下水処理場の流入負荷変動に係る...

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2014 年度 下水道新技術研究所年報 771. 本研究では,送風機の風量調節機構及び必要空気 量算定手法による曝気風量制御技術の概要,採用実 績,電力消費特性等について調査するとともに,風 量調節機構や曝気風量制御技術が送風機の電力消費 量に与える影響を確認することを目的にモデル水処 理施設での電力消費量の試算を行った。 2. 送風量調節機構に関する資料整理 2.1 基本事項 基本事項では,下水処理場で採用されている送風 機について,文献調査によりその種類,概要,風量 調節機構等について整理した。 2.2 基礎調査 2.2.1 調査概要 基礎調査では,メーカーヒアリングを行い,送風 機の型式毎に分類した送風機容量別の納入実績,処 理場規模別の採用実績数等を整理した。 また,関東,関西,九州の中から施設の現有処理 能力が 10,000m 3 /日,50,000m 3 /日,200,000m 3 /日の 規模で標準活性汚泥法を採用している 108 カ所の下 水処理場を対象として,送風機の型式,構成台数, 風量調節機構,送風量制御方式等のアンケート調査 を行った。 2.2.2 調査結果 1) 送風機採用実績(メーカーヒアリング) 下水処理場に納入される送風機は,主に以下の分 類に区別される。 ・容積形回転式ブロワ(ルーツブロワ) ・遠心ターボブロワ(鋳鉄製多段,鋼板製多段, 歯車増速式単段,高速軸浮上式等) 容積形回転式ブロワ(ルーツブロワ)は,ケーシ ング内に収められた 2 個のロータを互いに逆方向に 回転させて,ロータとケーシングとの間に閉じ込め られた気体を吸込み口から吐出し口に送り,この気 体が吐出し側に押し出される際の容積の変化によっ て圧力を上昇させるものである。ルーツブロワの特 性は,遠心式ターボブロワに比較して,圧力条件の 変化による送風量の変化は少ない。ルーツブロワに は,遠心式ターボブロワにみられるサージング現象 は発生しないが,気体の圧縮によって,圧力脈動に よる騒音,振動及び圧縮熱による温度上昇が著しい。 遠心式ターボブロワは,ケーシング内に収められ た羽根車を高速回転させ,羽根を通過する気体の運 動量によって,圧力と速度を高めるものである。遠 心式ターボブロワには多段と単段があり,多段ター ボブロワはケーシングの材質の違いにより,鋼板製 多段と鋳鉄製多段に区分される。単段ターボブロワ は,主に増速機を介して高周速で回転させ,効率を 上昇させる歯車増速式,磁気軸受により浮上したロ ータが機械的非接触を保ちながら高速回転させる高 速軸浮上式に区分される。 送風機を以下のように分類し,メーカーヒアリン グの結果を処理場規模ならびに送風機容量ごとに整 理した。 (1) ルーツブロワ 下水処理場の流入負荷変動に係る 送風量制御に関する調査

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2014年度 下水道新技術研究所年報

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1. 概 要

本研究では,送風機の風量調節機構及び必要空気

量算定手法による曝気風量制御技術の概要,採用実

績,電力消費特性等について調査するとともに,風

量調節機構や曝気風量制御技術が送風機の電力消費

量に与える影響を確認することを目的にモデル水処

理施設での電力消費量の試算を行った。

2. 送風量調節機構に関する資料整理

2.1 基本事項

基本事項では,下水処理場で採用されている送風

機について,文献調査によりその種類,概要,風量

調節機構等について整理した。

2.2 基礎調査

2.2.1 調査概要

基礎調査では,メーカーヒアリングを行い,送風

機の型式毎に分類した送風機容量別の納入実績,処

理場規模別の採用実績数等を整理した。

また,関東,関西,九州の中から施設の現有処理

能力が 10,000m3/日,50,000m3/日,200,000m3/日の

規模で標準活性汚泥法を採用している 108カ所の下

水処理場を対象として,送風機の型式,構成台数,

風量調節機構,送風量制御方式等のアンケート調査

を行った。

2.2.2 調査結果

1) 送風機採用実績(メーカーヒアリング) 下水処理場に納入される送風機は,主に以下の分

類に区別される。

・容積形回転式ブロワ(ルーツブロワ)

