糖尿病ネットワーク Diabetes Net. - JDCSにみる 糖 …1...

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1 国や地域の疾病構造は人種や社会環境によって大 きく異なり、また疾患名が同一でも病態が同じと は言えない。2 型糖尿病も例外ではなく、例えば日 本人患者の平均 BMI は一般住民とほぼ同等であり、 欧米人患者のような高度肥満患者は少ない。好発す る合併症やその危険因子も同様に、欧米人と日本人 とで差異が存在することから、人種差に配慮した治 療戦略が求められる。このように、欧米人以外の糖 尿病の臨床像が明らかになり、人種差に配慮した治 療法研究の機運が高まった背景には、「The Japan Diabetes Complications Study(JDCS)」の報告の 影響も大きい。 JDCS は 1996 年にスタートし、現在も進行中の 日本人 2 型糖尿病患者を対象とする大規模臨床研究 だ。糖尿病専門医療機関(主に大学病院)59 施設 に通院中の 2,000 名強の患者(平均年齢 59 歳、平 均罹病期間 11 年)を 2 群に分け、一方を生活習慣 改善指導を積極的に行う「介入群」とし、対照はそ れまでの外来治療を継続する「非介入群」としている。 これまでに JDCS からは日本人糖尿病患者に関す る数々の報告がなされてきた。網膜症や腎症の発症・ 進展と HbA1C は、DCCT や UKPDS の報告と同様 に非常によく相関することも明らかにされている。 一方、生活習慣介入による糖尿病発症抑制効果は 多数の報告があるものの、糖尿病発症後の合併症発 症を生活習慣介入で抑制し得たとの報告は、国内外 問わずほとんどない。事実、JDCS においても生活 習慣介入によって得られた HbA1C 改善効果は、開 始 1 年目から 5 年目の間のみにみられ、その差は 0.2%とわずかであり、合併症の発症率もこれまで 差がなかった。もっとも JDCS では、介入群・非 介入群ともに糖尿病専門医のもと、ガイドライン推 奨値を目標に治療されているため、その臨床像に差 が生じにくいという背景が以前より指摘されていた。 糖尿病の合併症 最近の話題 JDCSにみる糖尿病の合併症 筑波大学大学院 疾患制御医学専攻 水戸地 域医療教育センター 代謝内分泌内科 教授 曽根博仁氏 ……………………………… DIABETES NEWS ……………………… 事例研究 フットケア・フロントライン 小倉記念病院循環器科 ……… CONTENTS 文献 Pick Up 血中トリグリセライド値が 糖尿病神経障害の進展と相関 …… 学会レポート 15回 日本糖尿病眼学会 21 回 日本糖尿病性腎症研究会 44回 日本成人病 (生活習慣病) 学会 8回 日本フットケア学会 …………… Column インクレチン関連薬が続々と。 膵保護作用などに期待集まる …… 欧米人以外の糖尿病の実態を 初めて明らかにしたJDCS JDCSにみる 糖尿病の合併症 糖尿病の合併症 最近の話題 曽根博仁筑波大学大学院 疾患制御医学専攻 水戸地 域医療教育センター 代謝内分泌内科 教授 筑波大学医学専門学群卒業後、米国ミシガ ン大学医学部代謝内分泌内科研究員、筑波 大学院臨床医学系内分泌代謝・糖尿病内科 講師、お茶の水女子大学大学院生活習慣病 医科学准教授などを経て、2009年から現職。 3 1 4 6 7 8 糖尿病発症後でも生活習慣介入 で、脳卒中が有意に抑制される V o l . 2 N o . 1 2 0 1 0

