堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 ·...

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堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics of toxic heavy metals of sedimentary rock mucks ○田本修一,岡﨑健治,阿南修司,伊東佳彦(寒地土木研究所),五十嵐敏文(北海道大学) Shuichi Tamoto,Kenji Okazaki,Shuji Anan, Yoshihiko Ito,Toshihumi Igarashi 1.はじめに 重金属,揮発性有機化合物等による土壌汚染が顕在 化してきたことを背景に,平成 15 年 2 月に人為的活動 による土壌汚染を対象に「土壌汚染対策法」が施行さ れた.これを受けて平成 15 年 7 月に「建設工事で遭遇 する地盤汚染対応マニュアル(暫定版)」 1) が発刊され た.しかし自然由来の重金属類については,人為由来 の汚染に準じるとされているのみで,より実態に即し た自然由来の重金属類についての評価,対策手法の確 立が急務となっている. 北海道内の土木工事においても,海成堆積岩や熱水 変質の影響を受けた火山岩分布域を中心として,環境 基準を超過して重金属類が溶出したり,酸性水が流出 したりする事例が確認されている.これらの事例のう ち道路建設事業ではシート等による遮水による汚染拡 散防止対策が主体となっているが,費用が高く全体工 事費の大幅な増加の要因となっている. 砒素や鉛などの重金属類は土壌による吸着効果が大 きいため,汚染土を覆土や敷土によって包み込むこと によって,降雨による水の浸透と酸素の侵入が抑制さ れ重金属類の溶出が低減されるとともに,土壌から溶 出した重金属類は敷土への吸着により,外部への溶出 濃度の低減が期待される.この方法を実際の対策に適 用するには溶出源の特性を適切に評価することが重要 である,現状では岩石ずりからの重金属類の溶出評価 には,全量分析値が用いられることがあるが,この方 法では重金属類の岩石中の結合形態にかかわらず分析 しており,溶出現象に対しては溶解しにくい成分も含 めた過大な評価となるため,溶出源の合理的な評価を 行うことが求められている. 本報では,岩石ずりからの合理的な重金属類溶出源 評価法の構築を目的に,堆積岩中の重金属類の溶出特 性について,存在形態と風化の影響を検討するため, 北海道内のトンネル建設現場で採取された試料を用い て分画抽出試験を行い,重金属類存在形態の変化と連 続溶出試験による重金属類の溶出特性について考察す る. 2.試験方法 2.1 試料 試料は,北海道内のトンネル建設の事前調査ボーリ ングコアから採取した砂岩と泥岩(表-1)である.ボ ーリングコアからの試料採取では,岩種が均質で熱水 変質を受けていないこと,同一のボーリング孔で風化 部・未風化部が出現することに留意した.なお,表-2 に示す風化区分のうち,泥岩の未風化部と中風化部お よび砂岩の未風化部を試料とした. X線粉末回折結果を表-3に示す.不定方位試料では, 泥岩は石英,斜長石を主成分鉱物とし少量の粘土鉱物 を含む.砂岩は泥岩と比べて斜長石を多く含んでいる. 定方位試料では,泥岩は緑泥石.スメクタイト,雲母/ スメクタイト混合層鉱物,雲母を含む.未風化試料と 中風化試料を比べるとスメクタイトの相対量の相違が 見られる.砂岩は,粘土鉱物は雲母を主とし,少量の 緑泥石,雲母/スメクタイト混合層鉱物を含むが,泥岩 試料の比べ膨潤性粘土鉱物が少ない. 表-1 試料の概要 表-2 風化区分 表-3 X 線粉末回折結果 岩種 記載 砂岩 暗灰色のワッケ質中粒砂岩で,変形作用 を受けている。灰白色の鉱物脈がネット ワーク状に生成。 泥岩 未風化部が暗灰色、中風化部が褐色を帯 びる灰色を呈するが、顕微鏡観察では構 成物の変化は顕著に見られず、基質部の 褐色化のみである。また、中風化部で あってもフランボイダル黄鉄鉱が残存し ている。 砂岩 未風化試料 中風化試料 未風化試料 石英 斜長石 緑泥石 × × × 雲母 × × × 混合層 鉱物※ × × 緑泥石 スメクタイト × 混合層 鉱物※ 雲母 ○:多量,△:中量,×:少量,空白:不検出 ※:雲母/スメクタイト混合層粘土鉱物 泥岩 不定方位 定方位 風化区分 強風化部 褐色化が著しく、岩組織は認めら れず土砂化している。 中風化部 岩組織は認められるが、全体に褐 色化が進行し、軟質化している。 弱風化部 岩組織が明瞭で岩芯は新鮮であ る。割目沿いに褐色化が進行し、 割目面のみ軟質化している。 未風化部 褐色化は認められない。

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堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics of toxic heavy metals of sedimentary rock mucks

田本修一岡﨑健治阿南修司伊東佳彦(寒地土木研究所)五十嵐敏文(北海道大学)

Shuichi TamotoKenji OkazakiShuji Anan Yoshihiko ItoToshihumi Igarashi

1はじめに

重金属揮発性有機化合物等による土壌汚染が顕在

化してきたことを背景に平成 15 年 2 月に人為的活動

による土壌汚染を対象に「土壌汚染対策法」が施行さ

れたこれを受けて平成 15 年 7 月に「建設工事で遭遇

する地盤汚染対応マニュアル(暫定版)」1)が発刊され

たしかし自然由来の重金属類については人為由来

の汚染に準じるとされているのみでより実態に即し

た自然由来の重金属類についての評価対策手法の確

立が急務となっている

北海道内の土木工事においても海成堆積岩や熱水

変質の影響を受けた火山岩分布域を中心として環境

基準を超過して重金属類が溶出したり酸性水が流出

したりする事例が確認されているこれらの事例のう

ち道路建設事業ではシート等による遮水による汚染拡

散防止対策が主体となっているが費用が高く全体工

事費の大幅な増加の要因となっている

砒素や鉛などの重金属類は土壌による吸着効果が大

きいため汚染土を覆土や敷土によって包み込むこと

によって降雨による水の浸透と酸素の侵入が抑制さ

れ重金属類の溶出が低減されるとともに土壌から溶

出した重金属類は敷土への吸着により外部への溶出

濃度の低減が期待されるこの方法を実際の対策に適

用するには溶出源の特性を適切に評価することが重要

である現状では岩石ずりからの重金属類の溶出評価

には全量分析値が用いられることがあるがこの方

法では重金属類の岩石中の結合形態にかかわらず分析

しており溶出現象に対しては溶解しにくい成分も含

めた過大な評価となるため溶出源の合理的な評価を

行うことが求められている

本報では岩石ずりからの合理的な重金属類溶出源

評価法の構築を目的に堆積岩中の重金属類の溶出特

性について存在形態と風化の影響を検討するため

北海道内のトンネル建設現場で採取された試料を用い

て分画抽出試験を行い重金属類存在形態の変化と連

続溶出試験による重金属類の溶出特性について考察す

2試験方法

21 試料

試料は北海道内のトンネル建設の事前調査ボーリ

ングコアから採取した砂岩と泥岩(表-1)であるボ

ーリングコアからの試料採取では岩種が均質で熱水

変質を受けていないこと同一のボーリング孔で風化

部未風化部が出現することに留意したなお表-2

に示す風化区分のうち泥岩の未風化部と中風化部お

よび砂岩の未風化部を試料とした

X線粉末回折結果を表-3に示す不定方位試料では

泥岩は石英斜長石を主成分鉱物とし少量の粘土鉱物

を含む砂岩は泥岩と比べて斜長石を多く含んでいる

定方位試料では泥岩は緑泥石スメクタイト雲母

スメクタイト混合層鉱物雲母を含む未風化試料と

中風化試料を比べるとスメクタイトの相対量の相違が

見られる砂岩は粘土鉱物は雲母を主とし少量の

緑泥石雲母スメクタイト混合層鉱物を含むが泥岩

試料の比べ膨潤性粘土鉱物が少ない

表-1 試料の概要

表-2 風化区分

表-3 X 線粉末回折結果

岩種 記載

砂岩暗灰色のワッケ質中粒砂岩で変形作用を受けている灰白色の鉱物脈がネットワーク状に生成

泥岩

未風化部が暗灰色中風化部が褐色を帯びる灰色を呈するが顕微鏡観察では構成物の変化は顕著に見られず基質部の褐色化のみであるまた中風化部であってもフランボイダル黄鉄鉱が残存している

砂岩未風化試料 中風化試料 未風化試料

石英 斜長石 緑泥石 times times times雲母 times times times

混合層鉱物

times times

緑泥石 スメクタイト times 混合層鉱物

雲母 多量中量times少量空白不検出

雲母スメクタイト混合層粘土鉱物

泥岩

不定方位

定方位

風化区分 特  徴

 強風化部褐色化が著しく岩組織は認められず土砂化している

 中風化部岩組織は認められるが全体に褐色化が進行し軟質化している

 弱風化部岩組織が明瞭で岩芯は新鮮である割目沿いに褐色化が進行し割目面のみ軟質化している

 未風化部 褐色化は認められない

表-4 各抽出段階における化学的状態

22 含有量試験及び連続溶出試験

各試料中の重金属類含有量を把握するため底質調

査法及び環境省告示第 19号による含有量試験を行った

また経時的な重金属類溶出を把握するため連続溶

出試験を行った試料は砂岩では未風化部の試料を

用い泥岩では未風化部中風化部の試料を用いた

連続溶出試験方法は環境省告示第 18 号試験に準じて

検液を作成し回収した上澄み液と同量の純水を残渣

に添加しこれを所定回数繰り返すものである含有

量試験及び連続溶出試験の各検液の分析はICP-MS を

用いた

23 分画抽出試験

分画抽出試験は岩石中に含まれている重金属類が

風化の影響によりどのような存在形態の変化をするの

かを把握するために行った試料は砂岩では未風化

部の試料を用い泥岩では未風化部中風化部の試料

を用いた抽出試験は吸着態炭酸塩態鉄マン

ガン酸化物態有機態及び難溶性鉱物態の5形態の抽

出処理を行った2)各抽出処理段階の形態については

表-4 に示すまた抽出後の検液の分析は ICP-MS を用

いた

3試験結果と考察

31 含有量試験及び連続溶出試験

底質調査法による含有量試験結果を表-5 に示す泥

岩の未風化部と中風化部を比較すると総硫黄カル

シウムセレンの減少傾向が見られフッ素ホウ素

は増加傾向が見られるヒ素カドミウム鉛鉄に

は大きな差が生じていない

環境省告示第19号による含有量試験結果を表-6に示

す全試料でカドミウム鉛セレンおよびホウ素

は検出限界値以下を示すヒ素は泥岩の未風化部で

18mgkg中風化部では 06mgkg であり 30程度低下

表-5 底質調査法による含有量試験結果

表-6 環境省告示第 19 号による含有量試験結果

形  態 記  載

吸着態(イオン交換態)イオン交換で溶出してくる状態で最も水に溶けやすい形態

炭酸塩態吸着態よりも強く結びついた状態でイオンとして存在しているが吸着態よりも溶出しにくい形態

鉄マンガン酸化物態非晶質の鉄酸化物に含まれているような状態で表流水や雨水のような酸素がある状態ではあまり溶出しにくい形態

有機態腐植有機物とキレート化合物を形成している状態で化学的に安定しており鉄マンガン酸化物態よりも溶出しにくい形態

難溶性鉱物態

一番溶出しにくい状態であり様々なものが考えられるが例えば黄鉄鉱などの硫化鉱物の結晶中に取り込まれており高濃度の酸等で酸化分解しないと溶出しない形態

砂  岩

中風化部 未風化部 未風化部

総硫黄 lt0005 0165 0019

カドミウム mgkg 003 004 002

鉛 mgkg 193 213 104

ヒ素 mgkg 62 63 58

鉄 330 306 187

セレン mgkg lt01 05 lt01

フッ素 mgkg 159 125 99

ホウ素 mgkg 862 665 216

含水率 37 29 01

強熱減量 31 24 09

カルシウム 0375 0599 0587

泥  岩単位分析項目

砂  岩

中風化部 未風化部 未風化部

カドミウム mgkg lt05 lt05 lt05

鉛 mgkg lt10 lt10 lt10

ヒ素 mgkg 06 18 16

セレン mgkg lt05 lt05 lt05

フッ素 mgkg 85 60 lt40

ホウ素 mgkg lt40 lt40 lt40

カルシウム 0363 0535 0303

総硫黄 0014 0017 0018

泥  岩分析項目 単位

しているカルシウムおよび総硫黄は泥岩では中風

化部で低下する傾向が認められる

連続溶出試験において重金属類は泥岩でヒ素とセレ

ン砂岩でヒ素のみが検出されたこれらと pH の変化

を図-1 に示す図のようにヒ素およびセレンについて

は溶出回数の増加に伴い溶出量が低下する傾向が見ら

れるヒ素はアルカリ性で溶出しやすい3)ため泥岩

では pHの低下に伴い溶出量が低下していると考えられ

る一方砂岩では溶出量は低下するが pH は 9 程度で

ほぼ一定であった

32 分画抽出試験

ヒ素セレンの分画抽出試験結果を図-2 に示すヒ

素は泥岩の未風化部では難溶性鉱物態が 422で最

も高く続いて鉄マンガン態が 211吸着態が 20

有機態が 144を示し炭酸塩態が 22である中

風化部では未風化部と比較して難溶性鉱物が減少し

有機態が増加したまた吸着態と鉄マンガン態の減

少も認められる

セレンの各形態の占める割合は泥岩の未風化部で

は吸着態が 333と最も高く続いて有機態と難溶性

鉱物態が 222炭酸塩態と鉄マンガン態が 111で

ある中風化部では全て検出限界値以下となり風化

000 200 400 600 800

中風化部

未風化部

未風化部

ヒ素含有量(mgkg)

泥岩

砂岩

000 010 020 030 040 050

中風化部

未風化部

未風化部

セレン含有量(mgkg)

吸着態

泥岩

砂岩

(1) 泥 岩 (2) 砂 岩

図-1 連続溶出試験結果

吸着態

炭酸塩態

鉄マンガン酸化物態

有機態

難溶性鉱物態

(1) ヒ 素 (2) セレン

図-2 分画抽出試験結果

によるセレンの形態変化は不明であるなお砂岩で

は全て検出限界以下を示す

33 考 察

各試験結果から堆積岩の重金属類溶出特性について

風化の影響を考察する以下に連続溶出試験で検出さ

れたヒ素セレンについて考察する

(1)ヒ素

表-5 に示すとおり風化の程度の違いによって底質調

査法による含有量に有意な差はないことがわかるし

かし図-1 に示す分画抽出試験の結果からも明らかな

ように中風化部と未風化部を比較すると風化によ

って難溶性鉱物態吸着態鉄マンガン態が減少し

有機態が増加するこの結果から風化によってヒ素

の全含有量は変化しないものの形態が異なることに

よってヒ素溶出量が変化するものと考えられる表-6

に示される環境省告示第 19 号による含有量試験での 1

規定塩酸に可溶な量が低下していることもヒ素の形

態の変化で溶出特性が変化することを支持するただ

し連続溶出試験結果よりpH は未風化部でアルカリ

性であるが風化部では中性域に低下していることから

ヒ素溶出量の低下は pHの影響も受けている可能性があ

(2)セレン

泥岩中のセレンは表-5 より底質調査法による含有

量試験結果から風化によって低下する点と図-1 に示

す分画抽出試験結果から風化によって吸着態炭酸塩

態鉄マンガン態有機態難溶性鉱物態の含有量が

全て低下して検出下限値以下となることから泥岩中

のヒ素と比較してセレンは風化による溶脱を受けやす

い特性であることがわかる

4おわりに

トンネル建設現場及びボーリングコアから採取した

堆積岩を用いて重金属類の溶出特性について風化の影

響を検討したその結果本試験に用いた試料のヒ素

の溶出特性は風化を受けると存在形態が変化するこ

とで溶出量が変化するがセレンの溶出特性はヒ素よ

りも溶出しやすいため溶脱が早く進み溶出しやすく

なると考えられる

今後はデータの蓄積や堆積岩の重金属類溶出源評

価のための溶出総量について考察していく予定である

参考文献

1)(独)土木研究所建設工事で遭遇する地盤汚染対

応マニュアル(暫定版)鹿島出版会20045 2)丸茂克美他日本各地の土壌中の重金属含有量と

鉛同位体組成資源地質Vol53(2)pp125-1462003 3)吉村尚久赤井純治土壌及び堆積物中のヒ素の

挙動と地下水汚染-総説-地球科学Vol57

pp137-1562003

堆積岩からの重金属等の溶出挙動 Leaching mechanism of heavy metals from various sedimentary rocks

垣原康之高橋 良遠藤祐司八幡正弘野呂田晋(道立地質研究所)

駒井 武原 淳子川辺能成(産業技術総合研究所)

Yasuyuki Kakihara RyoTakahashi Yuji Endou Masahiro Yahata Susumu Norota Takeshi Komai Junko Hara and Yoshishige Kawabe

1111はじめにはじめにはじめにはじめに

堆積岩の分布域で行われる建設工事現場において

自然由来と判断される岩石から溶出するヒ素セレ

ンホウ素が土壌溶出基準値を 1~3倍程度超過する建

設残土が発生している(丸茂ほか2003)これらの堆

積岩の多くは鉱床地帯でみられるような熱水変質作

用を受けていないことから堆積~続成作用時に上述

の元素を含有したものと考えられる

現世堆積物~表層堆積物では堆積場の環境により

岩石からのヒ素の溶出挙動が異なっている(例えば

札幌市2009)加えて海成泥岩においてヒ素の溶出

量が高い傾向を示すなど岩石生成時の堆積場とそれ

らの岩石からのヒ素セレンホウ素などの溶出量と

は相関があるように思われるこの検証のために現在

の堆積場から試料を採取することもひとつの方法であ

るが部分的に容易である一方海底や湖底などの採

取が難しい堆積環境や立ち入り規制や建造物などの

人為的な制限も多い

本研究では地層として保存されている堆積岩の堆

積場に着目して現世において採取困難な環境で堆積

した堆積岩からの重金属等の溶出挙動を推定すること

を目的とした北海道空知支庁夕張市真谷地には下

位から白亜紀(一部暁新世)の上部蝦夷層群函淵

層群不整合を介して始新世石狩層群幌内層群など

の陸域から浅海海域までの堆積物が分布するまた

この地域は効率的な石炭採掘のために複雑な地質

構造であるにもかかわらず層序古環境の詳細な検

討が行われている

これらの地層から採取した各試料の溶出挙動を明ら

かにすれば陸域から海域にかけての各堆積場で起こ

る重金属等の固定溶出挙動として他地域他時代

の岩石にも適用できる可能性がある

2222各層各層各層各層のののの堆積環境堆積環境堆積環境堆積環境

対象地域に分布する各層の堆積環境を既報の資料

(下河原ほか1963など)に基づいて

A)淡水域(汽水を含む)

B)海域(静穏時波浪限界深度以浅)

C)海域(静穏時波浪限界深度以深)

の3つに区分したA)と B)の境界は主に pH酸

化状態塩素イオン濃度などの化学的境界である B)

と C)の境界は波浪による粒子の撹拌の有無に基づく

物理的境界と言える

調査地域に分布する各層は下位から上部蝦夷層群

(C)函淵層群(B一部 A)不整合を介して始新

世石狩層群は下位から厚層砂岩層を特徴とする登川

層(A)淡水湖底堆積物を特徴とする幌加別層(A)

良質な石炭層を特徴とする夕張層(A)海進期の浅海

堆積物を特徴とする若鍋層(B)さらに不整合を介し

て塊状無層理のシルト岩を特徴とする始新世幌内層

(C)が分布する

3333溶出試験溶出試験溶出試験溶出試験

本報告の岩石試料はすべて地表踏査により露頭から

採取したものである各露頭において風化の影響の小

さな試料(変色の程度が小さいもの)を採取するよう

にした

岩石試料約 50g をボールミルを用いて粉砕したこ

の粉末3gを純水 30mL を混合し振とう器を用いて

200rpm で6時間振とうさせた後20 分間静置後遠

心器で 20 分間懸濁物を沈殿させたこの上澄み液を

10cc 取りメンブランフィルタ(042μm)を通した

ものを検液としたこの検液を産業技術総合研究所に

設置されている ICP-MS(SHIMADU ICPM-8500)を

使用してヒ素セレンホウ素の含有量を測定した

なお今回採用した分析方法は検体試料の採取法

粒径振とうさせる量(試料純水比のみ同じ)濃度

分析法などが公定法とは異なっているため公定法試

験との単純な比較はできないことを付け加えておく

4444ヒヒヒヒ素素素素セレンセレンセレンセレンのののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

ヒ素の溶出量はこの区分に基づくとC)外洋性波

浪限界以深の上部蝦夷層群の泥岩において溶出基準を

超過する試料がみられたまた基準値以下の試料につ

いても他の堆積岩よりも同区分の岩石は高い価を示

す傾向がみられた一方A)に区分される岩石は概

してヒ素の溶出量は基準値以下でありかつ値も小さ

いなお B)に区分される岩石は溶出基準値を超過して

いない

セレンの溶出量はC)内湾性波浪限界以深の幌内層

群シルト岩および中部蝦夷層群泥岩において溶出基準

値を超過する試料がみられた一方波浪限界以浅の

海域の地層は溶出基準値を超過する試料は認められ

なかった

5555考察考察考察考察

静穏時波浪限界以浅の地層は常に波浪営力(振動流)

により撹拌されている状態にあるこのためにヒ素を

吸着しているであろう細粒粒子がこの営力により海

水との攪拌状態を経て堆積物中から取り去られるこ

のため B)の堆積環境では相対的にヒ素を吸着している

細粒粒子の割合が小さくなり溶出基準値を超過する

ような事例が認められなかったものと考えられる一

方細粒粒子はより沖合に浮遊して静穏時波浪限界

以深に運搬されるこの環境では吸着状態のヒ素の割

合が高くいため相対的に高いヒ素の溶出量を示した

ものと考えられる

一方セレンは海水中で[SeO4]の形態で溶解してい

るがこれが生物中に取り込まれることで有機セレン

に変化するこの生物遺骸が埋積することで海成堆積

物中にセレンが濃集する(寺島ほか2005)このため

に静穏な環境の波浪限界以深の泥岩でセレン溶出量が

高いと判断されるなおいったん堆積物中に固定さ

れたセレンは酸化環境にさらされると海水や地下

水に溶解する可能性がある堆積物中に固定され続け

るためには還元環境が必要であり物理的挙動だけで

はなく酸化還元状態も重要と思われる

6666石炭層石炭層石炭層石炭層ののののヒヒヒヒ素素素素のののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

石狩層群登川層および夕張層中には良質な石炭層が

挟在されており夕張炭田として 1980年代中頃まで大

規模に稼行されていたこれらのうち比較的良質な石

炭層について重金属等の溶出試験を行った結果他の

堆積岩と比してヒ素の溶出量は 0005mgL以下と低

かったそこで石炭試料についてヒ素の逐次抽出試験

を実施した全量溶解による全岩ヒ素含有量は石炭

層と炭質砂岩がともに 74ppm と上部蝦夷層群の泥岩

(21ppm)と幌内層の泥岩(34ppm)よりも有意に高

いしかしながらイオン交換態はいずれの試料も 20

~25ppmと変わらなかった石炭層に含有されるヒ素

の形態は「鉄マンガン酸化物分画」のヒ素の割合が高

く相対的に「結晶格子分画」が低い

一方石炭層周辺の砂岩泥岩には石炭片が頻繁に

含まれていることが多いこれらの試料について石炭

片が混在した状態で溶出試験を実施したその結果

ほとんどの試料で溶出基準を超過するヒ素の溶出量を

示した以上の結果は通常は溶出基準を超過しない

粉砕状態の石炭片は泥岩との混在状態において高い

ヒ素の溶出量を示す可能性があることを示す今後は

溶出に至るメカニズムについて検討していく必要があ

引用文献引用文献引用文献引用文献

丸茂 克美ほか (2003) 土壌地質汚染評価基本図「5

万分の 1 姉崎」 産業技術総合研究所地質調査

総合センター(CD-ROM 数値地質図 E-1)

