産学連携と大学発イノベーションの創出坂下 鈴鹿...

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坂下 鈴鹿 文部科学省科学技術・学術政策研究所 3調査研究グループ 総括上席研究官 201312126回政策研究レビューセミナー 産学連携と大学発イノベーションの創出 NISTEPの研究成果から見えてきたこと~

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坂下 鈴鹿 文部科学省科学技術・学術政策研究所 第3調査研究グループ 総括上席研究官

2013年12月12日

第6回政策研究レビューセミナー

産学連携と大学発イノベーションの創出 ~NISTEPの研究成果から見えてきたこと~

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大学の教員等の任期に関する

法律等

大学等技術移転促進法

産業活力再生特別措置法

知的財産基本法

国立大学法人化

教育基本法改正

イノベーション25

(京都)

第一回

産学官連携推進会議

第3期科学技術基本計画

第2期科学技術基本計画

第1期科学技術基本計画

大学知的財産本部整備事業

「知財推進計画」を国が策定

日本版”バイドール”条項 (=国の研究委託の成果を受託者に帰属)

承認TLOへの出資 特許の機関帰属 等

承認TLO制度 (=大学等の研究成果の産業への移転を促進)

大学の使命として、 ①教育、②研究に加え、③社会貢献を明文化

中央省庁再編

研究開発力強化法

科学技術による地域活性化戦略

知的クラスター創成事業 (第Ⅰ期) (第Ⅱ期)

第3期科学技術基本計画 “産学官連携はイノベーション 創出のための重要な手段”

第1期科学技術基本計画 “産学官の人的交流等の促進”

産学官連携 戦略展開事業

事業は廃止判定

地域科学技術、産学官連携戦略展開

’97 ’98 ’00 ’99 ’01 ’03 ’02 ’04 ’06 ’05 ’07 ’08 ’09 ’10

大学等産学官連携 自立化促進プログラム

’96

第2期科学技術基本計画 “技術移転のため仕組みの改革”

行政刷新会議事業仕分け第1弾

行政刷新会議事業仕分け第3弾(

再仕分け)

産学官連携施策の経緯 ©文部科学省

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1.研究開発投資からみた産学連携

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主要国等の組織別研究費負担割合

出典:「科学技術要覧 平成25年版」文部科学省科学技術・学術政策局

我が国の研究開発投資の主役は企業。大学は、研究成果を社会に還元するために、 企業の研究開発活動に、より積極的に関与・参画する戦略を持つべきである。

我が国の研究開発投資

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負担部門から使用部門への研究開発費の流れ(日本)(2011年度) 負担部門から使用部門への研究開発費の流れ(ドイツ)(2009年度)

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2013」 調査資料-225

研究開発費の流れ

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主要国の中で、日本はイノベーション活動をした企業の割合が高いとは言えない。また、日本企業は、イノベーションに外部情報源を活用する割合はそれほど高くないが、大学や公的機関の知を活用する割合は相対的に高い。

日本企業のイノベーション活動

100 75 50 25 0 25 50 75 100ロシア連邦

チリ 英国

スロバキア ノルウェー

日本 ニュージーランド

ポーランド ハンガリー

トルコ オーストラリア

カナダ チェコ

アイスランド スペイン

フィンランド デンマーク イタリア フランス

スウェーデン 韓国

オランダ アイルランド

スロベニア ベルギー

オーストリア ポルトガル イスラエル ブラジル

ルクセンブルク エストニア

ドイツ 南アフリカ

%

Product or process innovation only

Product or process & marketing ororganisational innovationMarketing or organisational innovation only

中小企業 大企業

イノベーション活動をした企業の割合

OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2013 - © OECD 2013 ※日本のデータは文部科学省科学技術・学術政策研究所『第3回イノベーション調査』(2013年度中公表予定)の暫定値に基づく。 ※この調査における大企業は従業者数250人以上の企業、中小企業は従業者数がそれ以下の企業を指す(オスロマニュアル準拠)。

0 20 40 60 80 100

チリ ポーランド ロシア連邦 オランダ

ポルトガル フランス スペイン イタリア

イスラエル 日本

デンマーク チェコ

エストニア ベルギー

フィンランド トルコ

南アフリカ スロバキア ハンガリー

ドイツ スロベニア

英国 ルクセンブルク オーストラリア

ブラジル スイス

ニュージーランド

% of product and /or process innovative firms

Institutional sources (higher education, government)

Market sources (suppliers, customers, competitors,etc.)