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 国や地域の疾病構造は人種や社会環境によって大

きく異なり、また疾患名が同一でも病態が同じと

は言えない。2 型糖尿病も例外ではなく、例えば日

本人患者の平均 BMI は一般住民とほぼ同等であり、

欧米人患者のような高度肥満患者は少ない。好発す

る合併症やその危険因子も同様に、欧米人と日本人

とで差異が存在することから、人種差に配慮した治

療戦略が求められる。このように、欧米人以外の糖

尿病の臨床像が明らかになり、人種差に配慮した治

療法研究の機運が高まった背景には、「The Japan

Diabetes Complications Study(JDCS)」の報告の

影響も大きい。

 JDCS は 1996 年にスタートし、現在も進行中の

日本人 2 型糖尿病患者を対象とする大規模臨床研究

だ。糖尿病専門医療機関(主に大学病院)59 施設

に通院中の 2,000 名強の患者(平均年齢 59 歳、平

均罹病期間 11 年)を 2 群に分け、一方を生活習慣

改善指導を積極的に行う「介入群」とし、対照はそ

れまでの外来治療を継続する「非介入群」としている。

 これまでに JDCS からは日本人糖尿病患者に関す

る数々の報告がなされてきた。網膜症や腎症の発症・

進展と HbA1C は、DCCT や UKPDS の報告と同様

に非常によく相関することも明らかにされている。

 一方、生活習慣介入による糖尿病発症抑制効果は

多数の報告があるものの、糖尿病発症後の合併症発

症を生活習慣介入で抑制し得たとの報告は、国内外

問わずほとんどない。事実、JDCS においても生活

習慣介入によって得られた HbA1C 改善効果は、開

始 1 年目から 5 年目の間のみにみられ、その差は

0.2%とわずかであり、合併症の発症率もこれまで

差がなかった。もっとも JDCS では、介入群・非

介入群ともに糖尿病専門医のもと、ガイドライン推

奨値を目標に治療されているため、その臨床像に差

が生じにくいという背景が以前より指摘されていた。

糖尿病の合併症 最近の話題

JDCSにみる糖尿病の合併症筑波大学大学院 疾患制御医学専攻 水戸地域医療教育センター 代謝内分泌内科 教授曽根博仁氏 ………………………………

DIABETES NEWS ………………………

事例研究 フットケア・フロントライン

小倉記念病院循環器科 ………

CONTENTS文献 Pick Up血中トリグリセライド値が糖尿病神経障害の進展と相関 ……

学会レポート第15回 日本糖尿病眼学会第21回 日本糖尿病性腎症研究会第44回 日本成人病(生活習慣病)学会第8回 日本フットケア学会 ……………

Columnインクレチン関連薬が続々と。膵保護作用などに期待集まる……

欧米人以外の糖尿病の実態を初めて明らかにしたJDCS

JDCSにみる糖尿病の合併症

◆糖尿病の合併症 最近の話題

曽根博仁氏筑波大学大学院 疾患制御医学専攻 水戸地域医療教育センター 代謝内分泌内科 教授

筑波大学医学専門学群卒業後、米国ミシガン大学医学部代謝内分泌内科研究員、筑波大学院臨床医学系内分泌代謝・糖尿病内科講師、お茶の水女子大学大学院生活習慣病医科学准教授などを経て、2009年から現職。

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糖尿病発症後でも生活習慣介入で、脳卒中が有意に抑制される

Vol.2 No.1

2010

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(年)

(年)

(年)

(logrank test)

〔Sone H, et al : Diabetologia 53 : 419-428,2010〕

(年)

0.3 0.3

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図1  JDCS 8年次報告における合併症発症率

発症率

発症率

0.3 0.3

0.2 0.2

0.1 0.1

0.0

発症率

発症率

非介入群介入群

腎症 (p=1.00)

冠動脈疾患 (p=0.40)

網膜症 (p=0.43)

脳卒中 (p=0.02)

 ところがごく最近の JDCS 8 年次中間報告では、

脳卒中の発症率に両群間の有意差が認められた。非

介入群の脳卒中発症件数が 1,000 人・年あたり 9.52

件であったのに対し、介入群では 5.48 件と約 40%

有意に少なかったのである(図 1)。この結果は糖

尿病発症後の生活習慣改善による合併症抑制効果を

示した初の報告として注目される。

 なお、多変量解析により脳卒中発症に関与する因

子として、収縮期血圧と Lp(a)が検出された。しか

し介入群と非介入群の比較では収縮期血圧、Lp(a)