札幌市(2009)札幌市における自然由来ヒ素の判定方

法について(答申)13p

下河原 寿男(1963)夕張炭田の形成とその地質構造

の発展石炭地質研究5244p

寺島 滋ほか (2005) 日本海東部の海底堆積物中の

微量セレンの地球化学的研究 地質調査研究報

告 56 325-340

油汚染事故対策のための北海道立地質研究所の沿岸調査 Coastal research of GSH for oil spill response activity

濱田誠一(北海道立地質研究所)

Seiichi Hamada

1はじめに

2008 年 12 月北海道に隣接するサハリン島ではサハ

リン2石油開発にともなう原油の通年出荷が開始され

たこれは我が国への安定的なエネルギー供給をもた

らす一方で沿岸に油汚染の懸念をもたらしている1)

特にオホーツク沿岸はサロマ湖や知床などアクセス困

難で生物環境への影響が深刻な沿岸がみられ防除作

業が困難な場所も多い地域防災計画では大規模油流

出事故時の陸域の活動調整を北海道が担うとされ適

切な調整のための沿岸情報の把握が求められている

北海道立地質研究所は北海道の重点領域研究とし

てオホーツク沿岸で油防除が困難となるエリアの防除

活動を想定した「オホーツク海沿岸環境脆弱域におけ

る油汚染影響評価とバイオレメディエーション実用化

に関する研究」を実施し沿岸部における防除活動の

ための情報図等を作成した(図1)ここでは研究のな

かで実施した地質学的検討のうち礫形をもとにした

油残留特性に関する評価手法の概要を報告する

2油自然残留特性評価のための礫形評価手法

1997 年のナホトカ号油流出事故をケーススタディー

に実際に長期的な油残留が見られた礫浜を地質学的

観点から検証し漂着油が自然に洗い流される作用を

評価するための手法を検討した予察調査の結果油

が長期残留する海岸には礫形が角張るなどの地学的

特徴が見られこの特徴を定量的に指標化することに

より油の残留特性を客観的に評価する手法を検討した

事故後の油残留年数がモニタリングされた能登海岸

のうち安山岩質の cobble 礫で形成され河川の礫供

給をほとんど受けない海岸 11地点を調査対象に抽出し

た各地点で 50 個の礫を後浜上限部から採取し礫形

を撮影した撮影は市販のデジタルカメラを使用し

2048times1536 ピクセルで撮影した(図2①)撮影では

礫の最大投影面を真下に向け透明の撮影台の下に固

定したデジタルカメラから空を背景に撮影した空が

背景なので礫の周囲に影ができずシャープで高コン

トラストの輪郭画像が取得できた画像処理ソフト

ImageJ による画像処理により白黒二値化画像に変換し

1ピクセルあたり約 015-018mm の画像を得た(図2

②)その輪郭画像から XY 座標値を抽出し(図2④)

エクセルによる解析を行った解析では座標データを

重心から輪郭までの距離のグラフとして展開しこの

ピークの鋭さを角度として測定し礫の角張り具合の

指標値とした(図2⑥)礫の輪郭が円であれば重心

から輪郭までの距離は一定となりグラフは横一直線と

なる一方輪郭に凹凸があれば凹凸に応じてグラ

フは波打ち尖ったピークが現れるエクセルの処理

はマクロ機能を用いて自動的な処理を行った 図1 地域緊急時計画に活用された沿岸情報図

図2 現地調査におけるデジタルカメラを用いた礫形の収集と評価方法

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 2: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

表-4 各抽出段階における化学的状態

22 含有量試験及び連続溶出試験

各試料中の重金属類含有量を把握するため底質調

査法及び環境省告示第 19号による含有量試験を行った

また経時的な重金属類溶出を把握するため連続溶

出試験を行った試料は砂岩では未風化部の試料を

用い泥岩では未風化部中風化部の試料を用いた

連続溶出試験方法は環境省告示第 18 号試験に準じて

検液を作成し回収した上澄み液と同量の純水を残渣

に添加しこれを所定回数繰り返すものである含有

量試験及び連続溶出試験の各検液の分析はICP-MS を

用いた

23 分画抽出試験

分画抽出試験は岩石中に含まれている重金属類が

風化の影響によりどのような存在形態の変化をするの

かを把握するために行った試料は砂岩では未風化

部の試料を用い泥岩では未風化部中風化部の試料

を用いた抽出試験は吸着態炭酸塩態鉄マン

ガン酸化物態有機態及び難溶性鉱物態の5形態の抽

出処理を行った2)各抽出処理段階の形態については

表-4 に示すまた抽出後の検液の分析は ICP-MS を用

いた

3試験結果と考察

31 含有量試験及び連続溶出試験

底質調査法による含有量試験結果を表-5 に示す泥

岩の未風化部と中風化部を比較すると総硫黄カル

シウムセレンの減少傾向が見られフッ素ホウ素

は増加傾向が見られるヒ素カドミウム鉛鉄に

は大きな差が生じていない

環境省告示第19号による含有量試験結果を表-6に示

す全試料でカドミウム鉛セレンおよびホウ素

は検出限界値以下を示すヒ素は泥岩の未風化部で

18mgkg中風化部では 06mgkg であり 30程度低下

表-5 底質調査法による含有量試験結果

表-6 環境省告示第 19 号による含有量試験結果

形  態 記  載

吸着態(イオン交換態)イオン交換で溶出してくる状態で最も水に溶けやすい形態

炭酸塩態吸着態よりも強く結びついた状態でイオンとして存在しているが吸着態よりも溶出しにくい形態

鉄マンガン酸化物態非晶質の鉄酸化物に含まれているような状態で表流水や雨水のような酸素がある状態ではあまり溶出しにくい形態

有機態腐植有機物とキレート化合物を形成している状態で化学的に安定しており鉄マンガン酸化物態よりも溶出しにくい形態

難溶性鉱物態

一番溶出しにくい状態であり様々なものが考えられるが例えば黄鉄鉱などの硫化鉱物の結晶中に取り込まれており高濃度の酸等で酸化分解しないと溶出しない形態

砂  岩

中風化部 未風化部 未風化部

総硫黄 lt0005 0165 0019

カドミウム mgkg 003 004 002

鉛 mgkg 193 213 104

ヒ素 mgkg 62 63 58

鉄 330 306 187

セレン mgkg lt01 05 lt01

フッ素 mgkg 159 125 99

ホウ素 mgkg 862 665 216

含水率 37 29 01

強熱減量 31 24 09

カルシウム 0375 0599 0587

泥  岩単位分析項目

砂  岩

中風化部 未風化部 未風化部

カドミウム mgkg lt05 lt05 lt05

鉛 mgkg lt10 lt10 lt10

ヒ素 mgkg 06 18 16

セレン mgkg lt05 lt05 lt05

フッ素 mgkg 85 60 lt40

ホウ素 mgkg lt40 lt40 lt40

カルシウム 0363 0535 0303

総硫黄 0014 0017 0018

泥  岩分析項目 単位

しているカルシウムおよび総硫黄は泥岩では中風

化部で低下する傾向が認められる

連続溶出試験において重金属類は泥岩でヒ素とセレ

ン砂岩でヒ素のみが検出されたこれらと pH の変化

を図-1 に示す図のようにヒ素およびセレンについて

は溶出回数の増加に伴い溶出量が低下する傾向が見ら

れるヒ素はアルカリ性で溶出しやすい3)ため泥岩

では pHの低下に伴い溶出量が低下していると考えられ

る一方砂岩では溶出量は低下するが pH は 9 程度で

ほぼ一定であった

32 分画抽出試験

ヒ素セレンの分画抽出試験結果を図-2 に示すヒ

素は泥岩の未風化部では難溶性鉱物態が 422で最

も高く続いて鉄マンガン態が 211吸着態が 20

有機態が 144を示し炭酸塩態が 22である中

風化部では未風化部と比較して難溶性鉱物が減少し

有機態が増加したまた吸着態と鉄マンガン態の減

少も認められる

セレンの各形態の占める割合は泥岩の未風化部で

は吸着態が 333と最も高く続いて有機態と難溶性

鉱物態が 222炭酸塩態と鉄マンガン態が 111で

ある中風化部では全て検出限界値以下となり風化

000 200 400 600 800

中風化部

未風化部

未風化部

ヒ素含有量(mgkg)

泥岩

砂岩

000 010 020 030 040 050

中風化部

未風化部

未風化部

セレン含有量(mgkg)

吸着態

泥岩

砂岩

(1) 泥 岩 (2) 砂 岩

図-1 連続溶出試験結果

吸着態

炭酸塩態

鉄マンガン酸化物態

有機態

難溶性鉱物態

(1) ヒ 素 (2) セレン

図-2 分画抽出試験結果

によるセレンの形態変化は不明であるなお砂岩で

は全て検出限界以下を示す

33 考 察

各試験結果から堆積岩の重金属類溶出特性について

風化の影響を考察する以下に連続溶出試験で検出さ

れたヒ素セレンについて考察する

(1)ヒ素

表-5 に示すとおり風化の程度の違いによって底質調

査法による含有量に有意な差はないことがわかるし

かし図-1 に示す分画抽出試験の結果からも明らかな

ように中風化部と未風化部を比較すると風化によ

って難溶性鉱物態吸着態鉄マンガン態が減少し

有機態が増加するこの結果から風化によってヒ素

の全含有量は変化しないものの形態が異なることに

よってヒ素溶出量が変化するものと考えられる表-6

に示される環境省告示第 19 号による含有量試験での 1

規定塩酸に可溶な量が低下していることもヒ素の形

態の変化で溶出特性が変化することを支持するただ

し連続溶出試験結果よりpH は未風化部でアルカリ

性であるが風化部では中性域に低下していることから

ヒ素溶出量の低下は pHの影響も受けている可能性があ

(2)セレン

泥岩中のセレンは表-5 より底質調査法による含有

量試験結果から風化によって低下する点と図-1 に示

す分画抽出試験結果から風化によって吸着態炭酸塩

態鉄マンガン態有機態難溶性鉱物態の含有量が

全て低下して検出下限値以下となることから泥岩中

のヒ素と比較してセレンは風化による溶脱を受けやす

い特性であることがわかる

4おわりに

トンネル建設現場及びボーリングコアから採取した

堆積岩を用いて重金属類の溶出特性について風化の影

響を検討したその結果本試験に用いた試料のヒ素

の溶出特性は風化を受けると存在形態が変化するこ

とで溶出量が変化するがセレンの溶出特性はヒ素よ

りも溶出しやすいため溶脱が早く進み溶出しやすく

なると考えられる

今後はデータの蓄積や堆積岩の重金属類溶出源評

価のための溶出総量について考察していく予定である

参考文献

1)(独)土木研究所建設工事で遭遇する地盤汚染対

応マニュアル(暫定版)鹿島出版会20045 2)丸茂克美他日本各地の土壌中の重金属含有量と

鉛同位体組成資源地質Vol53(2)pp125-1462003 3)吉村尚久赤井純治土壌及び堆積物中のヒ素の

挙動と地下水汚染-総説-地球科学Vol57

pp137-1562003

堆積岩からの重金属等の溶出挙動 Leaching mechanism of heavy metals from various sedimentary rocks

垣原康之高橋 良遠藤祐司八幡正弘野呂田晋(道立地質研究所)

駒井 武原 淳子川辺能成(産業技術総合研究所)

Yasuyuki Kakihara RyoTakahashi Yuji Endou Masahiro Yahata Susumu Norota Takeshi Komai Junko Hara and Yoshishige Kawabe

1111はじめにはじめにはじめにはじめに

堆積岩の分布域で行われる建設工事現場において

自然由来と判断される岩石から溶出するヒ素セレ

ンホウ素が土壌溶出基準値を 1~3倍程度超過する建

設残土が発生している(丸茂ほか2003)これらの堆

積岩の多くは鉱床地帯でみられるような熱水変質作

用を受けていないことから堆積~続成作用時に上述

の元素を含有したものと考えられる

現世堆積物~表層堆積物では堆積場の環境により

岩石からのヒ素の溶出挙動が異なっている(例えば

札幌市2009)加えて海成泥岩においてヒ素の溶出

量が高い傾向を示すなど岩石生成時の堆積場とそれ

らの岩石からのヒ素セレンホウ素などの溶出量と

は相関があるように思われるこの検証のために現在

の堆積場から試料を採取することもひとつの方法であ

るが部分的に容易である一方海底や湖底などの採

取が難しい堆積環境や立ち入り規制や建造物などの

人為的な制限も多い

本研究では地層として保存されている堆積岩の堆

積場に着目して現世において採取困難な環境で堆積

した堆積岩からの重金属等の溶出挙動を推定すること

を目的とした北海道空知支庁夕張市真谷地には下

位から白亜紀(一部暁新世)の上部蝦夷層群函淵

層群不整合を介して始新世石狩層群幌内層群など

の陸域から浅海海域までの堆積物が分布するまた

この地域は効率的な石炭採掘のために複雑な地質

構造であるにもかかわらず層序古環境の詳細な検

討が行われている

これらの地層から採取した各試料の溶出挙動を明ら

かにすれば陸域から海域にかけての各堆積場で起こ

る重金属等の固定溶出挙動として他地域他時代

の岩石にも適用できる可能性がある

2222各層各層各層各層のののの堆積環境堆積環境堆積環境堆積環境

対象地域に分布する各層の堆積環境を既報の資料

(下河原ほか1963など)に基づいて

A)淡水域(汽水を含む)

B)海域(静穏時波浪限界深度以浅)

C)海域(静穏時波浪限界深度以深)

の3つに区分したA)と B)の境界は主に pH酸

化状態塩素イオン濃度などの化学的境界である B)

と C)の境界は波浪による粒子の撹拌の有無に基づく

物理的境界と言える

調査地域に分布する各層は下位から上部蝦夷層群

(C)函淵層群(B一部 A)不整合を介して始新

世石狩層群は下位から厚層砂岩層を特徴とする登川

層(A)淡水湖底堆積物を特徴とする幌加別層(A)

良質な石炭層を特徴とする夕張層(A)海進期の浅海

堆積物を特徴とする若鍋層(B)さらに不整合を介し

て塊状無層理のシルト岩を特徴とする始新世幌内層

(C)が分布する

3333溶出試験溶出試験溶出試験溶出試験

本報告の岩石試料はすべて地表踏査により露頭から

採取したものである各露頭において風化の影響の小

さな試料(変色の程度が小さいもの)を採取するよう

にした

岩石試料約 50g をボールミルを用いて粉砕したこ

の粉末3gを純水 30mL を混合し振とう器を用いて

200rpm で6時間振とうさせた後20 分間静置後遠

心器で 20 分間懸濁物を沈殿させたこの上澄み液を

10cc 取りメンブランフィルタ(042μm)を通した

ものを検液としたこの検液を産業技術総合研究所に

設置されている ICP-MS(SHIMADU ICPM-8500)を

使用してヒ素セレンホウ素の含有量を測定した

なお今回採用した分析方法は検体試料の採取法

粒径振とうさせる量(試料純水比のみ同じ)濃度

分析法などが公定法とは異なっているため公定法試

験との単純な比較はできないことを付け加えておく

4444ヒヒヒヒ素素素素セレンセレンセレンセレンのののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

ヒ素の溶出量はこの区分に基づくとC)外洋性波

浪限界以深の上部蝦夷層群の泥岩において溶出基準を

超過する試料がみられたまた基準値以下の試料につ

いても他の堆積岩よりも同区分の岩石は高い価を示

す傾向がみられた一方A)に区分される岩石は概

してヒ素の溶出量は基準値以下でありかつ値も小さ

いなお B)に区分される岩石は溶出基準値を超過して

いない

セレンの溶出量はC)内湾性波浪限界以深の幌内層

群シルト岩および中部蝦夷層群泥岩において溶出基準

値を超過する試料がみられた一方波浪限界以浅の

海域の地層は溶出基準値を超過する試料は認められ

なかった

5555考察考察考察考察

静穏時波浪限界以浅の地層は常に波浪営力(振動流)

により撹拌されている状態にあるこのためにヒ素を

吸着しているであろう細粒粒子がこの営力により海

水との攪拌状態を経て堆積物中から取り去られるこ

のため B)の堆積環境では相対的にヒ素を吸着している

細粒粒子の割合が小さくなり溶出基準値を超過する

ような事例が認められなかったものと考えられる一

方細粒粒子はより沖合に浮遊して静穏時波浪限界

以深に運搬されるこの環境では吸着状態のヒ素の割

合が高くいため相対的に高いヒ素の溶出量を示した

ものと考えられる

一方セレンは海水中で[SeO4]の形態で溶解してい

るがこれが生物中に取り込まれることで有機セレン

に変化するこの生物遺骸が埋積することで海成堆積

物中にセレンが濃集する(寺島ほか2005)このため

に静穏な環境の波浪限界以深の泥岩でセレン溶出量が

高いと判断されるなおいったん堆積物中に固定さ

れたセレンは酸化環境にさらされると海水や地下

水に溶解する可能性がある堆積物中に固定され続け

るためには還元環境が必要であり物理的挙動だけで

はなく酸化還元状態も重要と思われる

6666石炭層石炭層石炭層石炭層ののののヒヒヒヒ素素素素のののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

石狩層群登川層および夕張層中には良質な石炭層が

挟在されており夕張炭田として 1980年代中頃まで大

規模に稼行されていたこれらのうち比較的良質な石

炭層について重金属等の溶出試験を行った結果他の

堆積岩と比してヒ素の溶出量は 0005mgL以下と低

かったそこで石炭試料についてヒ素の逐次抽出試験

を実施した全量溶解による全岩ヒ素含有量は石炭

層と炭質砂岩がともに 74ppm と上部蝦夷層群の泥岩

(21ppm)と幌内層の泥岩(34ppm)よりも有意に高

いしかしながらイオン交換態はいずれの試料も 20

~25ppmと変わらなかった石炭層に含有されるヒ素

の形態は「鉄マンガン酸化物分画」のヒ素の割合が高

く相対的に「結晶格子分画」が低い

一方石炭層周辺の砂岩泥岩には石炭片が頻繁に

含まれていることが多いこれらの試料について石炭

片が混在した状態で溶出試験を実施したその結果

ほとんどの試料で溶出基準を超過するヒ素の溶出量を

示した以上の結果は通常は溶出基準を超過しない

粉砕状態の石炭片は泥岩との混在状態において高い

ヒ素の溶出量を示す可能性があることを示す今後は

溶出に至るメカニズムについて検討していく必要があ

引用文献引用文献引用文献引用文献

丸茂 克美ほか (2003) 土壌地質汚染評価基本図「5

万分の 1 姉崎」 産業技術総合研究所地質調査

総合センター(CD-ROM 数値地質図 E-1)

札幌市(2009)札幌市における自然由来ヒ素の判定方

法について(答申)13p

下河原 寿男(1963)夕張炭田の形成とその地質構造

の発展石炭地質研究5244p

寺島 滋ほか (2005) 日本海東部の海底堆積物中の

微量セレンの地球化学的研究 地質調査研究報

告 56 325-340

油汚染事故対策のための北海道立地質研究所の沿岸調査 Coastal research of GSH for oil spill response activity

濱田誠一(北海道立地質研究所)

Seiichi Hamada

1はじめに

2008 年 12 月北海道に隣接するサハリン島ではサハ

リン2石油開発にともなう原油の通年出荷が開始され

たこれは我が国への安定的なエネルギー供給をもた

らす一方で沿岸に油汚染の懸念をもたらしている1)

特にオホーツク沿岸はサロマ湖や知床などアクセス困

難で生物環境への影響が深刻な沿岸がみられ防除作

業が困難な場所も多い地域防災計画では大規模油流

出事故時の陸域の活動調整を北海道が担うとされ適

切な調整のための沿岸情報の把握が求められている

北海道立地質研究所は北海道の重点領域研究とし

てオホーツク沿岸で油防除が困難となるエリアの防除

活動を想定した「オホーツク海沿岸環境脆弱域におけ

る油汚染影響評価とバイオレメディエーション実用化

に関する研究」を実施し沿岸部における防除活動の

ための情報図等を作成した(図1)ここでは研究のな

かで実施した地質学的検討のうち礫形をもとにした

油残留特性に関する評価手法の概要を報告する

2油自然残留特性評価のための礫形評価手法

1997 年のナホトカ号油流出事故をケーススタディー

に実際に長期的な油残留が見られた礫浜を地質学的

観点から検証し漂着油が自然に洗い流される作用を

評価するための手法を検討した予察調査の結果油

が長期残留する海岸には礫形が角張るなどの地学的

特徴が見られこの特徴を定量的に指標化することに

より油の残留特性を客観的に評価する手法を検討した

事故後の油残留年数がモニタリングされた能登海岸

のうち安山岩質の cobble 礫で形成され河川の礫供

給をほとんど受けない海岸 11地点を調査対象に抽出し

た各地点で 50 個の礫を後浜上限部から採取し礫形

を撮影した撮影は市販のデジタルカメラを使用し

2048times1536 ピクセルで撮影した(図2①)撮影では

礫の最大投影面を真下に向け透明の撮影台の下に固

定したデジタルカメラから空を背景に撮影した空が

背景なので礫の周囲に影ができずシャープで高コン

トラストの輪郭画像が取得できた画像処理ソフト

ImageJ による画像処理により白黒二値化画像に変換し

1ピクセルあたり約 015-018mm の画像を得た(図2

②)その輪郭画像から XY 座標値を抽出し(図2④)

エクセルによる解析を行った解析では座標データを

重心から輪郭までの距離のグラフとして展開しこの

ピークの鋭さを角度として測定し礫の角張り具合の

指標値とした(図2⑥)礫の輪郭が円であれば重心

から輪郭までの距離は一定となりグラフは横一直線と

なる一方輪郭に凹凸があれば凹凸に応じてグラ

フは波打ち尖ったピークが現れるエクセルの処理

はマクロ機能を用いて自動的な処理を行った 図1 地域緊急時計画に活用された沿岸情報図

図2 現地調査におけるデジタルカメラを用いた礫形の収集と評価方法

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 3: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

しているカルシウムおよび総硫黄は泥岩では中風

化部で低下する傾向が認められる

連続溶出試験において重金属類は泥岩でヒ素とセレ

ン砂岩でヒ素のみが検出されたこれらと pH の変化

を図-1 に示す図のようにヒ素およびセレンについて

は溶出回数の増加に伴い溶出量が低下する傾向が見ら

れるヒ素はアルカリ性で溶出しやすい3)ため泥岩

では pHの低下に伴い溶出量が低下していると考えられ

る一方砂岩では溶出量は低下するが pH は 9 程度で

ほぼ一定であった

32 分画抽出試験

ヒ素セレンの分画抽出試験結果を図-2 に示すヒ

素は泥岩の未風化部では難溶性鉱物態が 422で最

も高く続いて鉄マンガン態が 211吸着態が 20

有機態が 144を示し炭酸塩態が 22である中

風化部では未風化部と比較して難溶性鉱物が減少し

有機態が増加したまた吸着態と鉄マンガン態の減

少も認められる

セレンの各形態の占める割合は泥岩の未風化部で

は吸着態が 333と最も高く続いて有機態と難溶性

鉱物態が 222炭酸塩態と鉄マンガン態が 111で

ある中風化部では全て検出限界値以下となり風化

000 200 400 600 800

中風化部

未風化部

未風化部

ヒ素含有量(mgkg)