イノベーションのための外部情報源の活用

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政府研究開発投資をより効果的に経済成長に結び付けるための施策を考える上では、企業の研究開発活動がイノベーションを生む過程、及び、その過程で大学等の知や人材が果たしている貢献を明らかにすることが必要であり、そのための調査研究が求められる。

製造業全体の工場におけるTFP成長率(注)への寄与

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「工場立地と民間・公的R&D スピルオーバー効果:技術的・地理的・関係的近接性を通じたスピルオーバーの生産性効果の分析」(NISTEP DISCUSSION PAPER No.93) ※1987-2007 年の日本の製造業の工場レベルのパネルデータを研究開発投資に関する個票データと接続し、研究開発(R&D)ストックが工場レベルの生産性に与える効果について定量的に分析 (注)TFP(Total Factor Productivity:全要素生産性)成長率:GDP成長率から労働投入の増加及び資本投入の増加分を除いたもので、生産技術・効率の改善の度合いを示すと考えられている。

工場の生産性は自社のR&D ストックのみならず、技術的・地理的に近接する他社のR&D から影響を受けており、さら

に、技術的に関連する分野における大学及び公的研究機関のR&D も工場の生産性に影響を与えている。

0.160 0.193

0.071

0.155

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

No Yes

Public financial support

Start-up firm

Established firm

公的研究開発や公的資金助成が企業の生産性に与える効果

公的資金助成の研究開発集約度に対する効果

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「R&D, innovation, and business performance of Japanese start-ups: A comparison with established firms」(DISCUSSION PAPER No.104) ※グラフの縦軸はR&D集約度(従業者1人あたりR&D投資額:百万円) ※新規開業企業(Start-up firm):製造業又はソフトウェア業に属し、開業から2年未満の企業 ※成熟企業(Established firm):開業から2年以上経過している企業

公的資金助成には研究開発集約度(従業者1人あたり研究開発投資額)を高め、イノベーションを促進して、生産性を高める効果があり得る。ただし、公的資金助成の有無にかかわらず、新規開業企業の研究開発集約度が成熟企業よりも高いことは、成熟企業への助成よりも新規企業の開業を促進する政策の効果の方が高い可能性を示唆している。

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2.企業からみた産学連携

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企業が他組織と連携を行う目的・効果を見ると、人的・組織的ネットワーク構築、探索的な研究開発活動、企業の研究開発活動の効率化などが、売上の増加や特許数の増加よりも重視されている傾向がうかがえる。

2.4%

2.5%

20.2%

25.6%

31.4%

43.9%

44.4%

49.3%

62.6%

その他(n=22)

いずれも該当しない(n=23)

新製品・サービス開発のリスク軽減(n=185)

技術的成果からの新たな収益の獲得(n=234)

研究開発費のコストダウン(n=287)

新製品・サービス開発に関する新規パートナーシップの確立(n=402)

技術的成果の新たな事業機会の発見(n=406)

新しい技術トレンドの探索(n=451)

研究開発活動のスピードアップ(n=573)

他組織との連携の目的

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査報告2012」 NISTEP REPORT No155の表7-3をもとに作成

企業が他組織と連携を行う目的・効果

他組織との連携の効果

11.8%

15.9%

22.1%

32.6%

39.9%

ライセンス導出される特許数の増加(n=107)

全社利益率の向上(n=144)

過去3年間に投入した新製品・サービスの売上の増加(n=200)

全社売上の増加(n=294)

研究開発コストの低減(n=360)

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査報告2012」 NISTEP REPORT No155の表7-10をもとに作成

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外部連携組織別に見た場合、企業は外部連携相手先として大学を最も選好しており、自らアプローチする割合も高い。

1.8%

5.0%

5.1%

9.2%

15.6%

17.4%

17.6%

34.2%

34.9%

42.0%

63.6%

0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0%

研究開発サービス仲介事業者(n=15)

起業家やベンチャー企業(n=42)

