山神橋の損傷と補強対策(その2) - Road ·...

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2-2 損傷発生から対策工までの流れ 2-2- 1 鋼上路式アーチ橋の損傷の特徴 昭和 40年前後 に架設された鋼上路式アーチ橋 には、側径間がゲルバー ヒンジ構造で 連結されている事例が多い。これは当時の解析技術では不静定構造の解析が困難であっ たため、アーチ径間と側径間をゲルバー構造で連結 し静定構造 として簡素化 を図ったも のである。 しか し、近年 このような形式の橋梁 において、以下 に示すような疲労亀裂が生 じてい る例が多 く報告されている。 ①ゲルバーヒンジ部の損傷 ゲルバー構造の切欠きR 部は、もっとも応力 集中が発生しやすい構造であり、活荷重の載荷 によ り円弧状コーナー部に発生する法線方向応 力は下フランジとウェブを引き離そ うとするよ うに作用す る。 このような作用力の繰返 しに対 し十分な強度 を有 していない場合 には、 この部 位よ り亀裂が発生す ることになる。特 に、コー ナー部には疲労強度の低い隅肉溶接が一般的に 採用されていたことも損傷原因の一つと考えら れている。 ②垂直材接合部の損傷 垂直材の設計は両端をヒンジと仮定 している 場合が普通であるが、実際には部材長が短いほ 切欠きコーナー部 ゲルバー ヒンジ部 亀裂発生進展状況 垂直材接合部 亀裂発生進展状況 ど固定に近い挙動をする。そのため、車両通行 .qsb h 時のアーチ部の変形によ り垂直材両端部には交 番する曲げ応力が発生し、 これが疲労亀裂の発 生原因であると考えられている。 山神橋は上記の 2 つのタイプの疲労損傷が報告された事例で、7 年間に渡 り架替 え案 を含 めた種々のケースに対す る検討が加え られ、補強工事 について もその効果 を確認 し なが ら段階的に行われた。 - 6- 2- 2-2 損傷発生から対策工までの流れ (1)応急対策の実施 山神橋 は昭和 38 年に架設されたが、予想を上回る交通量の増加に加え、車両の大型 化や積荷の増大な どが要因とな り、平成 4 年 にゲルバー ヒンジ部の切欠き部 に亀裂が発 見 された。切欠きR 部か ら下 フランジまで亀裂が達 していたため危険性が高 く、緊急 に 応急復 旧工事 を実施 したo同時 に、橋梁全体 の詳細点検 を行 った結果、中間垂直材の接 合部にも亀裂が発見され、平成 5 年度 にゲルバー ヒンジ部,中間垂直材 について補強工 事 を実施 した。 (2)葉子道路保全 ・管理検討委員会の設置 菓子道路の道路施設全体においても疲労や老朽化が進み、トンネル覆工面か らの漏水 な ど、各所 に修繕 の必要な箇所 を抱えている状況であった。このよ うな背景か ら、菓子 道路の安全で快適な道路交通を将来に渡って確保することを目的とし、平成 9 10 に専門家や関係者か らなる 「葉子道路保全 ・管理検討委員会(第 5 4. 参照) を設 置 し、 トンネルや橋梁等 について抜本的な対応策の検討を行 うものとした。 山神橋については、大型車両の交通量が非常に多いために (大型車混入率 47.9% , 架設当時比 45 倍)、ゲルバーヒンジ部と中間垂直材接合部に構造的な応力が集中して お り、亀裂の発生する可能性があると判断され、すみやかな対策が必要 となった。抜本 的対策 として新橋への架替えも考えられたが、既設橋梁の長寿命化技術の確立に向け、 ゲルバーヒンジ部を有するアーチ橋の補強対策のモデル工事 として進めることとした。 (3) 補強対策 第一次補強工事として、ゲルバーヒンジ部の連続化、中間垂直材接合部の鋼板補強を 実施 した。しか し、施工前後 に計測 を実施 し補強効果 を確認 した ところ、中間垂直材 に おいては目標値 に及ばなかった。このため、第二次補強工事 として、垂直材接合部の発 生応力の低減 を図るために斜材増設 による補強を実施 し、新橋 レベルの性能が得 られた ことを確認できた。また、斜材増設 にあたってはステ ップ毎 に計測 を実施 し、補強効果 の推移 を確認 しなが ら施工 を行 った。 一方、本路線 は適当な迂回路がない重要幹線道路である ことか ら、下記条件 を考慮 し、 設計および施工検討を行った。 ・通行 を確保 しなが ら施工 を進める。 ・工期 は春か ら初冬 (積雪期前) までの約 8 ケ月。 また、施工時の交通規制による社会的影響を最小限にとどめることに配慮 し、利用者 への十分な広報活動 を行 い、理解 を得なが ら工事 を進めた。 次頁以降に、「山神橋補強対策の流れ」を示す。 - 7-