泥岩

砂岩

000 010 020 030 040 050

中風化部

未風化部

未風化部

セレン含有量(mgkg)

吸着態

泥岩

砂岩

(1) 泥 岩 (2) 砂 岩

図-1 連続溶出試験結果

吸着態

炭酸塩態

鉄マンガン酸化物態

有機態

難溶性鉱物態

(1) ヒ 素 (2) セレン

図-2 分画抽出試験結果

によるセレンの形態変化は不明であるなお砂岩で

は全て検出限界以下を示す

33 考 察

各試験結果から堆積岩の重金属類溶出特性について

風化の影響を考察する以下に連続溶出試験で検出さ

れたヒ素セレンについて考察する

(1)ヒ素

表-5 に示すとおり風化の程度の違いによって底質調

査法による含有量に有意な差はないことがわかるし

かし図-1 に示す分画抽出試験の結果からも明らかな

ように中風化部と未風化部を比較すると風化によ

って難溶性鉱物態吸着態鉄マンガン態が減少し

有機態が増加するこの結果から風化によってヒ素

の全含有量は変化しないものの形態が異なることに

よってヒ素溶出量が変化するものと考えられる表-6

に示される環境省告示第 19 号による含有量試験での 1

規定塩酸に可溶な量が低下していることもヒ素の形

態の変化で溶出特性が変化することを支持するただ

し連続溶出試験結果よりpH は未風化部でアルカリ

性であるが風化部では中性域に低下していることから

ヒ素溶出量の低下は pHの影響も受けている可能性があ

(2)セレン

泥岩中のセレンは表-5 より底質調査法による含有

量試験結果から風化によって低下する点と図-1 に示

す分画抽出試験結果から風化によって吸着態炭酸塩

態鉄マンガン態有機態難溶性鉱物態の含有量が

全て低下して検出下限値以下となることから泥岩中

のヒ素と比較してセレンは風化による溶脱を受けやす

い特性であることがわかる

4おわりに

トンネル建設現場及びボーリングコアから採取した

堆積岩を用いて重金属類の溶出特性について風化の影

響を検討したその結果本試験に用いた試料のヒ素

の溶出特性は風化を受けると存在形態が変化するこ

とで溶出量が変化するがセレンの溶出特性はヒ素よ

りも溶出しやすいため溶脱が早く進み溶出しやすく

なると考えられる

今後はデータの蓄積や堆積岩の重金属類溶出源評

価のための溶出総量について考察していく予定である

参考文献

1)(独)土木研究所建設工事で遭遇する地盤汚染対

応マニュアル(暫定版)鹿島出版会20045 2)丸茂克美他日本各地の土壌中の重金属含有量と

鉛同位体組成資源地質Vol53(2)pp125-1462003 3)吉村尚久赤井純治土壌及び堆積物中のヒ素の

挙動と地下水汚染-総説-地球科学Vol57

pp137-1562003

堆積岩からの重金属等の溶出挙動 Leaching mechanism of heavy metals from various sedimentary rocks

垣原康之高橋 良遠藤祐司八幡正弘野呂田晋(道立地質研究所)

駒井 武原 淳子川辺能成(産業技術総合研究所)

Yasuyuki Kakihara RyoTakahashi Yuji Endou Masahiro Yahata Susumu Norota Takeshi Komai Junko Hara and Yoshishige Kawabe

1111はじめにはじめにはじめにはじめに

堆積岩の分布域で行われる建設工事現場において

自然由来と判断される岩石から溶出するヒ素セレ

ンホウ素が土壌溶出基準値を 1~3倍程度超過する建

設残土が発生している(丸茂ほか2003)これらの堆

積岩の多くは鉱床地帯でみられるような熱水変質作

用を受けていないことから堆積~続成作用時に上述

の元素を含有したものと考えられる

現世堆積物~表層堆積物では堆積場の環境により

岩石からのヒ素の溶出挙動が異なっている(例えば

札幌市2009)加えて海成泥岩においてヒ素の溶出

量が高い傾向を示すなど岩石生成時の堆積場とそれ

らの岩石からのヒ素セレンホウ素などの溶出量と

は相関があるように思われるこの検証のために現在

の堆積場から試料を採取することもひとつの方法であ

るが部分的に容易である一方海底や湖底などの採

取が難しい堆積環境や立ち入り規制や建造物などの

人為的な制限も多い

本研究では地層として保存されている堆積岩の堆

積場に着目して現世において採取困難な環境で堆積

した堆積岩からの重金属等の溶出挙動を推定すること

を目的とした北海道空知支庁夕張市真谷地には下

位から白亜紀(一部暁新世)の上部蝦夷層群函淵

層群不整合を介して始新世石狩層群幌内層群など

の陸域から浅海海域までの堆積物が分布するまた

この地域は効率的な石炭採掘のために複雑な地質

構造であるにもかかわらず層序古環境の詳細な検

討が行われている

これらの地層から採取した各試料の溶出挙動を明ら

かにすれば陸域から海域にかけての各堆積場で起こ

る重金属等の固定溶出挙動として他地域他時代

の岩石にも適用できる可能性がある

2222各層各層各層各層のののの堆積環境堆積環境堆積環境堆積環境

対象地域に分布する各層の堆積環境を既報の資料

(下河原ほか1963など)に基づいて

A)淡水域(汽水を含む)

B)海域(静穏時波浪限界深度以浅)

C)海域(静穏時波浪限界深度以深)

の3つに区分したA)と B)の境界は主に pH酸

化状態塩素イオン濃度などの化学的境界である B)

と C)の境界は波浪による粒子の撹拌の有無に基づく

物理的境界と言える

調査地域に分布する各層は下位から上部蝦夷層群

(C)函淵層群(B一部 A)不整合を介して始新

世石狩層群は下位から厚層砂岩層を特徴とする登川

層(A)淡水湖底堆積物を特徴とする幌加別層(A)

良質な石炭層を特徴とする夕張層(A)海進期の浅海

堆積物を特徴とする若鍋層(B)さらに不整合を介し

て塊状無層理のシルト岩を特徴とする始新世幌内層

(C)が分布する

3333溶出試験溶出試験溶出試験溶出試験

本報告の岩石試料はすべて地表踏査により露頭から

採取したものである各露頭において風化の影響の小

さな試料(変色の程度が小さいもの)を採取するよう

にした

岩石試料約 50g をボールミルを用いて粉砕したこ

の粉末3gを純水 30mL を混合し振とう器を用いて

200rpm で6時間振とうさせた後20 分間静置後遠

心器で 20 分間懸濁物を沈殿させたこの上澄み液を

10cc 取りメンブランフィルタ(042μm)を通した

ものを検液としたこの検液を産業技術総合研究所に

設置されている ICP-MS(SHIMADU ICPM-8500)を

使用してヒ素セレンホウ素の含有量を測定した

なお今回採用した分析方法は検体試料の採取法

粒径振とうさせる量(試料純水比のみ同じ)濃度

分析法などが公定法とは異なっているため公定法試

験との単純な比較はできないことを付け加えておく

4444ヒヒヒヒ素素素素セレンセレンセレンセレンのののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

ヒ素の溶出量はこの区分に基づくとC)外洋性波

浪限界以深の上部蝦夷層群の泥岩において溶出基準を

超過する試料がみられたまた基準値以下の試料につ

いても他の堆積岩よりも同区分の岩石は高い価を示

す傾向がみられた一方A)に区分される岩石は概

してヒ素の溶出量は基準値以下でありかつ値も小さ

いなお B)に区分される岩石は溶出基準値を超過して

いない

セレンの溶出量はC)内湾性波浪限界以深の幌内層

群シルト岩および中部蝦夷層群泥岩において溶出基準

値を超過する試料がみられた一方波浪限界以浅の

海域の地層は溶出基準値を超過する試料は認められ

なかった

5555考察考察考察考察

静穏時波浪限界以浅の地層は常に波浪営力(振動流)

により撹拌されている状態にあるこのためにヒ素を

吸着しているであろう細粒粒子がこの営力により海

水との攪拌状態を経て堆積物中から取り去られるこ

のため B)の堆積環境では相対的にヒ素を吸着している

細粒粒子の割合が小さくなり溶出基準値を超過する

ような事例が認められなかったものと考えられる一

方細粒粒子はより沖合に浮遊して静穏時波浪限界

以深に運搬されるこの環境では吸着状態のヒ素の割

合が高くいため相対的に高いヒ素の溶出量を示した

ものと考えられる

一方セレンは海水中で[SeO4]の形態で溶解してい

るがこれが生物中に取り込まれることで有機セレン

に変化するこの生物遺骸が埋積することで海成堆積

物中にセレンが濃集する(寺島ほか2005)このため

に静穏な環境の波浪限界以深の泥岩でセレン溶出量が

高いと判断されるなおいったん堆積物中に固定さ

れたセレンは酸化環境にさらされると海水や地下

水に溶解する可能性がある堆積物中に固定され続け

るためには還元環境が必要であり物理的挙動だけで

はなく酸化還元状態も重要と思われる

6666石炭層石炭層石炭層石炭層ののののヒヒヒヒ素素素素のののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

石狩層群登川層および夕張層中には良質な石炭層が

挟在されており夕張炭田として 1980年代中頃まで大

規模に稼行されていたこれらのうち比較的良質な石

炭層について重金属等の溶出試験を行った結果他の

堆積岩と比してヒ素の溶出量は 0005mgL以下と低

かったそこで石炭試料についてヒ素の逐次抽出試験

を実施した全量溶解による全岩ヒ素含有量は石炭

層と炭質砂岩がともに 74ppm と上部蝦夷層群の泥岩

(21ppm)と幌内層の泥岩(34ppm)よりも有意に高

いしかしながらイオン交換態はいずれの試料も 20

~25ppmと変わらなかった石炭層に含有されるヒ素

の形態は「鉄マンガン酸化物分画」のヒ素の割合が高

く相対的に「結晶格子分画」が低い

一方石炭層周辺の砂岩泥岩には石炭片が頻繁に

含まれていることが多いこれらの試料について石炭

片が混在した状態で溶出試験を実施したその結果

ほとんどの試料で溶出基準を超過するヒ素の溶出量を

示した以上の結果は通常は溶出基準を超過しない

粉砕状態の石炭片は泥岩との混在状態において高い

ヒ素の溶出量を示す可能性があることを示す今後は

溶出に至るメカニズムについて検討していく必要があ

引用文献引用文献引用文献引用文献

丸茂 克美ほか (2003) 土壌地質汚染評価基本図「5

万分の 1 姉崎」 産業技術総合研究所地質調査

総合センター(CD-ROM 数値地質図 E-1)

札幌市(2009)札幌市における自然由来ヒ素の判定方

法について(答申)13p

下河原 寿男(1963)夕張炭田の形成とその地質構造

の発展石炭地質研究5244p

寺島 滋ほか (2005) 日本海東部の海底堆積物中の

微量セレンの地球化学的研究 地質調査研究報

告 56 325-340

油汚染事故対策のための北海道立地質研究所の沿岸調査 Coastal research of GSH for oil spill response activity

濱田誠一(北海道立地質研究所)

Seiichi Hamada

1はじめに

2008 年 12 月北海道に隣接するサハリン島ではサハ

リン2石油開発にともなう原油の通年出荷が開始され

たこれは我が国への安定的なエネルギー供給をもた

らす一方で沿岸に油汚染の懸念をもたらしている1)

特にオホーツク沿岸はサロマ湖や知床などアクセス困

難で生物環境への影響が深刻な沿岸がみられ防除作

業が困難な場所も多い地域防災計画では大規模油流

出事故時の陸域の活動調整を北海道が担うとされ適

切な調整のための沿岸情報の把握が求められている

北海道立地質研究所は北海道の重点領域研究とし

てオホーツク沿岸で油防除が困難となるエリアの防除

活動を想定した「オホーツク海沿岸環境脆弱域におけ

る油汚染影響評価とバイオレメディエーション実用化

に関する研究」を実施し沿岸部における防除活動の

ための情報図等を作成した(図1)ここでは研究のな

かで実施した地質学的検討のうち礫形をもとにした

油残留特性に関する評価手法の概要を報告する

2油自然残留特性評価のための礫形評価手法

1997 年のナホトカ号油流出事故をケーススタディー

に実際に長期的な油残留が見られた礫浜を地質学的

観点から検証し漂着油が自然に洗い流される作用を

評価するための手法を検討した予察調査の結果油

が長期残留する海岸には礫形が角張るなどの地学的

特徴が見られこの特徴を定量的に指標化することに

より油の残留特性を客観的に評価する手法を検討した

事故後の油残留年数がモニタリングされた能登海岸

のうち安山岩質の cobble 礫で形成され河川の礫供

給をほとんど受けない海岸 11地点を調査対象に抽出し

た各地点で 50 個の礫を後浜上限部から採取し礫形

を撮影した撮影は市販のデジタルカメラを使用し

2048times1536 ピクセルで撮影した(図2①)撮影では

礫の最大投影面を真下に向け透明の撮影台の下に固

定したデジタルカメラから空を背景に撮影した空が

背景なので礫の周囲に影ができずシャープで高コン

トラストの輪郭画像が取得できた画像処理ソフト

ImageJ による画像処理により白黒二値化画像に変換し

1ピクセルあたり約 015-018mm の画像を得た(図2

②)その輪郭画像から XY 座標値を抽出し(図2④)

エクセルによる解析を行った解析では座標データを

重心から輪郭までの距離のグラフとして展開しこの

ピークの鋭さを角度として測定し礫の角張り具合の

指標値とした(図2⑥)礫の輪郭が円であれば重心

から輪郭までの距離は一定となりグラフは横一直線と

なる一方輪郭に凹凸があれば凹凸に応じてグラ

フは波打ち尖ったピークが現れるエクセルの処理

はマクロ機能を用いて自動的な処理を行った 図1 地域緊急時計画に活用された沿岸情報図

図2 現地調査におけるデジタルカメラを用いた礫形の収集と評価方法

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 4: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

によるセレンの形態変化は不明であるなお砂岩で

は全て検出限界以下を示す

33 考 察

各試験結果から堆積岩の重金属類溶出特性について

風化の影響を考察する以下に連続溶出試験で検出さ

れたヒ素セレンについて考察する

(1)ヒ素

表-5 に示すとおり風化の程度の違いによって底質調

査法による含有量に有意な差はないことがわかるし

かし図-1 に示す分画抽出試験の結果からも明らかな

ように中風化部と未風化部を比較すると風化によ

って難溶性鉱物態吸着態鉄マンガン態が減少し

有機態が増加するこの結果から風化によってヒ素

の全含有量は変化しないものの形態が異なることに

よってヒ素溶出量が変化するものと考えられる表-6

に示される環境省告示第 19 号による含有量試験での 1

規定塩酸に可溶な量が低下していることもヒ素の形

態の変化で溶出特性が変化することを支持するただ

し連続溶出試験結果よりpH は未風化部でアルカリ

性であるが風化部では中性域に低下していることから

ヒ素溶出量の低下は pHの影響も受けている可能性があ

(2)セレン

泥岩中のセレンは表-5 より底質調査法による含有

量試験結果から風化によって低下する点と図-1 に示

す分画抽出試験結果から風化によって吸着態炭酸塩

態鉄マンガン態有機態難溶性鉱物態の含有量が

全て低下して検出下限値以下となることから泥岩中

のヒ素と比較してセレンは風化による溶脱を受けやす

い特性であることがわかる

4おわりに

トンネル建設現場及びボーリングコアから採取した

堆積岩を用いて重金属類の溶出特性について風化の影

響を検討したその結果本試験に用いた試料のヒ素

の溶出特性は風化を受けると存在形態が変化するこ

とで溶出量が変化するがセレンの溶出特性はヒ素よ

りも溶出しやすいため溶脱が早く進み溶出しやすく

なると考えられる

今後はデータの蓄積や堆積岩の重金属類溶出源評

価のための溶出総量について考察していく予定である

参考文献

1)(独)土木研究所建設工事で遭遇する地盤汚染対

応マニュアル(暫定版)鹿島出版会20045 2)丸茂克美他日本各地の土壌中の重金属含有量と

鉛同位体組成資源地質Vol53(2)pp125-1462003 3)吉村尚久赤井純治土壌及び堆積物中のヒ素の

挙動と地下水汚染-総説-地球科学Vol57

pp137-1562003

堆積岩からの重金属等の溶出挙動 Leaching mechanism of heavy metals from various sedimentary rocks

垣原康之高橋 良遠藤祐司八幡正弘野呂田晋(道立地質研究所)

駒井 武原 淳子川辺能成(産業技術総合研究所)

Yasuyuki Kakihara RyoTakahashi Yuji Endou Masahiro Yahata Susumu Norota Takeshi Komai Junko Hara and Yoshishige Kawabe

1111はじめにはじめにはじめにはじめに

堆積岩の分布域で行われる建設工事現場において

自然由来と判断される岩石から溶出するヒ素セレ

ンホウ素が土壌溶出基準値を 1~3倍程度超過する建

設残土が発生している(丸茂ほか2003)これらの堆

積岩の多くは鉱床地帯でみられるような熱水変質作

用を受けていないことから堆積~続成作用時に上述

の元素を含有したものと考えられる

現世堆積物~表層堆積物では堆積場の環境により

岩石からのヒ素の溶出挙動が異なっている(例えば

札幌市2009)加えて海成泥岩においてヒ素の溶出

量が高い傾向を示すなど岩石生成時の堆積場とそれ

らの岩石からのヒ素セレンホウ素などの溶出量と

は相関があるように思われるこの検証のために現在

の堆積場から試料を採取することもひとつの方法であ

るが部分的に容易である一方海底や湖底などの採

取が難しい堆積環境や立ち入り規制や建造物などの

人為的な制限も多い

本研究では地層として保存されている堆積岩の堆

積場に着目して現世において採取困難な環境で堆積

した堆積岩からの重金属等の溶出挙動を推定すること

を目的とした北海道空知支庁夕張市真谷地には下

位から白亜紀(一部暁新世)の上部蝦夷層群函淵

層群不整合を介して始新世石狩層群幌内層群など

の陸域から浅海海域までの堆積物が分布するまた

この地域は効率的な石炭採掘のために複雑な地質

構造であるにもかかわらず層序古環境の詳細な検

討が行われている

これらの地層から採取した各試料の溶出挙動を明ら

かにすれば陸域から海域にかけての各堆積場で起こ

る重金属等の固定溶出挙動として他地域他時代

の岩石にも適用できる可能性がある

2222各層各層各層各層のののの堆積環境堆積環境堆積環境堆積環境

対象地域に分布する各層の堆積環境を既報の資料

(下河原ほか1963など)に基づいて

A)淡水域(汽水を含む)

B)海域(静穏時波浪限界深度以浅)

C)海域(静穏時波浪限界深度以深)

の3つに区分したA)と B)の境界は主に pH酸

化状態塩素イオン濃度などの化学的境界である B)

と C)の境界は波浪による粒子の撹拌の有無に基づく

物理的境界と言える

調査地域に分布する各層は下位から上部蝦夷層群

(C)函淵層群(B一部 A)不整合を介して始新

世石狩層群は下位から厚層砂岩層を特徴とする登川

層(A)淡水湖底堆積物を特徴とする幌加別層(A)

良質な石炭層を特徴とする夕張層(A)海進期の浅海

堆積物を特徴とする若鍋層(B)さらに不整合を介し

て塊状無層理のシルト岩を特徴とする始新世幌内層

(C)が分布する

3333溶出試験溶出試験溶出試験溶出試験

本報告の岩石試料はすべて地表踏査により露頭から

採取したものである各露頭において風化の影響の小

さな試料(変色の程度が小さいもの)を採取するよう

にした

岩石試料約 50g をボールミルを用いて粉砕したこ

の粉末3gを純水 30mL を混合し振とう器を用いて

200rpm で6時間振とうさせた後20 分間静置後遠

心器で 20 分間懸濁物を沈殿させたこの上澄み液を

10cc 取りメンブランフィルタ(042μm)を通した

ものを検液としたこの検液を産業技術総合研究所に

設置されている ICP-MS(SHIMADU ICPM-8500)を

使用してヒ素セレンホウ素の含有量を測定した

なお今回採用した分析方法は検体試料の採取法

粒径振とうさせる量(試料純水比のみ同じ)濃度

分析法などが公定法とは異なっているため公定法試

験との単純な比較はできないことを付け加えておく

4444ヒヒヒヒ素素素素セレンセレンセレンセレンのののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

ヒ素の溶出量はこの区分に基づくとC)外洋性波

浪限界以深の上部蝦夷層群の泥岩において溶出基準を

超過する試料がみられたまた基準値以下の試料につ

いても他の堆積岩よりも同区分の岩石は高い価を示

す傾向がみられた一方A)に区分される岩石は概

してヒ素の溶出量は基準値以下でありかつ値も小さ

いなお B)に区分される岩石は溶出基準値を超過して

いない

セレンの溶出量はC)内湾性波浪限界以深の幌内層

群シルト岩および中部蝦夷層群泥岩において溶出基準

値を超過する試料がみられた一方波浪限界以浅の

海域の地層は溶出基準値を超過する試料は認められ

なかった

5555考察考察考察考察

静穏時波浪限界以浅の地層は常に波浪営力(振動流)

により撹拌されている状態にあるこのためにヒ素を

吸着しているであろう細粒粒子がこの営力により海

水との攪拌状態を経て堆積物中から取り去られるこ

のため B)の堆積環境では相対的にヒ素を吸着している

細粒粒子の割合が小さくなり溶出基準値を超過する

ような事例が認められなかったものと考えられる一

方細粒粒子はより沖合に浮遊して静穏時波浪限界

以深に運搬されるこの環境では吸着状態のヒ素の割

合が高くいため相対的に高いヒ素の溶出量を示した

ものと考えられる

一方セレンは海水中で[SeO4]の形態で溶解してい

るがこれが生物中に取り込まれることで有機セレン

に変化するこの生物遺骸が埋積することで海成堆積

物中にセレンが濃集する(寺島ほか2005)このため

に静穏な環境の波浪限界以深の泥岩でセレン溶出量が

高いと判断されるなおいったん堆積物中に固定さ

れたセレンは酸化環境にさらされると海水や地下

水に溶解する可能性がある堆積物中に固定され続け

るためには還元環境が必要であり物理的挙動だけで

はなく酸化還元状態も重要と思われる

6666石炭層石炭層石炭層石炭層ののののヒヒヒヒ素素素素のののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

石狩層群登川層および夕張層中には良質な石炭層が

挟在されており夕張炭田として 1980年代中頃まで大

規模に稼行されていたこれらのうち比較的良質な石

炭層について重金属等の溶出試験を行った結果他の

堆積岩と比してヒ素の溶出量は 0005mgL以下と低

かったそこで石炭試料についてヒ素の逐次抽出試験

を実施した全量溶解による全岩ヒ素含有量は石炭

層と炭質砂岩がともに 74ppm と上部蝦夷層群の泥岩

(21ppm)と幌内層の泥岩(34ppm)よりも有意に高

いしかしながらイオン交換態はいずれの試料も 20

~25ppmと変わらなかった石炭層に含有されるヒ素

の形態は「鉄マンガン酸化物分画」のヒ素の割合が高

く相対的に「結晶格子分画」が低い

一方石炭層周辺の砂岩泥岩には石炭片が頻繁に

含まれていることが多いこれらの試料について石炭

片が混在した状態で溶出試験を実施したその結果

ほとんどの試料で溶出基準を超過するヒ素の溶出量を

示した以上の結果は通常は溶出基準を超過しない

粉砕状態の石炭片は泥岩との混在状態において高い

ヒ素の溶出量を示す可能性があることを示す今後は

溶出に至るメカニズムについて検討していく必要があ

引用文献引用文献引用文献引用文献

丸茂 克美ほか (2003) 土壌地質汚染評価基本図「5

万分の 1 姉崎」 産業技術総合研究所地質調査

総合センター(CD-ROM 数値地質図 E-1)

