0.95

小 5 VS 中 2 -0.6** 0.09 0.00 -0.85 -0.37

高 2 -1.1** 0.08 0.00 -1.33 -0.91

中 2 VS 高 2 -0.5** 0.08 0.00 -0.71 -0.31

AQ-J 小 3 VS 小 5 -0.4** 0.11 0.00 -0.74 -0.16

細部注意 中 2 -1.0** 0.11 0.00 -1.25 -0.71

高 2 -0.7** 0.10 0.00 -0.92 -0.42

小 5 VS 中 2 -0.5** 0.10 0.00 -0.80 -0.27

高 2 -0.2 0.10 0.09 -0.47 0.02

中 2 VS 高 2 0.3** 0.09 0.00 0.09 0.53

AQ-J 小 3 VS 小 5 0.1 0.12 0.65 -0.16 0.43

コミュニケー

ション

中 2 -0.4* 0.11 0.03 -0.54 0.04

高 2 -0.6** 0.10 0.00 -0.87 -0.36

小 5 VS 中 2 -0.4** 0.11 0.00 -0.67 -0.10

高 2 -0.8** 0.10 0.00 -1.00 -0.51

中 2 VS 高 2 -0.4** 0.09 0.00 -0.60 -0.13

AQ-J 小 3 VS 小 5 0.1 0.10 0.68 -0.15 0.37

想像 中 2 0.3* 0.10 0.04 0.01 0.50

高 2 0.1 0.09 0.92 -0.17 0.28

小 5 VS 中 2 0.1 0.09 0.36 -0.08 0.38

高 2 -0.1 0.08 0.9 -0.26 0.15

中 2 VS 高 2 -0.2* 0.07 0.03 -0.39 -0.01

*p<0.05 **p<0.01

Page 56: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

49

表 11 ライフスタイルの学年別平均時間と朝食摂取率

学年 睡眠 外遊び テレビ ゲーム 朝食(割合)

