用途別設計ポイント 保温・加熱用途【洗浄機構成例(シャワー方式)】...

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【洗浄機構成例(シャワー方式)】 ヒートポンプの保温用途としては、塗装前の表面処理である脱脂、湯洗、化成槽の保温 や、食品材料の保温などに多く利用されています。 「加熱方式」は、加温槽やワークからの放熱分を補う保温(主に循環加温)であり、導入形 態の特徴としては、ヒートポンプを加熱対象(洗浄槽など)に近接して設置し、蒸気供給 ロスや設置工事費の削減を図る場合が多く見られます。 また、空気熱源ヒートポンプが屋内に設置される場合は、ヒートポンプから発生する冷 風によって作業環境の改善や空調負荷の低減効果も期待されています。 設計ポイントとして、 「必要加熱容量の算定」 「加熱方式の選択」 「ヒートポンプ容量・台 数の選定」 について紹介します。 主な保温・加温用途 ◎塗装前処理 (脱脂、湯洗、防錆、化成) ◎各種部品洗浄 ◎メッキ槽保温 ◎食品材料の保温 ◎チョコレートの湯煎 導入検討を行う場合は、まずは加熱対象の必要加熱容量について算定することが必要となり ますが、実測データがない場合は、ある程度の推定も含め加熱容量を算定する必要があり ます。洗浄槽の場合を例に、いくつかの算定方法について紹介します。 加熱対象のドレン量からの算定方法 加熱に使用している蒸気圧力 MPa、ドレン量 L/h、ドレン温度 ℃]がわかる場合には以下の方法で算定ができます。 【計算式】 必要加熱能力 kW=(供給蒸気のエンタルピー MJ/kgドレンのエンタルピー MJ/kg)×ドレン量 ÷ 3.6 × 安全率 ポンプ循環流量からの算定方法 洗浄液の往還温度差 、ポンプ循環流量 L/minが分かる場合 【計算式】 必要加熱能力 kW=洗浄液の往還温度差×ポンプ循環流量×60分÷860×安全率 ※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。 ワーク負荷からの算定方法 ワーク1単位の重量 kg/サイクル]:A、処理時間 秒/サイクル]:B、ワーク比熱 kJ/kg]:C、周囲温度 ]:D洗浄液温度 ]:E が分かる場合 【計算式】 1時間当たりの処理量 kg×60秒÷×60分 必要加熱能力 kW=(E-D)×処理量 ×÷3600×安全率 ※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。ワークの吊り具やパレットの熱量も考慮が必要な場合があります。 現行熱源で操業中の槽内温度低下からの算定方法 現行熱源での加熱停止温度 ]:A、同左加熱開始温度 ]:B、停止から開始までの時間 ]:C、タンク容量 L]:D が分かる場合 【計算式】 必要加熱能力 kW=(A-B)× D ×60分÷ C ÷860×安全率 ・ワーク重量 ・比熱 ・処理時間 ・ポンプ循環流量 ・洗浄液温度(往) ・タンク容量 ・洗浄液温度(還) 洗浄槽 現行加熱熱源 (蒸気、電気ヒータなど) 用途別設計ポイント 保温・加熱用途 ライン上部の架台に設置した ヒートポンプユニット ■導入事例 ヤマハ発動機株式会社 袋井南工場さま エンジン部品の表面処理ラインに ヒートポンプ加温システムを導入 〔ものづくりに電気vol.3 p29〕 必要加熱容量の算定 11

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【洗浄機構成例(シャワー方式)】

洗 浄 槽

【間接加温方式】

60℃

65℃

65℃

15℃

ヒートポンプ

ヒートポンプ

循環式加温

洗浄槽

貯湯タンク

洗浄槽

洗浄槽

洗浄槽

バッファタンク 熱交換器

ヒートポンプ

【間接加温(プレートコイル)方式】

バッファタンク プレートコイル

ヒートポンプ

【直接加温方式】

ヒートポンプ

給水

シャワー

カラン

一過式加温

ヒートポンプの保温用途としては、塗装前の表面処理である脱脂、湯洗、化成槽の保温や、食品材料の保温などに多く利用されています。「加熱方式」は、加温槽やワークからの放熱分を補う保温(主に循環加温)であり、導入形態の特徴としては、ヒートポンプを加熱対象(洗浄槽など)に近接して設置し、蒸気供給ロスや設置工事費の削減を図る場合が多く見られます。また、空気熱源ヒートポンプが屋内に設置される場合は、ヒートポンプから発生する冷風によって作業環境の改善や空調負荷の低減効果も期待されています。設計ポイントとして、「必要加熱容量の算定」 「加熱方式の選択」 「ヒートポンプ容量・台数の選定」について紹介します。

主な保温・加温用途

◎塗装前処理(脱脂、湯洗、防錆、化成)◎各種部品洗浄◎メッキ槽保温◎食品材料の保温◎チョコレートの湯煎

導入検討を行う場合は、まずは加熱対象の必要加熱容量について算定することが必要となりますが、実測データがない場合は、ある程度の推定も含め加熱容量を算定する必要があります。洗浄槽の場合を例に、いくつかの算定方法について紹介します。

