不正競争防止法における不動産の商品性及び混同(4)...

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不正競争防止法における不動産の商品性及び混同 (平成 16 7 2 東京地裁 平成 15()27434 La Vogue 事件) 関西特許研究会(KTK弁理士 第1 はじめに 今回紹介する事案は、ファッション雑誌を発刊している原告らが、その雑誌名である原 告標章を原告らの周知又は著名商品等表示であると主張し、被告が原告標章と類似する被 告標章をマンションの名称に使用する行為は、不正競争防止法2条1項1号又は同2号に 該当すると主張して、同法3条、4条に基づき被告標章の使用差止及び損害賠償を請求し た事案である。 本件における主な争点としては、「不動産の商品性(マンション名が商品等表示となりう るか)」および「混同」を挙げることができる。 不正競争防止法において、「商品」を定義している規定は無い。 たとえば、「商品」とは、一般市場において流通に供されることを目的として生産され、 又は取引される有体物をいう(竹田稔著「知的財産権侵害要論 不正競業編」29 頁)など と解されているが、建物等の不動産までも含むかは明確ではない。 また、そのような不動産(マンション)の名称と、有名雑誌の名称との混同を裁判所は どのように判断したのか、本件は興味深い事案である。 第2 当事者 原告 アドバンス・マガジン・パブリッシャーズ・インコーポレーテッド 原告 有限会社日経コンデナスト 被告 株式会社プロパスト 第3 事案の概要 争いのない事実等 (1) 原告および被告について 原告アドバンス・マガジン・パブリッシャーズ・インコーポレーテッドは、ファッショ ン雑誌「VOGUE」を発刊している。 原告有限会社日経コンデナストは、平成11年から、日本において、上記「VOGUE」 誌の日本版である「VOGUE NIPPON」誌を発刊している。 被告は、不動産の売買・賃貸・仲介・管理・鑑定評価及び不動産の企画・設計・調査測 量等を業務とする株式会社である。

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Page 1: 不正競争防止法における不動産の商品性及び混同(4) 「VOGUE」(vogue)とは、フランス語及び英語で「流行、はやり」の語義を有す る名詞である。

不正競争防止法における不動産の商品性及び混同 (平成 16年 7月 2日 東京地裁 平成 15(ワ)27434 La Vogue事件)

関西特許研究会(KTK) 弁理士 松 井 宏 記

第1 はじめに 今回紹介する事案は、ファッション雑誌を発刊している原告らが、その雑誌名である原

告標章を原告らの周知又は著名商品等表示であると主張し、被告が原告標章と類似する被

告標章をマンションの名称に使用する行為は、不正競争防止法2条1項1号又は同2号に

該当すると主張して、同法3条、4条に基づき被告標章の使用差止及び損害賠償を請求し

た事案である。 本件における主な争点としては、「不動産の商品性(マンション名が商品等表示となりう

るか)」および「混同」を挙げることができる。 不正競争防止法において、「商品」を定義している規定は無い。 たとえば、「商品」とは、一般市場において流通に供されることを目的として生産され、

又は取引される有体物をいう(竹田稔著「知的財産権侵害要論 不正競業編」29 頁)などと解されているが、建物等の不動産までも含むかは明確ではない。 また、そのような不動産(マンション)の名称と、有名雑誌の名称との混同を裁判所は

どのように判断したのか、本件は興味深い事案である。 第2 当事者 原告 アドバンス・マガジン・パブリッシャーズ・インコーポレーテッド 原告 有限会社日経コンデナスト 被告 株式会社プロパスト 第3 事案の概要 1 争いのない事実等 (1) 原告および被告について 原告アドバンス・マガジン・パブリッシャーズ・インコーポレーテッドは、ファッショ

ン雑誌「VOGUE」を発刊している。 原告有限会社日経コンデナストは、平成11年から、日本において、上記「VOGUE」

誌の日本版である「VOGUE NIPPON」誌を発刊している。 被告は、不動産の売買・賃貸・仲介・管理・鑑定評価及び不動産の企画・設計・調査測

量等を業務とする株式会社である。

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(2) 被告の行為 被告は、東京都港区(以下省略)に本件マンションの建築を企画し、平成14年7月上

旬、本件マンションの名称を「ラ ヴォーグ南青山」と決定し、同年9月2日、建築に着

工し、同月14日から本件マンションの分譲を開始した。被告は、これに伴い、同日から

本件マンションの近辺に存在する「カプリース青山」というビルにモデルルームを設置す

るとともに、販売のための宣伝広告活動も開始した。 (3) 被告標章について ア 被告標章1 被告は、カプリース青山の郵便受け及びフロア案内板、本件マンションのパンフレット

