産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会) 第9回€¦ ·...

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日本における FinTech発展のための条件 ©2016 Masakazu Masujima all rights reserved February 8 th , 2016 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 金融革新同友会Finovators代表 [email protected] 産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会) 9参考2

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日本における

FinTech発展のための条件

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February 8th, 2016 増 島 雅 和

森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士

金融革新同友会Finovators代表

[email protected]

産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会) 第9回

参考2

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X-Tech の種明かし

1.FinTechの本質

「FinTechという用語自身は、投資促進のためのマーケティング用語」

シリコンバレー流イノベーション創出術

キーワード主義

エコシステムを意識し、なるべく広がりを持つコンセプトを設定 .com経済、Web2.0, CleanTech,クラウド、IoT、シェアリングエコノミー、AI etc.

セクター全体に投資が集まるよう仕掛けることでビリオンダラー企業の創出確率を高める

VCによるマーケティングとスタートアップによるエグゼキューションの組み合わせ

スタートアップの価値創出機会をタネとして関連事業者を巻き込み(オープンイノベー ション)

「該当業界の順列を流動化させる可能性」を梃子として既存事業者との高度なゲームを プレイ(業界構造の利用)

手法としては既存の競争のルールを変更(競争の場をずらす)

⇒ 破壊的イノベーションというスタートアップコミュニティが設定した土俵に強制的に上らされた既存企業がとるべき方策とは?

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1.FinTechの本質

FinTechのアプローチ(商品組成)

金融業は、リスク情報を扱う産業 貸出(信用リスク)、決済(カウンターパーティーリスク)、保険(事業リスク)etc.

「リスク情報」とは将来の事象に対する発生確率の揺れに関する情報 金融商品は、リスク情報を用いて組成したコンテンツと見ることができる

統計技術・金融工学・保険技術 コンテンツ化

FinTechビジネスの構造

事業者・取引・事故等の発生に関するデータ

リスク情報

金融商品

モバイル端末(センサ・通信技術) クラウドコンピューティング

機械化・自動化

商品組成レイヤー

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1.FinTechの本質

FinTechのアプローチ(販売)

FinTechからみると、金融商品の販売はマッチング作業

FinTechビジネスの構造

ウェブマーケティング技術 モバイル端末 (ブロックチェーン技術)

商品販売レイヤー

金融商品 金融商品 金融商品

顧客 顧客 顧客

大量のリソース(システム、人材、店舗)を用いて行っていた既存の金融サービスを、「情報非対称性をマネタイズするデータ・コンテンツ産業」と再定義

データ連携とITの力により、プロダクトを解析データ生成技術、チャネルをマッチング技術と見立てて、事業を再構築

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1.FinTechの本質

人工知能(AI)とFinTechの関係

人工知能はFinTechにおけるデータの解析フェーズを高度化・自動化するもの ⇒人工知能を実装しなくてもFinTechのコンセプトは実現できるが、適切な実装が可能であれ

ば、事業が大きくスケールする 現在の人工知能は得手・不得手があり、すべてが人工知能で代替できるわけではない ⇒パターン認識は人工知能(NN)の得意技、金融のデータ解析には応用が効きやすい 例) 投資(過去の値動きを特徴量として捉えて将来の値動きを予測)、保険不正検知、保険事故予測

FinTechと人工知能(AI)・ブロックチェーンとの関係

ブロックチェーン/分散型台帳とFinTechの関係

ブロックチェーンはダウンしないシステムを安価に構築・運用できる点で、システムを止めてはならない金融機関のシステムコストを劇的に低下させる可能性

分散型台帳として金融機関間決済システムに利用するためには、プライバシー、パフォーマンス、スケーラビリティを含む多くの問題の解決が必要

スマートコントラクトを金融取引に応用し、仲介者・認証者を要しない自動締結・自動執行を実現するためには、消費者保護上の諸問題(複雑な契約内容の理解、自己強化フィードバックループ等)を解決する必要

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並行して進む革新との関係

2.経済の血液としての金融

分散型コミュニケーションネットワーク:インターネット・モバイルにより実現するコミュニケーション技術の革新

分散型輸送ネットワーク :IoTにより実現するモノ・施設の状況のリアルタイムな情報共有+移動手段の自動化 = モノ・施設のシェアリング(情報化)

分散型エネルギーネットワーク: 自然エネルギーとスマートグリッドにより実現するエネルギー需給状況のリアルタイムな情報共有 = エネルギーのシェアリング

各ネットワークのスマート化を支える技術: Artificial Intelligence

各ネットワークで生じる取引を支える技術: Blockchain Technology

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実体経済の「取引」の後ろには常に金融取引が存在

2.経済の血液としての金融

Distributed Communication Network

- www - mobile device/sensor - social network - contents distribution

Distributed Logistics/Transportation

Network - Internet of things - automated mobility - robotics - 3D printer - factory/logistics sharing

Distributed Energy Network and Alternative Human Resources

- smart grid - clean energy (solar, wind

and geothermal heat) - robotics with artificial

intelligence

Zero Transaction Cost, Distributed Payment Network - block chain - aggregated accounts