①加熱対象のドレン量からの算定方法加熱に使用している蒸気圧力[MPa]、ドレン量[L/h]、ドレン温度[℃]がわかる場合には以下の方法で算定ができます。【計算式】 必要加熱能力[kW]=(供給蒸気のエンタルピー[MJ/kg]ードレンのエンタルピー[MJ/kg])×ドレン量÷3.6×安全率

◎補給水がある場合には注意(補給水負荷が大きい場合あり)。◎仕上げ洗浄は純水を利用する場合あり。 純水の場合SUS品でも腐食の可能性あり。

用 途:荒洗浄または仕上げ洗浄、低温殺菌 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

湯 洗

◎洗浄液はアルカリ系が多い(pH8以上)ため、 できればSUSを使用すること。◎pH6以下ではSUSでも腐食の可能性が大きいため、 間接加熱方式とします。

用 途:洗浄 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

脱 脂

◎析出(詰り)傾向が高いので、直接加熱は不可です。温水による間接加熱が多い温度帯:35~55℃化 成

◎析出(詰り)傾向が高いことと同時に腐食の傾向がありますので、 間接加熱方式とします。

強酸が多い(pH3程度)樹脂熱交換器やチタン熱交換器の採用が多いメ ッ キ

②ポンプ循環流量からの算定方法洗浄液の往還温度差[℃]、ポンプ循環流量[L/min]が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=洗浄液の往還温度差×ポンプ循環流量×60分÷860×安全率

※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。

③ワーク負荷からの算定方法ワーク1単位の重量[kg/サイクル]:A、処理時間[秒/サイクル]:B、ワーク比熱[kJ/kg℃]:C、周囲温度[℃]:D、洗浄液温度[℃]:E が分かる場合【計算式】 1時間当たりの処理量[kg]=A×60秒÷B×60分

必要加熱能力[kW]=(E-D)×処理量×C÷3600×安全率※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。ワークの吊り具やパレットの熱量も考慮が必要な場合があります。

④現行熱源で操業中の槽内温度低下からの算定方法現行熱源での加熱停止温度[℃]:A、同左加熱開始温度[℃]:B、停止から開始までの時間[分]:C、タンク容量[L]:D が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=(A-B)×D×60分÷C÷860×安全率

ヒートポンプによる加熱方式としては、熱交換器を介して加熱を行う「間接加温方式」と、溶液を直接ヒートポンプで加温する「直接加温方式」があります。 熱交換器を介するとヒートポンプ出口温度を5~10℃高くする必要があり、また、ポンプ動力なども必要となるため、加熱効率、付帯設備コスト、設置スペース面で、直接加温が有利となりますが、まずは、溶液の種類によって、直接加温の適用可否を判断する必要があります(下表参照)。また、熱交換器を加温槽内に設置可能な場合は、設置スペース、経済性で有利となる場合があり、選択肢の一つとなります。いずれにしても、加熱方式の選択は、既設洗浄設備との協調が重要となります。

ヒートポンプ容量・台数を選定する場合、操業前の立上げ時と生産稼働時では条件が大きく異なり、立上条件で台数選定すると、使用台数が増える傾向になります。 従って、手順としては次の流れで選定します。

❶ライン稼働時の負荷を算出(必要加熱能力より求めた数値)⬇❷季節により負荷を想定し、冬期のみ必要台数が極端に多い場合などはハイブリッド方式の採用を考慮する。⬇❸選んだ台数での立上想定時間を算出。立上時間が許容範囲外の場合は、立上負荷に見合った台数を選定するか、ハイブリッド方式の採用を検討する(この場合、冬期のみが達成できないケースが多い)。

各ケースで経済性や省エネ性等の比較を行い、最終的な容量・台数を選定します。

ヒートポンプ容量・台数の選定

ヒートポンプの2つの加熱方式

用 途 概要・特徴 注意点・ポイント

・ワーク重量・比熱・処理時間

・ポンプ循環流量・洗浄液温度(往) ・タンク容量

・洗浄液温度(還)

洗浄槽

ワーク

現行加熱熱源(蒸気、電気ヒータなど)

ヒートポンプの加熱方式は、保温用途などに使われる「循環式加温」と、洗浄用途などに使われる「一過式加温」の2つの方式があります。ヒートポンプは冷媒の種類によって、得意な加熱方式が異なるため、機種選定の際には注意が必要です。■循環式加温保温用途のように少ない温度幅で加温する方式◎洗浄槽の加温、保温 ◎食品原料の保温▶フロン系冷媒が得意■一過式加温給湯用途のように給水などを大温度差で昇温する方式◎給湯 ◎洗浄▶CO2冷媒が得意(エコキュートが代表)▶フロン系冷媒でも可能