の裏表紙及び30頁、宣伝用ポケットティッシュ、本件マンション周辺に置かれたモデル

ルーム案内板、本件マンション内に置かれたモデルルーム案内板等に被告標章1を使用し

ている。 イ 被告標章2 被告は、カプリース青山のモデルルーム入口のドア及び紙袋に被告標章2を使用してい

る。 ウ 被告標章3 被告は、本件マンションの壁面を覆うテント上の看板、カプリース青山の壁面に掲げた

看板、本件マンションのパンフレットの表紙、宣伝用ティッシュの折り込み用紙に被告標

章3を使用している。 エ 被告標章4 被告は、本件マンションの壁面を覆うテント上の看板に被告標章4を使用している。

(被告標章5~11省略) (4) 「VOGUE」(vogue)とは、フランス語及び英語で「流行、はやり」の語義を有する名詞である。 2 争点 (1) 被告の行為は、不正競争防止法2条1項1号に該当するか。 ア 原告らは商品等表示の主体ということができるか。 イ 原告標章に周知性が認められるか。 ウ 被告標章は被告の商品等表示ということができるか。 エ 原告標章と被告標章は類似しているか。 オ 被告の行為は、需要者に混同を生じさせるか。 (2) 被告の行為は、不正競争防止法2条1項2号に該当するか。

(略) (3) 損害の発生の有無及びその額

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第4 裁判所の判断 1 争点(1)ア(商品等表示の主体)について (1) 原告標章の使用 原告アドバンスマガジンは、ファッション雑誌「VOGUE」を発行しているが、関連

会社を通じて、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、オーストラリア、ブラジル、シ

ンガポール、韓国、スペイン、アメリカなどの各国で、「VOGUE」誌各国版を発行させ

ている。我が国においては、昭和24年ころから米国版の「VOGUE」誌が販売されて

いるが、平成11年に原告日経コンデナストが日本版の「VOGUE NIPPON」誌

を創刊した。 原告アドバンスマガジンは、各国における原告標章及びその関連標章を自ら又は関連会

社を通じて管理しているところ、我が国において、原告標章1について第26類(印刷物)

に商標登録し、原告標章2について第26類(雑誌その他本類に属する商品)に商標登録

していたが、これらの商標権を関連会社のCNAP社に移転し、CNAP社は平成10年

から原告日経コンデナストに専用使用権を設定している。 「VOGUE NIPPON」誌では、基本的には原告標章3が表題等に使用されてい

るが、「VOGUE」誌の日本版であることから、原告日経コンデナスト主催のVOGUE

写真展においては、原告標章1も使用されていた。 (2) 原告アドバンスマガジンが発行する「VOGUE」誌をもとに各国版が発行されていること、原告アドバンスマガジンは、各国における原告標章及びその関連標章を自ら又は

関連会社を通じて管理していること、我が国における原告標章の商標権者であるCNAP

社も、原告アドバンスマガジンの関連会社であり、「VOGUE NIPPON」誌を発行

する原告日経コンデナストは、CNAP社から上記商標権について専用使用権の設定を受

けていること等からすると、原告アドバンスマガジンと原告日経コンデナストを含む「V

OGUE」誌各国版の発行者及びCNAP社とは、「VOGUE」誌の発行によって原告標

章1の持つ出所表示機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目

的のもとに結束した企業グループであるということができる。 したがって、原告らは、「VOGUE」誌の発行によって結束した企業グループに属して

いるから、原告らは、いずれも原告標章1ないし3の商品等表示の主体であると認められ

る。 2 争点(1)イ(原告標章の周知性)について 原告標章は、遅くとも平成14年9月までに「VOGUE」誌の発行によって結束した

企業グループの商品等表示として需要者の間に広く認識され、その後現在に至るまで周知

性を維持し続けていることが認められる。 3 争点(1)ウ(被告の商品等表示)について 不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」とは、人の業務にかかる氏名、商号、

商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。ここ

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にいう「商品」は、競争が行われることを前提としていることから、市場における流通が

予定され、それ自体に表示を使用してその出所が識別される性質を備えている、主として

動産をいうものである。もっとも、不動産であっても、大量生産ないし大量供給が行われ

るマンション等の建築物は、実際に本件マンションも投資目的での購入を勧誘しているよ

うに、一般に市場における流通が予定されており、マンション自体に表示を使用してその

出所が識別される性質を備えている。よって、マンションは、商取引の目的となって市場

における流通が予定され、それ自体に表示を使用してその出所が識別される性質を備えて

いる物として、不正競争防止法2条1項1号にいう「商品」に該当するものと解される。 また、被告は、平成15年5月30日、「ラ・ヴォーグ南青山」につき第36類(建物の