ともに有意差はなく、8 年経過した時点で唯一、有

意な群間差がみられたのは血清トリグリセライド

(TG)値のみであった。

 「糖尿病患者では、日本人でも脳卒中より冠動脈

疾患の発症率のほうが高い」ことも JDCS により

明らかになった知見だ。JDCS の 9 年次報告による

と、1000 人・年あたりの冠動脈疾患発症件数は 9.6

で、脳卒中の 7.6 より高い。久山町研究でも明らか

なように、日本人の一般住民では未だ脳卒中発症の

方が冠動脈疾患より多いが、糖尿病患者に限っては

それが逆転しており、UKPDS などでみられる欧米

人ほどではないものの、それに近付きつつあること

がわかる(表 1)。

 冠動脈疾患は糖尿病に特異的な合併症ではないが、

初回の血管イベントが生命予後にも直結することも

稀でないことから、その抑止は糖尿病治療上の重要

な課題である。JDCS から冠動脈疾患の危険因子を

検討したところ、密接な関係があった因子として

LDL─Cや年齢とともに TG が、HbA1C や C─ペプ

チド、男性、喫煙より上位にあがった(表 2)。こ

のことから、LDL─C が高ければそれを下げるべき

であるのは論をまたないものの、高 TG 血症も決し

て看過すべきではないことがわかる。

 糖尿病に多く伴う脂質異常症は高 TG 血症と低

HDL─C 血症である。現行の各種ガイドラインでは

スタチンが第一選択薬として推奨されることが多い

が、大血管障害の抑制には、病態に則してフィブラ

ート等の使用を優先すべきケースも少なくないので

はないかと考える。

 フェノフィブラートを用いて糖尿病合併症抑制効

果を検証した大規模臨床試験「FIELD」では、フ

ェノフィブラートによる心血管イベント発症率の有

意な低下とともに、網膜症や腎症の有意な抑制も報

告されている。これは、TG コントロールが大血管

障害のみならず、糖尿病特有の細小血管障害の抑制

にも欠かせないことを示唆するものと言える。

 ところで、糖尿病合併症のうち、細小血管障害に

基づく網膜症や腎症、神経障害は糖尿病発症後に(血

糖値が診断基準を満たす状態で)発症・進行するが、

大血管障害に基づく冠動脈疾患や脳卒中などは、糖

尿病の発症前から(食後高血糖を呈すのみの軽度の

耐糖能異常の段階でも)進行することが、舟形町研

究などから知られている。

 JDCS の対象患者を登録時の HbA1C で 4 つに層

別化し、6 年後の変化を比較したところ、登録時

HbA1C が 7.5%未満と比較的良好であった分位では

HbA1C が悪化しており、登録時 HbA1C が 7.5%以

上の比較的不良であった分位では改善していた。ま

た、登録時の年齢で層別化すると、最も若い分位で

HbA1C の悪化がみられた。

 この事実と前述の「大血管障害は糖代謝異常が軽

度の段階から進行する」という点とを勘案すると、

発症早期からの厳格な血糖と脂質のコントロールが

より強調される必要があると言えよう。そして、「早

期からの合併症予防」をさらに確実なものとするに

は、メタボリックシンドローム(Met ─S)への介

より早期からのより厳格な血糖・TG管理の必要性

日本人でも糖尿病では冠疾患が多く、高TGが重大なリスク

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表1 日本人2型糖尿病患者、一般住民ならびに英国糖尿病患者の心血管疾患発症率(1,000人・年あたりの発症数)

表2 JDCS 9年次報告における日本人2型糖尿病患者の大血管障害リスクファクター1)

※約30%の糖尿病・耐糖能異常者を含む

1)JDCS平成21年度総括研究報告書 2)Kubo M, et al : Stroke 34 : 2349-2354, 2003 3)UKPDS Group : Lancet 352 : 837-853, 1998カッコ内の数値はp値。Cox回帰分析、変数減少法、年齢性別調整

日本人2型糖尿病患者(JDCS 9年次)1) 9.6(男 11.2 /女 7.9) 7.6(男 8.5 /女 6.6)

日本人一般住民(久山町研究第3集団※)2) 男 3.5 /女 1.8 男 5.3 /女 3.9

英国人2型糖尿病患者(UKPDS 対照群)3) 17.4 5.0

冠動脈疾患 LDL─C(0.000)、年齢(0.003)、トリグリセライド(0.005)、HbA1C(0.027)、 C─ペプチド(0.041)、性別(0.054)、タバコ(0.064)

脳卒中 収縮期血圧(0.043)、年齢(0.161)、性別(0.171)

