CEReS - cr.chiba-u.jp · 2018年12月. 発行:環境リモートセンシング研究センター...

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CEReS Newsletter No. 157 Center for Environmental Remote Sensing, Chiba University, Japan 千葉大学環境リモートセンシング研究 センター ニュースレター 2018 12 発行:環境リモートセンシング研究センター (本号の編集担当:近藤昭彦) 住所:〒263-8522 千葉市稲毛区弥生町 1-33 Tel: 043-290-3832 Fax: 043-290-3857 URL: http://www.cr.chiba-u.jp/ ■■ エコプロ 2018 出展報告 ■■ ジョイコン使って、地球を回す?! 本センター市井研究室では、小菅生技術補佐員を中心として、衛星データなどを半球に投影し、地球 の画像を Nintendo Switch Joy-Con (以下ジョイコン)で回転させるシステムを試作し、2018 12 6 日~8 日に東京ビッグサイトで開催された「エコプロ 2018」(http://eco-pro.com/2018/)における日 本リモートセンシング学会のブースで展示しました。 本システムは、京都大学大学院理学研究科の地球惑星科学輻合部可視化グループ(リーダー:齊藤昭 則准教授)で作成された Dagik Earth(https://www.dagik.net/)というソフトウェアを利用しました。地 球・惑星などの様々なデータセットを投影することができるこのソフトウェアを利用し、発泡スチロー ルの半球に投影することで、地球を立体的に、且つマウス操作で回転させながら見ることができます。 当研究室では、マウス制御の代わりに、幅広い年代に大人気のゲーム機用コントローラで制御できるよ うにシステムを組み上げました。 エコプロ 2018 の展示では、日本リモートセンシング学会理事(広報委員長)として市井が、さらに 本研究室からは小菅生と大学院生 1 名が展示活動に参加しました。来客には、(1)ジョイコンという身 近なゲーム機用のコントローラで地球を回せることを興味深く感じた結果、(2)気象衛星やその他地球 観測衛星のデータから見える地球を興味深く眺めていました。幅広い年代の参加者がいる本展示にて、 来客の年代問わず、リモートセンシング導入部分の普及に貢献できたかと思います。 (文責:市井和仁・小菅生文音)

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CEReS Newsletter No. 157

Center for Environmental Remote Sensing, Chiba University, Japan

千葉大学環境リモートセンシング研究 センター ニュースレター 2018年 12月 発行:環境リモートセンシング研究センター

(本号の編集担当:近藤昭彦) 住所:〒263-8522 千葉市稲毛区弥生町 1-33 Tel: 043-290-3832 Fax: 043-290-3857 URL: http://www.cr.chiba-u.jp/

■■ エコプロ 2018 出展報告 ■■ ~ ジョイコン使って、地球を回す?! ~

本センター市井研究室では、小菅生技術補佐員を中心として、衛星データなどを半球に投影し、地球

の画像を Nintendo Switch Joy-Con(以下ジョイコン)で回転させるシステムを試作し、2018 年 12 月

6 日~8 日に東京ビッグサイトで開催された「エコプロ 2018」(http://eco-pro.com/2018/)における日

本リモートセンシング学会のブースで展示しました。 本システムは、京都大学大学院理学研究科の地球惑星科学輻合部可視化グループ(リーダー:齊藤昭

則准教授)で作成された Dagik Earth(https://www.dagik.net/)というソフトウェアを利用しました。地

球・惑星などの様々なデータセットを投影することができるこのソフトウェアを利用し、発泡スチロー

ルの半球に投影することで、地球を立体的に、且つマウス操作で回転させながら見ることができます。

当研究室では、マウス制御の代わりに、幅広い年代に大人気のゲーム機用コントローラで制御できるよ

うにシステムを組み上げました。 エコプロ 2018 の展示では、日本リモートセンシング学会理事(広報委員長)として市井が、さらに

本研究室からは小菅生と大学院生 1 名が展示活動に参加しました。来客には、(1)ジョイコンという身

近なゲーム機用のコントローラで地球を回せることを興味深く感じた結果、(2)気象衛星やその他地球

観測衛星のデータから見える地球を興味深く眺めていました。幅広い年代の参加者がいる本展示にて、

来客の年代問わず、リモートセンシング導入部分の普及に貢献できたかと思います。

(文責:市井和仁・小菅生文音)