加熱能力﹇kW﹈ ヒートポンプ1台

ヒートポンプ2台

ヒートポンプ3台

必要加熱能力

春 夏 秋 冬

用途別設計ポイント保温・加熱用途

ライン上部の架台に設置したヒートポンプユニット

空気熱源ヒートポンプの例

■導入事例ヤマハ発動機株式会社 袋井南工場さまエンジン部品の表面処理ラインにヒートポンプ加温システムを導入〔ものづくりに電気vol.3 p29〕

加 熱 方 式 の 検 討

必要加熱容量 の 算定

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【洗浄機構成例(シャワー方式)】

洗 浄 槽

【間接加温方式】

60℃

65℃

65℃

15℃

ヒートポンプ

ヒートポンプ

循環式加温

洗浄槽

貯湯タンク

洗浄槽

洗浄槽

洗浄槽

バッファタンク 熱交換器

ヒートポンプ

【間接加温(プレートコイル)方式】

バッファタンク プレートコイル

ヒートポンプ

【直接加温方式】

ヒートポンプ

給水

シャワー

カラン

一過式加温

ヒートポンプの保温用途としては、塗装前の表面処理である脱脂、湯洗、化成槽の保温や、食品材料の保温などに多く利用されています。「加熱方式」は、加温槽やワークからの放熱分を補う保温(主に循環加温)であり、導入形態の特徴としては、ヒートポンプを加熱対象(洗浄槽など)に近接して設置し、蒸気供給ロスや設置工事費の削減を図る場合が多く見られます。また、空気熱源ヒートポンプが屋内に設置される場合は、ヒートポンプから発生する冷風によって作業環境の改善や空調負荷の低減効果も期待されています。設計ポイントとして、「必要加熱容量の算定」 「加熱方式の選択」 「ヒートポンプ容量・台数の選定」について紹介します。

主な保温・加温用途

◎塗装前処理(脱脂、湯洗、防錆、化成)◎各種部品洗浄◎メッキ槽保温◎食品材料の保温◎チョコレートの湯煎

導入検討を行う場合は、まずは加熱対象の必要加熱容量について算定することが必要となりますが、実測データがない場合は、ある程度の推定も含め加熱容量を算定する必要があります。洗浄槽の場合を例に、いくつかの算定方法について紹介します。

①加熱対象のドレン量からの算定方法加熱に使用している蒸気圧力[MPa]、ドレン量[L/h]、ドレン温度[℃]がわかる場合には以下の方法で算定ができます。【計算式】 必要加熱能力[kW]=(供給蒸気のエンタルピー[MJ/kg]ードレンのエンタルピー[MJ/kg])×ドレン量÷3.6×安全率

◎補給水がある場合には注意(補給水負荷が大きい場合あり)。◎仕上げ洗浄は純水を利用する場合あり。 純水の場合SUS品でも腐食の可能性あり。

用 途:荒洗浄または仕上げ洗浄、低温殺菌 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

湯 洗

◎洗浄液はアルカリ系が多い(pH8以上)ため、 できればSUSを使用すること。◎pH6以下ではSUSでも腐食の可能性が大きいため、 間接加熱方式とします。

用 途:洗浄 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

脱 脂

◎析出(詰り)傾向が高いので、直接加熱は不可です。温水による間接加熱が多い温度帯:35~55℃化 成

◎析出(詰り)傾向が高いことと同時に腐食の傾向がありますので、 間接加熱方式とします。

強酸が多い(pH3程度)樹脂熱交換器やチタン熱交換器の採用が多いメ ッ キ

②ポンプ循環流量からの算定方法洗浄液の往還温度差[℃]、ポンプ循環流量[L/min]が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=洗浄液の往還温度差×ポンプ循環流量×60分÷860×安全率

※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。

③ワーク負荷からの算定方法ワーク1単位の重量[kg/サイクル]:A、処理時間[秒/サイクル]:B、ワーク比熱[kJ/kg℃]:C、周囲温度[℃]:D、洗浄液温度[℃]:E が分かる場合【計算式】 1時間当たりの処理量[kg]=A×60秒÷B×60分

必要加熱能力[kW]=(E-D)×処理量×C÷3600×安全率※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。ワークの吊り具やパレットの熱量も考慮が必要な場合があります。

④現行熱源で操業中の槽内温度低下からの算定方法現行熱源での加熱停止温度[℃]:A、同左加熱開始温度[℃]:B、停止から開始までの時間[分]:C、タンク容量[L]:D が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=(A-B)×D×60分÷C÷860×安全率

ヒートポンプによる加熱方式としては、熱交換器を介して加熱を行う「間接加温方式」と、溶液を直接ヒートポンプで加温する「直接加温方式」があります。 熱交換器を介するとヒートポンプ出口温度を5~10℃高くする必要があり、また、ポンプ動力なども必要となるため、加熱効率、付帯設備コスト、設置スペース面で、直接加温が有利となりますが、まずは、溶液の種類によって、直接加温の適用可否を判断する必要があります(下表参照)。また、熱交換器を加温槽内に設置可能な場合は、設置スペース、経済性で有利となる場合があり、選択肢の一つとなります。いずれにしても、加熱方式の選択は、既設洗浄設備との協調が重要となります。

ヒートポンプ容量・台数を選定する場合、操業前の立上げ時と生産稼働時では条件が大きく異なり、立上条件で台数選定すると、使用台数が増える傾向になります。 従って、手順としては次の流れで選定します。

❶ライン稼働時の負荷を算出(必要加熱能力より求めた数値)⬇❷季節により負荷を想定し、冬期のみ必要台数が極端に多い場合などはハイブリッド方式の採用を考慮する。⬇❸選んだ台数での立上想定時間を算出。立上時間が許容範囲外の場合は、立上負荷に見合った台数を選定するか、ハイブリッド方式の採用を検討する(この場合、冬期のみが達成できないケースが多い)。