・遠心ターボブロワ(鋳鉄製多段,鋼板製多段,

歯車増速式単段,高速軸浮上式等)

容積形回転式ブロワ(ルーツブロワ)は,ケーシ

ング内に収められた 2個のロータを互いに逆方向に

回転させて,ロータとケーシングとの間に閉じ込め

られた気体を吸込み口から吐出し口に送り,この気

体が吐出し側に押し出される際の容積の変化によっ

て圧力を上昇させるものである。ルーツブロワの特

性は,遠心式ターボブロワに比較して,圧力条件の

変化による送風量の変化は少ない。ルーツブロワに

は,遠心式ターボブロワにみられるサージング現象

は発生しないが,気体の圧縮によって,圧力脈動に

よる騒音,振動及び圧縮熱による温度上昇が著しい。

遠心式ターボブロワは,ケーシング内に収められ

た羽根車を高速回転させ,羽根を通過する気体の運

動量によって,圧力と速度を高めるものである。遠

心式ターボブロワには多段と単段があり,多段ター

ボブロワはケーシングの材質の違いにより,鋼板製

多段と鋳鉄製多段に区分される。単段ターボブロワ

は,主に増速機を介して高周速で回転させ,効率を

上昇させる歯車増速式,磁気軸受により浮上したロ

ータが機械的非接触を保ちながら高速回転させる高

速軸浮上式に区分される。

送風機を以下のように分類し,メーカーヒアリン

グの結果を処理場規模ならびに送風機容量ごとに整

理した。

(1) ルーツブロワ

下水処理場の流入負荷変動に係る

送風量制御に関する調査

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2014年度 下水道新技術研究所年報

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(2) 鋳鉄製多段ターボブロワ

(3) 鋼板製多段ターボブロワ

(4) 歯車増速式単段ターボブロワ

(5) 高速軸浮上式単段ターボブロワ

① ターボブロワ 鋳鉄製多段ターボブロワ,鋼板製多段ブロワ,歯

車増速単段ブロワ,高速軸浮上ターボブロワの分類

結果を図-2.1,図-2.2に示す。なお,ルーツブロ

ワについては,処理場規模及び送風機容量が小さい

ところでの採用が多数あることから,ルーツブロワ

単独で別途に整理した。

図-2.1 送風機容量別の送風機採用実績(ターボブロワ)

図-2.2 処理場規模別の送風機採用実績(ターボブロワ)

鋳鉄製多段ターボブロワは,幅広い送風機容量で

採用実績が多く,鋼板製多段ターボブロワ,歯車増

速単段ブロワは送風機容量 100m3/分以下での採用が

多い。また,処理場規模が 30,001m3/日以上では,

鋳鉄製多段ターボブロワ,歯車増速単段ブロワの採

用が多く,それより小さい処理場規模になると鋼板

製多段ターボブロワの採用が多い。

② ルーツブロワ ルーツブロワの分類結果を図-2.3,図-2.4に示

す。

図-2.3 送風機容量別の送風機採用実績(ルーツブロワ)

図-2.4 処理場規模別別の送風機採用実績(ルーツブロワ)