札幌市(2009)札幌市における自然由来ヒ素の判定方

法について(答申)13p

下河原 寿男(1963)夕張炭田の形成とその地質構造

の発展石炭地質研究5244p

寺島 滋ほか (2005) 日本海東部の海底堆積物中の

微量セレンの地球化学的研究 地質調査研究報

告 56 325-340

油汚染事故対策のための北海道立地質研究所の沿岸調査 Coastal research of GSH for oil spill response activity

濱田誠一(北海道立地質研究所)

Seiichi Hamada

1はじめに

2008 年 12 月北海道に隣接するサハリン島ではサハ

リン2石油開発にともなう原油の通年出荷が開始され

たこれは我が国への安定的なエネルギー供給をもた

らす一方で沿岸に油汚染の懸念をもたらしている1)

特にオホーツク沿岸はサロマ湖や知床などアクセス困

難で生物環境への影響が深刻な沿岸がみられ防除作

業が困難な場所も多い地域防災計画では大規模油流

出事故時の陸域の活動調整を北海道が担うとされ適

切な調整のための沿岸情報の把握が求められている

北海道立地質研究所は北海道の重点領域研究とし

てオホーツク沿岸で油防除が困難となるエリアの防除

活動を想定した「オホーツク海沿岸環境脆弱域におけ

る油汚染影響評価とバイオレメディエーション実用化

に関する研究」を実施し沿岸部における防除活動の

ための情報図等を作成した(図1)ここでは研究のな

かで実施した地質学的検討のうち礫形をもとにした

油残留特性に関する評価手法の概要を報告する

2油自然残留特性評価のための礫形評価手法

1997 年のナホトカ号油流出事故をケーススタディー

に実際に長期的な油残留が見られた礫浜を地質学的

観点から検証し漂着油が自然に洗い流される作用を

評価するための手法を検討した予察調査の結果油

が長期残留する海岸には礫形が角張るなどの地学的

特徴が見られこの特徴を定量的に指標化することに

より油の残留特性を客観的に評価する手法を検討した

事故後の油残留年数がモニタリングされた能登海岸

のうち安山岩質の cobble 礫で形成され河川の礫供

給をほとんど受けない海岸 11地点を調査対象に抽出し

た各地点で 50 個の礫を後浜上限部から採取し礫形

を撮影した撮影は市販のデジタルカメラを使用し

2048times1536 ピクセルで撮影した(図2①)撮影では

礫の最大投影面を真下に向け透明の撮影台の下に固

定したデジタルカメラから空を背景に撮影した空が

背景なので礫の周囲に影ができずシャープで高コン

トラストの輪郭画像が取得できた画像処理ソフト

ImageJ による画像処理により白黒二値化画像に変換し

1ピクセルあたり約 015-018mm の画像を得た(図2

②)その輪郭画像から XY 座標値を抽出し(図2④)

エクセルによる解析を行った解析では座標データを

重心から輪郭までの距離のグラフとして展開しこの

ピークの鋭さを角度として測定し礫の角張り具合の

指標値とした(図2⑥)礫の輪郭が円であれば重心

から輪郭までの距離は一定となりグラフは横一直線と

なる一方輪郭に凹凸があれば凹凸に応じてグラ

フは波打ち尖ったピークが現れるエクセルの処理

はマクロ機能を用いて自動的な処理を行った 図1 地域緊急時計画に活用された沿岸情報図

図2 現地調査におけるデジタルカメラを用いた礫形の収集と評価方法

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 5: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

堆積岩からの重金属等の溶出挙動 Leaching mechanism of heavy metals from various sedimentary rocks

垣原康之高橋 良遠藤祐司八幡正弘野呂田晋(道立地質研究所)

駒井 武原 淳子川辺能成(産業技術総合研究所)

Yasuyuki Kakihara RyoTakahashi Yuji Endou Masahiro Yahata Susumu Norota Takeshi Komai Junko Hara and Yoshishige Kawabe

1111はじめにはじめにはじめにはじめに

堆積岩の分布域で行われる建設工事現場において

自然由来と判断される岩石から溶出するヒ素セレ

ンホウ素が土壌溶出基準値を 1~3倍程度超過する建

設残土が発生している(丸茂ほか2003)これらの堆

積岩の多くは鉱床地帯でみられるような熱水変質作

用を受けていないことから堆積~続成作用時に上述

の元素を含有したものと考えられる

現世堆積物~表層堆積物では堆積場の環境により

岩石からのヒ素の溶出挙動が異なっている(例えば

札幌市2009)加えて海成泥岩においてヒ素の溶出

量が高い傾向を示すなど岩石生成時の堆積場とそれ

らの岩石からのヒ素セレンホウ素などの溶出量と

は相関があるように思われるこの検証のために現在

の堆積場から試料を採取することもひとつの方法であ

るが部分的に容易である一方海底や湖底などの採

取が難しい堆積環境や立ち入り規制や建造物などの

人為的な制限も多い

本研究では地層として保存されている堆積岩の堆

積場に着目して現世において採取困難な環境で堆積

した堆積岩からの重金属等の溶出挙動を推定すること

を目的とした北海道空知支庁夕張市真谷地には下

位から白亜紀(一部暁新世)の上部蝦夷層群函淵

層群不整合を介して始新世石狩層群幌内層群など

の陸域から浅海海域までの堆積物が分布するまた

この地域は効率的な石炭採掘のために複雑な地質

構造であるにもかかわらず層序古環境の詳細な検

討が行われている

これらの地層から採取した各試料の溶出挙動を明ら

かにすれば陸域から海域にかけての各堆積場で起こ

る重金属等の固定溶出挙動として他地域他時代

の岩石にも適用できる可能性がある

2222各層各層各層各層のののの堆積環境堆積環境堆積環境堆積環境

対象地域に分布する各層の堆積環境を既報の資料

(下河原ほか1963など)に基づいて

A)淡水域(汽水を含む)

B)海域(静穏時波浪限界深度以浅)

C)海域(静穏時波浪限界深度以深)

の3つに区分したA)と B)の境界は主に pH酸

化状態塩素イオン濃度などの化学的境界である B)

と C)の境界は波浪による粒子の撹拌の有無に基づく

物理的境界と言える

調査地域に分布する各層は下位から上部蝦夷層群

(C)函淵層群(B一部 A)不整合を介して始新

世石狩層群は下位から厚層砂岩層を特徴とする登川

層(A)淡水湖底堆積物を特徴とする幌加別層(A)

良質な石炭層を特徴とする夕張層(A)海進期の浅海

堆積物を特徴とする若鍋層(B)さらに不整合を介し

て塊状無層理のシルト岩を特徴とする始新世幌内層

(C)が分布する

3333溶出試験溶出試験溶出試験溶出試験

本報告の岩石試料はすべて地表踏査により露頭から

採取したものである各露頭において風化の影響の小

さな試料(変色の程度が小さいもの)を採取するよう

にした

岩石試料約 50g をボールミルを用いて粉砕したこ

の粉末3gを純水 30mL を混合し振とう器を用いて

200rpm で6時間振とうさせた後20 分間静置後遠

心器で 20 分間懸濁物を沈殿させたこの上澄み液を

10cc 取りメンブランフィルタ(042μm)を通した

ものを検液としたこの検液を産業技術総合研究所に

設置されている ICP-MS(SHIMADU ICPM-8500)を

使用してヒ素セレンホウ素の含有量を測定した

なお今回採用した分析方法は検体試料の採取法

粒径振とうさせる量(試料純水比のみ同じ)濃度

分析法などが公定法とは異なっているため公定法試

験との単純な比較はできないことを付け加えておく

4444ヒヒヒヒ素素素素セレンセレンセレンセレンのののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

ヒ素の溶出量はこの区分に基づくとC)外洋性波

浪限界以深の上部蝦夷層群の泥岩において溶出基準を

超過する試料がみられたまた基準値以下の試料につ

いても他の堆積岩よりも同区分の岩石は高い価を示

す傾向がみられた一方A)に区分される岩石は概

してヒ素の溶出量は基準値以下でありかつ値も小さ

いなお B)に区分される岩石は溶出基準値を超過して

いない

セレンの溶出量はC)内湾性波浪限界以深の幌内層

群シルト岩および中部蝦夷層群泥岩において溶出基準

値を超過する試料がみられた一方波浪限界以浅の

海域の地層は溶出基準値を超過する試料は認められ

なかった

5555考察考察考察考察

静穏時波浪限界以浅の地層は常に波浪営力(振動流)

により撹拌されている状態にあるこのためにヒ素を

吸着しているであろう細粒粒子がこの営力により海

水との攪拌状態を経て堆積物中から取り去られるこ

のため B)の堆積環境では相対的にヒ素を吸着している

細粒粒子の割合が小さくなり溶出基準値を超過する

ような事例が認められなかったものと考えられる一

方細粒粒子はより沖合に浮遊して静穏時波浪限界

以深に運搬されるこの環境では吸着状態のヒ素の割

合が高くいため相対的に高いヒ素の溶出量を示した

ものと考えられる

一方セレンは海水中で[SeO4]の形態で溶解してい

るがこれが生物中に取り込まれることで有機セレン

に変化するこの生物遺骸が埋積することで海成堆積

物中にセレンが濃集する(寺島ほか2005)このため

に静穏な環境の波浪限界以深の泥岩でセレン溶出量が

高いと判断されるなおいったん堆積物中に固定さ

れたセレンは酸化環境にさらされると海水や地下

水に溶解する可能性がある堆積物中に固定され続け

るためには還元環境が必要であり物理的挙動だけで

はなく酸化還元状態も重要と思われる

6666石炭層石炭層石炭層石炭層ののののヒヒヒヒ素素素素のののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

石狩層群登川層および夕張層中には良質な石炭層が

挟在されており夕張炭田として 1980年代中頃まで大

規模に稼行されていたこれらのうち比較的良質な石

炭層について重金属等の溶出試験を行った結果他の

堆積岩と比してヒ素の溶出量は 0005mgL以下と低

かったそこで石炭試料についてヒ素の逐次抽出試験

を実施した全量溶解による全岩ヒ素含有量は石炭

層と炭質砂岩がともに 74ppm と上部蝦夷層群の泥岩

(21ppm)と幌内層の泥岩(34ppm)よりも有意に高

いしかしながらイオン交換態はいずれの試料も 20

~25ppmと変わらなかった石炭層に含有されるヒ素

の形態は「鉄マンガン酸化物分画」のヒ素の割合が高

く相対的に「結晶格子分画」が低い

一方石炭層周辺の砂岩泥岩には石炭片が頻繁に

含まれていることが多いこれらの試料について石炭

片が混在した状態で溶出試験を実施したその結果

ほとんどの試料で溶出基準を超過するヒ素の溶出量を

示した以上の結果は通常は溶出基準を超過しない

粉砕状態の石炭片は泥岩との混在状態において高い

ヒ素の溶出量を示す可能性があることを示す今後は

溶出に至るメカニズムについて検討していく必要があ

引用文献引用文献引用文献引用文献

丸茂 克美ほか (2003) 土壌地質汚染評価基本図「5

万分の 1 姉崎」 産業技術総合研究所地質調査

総合センター(CD-ROM 数値地質図 E-1)

札幌市(2009)札幌市における自然由来ヒ素の判定方

法について(答申)13p

下河原 寿男(1963)夕張炭田の形成とその地質構造

の発展石炭地質研究5244p

寺島 滋ほか (2005) 日本海東部の海底堆積物中の

微量セレンの地球化学的研究 地質調査研究報

告 56 325-340

油汚染事故対策のための北海道立地質研究所の沿岸調査 Coastal research of GSH for oil spill response activity

濱田誠一(北海道立地質研究所)

Seiichi Hamada

1はじめに

2008 年 12 月北海道に隣接するサハリン島ではサハ

リン2石油開発にともなう原油の通年出荷が開始され

たこれは我が国への安定的なエネルギー供給をもた

らす一方で沿岸に油汚染の懸念をもたらしている1)

特にオホーツク沿岸はサロマ湖や知床などアクセス困

難で生物環境への影響が深刻な沿岸がみられ防除作

業が困難な場所も多い地域防災計画では大規模油流

出事故時の陸域の活動調整を北海道が担うとされ適

切な調整のための沿岸情報の把握が求められている

北海道立地質研究所は北海道の重点領域研究とし

てオホーツク沿岸で油防除が困難となるエリアの防除

活動を想定した「オホーツク海沿岸環境脆弱域におけ

る油汚染影響評価とバイオレメディエーション実用化

に関する研究」を実施し沿岸部における防除活動の

ための情報図等を作成した(図1)ここでは研究のな

かで実施した地質学的検討のうち礫形をもとにした

油残留特性に関する評価手法の概要を報告する

2油自然残留特性評価のための礫形評価手法

1997 年のナホトカ号油流出事故をケーススタディー

に実際に長期的な油残留が見られた礫浜を地質学的

観点から検証し漂着油が自然に洗い流される作用を

評価するための手法を検討した予察調査の結果油

が長期残留する海岸には礫形が角張るなどの地学的

特徴が見られこの特徴を定量的に指標化することに

より油の残留特性を客観的に評価する手法を検討した

事故後の油残留年数がモニタリングされた能登海岸

のうち安山岩質の cobble 礫で形成され河川の礫供

給をほとんど受けない海岸 11地点を調査対象に抽出し

た各地点で 50 個の礫を後浜上限部から採取し礫形

を撮影した撮影は市販のデジタルカメラを使用し

2048times1536 ピクセルで撮影した(図2①)撮影では

礫の最大投影面を真下に向け透明の撮影台の下に固

定したデジタルカメラから空を背景に撮影した空が

背景なので礫の周囲に影ができずシャープで高コン

トラストの輪郭画像が取得できた画像処理ソフト

ImageJ による画像処理により白黒二値化画像に変換し

1ピクセルあたり約 015-018mm の画像を得た(図2

②)その輪郭画像から XY 座標値を抽出し(図2④)

エクセルによる解析を行った解析では座標データを

重心から輪郭までの距離のグラフとして展開しこの

ピークの鋭さを角度として測定し礫の角張り具合の

指標値とした(図2⑥)礫の輪郭が円であれば重心

から輪郭までの距離は一定となりグラフは横一直線と

なる一方輪郭に凹凸があれば凹凸に応じてグラ

フは波打ち尖ったピークが現れるエクセルの処理

はマクロ機能を用いて自動的な処理を行った 図1 地域緊急時計画に活用された沿岸情報図

図2 現地調査におけるデジタルカメラを用いた礫形の収集と評価方法

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 6: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

群シルト岩および中部蝦夷層群泥岩において溶出基準

値を超過する試料がみられた一方波浪限界以浅の

海域の地層は溶出基準値を超過する試料は認められ

なかった

5555考察考察考察考察

静穏時波浪限界以浅の地層は常に波浪営力(振動流)

により撹拌されている状態にあるこのためにヒ素を

吸着しているであろう細粒粒子がこの営力により海

水との攪拌状態を経て堆積物中から取り去られるこ

のため B)の堆積環境では相対的にヒ素を吸着している

細粒粒子の割合が小さくなり溶出基準値を超過する

ような事例が認められなかったものと考えられる一

方細粒粒子はより沖合に浮遊して静穏時波浪限界

以深に運搬されるこの環境では吸着状態のヒ素の割

合が高くいため相対的に高いヒ素の溶出量を示した

ものと考えられる

一方セレンは海水中で[SeO4]の形態で溶解してい

るがこれが生物中に取り込まれることで有機セレン

に変化するこの生物遺骸が埋積することで海成堆積

物中にセレンが濃集する(寺島ほか2005)このため

に静穏な環境の波浪限界以深の泥岩でセレン溶出量が

高いと判断されるなおいったん堆積物中に固定さ

れたセレンは酸化環境にさらされると海水や地下

水に溶解する可能性がある堆積物中に固定され続け

るためには還元環境が必要であり物理的挙動だけで

はなく酸化還元状態も重要と思われる

6666石炭層石炭層石炭層石炭層ののののヒヒヒヒ素素素素のののの溶出挙動溶出挙動溶出挙動溶出挙動

石狩層群登川層および夕張層中には良質な石炭層が

挟在されており夕張炭田として 1980年代中頃まで大

規模に稼行されていたこれらのうち比較的良質な石

炭層について重金属等の溶出試験を行った結果他の

堆積岩と比してヒ素の溶出量は 0005mgL以下と低

かったそこで石炭試料についてヒ素の逐次抽出試験

を実施した全量溶解による全岩ヒ素含有量は石炭

層と炭質砂岩がともに 74ppm と上部蝦夷層群の泥岩

(21ppm)と幌内層の泥岩(34ppm)よりも有意に高

いしかしながらイオン交換態はいずれの試料も 20

~25ppmと変わらなかった石炭層に含有されるヒ素

の形態は「鉄マンガン酸化物分画」のヒ素の割合が高

く相対的に「結晶格子分画」が低い

一方石炭層周辺の砂岩泥岩には石炭片が頻繁に

含まれていることが多いこれらの試料について石炭

片が混在した状態で溶出試験を実施したその結果

ほとんどの試料で溶出基準を超過するヒ素の溶出量を

示した以上の結果は通常は溶出基準を超過しない

粉砕状態の石炭片は泥岩との混在状態において高い

ヒ素の溶出量を示す可能性があることを示す今後は

溶出に至るメカニズムについて検討していく必要があ

引用文献引用文献引用文献引用文献

丸茂 克美ほか (2003) 土壌地質汚染評価基本図「5

万分の 1 姉崎」 産業技術総合研究所地質調査

総合センター(CD-ROM 数値地質図 E-1)

札幌市(2009)札幌市における自然由来ヒ素の判定方

法について(答申)13p

下河原 寿男(1963)夕張炭田の形成とその地質構造

の発展石炭地質研究5244p

寺島 滋ほか (2005) 日本海東部の海底堆積物中の

微量セレンの地球化学的研究 地質調査研究報

告 56 325-340

油汚染事故対策のための北海道立地質研究所の沿岸調査 Coastal research of GSH for oil spill response activity

濱田誠一(北海道立地質研究所)

Seiichi Hamada

1はじめに

2008 年 12 月北海道に隣接するサハリン島ではサハ

リン2石油開発にともなう原油の通年出荷が開始され

たこれは我が国への安定的なエネルギー供給をもた

らす一方で沿岸に油汚染の懸念をもたらしている1)

特にオホーツク沿岸はサロマ湖や知床などアクセス困

難で生物環境への影響が深刻な沿岸がみられ防除作

業が困難な場所も多い地域防災計画では大規模油流

出事故時の陸域の活動調整を北海道が担うとされ適

切な調整のための沿岸情報の把握が求められている

北海道立地質研究所は北海道の重点領域研究とし

てオホーツク沿岸で油防除が困難となるエリアの防除

活動を想定した「オホーツク海沿岸環境脆弱域におけ

る油汚染影響評価とバイオレメディエーション実用化

に関する研究」を実施し沿岸部における防除活動の

ための情報図等を作成した(図1)ここでは研究のな

かで実施した地質学的検討のうち礫形をもとにした

油残留特性に関する評価手法の概要を報告する

2油自然残留特性評価のための礫形評価手法

1997 年のナホトカ号油流出事故をケーススタディー

に実際に長期的な油残留が見られた礫浜を地質学的

観点から検証し漂着油が自然に洗い流される作用を

評価するための手法を検討した予察調査の結果油

が長期残留する海岸には礫形が角張るなどの地学的

特徴が見られこの特徴を定量的に指標化することに

より油の残留特性を客観的に評価する手法を検討した

事故後の油残留年数がモニタリングされた能登海岸

のうち安山岩質の cobble 礫で形成され河川の礫供

給をほとんど受けない海岸 11地点を調査対象に抽出し

た各地点で 50 個の礫を後浜上限部から採取し礫形

を撮影した撮影は市販のデジタルカメラを使用し

2048times1536 ピクセルで撮影した(図2①)撮影では

礫の最大投影面を真下に向け透明の撮影台の下に固

定したデジタルカメラから空を背景に撮影した空が

背景なので礫の周囲に影ができずシャープで高コン

トラストの輪郭画像が取得できた画像処理ソフト

ImageJ による画像処理により白黒二値化画像に変換し

1ピクセルあたり約 015-018mm の画像を得た(図2

②)その輪郭画像から XY 座標値を抽出し(図2④)

エクセルによる解析を行った解析では座標データを

重心から輪郭までの距離のグラフとして展開しこの

ピークの鋭さを角度として測定し礫の角張り具合の

指標値とした(図2⑥)礫の輪郭が円であれば重心

から輪郭までの距離は一定となりグラフは横一直線と

なる一方輪郭に凹凸があれば凹凸に応じてグラ

フは波打ち尖ったピークが現れるエクセルの処理

はマクロ機能を用いて自動的な処理を行った 図1 地域緊急時計画に活用された沿岸情報図

図2 現地調査におけるデジタルカメラを用いた礫形の収集と評価方法

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

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1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

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3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

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4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

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5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

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6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

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7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 7: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

油汚染事故対策のための北海道立地質研究所の沿岸調査 Coastal research of GSH for oil spill response activity

濱田誠一(北海道立地質研究所)

Seiichi Hamada

1はじめに

2008 年 12 月北海道に隣接するサハリン島ではサハ

リン2石油開発にともなう原油の通年出荷が開始され

たこれは我が国への安定的なエネルギー供給をもた

らす一方で沿岸に油汚染の懸念をもたらしている1)

特にオホーツク沿岸はサロマ湖や知床などアクセス困

難で生物環境への影響が深刻な沿岸がみられ防除作

業が困難な場所も多い地域防災計画では大規模油流

出事故時の陸域の活動調整を北海道が担うとされ適

切な調整のための沿岸情報の把握が求められている

北海道立地質研究所は北海道の重点領域研究とし

てオホーツク沿岸で油防除が困難となるエリアの防除

活動を想定した「オホーツク海沿岸環境脆弱域におけ

る油汚染影響評価とバイオレメディエーション実用化

に関する研究」を実施し沿岸部における防除活動の

ための情報図等を作成した(図1)ここでは研究のな

かで実施した地質学的検討のうち礫形をもとにした

油残留特性に関する評価手法の概要を報告する

2油自然残留特性評価のための礫形評価手法

1997 年のナホトカ号油流出事故をケーススタディー

に実際に長期的な油残留が見られた礫浜を地質学的

観点から検証し漂着油が自然に洗い流される作用を

評価するための手法を検討した予察調査の結果油

が長期残留する海岸には礫形が角張るなどの地学的

特徴が見られこの特徴を定量的に指標化することに

より油の残留特性を客観的に評価する手法を検討した

事故後の油残留年数がモニタリングされた能登海岸

のうち安山岩質の cobble 礫で形成され河川の礫供

給をほとんど受けない海岸 11地点を調査対象に抽出し

た各地点で 50 個の礫を後浜上限部から採取し礫形

を撮影した撮影は市販のデジタルカメラを使用し

2048times1536 ピクセルで撮影した(図2①)撮影では

礫の最大投影面を真下に向け透明の撮影台の下に固

定したデジタルカメラから空を背景に撮影した空が

背景なので礫の周囲に影ができずシャープで高コン

トラストの輪郭画像が取得できた画像処理ソフト

ImageJ による画像処理により白黒二値化画像に変換し

1ピクセルあたり約 015-018mm の画像を得た(図2

②)その輪郭画像から XY 座標値を抽出し(図2④)

