環境経済学入門 - 国立大学法人 岡山大学...4-1...
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環境経済学入門第4章 経済効率性と市場
48428039 吉松ひかる
2016.04.28
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本章の目的
4-1経済効率性4-2効率性と衡平4-3市場4-4市場と社会的効率性4-5外部費用
4-6外部便益
4-7要約
4-5-1利用開放資源
4-6-1公共財
発表の流れ
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目的1 経済効率性の考え方の導入
市場経済が自力で社会的に効率的な帰結をもたらせるかの問題を取り上げる
利潤以外に社会的価値(環境への影響)を考慮経済効率性と経済的衡平との関係
効率性の概念を「産出量」に対して適用
どれだけの産出量が望ましいのか
現実にはどれだけの産出量が産出されているのか
効率性の考え方
市場がどう機能するか
本章の目的
目的2
4-1 経済効率性
qe:効率的な産出量
Pe
産出量
価格
MWTP(集計的限界支払意思額曲線) MC
(集計的限界生産費用曲線)
・消費者の支払意思額で示される財の限界価値・限界費用で示される社会にとっての生産費用4
生産されるものの価値 生産のために犠牲になるものの価値
限界支払意志額 限界生産費用
バランス
純価値=総支払意志額-総費用
(a+b= a+b+c -c)
効率的な産出量 qe
a
b c
4-2 効率性と衡平
4-3 市場
市場経済:売り手と買い手が自由に財の算出を決定するシステム
財の産出量決定を完全に市場に委ねた場合、効率的な産出量の水準に落ち着くのか否か
問題5
効率性と衡平のどちらを重視するべきか→論争が続いている
効率性
1人に対する100ドルの価値 = 100人に対する1ドルの価値
⇒個人間の区別をしない
富の分布が衡平でない場合効率的な結果が必ずしも衡平であるとは限らない
衡平(equity)社会の富の分布と緊密な関係
4-3 市場売手
出来るだけ高い価格で売りたい
買手出来るだけ安い価格で
買いたい
対抗する目的のバランスをとる → 価格調整
qm:均衡数量
Pm
数量
価格
需要曲線(買おうとする数量) 供給曲線
(供給する財の数量)
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4-4 市場と社会的効率性
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社会的に効率的な産出量:qe
競争的市場で実現するであろう産出量:qm一致するだろうか?
「環境的価値」が関与するような時市場の価値づけと社会的な価値が大きく食い違う恐れがある
市場の失敗
供給サイド 「外部費用」需要サイド 「外部便益」
が問題
・市場機能にとって代わる・公的介入 の必要性
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外部費用ある企業(人)の行為が他の企業(人)に対して間接的にもたらす費用
製紙工場
廃水
原材料、労働力エネルギー
魚の減少河川景観の損失新たな水質処理
外部費用
4-5 外部費用私的費用
何をどれだけ生産するかを決定する場合に考慮する費用支払労働、原材料、機械など
私的費用
産出量が社会的に効率的:社会的費用=私的費用+外部費用
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紙の産出量と下流での外部費用の関係
紙の産出量
価格
限界外部費用
社会的に最も効率的な均衡点
市場の働きのみでもたらされる均衡点
紙の産出量とともに外部費用も上昇
紙の産出量q* qm
pmp*
価格
私的限界費用
社会的限界費用=私的限界費用+外部限界費用紙への需要
外部費用が存在するとき…
4-5 外部費用
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石炭火力発電所がニューヨークに位置すると想定した場合の推計外部費用
4-5 外部費用
98%
環境破壊は多くの場合何らかの外部費用と関係している
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■ほとんどの環境外部性関係者(汚染者)と被害者との間の物理的な関係によって表わされる
(例)上流のパルプ工場と下流の河川水を利用する企業SO2を排出する発電所と風下の複数の住民社会
■その他の環境外部性関係者(汚染者)と被害者との間の物理的な関係性や近接性を持たない
(例)思慮に欠いた土地開発による景観の破壊珍種の動物の被害を他国の人が損失ととらえる
4-5 外部費用
外部的な被害を申し立てる上での制限とは?
被害に対処するための支払意志の有無がある行動が誰かに影響を与えているかの指標となる
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外部費用の原因の1つ誰でも無制限に利用することを妨げられないような資源のこと(例)海洋漁業、伐採自由な森林など
利用開放資源
<高速道路の例>・A地点からB地点へ移動・平均所要時間は交通量によって異なる・他に18分で到達できる道路がある
交通量と所要時間の関係
Q:すでに5台の交通量が存在するなら高速道路を利用すべきか?
個人 18-14=4分の短縮
⇒全体でみた場合の損失が個人の短縮分よりも大きい社会的に効率的でない
実際の利用度は社会的に効率的な水準を上回ってしまう
外部費用が存在するとき、市場の働きのみでは社会的な効率性は生まれない
4-5-1 利用開放資源
全体 (14-12)×5人=10分の損失
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外部便益外部性を持った財や資源の消費を決定する当人以外の誰かへもたらされる便益
農作物の供給
・小動物の生息地をもたらす・景観の向上
などの便益外部便益
農家にとっての農業価値が土地を耕地として持つことに対する社会的支払意志額を下回る
農家社会全体
4-6 外部便益
内部的
農家の損益勘定には現われない
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公共財とは・誰か一人に利用可能となれば他者にも利用可能となるような財・大規模な外部便益を伴う(例)灯台、電波など
環境質も本質的に公共財である
共同体全体の便益となる
4-6-1 公共財
例:都市部の大気
大気浄化
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汚染 5ppm
A
B C
例:湖水質汚染
・5ppmの工場の汚染物質が残留・A、B、C、は水質向上のために支払意志がある・それぞれの支払意志額は表のとおりである
4-6-1 公共財
Q:社会的に効率的な水質レベルとは?
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D
MCMC:限界水質浄化処理費用
水質の向上に伴い高くなる
D :集計的限界支払意志額A、B、Cの限界支払意志額の和
価格
水質レベル
MC=D ⇒2ppmが社会的に効率的な水質レベルである
Q:市場機構に頼ってこの水質レベルへ至るか?
4-6-1 公共財
公共財の場合:集計的需要曲線
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A
B C
企業
浄化サービスの売り込み
誰がどれだけ払ったかによらず浄化は全員に同等な便益
⇒他の誰かに期待
真の支払意志額よりも少ない支払
公共財はフリーライドを誘発する ⇒他者の努力にただ乗り
企業 費用回収が困難、収入減少
⇒財やサービスを過少供給
4-6-1 公共財
フリーライダー:財に対して自分の受ける便益を下回る額しか支払わない者
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「財」の効率的な供給は市場機構に頼れない
■何らかの共同的行動(話し合い等)を含む非市場的機構に頼る
■構成員多数の場合:徴税権を持つ政府の直接介入
必ずしも市場機構を捨て切らず公的な監視をたてる
4-6-1 公共財環境の質的改善の本質:公共財
⇒効率的な環境質衡平に分配
されることが望ましい
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市場 買手と売手が財やサービスの価格や数量について渡り合う場
⇒多くは社会的に効率的な結果となる
そうならない時 市場の失敗
外部費用 外部便益・供給サイドの問題・利用開放資源
・需要サイドの問題・公共財
外部費用、外部便益、公共財、利用開放資源などに直面するとき、環境質の効率的な供給を市場だけに頼ることは出来ない
公的環境政策が要請される
4-7 要約
主目的 私的市場の機能を論じ、環境質が問題となる状況に市場モデルを適用すること
⇒それぞれが満足する価格、数量が決まる
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ご清聴ありがとうございました