全体 7.8±1.5 2.6±2.4 2.9±2.0 1.1±1.6 87.8%

小 3 9.3±0.7 4.3±2.1 2.6±1.6 0.8±0.9 96.7%

小 5 8.9±0.8 4.0±2.5 2.9±1.7 1.2±1.6 95.7%

中 2 7.7±1.2 1.8±1.9 3.2±2.0 1.2±1.7 90.3%

高 2 6.8±1.3 1.7±1.9 3.0±2.2 1.1±1.8 78.8%

Page 57: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

50

表 12 生活スタイルの多重比較の結果

平均値の

差 標準誤差 有意確率

95% 信頼区間

下限 上限

睡眠時間 小 3 VS 小 5 0.4** 0.04 0.00 0.28 0.48

中 2 1.6** 0.05 0.00 1.46 1.70

高 2 2.5** 0.04 0.00 2.38 2.60

小 5 VS 中 2 1.2** 0.05 0.00 1.08 1.33

高 2 2.1** 0.04 0.00 2.00 2.23

中 2 VS 高 2 0.9** 0.05 0.00 0.78 1.04

外遊び時間 小 3 VS 小 5 0.3* 0.13 0.04 0.01 0.65

中 2 2.5** 0.11 0.00 2.21 2.76

高 2 2.6** 0.10 0.00 2.35 2.84

小 5 VS 中 2 2.2** 0.11 0.00 1.86 2.45

高 2 2.3** 0.11 0.00 1.99 2.54

中 2 VS 高 2 0.1 0.08 0.55 -0.10 0.32

TV時間 小 3 VS 小 5 -0.2* 0.09 0.03 -0.48 -0.02

中 2 -0.6** 0.10 0.00 -0.80 -0.31

高 2 -0.3** 0.09 0.00 -0.56 -0.12

小 5 VS 中 2 -0.3* 0.09 0.01 -0.55 -0.06

高 2 -0.1 0.09 0.73 -0.31 0.13

中 2 VS 高 2 0.2 0.09 0.09 -0.02 0.45

ゲーム時間 小 3 VS 小 5 -0.3** 0.07 0.00 -0.51 -0.15

中 2 -0.4** 0.07 0.00 -0.56 -0.20

高 2 -0.2** 0.06 0.00 -0.39 -0.08

小 5 VS 中 2 0.0 0.08 0.95 -0.26 0.17

高 2 0.1 0.07 0.57 -0.10 0.29

中 2 VS 高 2 0.1 0.08 0.24 -0.05 0.34

朝食摂取習慣 小 3 VS 小 5 -6.8 7.01 0.77 0.00 0.00

中 2 -48.0** 9.88 0.00 0.00 0.00

高 2 -191.6** 18.35 0.00 0.00 0.00

小 5 VS 中 2 -42.1** 10.24 0.00 0.00 0.00

高 2 -185.8** 18.29 0.00 0.00 0.00

中 2 VS 高 2 -134.2** 18.90 0.00 0.00 0.00

*p<0.05 **p<0.01

Page 58: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

51

表 13 抑うつ症状、躁症状、自閉傾向の相関関係

全体 小 3 小 5 中 2 高 2

QIDS-J 0.40** 0.41** 0.41** 0.43** 0.29**

MEDSCI(現在)

MEDSCI(現在) 0.13** 0.20** 0.18** 0.08* 0.37

AQ-J

AQ-J 0.36** 0.32** 0.36** 0.32** 0.29**

QIDS-J

*p<0.05 **p<0.01

※値は相関係数を示す

Page 59: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

52

表 14 重回帰式

重回帰式 調整済み

決定係数

Durbin

-Watson 比 p値

QIDS-J = (-0.93) × sleep_time + (-0.16) × play +(+0.06) ×

tv + (+0.06) × game + (-1.58) × morning + 14.12 0.16 1.98 p<0.001

MEDSCI= (-0.46) × sleep_time + (+0.10) × play

+(-0.07) × tv + (+0.13) × game + (-0.84) × morning + 8.11 0.06 1.90 p<0.001

AQ-J = (-0.36) × sleep_time + (-0.36) × play

+(+0.11) ×tv + (0.56) × game + (-0.84)× morning + 23.97 0.06 1.93 p<0.001

play:外遊び時間 tv:tv観賞時間

game:ゲーム遊び時間 morning:朝食摂取の有無

Page 60: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

53

資料

資料 1 日本語版自己記入式・簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)

Page 61: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

54

Page 62: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

55

資料 2 躁病エピソード診断スクリーニング質問表(MEDSCI)

Manic Episode Diagnostic Screening Inventory (MEDSCI)

躁病エピソード診断スクリーニング質問票

実施日:

評価者氏名:

対象者氏名:

評価者との関係:

本人・親族( )・その他( )

質 問 最近1~2週間について 過去にそのような

ことがあったか

Q1

普段と比べて,とても気分が高まってい

ると感じたり,楽観的で自信に満ちあふ

れていると感じたことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q2

周囲の人に大声で怒鳴るなど,普段より

も怒りっぽいと感じたことがありました

か?あるいは周囲の人からそのように言

われたことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q3

周囲の人に多くの要求をしたり,大声で

怒鳴ったり,物を投げたりして,周囲の人

と衝突するようなことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q4

普段と比べて物事がテキパキとできて,

自分が有能だとか偉大だと感じたり,普

段よりも頭が冴えていていると感じたこと

がありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q5

普段と比べて睡眠時間が短くなったと感

じたり,睡眠をとらなくても苦にならないと

感じたことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q6

多くの人に電話をかけるなどして,口数

が多くなったり,早口になったと感じるこ

とがありましたか?あるいは周囲の人か

らそのように言われたことがありました

か?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Page 63: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

56

Q7

普段なら思いつかないようなアイデアや

考えが,次から次へと浮かんでくるような

ことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q8

この1週間,普段ならどうでもいいと思え

るようなちょっとしたことにも気持ちがそ

れて,注意を集中することができないよう

なことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q9

職場や社会に対して,普段ならしないよ

うな企画や提案をしたり,苦情を言ったり

して,それらが実現できるように活動する

ようなことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q10

普段ならうまくいくかどうかで実行に迷う

ような計画や企画に,迷わず決断して実

行に移すようなことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q11

普段と比べて,身なりや身だしなみが派

手になっていると思いましたか?あるい

は周囲の人から「普段とは身なりが違っ

ている」と言われたことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q12 普段と比べて性に対する関心が特に高

まっていたと思うことがありましたか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Q13 行動や周囲の人への接し方に,普段と

は異なる変化があると思いますか?