各ケースで経済性や省エネ性等の比較を行い、最終的な容量・台数を選定します。

ヒートポンプ容量・台数の選定

ヒートポンプの2つの加熱方式

用 途 概要・特徴 注意点・ポイント

・ワーク重量・比熱・処理時間

・ポンプ循環流量・洗浄液温度(往) ・タンク容量

・洗浄液温度(還)

洗浄槽

ワーク

現行加熱熱源(蒸気、電気ヒータなど)

ヒートポンプの加熱方式は、保温用途などに使われる「循環式加温」と、洗浄用途などに使われる「一過式加温」の2つの方式があります。ヒートポンプは冷媒の種類によって、得意な加熱方式が異なるため、機種選定の際には注意が必要です。■循環式加温保温用途のように少ない温度幅で加温する方式◎洗浄槽の加温、保温 ◎食品原料の保温▶フロン系冷媒が得意■一過式加温給湯用途のように給水などを大温度差で昇温する方式◎給湯 ◎洗浄▶CO2冷媒が得意(エコキュートが代表)▶フロン系冷媒でも可能

加熱能力﹇kW﹈ ヒートポンプ1台

ヒートポンプ2台

ヒートポンプ3台

必要加熱能力

春 夏 秋 冬

用途別設計ポイント保温・加熱用途

ライン上部の架台に設置したヒートポンプユニット

空気熱源ヒートポンプの例

■導入事例ヤマハ発動機株式会社 袋井南工場さまエンジン部品の表面処理ラインにヒートポンプ加温システムを導入〔ものづくりに電気vol.3 p29〕

加 熱 方 式 の 検 討

必要加熱容量 の 算定

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【 給湯バランスイメージ(ゆで麺工程の場合) 】[ℓ]16000

14000

12000

10000

8000

6000

4000

2000

22時

23時

1時

0時

2時

3時

4時

5時

6時

7時

8時

9時

10時

11時

12時

13時

14時

15時

16時

17時

18時

19時

20時

21時

0

22 23 211512時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018

【 夜間貯湯方式 】 【 ベース運転方式 】 【 ハイブリッド給湯方式 】

給湯使用量給湯製造量

残湯量

用途別設計ポイント洗浄・給湯・殺菌用途 用途別設計ポイント乾燥用途洗浄、給湯、殺菌用途はヒートポンプの導入が進んでいる用途の一つで、食品製造業をはじめ、機械関連、電子デバイス等、多くの分野で導入されています。加熱温度としては、食品製造業では仕込み用の給湯や殺菌を目的とする80℃以上での高温利用と、洗浄などに45~65℃で使用するケースが多く、機械部品の洗浄などでは60~70℃といった比較的低い温度で利用されています。加熱方式としては給湯利用を中心に一過式が多く、設計ポイントとしては、業務用の給湯利用と類似している点が多くあります。給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方等について紹介します。

主な洗浄、給湯、殺菌用途

◎CIP洗浄(リンス水)◎食品製造装置の洗浄・殺菌◎飲料製造装置の洗浄・殺菌◎自動車部品洗浄(ブレーキディスク)◎純水、超純水の加温◎調理器具洗浄、調理用温水

燃焼式給湯システムとヒートポンプ式給湯システムの設計手法の違い燃焼式とヒートポンプ式では設計手法が大きく異なり、燃焼式の容量選定が時間最大給湯負荷(ピーク負荷)をベースに設計されるのに対し、ヒートポンプ式は日給湯負荷と時刻別給湯負荷からヒートポンプ容量や貯湯タンク容量が選定されます(下図参照)。

【計算式】 必要ヒートポンプ容量[kW]=日給湯負荷[kWh/日]÷ヒートポンプ運転時間[h]

負荷特性とシステム構成ヒートポンプ式による最適なシステム構成は負荷特性によって大きく異なり、主に負荷の発生する時間帯と負荷変動の大きさで選択されます。●負荷の発生する時間が昼間が主となる場合:「夜間貯湯方式」を考慮し、それ以外は「ベース運転方式」となります。●日間、季節間の負荷変動が大きい場合:負荷を全量ヒートポンプで対応するとなるとヒートポンプの稼働時間が低下し、貯湯タンクからの放熱量が増加するなど経済性が悪化するため、変動負荷の場合はボイラーとの「ハイブリッド給湯方式」を考慮することになります。

《システム構成検討時のポイント》●給湯負荷の正確な把握負荷特性でシステム構成が大きく影響を受けるため、正確な負荷想定が重要となります。負荷想定が難しい場合は、最初からハイブリッド給湯を選択します。●適切なヒートポンプ容量と貯湯タンク容量の選定ヒートポンプ容量を大きくすると環境性やランニングコストは向上しますが、イニシャルコストが大きくなり、設備稼働率の低下を招きます。ハイブリッド給湯とする場合は、年間最大給湯負荷(一般的には冬場)ではなく、稼働時間を確保できるポイントで容量選択をすることが重要となります。また、貯湯タンク容量を過大に選定すると、低負荷時の放熱ロス増大の要因となります。