ルーツブロワは,送風機容量が 20m3/分以下での

納入実績が多数あり,特に 10m3/分以下の実績が多

い。処理場規模別では,30,000m3/日以下の小規模下

水処場での採用が多い。

2) 処理場ヒアリング (1)アンケート項目

各処理場に対し以下の項目についてアンケート調

査を実施した。

(2)アンケート調査結果

調査対象 108箇所のうち,96箇所からの回答が得

られた。

① 送風機型式,送風機構成台数(処理場規模別) 下水処理場で採用されている送風機の型式,送風

機の構成台数を,下水処理場の規模別に整理した。

192

257

220

158

197

139

39

203

116

6 3 0 0 0

154165

72

3719 11 411

4433

216 0 0

0

50

100

150

200

250

300

0~50 51~100 101~150 151~200 201~300 301~500 501~

台数

(台

送風機容量(m3/分)

送風機容量別納入実績【ターボブロワ】

鋳鉄製多段 鋼板製多段 歯車増速 高速軸浮上

5

79110

254

437

196

21

105

54 4815 813

9264

93 102

234 10 13 23 38

16

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

~10,000 10,001~30,000 30,001~50,000 50,001~100,000 100,001~300,000 300,000~

台数

(台

処理施設規模(m3/日)

処理施設規模別納入実績【ターボブロワ】

鋳鉄製多段 鋼板製多段 歯車増速 高速軸浮上

871

12958

21 0

340

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

0~10 11~20 21~30 31~40 41~50 51~

台数(台)

送風機容量(m3/min)

風量別送風機台数【ルーツブロワ】

89

109

61

84

109

90

0

20

40

60

80

100

120

~1,000 1,001~3,000 3,001~5,000 5,001~10,000 10,001~30,000 30,000~

台数(台)

計画日最大汚水量(m3/日)

計画汚水量別送風機台数【ルーツブロワ】

項目

1 施設処理能力

2 水処理系列数

3 排除方式

4 送風機仕様(型式,風量,風量調節機構,電動機出力,台数)

5 反応タンク仕様(池数,散気方式,散気装置,制御方式,硝

化促進の有無)

6 水処理施設使用電力量

7 送風機設備使用電力量

8 年間処理水量

9 年間反応タンク送風量

10 送風機制御フロー

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図-2.5 処理場規模別の送風機型式

図-2.5より,10,000m3/日規模では,ルーツブロ

ワの採用が最も多く,また,50,000m3/日,200,000m3/

日規模では,鋳鉄製多段ターボブロワの採用が多い。

図-2.6 送風機の構成台数

図-2.6より,10,000m3/日規模では,送風機の構

成台数は 2 台(予備機含まず)が多く,50,000m3/

日,200,000m3/日規模では,4台が最も多い。

② 送風機の風量調整機構(処理場規模別) 送風機の風量調節機構を,下水処理場の規模別に整

理した。

図-2.7 処理場規模 10,000m3/日の風量調節機構

図-2.8 処理場規模 50,000m3/日の風量調節機構

図-2.9 処理場規模 200,000m3/日の風量調節機構 10,000m3/日規模では,ルーツブロワで多く採用さ

れているインバータ制御が多い。50,000m3/日,

200,000m3/日規模では,インレットベーン制御が最

も多く,次に吸込み制御弁が多い。

③ 反応タンクの曝気風量制御方式(処理場規模別)

図-2.10 処理場規模 10,000m3/日の風量制御方式

図-2.11 処理場規模 50,000m3/日の風量制御方式

7

4449

29

22

7

76

3 4

0

10

20

30

40

50

60

70

80

10,000m3/日規模 50,000m3/日規模 200,000m3/日規模

送風

機台

数(台)

処理施設規模

処理施設規模別の送風機型式

鋳鉄製多段 鋼板製多段 歯車増速 高速軸浮上 ルーツ

12

15

13

7

1 10 0

1

5

910

2

01 1

0 0

2

8

6

01

00

2

4

6

8

10

12

14

16

1 2 3 4 5 6 7 8

処理

場数

(箇

所)

送風機台数(台)

処理施設規模別の送風機台数(常用)

10,000m3/日規模 50,000m3/日規模 200,000m3/日規模

インレットベー

ン, 8

ガイドベーン(ディ

フューザー), 0

吸込み弁制御, 3

インバータ制御, 21

放風弁, 10

なし, 5その他, 1

風量調節機構の分類(処理施設規模10,000m3/日)