売買、建物の売買の代理又は媒介等)を指定役務として商標登録を受けている。被告は、

他のマンションの名称についても商標登録を受け、また、大手の不動産業者がマンション

の名称を同様に商標登録していることからしても、マンションの名称が商品等表示に該当

しないとする理由はない。 したがって、マンションの名称も商品等表示に該当し、マンションの名称として使用されている被告標章は、いずれも商品等表示に該当する。 4 争点(1)エ(類似性)について 原告標章と被告標章は類似している。

5 争点(1)オ(混同のおそれの有無)について (1) デザイナーズマンションとは、首都圏で生まれた個性的な間取りやデザインのマンションのことで、この言葉が登場した当初は賃貸用マンションが中心であったが、その後短

期間で状況が変わり、分譲マンションでもデザイナーズを名乗る商品が次々に登場してい

る。若手のデザイナーを起用し、都市性を楽しむ住人にオフィス、住居の機能を提供する

ものであり、従来の家族構成や間取りにとらわれないデザインが受けているといわれてい

る。その結果、デザイナーの名前がブランド化し、賃料も高く、高級感やファッション性

が打ち出されてきているといえる。 したがって、最近はファッションと建築は無関係ではなく、デザイナーズマンションと

いうブランドやファッション性を重視したマンションが求められる傾向になってきた。 本件マンションは、13階建てで、1LDKが3700万円台から(2階以上)、2LD

Kが6100万円台から(10階以上)、メゾネットが1億900万円台(12、13階)

となっている高級マンションである。本件マンションのパンフレットは、ファッションシ

ョーにおけるモデルの写真が使われ、「for AOYAMA CELEBRITY」といった語が使用され、ファッション雑誌のような体裁になっている。広告にも「南青山のデザイナーズマンショ

ン」と銘打たれ、様々な機能的設備が全て標準装備であることをアピールしている。また、

被告は、本件マンションの工事現場の看板にも、ファッションショーのモデルの写真を使

用していた。 (2) 原告らの業務に係る商品は、ファッション雑誌「VOGUE」誌又は「VOGUE N

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IPPON」誌であり、被告が被告標章を使用する対象商品は本件マンションであって、

両者の商品自体は類似するものとはいえない。しかしながら、「VOGUE」誌又は「VO

GUE NIPPON」誌が高級なブランドイメージや都会的なファッションセンスのイ

メージを前面に押し出していること、近年デザイナーズマンションという高級で都会的で

ファッション性のあるマンションがもてはやされ、ファッション雑誌と建築が無縁ではな

くなってきており、実際に「VOGUE NIPPON」誌で建築を扱ったこともあった

ことに加え、被告が本件マンションをデザイナーズマンションと銘打ち、その高級感やフ

ァッション性を売り物にしていたことからすれば、両者の商品の間には、関連性が認めら

れ、需要者についても共通する場合があるというべきである。そして、被告は、本件マン

ションを、まさに「VOGUE」誌及び「VOGUE NIPPON」誌が長年にわたり

積み上げてきた高級でファッショナブルなイメージと同じイメージで販売していたもので

あるから、その関連性は相当程度存在するといえる。 (3) 原告標章の独創性は、アメリカ合衆国及びフランスにおいて普通名詞であったことから同国においては高くはないが、我が国においては、一般的に使用される語ではないこと、

原告標章が長年にわたって使用され、周知性が極めて高いこと、原告標章が被告標章と称

呼及び観念において同一であって、両標章が類似すること、両標章の使用される商品の間

に関連性が認められ、需要者が共通し、本件マンションが「VOGUE」誌及び「VOG

UE NIPPON」誌の高級でファッショナブルなイメージと同じイメージで販売され

ていること等を総合的に考慮すれば、被告標章は、これに接した需要者に対し、原告標章

を連想させ、原告らと同一の商品化事業を営むグループに属する関係又は原告らから使用

許諾を受けている関係が存するものと誤信させるものと認められる。 6 争点(3)(損害)について (1) 被告は、被告標章を本件マンションの販売のために使用しているから、不正競争防止法5条2項1号に定める行為に対し通常受けるべき金銭の額は、本件マンションの売上高