給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方と留意点

STEP 1給湯負荷の想定◎日給湯負荷◎時刻別給湯負荷◎最大給湯負荷 等

STEP 2システム構成の選択夜間貯湯方式ベース運転方式ハイブリッド給湯方式

STEP 3ヒートポンプ容量貯湯タンク容量

の選定◎給湯バランス図の作成◎設置スペースの有無◎最大負荷日での検証 等

洗 浄

▼検討フロー▼

給湯負荷

ヒートポンプ運転

さし湯さし湯

温水張り込み 昼休み

※日給湯負荷=時刻別給湯負荷の合計(青色の合計)

他熱源

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【 給湯バランスイメージ(ゆで麺工程の場合) 】[ℓ]16000

14000

12000

10000

8000

6000

4000

2000

22時

23時

1時

0時

2時

3時

4時

5時

6時

7時

8時

9時

10時

11時

12時

13時

14時

15時

16時

17時

18時

19時

20時

21時

0 アンデックス製 乾燥炉外観

循環加温ヒートポンプ

高温水ヒートポンプ

OA 0℃RA 70℃

SA 70~75℃ EA 70℃88℃

チャンバー

熱交換器

乾燥炉

22 23 211512時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018

【 夜間貯湯方式 】 【 ベース運転方式 】 【 ハイブリッド給湯方式 】

給湯使用量給湯製造量

残湯量

用途別設計ポイント洗浄・給湯・殺菌用途 用途別設計ポイント乾燥用途洗浄、給湯、殺菌用途はヒートポンプの導入が進んでいる用途の一つで、食品製造業をはじめ、機械関連、電子デバイス等、多くの分野で導入されています。加熱温度としては、食品製造業では仕込み用の給湯や殺菌を目的とする80℃以上での高温利用と、洗浄などに45~65℃で使用するケースが多く、機械部品の洗浄などでは60~70℃といった比較的低い温度で利用されています。加熱方式としては給湯利用を中心に一過式が多く、設計ポイントとしては、業務用の給湯利用と類似している点が多くあります。給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方等について紹介します。

主な洗浄、給湯、殺菌用途

◎CIP洗浄(リンス水)◎食品製造装置の洗浄・殺菌◎飲料製造装置の洗浄・殺菌◎自動車部品洗浄(ブレーキディスク)◎純水、超純水の加温◎調理器具洗浄、調理用温水

乾燥用に利用されるヒートポンプとしては、120℃までの熱風が出せる熱風ヒートポンプや、90℃までの温水が供給できる高温水ヒートポンプが多く用いられており、高温水ヒートポンプは加熱温度帯ごとに多くのラインナップが商品化されています。乾燥用途としては、主に100℃未満の温度での用途が多く、塗装乾燥、食品乾燥、ラミネート乾燥などに多くの適用事例があります。100℃以上の事例もありますが、その場合はある程度の温度までヒートポンプで昇温し、それ以上の加熱は他熱源で対応するハイブリッド加熱となるケースが多くなります。これは、ヒートポンプをよりエネルギー効率の高い範囲で運転することで、システム全体として省エネ性を高める工夫です。代表例として、塗装乾燥用途の設計ポイントについて紹介します。

強制乾燥炉へのヒートポンプ採用事例として、アンデックス㈱山波工場(尾道市)の板金塗装ラインに設置された乾燥炉(乾燥温度70℃)を例に説明します。

乾燥炉の加熱負荷には立上げ負荷と乾燥時の負荷があります。立上げ負荷は、乾燥炉の筐体、床、乾燥炉内の空気を昇温させる負荷で、炉内を乾燥温度まで昇温する際に発生します。乾燥時の負荷には、炉体・ダクトの放熱、対象ワーク・パレット・台車等の昇温、換気負荷等があります。一般に乾燥時の負荷より立上げ負荷が大きくなりますが、ヒートポンプは無人運転やタイマー運転が可能であるため、立上げ時間を通常よりやや長い時間に設定することにより、乾燥時の負荷とのバランスを取ることができます。強制乾燥炉は温風を循環させますが、炉内の溶剤の濃度を一定以下に保つように外気を取り入れて換気します。乾燥炉からの還気(RA)と外気(OA)とを混合し、温水・空気熱交換器で昇温して乾燥炉に給気(SA)します。乾燥炉から一部空気を排気(EA)するため、循環風量SA=RA+OAであり、還気風量RA=SA-EAとなります。温水熱交換器(HEX)では乾燥炉の加熱負荷分の昇温をしますが、上記エアフローとすることにより、熱交換器手前の空気温度を下げることができ、温水との温度差を確保することができるため、熱交換器を最小容量に選定することができます。導入に当たっては、給水の水質を事前に測定し、日本冷凍空調工業会が定めた冷凍空調用水質ガイドライン(JRA GL-02-1994)に準拠し、温水温度によって低位中温水系(20℃を超え60℃以下)、または高位中温水系(60℃を超え90℃以下)の補給水の水質を満足することを確認するとともにメーカーと十分に調整を行います。また、運用にあたっては同ガイドラインの循環水の水質基準を参考に、定期的なブローや水質調整薬剤の使用を検討することも重要です。