インレットベーン, 14

ガイドベーン(ディ

フューザー), 0

吸込み弁制御, 8

インバータ制御, 3

放風弁, 1なし, 2

その他, 2

風量調節機構の分類(処理施設規模50,000m3/日)

インレットベーン, 10

ガイドベーン(ディ

フューザー), 0

吸込み弁制御, 4

インバータ制

御, 0

放風弁, 1

なし, 2その他, 0

風量調節機構の分類(処理施設規模200,000m3/日)

DO一定制御, 12

空気倍率一定

制御, 2

風量一定制御, 26

その他, 8

風量制御機構の分類(処理施設規模10,000m3/日)

DO一定制御, 12

空気倍率一定

制御, 1

風量一定制御, 13

その他, 3

風量制御機構の分類(処理施設規模50,000m3/日)

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図-2.12 処理場規模 200,000m3/日の風量制御方式 10,000m3/日規模では,風量一定制御(手動で風量

調節)が多く,50,000m3/日規模以上では,風量一定

制御と DO一定制御を採用している処理場が多かった。

2.3 送風量と電力量の関係

送風機の風量調節機構により風量を絞ったときの

送風量と電力量の関係を明らかにするため,メーカ

ーヒアリングを行った。メーカーヒアリングにて入

手した性能曲線をもとに,送風量と電動機出力(軸

動力)の関係をグラフ化し近似式を導いた。

表-2.1 送風量と電動機出力(軸動力)の関係の条件

(CASE1:インレットベーン制御)

図-2.13 送風量と電力の関係

一例として,送風機の型式が鋳鉄製多段ターボブ

ロワ,風量調節機構がインレットベーンの場合(表

-2.1の CASE1)の送風量と軸動力の結果を図-2.13

に示す。図より,風量と軸動力は比例関係で,高い

相関係数を示した。その他,表-2.1の CASE2~9の

条件についても CASE1と同様で,送風量と軸動力の

関係は高い正の相関関係となった。

3. 流量・負荷変動に応じた必要空気 量算定手法による送風量制御技術 に関する調査

流量・汚濁負荷に応じた送風量制御技術による必

要空気量を比較するために,モデル水処理施設での

試算を行った。試算対象技術としては,送風量制御

を実施しない基本条件として「送風量一定」,送風

量制御技術として「空気倍率一定」,「DO 等センサ

による制御(DO 制御)」の 2技術とした。

3.1 設計条件の検討

1) 施設規模(計画汚水量) モデルケースとする施設規模は,管理者がある程

度確保でき,流入負荷変動等が比較的安定している

50,000m3/日(日平均汚水量は 40,000m3/日)とした。

2) 処理方式 検討する処理方式は,50,000m3/日規模の処理場で

最も採用実績の多い標準活性汚泥法と,窒素除去の

効果が高く,近年,採用実績が増加しつつある循環

式硝化脱窒法の 2方式とした。

3) 水質条件 検討における水質条件は,下水道施設設計指針(公

益社団法人日本下水道協会)の計算例を参考とした。

4) 流入汚水量等の負荷変動 流入汚水量は,実処理場の流入変動比より検討し,

負荷変動ならびに流入水温は,実処理場の実績値を

モデルとして検討した。

3.2 送風機・散気方式及び池構成の選定

送風機形式,送風機台数,風量調節機構,散気装

置,散気方式については,アンケート調査をもとに,

50,000m3/日規模で採用の多いケースを検討条件と

した。表-3.1に選定した条件を示す。

表-3.1 送風機・散気装置の条件

項目 条件

送風機形式 鋳鉄製多段ターボブロワ

送風機台数 4台(予備機含まず 容量によっては 3台)

風量調節機構 インレットベーン制御,吸込み弁制御,台数制御

散気装置 散気板,メンブレンパネル(単独,散気板と併用※1)

