家庭用洗浄剤に関する化学物質の環境排出量・リスクの推計手法の構築

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周 靚2016.3.30

環境省 H27年度環境研究総合推進費【I-1501】

リスク評価技術と制度の連携を通じたリスクガバナンスH27年度成果報告会

発表内容

平成27年度の研究内容

対象化学物質の選定

家庭用洗浄剤中の化学物質の環境排出量の推計

SHANELモデルによる近畿水系暴露濃度の推定と生態リスクの評価

家庭用洗浄剤に由来間接的な地球温暖化リスク評価モデルの構築

平成２８年度の検討課題

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I. 対象化学物質の選定

平成27年度の研究内容

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アルコールエトキシレート (アルキル基の炭素数が12から15までのもの及び混合物に限る) (AE)

主な用途は家庭洗浄剤としての利用であり、国内全流通量の 7 割以上を占める。

近年では、ノニルフェノール (以下、NP) 等による内分泌かく乱影響の懸念を受けてノニルフェノールエトキシレート (以下、NPE) から AE への代替が進められており、洗浄剤のコンパクト化・液体化の流行によって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩 (以下、LAS) からの代替も予想される。AE の使用量が今後も大幅に増加すると見込まれている。

化学物質の排出移動量届出 (PRTR) 制度に基づき公表された排出量データでは、AEは毎年の排出量が多い上位10物質に含まれており、家庭用途の排出量で見ると上位3物質に含まれる。

AE は水系に遍在しているため、環境省が推進している水生生物保全に係わる水質目標設定では、直鎖AEが最優先すべき検討物質の1つに挙げられている(環境省 2002)

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II. 家庭用洗浄剤中の化学物質の環境排出量の推計

平成27年度の研究内容

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需要分野別・都道府県別の公共用水域への排出量（ｔ/年）

• 身体用洗浄剤 • 台所用洗浄剤 • 洗濯用洗浄剤・ 住宅・家具用洗浄剤

廃棄・処理段階 分流式下水道

都道府県別の分流式下水道普及率

分流式の除去率

都道府県別の合流式下水道普及率

合流式の除去率

合流式下水道 合併処理浄化槽

合併処理浄化槽の除去率

都道府県別の合併処理浄化槽の整備率

完全未処理

消費段階

対象化学物質の需要分野別の全国出荷量（ｔ/年）

• 身体用洗浄剤 • 台所用洗浄剤 • 洗濯用洗浄剤・ 住宅・家具用洗浄剤

需要分野別の全国水域への排出量（ｔ/年）

水域への排出率(=100%)

家庭用洗浄剤中の化学物質の環境排出量推計モデルの構築

需要分野別・都道府県への配分指標の値

需要分野別・都道府県別の水域への排出量（ｔ/年）

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家庭用途から公共用水域への対象化学物質の排出量 [t/年]＝下水処理場通過量（A） +合併処理浄化槽通過量（B） +完全未処理量（C）

① AEの需要分野別全国出荷量（2001年～2014年間）

出典：各年度の実績調査（日本界面活性剤工業会、日本石鹸洗剤工業会） 7

① LASの需要分野別全国出荷量（2001年～2014年間）

出典：各年度の実績調査（日本界面活性剤工業会、日本石鹸洗剤工業会）8

需要分野 媒体 排出率1 身体用洗浄剤 水域 100%2 台所用洗浄剤 水域 100%3 洗濯・住宅用等洗浄剤 水域 100%

需要分野 配分指標 資料名1 身体用洗浄剤 人口（人）

住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数（総務省）

2 台所用洗浄剤 世帯数（世帯）

3洗濯・住宅用等洗浄

剤世帯数（世帯）

② 洗浄剤に係る需要分野別の水域への排出率

③ 洗浄剤に係る需要分野別の配分指標

出典：日本界面活性剤工業会、日本石鹸洗剤工業会による（平成13年度設定値）

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都道府県名

配分指標の値 下水道普及率（％）合併処理浄化槽の整備率

人口（千人）

世帯数（千世帯）

合計うち合流式下水道

うち分流式下水道

1 大阪府 8,869 4,148 91.7% 73.6% 18.1% 2.0%2 京都府 2,579 1,184 88.3% 52.3% 36.0% 2.2%3 兵庫県 5,638 2,474 89.4% 63.6% 25.8% 1.9%4 滋賀県 1,421 554 80.6% 19.5% 61.1% 2.9%5 奈良 1,396 581 69.3% 22.6% 46.7% 8.3%6 和歌山 1,004 439 18.2% 6.8% 11.4% 29.5%近畿2府6県合計

20,907 9,380 84.9% 56.2% 28.7% 3.8%

全国合計 128226 56412 71.6% - - 9.1%

④ 洗浄剤に係る近畿の2府4県への配分指標等

出典：1.住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数（総務省）2.各年度の下水道統計（公社日本下水道協会）3.各年度の都道府県別汚水処理人口普及状況（国土交通省、農林水産省、国土交通省、環境省）