主な乾燥用途

◎塗装乾燥(樹脂塗装)◎印刷乾燥◎ドライラミネート◎食品乾燥◎染色乾燥◎変圧器コイル乾燥

ヒートポンプが適用されている塗装工程

◎表面処理(脱脂、湯洗、化成 等)◎スプレー塗装(塗装ブース空調)◎塗装乾燥(強制乾燥)◎電着塗装(電着槽冷却)◎焼付塗装(フラッシュオフ工程)

ウレタン樹脂系塗料

ラッカー、ビニル樹脂系塗料

ウレタン系樹脂塗料

エポキシ系樹脂塗料

アミノアルキッド系のメラミン焼付け塗料

アクリル系焼付け塗料

アニオン電着塗料(アクリル)

カチオン電着塗料(エポキシ)

自 然 乾 燥

強 制 乾 燥

焼付け乾燥

樹 脂 塗 装

焼付け塗装

電 着 塗 装

塗装ラインには図のように多くのヒートポンプが適用されていますが、このうち塗装乾燥工程では、乾燥温度が40~80℃と比較的低い強制乾燥にヒートポンプの活用が期待されています。乾燥は大きく分けると塗料を希釈する水や溶剤を長時間かけて蒸発させる自然乾燥と、塗料を

150℃前後の高温で重合させ短時間で硬化させる焼付け塗装がありますが、樹脂系塗料では中間的な温度帯で塗料の乾燥を促進させる強制乾燥が用いられており、乾燥温度は多くの場合40~80℃と、ヒートポンプの適用が可能となっています。現在市販されているヒートポンプ温水出口温度の上限は、空調用で55℃、温水用で60~75℃、高温水用で80~90℃となっており、乾燥温度に応じたヒートポンプを採用することができます。強制乾燥炉の用途としては家具・楽器等の木工製品、樹脂製品、自動車下塗り塗装、航空機・列車・建機の塗装等があります。

塗装乾燥とヒートポンプの適用方法

強制乾燥への適用事例

燃焼式給湯システムとヒートポンプ式給湯システムの設計手法の違い燃焼式とヒートポンプ式では設計手法が大きく異なり、燃焼式の容量選定が時間最大給湯負荷(ピーク負荷)をベースに設計されるのに対し、ヒートポンプ式は日給湯負荷と時刻別給湯負荷からヒートポンプ容量や貯湯タンク容量が選定されます(下図参照)。

【計算式】 必要ヒートポンプ容量[kW]=日給湯負荷[kWh/日]÷ヒートポンプ運転時間[h]

負荷特性とシステム構成ヒートポンプ式による最適なシステム構成は負荷特性によって大きく異なり、主に負荷の発生する時間帯と負荷変動の大きさで選択されます。●負荷の発生する時間が昼間が主となる場合:「夜間貯湯方式」を考慮し、それ以外は「ベース運転方式」となります。●日間、季節間の負荷変動が大きい場合:負荷を全量ヒートポンプで対応するとなるとヒートポンプの稼働時間が低下し、貯湯タンクからの放熱量が増加するなど経済性が悪化するため、変動負荷の場合はボイラーとの「ハイブリッド給湯方式」を考慮することになります。

《システム構成検討時のポイント》●給湯負荷の正確な把握負荷特性でシステム構成が大きく影響を受けるため、正確な負荷想定が重要となります。負荷想定が難しい場合は、最初からハイブリッド給湯を選択します。●適切なヒートポンプ容量と貯湯タンク容量の選定ヒートポンプ容量を大きくすると環境性やランニングコストは向上しますが、イニシャルコストが大きくなり、設備稼働率の低下を招きます。ハイブリッド給湯とする場合は、年間最大給湯負荷(一般的には冬場)ではなく、稼働時間を確保できるポイントで容量選択をすることが重要となります。また、貯湯タンク容量を過大に選定すると、低負荷時の放熱ロス増大の要因となります。

乾燥方法 塗 料(例) 乾燥温度 乾燥時間塗装方法(例)

給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方と留意点

常温 数時間~数日

1~数時間

20~30分

常温~80℃(MAX120℃)

110~160℃

140~180℃

150~180℃

ヒートポンプ適用温度

ハイブリッド加熱適用温度(ヒートポンプ   +他熱源)

表面処理

塗装乾燥

ドライラミネートの事例

STEP 1給湯負荷の想定◎日給湯負荷◎時刻別給湯負荷◎最大給湯負荷 等

STEP 2システム構成の選択夜間貯湯方式ベース運転方式ハイブリッド給湯方式

STEP 3ヒートポンプ容量貯湯タンク容量

の選定◎給湯バランス図の作成◎設置スペースの有無◎最大負荷日での検証 等

洗 浄

▼検討フロー▼

給湯負荷

ヒートポンプ運転

さし湯さし湯

温水張り込み 昼休み

※日給湯負荷=時刻別給湯負荷の合計(青色の合計)

【 強制乾燥用途のシステム構成 】

他熱源

13 14

Page 5: 用途別設計ポイント 保温・加熱用途【洗浄機構成例(シャワー方式)】 洗浄槽 【間接加温方式】 60 65 65 15 ヒートポンプ ヒートポンプ

膨張弁

圧縮機

【蒸気ヒートポンプの場合】

蒸気 加熱

廃熱

生産プロセス(蒸発器等)

【MVR(蒸気圧縮式)の場合】※廃熱を熱交換する間接式もある

加熱

廃熱(廃蒸気)