冠動脈疾患 脳卒中

 病院と診療所での再診料統一の

話題など、社会的な注目を集めた

平成 22 年度の診療報酬改定だが、

糖尿病診療関連では 2 件新たに

算定を認められた。

 一つは「皮下連続式グルコース」

で、いわゆる CGM(Continuous

Glucose Monitoring)のこと。「5

年以上の経験を有する常勤専門医

が 2 名以上」といった条件のもと、

一連の処置で 700 点算定可能と

なった。創傷治療のための「局所

陰圧閉鎖処置」は感染防止や治癒

促進効果が認められ、糖尿病下肢

病変の治療への応用も見込まれる。

被覆材の面積等により 1日 900〜

1900 点算定でき、初回は 1690 〜

3300 点加算できる。

 厚生労働科学研究「メタボリッ

クシンドロームの診断・管理のエ

ビデンス創出のための横断・縦断

研究」の概要が報告され、危険因

子数が 1 を超える腹囲は、男性で

80 〜 85cm、女性では 85 〜 90cm

であり、現行の診断基準と合致し

た。心血管疾患の相対的リスクの

検討では、男性 85cm 前後、女性

80cm 前後がカットオフ値と算出

されたが、「健診事業における基

準値は費用対効果等も勘案して検

討すべき」と報告されている。

 東京大学の門脇 孝氏・山内正敏

氏らの研究グループは、アディポ

ネクチンが糖や脂肪の燃焼を促進

する過程を明らかにし 誌電

子版(4/1)に発表した。骨格筋細

胞においてミトコンドリアの量と

機能に関与している PGC-1   を、

アディポネクチンが複数の経路で

活性化し、そのメカニズムは運動

療法の効果に類似しているという。

“運動模倣薬”的な新薬の期待も。

入が視野に入ってくる。

 Met─S は本来、糖尿病や高血圧、脂質異常症の

診断基準には該当しない者の中に隠れている心血管

疾患ハイリスク患者を割り出すために定義されたも

のだが、糖尿病発症後であれば無関係というもので

もない。例えば、遺伝的に日本人に近いとされる米

国原住民を対象とした調査では、糖尿病であっても

Met─S の構成因子を保有していなければ心血管疾

患発症リスクは必ずしも上昇しないという報告がみ

られている。

 そこで JDCS のデータから、効率よく心血管疾患

ハイリスク患者を拾い上げ得る臨床検査のカットオ

フ値を検討した。Met─S はマスチプルリスクファ

クターであるため診断基準は複雑にならざるを得ず、

さまざまな臨床研究を基に腹囲や血糖、血圧、血清

脂質のカットオフ値が提案されているが、JDCS で

心血管疾患発症と相関したのは「TG が 150mg/dL

以上」のみであった。

 中国人糖尿病患者を対象とした香港での調査研究

でも、高 TG 血症が心血管疾患の独立した危険因子

であると報告されている。生活環境の欧米化ととも

に日本人全体の疾病構造が欧米のそれに近付きつつ

あるものの、未だコレステロールの影響は欧米人よ

りも少ないと言え、それだけに糖尿病とそれに伴う

高 TG 血症が極めて重要と考えられる。

DIABETES NEWS

◆糖尿病の合併症 最近の話題

メタボ健診の腹囲基準、厚生労働研究で科学的裏付け

アディポネクチンに運動療法と同様の作用。東大グループが解明

診療報酬改定。CGMや局所陰圧閉鎖処置等、糖尿病関連で新設も

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 「フットケアで大切なことは『足を守って、その

次になにをするのか』。その答えは運動です。動脈

硬化性疾患の治療においてはまず患者さんが十分な

運動療法をできるか否かを確認し、できないのなら

下肢の疾患を疑うべきです」。こう語るのは、小倉

記念病院循環器科の診療部長・横よこ

井い

宏ひろよし

佳氏だ。

 小倉記念病院と言えば PCI(冠動脈インターベー

ション)の実績で全国に名を知られている。横井氏

も約 20 年前に赴任してから「虚血性心疾患の患者

さんに長生きしていただくことを目指して PCI 治

療に専念していた」そうだ。その横井氏がフットケ

アの重要性に気付き力を注ぐようになった経緯は、

現在国内で広がりつつある糖尿病足病変診療をより

重みのあるものにし、患者の予後を改善する可能性

を示唆している。

 事の始まりは「循環器医は心臓だけを診ていては

いけない」と実感したことだという。

 「薬剤溶出ステントが登場して再狭窄は減ったの

に生命予後はベアメタルステントと大差ないことが

今、トピックになっていますが、当院は PCI 件数

が多いこともあって、約 10 年前すでに同じ経験を

していました。ベアメタルステントを入れた患者さ

んと、それ以前にバルーン拡

張のみで治療した患者さんを

比較したところ、再狭窄は半

分に低下したにもかかわらず

生存率にほとんど差がなかっ

たのです」。この事実に驚き

死因を調べると、冠動脈以外

の血管病で亡くなっている

方が 20%を占めていた。ま

た、心疾患で亡くなった方も、

PCI の対象でなかった軽度の狭窄箇所のプラーク破

裂が原因と推測された。これにより、患者の予後改

善には PCI 後の生活習慣の改善(禁煙・食事・運動)