散気方式 旋回流方式

※1 メンブレンパネルと散気板の併用の場合は,池数の半分がメ

ンブレンパネル,残り半分が散気板とする。

DO一定制御, 8

空気倍率一定制御, 1

風量一定制御, 6

その他, 2

風量制御機構の分類(処理施設規模200,000m3/日)

CASE 型式 風量調節機構 送風機の概略仕様 想定処理場規模

1 鋳鉄製多段ターボブロワ インレットベーン 92m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

標準活性汚泥法

2 鋳鉄製多段ターボブロワ 吸込み弁 92m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

標準活性汚泥法

3 鋳鉄製多段ターボブロワ インレットベーン 138m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

循環式硝化脱窒法

4 鋳鉄製多段ターボブロワ 吸込み弁 138m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

循環式硝化脱窒法

5 鋳鉄製多段ターボブロワ インレットベーン+台数制御 92m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

標準活性汚泥法

6 鋳鉄製多段ターボブロワ 吸込み弁+台数制御 92m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

標準活性汚泥法

7 鋳鉄製多段ターボブロワ インレットベーン+台数制御 138m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

循環式硝化脱窒法

8 鋳鉄製多段ターボブロワ 吸込み弁+台数制御 138m3/分×5,800mmAq×4台

処理量50,000m3/日

循環式硝化脱窒法

9 ルーツブロワ インバータ制御 20m3/分×6,500mmAq×4台

処理量10,000m3/日

標準活性汚泥法

10 ルーツブロワ インバータ制御+台数制御 20m3/分×6,500mmAq×4台

処理量10,000m3/日

標準活性汚泥法

y = 0.8749x + 32.881R² = 0.999

0

20

40

60

80

100

120

140

0 20 40 60 80 100

軸動

力(

kW)

風量(m3/min)

A社

B社

C社

平均値

線形 (平均値)

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2014年度 下水道新技術研究所年報

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池構成についても,アンケート調査をもとに,

50,000m3/日規模で採用の多いケースを検討条件と

し,2 系列 8 池(1 系列当たり 25,000m3/日,1 池当

たり 6,250m3/日)とした。

3.3 消費電力計算

流入負荷変動を考慮に入れ必要空気量を計算し,

送風量と電力量の関係から消費電力量を試算した。

試算に際しては,処理方式,流入条件,硝化促進の

有無,散気装置の種類,送風機の構成台数の条件を

設定し,表-3.2に示す 20ケースについて必要空気

量の試算を行い,送風機の風量調節機構をインレッ

トベーン,吸込弁制御,台数制御の条件※1と曝気風

量制御方式として DO一定制御,空気倍率一定制御,

風量一定とした場合の条件を考慮して消費電力量を

試算した。

※1:送風機を複数台運転するときにインレットベ

ーン及び吸込弁制御は,全台風量調節(全台を同一

風量で運転)を行うものとし,台数制御は定格風量

運転+風量調節運転(インレットベーン制御×1台)

の組合せとした。

表-3.2 計算条件一覧表

図-3.1 曝気量制御方式別の電力使用量

(散気板,インレットベーン)

試算結果より,風量調節機構をインレットベーン,

散気装置を散気板としたきの DO制御,風量一定制御,

空気倍率一定の電力消費量を図-3.1 に示す。図よ

り,標準法,循環法のいずれの条件においても電力

消費量が最も小さいのは DO制御であり,次に空気倍

率一定制御となった。その他の風量調節機構,散気

装置の型式においても同様の傾向が見られた。

図-3.2 風量調節機構別の電力使用量

(標準法,DO制御)