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Page 1: 山神橋の損傷と補強対策(その2) - Road · 2-2-1鋼上路式アーチ橋の損傷の特徴 昭和40年前後に架設された鋼上路式アーチ橋には、側径間がゲルバーヒンジ構造で

2-2損傷発生から対策工までの流れ

2-2-1鋼上路式アーチ橋の損傷の特徴

昭和 40年前後に架設された鋼上路式アーチ橋には、側径間がゲルバーヒンジ構造で

連結されている事例が多い。これは当時の解析技術では不静定構造の解析が困難であっ

たため、アーチ径間と側径間をゲルバー構造で連結し静定構造として簡素化を図ったも

のである。

しかし、近年このような形式の橋梁において、以下に示すような疲労亀裂が生じてい

る例が多く報告されている。

①ゲルバーヒンジ部の損傷

ゲルバー構造の切欠きR部は、もっとも応力

集中が発生しやすい構造であり、活荷重の載荷

により円弧状コーナー部に発生する法線方向応

力は下フランジとウェブを引き離そうとするよ

うに作用する。このような作用力の繰返しに対

し十分な強度を有していない場合には、この部

位より亀裂が発生することになる。特に、コー

ナー部には疲労強度の低い隅肉溶接が一般的に

採用されていたことも損傷原因の一つと考えら

れている。

②垂直材接合部の損傷

垂直材の設計は両端をヒンジと仮定している

場合が普通であるが、実際には部材長が短いほ

切欠きコーナー部

ゲルバーヒンジ部

亀裂発生進展状況

垂直材接合部

亀裂発生進展状況

ど固定に近い挙動をする。そのため、車両通行 .qsbh

時のアーチ部の変形により垂直材両端部には交

番する曲げ応力が発生し、これが疲労亀裂の発

生原因であると考えられている。

山神橋は上記の2つのタイプの疲労損傷が報告された事例で、7年間に渡り架替え案

を含めた種々のケースに対する検討が加えられ、補強工事についてもその効果を確認し

ながら段階的に行われた。

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2-2-2損傷発生から対策工までの流れ

(1)応急対策の実施

山神橋は昭和 38年に架設されたが、予想を上回る交通量の増加に加え、車両の大型

化や積荷の増大などが要因となり、平成 4年にゲルバーヒンジ部の切欠き部に亀裂が発

見された。切欠きR部から下フランジまで亀裂が達していたため危険性が高く、緊急に

応急復旧工事を実施したo同時に、橋梁全体の詳細点検を行った結果、中間垂直材の接

合部にも亀裂が発見され、平成 5年度にゲルバーヒンジ部,中間垂直材について補強工

事を実施した。

(2)葉子道路保全 ・管理検討委員会の設置

菓子道路の道路施設全体においても疲労や老朽化が進み、トンネル覆工面からの漏水

など、各所に修繕の必要な箇所を抱えている状況であった。このような背景から、菓子

道路の安全で快適な道路交通を将来に渡って確保することを目的とし、平成 9年 10月

に専門家や関係者からなる 「葉子道路保全 ・管理検討委員会」 (第 5章 4.参照)を設

置し、トンネルや橋梁等について抜本的な対応策の検討を行うものとした。

山神橋については、大型車両の交通量が非常に多いために (大型車混入率 47.9%,

架設当時比 45倍)、ゲルバーヒンジ部と中間垂直材接合部に構造的な応力が集中して

おり、亀裂の発生する可能性があると判断され、すみやかな対策が必要となった。抜本

的対策として新橋への架替えも考えられたが、既設橋梁の長寿命化技術の確立に向け、

ゲルバーヒンジ部を有するアーチ橋の補強対策のモデル工事として進めることとした。

(3)補強対策

第一次補強工事として、ゲルバーヒンジ部の連続化、中間垂直材接合部の鋼板補強を