が重要だと判断した横井氏が中心となり、全身の血

管を保護しプラークを安定化させる治療の一環とし

て、2001 年に心臓リハビリテーション室を開設する。

 ところがそのスタートで新たな課題にぶつかる。

「リハビリのために運動を処方し、ご本人もやる気

があるのに運動できない患者さんが少なくないので

す」。原因は間歇性跛行。ようやく足の重要性に気

付き、血管検査を充実させるために 2003 年に血管

エコーラボを設置する。それがまた新たな展開へと

つながる。「外来で足を触り、冷たければすぐに検

査をオーダーします。すると下肢動脈閉塞が次々と

見つかるのです」。循環器科単独でのマネージメン

トの限界に達し、外部から専門ドクターを招いて血

管外科を開設。これで下肢虚血に対する診療体制が

整った。そこで横井氏は、次のステップへと新たな

活動を始動する。

 「下肢虚血の治療には血行再建が不可欠です。し

かしそれは言わば最終段階の治療であり、ステント

やバイパスでとことん頑張っても救えない足があり

ます」。そうであれば、下肢虚血の患者へ予防的に

介入すべきだろう。循環器を中心とする急性期病院

である同院には、あらゆる診療科に下肢虚血のある

患者が存在する。それらの患者を早期発見するため

に横井氏は、診療科の枠を超えて医師・コメディカ

ルスタッフが参加する「フットケアカンファレンス」

の開催を企画する。このカンファレンスは現在も月

に約 1 回のペースで続けられ、患者の足を守るため

互いの情報を交換しあい、最適な治療法を探り、意

思疎通を図る場として機能している。

冠動脈インターベーションで長年、全国トップレベルの実績を維持している小倉記念病院。冠疾患の急性期病院が糖尿病フットケアに注力するその理由は?