曝気風量制御方式を DO制御,標準法(夏季)にお

ける電力消費量を図-3.2 に示す。図より,各散気

装置においてインレットベーン制御と台数制御は,

概ね同等の電力消費量であり,吸い込み弁制御と比

較すると 8~17%の電力消費量の削減効果がある結

果となった。また,散気装置型式による電力消費量

を比較すると,メンブレン(送風機 4台)より,メ

ンブレン(送風機 3台)の方が電力消費量を低減で

きる結果となった。この結果から,送風機容量が大

きい方が電力消費量を軽減できると推測される。そ

の他,曝気風量制御方式,循環法においても同様な

傾向となった。

4. 送風機調節機構,必要空気量算定 手法による送風量制御技術に関す る実態調査

4.1 送風機の風量調節機構に関する調査結果

送風機調節機構により送風量を絞った際の電力量

との関係を整理するため,処理場の運転実績を確認

する実態調査を実施した。調査対象とした送風量調

節機構は,ルーツブロワで多く採用されている VVVF

制御(インバータ制御),多段ターボブロワで多く

採用されているインレットベーン,吸込み弁の計 3

種類とした。

調査対象として,曝気風量制御方式の打ち DO制御,

空気倍率一定制御を行っている処理場とし,関東,

関西,九州の 3地域から 8ヶ所を抽出した。

図-4.1 送風量と消費電力量(インレットベーン)

CASE 処理方式 流入条件 硝化促進 散気装置 送風機

1-1 標準活性汚泥法 夏季 有 散気板 4台1-2 〃 〃 〃 メンブレン 4台1-3 〃 〃 〃 メンブレン 3台1-4 〃 〃 〃 メンブレン+散気板 4台1-5 〃 冬季 〃 散気板 4台1-6 〃 〃 〃 メンブレン 4台1-7 〃 〃 〃 メンブレン 3台1-8 〃 〃 〃 メンブレン+散気板 4台1-9 〃 〃 無 散気板 4台1-10 〃 〃 〃 メンブレン 4台1-11 〃 〃 〃 メンブレン 3台1-12 〃 〃 〃 メンブレン+散気板 4台2-1 循環式硝化脱窒法 夏季 有 散気板 4台2-2 〃 〃 〃 メンブレン 4台2-3 〃 〃 〃 メンブレン 3台2-4 〃 〃 〃 メンブレン+散気板 4台2-5 〃 冬季 〃 散気板 4台2-6 〃 〃 〃 メンブレン 4台2-7 〃 〃 〃 メンブレン 3台2-8 〃 〃 〃 メンブレン+散気板 4台

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

標準法

(夏季)

【CASE1-1】

標準法

(冬季)

【CASE1-5】

標準法

(冬季・硝化無)

【CASE1-9】

循環法

(夏季)

【CASE2-1】

循環法

(冬季)

【CASE2-5】

電力

消費

量(

kWh)

DO制御

風量一定

空気倍率一定

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

散気板

【CASE1-1】

メンブレン

(送風機4台)

【CASE1-2】

メンブレン

(送風機3台)

【CASE1-3】

散気板+メンブレン

【CASE1-4】

電力

消費

量(

kWh)

インレットベーン制御

吸込弁制御

台数制御

y = 1.0614x + 26.098R² = 0.8762

y = 1.0595x + 29.196R² = 0.8923

0

10

20

30

40

50

60

70

10 15 20 25 30 35 40

電力

消費

量(kW

h)

風量(m3/min)

H26年7月30日

H27年1月21日

Page 6: 下水処理場の流入負荷変動に係る 送風量制御に関する調査遠心式ターボブロワは,ケーシング内に収められ た羽根車を高速回転させ,羽根を通過する気体の運