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都道府県名

合流式下水道実施都市

合流式下水道

実施都市人口（千人）

全府県人口

（千人）

合流式下水道の割合

（人口比）

1 大阪府

大阪市，堺市，岸和田市，豊中市，池田市，吹田市，泉大津市，高槻市，守口市，茨木市，八尾市，寝屋川市，松原市，大東市，柏原市，門真市，摂津市，藤井寺市，東大阪市，四条畷市，泉北環境整備施設組合

7103 8851 80.3%

2 京都府 京都市，福知山市 1548 2614 59.2%

3 兵庫県神戸市，姫路市，尼崎市，明石市，西宮市，

芦屋市，伊丹市，加古川市，高砂市3954 5555 71.2%

4 滋賀県 大津市 342 1417 24.1%

5 奈良県 奈良市，大和郡山市 449 1376 32.6%

6 和歌山県 和歌山市 364 971 37.5%

近畿2府6県合計 13760 20784 66.2%

⑤ 近畿2府4県の合流式下水道の割合（平成26年度）

出典：全国合流式下水道実施都市及び人口の割合

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汚水処理施設 AEの除去率 LASの除去率

下水処理場 -

AEと同じとした

（うち合流式下水道） 98％（晴天時）

52％（雨天時）

92％（年間）

（うち分流式下水道） 98％

合併処理浄化槽 90％ 96％

⑥ 各施設における対象化学物質の除去率

1. 下水処理場分流式：国土環境株式会社（2005）による国内の下水処理場の実測データ。2. 下水処理場合流式：国土交通省（2002）による合流式下水道におけるBODの除去率を参考。3. 合併処理浄化槽LAS：「家庭用合併処理浄化槽での洗剤の除去性能」（環境年報vol.21,日本

石鹸洗剤工業会（1995））等。4. 合併処理浄化槽AE：合併処理浄化槽におけるBOD除去率と同様とみなし設定。

出典：

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2014年の家庭用洗浄剤中のAEの排出量推計例

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対象化学物質の環境排出量の推計結果

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III. SHANELモデルによる近畿水系暴露濃度の推定と生態リスクの評価

平成27年度の研究内容

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家庭用洗浄剤中の化学物質の環境排出由来生態リスク評価モデルの構築

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水系

番号 水系名 河川数

幹川流路

[km]

河川延長

[km]

流域面積

[k㎡] 流域関係都道府県名

59 由良川 138 146 803.4 1,880 京都府、兵庫県

60 淀川 962 75 4442.4 8240 大阪府、京都府、滋賀県、

兵庫県、奈良県、三重県

61 大和川 178 68 751.3 1070 大阪府、奈良県

62 円山川 97 68 500.6 1300 兵庫県

63 加古川 130 96 778.2 1730 兵庫県

64 揖保川 47 70 290.9 810 兵庫県

65 紀の川 181 136 804.8 1660 和歌山県、奈良県

66 新宮川 103 183 731.8 2360 和歌山県、奈良県 、三重県

68 北川 12 30 83.1 211 福井県、滋賀県

近畿内の各水系の概要

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項目[単位] 基準値 出典

蒸気圧[Pa] 13.3

中西準子, 林彬勒 (2007). 詳細リスク評価書シリーズ14: アルコール

エトキシレート(洗剤)

モル質量[g/mol] 552.89

水溶解度[g/m3] 10000

有機炭素含有率 0.05

有機炭素吸着係数Koc [L/kg] 12

半減期：土壌液相[日] 5.7

半減期：土壌固相[日] 5.7

半減期：河川水[日] 0.3

半減期：河川底泥液相[日] 5.7

半減期：河川底泥固相[日] 5.7

下水処理率 0.9386 式より計算

SHANELで使用したAE物性値と条件設定

下水処理率＝分流式普及率×分流式除去率+合流式普及率×合流式除去率+合併処理浄化槽 ×合併処理浄化槽の除去率

分流式普及率+合流式普及率+合併処理浄化槽普及率

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近畿水系の河川水中AE濃度分布図（例：2014年1月淀川）

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最下流地点におけるAE濃度の年間時系列変化

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最下流地点におけるAEの年間幾何平均濃度

オランダ環境省と石鹸洗剤工業会が共同で評価を行い、水棲生物への最大許容濃度（無影響濃度）を110μg/Lとしている。近畿の9水系の河川中、由良川、大和川、加古川の年間平均濃度は110μg/L以上であり、生態系に影響を及ぼすリスクは高いということが示唆された。

以上のことから、通常家庭使用条件下においてAEは生態系に影響を及ぼすリスクは高く、水生生物保全するためには、AEの生態リスク管理が非常に重要と考えられる。

IV. 家庭用洗浄剤に由来間接的な地球温暖化リスク評価モデルの構築

平成27年度の研究内容

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洗浄剤のライフサイクルモデルの構築

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平成28年度の研究計画

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平成28年度の研究計画

家庭用洗浄剤中の化学物質の環境排出由来生態リスク評価 家庭用洗浄剤に由来間接的な地球温暖化リスク評価 代替を想定した将来の暴露シナリオの評価 産業用洗剤のリスク評価：トリクロロエチレン 業務用洗剤のリスク評価：ノニルフェノール

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