その他(n=43)

競合企業(n=78)

外部コンサルタントや民間研究所(n=132)

同一の業界団体等に所属する他企業(n=147)

研究開発コンソーシアム(技術研究組合等)の参加他企業(n=149)

公的研究機関(n=290)

設備や素材、部品等の供給業者(n=296)

顧客企業(n=356)

大学等(n=539)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

貴社(又は大学教員)自ら連絡・照会

大学の産学連携支援機関

業界団体・商工会議所

取引先企業

企業(又は大学教員)からの連絡・照会

学会

企業(又は大学教員)のホームページ

政府機関

研究開発独立行政法人 大学

企業

連携した外部組織・機関

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査報告2012」 NISTEP REPORT No155の表7-7をもとに作成

産学連携に参加したきっかけ

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所、一橋大学イノベーション研究センター「産学連携による知識創出とイノベーションの研究」(調査資料-221)

企業と大学の連携

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○企業は、研究開発活動における外部の他組織との連携度が20%超40%以下の場合に、画

期的な新製品・サービス・工程の実現度が最も高くなり、連携度に関わらず、外部の他組織と連携している場合は、全く連携していない場合に比べて画期的な新製品・サービス・工程の実現度が高い。 ○大学との外部連携にはプロダクト・イノベーションを促進する効果があり、その効果は成熟企業よりも新規開業企業において顕著である。

0.364

0.655 0.665

0.777

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

No Yes

University cooperations

Start-up firm

Established firm

企業が他組織と連携を行う効果

大学との外部連携がプロダクト・イノベーションに与える効果

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「R&D, innovation, and business performance of Japanese start-ups: A comparison with established firms」(DISCUSSION PAPER No.104) 注)グラフの縦軸は3年間に1つ以上のプロダクト・イノベーションを導入する確率 ※新規開業企業(Start-up firm):製造業又はソフトウェア業に属し、開業から2年未満の企業 ※成熟企業(Established firm):開業から2年以上経過している企業

6.8%

20.7%

27.1%

15.9%

12.1%

18.2%

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%新製品・サービス・工程の実現度

研究開発活動における他組織との連携度 (平均19.7%、N=808)

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査報告2012」(NISTEP REPORT No155)

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地域企業との産学連携

41.9% 37.6%

28.0% 25.8%

22.6% 16.1%

6.5% 2.2%

11.8% 1.1%

大学・高専の先生と以前から付き合いがあった

大学・高専の卒業生が社員にいた

行政や商工会議所等から紹介された

大学・高専のコーディネーターに紹介された

大学が開催した企業向け技術発表会に参加して

大学・高専の先生から申し入れがあった

大学・高専のホームページを見て

テレビ、新聞、専門誌等で知った

その他

不 明

○地域では、特に2005年以降産学連携が活発になっている。 ○地域企業との産学連携のきっかけについて、いずれの県においても、1位は「大学・高専の先生と以前から付き合いがあった」という回答である。2位以降は、県によりばらつきがみられ

るが、「卒業生が社員にいた」、「行政や商工会議所から紹介された」、「大学・高専のコーディネーターに紹介された」などのきっかけが比較的高い割合でみられる。

産学連携の開始時期

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所 「山形県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.90) 「群馬県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.91) 「長野県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.92) 「中京圏(愛知県・岐阜県・三重県)における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.97) 「福井県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.99) 「岡山県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.100) 「広島県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.101)

産学連携のきっかけ(広島県の例)

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「広島県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.101)

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○ 地域企業は大学に対し、製品化に直結する研究開発を期待しており、次いで、技術相談、研究装置・設備の利用、基礎研究推進への要望が多い。 ○ 産学連携プロジェクトから出た最重要特許の商業化及び売上への貢献については、企業規模が小さいほど商業化率と売上への貢献度が上昇しているなど、企業規模によって、産学連携特許に対する態度が異なる。

地域企業・中小企業との産学連携

51

31

10

8

4

6

2

0

0

1

19

27

20

14

11

5

6

5

3

0

12

19

12

18

20

6

10

4

1

0

203

166

82

70

54

34

28

14

7

3

0 50 100 150 200 250

製品化に直結する研究開発

技術相談

研究装置・設備の利用促進

基礎研究の推進

技術情報の収集・分析・発信

学生の地元企業就職

社会人技術者の人材育成

知的財産権の取得・活用に関する支援

学生の受入・人材育成

その他

1位

2位

3位

得点

大学への要望(信州大学の例)