事例研究 フットケア・フロントライン

小倉記念病院すべての患者にフットケアを。循環器科から始まった取組み

命を守るために足を守る。Legs for Life ──

心臓リハビリテーション室の立ち上げと、血管エコーラボの開設

フットケアカンファレンスの開始と糖尿病ケアチームの設置

横井宏佳氏

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 このように、同院のフットケア診療体制は順調に

確立されてきた。一方で同院は 600 床を超え、し

かも循環器に力を入れているため糖尿病患者が多い

が、糖尿病専門医が充足できなくなってしまったの

だ。下肢病変診療における糖尿病の重要性は言うま

でもない。

 この危機に、横井氏らはコメディカルのパワー

を最大限に活用して乗り切ろうとする。「糖尿病は

すでに common な疾患です。実際、糖尿病と診断

されていない当院の入院患者に循環器科で糖負荷

試験を施行していますが、7 割が糖尿病か耐糖能異

常です。これだけ多くの糖代謝異常患者さんを診

るには、専門医でなく誰でもある程度のことはで

きなければならない。そこで、入院患者の栄養管

理のために NST、感染症管理のために ICT がある

ように、糖尿病管理のために DCT(Diabetic Care

Team)というシステムがあってもよいと思ったの

です」。こうして、糖尿病専門医の下に糖尿病看護

認定看護師である砂すなやまひろ

山裕子こ

氏を配置し、さらに各

病棟に Diabetic Care Nurse(多くは糖尿病療養指

導士)を配置するという DCT の体制が構築された。

糖尿病治療については専門医が指示を出すと、それ

が診療科や主治医の垣根を超え院内すべての患者に

適用される。多数の診療科にまたがる横断的な管理

システムとなると、スムーズに事が運ばないことが

多い。しかし糖尿病ケアについての責任者にあたる

砂山氏によると、「どの科のドクターも協力的でと

てもやりやすい」という。そして「私自身もこの仕

事専任となり、時間的な余裕もできて、病棟で患者

さんに接する時間が増えた」とこのシス

テムのメリットを語る。

 横井氏は今、この DCT を利用すれば

下肢病変のより早期介入が可能ではない

かと企画中だ。現在もすでに入院患者が

退院する際、DCT の看護師がフットケ

アの基本的指導を行っているが、これを

拡大し「常日頃からコメディカルが病棟

を回るとき、見脈して血圧を計ったあと、

足を見て触ってほしい。傷があったり冷

たいとか脈が触れないなどがあれば、す

ぐに主治医に伝えるということを、すべ

ての病棟ナースが当たり前に行うように

したい」と、具体的な未来図を描いてる。

 インタビューの最後に、近年の糖尿病足病変の傾

向を伺った。

 「糖尿病足病変には二つのタイプがあります。一

つは従来からあるタイプで microangiopathy に、

神経障害や易感染が絡み合って進行するケースです。

無自覚に経過してしかも進行が早く治療に難渋しま

す。もう一つは、いわゆるメタボリックシンドロー

ムの軽症糖尿病で macroangiopathy によって下肢

虚血を呈するケースです。近年増加しているのは後

者です。この場合、血糖管理にはインスリン感受性

を改善するタイプの薬を積極的に使います。運動に

もその効果を期待できます。運動は血糖管理手段と

してだけでなく、動脈硬化を抑制する手段としてや、

血管内皮機能改善・側副血行路形成を介して心臓や

足を守る手段として絶対に欠かせません。そのため

にフットケアが必要なのです。もちろん薬物療法も

重要です。動脈硬化に対してはスタチンによる脂質

の‘量’を下げる治療が限界に近付いていますので、

これからは脂質の‘質’を改善する戦略が必要だと

思います。FIELD 試験で単剤で初めて下肢切断を

減少させるというエビデンスが確立したフェノフィ

ブラートなども、その可能性をもっている薬剤だと

考えています」。

 横井氏は 2011 年の第 9 回日本フットケア学会年

次学術集会会長を務める。学会のテーマは「足は第

二の心臓」。広く知られたこの見方には、非常に深

長な意味がこめられていると言える。つまりそれは、

患者の命を守る前提として、足を守らなければいけ

ない、ということだろう。

「足は第二の心臓」── Legs for Life ──

小倉記念病院循環器科の下肢診療・フットケアの位置づけ

糖尿病における下肢診療

糖尿病

足病変

大血管障害

細小血管障害

神経障害や易感染

フットケア

横井氏が重視する下肢診療

運動療法

健康な足の維持 フットケア

インスリンの節約血糖コントロール 心血管障害

内皮機能改善、側副血行路形成

血行再建術

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腓腹神経有髄線維密度が52週経過後も変化していなかった群(上図 左)と、明らかに減少していた群(同 右)に分類。ベースラインにおいて両群間には、トリグリセライド値(下図 左)と、腓骨運動神経伝導速度(下図 右)に有意な差があった。

***p<0.0001

*p<0.05**p<0.01

(Diabetes 58 : 1634-1640, 2009)

(本/mm2)

(mg/dL) (m/秒)