エクセルによる解析を行った解析では座標データを

重心から輪郭までの距離のグラフとして展開しこの

ピークの鋭さを角度として測定し礫の角張り具合の

指標値とした(図2⑥)礫の輪郭が円であれば重心

から輪郭までの距離は一定となりグラフは横一直線と

なる一方輪郭に凹凸があれば凹凸に応じてグラ

フは波打ち尖ったピークが現れるエクセルの処理

はマクロ機能を用いて自動的な処理を行った 図1 地域緊急時計画に活用された沿岸情報図

図2 現地調査におけるデジタルカメラを用いた礫形の収集と評価方法

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

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なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

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3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

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4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

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情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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-地球科学vol35215-218

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部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

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ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

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-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

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札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

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応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

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24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

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特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

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Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

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31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 8: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

図3 礫浜の「礫の角張り具合」を示す指標と油残留年数に見られた関連2)

2礫の「角張り具合」と油残留年数の関連性

得られた礫形指標値をナホトカ号事故後の油残留年

数と比較したところ相関係数R2乗値は0858を示し

一定の条件をそろえた礫浜では礫形と油残留年数に

極めて高い相関が見られた(図3) 2)

この後礫形と油残留特性が関連する要因を検討す

るため海岸に作用する波の作用が関与する「波高」

「後浜上限高度」「岩礁帯の幅」の関連性を検討した

調査の結果漂着油の残留年数が長期化する海岸には

汀線付近に波を遮蔽する岩礁が多く汀線を遡上する

波の作用が弱く(後浜上限高度が低い)礫形が角張っ

ていることが明らかとなりこれらに比較的高い相関

が見られた(図4)

3考察 3考察

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

礫形指標は検討した地学的要素の指標中でも油の残

留年数ともっとも相関が高く後浜上限高度より高い

相関を示したこれは後浜上限高度が「暴浪時のみ」

の波の遡上強度を示す一方礫形指標は「通常時」の

波の作用を長時間受け波の作用をより多く「記録」

しているためであると考えられる本研究で検討した

礫形指標は漂着油残留特性の評価や海岸線におよぶ遡

上波の強さの評価を行う上で有効な指標になると考え

られる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

岩礁帯の分布幅から求めた指標は油残留年数との

相関がさほど高くなかったものの空中写真判読によ

り求めることが可能であり知床枝幸網走など

波食台が広く分布しアクセスが困難な海岸の油残留特

性を推定する手法として有用と考えられる

参考文献 参考文献

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

1) 村上隆 2003サハリン大陸棚石油ガス開発と環境

保全北海道大学図書刊行会 pp430

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

2) 濱田誠一沢野伸浩 2009 漂流油残留年数と海岸

の礫形の関連性-ナホトカ号事故事例より-環境情

報科学論文集 vol21 p13-18

図4 礫浜における遡上波-礫形状-油残留時間に見られる関連性

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

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7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 9: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

強制乾燥状態および強制湿潤状態における熱水変質岩の

円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係 Relationship between Cylinder (Longitudinal) Point Load Strength and Uniaxial Compression Strength of

Hydrothermally Altered Rocks under the Foced Dry- and Wet-States

河野勝宣(北見工業大学大学院工学研究科)前田寛之(北見工業大学工学部社会環境工学科) 小竹純平(株式会社開発調査研究所)仁井太陽(パナソニック電工テクノストラクチャー株式会社)

鹿毛一平(久留米地区広域消防組合) Masanori KOHNO Hiroyuki MAEDA Junpei KOTAKE Motoharu NII and Ippei KAGE

1緒 言

新鮮岩や変質岩の強さは一般に一軸圧縮強さに

よって評価されるしかし岩体には断層や節理や

クラックなどがあるため露頭から一軸圧縮試験片を

作製できる大きさの試料を採集できないこともある

また一軸圧縮試験は供試体の成形の良し悪しや載

荷方式が大きく影響する試験であるため必要な量の

供試体を準備できたとしても試料本来の正確な一軸

圧縮強さが得られない可能性があるこのようなとき

でも点載荷試験は一軸圧縮試験に比べて小さな岩

石試料で非成形でフィールドでもおこなえ岩石

の強さを迅速に評価できるので非常に有効である 1)

2)それで点載荷強さから一軸圧縮強さを算出でき

れば非常に便利であるとともにコスト縮減にもなる ここで点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係は一

軸圧縮強さが点載荷強さの 123~150 倍 2)20~25 倍3)および 24 倍 4) 5)であることが過去の研究で報告され

ているしかしいずれの事例も花崗岩や玄武岩など

の硬岩には成立するが軟岩や中硬岩では全く成立せ

ずまた載荷方向供試体の形状や寸法点載荷強

さの計算方法などが統一されていない この研究発表では代表的な軟岩および中硬岩であ

る熱水変質岩の円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さと

の関係を明らかにすることを目的としておこなった試

験結果について報告する 2研究試料および試験方法

21 研究試料

研究試料である熱水変質岩は北海道遠軽町生田原

南地すべり防止区域(以下「生田原南地すべり地域」

と記す)および北海道弟子屈町奥春別地すべり地域南

部(以下「奥春別地すべり地域」と記す)(図-1)の

露頭や転石からハンマーを使って採集した熱水変質

帯は主に地表踏査および粉末 X 線回折試験によって

検討しUtada (1980)6)に基づいて分類した(図-2) (1) 生田原南地すべり地域試料は上部中新統生田原

層に発達する熱水変質帯のクリノタイロライト帯細粒

凝灰岩およびこの地域に掘削された垂直ボーリング孔

のコア試料から採集した熱水変質帯のハロイサイト帯

軽石凝灰岩および凝灰質礫岩である(表-1)

図-1 北海道遠軽町生田原南地すべり防止区域およ

び弟子屈町奥春別地すべり地域南部の位置図

図-2 熱水変質岩の分類(Utada 19806)一部修正

加筆)

(2) 奥春別地すべり地域試料は鮮新統志計礼辺山溶

岩に発達する熱水変質帯のアルーナイト-石英帯デイ

サイトと中新統シケレペ層およびハナクシベ層に発

達する熱水変質帯のクローライトスメクタイト混合

層鉱物帯細粒凝灰岩ヒューランダイト帯火山礫凝灰

岩モルデナイト帯細粒凝灰岩および軽石凝灰岩ク

リノタイロライト帯細粒凝灰岩およびスメクタイト帯

細粒凝灰岩である(表-1) これらの岩石試料には波状葉理や平行葉理が見ら

れるものやたまねぎ状風化が見られるものがある 22 供試体の作製方法

点載荷試験は本来非成形でおこなわれるが非

成形では点載荷強さのばらつきが大きい 7)ので強さ

Int ChlSmc interstratified chloritesmectite minerals

Int ChlSmczone

Clinoptilolitezone

Mordenitezone

hydrothermal alteration zones examined in this study

Alkalinealteration

zone group

Ca seriesStilbitezone

Heulanditezone

Laumontitezone

Wairakitezone

Na series Analcite zoneAlbitezone

Neutral alterationzone group

K series

Int IllSmc interstratified illitesmectite minerals

Acid alterationzone group

Sulfate seriesAlunite - opal

zoneAlunite - quartz

zone

Silicate seriesHalloysite

zoneKaolinite

zoneDickitezone

Pyrophyllitezone

Smectitezone

Illitezone

K-feldsparzone

Ca-Mg seriesPropylitic

zone

Int IllSmczone

Sea of OkhotskAbashiri Subprefectures

Kushiro Subprefectures

Sea of Japan

Pacific Ocean

Kitami

Sapporo

N

0 100 km

Ikutahara-Minami

Okushunbetsu

Landslide Area

Landslide Area

Engaru Town

Teshikaga Town

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

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7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

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589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

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17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

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19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

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境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

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Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

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31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 10: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

図-3 点載荷試験および一軸圧縮試験の供試体形状

のばらつきを小さくするため試料を直径 50 mm 程度

高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-

3A)この形状は成形が容易でボーリングコアを

有効に活用できるこの寸法は図-3A 中の 03W<D<W の条件 8)を満足する 一軸圧縮試験における供試体形状は円柱および正

四角柱がある 8)が試料を直径 50 mm 程度高さ 100 mm 程度の円柱に成形し供試体とした(図-3B)こ

の寸法は図-3B 中の hW≒2 の条件 8)を満足する 成形には室内用ボーリングマシーンおよびダイヤ

モンドカッターを使用した(図-4)ここで異方性

を持つ岩石において試験をおこなう場合層理面に対

して垂直および平行に載荷しそれらのデータを区別

して扱う必要がある 9)ため葉理面が確認される試料

については葉理面に対して垂直および平行にそれぞ

れ分けて成形した(図-4) 成形した供試体(点載荷試験用 695 個一軸圧縮試験

用 162 個)は試験のばらつきを小さくするため強さ

に大きな影響を与えるようなクラックを含まないもの

を選び各試験に必要な分だけ用意した(表-1)な

おここでの強制乾燥状態は膨潤性粘土鉱物であるス

図-4 供試体の作製方法 メクタイトやハロイサイト(10Aring)などの結晶水が脱水

されないと考えられる 60plusmn3で供試体を一定質量に

なるまで乾燥させた状態であり強制湿潤状態は供試

体を蒸留水に一定質量になるまで浸した状態である 23 円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験

試験装置は点載荷試験装置(本間電気製作所)およ

び万能試験機を使用した(図-5)点載荷試験時には

ダイヤルゲージを使用して併せて変位の測定をおこな

い一軸圧縮試験時には球座を使用したまた点載

荷試験における載荷コーン形状は様々なものがある

がこの研究では ISRM の指針で規定されているもの

と同一である 8)点載荷試験における載荷速度は10~60 秒間で破壊に至る程度 9)とされるが点載荷強さ

に大きな影響を与えないように一定速度(100 Nsec)で載荷した一軸圧縮試験における載荷速度は 01~10 MPasec である 3結果および考察

31 円柱(縦)点載荷強さおよび一軸圧縮強さ

強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さと一軸圧縮強さを表-1に示す

Dac - Alu-Qtz zone 14 179 104 5 2366 87 1322 Dac - Alu-Qtz zone 15 151 155 5 1564 210 1036

f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 18 201 195 2 1519 91 756 f Tf ChlSmc(+) ChlSmc zone 19 009 456 4 121 150 1344

lap Tf Smc(+) Hul zone 28 314 49 5 3669 18 1168 lap Tf Smc(+) Hul zone 27 088 150 4 1147 32 1303

Smc(+) 5 120 74 1 1524 00 1270 pm Tf Smc(+) 44 046 178 17 473 125 1028

Smc(+) 9 133 93 1 1400 00 1053 - 18 094 114 10 1665 198 1771

Smc(+) 19 157 107 5 1626 73 1036 - 13 069 118 5 808 95 1171

Smc(+) 22 166 60 13 1763 80 1062 - 7 048 230 5 581 143 1210

- 7 342 143 5 3114 150 911 - 1 051 00 1 623 00 1222

- 11 277 89 10 2603 72 940 - 4 053 143 1 644 00 1215

- 19 277 85 3 2978 09 1075 - 4 033 228 4 447 108 1355

- 12 167 171 4 4156 70 2489 pm Tf Smc(+) 12 015 232 3 252 126 1680

- 14 143 158 3 2332 22 1631 - 66 050 323 3 770 291 1540

- 7 151 83 6 1849 29 1225 Smc(+) 12 039 334 4 408 117 1046

pm Tf - 8 086 232 2 893 189 1038 Smc(-) 35 052 176 2 520 14 1000

- 65 194 280 4 2644 53 1363 Smc(+) 16 035 284 4 436 35 1246

Smc(+) 11 092 191 3 1986 24 2159 Smc(-) 32 046 209 3 536 35 1165

Smc(-) 15 120 121 1 2147 00 1789 Smc(+) 17 044 248 1 460 00 1045

Smc(+) 14 079 264 1 1735 00 2196 Smc(+) Smc zone 8 073 288 1 608 00 833

Smc(-) 15 100 97 5 2210 41 2210 tf Cg 10ÅHa(-) 2 011 48 1 108 00 982

Smc(+) 14 224 286 3 1809 227 808 pm Tf 10ÅHa(-) 1 037 00 1 422 00 1141

Smc(+) Smc zone 15 090 408 1 1067 00 1186

Point load test and uniaxial compression test Is=point load strength qu=uniaxial compression strength Cv=coefficient of variation

f TfIkutahara

Cpt zoneTeshikaga

Ikutahara Ha zone

Teshikaga

Teshikaga

Teshikaga

pm Tf

Mor zone

Mor zone

Relative abundance (+++) gt (++) gt (+) gt (-)Abbreviation of rocks Dac=dacite f Tf=fine tuff lap Tuff=lapilli tuff pm Tf=pumice tuff tf Cg=tuffaceous conglomerate

Abbreviation of minerals Alu=alunite ChlSmc=interstratified chloritesmectite minerals Cpt=clinoptilolite Ha=halloysite Hul=heulandite Mor=mordenite Qtz=quartz Smc=smectite

qu(MPa)

Cv ()

Uniaxial compression test

f Tf

f Tf

f TfIkutahara

Cpt zone

Is(MPa)

Cv ()

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test

Cv ()Number ofspecimen

qu(MPa)

Forced dry-state Forced wet-state

Samplingsite

Rockfacies

Swellingclay

mineral

Hydrothermalalteration zone

Point load test Uniaxial compression test

quIs quIsNumber ofspecimen

Is(MPa)

Cv ()Number ofspecimen

Number ofspecimen

表-1 供試体個数および試験結果

h

W

P

P

D

W

A

03WltDltW

P

P

hW≒2

BA

A Point load strength

Is = PDe2

(De2 = 4WDπ)

B Uniaxial compression strength

qu = PA

Core the rock samples Cut core samples to a length of 20 mm

and 100 mm using a diamond cutter

Rock sampleLamina

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 11: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

強制乾燥状態および強制湿潤状態に

おける点載荷強さと一軸圧縮強さは

それぞれスメクタイトなどの膨潤性

粘土鉱物を含む試料が小さい傾向があ

るまた強制湿潤状態における点載

荷強さはハロイサイト帯凝灰質礫岩

(ボーリングコア)が 011 MPaクロー

ライトスメクタイト混合層粘土鉱物

帯細粒凝灰岩が 009 MPa で小さいそ

れで強制湿潤状態においてスメク

タイトやハロイサイト(10Aring)などの膨

潤性粘土鉱物を含む試料の強さが小さいのはこれら

の膨潤性粘土鉱物が強制湿潤状態によって膨潤したこ

とが強さ低下に影響を与えたと考えられる 強制乾燥状態および強制湿潤状態における点載荷強

さと一軸圧縮強さの変動係数(表-1)は前者の方が

大きい傾向がありばらつきが大きい ここで点載荷試験における供試体個数の決定であ

るが供試体個数は点載荷強さの変動係数の大きさ

に強く影響される強さの分布が正規分布で近似でき

ると考えて信頼度 95 での片側信頼区間が平均値の

15 以内にするために必要な供試体個数 n は統計的

推定の問題として t 分布で求められる変動係数が

10 前後の場合n = 34 個であるが20 前後にな

ると n = 10 個程度さらに 30 前後になると n = 20個程度が要求される 2)それで点載荷強さの変動係

数と供試体個数(表-1)から変動係数が大きい値を

示しているのにもかかわらず供試体個数が少ない試

料もあるがほとんどの試料については変動係数に見

合った供試体個数を用意しているため平均値の信頼

区間が狭く試料における岩石の強さの特徴を正確に

捉えている供試体個数が少ない試料については今

後供試体個数を増やせばよいと考えられる また従来の一軸圧縮試験によれば変動係数が 15~20 である例が比較的多く特に変動係数が 20 を

超える場合には供試体個数を増やすことが望ましい

とされる 10)それで一軸圧縮強さの変動係数と供試

体個数(表-1)から変動係数が 20 を超える試料も

あるがほとんどの試料については変動係数が 20 以

下であるため試料における岩石の強さの特徴を正確

に捉えている 32 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

円柱(縦)点載荷試験および一軸圧縮試験結果から

これらの相関関係を図-6に示す 強制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)

点載荷強さ Is と一軸圧縮強さ qu との関係式はそれ

ぞれ qu = 68 Is + 100 および qu = 117 Is + 02 であり

また強制乾燥状態および強制湿潤状態における相関

係数はそれぞれ 063 および 092 であり強制湿潤

状態において非常に高い相関が見られる

4結 言

北海道遠軽町生田原南地すべり地域における上部中

新統生田原層と弟子屈町奥春別地すべり地域における

鮮新統志計礼辺山溶岩上部中新統シケレペ層および

ハナクシベ層に産する熱水変質軟岩および中硬岩の強

制乾燥状態および強制湿潤状態における円柱(縦)点載

荷強さと一軸圧縮強さとの関係についてまとめると次

のとおりである (1) 強制乾燥状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 68 Is + 100 であり

前者と後者との相関係数が 063 であることから高い

相関が見られる (2) 強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ Is と

一軸圧縮強さ qu との関係式は qu = 117 Is + 02 であり

前者と後者との相関係数が 092 であることから非常

に高い相関が見られる (3) フィールドにおける岩石の含水状態はほとんど

の場合雨水や融雪水や地下水の影響により湿潤状態

であることと強制湿潤状態において円柱(縦)点載荷

強さと一軸圧縮強さとの関係に非常に高い相関がある

ことから円柱(縦)点載荷強さから一軸圧縮強さを算

出する際には供試体の含水状態は強制湿潤状態の方が

より有効であると考えられる (4) 点載荷試験はフィールドにおいて岩石の強さを

迅速に評価できるため試料採集後の時間短縮と室

内試験時のスレーキングなどの影響をなくすことを可

能にし非常に有効な試験である

5今後の課題

様々な種類の熱水変質岩についても同様の試験を実

施しより多くのデータを集積すれば熱水変質岩に

おける円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係を

明らかにすることができると考えられるまた熱水

変質岩以外の様々な軟岩および中硬岩さらに硬岩に

おけるそれらの関係式が確立されると点載荷試験は

一軸圧縮強さ評価や岩盤分類に応用できまた地す

べり(狭義)や崩壊などのハザードマップを作成する際

にも岩石の強さの面からその精度をより高くすること

ができると考えられる

Point load test Uniaxial compression test

SpecimenSpecimen

Point load testing machine

Dial gauge

Ball seat

Conical platen

Universal testing machine

図-5 点載荷試験および一軸圧縮試験

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

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資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 12: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

謝辞国立大学法人北見工業大学技術部平松雅宏技術

員および岡田包儀技術員には室内試験にご協力いただ

いた記して以上の方々に厚くお礼申し上げる 引用文献

1) 平松良雄岡 行俊木村英郎(1965)非整形試

験片による岩石の引張強さ迅速試験日本鉱業会

誌Vol81 No932 pp1024-1030 2) 疋田貞良菊地昌博(1988)点載荷試験の実用性

に関する一考察開発土木研究所月報No423 pp30-41

3) Brook N (1985) The equivalent core diameter method of size and shape correction in point load testing Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp61-70

4) Broch E and Franklin J A (1972) The point-load strength test Int J Rock Mech Min Sci Vol9 No6 pp669-697

5) Bieniawski ZT (1974) Estimating the strength of rock materials J S Afr Inst Min and Met Vol74 No8 pp313-320

6) Utada M (1980) Hydrothermal alterations related to igneous activity in Cretaceous and Neogene formations of Japan In granitic magmatism and related mineralization (S Ishihara and S Takenouchi ed) Mining Geol Spe Issue No8 pp 67-83

7) 前田寛之(2006)熱水変質帯地すべりと熱水変質

岩の点載荷強度との関係-東部北海道弟子屈町奥

春別地すべり地域および遠軽町生田原南地すべり

地域の例-平成 18 年度(社)日本地すべり学会シ

ンポジウム講演集pp39-46 8) ISRM Commission on Testing Methods Working

Group on Revision of the Point Load Test Method (1985) Suggested method for determining point load strength Int J Rock Mech Min Sci amp Geomech Abstr Vol22 No2 pp51-60

9) 岩の試験調査規格基準検討委員会編(2006)岩の試験調査方法の基準解説書-平成 18 年度

版-社団法人地盤工学会256p 10) 日本鉱業会岩石強度測定法実施基準(案)(1968)

岩石強度測定法実施基準案日本鉱業会誌Vol84 No965 pp1479-1487

fine tuff pumice tuff lapilli tuff times tuffaceous conglomerate dacite

Alunite-quartz zone Interstratified chloritesmectite minerals zone Heulandite zone

Mordenite zone Clinoptilolite zone Smectite zone times Halloysite zone

Rock facies

Hydrothermal alteration zone

0

10

20

30

40

50

0 1 2 3 4

0

10

20

30

40

50

00 10 20 30 40

0

4

8

12

16

20

0 02 04 06 08

0

4

8

12

16

20

00 04 08 12 16

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Point load strengthIs (MPa) Point load strengthIs (MPa)

Semi-hard rocks area

Soft rocks area

Forced dry-state Forced wet-state

Unia

xia

l com

pre

ssio

n s

trength

qu (

MPa)

Correlation coefficient R=063 Correlation coefficient R=092

qu = 68 Is + 100 qu = 117 Is + 02

図-6 円柱(縦)点載荷強さと一軸圧縮強さとの関係

11) 12) 13) 14) 15)

16) 17) 18) 19) 10)

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

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三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

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トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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館研究年報no1135-53

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帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

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加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

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山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 13: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

岩盤斜面の岩盤安全率を求める一手法とした遠心力模型実験の適用例 The Application Experience of Assessment of the Safety Factor in Bedrock by Centrifuge Model Test

日下部祐基伊東佳彦石川博之表真也(土木研究所寒地土木研究所)三浦均也(豊橋技術科学大学)

Yuki Kusakabe Yoshihiko ItoHiroyuki IshikawaShin-ya Omote and Kin-ya Miura

1はじめに 我が国では地すべりや岩盤崩壊などの斜面災害が

毎年多数発生しており土木構造物に多大な被害をも

たらし時には人的被害を伴う重大事故も生じさせて

いるまたこのような地盤災害により道路や鉄道な

どの交通機関が遮断されるとその地域住民の生活基

盤に甚大な被害が生じるそのため安全安心でか

つ合理的な道路の整備や維持管理に資する道路防災

水準向上を目的とした研究が急務となっている 積雪寒冷地である北海道では大規模な岩盤崩落と

して 1996 年に一般国道 229 号豊浜トンネル 1)1997年に同第2白糸トンネルの各崩落事故 2)さらに 2001年に一般国道 333 号北見市北陽 3)2004 年には一般国

道 336 号えりも町 4)で各道路斜面の崩落事故が発生し

ているこれらの崩落事故を受けて北海道開発局を

はじめ多くの機関で調査研究が実施されている 筆者らは大規模岩盤崩落のメカニズム解明や危険

度評価を目的として一連の遠心力模型実験を実施し

てきたこれまでに矩形岩体や地形デジタルデータ

を用いて作成した岩盤斜面模型に自重(遠心加速度)

を作用させて崩落に至らせる実験5)6)を行った観察し

た崩落現象を有限要素法および極限つりあい法によっ

て解析した前回の報告7)ではこれまでの研究成果を

もとに遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価

法を提案したここではモデルケースとして岩盤斜

面に安全率評価法を適用したのでその結果を報告す

2対象岩盤斜面と実験条件

写真-1に対象とした岩盤斜面(以下実岩盤斜面)