実施した。しかし、施工前後に計測を実施し補強効果を確認したところ、中間垂直材に

おいては目標値に及ばなかった。このため、第二次補強工事として、垂直材接合部の発

生応力の低減を図るために斜材増設による補強を実施し、新橋レベルの性能が得られた

ことを確認できた。また、斜材増設にあたってはステップ毎に計測を実施し、補強効果

の推移を確認しながら施工を行った。

一方、本路線は適当な迂回路がない重要幹線道路であることから、下記条件を考慮し、

設計および施工検討を行った。

・通行を確保しながら施工を進める。

・工期は春から初冬 (積雪期前)までの約8ケ月。

また、施工時の交通規制による社会的影響を最小限にとどめることに配慮し、利用者

への十分な広報活動を行い、理解を得ながら工事を進めた。

次頁以降に、 「山神橋補強対策の流れ」を示す。

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山 神 橋 の 補 強 対 策 の 流 れ

工 事 実 施 内 容 検 討 内 容

昭和38年.

昭和41年

昭和58年

平成4年

12月

平成6年

3月

平成9年

10月

匡頭

濫用臨 ・

l形鋼格子床版に打替え,地覆幅を35cmから60cmに拡幅

匪重要ゲルバーヒンジ部:切欠き部に疲労亀裂の発生

亀裂発生に対する応急復旧工事

・亀裂発生位置に補強板の溶接

・仮受ブラケットの設置

・仮受ベントの設置

中間垂直材:アーチクラウン付近の接合部に疲労亀裂の発生

疲労亀裂に対しての補強エ

ゲノレ〈⊥ヒンジ部 :応急復旧後の補強

中間垂直材 :アーチクラウン両隣の垂直材接合部を補強

検討;匝頭ゲルバーヒンジ部 :疲労亀裂の再発生を艶

中間垂直材 :亀裂が発見されなかった中間垂直材

に、疲労亀裂の発生を敵

陣r竜Iu-1;Iゲノレi-ヒンジ部 :実交通下の最大応力振幅が大。

推定疲労寿命3年

一 畳雛 )序叢生の可釣蟹あク

中間垂直材 :実交通下の最大応力振幅が大。

推定疲労寿命1年

三._塵整墾塾星空遜塑垂_空

床版 (Ⅰ形鋼格子床版):張出し床版下面の亜鉛鋼板

担t-:司ゲル,バーヒンジ部 :構造的弱点であるかけ違い部

の抜本的な解消 一 彦 虜 必

中間垂直材 :疲労寿命の向上

三 助準脚 威窟

- 8-

委員会での指導 ・意見

保全・管理検討委員会 ;

第1回(平成9年 10月9日)

現地診断及び検討会

(平成9年 10月31日)

抜本的対策として、新橋

-の架替えを含めた対策

が必要と判断。

保全 ・管理検討委員会 ;

第2回(平成 10年3月11日)

・ゲルバーヒンジ部の

漸 ヒ

・中間垂直材接合部の

補強

・Ⅰ形鋼格子床版の補修

エ 事 実

平成11年

平成 12年

施 内 容 検 討 内 容

匪≡麺 垂重要

・ゲノレく⊥七ンジ部の謝 ヒ

・中間垂直材接合部の補強鋼板による補強

・橋台部鋼製支索をゴム支乗に取替え

・伸縮装置の取替え

・l形鋼格子床版の補修

・落橋防止装置の設置

委員会での指導 ・意見

現地調査 (施工時)及び

塵塾会(平成 11年9月7日)

橋面防水工は塗布型と

吹付け型の2工法を採用

し、追眺点検を行う。

ゲ/レズ-ヒンジ部 :切欠き部を漸 ヒすること

により、疲労に対しての構造

的弱点を解消。

中間垂直材:

・中間垂直材上端部 補強効果がみられた。

・中間垂直材下端部

支承取替えにより、拘束されていた橋梁

全体の挙動が開放され、補強効果が相殺さ

れたため、補強後の最大応力振幅,推定疲

労寿命にほとんど変化がみられなかった。

匝萱頭

ゲル,バーヒンジ部 :新設主桁と端柱との接合部

について、定期点検 (5年)