腓腹神経有髄線維密度

ベースライン

ベースライン

神経障害不変群

神経障害不変群神経障害

進行群

神経障害進行群

52週経過後 52週

経過後

5000

443.0 50

4000

354.4 40

3000

265.8 30

2000

177.2 20

1000

88.6 10

0

0 0

神経障害不変群

ベースラインでのトリグリセライド値

ベースラインでの腓骨運動神経伝導速度

神経障害進行群

***

***

 神経障害は糖尿病で最も頻度の

高い合併症であり、患者の 6 割に

生ずるとされる。その発症・進展

に強い影響を及ぼす因子として古

くより高血糖の存在が規定されて

いる。

 しかし最近の大規模スタディの

一つ、1 型糖尿病患者を対象に行

われた EURODIAB 前向き合併症

研究では、血糖関連指標のほかに、

トリグリセライド(TG)値、血圧、

BMI、喫煙などが神経障害進展

の危険因子であることが示された。

また、2 型糖尿病患者を対象に行

われた FIELD からは、TG 値を

コントロールすることで神経障害

等に起因する下肢切断が抑制され

る結果も得られている。これらよ

り、近年、糖尿病に伴う脂質異常

症も神経障害進展の危険因子であ

る可能性が注目されている。

 このような背景から、本論文の

著者らは、糖尿病神経障害に対す

るアセチル� L �カルニチンによ

る介入試験のデータを解析。試験

開始時点における TG 値と 52 週

後の神経障害の進展が有意に相関

していたことから、「脂質異常症

が神経障害進展にかかわるとの新

しい知見を支持する結果だ」と報

告した。

 この研究の対象は、アセチル�L�

カルニチンによる糖尿病神経障害

に対する介入試験の対象者 748

名のうち、腓腹神経有髄線維密度

(MFD)や腓骨運動神経伝導速度

などの数値を把握できた 427 名。

試験開始から 52 週経過した時点

で、MFD が 500 本 /mm2 以上減

少していた患者を「神経障害進行

群」、減少が 100 本/mm2 未満だっ

た患者を「神経障害不変群」に分類。

この両群について、試験開始時点

にさかのぼり、糖尿病のタイプや

インスリン療法をしているか否か

の違い、および MFD 値の差によ

る影響が生じないように調整した。

 最終的に解析対象となったのは

208 名。両群を試験開始時点にお

いて比較すると、神経障害進行群

は不変群に比べて TG 値が有意に

高く、腓骨神経における運動神経

伝導速度は有意に低値であった。

その一方で、A1C 値や腓腹神経

の感覚神経伝導速度および正中神

経の運動神経伝導速度に有意差は

認められなかった。治療薬の差異

や罹病期間、年齢、BMI は MFD

に影響を及ぼしていなかった。

 腓骨神経における運動神経伝導

速度が MFD の減少に先行して低

下していることは興味深い。腓骨

神経の代謝性機能障害が影響して

いる可能性が考えられた。また

Machine-learning paradigm を

使用した危険因子検定においても、

TG 値は糖尿病神経障害の予知因

子であることが明らかとなった。

 以上より著者らは、「軽症から

中等症の糖尿病神経障害を有する

患者からなる本コホートにおいて、

TG 高値が糖尿病罹病期間、年齢、

糖尿病のコントロール状態などの

因子と独立して、MFD の減少と

相関していた」と結論している。

脂質異常症が糖尿病神経障害の危険因子であることが示唆される

試験開始時のTG値と腓骨運動神経伝導速度が神経障害進行と有意に相関

血中トリグリセライド値が糖尿病神経障害の進展と相関Elevated triglycerides correlate with progression of diabetic neuropathyWiggin TD, et al. Diabetes 58(7); 1634-1640, 2009 監修:成

なる

瀬せ

桂けい

子こ

氏 (愛知学院大学歯学部内科学講座准教授、 名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・ 内分泌内科学講座客員研究員)

文献 Pick

Page 7: 糖尿病ネットワーク Diabetes Net. - JDCSにみる 糖 …1 国や地域の疾病構造は人種や社会環境によって大 きく異なり、また疾患名が同一でも病態が同じと