を示す実岩盤斜面を含むこの地区の地形はほとん

ど全域が海蝕崖からなる急峻な地形を示し高さ100m内外の断崖絶壁になっている道路からの比高差約60~120m(起点側で80~120m終点側で60~90m)に分布

するテラスを境に下部壁面と上部壁面に区分される

壁面のところどころに壁面と直交する沢地形が存在し

ている 地質は下部溶岩と上部溶岩に分けられ両者の間

には自破砕溶岩よりなる層が分布しており上下の塊

状溶岩と比較して相対的に脆弱なため緩斜面(テラス)を形成している自破砕溶岩は下部溶岩に付随する

岩組織を残す地層と上部溶岩の基部に相当すると見

なされる赤褐色の地層とがあるが両者の明瞭な境界

は確認されていない実岩盤斜面の引張強さとしては

過去に実施された地質調査の岩石試験結果から安全

側の値として引張強さの小さい自破砕溶岩の引張強さ

の平均値370MNm2を単位体積重量は240kNm3を

採用した 実験では遠心力載荷装置に設置可能な模型形状と

して一辺が06m以内の立方体を目安とし同斜面を模

擬した縮尺160の岩盤模型を3次元地形測量で得たデ

ジタル地形データを用いて作成した写真-2は発

泡スチロールで作成した岩盤模型を示したものである

写真-3は型枠用に作成した岩盤模型に繊維強化プ

写真-1 対象岩盤斜面

写真-2 岩盤斜面模型 写真-3 模型型枠

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

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-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

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道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 14: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

ラスチック(FRP)を貼付して作成した模型型枠である

岩盤模型を形成する材料モルタルの配合は遠心力載

荷装置の最大加速度100g以内に岩盤崩落が再現できる

引張強さを設定して別途実施した室内配合試験によ

り決定した 実験ケースは表-1に示すように切欠き高さHおよ

び浸食深さZを変化させて5ケース実施した図-1に

代表実験ケースとして実験No4の平面正面側面

の3面図を示すここで切欠き高さHとは斜面背面に

想定した既存亀裂の位置を示すもので斜面底部に設

定した基準面から切欠き先端の高さを表している浸

食深さZとは図-1に示した浸食位置から下部の岩体

を表面から任意の厚さ削り取った深さを示している 斜面背面の切欠きは想定された実岩盤斜面の背面亀

裂を参考に交角67degで交わる2面を配置した なお実験条件では想定した浸食深さを 100~

200m と大きく設定しているこれは実岩盤斜面底面

のオーバーハングが狭い範囲にあることから浸食深

さが正確に測量されていないおそれがあるため安全

側を考慮して不安定化させたものである 3岩盤斜面の実験パラメータと岩盤安全率

表-2に実験結果を示す本遠心力模型実験では

前述したように各岩盤模型の引張強さを 100g 以内に岩

盤崩落が再現できる強さに設定したため実岩盤斜面

の引張強さと異なっているそこで岩盤模型の引張強

さ σt と実岩盤斜面の引張強さ σs(=370MNm2)の比 α(=σt σs )およびもう 1 つの物性値である単位体積重

量のばらつきについても各岩盤模型の単位体積重量 γt

と実岩盤斜面の単位体積重量 γs(=240kNm3)の比 β(=γt

γs )を用いて極限つり合い式を補正して実岩盤斜面

の岩盤安全率を求める式を導いた 式の条件としては模型の崩落加速度 nf g に注目して

1n 岩盤模型が nf g の遠心力場で崩落したときの岩盤模

型の岩盤安全率 Fmt が 10 になることを用いるこれを

崩落時に発生する亀裂が鉛直方向に進展すると仮定し

て式に示すと以下のようになる

表-1 遠心力模型実験条件

実斜面(m) 実斜面(m) σ s γ s

模型(mm) 模型(mm) (MNm2) (kNm3)

1233 1000205 167933 1000155 167633 1000105 167633 1500105 250633 2000105 333

4 60 370 240

3 60 370 240

2 60 370 240

370 2401 60

実験No模型縮尺

1n

切欠き高さH

浸食深さZ

対象岩盤斜面引張強さ

対象岩盤斜面単位体積重量

5 60 370 240

平面図

正面図

側面図

切欠き

崩落岩体

633

5373

194

切欠き高さ H4953

浸食位置

切欠き

崩落岩体

浸食位置

194

切欠き高さ H

4000

切欠き先端

633

5373

67000

1761

4953

1761

4000

1404

840

切欠き面交角

1404356

356

浸食深さ Z

840

15000

図-1 代表断面図(実験 No4)

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

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情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

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部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

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-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

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道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

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589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

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29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 15: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

2

2

)()(3)(01nhnBn

nLnBFtf

tmt γ

σ minus==

psfsf

s Fnn

nhnBnnLnB

sdotsdot

=minus

=βα

βγασ

2

2

)()(3)( (1)

ここにFmt岩盤模型が破壊加速度 nf g 場において引

張 強 さ σ t (MNm2) で 単 位 体 積 重 量

γt(kNm3)の場合の岩盤安全率 Fps実岩盤斜面が引張強さ σs(MNm2)で単位

体積重量 γs(kNm3)の場合の岩盤安全率 B崩落危険岩体の高さ (m) L斜面背面の切欠きの深さ(m) h崩落危険岩体の幅 (m)

上式より実岩盤斜面の岩盤安全率 Fps が以下のよ

うに求められる

nn

F fps sdot

sdot=

αβ (2)

実験結果を用いて上式により実岩盤斜面の岩盤安全

率を求めて各種パラメータとの関係を検討した図

-2に切欠き高さと岩盤安全率図-3に浸食深さと

岩盤安全率の関係を示す両図を見ると実験に用い

た実岩盤斜面の引張強さ(370MNm2)と単位体積重量

(240kNm3)では実験パラメータで最も不安定な状

態にある切欠き高さ H=633m および浸食深さ Z=200mにおいても岩盤安全率 Fps=10 以上を示していること

からこの条件では実岩盤斜面は安全と評価される

さらに実験条件でも述べたが切欠き高さと岩盤安全

率の関係で固定した浸食深さ 100m はオーバーハン

グ深さとして十分不安定な条件を想定したものである

その結果は図-3の関係からわかるようにそれ以

上の浸食深さでは岩盤安全率の変化が少なくなってい

ることから妥当であったと考えられる 4まとめ

ここでは遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率

評価法を用いて実岩盤斜面の安定性を検討した実験

で採用した実岩盤斜面の引張強さと単位体積重量では

実験パラメータが最も不安定な状態にある場合におい

ても岩盤安全率Fps=10以上を示していることから実

岩盤斜面は安定していると評価された遠心力模型実験

による岩盤斜面の安全率評価法は実岩盤斜面の安定性

を定量的に評価できたことから評価手法として有効で

あることが示唆されたと考える 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法につ

いては模型作製や切欠きの設置方法等を含めて現

在特許出願中である 参考文献

1) 豊浜トンネル崩落事故調査委員会豊浜トンネル崩

落事故調査報告書1996 2) 第2白糸トンネル崩落事故調査委員会第2白糸ト

ンネル崩落事故調査報告書1998

表-2 崩落加速度および実験後供試体の

室内試験結果表

湿潤密度 一軸圧縮強さ 破壊ひずみ 静弾性係数 ポアソン比 引張強さ

ρt σ c εf E 50S ν σt

nf(g)(gcm3) (MNm2) () (GNm2) (MNm2)

0210 037

1 60

実験No

崩落加速度実測値

実験後抜き取り試料

010 2791777 223

024 424

0276 037

2 28 1800 24 016 220

0155 088

4 56 2267 210 029 1270 0214 174

5 40 2232 185

3 30 1942 61

0215 154027 1230

図-2 切欠き高さ(浸食深さ 100m 固

定)と岩盤安全率

図-3 浸食深さ(切欠き高さ 633m 固

定)と岩盤安全率

00

05

10

15

20

00 50 100 150 200 250

岩盤

安全率

F ps

浸食深さ Z (m)

00

10

20

30

40

50

60

70

80

00 50 100 150

岩盤

安全率

F ps

切欠き高さ H (m)

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 16: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

3) 一般国道 333 号北陽土砂崩落調査委員会一般国道

333 号北陽土砂崩落調査報告書2002 4) 一般国道 336 号えりも町斜面崩壊調査委員会一般

国道 336 号えりも町斜面崩壊調査報告2004 5) 池田憲二中井健司日下部祐基原田哲朗岩盤

亀裂発生装置(大型遠心力載荷装置)の製作開発

土木研究所月報No571pp31-392000 6) 日下部祐基池田憲二渡邊一悟三浦均也切欠

きを有する岩盤の遠心力場における崩落実験地盤

工学会第 47 回地盤工学会シンポジウム論文集

pp327-3342002 7) 日下部祐基伊東佳彦石川博之岡田慎哉三浦

均也岩盤斜面の安全率を求めるための遠心力模型

実験日本応用地質学会北海道支部研究発表会講

演予稿集第 26 号pp5-82007

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 17: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

空中電磁法と応用地質分野への最近の適用展開 Latest Application Cases of HEM Survey to Engineering and Environmental Problems

千田敬二河戸克志細倉摂央(大日本コンサルタント(株))内田秀明((株)エーティック) Keiji ChidaKatsushi KawatoSetsuo HosokuraHideaki Uchida

1はじめに 空中電磁法は電磁探査法の一種で固定翼機あるい

はヘリコプターに搭載した電磁探査機器を用いて地盤

の比抵抗を探査する手法である応用地質分野では

海外において鉱床資源探査の広域概査法として開発さ

れ日本でも 1990 年代前半から土木防災環境分野

に多く使用されてきている

空中電磁法は現在測定システムや解析ソフトの

改良に伴って火山地域の大規模崩壊1)や大土被りトン

ネルへの地上電磁探査 CSAMT と複合させた地質評価2)

などで適用の有効性が示されてきている

本稿ではここ 2~3 年で急速な展開がみられる空中

電磁法の土木分野への適用についてトンネルと地す

べりを対象とした事例を紹介する

2空中電磁法 (1)概要

空中電磁法のうち固定翼機を用いる空中電磁法は

AEM(Airborne Electro-magnetic Method)ヘリコプ

ターを用いる空中電磁法は HEM(Helicopter(-borne)

Electro-magnetic Method)と略称されるHEM はAEM

と比較して探査深度

が浅くコストが割

高となるものの空

間的な分解能が高く

山岳地での測定作業

が容易なため土木

分野では主流になっ

ている(図-1参照)

空中電磁法は

1950 年代の初めカナ

ダで世界最初の AEM

が開発された以来

約30種類の装置が開

発され現在ではデ

ジタル信号処理と

測定器の校正処理

能力を高めた測定システムで運用されているまた

信号源や測定法によって周波数領域法と時間領域法に

大別される例えばFugro Airborne Survey 社製の周

波数領域のシステムであれば従来の鉱床資源探査を

目的とした Dighem type や土木環境調査に特化し

た Resolve type が登場しており国内でも導入されて

いる

本稿で紹介する空中電磁法の測定システムは

DighemV と呼ばれる Dighem type の周波数領域法の測定

システムで使用周波数は 140000Hz31000Hz

6900Hz1500Hz および 340Hz の 5 対の水平同レベル

型の送受信コイルを利用するもので標準地盤で探査

深度は最大 150m である

(2)測定原理

空中電磁法で計測する物性値は地盤の比抵抗であ

る(単位断面積を通る電流に対する単位長さあたりの

電気抵抗単位は[Ωm]で記号は ρで表す) 地上で行われる通常の電気探査では一対の電流電

極を用いて地表から地盤に直流電流を流しそれによ

って生ずる電位差を別対の電位電極で測定して地盤

の比抵抗分布を求めているこれに対して空中電磁

法は送受信センサとして 2 つのコイルを用いて

その間の相互インダクタンスの変化を測定することに

よって地盤の比抵抗分布を求めている

(3)測定

トンネルを対象とする場合はトンネルのルート直上

を基本飛行測線とし両側に飛行測線を複数配置する

地すべりなどの斜面を対象とする場合は斜面の傾斜

方向に平行に飛行測線を配置する測線間隔は 50m が

一般的である測定時の対地速度は 30 kmh1m 毎に

全ての周波数のデータを取得する送信機出力は1周

波あたり約 100 W受信感度は 200 μVppm 程度である測定地点の標定は GPS で行う地上局のデータを用い

てポストプロセッシング処理を行ない数 m の決定精

度を確保している

(4)解析

空中電磁法の比抵抗解析は数値モデル計算を基に

して作成されたフェーザ図(phaser diagram)と等価

のアルゴリズムを利用した解析ソフトで行う求めた

見掛比抵抗はDEM 化した地形データと併せて GIS ソフ

トを用いて 3 次元比抵抗モデルを構築しこれよって

任意の視点から対象地の比抵抗構造が確認できる

なお空中電磁法は地上の電気探査と比べて地形

の影響を受けにくくまたデータの取得範囲が狭いた

めに 1 次元の断面解析を基本としているが最近では 2

次元解析が行われている2 次元解析で信頼性の高い比

抵抗構造を求めるには十分に高い周波数(例えば

140000Hz)の測定データが必要である 3)

図-1 空中電磁法の測定概要

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

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の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 18: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

(5)地質評価 空中電磁法等の探査結果から得られる比抵抗値は

地盤の電気的性質に関する物理量であって粘土など

の電導性鉱物の含有量間隙比飽和度間隙水の比

抵抗など多くの要因に左右される(表-1 参照)また

実際の地盤ではこれらの要因が複合して比抵抗値に

影響を与えることが多いしたがって地質評価では

個別の地質的要因と比抵抗の関係を勘案しながらど

の地質的要因が調査地の比抵抗分布のどの部分にどの

ように影響を与えているかを調査地の地質分布地

質構造との関係で判断することが比抵抗データ解釈

の基本となる

一般的に土質では間隙比が大きく飽和度が大き

ければ低い比抵抗を示す岩盤では風化や変質作用

あるいは断層等によって地下水に飽和された亀裂が

卓越し岩片が軟質化するほど低い比抵抗を示すこ

のため岩盤中の低比抵抗部は粘土化の著しい地質

擾乱部などの地質脆弱部や地下水に関する情報を反映

している 3トンネル地山への適用

空中電磁法のトンネル地山への適用は70 事例を越

え対象とした地山の種類も多岐にわたるしかし

探査結果の比較検証ではこれまでボーリングや他の

物理探査との比較した事例はあってもトンネル建設

時に確認された地山とはなされていなかったトンネ

ルの施工記録に基づく空中電磁法のトンネル地山への

適用効果を検討したのは長谷川ほか(2008)4)と濱田

ほか(2008)5)が最初である

ここでは長谷川ほか(2008)が検討した四国横断自

動車道の新角谷トンネルと焼坂第一トンネルについて

最近実用化した空中電磁法の解析表示結果を示すな

おトンネル切羽観察記録は長谷川ほか(2008)を引

用した (1)新角谷トンネル 新角谷トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘 IC

(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネル

延長 25005m最大土被り約 290m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなりチャート塩基性火山岩類

酸性凝灰岩および石灰岩が泥質基質中に取り込まれた

メランジュ(混在岩)を少量伴う断層はSTA16+00 付

近に低角度傾斜の断層があるほか弾性波探査の低速

度帯において高角度傾斜の断層が想定されていた

トンネル切羽観察記録と空中電磁法の解析結果の対

比を図-2に示す

図-2 新角谷トンネル事前調査と施工実績対比6)

(2)焼坂第一トンネル 焼坂第一トンネルは四国横断自動車道の須崎新荘

IC(仮称)~中土佐 IC(仮称)間に建設されたトンネ

ル延長 2040m最大土被り約 230m のトンネルである

地質は白亜紀~古第三紀にかけて堆積付加した四万

十層群の砂岩砂岩泥岩互層などの粗粒な砕屑岩を主

体とする整然層からなるトンネル切羽観察記録と空

中電磁法の解析結果の対比を図-3に示す

図-3 焼坂第一トンネル事前調査と施工実績対比6)

(3)空中電磁法の適用効果 空中電磁法の適用効果はトンネルの施工記録をも

とに以下に整理する

比抵抗コントラスト表示では比抵抗境界が地山

性状の急変部に該当する

比抵抗コントラスト表示の低比抵抗領域でかつ

比抵抗構造解析の表示域は湧水風化地山破

砕帯地山のいずれかに該当する

比抵抗コントラスト表示の高比抵抗領域で比抵

抗構造解析の表示域は湧水あるいは変位の大き

い不良地山に該当する

表-1 比抵抗の要因

比抵抗

要因        

湿潤状態 乾燥状態

(水比抵抗が支配要因) (電導性鉱物の量が支配要因)

低 高

(イオン濃度大) (イオン濃度小)

間隙比 大 小

間隙水の飽和度 大 小

多 少

(25以上影響大) (5以下はほとんど影響なし)

粘土鉱物の量 多 少

粘土鉱物の陽イオン交換能 大(特にスメクタイト系) 小

高比抵抗

乾湿状態

間隙水の比抵抗

電導性鉱物の量

低比抵抗

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 19: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

従来の比抵抗探査は比抵抗値の高低に基づく相対

的な地山評価であったしかし今回の空中電磁法で

は比抵抗コントラスト表示に加えて微細な比抵抗構

造に着目することでトンネル不良地山の指標を具体

に表示できるようにした 4地すべり

空中電磁法は広範囲の調査地に対して現地に立

入らずに均質なデータを短時間で取得できる特徴をも

つことから地すべりなどの斜面調査の事例は数多く

報告されている7)近年地すべりや地下水分布状況

の解析精度が向上したことから道路防災を目的とし

た道路のり面への適用事例が増加しているここでは

その適用事例を紹介する

(1)概要

重要な幹線道路であるA道路は大規模な地すべり

地帯を通過している近年道路構造物の老朽化に加

え地すべり災害が頻発しており被災規模を最小限

にとどめるための新たな斜面管理手法が望まれていた

このためA道路周辺に対してレーザー測量による詳

細地形情報の取得に併せて空中電磁法による比抵抗 3

次元情報を利用してA道路に影響を与える可能性が

ある地すべりブロックの抽出が行われた

(2)地形地質概要

調査地は国立公園に位置し標高 1000m 級の急峻な

山岳地域である地質は基盤岩が中生代白亜紀~古

第三紀の花崗岩類と閃緑岩新生代第三紀中新世の火

山砕屑岩からなり第四紀の火山噴出物や泥流堆積物

等に覆われている(図-4参照)

図-4 A道路周辺の地質図8)

(3)調査結果および検討 1)広域斜面の比抵抗と地質の対応性 空中電磁法によるA道路周辺の比抵抗平面図(等深

度表層 5m 表示)を図-5に示す空中電磁法による比

抵抗分布と地質分布とは概ね合致しているすなわち

花崗岩安山岩および貫入岩類の分布域は相対的に高

い比抵抗を示すのに対し第三紀中新世の火山砕屑岩

と泥流堆積物の分布域は低い比抵抗を示す特に本

地域で地すべりブロックや変状が集中する泥流堆積物

分布域は異常に低い比抵抗を示している

図-5 道路周辺比抵抗平面図(等深度 5m表示)8)

地質踏査結果から泥流堆積物は一般に安山岩礫を

混入するローム質粘性土からなる地すべり地形が集

中する地域の泥流堆積物は全体的に粘土化変質を

受けているために難透水性の地盤をなしそのために

地下水位も高い状態にあるこのことから泥流堆積

物が異常に低い比抵抗を示す要因は地質そのものが

粘土鉱物に富みかつ地下水位が高いことによるも

のと判断されたまた地すべりが顕在化した斜面ほ

どその程度が大きいためより低い比抵抗値を示すも

のと考えられた

このことから地すべりの兆候が認められない泥流

堆積物分布域においても比抵抗値およびその分布を

基にして潜在的な不安定斜面の抽出が可能であり

斜面の地域的特性の概要を把握するのに適していると

考えられる 2)地すべりの抽出事例と検証 空中電磁法の比抵抗断面解析は空中写真及び詳細

地形情報から地すべりブロックとして判読された道路

に近接するAブロックとその上方のBブロックに対し

て行った対象地の比抵抗平面図(等深度 2m 表示)と

比抵抗断面図を図-6に示す

このような斜面上の土塊に対しては比抵抗 2 層構図-6 HEM と詳細地形判読による地すべり抽出例6)

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 20: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

造解析を行うこれは対象斜面が 2 層構造であると

仮定してインバージョン解析を行って2 層構造の境界

深度を求めるもので原理的に深度方向に比抵抗コン

トラストが最も大きいところで第 1 層と第 2 層とを分

離する解析手法であるこの 2 層構造解析で求めた境

界線は図-6の比抵抗断面図に併せて示した

比抵抗平面図ではAブロックで低比抵抗を示す粘

土鉱物の含有量が高い泥流堆積物が分布し上方のB

ブロックで相対的に高比抵抗を示す比較的固結度の大

きな泥流堆積物の分布が想定された比抵抗断面図で

は深度 20m 以深に当該地の基盤岩である火山砕屑岩

の分布が明瞭に確認されたためその上方に泥流堆積

物が被覆していると想定された泥流堆積物は高標高

部に緩斜面をなして分布する 1 次堆積物とその下方

斜面に沿って分布する 2 次堆積物に分かれているこ

の堆積構造よりAブロックの斜面上方に分布する低

比抵抗は2 次堆積した泥流堆積物と考えられたこの

比抵抗構造と比抵抗 2 層構造解析結果では地形判読

で推定されたBブロックはすべり面が不明瞭である

Aブロックでは 2 層構造境界線と詳細地形図による微

地形に着目したすべり面が想定された 当該斜面のボーリングによる検証結果を図-7に示

図-7 ボーリング結果による検証結果6)

各ボーリングで確認された基盤層の分布は比抵抗構

造と調和的でありAブロックの 2 本のボーリングで

著しい擾乱構造が確認された深度は比抵抗 2 層構造

解析境界線で想定されたすべり面位置に一致したこ

のことから概略的ではあるものの空中電磁法によっ

て地すべりの概要を把握できるものと考えられる 5おわりに

空中電磁法の応用地質分野における土木分野への適

用としてトンネルと地すべりを対象とした事例を紹

介したトンネル調査として空中電磁法は断層破

砕帯湧水および大変位を伴う地山が抽出できるこ

とを示したまた斜面の安定度評価においても斜面

内部の地質情報と地下水分布の情報からすべり面な

どがある程度の精度で特定できることを示した

空中電磁法は測定原理から理解されるように低

比抵抗を探知するのに優れている低比抵抗は絶対

値としての低比抵抗ばかりでなく相対的に低比抵抗

をなす領域についても不良地盤を示す傾向にあるこ

の低比抵抗は粘土含有量体積含水量(割れ目と含

水比の積)などの状態を示しており一般的に設計

施工上留意すべき不良地盤であり斜面であれば不安

定化の要因の一つである

空中電磁法は測定システムや解析ソフトの改良に

伴って土木防災環境分野にさらに有用な調査法

として発展する可能性があるこの実現のためにシ

ステムの特徴や測定精度を踏まえかつ社会や顧客の

ニーズを把握しそれに見合った精度の向上や他の探

査手法との組み合わせによる複合的な調査方法の確立

や結果の検証など今後とも積極的に行う予定である

謝辞香川大学の長谷川教授西日本高速道路エン

ジニアリング四国株式会社の三谷浩二氏にはトンネ

ル地山への適用性の検討に際して数多くの資料のご提

供と貴重なご意見をいただきましたここに記して感

謝の意を表します

参考文献 1) 茂木 透空中電磁法の防災問題への適用につ

いて日本応用地質学会北海道支部平成 18 年度研究発

表会講演予稿集第 26 号pp9-112006

2) 岡崎健治伊藤佳彦日外勝仁土被りの大き

なトンネル地質評価における電磁探査法の適用性に関

する検討~空中電磁法CSAMT 法両手法組み合わせに

よる推定地質の検証~物理探査学会第 119 回学術講

演会論文集pp121-1242008

3) 佐々木裕中里裕臣地すべり調査における空

中電磁法の高精度インバージョン物理探査学会第 110

回学術講演会論文集pp326-3292004

4) 長谷川修一濱田康司山中 稔斉藤章彦

三谷浩二四万十帯における空中電磁法によるトンネ

ル地山評価地盤災害地盤環境問題論文集No8

pp35-482008(地盤工学会四国支部愛媛大学防災

情報研究センター)