■■■ 第 81 回「知の拠点セミナー」にて講演 ■■■

2018 年 12 月 21 日金曜夜に東京大学地震研究所1号館 2 階セミナー室にて開催された「知の拠点セ

ミナー」にて講演を行ってきました。全国に 77 拠点ある共同利用・共同研究拠点では所属する大学の

壁を越えて全国の研究者と交流しており、その結果得られた学問の最先端の様子を広く一般や学生の

方々にお届けすると共に、その声を直接お聞きするのが「知の拠点セミナー」の目的です。これまで 80回のセミナー開催実績があり、会場はばらばらでしたが、今年 6 月より東大本郷キャンパス内にある地

震研究所がホストとなり、毎月第3金曜の夕方に実施しています。今回第 81 回目となるセミナーでは、 講演 1:ボーダーツーリズム:研究者が創る新しい観光

岩下 明裕(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授) 講演 2:第3世代静止気象衛星の地球環境研究への利活用

樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター 准教授) の二つの講演がそれぞれ 1 時間行われました。参加者は 40 名程度であり、忘年会シーズンまっただ中

としては多くの方が参加していたように私は思えました。私の講演では、前半ではひまわり 8 号がとら

えた興味深い現象を動画で示しながら解説を行い、後半はひまわり 8 号を使った研究トピックをダイジ

ェスト的に紹介しました。内容をかなり盛ってしまったため、せわしない講演となってしまいましたが、

来ていただいた方々はひまわり 8号に代表される第 3世代静止気象衛星群の威力と魅力を十分に感じて

もらえたのではないかと思います。 講演の内容をまとめた記事は来年 1 月 13 日付けの読売新聞科学面に掲載される予定です。最後に本

セミナーを円滑に運用していただいた、東京大学地震研究所庶務チームの皆様に感謝の意を表します。

お世話になりました。 (文責:樋口篤志)

写真 セミナー発表時の様子(東京大学地震研究所庶務チームより提供)

サービス精神旺盛な樋口准教授、いつもの軽妙な語り口が目に浮かぶようです。

■■■■ AGU Fall Meeting 2018 にて研究成果発表 ■■■■ アメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union)2018 年 Fall Meeting が 12 月 10-14 日

にかけてワシントン D.C.で開催されました。AGU は、地球科学の研究分野(大気科学、地質学、海洋

学、惑星科学、陸域生態学など)において最も歴史が古く(1919 年に設立)、また最も大きな国際学会

です(毎年 20,000 人以上が参加)。毎年、この時期にサンフランシスコで開催するのが通例ですが、ワ

シントン D.C.で開催されたのは今年が初めてです。今年の AGU には、CEReS から市井和仁(教授)、

本郷千春(准教授)、Nofel Lagrosas(特任助教)、Alessandro Damiani(特任助教)、近藤雅征(特任

助教、筆者)が、また兼務教員として CEReS の共同利用研究にご尽力いただいている理学研究院の服

部克己教授らも参加し、研究成果発表を行いました。 AGU では成果発表のみならず、国際プロジェクトのミィーティングが各所で行われることから、研

究分野の最新事情を知る格好の機会です。筆者は 2 日目と最終日の 2 件の発表があり、5 日間フルでの

学会参加を通じて、国際的に第一線で活躍している研究グループの勢いを改めて認識しました。一方で、

当センターからの参加人数・発表件数が少なかったことは残念です。AGU のような国際学会に参加・

成果発表することは、研究分野の活性化を促し、また、CEReS が国際的に認知されることにつながり

ます。来年度は、センター関係者の積極的な参加をお願いいたします。

ポスター会場の様子

(文責:近藤雅征)

CEReS 共同利用研究会開催 ~ 第 2 回 ハイパースペクトル・マルチスペクトルデータの 計測と産業応用 ~

2018 年 12 月 10 日(月)の午後、東京工業大学 大岡山キャン

パスにおいて研究会 「ハイパースペクトル・マルチスペクトルデ

ータの計測と産業応用」が開催されました。昨年 9 月 20 日の千

葉大での第 1 回に引き続いての第 2 回の開催で、今回は東京工業

大学工学院の山口雅浩教授が代表世話人となり、CEReS が後援す

る形での開催となりました。 この研究会の開催趣旨は、環境のリモートセンシング計測をは

じめ、多くの分野で活用されるようになっているハイパースペクトル計測と、その解析に立脚したマル

チスペクトル計測について、分野横断的な立場から産業的な応用例を含めた実例を報告して頂き、情報

の共有と活用を図ることにあります。 山口教授からの開会あいさつに引き続き、次の 9 件の講演と活

発な討議が行われました。 (久世宏明)