の星点項目の-一つとして、

目視調査を行う。

中間垂直材 :橋梁全体の剛性を向上させ、垂直

材接合部の応力集中を低減させる。

一 線 .tる廟静の美好

匪≒狩甫琴頭

・斜材増設による補強

・端柱,中間垂直材溶接部の止端処理

・アーチリブ内部の全面塗装

検討; 継増 設後の計測による効果の

中間垂直材 :推定疲労寿命は向上しており、

変位は低減され、補強効果が

みられた。

l今後の対頑

補強効果が確認され、新橋と同レベルの性能

に向上した。今後は5年に1回程度の頻度で、定期点検を行う。

- 9-

崖全 ・管理検討委員垂⊥

基旦厘i宰成 12年3月13日)

・連続化部は、補強効果

が確認され、今後は定

期点検で対応。

・中間垂直材は、補強効

果が低く、斜材増設に

よる補強を実施。

橋 梁 分 科 会

(平成 12年 12月6日)

補強効果がみられ、新橋

レベルの性能が確保され

たと判断。

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第 2章 損傷発生と補強対策

1.ゲルバ- ヒンジ部 の損傷状 況 と補強対策

1-1 損傷状況と応急対策

1992(平成 4)年 12月末、福島側の端柱上の伸縮装置に 40mm程度の段差が発

見されたため、その直下の主桁を調査 した結果、桁のゲルバー ヒンジ部に大きな

亀裂が発生 し、落橋の危険性のあることが判明 した。(写真 2・1)

写真 2.1

伸縮装置に 40mm程度の段差

亀裂は、架け違いのR部の溶接部分か ら発生 しウェブの下端まで来てお り、損

傷の著 しい主桁は下フランジの隅肉溶接まで破断 していた (写真 2・2,図 2・1)0

直ちに昼夜連続の片側車線規制を行い、応急復 旧として仮受けブラケット、仮ベ

ン トの設置および現場溶接で補強鋼板取付を行った。(写真 2.3,図 2・2,図 2・3)

その後、米沢側のゲルバー ヒンジ部を調査 した結果、同様な亀裂が認められ、

同じ対策を行った。

写真2.2 受け桁 亀裂発生状況

福島側Gl桁

G2朽 補修後 応急粒旧安桁 ′

写真 2.3 応急復旧

補強鋼板取付け

-10-

ゲルバー ヒンジ部上の伸縮装置に段差が発生 したため、ゲルバーヒンジ部の

調査を行った。

4主桁の内、福島側の 3主桁 (Gl,G2,G3)と、米沢側の 3主桁 (G2,G3,G4)に亀

裂が発生していた。

亀裂は架け違い部のR部の溶接部分か ら発生 し、進行 していた。

34〔l 21020198 フランジ破断

ロ;ココ

550 E8020

340 ZFOI20190

G J

:t裂なし)

550 l8020

図 2.1ヒンジ部の亀裂発生状況

- ll-

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(1J-JGl.♯9tJGlの*tJ+Il行わで)

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- 12-

図 2.2仮 受 けベ ン ト

設置国

図 2.3仮受けブラケット

設置図

1-2 補強対策

引き続き平成 5年度にゲルバーヒンジ部の補強を実施 した。損傷部は全て新規

に交換 し、H・T・Bおよび現場溶接で接合 した。同時に切欠き部は補強板で補強し、

支承部も新規に取替えた。(図 2.4,写真 2.4)

rll 6芸表 .340壬 19(〕 650 補 板こよる補寸

「ー~ 田 「ヽ強

図 2.4 ゲルバー ヒンジ部の補強図

写真2.4 ゲルバー ヒンジ部の補強

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1-3 亀裂発生の可能性の評価 (平成 9年度詳細調査)

平成 9年 10月に詳細調査 を行った ところ、疲労亀裂の再発は確認 されなかった

ものの、実交通下での応力頻度測定によると、飯桁側 R部において 1660kg/cm2と

大きい最大応力振幅を示 し、測定結果 よ り求めた推定疲労寿命は 3年程度 と非常

に短い結果 となった (図 2.5)。これは、下フランジと補強板に設けた割 り込みフ

ランジが接合 されていないため、下フランジR部の応力が緩和 されていないこと

が要因 となっていると考えられた。 (図 2.6)