ヒートポンプ

再圧縮蒸気

冷媒 生産プロセス(蒸発器等)

排ガス入口排ガス入口排ガス入口

用途別設計ポイント濃縮・蒸留用途 廃熱回収のポイントと注意点廃熱源と熱交換器の選択ヒートポンプを有効に機能させるためには、いかに上手に廃熱を活用するかが重要なポイントになります。そのためには、まずは、工場から排出されている廃熱が何処にあるかを把握し、その廃熱に合った適切な熱交換方式を選択することが重要です。熱交換器の選択にあたっては、廃熱源の「温度」「流量」「流体の性状」「スケール固着の有無」「腐食性」「工場・設備の状況」など、いくつかの判断要素があります。 以下、廃温水、廃ガスからの熱回収の注意点を紹介します。

廃熱の発生箇所(例)

◎排水処理設備(温水) ◎冷却塔の戻り温水 ◎洗浄後の温水 ◎乾燥炉、熱処理炉からの排気◎ボイラー排ガス、ドレン、ブロー水◎食品調理後の排温水、排気

排水中には、髪の毛、食物残渣、砂、有機物などの多種多様なスケールが混在しており、廃熱回収では熱交換器の閉塞に最も注意が必要です。また、熱交換器は運転中にスケール分の付着により性能低下が起きるので、定期的な開放点検・洗浄が必要となります。とはい

え洗浄の頻度は極力少なく、かつメンテナンスがしやすいタイプの熱交換器を選定する事が大切です。《 熱交換器の機種選定 》工場で広く使用されている熱交換器としては「プレート式」「シェル&チューブ式(多管式)」「スパイラル式」の3種がありますが、各々の機種には一長一短があるため、表に記載の特徴と得意用途をご参考下さい。

廃温水からの熱回収の注意点

沸点上昇と圧縮温度の選定

燃焼排ガス中には、腐食成分であるNOx、SOxが含まれている場合があります。これらの成分を含むガスを冷却して熱回収を行った場合、結露水中に硝酸、硫酸が発生し金属を腐食させることがあり、酸露点問題となっています。一方で酸露点を通過して徹底的に熱回収を行うと莫大な潜熱を得ることができ、メリットが多いのも事実です。

酸腐食のリスクがある場合、絶対に腐食させてはいけない現場なのか?、それとも投資回収メリットがあれば、多少腐食リスクがあってもメンテナンスで対応できればいいのかという考え方で、廃熱回収の選択は大きく異なります。そもそも熱交換器は絶対壊れない構造というものはありませんが、腐食リスクはその考え方で材質選定に選択肢がでるため多くの可能性があるのも事実です。都市ガス、LPガスの燃焼排ガス中にもNOxがあり、微小ではありますがSOxも含まれています。従って長期的にみるとSUS316でも孔食リスクは存在することになります。しかし燃焼時に多くの水分も発生するために、潜熱が大量に回収できることがメリットとなります。一方、A重油では、大量のSOxが含まれており、水分は都市ガスの半分以下であるため潜熱メリットは少ないものとなります。A重油廃ガスでは、SUS316だけでなく腐食に強いと言われているチタンでも腐食してしまう事例があるため、

廃熱回収をする場合には都市ガスやLPガスに燃料転換以後に検討することが妥当と言えます。これらの排ガスを熱回収する熱交換器は、極力スキマ腐食を防止するために、カシメ構造のフィンチューブは避ける必要があります。さらには、排ガスの抵抗が大きくなると動力を必要としてしまうため、低圧力損失設計を行うことも大切です。しかし低圧力損失設計と高効率化は相反することになる場合があるため、気体を相手にする排ガス熱回収熱交換器は、難しい設計環境といえます。チューブタイプの熱交換器は全般的に圧力損失が大きくなる傾向であるため、最近では排ガス専用設計のプレート式熱交換器も登場し、低圧力損失と高効率の両立、モジュール構造での簡単な交換対応も可能となるアイテムが登場しています。

廃ガスからの熱回収の注意点

MVR検討の際には、原液の性状を十分に把握し、それに対応した装置を計画することが重要です。主に、以下の5つの点に注意をして計画します。 ⑴スケーリング(汚れ) 汚れはメンテナンス性に関係します。汚れる要因であるスケール成分とその濃度を把握し、薬剤で除去可能かなど、予め薬液洗浄の効果を確認しておく必要があります。 ⑵材 質 選 定 加熱装置ですので、材質選定は最も重要なポイントといえます。腐食しないよう溶質やその濃度に応じて、適切な材質を選定します(特に酸性の低沸点物など)。 ⑶発 泡 性 泡立ちが激しい液の場合は、原液成分を含んだ泡が蒸気と共に移行してしまうため、泡を制する機構を設ける必要があります。 ⑷沸 点 上 昇 溶液の濃度が上がると沸点が上昇するため、沸点上昇度を把握することは圧縮機の選定に重要な圧縮温度を把握するキーポイントになります。 ⑸蒸留水水質 蒸留によって生成される水の水質は、原液成分に依存するので、水の回収、放流といった目的に適合するかどうかは事前に確認しておく必要があります。これらのポイントを押さえるため、サンプル液を用いた試験を実施し事前に確認します。