1 国際照明委員会(CIE)における分光イメージングに関する活動について

山口雅浩 (東京工業大学)

2 分光蛍光光度計による蛍光性材料の分光特性評価方法

堀込 純(日立ハイテクサイエンス)

3 リモートセンシングによる広域の植物蛍光強度分布画像取得の提案

増田健二(静岡大学)

4 細胞核のハイパースペクトル画像を用いた膵臓がん判別のための一手法

石川雅浩(埼玉医科大学)

5 Human detection method using airborne hyperspectral images

Lu Yan, Masahiro Yamaguchi(東京工業大学)

スペクトルイメージングの最先端事例と産業活用の可能性

Topic:ハイパースペクトルカメラによる高周波加速空洞のブレークダウン・トリガ―の直接観測

阿部哲郎(高エネルギー加速器研究機構)

7 太陽光発電性能評価における太陽光スペクトルのシミュレーション事例

薛 雁群、 猪狩真一(産業技術総合研究所)

8 気象・環境情報の遠隔計測ライダーの分光計測技術の進展

小林喬郎(福井大学名誉教授)

9 環境リモートセンシングにおけるハイパースペクトルとマルチスペクトルの活用

久世宏明(千葉大学)

CEReS 学生、優秀発表賞を受賞

11 月 6 日(火)、千葉大学ケヤキ会館において、2018 年度グローバルプ

ロミネント研究基幹シンポジウムが開催されました。 CEReS より研究発表に参加した下記の学生の発表が優秀発表賞を受賞

しました。 ■ 土佐拓道(大学院融合理工学府博士前期課程2年生:本郷研究室所属) ■ 論文題目:Sentinel-1 データを用いた水稲作付時期及び出穂期の判別 この受賞発表論文は、理学部地球科学科での卒業論文テーマをより掘り

下げ、データ解析を施しました。データとして用いた人工衛星 Sentinel-1は欧州宇宙機関の運用で、合成開口レーダ SAR センサを利用した陸域画像

データの取得に有用な衛星です。指導教員である本郷千春准教授とともに、

宇宙からアジアの農業を見つめる研究に邁進する土佐拓道さんの今後の活躍が期待されます。

■■■■■ CEReS 研究室所属学生の修士中間発表会を開催 ■■■■■

12 月 18 日(火)の 13 時より、共同棟 102 講義室にて、H30 年度の CEReS 研究室所属学生の修士

論文の中間発表会を開催しました。対象となる学生は、H30 年 4 月入学の修士一年生と H29 年 10 月入

学の修士二年生で、久世研 2 名、ヨサファット研 2 名、本郷研 1 名、本多・梶原研 1 名、入江研 2 名、

齋藤研 1 名の計 9 名でした。一人あたり 20 分(15 分発表、5 分質疑)の発表でしたが、どの学生もし

っかり準備をして発表に臨んでいたように思います。質疑についても明確に答えていた印象を受けまし

た。CEReS 全体での発表会は、普段の各研究室単位のゼミとは違い、少し分野や専門が離れた専門家

からコメントをもらえる貴重な機会ですので、ぜひ学生には発表会時に指摘された内容を踏まえて自身

の研究を進めていってもらいたいと思います。 (齋藤尚子)

研究室 氏名 修士論文(仮)タイトル

入江研 米川 大地 近年の千葉におけるNO2, VOC, 対流圏オゾン濃度のトレンド解析

入江研 Al Mashroor Fatmi Observation of Aerosol Optical Properties at South and Southeast Asian SKYNET sites