2.そう思う

1.多少そのような傾向がある

0.そうは思わない

2.そのようなことがあった

1.多少そのような傾向があった

0.そのようなことはなかった

Page 64: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

57

資料3 自閉症スぺクトラム指数日本語版(AQ-J)

Page 65: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

58

Page 66: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

59

Page 67: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

60

Page 68: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

61

業績

1. 学術論文

1) 井上貴雄,佐藤祐基,宮島真紀,傳田健三(2013):小・中・高校生の抑うつ症状,躁症

状,および自閉傾向.児童青年精神医学とその近接領域,54,571-587.

2) 井上貴雄, 傳田健三, 中野育子, 築島健 (2012):高機能青年期広汎性発達障害者に対

する支援と効果.作業療法,31,109-116.

3) 大澤茉莉恵,井上貴雄,安井勇輔,傳田健三(2013):一般市民における抑うつ傾向.臨

床精神医学,印刷中.

4) 傳田健三, 大澤茉梨恵, 大宮秀淑, 井上貴雄, 佐藤祐基(2012): 児童期の抑うつ-臨

床的特徴と治療ガイドライン. 精神科治療学, 27, 283-288.

5) 宮島真貴, 井上貴雄, 佐藤祐基, 久住一郎, 傳田健三(2012): 小・中・高校生の自閉傾

向に関する実態調査-自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)を用いて. 最新精神医学,

17, 364-370.

6) 傳田健三, 佐藤祐基, 井上貴雄, 宮島真貴(2011): 広汎性発達障害と気分障害. 児童

青年精神医学とその近接領域, 52, 143-150.

2.学会発表

1) 井上貴雄,佐藤祐基, 傳田健三(2013):小・中・高校生の抑うつ症状,躁症状,および

自閉傾向.日本児童青年精神医学会第 54回大会,札幌市.

2) 大澤茉莉恵,井上貴雄,安井勇輔,傳田健三(2013):自殺予防対策としてのうつスクリ

ーニング事業から.第 29回日本精神衛生学会大会,仙台市.

3) 井上貴雄, 加藤ちえ, 宮島真貴, 豊巻敦人, 橋本直樹(2013):統合失調症患者に対する

認知矯正療法の効果. 日本作業療法学会第 47回,大阪市.

4) 加藤ちえ,井上貴雄, 宮島真貴, 豊巻敦人, 橋本直樹(2013):認知リハビリテーション

をきっかけに福祉的就労につながった一症例.日本作業療法学会第 47回,大阪市.

5) 國田幸治,加藤ちえ,井上貴雄,武井早紀,橋本直樹(2013):個別対応が必要となった

躁うつ病・身体表現性疼痛性障害合併の一症例.第 44回北海道作業療法学会,札幌市.

6) Takao Inoue, Yuki Sato, Maki Miyajima, Kenzo Denda(2012): Depressive and manic

symptoms and autistic tendencies in childhood and adolescence. The 20th World IACAPAP

Congress, Paris, France.

7) Kenzo Denda, Yuki Sato, Maki Miyajima, Takao Inoue(2012): Clinical Features and

Comorbidities of Children and Adolescents with Bipolar Disorders in Japan. The 20th

World IACAPAP Congress, Paris, France.

8) 井上貴雄, 橋本直樹, 豊巻敦人, 加藤ちえ, 岸展江ら:統合失調症患者に対する認知リ

ハビリテーション(ブレインステーション)についての報告.北海道精神神経学会第 121 回

Page 69: 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾 …...Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 学位論文 児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究

62

例会,旭川市.

9) 井上貴雄, 佐藤祐基, 傳田健三(2012): 小・中・高校生における抑うつ症状,躁症状お

よび自閉傾向. 日本心身医学会北海道支部第 37 回例会, 札幌市.

10) Kenzo Denda, Yuki Sato, Takao Inoue(2011): Phenomenology of Children and

Adolescents with Bipolar Disorders in Japan. 14th International Congress of ESCAP

Europian Society for Child and Adolescent Psychiatry, Helsinki, Finland.