これ らのことか ら、再度疲労亀裂が発生す る可能性が高い と考え られ、何 らか

の対策が必要であると判断された。以下に詳細調査結果 を示す。

(1)実交通下での計測結果

図 2.5に計測結果 を示す。

図 2.5 計測結果

※疲労損傷度の評価は、「推定疲労寿命」と 「最大応力振幅」を基に検討した。

推定疲労寿命一疲労損傷度の目安となる疲労損傷に至るまでの推定期間であり、実橋の応力

頻度計測から得られる応力範囲と発現回数から算出。

最大応力振幅一実交通下での橋梁の部材に繰り返し発生する応力の範囲のうち、最大となる

もの。

推定疲労寿命の算出例を次々頁に示す。

5

3

2--'_3

一tb

lIl

一-

スラ

レベル

- 14-

※推定疲労寿命の算出方法

推定疲労寿命は以下の式で算出する。

推定疲労寿命 (年) - 1/ (疲労被害量×365日)

疲労被 害量 - 忘 ∑ll%] mxn l]

疲労被害量 :各応力レベル毎の疲労被害量の和

△oi:各計測応力範囲

△S :各溶接継手の区分等級毎の

2×106 回基本疲労許容応力範囲

ni:△oiが生じた回数

m-3

000r=(

tZd∑)

JsT園 100

i

・R哩

10

触手の区分等級

区分 2×10●回垂木疲労許容等級 応力範囲 △S,/(MPa)A 190a 155

C 125D 100

E 80

F 65

G 50.

10ユ 101 10! 101 107 10- 100応力損返し致 N (cycles)

継手の区分等級に対する疲労設計曲線

疲労被害量は、200万回疲労強度△S(各溶接継手の区分等級毎の 2×106 回基本疲労

許容応力範囲)の溶接部の場合に、その部材に応力頻度測定 24時間の間に受ける疲労に

よるダメージを表し、ダメージが蓄積されて疲労被害量の合計が 1.0になったときに疲労

損傷が生じることを意味する。

疲労被害量の逆数は、測定を行った日の交通条件が続いたと仮定した場合、損傷が生じ

るまでの日数を表すことになり、これをさらに365で割れば損傷が生じるまでの日数を表

すことになる。この値を推定疲労寿命とする。

疲労損傷を防ぐためには、疲労強度を高めるか、作用する応力範囲を小さくする必要がある。

現 場 計 測

l⊂〉塗堵・R哩

叔皮

※疲労推定寿命算出例

108101101 NP 107

破断に至るまでの繰返し回数 NJ

作用応力範囲の低減と疲労強度の向上

溶接継手等級 :F等級の場合

溶接継手E等級の2×106 回基本疲労許容応力範囲 -650kg/cm2

(例' 疲労被害量- ㌫ ∑瞳- 9.639×10~4

推定疲労寿命 (年)-1/ (9.639×10-4 ×365)

-2・84年 - 匡司

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I

..

l

(2)切欠き部の形状

ゲルバーヒンジ部は補強板により補強されたが、桁端切欠き部の下フランジと

割込みフランジが高力ボル トで按合されていない形状 となっていた (図2.6,写真

2.5参照)。割込みフランジは桁端切欠き部付近の応力集中を緩和させるものであ

るが、本橋はフランジと補強 した割込みフランジが接合 されていないため割込み

フランジに応力を伝達 させることが出来ず、応力集中が緩和されていない構造 と

考えられた。

図 2.6切欠き部の補強形状

○切欠き部付近の応力集中が緩和されない形状となっているo

割込みフランジが下フランジと接合されているo

Lt一ヽ 一

一一望ましい補強形状 、 i

,1.-ポF.Y1,.-_肝,J~7.山神橋の補強形状 一語.=三,一艇 ::-

賢i_誹 l二二貯

写真 2.5切欠き部の形状

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2.中間垂直材の損傷状況 と補強対策

2- 1 挽傷状況

平成 5年 6月に橋梁全体に足場を設置して詳細に調査した結果、アーチクラウ

ン両隣の中間垂直材 (4)の接合部に損傷が発見された。損傷状況は、垂直材の上端

の縦桁との接合部および下端のベースプレー トとのリブの隅肉溶接の部分に亀裂

が発生していた。垂直材損傷位置図を図 2.6に、磁粉探傷試験により確認した亀

裂発生状況を図 2.7に示す。

図 2.6 垂直材損傷位置図

垂直材縦桁側 垂直材アーチリフ◆側

図 2.7 垂直材亀裂発生状況

※磁粉探傷試験 :調査対象部を磁化し、亀裂に磁粉を付着させることにより、その付着状況から

視覚的に亀裂の有無,表面上の亀裂の長さを調べる方法。一般的に蛍光磁粉を

用い、紫外線を照査して亀裂を確認する。

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