MVR検討の5つポイント

MVRは圧縮することによって昇温する装置ですので、沸点上昇の把握と圧縮温度の選定は、設計上最も重要な要素になります。沸点上昇と圧縮温度の関係は通常以下となります。

【各温度の関係】 圧縮温度=沸点上昇+加熱温度差ΔT沸点上昇は溶液濃度の上昇につれて右肩上がりに高くなります。沸点上昇が低いほど圧縮に必要な温度差は小さくなり、消費電力が小さくなります。従って、沸点上昇が小さいほど省エネ性に優れた装置導入が期待されます。一方、加熱温度差を大きくすると、消費電力は大きくなりますが加熱ヒータの伝熱面積は小さくすることができ、両者の関係を踏まえて最適な設計ポイントを決めることになります。また、圧縮温度によって最適な圧縮機も異なります。

プレート式熱交換器

スパイラル式熱交換器

シェル&チューブ式(多管式)熱交換器

分 類 特 徴

◎切削油等の排水処理

◎高沸点有機溶剤回収(NMP、DMSO、MEA等):リチウムイオン電池、液晶、半導体◎排水減溶化◎各種濃縮:塩、調味料、液糖、お茶、

牛乳、発酵液、エキス◎ビールの煮沸◎アルコールの蒸留◎高沸点有機溶剤回収:化学品、膜製造◎バイオエタノールの蒸留◎苛性ソーダ濃縮◎脱硫排水処理◎ホウ素・ヨウ素の回収◎汚泥減溶化

自 動 車・機 械

電 子 デ バ イ ス

食 品

医薬・化学・石油

資源・エネルギー

MVRの適用事例

得意とする廃熱回収用途

スパイラル式熱交換器

排ガス用プレート式熱交換器

濃縮、蒸留、減容化などに使われるヒートポンプには2つのタイプがあります。一つは廃熱と冷媒を熱交換し、冷媒を介して蒸気を作るタイプの「蒸気ヒートポンプ」と、もう一つは廃蒸気を圧縮機で直接再圧縮して昇温する「MVR(Mechanical Vapor Recompression)」と呼ばれるタイプです。「蒸気ヒートポンプ」の場合は、高温ヒートポンプとシステム構成が類似していることから、適用方法も似ており、より高温の廃熱を使って蒸気を生成するヒートポンプです。それに対して「MVR」は、冷媒を介さないで直接蒸気を圧縮するため効率は良くなりますが、直接取り扱う上での課題もあり、適用の考え方が大幅に異なります。どちらが良いかはケースバイケースとなります。以下、 MVR適用の考え方について紹介します。

スケーリング(汚れ)

材質選定

発泡性沸点上昇

蒸留水水質サンプルテスト

類似液実績での評価

圧縮機を複数台つなぐ●消費動力UP●イニシャルコストUP

高圧縮タイプの圧縮機●消費動力UP

最も省エネ性に優れる高効率な範囲

典型的な沸点上昇グラフ

省エネ性向上

苛性ソーダ濃縮塩の濃縮

etc.糖液の濃縮お茶・エキスの濃縮

クーラント・離型剤排水濃縮

【処理液濃度と沸点上昇の関係】

16℃0℃

沸点上昇

伝熱面積

[m2]

消費電力

[kW]

20℃

0℃処理液濃度

圧縮温度差[℃]

晶析装置乾燥装置

etc.

伝熱面積

最適設計ポイント

消費電力

【圧縮温度差と伝熱面積の関係※】

圧縮機

※出典:松尾、中西(2016),「MVRの概要」、エレクトロヒート No.209

安価で高効率かつコンパクト。流間が狭いため、固形物汚れが詰まりやすく、排水、スラリー液などには不適。きょう雑物の無い流体には適する。24時間工場等での安定運転の為に予備機を設置し、交互に切替え運転を行うケースがある。プレートは分解可能タイプがあり、清掃・点検が可能であるが、大型になるとメンテナンスも複雑になる。イニシャルコストは廉価であるが、汚れ対策のメンテナンス費が嵩む場合がある。

歴史が古くプレート式が日本市場に本格参入するまで主役的な存在。プレート式のような高効率とはならないが、多数の管を用いた形状から、メンテナンスが容易であり、高圧設計、肉厚腐食代設計、安定した性能を維持することが可能であることから、現在でも多くの石油・化学プラントで採用されている。プレート式と比較すると効率的には劣るが、大流量で安定性が特徴。

排水系や閉塞を起こしやすい流体を扱う場合に用いることで、高効率で長期間安定運転が可能となる。多管式に比べて小型設計。伝熱板の隙間をらせん状に流れるので、流体中の汚れを掻き上げながら旋回し汚れを除去する「自己洗浄作用」が働く。予備機の設置が不要となる場合もあり、メンテナンス頻度も少なく済むため、ランニングコストの大幅な低減が可能。

◎食品プラントの廃熱回収

◎空調、化学プラントの清浄な流体からの熱回収

◎下水汚泥、工場排水など汚れの激しい流体からの熱回収

◎化学、製紙、繊維など各種工程の汚れた流体からの熱回収

◎石油、化学、製紙、食品、医薬などほぼ全てのプラントに採用されている

監修:MDI株式会社、株式会社クロセ15 16