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「長野県における国立大学等と地域企業の連携に関する調査報告」(DISCUSSION PAPER No.92)

16%

45% 28%

10%

46%

17% 40%

50%

38% 38% 32% 40%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

全企業(N=668) 小規模事業者(N=29) 中小企業(N=151) 大企業(N=476)

活用 非活用 検討中

6% 15%

2% 0%

21%

38%

15% 20%

61%

31%

68% 70%

12% 15% 15% 10%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

全企業(N=108) 小規模事業者(N=13) 中小企業(N=41) 大企業(N=49)

大いに貢献 貢献 少し貢献 貢献せず

産学連携プロジェクトから創出された最重要特許の商業化率

最重要発明の売上への貢献

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所、一橋大学イノベーション研究センター「産学連携による知識創出とイノベーションの研究」(調査資料-221)図表8-6をもとに作成

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企業が大学との連携に期待している目的及び効果を、より正確に把握し、産学連携政策・戦略を立案する必要がある。その際、企業の主観に加えて、客観的な効果指標を開発する必要がある。 また、地域企業・中小企業との産学連携については、独自の指標や分析枠組みが必要となることに留意が必要である。

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3.大学からみた産学連携

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大学研究者にとって、産学連携に参加する動機は「科学的発見、技術的知見などの実用化による社会還元」が最も大きく、次いで、「研究資金の確保」が大きい。また、「実用化に向けた社会動向の把握」、「人材育成(参画した研究者・学生の資質向上)」、「企業との人的・組織的ネットワークの形成」なども、ある程度重視されている。

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

科学的発見、技術的知見などの実用化による社会還元

研究機器やリサーチマテリアルへのアクセス

研究開発のスピードアップ

企業との人的・組織的ネットワークの形成

企業からのノウハウ獲得

人材育成(参画した研究者・学生の質的向上)

学外での知名度向上

学内における研究開発活動の正当性確保

実用化に向けた社会動向の把握

研究資金の確保

非常に重要である 重要である どちらでもない 重要でない 全く重要でない

大学研究者から見た産学連携への参加の動機

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所、一橋大学イノベーション研究センター「産学連携による知識創出とイノベーションの研究」(調査資料-221)

大学研究者から見た産学連携への参加の動機

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米国との比較において、日本のトップレベル研究者は、現実の具体的な問題解決を、研究プロジェクトの非常に重要な動機と考える割合が低い可能性がある。

(a)日本 (b)米国 参考) ストークスによる研究の分類

それ以外 非常に重要 計 それ以外 非常に重要 計用途を

考慮しない用途を考慮

非常

に重

45% 15% 60%非

常に

重要

46% 33% 79%

根本

原理

の追

Pure basicresearch(ボーア)

Use-inspiredbasic

research(パスツール)

それ

以外

25% 15% 40%

それ

以外

9% 11% 21%

根本

原理

の追

求で

はな

Pure appliedresearch(エジソン)

計 70% 30% 100% 計 56% 44% 100%

現実の具体的な問題解決 現実の具体的な問題解決

基礎

原理

の追

基礎

原理

の追

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所・一橋大学イノベーション研究センター、ジョージア工科大学「科学における知識生産プロセス:日米の科学者に対する大規模調査からの主要な発見事実」(調査資料-203) (注)高被引用度論文産出群:各分野において被引用数上位1%の高被引用度論文を生み出した研究プロジェクト

ストークスに従った研究プロジェクトの分類(高被引用度論文産出群)

研究プロジェクトの重要な動機

25% 9%

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○大学、企業とも、大学や公的研究機関の知的財産の民間における活用を進めるうえで優先的に実施すべきことは、独創的な研究が生まれる環境の構築であると感じている。次いで、大学、企業双方向の情報発信が重要であると考えられている。 ○大学は、基礎研究力強化のためには、研究時間の増加が必要と考えているが、企業は、質の面に関する業績評価と研究者へのインセンティブ付与が不十分と見ている。また、大学では、若手研究者や研究支援者の増加の必要性の認識が高い。