- superefficient trade finance platform

- superefficient capital markets

- superefficient lending platform

FinTech

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3.日本のFinTech発展のために

各国のアプローチ

米国:Fed Payment Improvement

Faster payment task force, Secure payment task force

特定の業界ではなくstakeholdersとの協業により決済システムの改善を実現

英国: FCA Project Innovate 既存の事業モデルに対する挑戦を支援することで競争促進し、消費者体験の改善を

実現

Regulatory sandboxアプローチ 日本: 金融審議会(決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ) ノンバンクプレイヤーによる海外の革新的取組みが先行するなかで、銀行にオープン

イノベーションを通じた業務革新を迫る

FinTechサポートデスク

高品質の金融インフラを更新しつつ世界へ

欧米に比べて高い国民の銀行に対する信頼と、金融業界と当局との密なコミュニケーションが実現している現状を踏まえ、スタートアップとのコラボレーションを通じて、質の高い金融インフラを更新しつつ、アジアをはじめとする世界へ進出する

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3.日本のFinTech発展のために

規制が想定していないサービスを迅速に展開するための枠組みの欠如(Regulatory Sandbox)

ノーアクションレター、グレーゾーン解消制度の限界(迅速性、法令解釈の明確化を求めているわけではない)

「規制が想定していない分野における規制のあり方」はやってみないとわからない

事前のリスク評価のもと、リスクが限定された環境(sandbox)の下で実務投入し、得られた知見をもとに本格投入に向けた環境改善のうえでサービスの全面展開を実現

枠組みを創ることで、プレイヤーに予見可能性を与えてイノベーションを推進しやすい環境を提示するとともに、制度が不明確な中で無計画にサービス投入されることを防止することで、社会へのネガティブインパクトを軽減

制度上の課題(主なもの)

金融機関によるスタートアップとのコラボレーションに当たってのリスク管理枠組みが不明確

共通の目的実現のため、各自が得意分野のリソースを拠出し、相互に役割分担する「協業」

アウトソーシングを想定した外部委託先管理の枠組みを適用すると協業が進まない

「中間的業者」の規律のあり方を含め、早急な検討が必要

新しい技術を金融機関が迅速に導入するためのセキュリティ上の基準

金融機関のセキュリティ基準であるFISC安全対策基準が新技術や新しく発生する課題を反映するまでのタイムラグが大きすぎ、実務投入が欧米に比べて数年遅れてしまう

基準がない新技術の導入を検討するための枠組みが提示される必要

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3.日本のFinTech発展のために

グローバル金融規制への目配りと戦略

金融は容易に国境を超えるため、FinTechの議論は国内のみを見た制度や法規制の議論では不十分

英米をはじめとする国際金融を主導する国々は、自国企業がグローバルに有利に戦えるよう制度や法規制をデザインし、国際監督者機構(BCBS、IAIS、IOSCO等)のスタンダードセッティングを通じて、これを他国に導入させる戦略を採用

⇒これを実現するために必要な枠組みや人的リソースへの投資が可能な機構を備えている

国としてFinTechの戦略を考えるに当たっては、こうした主要国家のグローバルな金融規制戦略を踏まえて、我が国の立ち位置を戦略的に検討することが必要

グローバルな議論を主導していくために

我が国の国力・リソースの観点からの検討 我が国の金融人材やレギュレーターは、個々の純粋な能力では決して英米の人材に劣るものではない

が、人材の層や多様性、またその物量において、英米と張り合うだけのリソースはない

特に言語の問題等により対外的な発信力の差は埋めがたいものがある

これらの現実を踏まえ、FinTechの荒波に我が国が着実に果実を得るためには、有力国と戦略的に歩調を合わせて国際的な議論を主導していく必要

※たとえばブロックチェーンをめぐる議論では、小国故の機動的な実装を進めるエストニア等に対し、これが難しい英国は、技術、金融、法制度などの人材を投じ、横断的な見地から検討をすすめ、ブロックチェーンに関するグローバルな議論をリードする意欲を見せている。

発信力強化のため、他省庁、民間、非営利団体との連携を強化し、外国政府機関、非営利団体とのオープンなコラボレーションを促進する必要

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3. 日本のFinTech発展のために

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FinTechは、事業、資金力、国内規制、国際規制等にわたる総合的な国力を賭けた国家間競争の側面を持つ

日本はプレイヤーの種類がようやく揃った状況

FinTechエコシステムを自己強化する仕組みの創設が急務

既存金融機関 FinTech企業 ITベンダー

協業 VC

投資

FinTech協会 既存業界団体

FSA METI/MIC

支援+監督

フィンテック推進議連

エンドースメント

FINOVATORS FINOLAB

インキュベーション (施設・メンタリング・PR)

政策提言 海外連携 海外団体

Innovate Finance, New Finance等

国際監督機関 BCBS,IAIS,IOSCO,IMF等

財務省/日銀

FISC

連携

連携

イニシアチブ

イノベーションは試行錯誤によってのみ実現するものであるため、①FinTech企業数×②挑戦数で勝負が決まる

「起業家のFinTechマーケット参入数の増加策」と「挑戦可能な規制枠組みの設定」がクリティカルに重要

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4.質疑応答

[email protected]

tel. 03.5220.1812

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増島 雅和

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