2014年度 下水道新技術研究所年報

―82―

一例として,風量調節機構としてインレットベー

ンを採用している処理場の運転データより,風量と

電力消費量の関係を図-4.1に示す。前述のメーカ

ーヒアリングより入手した性能曲線をもとに導いた

風量と軸動力の関係と同様で,風量と消費電力量は,

比例関係で,高い相関係数を示した。

また,送風機の電力消費量は,吸込み温度により

影響を受け,吸込み温度が低い冬季に電力量が高く

なるため,夏季に比べて,電力消費量高くなる結果

となった。

4.2 送風量制御による風量削減効果に関する調査

結果

送風量制御による風量削減効果を確認するために

前節の送風機の風量調節機構の調査で対象とした処

理場に対して,運転実績の実態調査を実施した。

送風量制御方式としては,DO 制御,空気倍率一定

制御を調査対象とした。

図-4.2 流入水量と曝気量(DO制御:A 処理場 夏季)

図-4.3 流入水量と曝気量(空気倍率一定:D処理場 夏季)

表-4.1送風量制御方式による風量削減率

A処理場における夏季の流入水量と曝気量の運転

実績データを図-4.2に示す。A処理場では反応タン

ク末端に設置した DO 計の値が管理値の 2.0mg/ と

なるように,曝気風量を手動にて調節している。完

全に自動化した DO 制御ではないが同様な効果が期

待できると考えられることから,DO 制御として扱い

評価した。図中の風量一定とした曝気量は,仮に風

量一定で送風した場合にどの程度の空気量を必要と

するかを確認したもので,DO 制御とした場合の時間

あたりの最大風量にて設定した。図より,特に流入

水量が少ない朝夕の時間帯で,風量一定とした曝気

量に比べて,DO制御による曝気量が少ないことが示

された。

D処理場における夏季の流入水量と曝気量の運転

実績データを図-4.3に示す。D処理場では,流入水

量に対して設定した倍率で空気量を送風する空気倍

率一定の運転を行っている。A処理場と同様に流入

水量が少ない時間帯で,風量一定に比べて空気倍率

一定制御による曝気量は少ないことが示された。

DO 制御,空気倍率一定制御の比較対象として,風

量一定運転を想定した場合の風量削減率を表-4.1

にまとめた。流入負荷条件により,削減率は変動す

ると考えられるが,風量一定と比較して DO 制御,

空気倍率一定制御ともに 20%前後の削減効果が期待

できる結果となった。

5. まとめ

モデル水処理施設を用いて,送風量制御が電力消

費量に与える影響について試算した結果,風量調節

機構を比較するとインレットベーンと台数制御は吸

込制御弁より 8~17%の電力消費量の削減効果があ

った。また,送風量制御方式を比較すると DO制御,

空気倍率一定制御は,風量一定に比べて,電力消費

量が小さい結果となり,処理場の運転実績の実態調

査においても同様の傾向が見られた。

本研究では,既存技術の設備における送風機の風

量調節機構や曝気風量制御技術よる電力消費量の影

響を確認した。調査結果は,B-DASH技術(省エネ水

処理技術等)等の新技術を評価するうえでの既存技

術との比較データとして利用できる。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

0 4 8 12 16 20 24

流入

水量

・曝

気量(

m3)

時刻

流入水量

曝気量(DO制御)

曝気量(風量一定)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

0 4 8 12 16 20 24

流入

水量

・曝

気量(

m3)

時刻

流入水量

曝気量(空気倍率一定)

曝気量(風量一定)

夏季 冬季 夏季 冬季A処理場 21 18 - -B処理場 12 18 - -

C処理場 3※1 24 21 30

D処理場 - - 13 9最大値 21 24 21 30最小値 12 18 13 9平均値 17 20 17 20

※1 制御異常と考えられるため、最大値、最小値、平均値の計算には含めず。

風量一定とした場合からの風量削減率 (%)DO制御 空気倍率一定制御処理場名

●この研究を行ったのは ●この研究に関するお問い合わせは

研究第一部長 三宮 武 研究第一部長 中島英一郎

研究第一部副部長 小塚 俊秀 研究第一部副部長 小塚 俊秀

研究第一部総括主任研究員 川村 寛 研究第一部研究員 日高 康晴

研究第一部研究員 小高 悠 研究第一部研究員 森脇 隆一