大学や公的研究機関の知的財産の民間活用を進めるうえで 優先的に実施すべきこと

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2012)」NISTEP REPORT No.153

大学の基礎研究力を強化するために優先的に実施すべきこと 大学や公的研究機関の知的財産の民間における活用を進めるうえで優先的に実施すべきこと

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大学におけるプレ研究(シーズを開発した研究)と産学連携プロジェクトの最大の資金源は同一である場合が多い。また、所属機関の内部研究費及び科学研究費補助金は、産学連携プロジェクトにおいて民間資金が導入されるシーズの開発に貢献している件数が多い。

大学における研究の資金源と産学連携プロジェクトの資金源の関係

大学におけるプレ研究の資金源と産学連携プロジェクトの資金源の関係(単位:件数)

N=528 全セルのうち、黄色:上位30% ピンク:上位10% 出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所、一橋大学イノベーション研究センター「産学連携による知識創出とイノベーションの研究」(調査資料-221)

1研究チームのメンバーが属する機関(日本以外の機関を含む)の研究費・校費など

2機関を対象とする公募型研究資金(21世紀COEなど)

3科学研究費補助金

4科学技術振興機構(JST)

5新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

6その他公募型研究資金

7非公募型研究資金(政府主導の国家プロジェクトなど)

8都道府県(国以外)からの外部資金

9民間企業(日本)からの外部資金

10海外からの外部資金

11上記以外の外部資金(財団などから)

1研究チームのメンバーが属する機関(日本以外の機関を含む)の研究費・校費など

86 2 4 2 6 3 1 2 42 1 2

2機関を対象とする公募型研究資金(21世紀COEなど)

3 22 5 3 6 1 1 0 3 0 1

3科学研究費補助金 5 2 33 3 3 4 0 3 14 0 1

4科学技術振興機構(JST) 3 0 1 26 1 2 0 0 4 0 1

5新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

2 2 0 1 25 0 0 0 1 0 1

6その他公募型研究資金 1 0 0 1 1 11 0 1 3 0 0

7非公募型研究資金(政府主導の国家プロジェクトなど)

1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0

8都道府県(国以外)からの外部資金

2 0 0 1 0 1 0 5 2 0 1

9民間企業(日本)からの外部資金

16 1 6 2 3 1 0 3 121 2 0

10海外からの外部資金 1 0 0 0 0 0 0 0 2 1 0

11上記以外の外部資金(財団などから)

2 1 1 0 0 0 0 0 4 0 7

産学連携プロジェクト

プレ研究

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○大学は、大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)などを

活用して、自大学の共同研究、受託研究の実績等から、産学連携に係る自大学の強み、弱みを分析し、エビデンス(客観的データ)に基づく効果的・効率的な産学連携戦略を立案する必要がある。 ○各大学の産学連携戦略は多様であり得るが、世界水準の独創的な研究を生み出す環境の整備は共通の課題である。そのためには、研究の質的側面に関する評価指標の開発・活用の促進、若手研究者の支援、図書館・URA等研

究支援インフラの効果的活用等が求められる。また、短期的な成果を求める企業に対しては、大学の研究への理解と尊重を求める交渉力等も必要であろう。

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大学等発ベンチャーへの支援として、国や関連団体からの資金的支援は最重要であるが、大学等からの支援では、アドバイスや施設・設備、土地の支援が有効である。

58.4% 13.4% 16.3% 11.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

過去3年(2008‐10年度)以内に利用した

これまで利用したことがあるが、過去3年以内には利用していない

これまで利用したことはないが、今後は利用したい

これまで利用したことはなく、今後も利用する予定はない

利用したことがない 利用したことがある

(N=515)

大学等発ベンチャー

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「大学発ベンチャー調査2011」(調査資料No.205)

業種別経営者の前職内訳

公的支援の利用状況

利用して最もよかった公的支援

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大学が生み出した、新しい価値や技術を実用化するためには、既存企業のみならず、ベンチャー、NPOなどの新しい社

会サービスの提供者や自治体等との連携も重要である。こうした新しい連携の実態が明らかとなっていないことから今後の調査分析が望まれる。