ヨサファット研 松田 陸 CP-SARレドーム用の新素材の電波特性の測定

ヨサファット研 千種 誼史 Xバンド広帯域のマイクロストリップアンテナの検討

本郷研 北神 貴久 Sentinel-1を用いた西ジャワ州水稲域における水害評価手法の構築

齋藤研 北村 克樹 ひまわり8号によるGOSAT/TANSO-FTS観測視野内の雲判定手法の開発

本多・梶原研 山崎 智之 二次林におけるfAPARの地上検証手法に関する研究

久世研 門 脇 隆 日本域におけるひまわり8号衛星雲データの長期的解析

久世研 宮本 開人 可視および 近赤外カメラを用いた雲と水蒸気画像

公開シンポジウム「印旛沼、未来への可能性」にて講演 ~ 印旛沼流域における谷津の機能と役割 ~

2018 年 12 月 1 日、佐倉市立美術館 4 階ホールにて表記のシンポジウムが開催されました。主催の NPO

水環境研究所は千葉県、特に印旛沼流域の水環境の改善に取り組む市民の団体です。 近藤は印旛沼流

域の地史と地形変化、特に谷津の形成過程と、そこから推定できる谷津の地質構造について話しました。

谷津は台地の地下水の流出の場であり、水循環をコントロールすることにより水質浄化、ここでは脱窒

による窒素除去が期待できます。そこで、堀江政樹君(修士課程)はリ

モートセンシングを活用することにより、谷津の土地利用・土地被覆を

水田、耕作放棄された湿地、市街地に分類し、地図で示しました。その

結果を用いて、谷津が脱窒の機能を発揮した場合の窒素削減量を、農業

流域である高崎川流域を対象にして、モデルを使って定量的に示すこと

ができました。瀧和夫先生は市民・大学(東邦大学、千葉大学)協働で

実施している実流域を対象とした研究成果から、谷津における水循環・

物質循環の実態について報告して頂きました。このシンポジウムでは印

旛沼流域で活動する市民や団体の方々と、谷津をグリーン・インフラス

トラクチャーとして機能させ、水質浄化を行うことの可能性、そのため

の超学際的取り組みの重要性について議論を行いました。

■ 【基調講演】印旛沼流域の地形・地質的特徴 近藤昭彦(千葉大学)

■ 【研究成果発表】印旛沼流域の谷津田の分布と特徴 堀江政樹(千葉大学)

■ 【研究成果発表】谷津湿地における水質浄化の特徴 瀧 和夫(水環境研究所)

※一部講演内容資料は近藤研究室ホームページよりご覧いただけます。(http://www.llsci.net/klab/) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ■ 訃報

元環境リモートセンシング研究センター長で、千葉大

学名誉教授の西尾文彦先生は、平成 30 年 11 月 22 日、

逝去されました。享年 73 歳でした。先生は昭和 45 年 3月に東北大学理学部を卒業後、同大学大学院理学研究科

修士課程を経て昭和 49 年 4 月に同研究科の博士課程を

中退、国立極地研究所助手となり、昭和 56 年 12 月に理

学博士の学位を取得されました。その後、同研究所助教

授、北海道教育大学教授を経て、平成 12 年 2 月に千葉

大学環境リモートセンシング研究センター(CEReS)に教

授として着任されました。平成 24 年 3 月に定年退職さ

れるまで、12 年にわたって CEReS の研究、教育に貢献されました。この間、平成 18 年 4 月から4年

間、センター長を務め、平成 22 年度からの共同利用・共同研究拠点認定に尽力されたほか、ウェザー

ニューズ社との地球温暖化寄附研究講座を開設するなど、リモートセンシングの研究コミュニティの発

展に大きく貢献されました。研究上の大きな功績としては、第 17 次、第 23 次、第 27 次の南極観測越

冬隊の隊員および第 43 次夏隊の隊長として南極観測に従事して日本の極地研究に貢献されたほか、衛

星リモートセンシングによる雪氷圏の研究に注力し「衛星リモートセンシングによる雪氷圏変動の研究」

で学界に貢献されました。また、大学院GP(魅力ある大学院教育イニシアティブ)「地球診断学創成

プログラム」では、異分野融合の教育プログラムとして学際的に地球環境の課題に取り組み、独創性豊

かな人材の育成に貢献されました。 ご冥福をお祈り申し上げますとともに、西尾先生が築かれた環境リモートセンシング研究のより一層

の発展に向け、今後も努力を傾注して参りたいと思います。 環境リモートセンシング研究センター センター長 久世宏明