5) 濱田康司長谷川修一三谷浩二山中 稔

トンネル施工データに基づく空中電磁探査法による比

抵抗構造の検証平成 20 年度土木学会全国大会 第 63

回年次学術講演会論文集第 3 部門(トンネル)2008

6) 河戸克志細倉摂央奥村稔トンネル施工へ

の空中電磁法の適用性NPO法人臨床トンネル工学

研究所臨床トンネル工学平成 21 年度最新トンネル

技術講演会2009(投稿中)

7) 中里裕臣井上敬資中西憲雄空中電磁探査

法による広域斜面災害調査農工研技報No205

pp95-1012006

8) 小西尚俊塚田幸広空中電磁法による地質評

価への実際的検証土木学会論文集 NO680Ⅲ-55

pp285-2942001

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 21: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

石狩平野の生い立ちを探る-上部更新統~完新統層序と古環境の検討-

Investigation of geologic history of the Ishikari Plain based on stratigraphy and

paleoenvironment of the late Pleistocene to the Holocene

嵯峨山 積(北海道立地質研究所)外崎 徳二(株式会社レアックス)近藤 務(株式会社北海道技術

コンサルタント)岡村 聰(北海道教育大学札幌校)佐藤 公則(株式会社ユニオンコンサルタント)

Tsumoru Sagayama Tokuji Tonosaki Tsutomu Kondo Satoshi Okamura Kiminori Sato

1 はじめに

石狩平野は石狩低地帯 1)の北部域に位置し地下には

最終氷期極盛期(約 2 万年前)以後に堆積した沖積層(最

上部更新統~完新統)が厚く累重する地形的には石狩

丘陵や野幌丘陵のほか標高 10m 以下の平坦面をなす沖

積低地からなる(図-1)沖積層は未固結な粘土砂

礫および泥炭などで構成され多くの人々や建物が存在

する低地を形成することから最も身近な地層と言える

地震時の揺れに敏感に反応し大きな被害をもたらすた

め防災面からも沖積層研究が必要とされている

石狩平野の沖積層に関しては 5 万分 1 の地質図幅 2)3)

4)軟弱地盤の検討 5)自然貝殻層の検討 6)7)8)ボーリ

ング地質試料の花粉分析 9)10)11)地盤地質図作成 12)

地形の検討 13)ボーリング資料の解析 14)豊平川扇状

地の研究 15)貝化石による地下地質の検討 16)地盤地

質図の作成 17)表層地盤の検討 18)表層地質の分類 19)

新篠津村での検討 20)札幌市街の地盤断面図 21)などの

調査研究があるものの微化石(花粉や珪藻など)や

火山灰放射性炭素年代測定(以下14C 年代測定と称

す)を用いた研究は少なく 古環境や形成過程の解明は

東京や大阪名古屋などに比べて遅れた状態にある

平成19年度から 1)SSC-1(西部スラッジセンター)

2)H16B-7(札幌大橋石狩川左岸)3)H16B-3(札幌

大橋石狩川右岸)4)MHR-1(江別市美原)5)YUB-1

(南幌町夕張川左岸)の各ボーリング(図-1)の地質

試料を用いて珪藻分析と 14C 年代測定を行い地層区分

や古環境について検討してきた 22)今回 新たに TKH

(北区拓北)の珪藻分析とSSC-1 および KKT(川北観

測井 23))の火山灰分析を行い層序や古環境などを検討

したので報告する

2ボーリングの概要

珪藻分析を行った 6 井は以下の通りである

SSC-1 は手稲山口で濁川が新川に流入する付近に位

置し 掘削深度は 50m地盤標高は 886m である孔内

地質などは前回 22)で述べていることから省略する(以

下同様)H16B-7 は札幌大橋の石狩川左岸に位置し

掘削深度は 44m地盤標高は 311m であるH16B-3 は

札幌大橋の石狩川右岸で掘削深度は 40m地盤標高は

421m であるMHR-1 の掘削位置は当別町や新篠津村に

隣接する江別市美原で石狩川が約 4 西方に位置す

る掘削深度は 18m地盤標高は 75m であるYUB-1

の掘削位置は南幌町中樹林自治区で江別市との境界

付近および夕張川左岸に位置する掘削深度は 285m

地盤標高は約 10m であるTKH は北区篠路に位置し掘

削深度は 36m地盤標高は 6m である

火山灰分析はSSC-1 と KKT について行った

KKT は1979 年に北海道白石高等学校敷地内で掘削さ

れ深度は 280m地盤標高 75m である地質は深度 280

~1083m は省略同 1083~80m は砂質シルト主体で基

底に礫層が認められ上部には厚さ 10~50cm の泥炭が 3

図-1 掘削井および断面図の位置

珪藻分析用ボーリング左より SSC-1TKH

H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1既存ボーリ

ング左より SKN札幌市新琴似 31)150m北海道

大学構内 32)KKT川北観測井 23)KKY江別市角

山 8)10)11)GS-HTB33)12B-S4新篠津村武田 20)

下線を有する掘削井で Toya(洞爺火山灰)が確認

されている

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 22: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

図-2 TKH(拓北)の地質柱状および珪藻分析の結果

図-2 TKH(北区拓北)の地質柱状と珪藻分析の結果

層挟在する同 80~5465m は砂質シルトや粘土から

なり 基底に礫が分布し中間部にはカキの貝殻片を

含む同 5465~453m は細砂~中粒砂主体で最下部

に厚さ 11m の泥炭最上部にシルトを挟む同 453

~406m は細粒砂で最下部に貝殻片を含む同 406

~1767m は砂~粘土からなり最下部に礫中間部に

灰白色の細粒火山灰最上部に泥炭を挟む同 176

~116m は軽石および火山灰同 116~84m は細~

中粒砂同 84~166m は火山灰や礫の薄層を伴う泥

炭同 166~0m は盛土である

3珪藻と火山灰の分析結果

TKH の珪藻分析はシルトや砂質シルトなどの試料

約 3g を 15濃度の過酸化水素水と 18濃度の塩酸で

薬品処理し蒸留水を用いて酸味を抜いた後200cc

の懸濁液から 03cc をカバーグラス(18times18mm)上に

広げ鑑定用プレパラートを作成した種の同定は

1250 倍の生物用顕微鏡で行い1 試料につき 100 個体

を目途に算定した更に海生種海~汽水生種汽水

生種汽水~淡水生種淡水生種絶滅種不定種の

7 つに区分しこれらの割合を求めたまた絶滅種と

不定種を除いた海生種~淡水生種の 1個体にそれぞれ

5~1 を与え平均値を求め海水と淡水の割合の目安と

なる指数 24)(以下指数と称す)を求めた

TKH の結果は最下部付近では淡水生種が大半を占

めその上位では海生種が徐々に増加し深度 168m

では最大を示すその後海生種は徐々に減少し最

上部(深度 73m)では再び淡水生種が多くを占める

(図-2)なお深度 1879m や 1479m では海生種の一

時的減少が特徴的に認められる次に新篠津村武田

で掘削された 12B-S420)では珪藻分析が行われている

ことから指数を求め他のものとの比較を行った

火山灰分析はSSC-1の深度4238~4225m(標高

-3352~3339m)とKKT(川北観測井)の深度3602

~3600m(標高-2852~-285m)に挟在する細粒火山

灰について温度変化型屈折率測定法により火山ガラス

の屈折率を求めた火山ガラスはバブル型25)を呈し屈

折率は1497-1498にピークを示すことから112~115

万年前降灰のToya(洞爺火山灰)と推定される

4考察

完新世の相対的海面変動は以下の様に要約される約

10000 年前の海面は標高-40m 前後であったがその後

の温暖化に伴い徐々に上昇し縄文海進高頂期(以下

高頂期)の約 6000 年前には標高+3m26)となり海水は

最も内陸にまで到達したその後は「縄文中期の小海退」

27)や「弥生の小海退」を経て徐々に低下し現在に

至っている 28)今回珪藻分析により得られた指数の変

化曲線は上記の海面変動と大局的に調和しこれらを

反映していると考えられるしかしより詳細にはTKH

H16B-3 および 12B-S4 の指数曲線(図-3)では異なって

いる一つは高頂期以前の曲線が異なることで最も

図-3 TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線対比

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

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び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

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no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

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16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

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拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 23: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

早い時期から海水(海生種)が増加したのは TKH で

次は H16B-3 で12B-S4 が最も遅く海水が流入してい

ったと読み取れる次に高頂期やそれ以後の曲線

も異なる変化を示しておりTKH と H16B-3 に比べ

12B-S4 は大きな変化を示すこれらの違いがどの

様な原因で生じたのか今後の検討課題である

完新世の海面変動は前述の様に理解されている

ものの細部は明らかでなく様々な変動曲線が公表

されている 29)今回得られた結果からは高頂期以

降に数回の降下と上昇を繰り返す Sakaguchi et al

の曲線 30)が比較的調和するものの今後更に資料

を蓄積し検討する必要がある

次に沖積層の下位に分布する最終間氷期堆積物

について検討する札幌市新琴似(SKN図-1)では

深度 281m(標高-2522m)付近に約 112~115 万年

前 24)に降灰した Toya が存在する 31)また北海道

大学構内の 150m 井(150m図-1)では深度 34m(標

高-2298m)で Toya の存在が確認され 32)両地域の

火山灰はほぼ同じ標高(-23~-25m)に挟在する同

火山灰直下の地層はMIS(海洋酸素同位体ステージ)

5e(約 13 万年前)の最終間氷期堆積物と推定され

今回の SSC-1(標高-3352~3339m)と KKT(標高

-2852~-285m)の細粒火山灰が Toya の認定もしく

は推定は約 115 万年前に形成された堆積面が石狩

平野の地下に存在する可能性を示唆している

松下 14)によれば石狩海岸平野下では形成年代

が 26000~25000yBP(ウルム氷期の亜氷期)とされ

る堆積原面(Bd)が存在し同面は標高-34~-17m に

位置する一方SSC-1 と SKN の Toya の層準は同堆

積面とほぼ一致し同原面が MIS5 の時期に形成され

た堆積面と推定される

石狩平野の地質概要は以下の様に解される最下

部に鮮新統や中~下部更新統(下野幌層~音江別川

層相当層など)が分布しその上位にはもみじ台層に

相当する最終間氷期堆積物が不整合で累重し最上

位には Toya が認められる更に上位にはこれらを

不整合で覆って Spfa-1(支笏降下火砕堆積物 1)を

挟在する最終氷期堆積物が分布する最上位には沖

図-4 石狩平野の南北方

向の地質断面概要

積層が広がりJR 札幌駅以南には Spfl(支笏火砕流堆

積物)の二次堆積物を挟む札幌扇状地堆積物紅葉山砂

丘下には前田砂層~生振砂礫相が分布する(図-4)

5おわりに

地質研究所では昨年より 3 年計画で独立行政法人産

業技術総合研究所との共同研究「石狩低地の浅層地下地

質構造の解明」を実施している 33)(GS-HTB図-1)

また今年より 3 年計画で科学研究費補助金基盤研究

(C)「既存掘削井の地質コアを利用した札幌市周辺の軟

弱地盤の研究」(研究代表者嵯峨山 積)を実施してお

り今後も新たなデータを加味し石狩平野の生い立ち

を解明する予定である

本文の要約は以下の通りである

1)昨年の SSC-1H16B-7H16B-3MHR-1YUB-1 の分

析に続いて今回は TKH の珪藻分析とSSC-1 および

KKT の火山灰分析を行い石狩平野下の上部更新統~

完新統層序と古環境を検討した

2) TKH では最下部付近で淡水生種が大半を占めそ

の上位では海生種が徐々に増加しその後海生種

は徐々に減少し最上部で再び淡水生種が多くなる

3)SSC-1 の深度 4238~4225m(標高-3352~3339m)

と KKT の深度 3602~3600m(標高-2852~-285m)

の細粒火山灰の火山ガラス屈折率から112~115

万年前降灰の Toya(洞爺火山灰)と認定推定した

4)TKHH16B-3 および 12B-S4 の指数曲線は数回の降

下と上昇を繰り返す Sakaguchi et alの相対的海面

変動曲線と比較的調和する

5)Toya は標高-23~-33m に挟在し石狩平野の地下に

は約 115 万年前の堆積面が存在すると推定した

謝辞 H16B-7 と H16B-3 の地質試料は北海道開発局札幌

道路事務所SSC-1 は札幌市下水道河川部MHR-1YUB-1

および TKH は田中洋行氏(北海道大学大学院工学研究

科)より提供していただいたKKT の火山灰分析用試料

は元北海道立地下資源調査所の松下勝秀氏(故人)に

より保管されたものである記して感謝申し上げます

本研究の一部は北海道庁一般試験研究事業の「石狩

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

1)長尾 巧1941札幌-苫小牧低地帯(石狩低地

帯)矢部教授還暦記念論文集no2677-694

2)小山内 熙杉本良也北川芳男19565 万分の

1 地質図幅「札幌」及び同説明書北海道立地下

資源調査所64p

3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

び同説明書地質調査所47p

4)松下勝秀19715 万分の 1 地質図幅「江別」及

び同説明書北海道立地下資源調査所26p

5)湊 正雄藤原嘉樹熊野純男1972北海道の

海岸平野における軟弱地盤の深度地質学論集

no71-11

6)赤松守雄1972石狩川河口付近の自然貝殻層

地質学雑誌vol78275-276

7)赤松守雄北川芳男松下勝秀五十嵐八枝子

1981サロベツ原野と石狩海岸平野における自然

貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

11)小野有五五十嵐八枝子1991北海道の自然史

-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

219p

12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

道地盤地質図 No1「札幌」北海道立地下資源調

査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

sedimentary environments Bull Dept Geogr Univ

of Tokyo vol17 1-17

31)五十嵐八枝子山田 治松下勝秀1989札幌市

北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 24: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

低地帯沿岸域における沖積層ボーリングコアの解

析」(平成 18~19 年度)により行われた

文献

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3)垣見俊弘19585 万分の 1 地質図幅「石狩」及

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貝殻層の 14C年代-日本の第四紀層の 14C年代(139)

-地球科学vol35215-218

8)赤松守雄北川芳男1983北海道石狩低地帯北

部域における完新統自然貝殻層北海道開拓記念

館研究年報no1135-53

9)五十嵐八枝子熊野純男1974札幌市北方低地

帯における沖積世の古気候変遷第四紀研究

vol1348-53

10)五十嵐八枝子1985北海道の古気候-リスウ

ルム間氷期以降の気候の移りかわり-続北海道

5 万年史郷土と科学編集委員会79-99

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-氷期の森林を旅する-北海道大学図書刊行会

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12)小山内 熙松下勝秀山口久之助1974北海

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査所

13)大嶋和雄池田国昭山屋政美1978石狩湾の

海底地形からみた低地帯の地形発達史地質調査

所月報vol29461-476

14)松下勝秀1979石狩海岸平野における埋没地形

と上部更新統~完新統について第四紀研究

vol1869-73

15)大丸裕武1989完新世における豊平川扇状地と

その下流氾濫原の形成過程地理学評論vol62

589-603

16)高木俊男赤松守雄高橋輝明1990北海道石

狩低地帯の完世統自然貝殻層と古環境北海道開

拓記念館研究年報no181-17

17)村瀬 正羽坂俊一池田国昭山口昇一1991

3 万分の 1 札幌及び周辺部地盤地質図説明書特

殊地図 30地質調査所73p

18)二ツ川健二池田晃一加藤 誠199425 万分

の 1 札幌表層地盤図(2m 深図)および同説明書北

海道土質コンサルタント株式会社26p

19)磯部一洋羽坂俊一下川浩一七山 太1999

札幌付近における浅層地質類型図と液状化跡の存否

地質調査所月報vol5083-90

20)佐藤博文石井正之大津 直田近 淳2001

石狩低地帯新篠津村の沖積層-層序年代堆積環

境-日本応用地質学会北海道支部平成 13 年度研究

発表会講演予稿集no219-12

21)北海道土質コンサルタント株式会社2006札幌

地盤図13p

22)嵯峨山 積2008石狩低地帯沿岸域の沖積層ボー

リングコアの珪藻分析-石狩平野について-日本

応用地質学会北海道支部北海道応用地質研究会平

成 20 年度研究発表会講演予稿集no2811-14

23)赤松守雄松下勝秀1984石狩西部地下における

更新統の貝化石群と層序区分第四紀研究vol23

183-195

24)嵯峨山 積2006北海道東部の釧路臨海低地下の

沖積層地質学論集no5973-81

25)町田 洋新井房夫2003新編火山灰アトラスminus

日本列島とその周辺東京大学出版会336p

26)赤松守雄1969北海道における貝塚の生物群集-

特に縄文海進に関連して地球科学vol23107-117

27)太田陽子松島義章森脇 広1982日本におけ

る完新世海面変化に関する研究の現状と問題-

Atlas of Holocene Sea-level Records in Japan を

資料として-第四紀研究vol21133-143

28)海津正倫1994沖積低地の古環境学古今書院

270p

29)Umitsu M 1991 Holocene sea-level change s and

coastal evolution in Japan The Quaternary

Research vol30 187-196

30)Sakaguchi Y Kashima K Matsubara A 1985

Holocene marine deposits in Hokkaido and their

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北部新琴似町における埋没泥炭の 14C 年代-日本の第

四紀層の 14C 年代(171)-地球科学vol43186-188

32)嵯峨山 積五十嵐八枝子近藤 務鎌田耕太郎

吉田充夫地徳 力外崎徳二工藤千春岡村 聰

加藤 誠2007札幌市街域における 150m 掘削コア

の第四系層序地質学雑誌vol113391-405

33)大津 直川上源太郎廣瀬 亘仁科健二嵯峨

山 積高清水康博鈴木隆広小澤 聡小松原純

子木村克己2009石狩低地の浅層地下地質構造

の解明に関する研究(平成 20 年度研究成果)平成

21 年度北海道立地質研究所調査研究成果報告会報告

資料集44-45

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 25: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

函館平野における温泉の起源と流動状況

Origin and flow system of thermal water in the Hakodate Plane Hokkaido

柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木隆広秋田藤夫(北海道立地質研究所)

Tomo Shibata Tetsuya Takahashi Noritoshi Okazaki Sunao Ohtsu Takahiro Suzuki Fujio Akita

1はじめに

函館平野(大野平野)は北海道の南西部に位置し

函館市北斗市および七飯町に拡がっている南に開

いた盆地状の地形で中央部には厚い堆積物が分布し

ているまたそれを取り囲むように第四紀更新世の

堆積物が露出しているこの平野の南を除く周辺を丘

陵地帯山地地帯が取り囲んでいるこの地域ではか

つて火山活動が活発に起きている南部の函館山と北

東部の横津岳は第四紀の初頭に南東部の津軽海峡銭

亀沢沖の海底火口は 3~4 万年前にそれぞれ活動して

いたさらに1978~80 年には函館山南部海域から

銭亀沢海底火口かけての地域で群発地震が発生してい

日本では 1960 年代から温泉を目的とした深部地下

水の開発が行われるようになりこれまで温泉がなか

った地域にも広がりつつある深部地下水の供給機構

は各地域で異なるものの概して天水等が地下に浸

透したものと考えられている函館平野においても

1980 年頃から深度 500m 以深を対象とした深部地下水

の開発が進められ現在ではその数は 60 井を越えてい

る開発深度は 800~1000m の井戸が多く湧出温度は

高いもので 70を越えるものがある現在利用され

ている 30 泉源の湧出量を総計すると約 02m3s放出

熱量は 39times107Js(基準温度を 10とする)となる

この放出熱量は熱階級「V」に属しこのクラスの放出

熱量を持つ道内の温泉地は登別地獄谷定山渓温泉な

どがある1)この地域には南東部に湯の川温泉函館

山東部に谷地頭温泉があるがこれらの温泉と深部地

下水との関係は不明であるそこで本研究では函

館平野部における重力調査や深部地下水の化学組成

温度構造および水位観測などから深部地下水の特徴や

平野部の地下構造を明らかにし本地域の熱水流動系

についてまとめる

2重力調査

本調査における重力調査は 144 点で行い測定には

Scintrex 社製 CG-3M 自動重力計を用い測定点の座標

は GPS(TOPCON 社製 LEGACY-H)を用いて決定した測

定 点 の 重 力 値 は 函 館 海 洋 気 象 台 の 一 等 重 力 点

(98040055ms2現在は亡失)に準拠して求めたな

お本調査地域の西縁部は1997~1998 年に函館平野

西縁断層帯の地下構造を調べるための重力調査が実施

されているので2)このデータも解析に用いた各測

定点のブーゲ異常値は各点から半径 80km の範囲につ

いて本地域の平均的な密度を 2670kgm3 としてブー

ゲ補正および地形補正を行って求めた3)

広域的なブーゲ異常の特徴は①函館平野西側の上

磯山地や東側の横津岳山地では 7~8times10-4ms2 の高異

常が分布し断層帯に向かって値は 35~45times10-4ms2

程度と小さくなる盆状構造を示す②低異常の中心部

は地形的に最も低い平野中央部には一致せずそれより

も西側にずれている③ブーゲ異常の勾配は西側に比

べて東側のほうが緩やかであるこのブーゲ異常分布

と本地域の地質分布を比較すると断層帯周辺の低異

常は堆積岩類の分布にさらに西部に分布する高異常

は先第三紀層の上磯層群の分布に対応している一方

東部は函館市鉄山や戸井町で先第三紀層の戸井層群が

地表に露出していることから高異常は先第三紀基盤

岩類に対応しているこのためブーゲ異常は基本的

には基盤岩上面の構造を反映していると思われる

3化学組成と温度構造

深部地下水および湯川谷地頭温泉の 49 ヶ所の水試

料を採取した採取し使用した井戸の深度は 45~

1500m である試料採取後イオンクロマトグラフ(横

河アナリティカルシステム社製 IC7000S)を用いて主

成分イオンの分析を行った炭酸水素イオン濃度につ

いては容量法によって総アルカリ度を算出しそれを

もとに求めた

成分濃度は各試料により大きくばらつくがトリリ

ニアダイヤグラムにプロットすると多くの試料はア

ルカリ炭酸塩型やアルカリ非炭酸塩型の化学組成の領

域に分布する硫酸イオン濃度は一部の試料を除き

07~24kgm3と比較的高い値を示す陽イオン濃度の

相関関係を図―1 に示す多くの試料は海水湯川

温泉濃度の低い地下水を頂点とする三角形および周

辺上に分布するまた得られた化学組成を多変量解

析法の主成分分析で解析したその結果化学組成に

ついては各イオンの相関関係から 3 成分の混合であり

その 3 成分が海水被圧地下水火山に関連した物質

の影響を受けた地下水と推測されるこの火山に関連

した物質の影響を受けた地下水は平野部を北西―南東

方向に直線的に分布し南東延長上には銭亀沢の海底

火口がある函館山南部海域~銭亀沢の海底火口では

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 26: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

図―1 陽イオン相関図 (文献 7 に加筆)

1978-80 年にかけてマグマ活動とみられる群発地震が

発生していたことからマグマ活動が終息したとは考

えにくい4~6)そのためこれらの温泉は火山の影

響を受けている可能性がある7)8)