を基準にして算定されるべきである。 本件マンションの総売上高は、25億4500万円であるところ、原告らは、この総売

上高の10%が原告らの使用料相当損害額であると主張する。しかしながら、本件の対象

商品は敷地権付きマンションであり、上記価格には、本件マンションの建物部分のみなら

ず、敷地権についての価格も含まれ、建物部分の価格(建築費、設計料等)の総額は、9

億5000万円である。 また、マンションの取引においては、まず立地条件、建築内容及び価格等が購入に当た

って検討する重要事項であって、マンションの名称はイメージとして多少の効果は否定し

得ないものの、取引の際に大きな影響を与えるものとはいえない。したがって、本件にお

いては、被告が原告らの商品等表示である原告標章に類似した被告標章を使用したことに

よって得られる利益ないし寄与割合は、必ずしも大きくないと解される。 (2) 以上の諸事情を考慮し、本件マンションの建物部分の価格の総額9億5000万円の

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5%である4750万円をもって原告らの使用料相当損害額と認める。 原告らは、それぞれが「VOGUE」誌の発行によって結束した企業グループに属する

者として原告標章を自己の商品等表示として使用しているのであって、原告標章を共有し

ているわけではなく、共有持分も観念できないことからすると、原告らは、いずれも単独

で本件における被告の侵害行為により発生した損害全額について賠償を求めることができ

る。したがって、本件における原告らの不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求権は、

連帯債権であると解するのが相当である。

第5 コメント (1) 不動産の商品性とマンション名について 過去、不動産の商品性については、商標法における事案ではあるが、ヴィラージュ事件に

おいて以下のように判断されている。 *ヴィラージュ事件 東京地裁 平成 11年 10月 21日 平成 11(ワ)438 「分譲マンションや建売住宅は、地理的利便性、間取り等においてほぼ同等の条件を備

えた、互いに競合するものが多数供給され得るものである。このように造成地、建物等

の不動産であっても、市場における販売に供されることを予定して生産され、市場にお

いて取引される有体物であると認めることができるものであって、これに付された標章

によってその出所が表示されるという性質を備えていると解することができるから、こ

れらもまた商標法によって保護されるべき「商品」に該当する」 * ヴィラージュ事件控訴審 東京高裁 平成 12年 9月 28日 平成 11(ネ)5876 「分譲販売業者の行為は、マンションの分譲販売に際して行われるものとして、建物の売

買という役務に属する行為であるというべきである。(略)被告標章を付した行為は、

マンションの分譲販売に際して行われる役務提供の際になされたものであり、被告標章

は、建物の販売の役務の提供に当たり、販売の役務の提供を受ける者、すなわちマンシ

ョン購入希望者が購入予定物件の内容の案内を受けるなどの際に使用されたものであ

って、これが、本件登録商標の指定役務である「建物の売買」についての使用に該当す

ることは明らかである。」 ヴィラージュ事件において、分譲マンションの名称の使用は、東京地裁では「建物とい

う商品」についての標章の使用と判断され、東京高裁では不動産の商品性について触れる

ことなく「建物の売買という役務」についての使用と判断された。 今回紹介した La Vogue事件においては、ヴィラージュ事件東京地裁と同じく分譲マンションに市場における流通性を認め、そのマンション名によって商品である分譲マンション

の出所が識別されているとし、マンションは不正競争防止法2条1項1号にいう「商品」

に該当すると判断された。 分譲マンションは物理的に移動して流通しないが、不動産情報誌やインターネット上に

おいて、価格・立地・間取りなどの情報とともにマンション名も記載されて大量に取引さ

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れている。需要者の購入目的は多様であり、住居を目的とする者もあれば投資を目的とす

る者もいる。需要者はマンションについての各種情報から当該マンションについて印象を

もち、その印象とマンション名とを結びつける。不動産市場において、需要者は大量の同

程度の物件の中からマンション名をもって識別しているといえる。このようなマンション

取引実情の下、不動産、特に分譲マンションは流通性を有しており、侵害の場面において

は、不正競争防止法上(および商標法上)における「商品」に該当し、そのマンション名

は商標又は商品等表示に該当するとの解釈が成立してきているといえよう。 (2) マンション名と雑誌名の混同に関して 確かに、近頃の分譲マンションには、有名デザイナー等が設計などに関与しているいわゆ

るデザイナーズマンションといわれるものが存在しており、デザイン性やファッション性の

あるライフスタイルを提案した分譲マンションが販売されている。分譲マンションの購入希

望者は商談を進めていくにつれて、原告らとの広義の混同も無くなるのであろうが、ファッ

ション性を強調したパンフレットに接した初期段階での混同のおそれはあり得るであろう。

混同の解釈についてはさらに詳細な検討がされるべきと考える。今後の裁判例に注目したい。 以上

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[著者略歴] 松井 宏記 1997年 関西学院大学文学部哲学科卒業 同年 あい特許事務所入所 1998年 弁理士登録 所属 日本弁理士会、関西特許研究会、日本商標協会等 専門分野 国内外商標・意匠、不正競争等