深部からの地殻熱による温度構造は坑井内の温度

検層によって測定される鉛直温度分布から推測される

多くの井戸では一定の割合で温度が上昇する様な温度

分布を示す一方湯の川温泉などの一部の温泉では

地下の浅部で温度勾配が大きく深部では小さくなる

ような温度分布を示す透水性の高い地層や亀裂など

では比較的水が流れやすくその水の流動によって熱

移動が支配されるため鉛直方向に対する温度勾配は

小さくなるそのため湯の川温泉などで示される温

度分布は深部から温度の高い水が上昇していると考

えられる鉛直温度勾配(100m)を坑底(検層最

深)温度と基準(地表)温度(10)の差を坑底(検

層最深)深度で割って算定した得られた鉛直温度分

布は5~75100m の温度勾配を持つ泉源が最も

多く次の 25~50100m の温度勾配をもつ泉源と

あわせると全体の 80以上を占めるまたこれら

の高い温度勾配を持つ泉源は化学組成で示した火山

に関連した物質の影響を受けた地下水分布と同じ平

野部を北西―南東方向に位置する

4水位変化と熱水流動状況

深部地下水の水位変化は地下水が胚胎している貯

留層内の圧力変化を示している温泉開発が行われて

いない状態での貯留層内の圧力は供給源からの流入

と周りの地層への拡散によりほぼ一定に保たれてい

るしかしボーリングによる温泉開発などで貯留層

から地下水を汲上げた場合供給量が汲上げ量よりも

多い場合は地層内への拡散量が減少するだけで貯

留層内の圧力はほぼ一定で保たれるため水位変化も

一定であると考えられるしかし貯留層からの汲上

げ量が供給量よりも多くなった場合貯留層の圧力が

減少し水位低下を示すとともに供給源の圧力変化

を直接示すようになる

平野部の深部地下水の 4 ヶ所湯の川温泉の2ヶ所

谷地頭温泉の 1 ヶ所合計7ヶ所において水位観測を

行った谷地頭温泉と深部地下水の2ヶ所の水位は多

少の変動があるがほぼ一定に推移しているしかし

湯の川温泉と深部地下水の 1 ヶ所は年周期変化を示

しながら水位低下を示すまた残りの深部地下水の

1 ヶ所は 2006 年 1 月以前にはほぼ一定に推移していた

がその後湯の川温泉の水位変動と同じように年周

期変化を示しながら水位低下を示すようになったつ

まり深部地下水の貯留層は 2006 年 1 月以前までは供

給源からの流入と流出が均衡していたがそれ以降

流出量が増加したため供給源の圧力変化ともに水位低

下を示ようになったこの結果より平野部と湯の川

温泉とでは別の貯留層を形成していると考えられる

これらの調査をもとに考察すると大局的な地下深

部の温泉貯留層は湯川温泉を南東起点とし北西―

南東方向に分布していると推定されるこの北西―南

東地域の温泉は火山に関連した物質の影響を受けてい

る化学組成を示しまた他の地域よりも地温勾配が

高いそのため何らかの火山に関連した深部の熱源

から北西―南東方向にそって高温の温泉が供給され

温泉貯留層を形成していると考えられるその貯留層

は湯川温泉では地表から 100m 前後の深さと考えられ

それから離れるに従い徐々に地温勾配が低くなること

から貯留層の深度が増加し平野中心部では 1000m

程度の深さであろうと思われる

文献

1)福富孝治(1966)北海道の温泉について火山

11127-144

2)田近 淳大津 直岡崎紀俊鈴木隆広平川

一臣伏島祐一郎(1999)北海道活断層図 No2

函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説北海道

65pp

3 ) Yamamoto A (2002) Spherical terrain

corrections for gravity using a digital

elevation model gridded with nodes at every 50

m J Fac Sci Hokkaido Univ 11 845-880

4)笠原 稔(1978)函館付近の地震活動(I)北海

道大学理学部地震観測センター速報431-33

5)本谷義信(1979)函館群発地震について(速報 2)

北海道大学理学部地震観測センター速報520-25

6)本谷義信(1980)函館群発地震について(速報 3)

北海道大学理学部地震観測センター速報620-22

7)柴田智郎丸岡照幸高橋徹哉松田准一(2008a)

多変量解析法を用いた北海道函館平野における深

部地下水の供給源の推定地球化学4213-21

8)柴田智郎高橋徹哉岡崎紀俊大津 直鈴木

隆広秋田藤夫(2009)函館平野の熱水系北海

道立地質研究所報告8027-37

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 27: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

泥岩を基岩とする地すべり地における実効雨量と 地すべり変位孔内水位の関係

Displacement characteristics based on relationship between ground-water level and working rain in

mudstone landslide area

鈴木 俊司((株)ドーコン)

Shunji Suzuki

1はじめに

地すべりの誘因の1つに地下水位の変動があるこれは地下

水位の上昇によりすべり面に作用する間隙水圧が上昇し地すべ

りの安全率を低下させるからであるしかし実務においてはす

べり面に作用する間隙水圧を計測することは困難で全孔ストレ

ナー加工した孔の孔内水位を計測している場合が多い

本検討は全孔ストレナー加工した孔の孔内水位と地すべり変

位に関連が認められる地すべり地において実効雨量と孔内水位

の相関を検討した事例を報告するまた簡易的な見積により融

雪量を推定し相関を検討した結果も合わせて報告する

2検討対象の地すべり

検討対象とした地区は北海道夕張市富野地区である富野地

区は夕張山地の北西部に位置し古第三紀幌内層を基盤岩とす

る幌内層は暗灰色を呈す塊状泥岩を主体としところどころに

凝灰岩層を挟む

対象とした地すべりは図-1に示すA~Cの地すべりブロッ

クである地すべりの規模はAブロックが幅100m長さ160

mBブロックが幅50m長さ80mCブロックが幅200m長

さ200mの多丘状地すべりブロックの一部である

AブロックとBブロックは主に泥岩内に挟在する凝灰岩をす

べり面とする地すべりである移動土塊はともに10~13mの

厚さを持ち移動体は主に風化した岩屑土により構成される

Cブロックは泥岩内にすべり面を持つ地すべりであるCブ

ロックの移動土塊は12~16mの厚さを持ち主に風化した破砕

岩から構成される

図-1 検討対象の地すべりブロックとボーリング配置

3孔内水位の測定結果と地すべり変位

対象とした地すべり周辺に設置されたボーリング孔の観測孔

の内13本のデータを用いて検討した検討に用いた観測孔は

パイプ歪み計と水位計が設置されておりかつパイプ歪み計に

よって地すべりの変位を捉えた観測孔である(図-1)

図-2にパイプ歪み計と孔内水位の関係を示す図-2では臨

界水位(GL-14m)を超えると歪み変位が発生している対

象とした観測孔はすべての孔で歪み変位が確認されるとともに

臨界水位設定することができ歪み変位と孔内水位には明瞭な相

関が認められる

H B -7

1 2 5 m

5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

H B -7 号孔

Pu3(h)

Pu3(h)

Pu3(m)

Pu3(w)

Pu2(w)

P u 2

柱 状 図記号

地質

深度

( m)

5 0

10 0

15 0

17 5

パ イ プ 式 歪 計 変 動 図2 0 0 0 μs t r a i n

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( m) 7

6

5

4

3

2

1臨界水位G L -1 4 m

H B-7

st r ai n ( μ      )-6000

-5000

-4000

-3000

-2000

-1000

0

1 2 5 m

( c m)40

80

120

160日

( mm)20

40

60

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

臨界水位( G L -1 4 m)孔内水位

歪み変位( G L -1 2 5 m)

図-2 歪み変位孔内水位の観測結果と臨界水位(HB-7の例)

4検討対象期間と融雪量の推定

融雪水の影響を受ける期間と受けない期間では相関が異なる

ことが予想されることから期間を分けて検討を行った融雪水

の影響がない期間を6月1日から10月31日(以下夏期と呼ぶ)

融雪の影響がある期間を3月1日から5月31日(以下融雪期と

呼ぶ)としたまた対象の地すべりは地下水排除工による対策

が実施されたことから対策の影響がない期間として夏期はA

ブロックとBブロックで2001年から2004年Cブロックでは2001

年から2003年融雪期はAブロックで2002年から2005年B

ブロックでは2001年から2004年Cブロックでは2002年から

2003年を検討期間とした

雨量のデータはアメダス(夕張)を使用した夏期の降雨量は

日降水量を用い融雪期の降雨量は日降水量+日融雪量を用いた

日融雪量は積雪がある期間の日平均気温がプラスの時に日平均

気温times5mmと推定した(図-3)

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 28: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

( c m)20

40

60

80

100

120

140

160日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150日

( mm)10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

年 2001 2002 2003 2004 2005

月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5

日降水量

日融雪量

日融雪量 最深積雪

図-3 検討期間の降雨量と融雪量

5実効雨量と孔内水位の関係

降雨と孔内水位の変動の相関を得るため実効雨量を指標とし

検討対象としたボーリング孔内水位を用いて両者の相関を求め

実効雨量Rは以下の式で求められる

R=aR0+a2R1++an+1Rn(1)

a=051T(2)

ここでaは減少係数で1日の降雨の影響の程度を表す係数

Rnはn日前の日雨量であるT は半減期(日)で雨量の影響が

半分になる期間である

表層崩壊や土石流など地表面から比較的浅い土砂災害を対象

として15時間や72時間半減期の実効雨量が用いられる本検

討の対象は地すべり地であるため表層崩壊などで対象としてい

る浅い深度の水分の変化ではなくさらに深い深度での水分の変

化が対象であるため孔内水位と相関の高い半減期は15時間や

72 時間よりも長い可能性が高いそこで相関解析の最大半減

期は34日とした解析結果を表-1および図-4~5に示す

表-1 解析結果一覧

B

2001-2004  0601~1031 110 10 -86 times 10-3 239 0622

2002-2005  0301~0531 110 8 -58 times 10-3 215 0697

2001-2004  0601~1031 250 5 -87 times 10-3 411 0545

2002-2005  0301~0531 250 5 -123 times 10-3 419 0743

2001-2004  0601~1031 500 7 -38 times 10-3 578 0525

2002-2005  0301~0531 500 7 -55 times 10-3 578 0816

2001-2004  0601~1031 780 23 -49 times 10-3 910 0575

2002-2005  0301~0531 780 23 -42 times 10-3 909 0677

2001-2004  0601~1031 140 8 -102 times 10-3 304 0551

2002-2005  0301~0531 140 11 -79 times 10-3 295 0667

2001-2004  0601~1031 490 7 -120 times 10-3 645 0490

2002-2005  0301~0531 490 8 -139 times 10-3 641 0685

2001-2004  0601~1031 720 34 -28 times 10-3 802 0280

2002-2005  0301~0531 720 34 -40 times 10-3 801 0457

2001-2004  0601~1031 580 23 -32 times 10-3 639 0104

2002-2004  0301~0531 580 4 -54 times 10-3 597 0405

2001-2004  0601~1031 200 4 -30 times 10-3 211 0269

2002-2004  0301~0531 200 4 -33 times 10-3 206 0418

2001-2003  0601~1031 430 8 -67 times 10-3 500 0734

2002-2003  0301~0531 430 7 -71 times 10-3 489 0792

2001-2003  0601~1031 850 14 107 times 10-3 1040 0564

2002-2003  0301~0531 850 11 126 times 10-3 1012 0716

2001-2003  0601~1031 630 14 -69 times 10-3 750 0591

2002-2003  0301~0531 630 10 -66 times 10-3 732 0758

2001-2003  0601~1031 1350 8 -23 times 10-3 1414 0209

2002-2003  0301~0531 1350 5 -23 times 10-3 1407 0492

HB-20

HB-21

HB-7

HB-8

HB-10

HB-14

HB-2

HB-3

相関係数

R2

回帰直線式Y=AX+BA

解析期間臨界水位(CWL)

半減期T(日)

ブロック 孔番号

A

C

B

HB-11

HB-12

HB-5

HB-6

HB-18

HB-7(2001~2004年 61-1031)a=092T=8日

y = -00102x + 30354

R2 = 05514

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-4 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7夏期の例)

HB-7(2002~2005年 31-531)a=094T=11日

y = -00079x + 29521

R2 = 06672

0

1

2

3

4

5

6

7

0 50 100 150 200 250 300 350 400

実効雨量

孔内

水位

図-5 実効雨量と孔内水位の関係(HB-7融雪期の例)

6まとめ

本検討では全孔ストレナー加工された孔内水位と実効雨量の

相関について検討した以下に結果をまとめる

1)夏期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平均

値は13日34日のデータを除くと11日)相関係数R2は010

~074である

2)融雪期における検討で得られた最適半減期は4日~34日(平

均値は11日34日のデータを除くと9日)相関係数R2は041

~082である

3)融雪期の検討は融雪量を簡易的な見積方法により換算した

値を用いたが相関係数は夏期よりも高くこの換算方法を用

いても有効な結果が得られる

4)泥岩地帯の地すべり地内で計測される孔内水位は実効雨量

との相関が認められ地区における降雨と孔内水位のおおよそ

の関係を得ることができる孔内水位と地すべり変位の関係が

把握できていれば実効雨量から地すべり変位の発生を予測す

ることが可能である

謝辞

北海道札幌土木現業所より計測データの提供と公表を許可し

ていただきました記して厚く御礼申し上げます

参考文献

海野ほか(2008)破砕帯地すべり地区における地下水位計測

と実効雨量に基づく地下水位の降雨応答特性日本地すべり学会

誌Vol45No3

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 29: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

超簡易型ボアホールカメラを用いた地質解析の将来性

太田保(株式会社復建技術コンサルタント)金秀俊(株式会社ドーコン)

Tamotu OtaHidetoshi Kon

1はじめに

この論文は当社で開発した超簡易型ボアホールカメラの特徴

を紹介し今までの撮影事例を基にボーリングコアのみでは不

十分であった地質調査にボーリング外壁の撮影データを加味し

て地質調査を行う事が真の地質調査であると言う事を述べたい 尚このテーマは現在社団法人全国地質調査業連合会(通称

全地連)の平成21年度新マーケット創出提案型事業に応募

し認可されたので今後この事業に参加した委員で手分けをし

ていろいろな地質調査に用いてデータを集めて標準化も含め

た検討を行いこの調査法が JIS 化される事を期待しているこ

れに基づいて全ての地質調査で用いられるとボーリングコアだ

けの観察では不可能であった地山状況を把握できボーリング

孔の付加価値を高めボーリング調査における技術経費を向上

させてゆとりのある地質調査業務に発展する事を期待している 2超簡易型ボアホールカメラの紹介

このカメラの最大の特徴としては安価で操作が簡単なため誰

でも5分以内で撮影が出来る事である既存のカメラの機能を

持たせて開発すると最低でも約10倍の300万円の器械とな

る 写真―1 超簡易型ボアホールカメラ全景 このカメラの要点を箇条書きで示す

市販水中カメラ(CCD)を使用し孔壁観察用に拡散皮膜を

貼り壁を観察するように改良した この市販カメラには防水の保証が無いためにジョイント部

4箇所に膜塗剤を塗布してダムの湛水湖で40mまでの耐

圧試験を行い耐水圧の保証を行っている 方位センサーは用いず可とう管にこの機能を持たせ孔口

でビデオ又はモニターテレビの画面の上を北に合わせて挿

入する事で可とう管の左右のブレを極力抑えられた 深度センサーは用いず可とう管にテープで1m毎の表示を

した画面との位置関係はこの深度とビデオ撮影の表示時間

を記録する事で可能にしこの役目を持たせた この可とう管を用いて挿入するためどの方向のボーリング

孔にも対応できるなお可とう管の長さはボーリングオペ

レーターの意見を反映して撮影頻度の多い50m以内とし

て撮影可能な深度を余裕を見て40mとした この可とう管は硬いので全部を巻ききれるドラムを作成し

て引き出し収納作業を簡便にした尚この時に発生する

管の友廻りを防ぐ装置を内蔵する事によりこの問題を解決

してスムーズな撮影を可能にしたこのドラムを収めるケー

スは縦60cm横70cm幅40cmのアルミケースと

し人力で運搬が可能な総重量7キロに抑えた 可とう管だけでもほぼまっすぐに挿入できるが巻き癖があ

り孔壁に接触するためこれを防止しほぼ中央に来るように

簡易なセンターライザーをカメラゾンデに2箇所にビニー

ルテープで止める事で解決した ビデオ画像をDVDに記録する他撮影画像を処理ソフトを

用いて展開図にする事も可能であるこの処理は提携してい

る会社に委託する他画像処理会社に委託する事も出来る このカメラは基本的には前方視型カメラでありこの機能を

用いたボアホールカメラとして当社では実用新案特許(登録

第3119012号)を取得しているこのカメラはボーリ

ング掘削中に先掘りした孔の撮影が可能である ボアホールゾンデでのカメラの電源は単3電池8本で行い

ビデオテレビはバッテリー内臓であるので基本的にはこれ

だけであるしかし長時間の撮影現場やモニターテレビで

も観察する場合には12Vのバッテリー又は100V電源

が必要である 3撮影方法と簡単な取り扱い方法の説明

操作はビデオとモニターテレビ用端子の2箇所に接続して赤

い電源ボタンを押せば撮影開始で数分の操作である カメラのゾンデ部が廻るので画像の上が孔の上になるように

廻して調整し確定したらビニールテープで固定して挿入する

記録者は記録用紙に可とう管の1m毎の深度とビデオの撮影時

間を書き込む挿入時間は10~30cm秒程度は可能であ

るが10cm程度が観察しやすいなおケーシング内など撮

影の必要の無い箇所は早く挿入しても良い 最新式のビデオカメラで地質技術者が立ち会う時にはモニタ

ーテレビを見ながら地質情報を音声で挿入が出来る ボーリング孔に濁り水が無く空孔の場合は綺麗に撮影が出来

るが濁っている場合は撮影できないのがこの様な光学カメラ

の常識であるしかし当社ではこれを解決できる方法につい

て現在実験中でほぼ目処が立ちそうな状況である 通常は水中ポンプで除去するか沈殿剤で濁りを薄める処理

が必要で解決できる 4撮影事例

ケース1郊外の社内倉庫敷地に掘削した深度25mテスト孔

の撮影

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある

Page 30: 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 · 堆積岩中の重金属類の風化と溶出特性に関する考察 Weathering and leaching characteristics

この孔は段丘堆積物と新第三紀凝灰質砂岩互層を掘削したも

ので境界部から多量の湧水がある貝殻片や火山灰が浮遊して

濁っており水中では撮影不可能である沈殿剤や湧水を汲み上

げて撮影すると地層の互層状況が綺麗に撮影できたこの地層

を展開図として表示を行いほぼ水平層で在る事も確認したこ

の孔はカメラ製作時の性能の確認でも使用している 現在この孔を使用して濁り水中での撮影方法の試験を行い

比較的簡単な操作をする事で綺麗な画像の撮影に成功し現在

詳細な詰めを行っている ケース2アンカーボーリングの定着岩盤撮影

斜め30度方向に施工中の直径116mmアンカー孔の定着

岩盤を撮影して設計時想定岩盤を確認して後モルタルを充填

した日本ではこの岩盤確認は掘削中のスライムを見て判定す

れば良いが間接的なので直接目で視て施工者と発注側とがお

互い確認する事が重要と考えて実施した今回は花崗岩のマサ

化した岩盤であり亀裂等は認められなかった ケース3深礎杭の亀裂の有無の確認撮影

2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災地にあ

る橋梁基礎の深礎杭中でボーリングを行った所ボーリングコ

アに亀裂が認められたがこれは地震時に発生したものかどうか

を確認するためにこのカメラで撮影した所定の所に亀裂は認

められない事よりこれは掘削後に発生したものと判定してこ

の深礎杭の健全性が確認されたコンクリートでのボーリング

孔のため礫や鉄筋の一部も綺麗に撮影できた ケース42008年6月の地震災害で岩盤内に認められた亀

裂を撮影

この亀裂の方向や規模を確認するために行い概要を把握でき

たボーリングコアでは開口亀裂の規模性状の概要は判断でき

るが方向性や開口幅は判断できないこのカメラを使用するこ

とでこれを確認できた 5考察

現在はまだ4事例しかないが製作中にテスト孔を利用して問

題点を解消しているので今後は大きな問題は無いと考えて平成

20年の10月から販売している このカメラは先に述べたように全地連の事業に応募し採用

され6月から公募中で参加企業を待っている(独)産業技術総

合研究所の平成20年度中小企業等製品性能評価事業に応募し

たが市場性が弱いという事で1次で却下されたこの他(財)

国土技術研究センターの国土技術開発賞への応募を実施した

国土交通省のNETIS事業ても認可され6月12日より公

開された このカメラは安価で操作も簡単であるためボーリングオペレ

ーターの補助具としてはもちろん地質技術者の観察道具として

ボーリング調査中に使用して今までの地質調査では未開拓の孔

壁を簡単に観察するツールとして開発したこれから得られる

情報を拡大させて地質解析を行う事でボーリング1本当たりの

情報を拡大させ付加価値を高めて地質調査における発注単価の

内技術経費を高める事が出来る情報としては亀裂の幅方

向亀裂充填物の種類湧水の有無量方向速度断層や

地すべり面の直接確認が出来る この他今まではまったく不可能と考えられていた土質のボ

ーリングでも前方視カメラの特徴を生かし現在開発中の濁水対

策方法が確立されれば乱されない孔壁での土質の判断が可能で

あるこれに対しても今後挑戦して標準化を図れれば地質調

査の解析の範囲が大幅に拡大される可能性が高い今後はこの

カメラの特性を生かしていろいろな分野に挑戦してその記録を

基に地質調査の標準化を図って行きたい 6問題点及び今後の方針

このカメラの問題点は光学系カメラであれば致し方ない濁り

に対して弱い点であるこれをクリアーするには超音波センサ

ーで行うなど土質地質の色調を犠牲にする方法しかないのが

現状で高級ボアホールカメラでは実現している しかしこの超簡易型カメラの特質を生かしてこの問題に対

処する方法として前方視型カメラの利点を活用して清水を送り

込んで撮影する方法があり現在研究中である また土質や軟弱地盤での適用にはケーシング前方の不定形

になっているボーリング孔を直接視るための掘削長や掘り方に

工夫が必要であるがこれについては事例を多くする事が重要で

あるこれが実現すれば土質をありのままに見る事が常識と

なりより鮮明にあるがままに視た地質及び土質の解析が可

能となる 空孔での観察が最もこのカメラには適しているがこのカメラ

は水中カメラの機能も有しているので各地質に適合した沈殿剤

の開発も有望である別な方法で現在研究中である いずれにしてもこのカメラは安くて構造も単純でボーリン

グのオペレーターが最も恐れるジャミングについてはほとんど

心配が無いのが特徴でいろいろな土質地質に挑戦できるツー

ルと考えている 地質解析の補助具として地質調査の原点である直接視る事を

多くの事例を通して可能にする事が出来ると考えられる 7結論

① 開発したボーリング孔の孔壁を撮影する超簡易型ボアホ

ールカメラを用いて多くの土質地質の観察事例を増やし

て標準化を図る ② 超簡易型ボアホールカメラは安価撮影まで数分で準備完

了全方向に挿入が可能でボーリングオペレーターや地質

技術者の補助具として使用できる ③ 前方視型カメラであるので今まで不可能であった土質の

孔壁を掘削中に観察できる可能性があり地山状況を判断

できる ④ 水中カメラであるので現在研究中の濁水対策が成功すれ

ば全ての土質地質に対して孔壁を短時間確保できれば全

ての地山観察が可能となる ⑤ 全地連の新マーケット創出提案型事業に参加した会員で

実施例を飛躍的に増やし事例を積み重ねれば地質調査の

標準化が可能となる可能性がある