7

 金沢医科大学内分泌代謝制御学

教授の古こ や

家大だいすけ

祐氏は「糖尿病腎症

の治療戦略」をテーマに講演。治

療目標としては早期腎症の阻止、

早期腎症から顕性腎症への進行阻

止、顕性腎症から透析療法期への

進行遅延である。目標達成には、

早期腎症に対しては厳格な血糖お

よび血圧コントロールで ARB な

どの投与も効果的である。また、

一部のフィブラート製剤(フェノ

フィブラート)にはアルブミン尿

症の進行抑制あるいは改善がみら

れる報告があり、早期腎症の阻止

に有効である。顕性腎症において

も、厳格な血糖・血圧コントロー

ルを行い、さらに食塩制限・タン

パク摂取制限も行う。この病期の

血圧は治療抵抗性であり、ACE

阻害薬に加えて、Ca 拮抗薬ある

いは少量の利尿薬を併用して目標

血圧 130/80mmHg 未満を目指す。

血清クレアチニン値や尿素窒素上

昇のみられる病期のコントロール

は、経口血糖降下薬は用いず(特

にビグアナイドは禁忌)、インス

リン療法を行うなど病期に応じた

治療戦略が望まれる。

 国立国際医療研究センター病院

糖尿病・代謝症候群診療部の能の と

洋ひろし

氏は、日本人糖尿病患者を対象

とした 13 件の研究を解析し、全

癌のリスクが非糖尿病者より有意

に高かったと報告した(オッズ

比 1.70)。臓器別では肝臓癌と子

宮体癌で糖尿病によるリスク上昇

がみられた。また性別の解析では、

男性で約 1.4 倍、女性では約 1.5

 皮膚組織灌流圧(SPP)30 〜

40mmHg の下肢虚血性潰瘍では

血行再建術適用の判断が微妙だ

が、東海大学医学部形成外科の小

林めぐみ氏は難治性潰瘍で通院中

の患者 11 名(うち糖尿病患者 10

名)に対し、トラフェルミンを用

いて保存的治療の可能性を検討。

SPP50mmHg 以上の 5 例を高値

群、30mmHg 以下の 3 例を低値

群、30 〜 40mmHg の 3 例 は グ

レーゾーン群とし、治癒過程の写

真により、good、fair、poor に 3

分し評価した。結果は good 9 例、

fair 1 例(SPP 低値群)、poor 1

例(同グレーゾーン群)と、良好

な成績を示した。治療開始時点の

SPP が低値であるほど治療が長

引くものの、すべての症例で潰瘍

が縮小したことから、トラフェル

ミンの微小血管新生を介した循環

改善により、保存的治療でも治癒

に至るケースも少なくないと考え

られると結語した。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研

究科腎・免疫・内分泌代謝内科の

倍、糖尿病によりリスクが上昇す

ることがわかった。この結果から

能登氏は「糖尿病患者は高齢者や

肥満者が多く、それが交絡因子と

して影響を及ぼしている可能性は

あるものの、インスリン抵抗性と

その代償としての高インスリン血

症が発癌リスク増加に関与してい

るのではないか」とし、日本人糖

尿病患者の死亡原因の第 1 位が癌

であることから、その早期発見シ

ステム構築の必要性を強調した。

中なか

尾お

一かず

志し

氏は「糖尿病血液透析

患者におけるグリコアルブミン

(GA)値と生命予後に関する検

討」とのテーマで講演。透析患者

では HbA1C では高血糖が過小評

価されることから近年、GA によ

る評価が主流になりつつあること

を背景に、HbA1C または GA に

よる血糖管理の差を生存率で比較

した。まず、HbA1C については

透析導入前の保存期において既に

腎機能正常群に比べて有意に低下

していることに引き続き、透析導

入後は平均随時血糖値との相関が

GA に比べて弱くなることを自験

例から報告。続いて糖尿病透析患

者 98 名を GA29%以上の群と未

満の群に分け平均 47.7 カ月追跡

した結果を発表した。それによる

と高齢であることと GA 高値で

あることが死亡リスクとして浮か

び上がり、HbA1C は死亡と有意

な相関がみられなかった。これに

より GA の優位性が裏付けられ、

今後は GA の管理目標値設定が

課題になるとまとめた。

第15回日本糖尿病眼学会総会

第44回日本成人病(生活習慣病)学会学術集会

第8回日本フットケア学会年次学術集会

第21回日本糖尿病性腎症研究会

眼科医のための知ってもらいたい糖尿病合併症

シンポジウム 3

糖尿病による発癌リスクに関する日本人データのメタアナリシス

一般演題

慢性潰瘍外来通院中のSPP低値患者に対する

トラフェルミン治療症例の検討

一般演題

透析と血糖管理ワークショップ 1

2009年12月4日〜6日・名古屋、会長:旭川医科大学学長 吉田晃敏氏

2010年1月9日〜10日・東京、会長:帝京大学医学部内科学主任教授 寺本民生氏

2010年2月27日〜28日・東京、会長:東京都済生会中央病院副院長 渥美義仁氏

2009年12月5日〜6日・東京、代表世話人:横浜中央病院腎・血液浄化療法科部長 海津嘉蔵氏

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分類

DPP-4阻害薬

GLP-1アナログ製剤

一般名

シタグリプチン

ビルダグリプチン

アログリプチン

テネリグリプチン

リナグリプチン

SK-0403

サクサグリプチン

リラグルチド

エキセナチド

リキセナチド

開発・販売会社

小野薬品工業、万有製薬

ノバルティスファーマ

武田薬品工業

田辺三菱製薬

日本ベーリンガーインゲルハイム

三和化学研究所、興和

大塚製薬

ノボノルディスクファーマ

日本イーライリリー

サノフィ・アベンティス

販売・開発状況

2009年12月 発売

2010年4月 薬価収載予定

2010年2月 第一部会承認

フェーズIII

フェーズIII

フェーズIII

フェーズII(欧米では販売中)

2010年1月 正式承認

承認申請中

フェーズIII

国内の主なインクレチン関連薬 (「糖尿病リソースガイド(http://www.dm-rg.net/)」より)

 昨年 12 月、経口血糖降下薬と

して約 10 年ぶりとなる新カテ

ゴリー、DPP-4 阻害薬の第一弾、

シタグリプチンが発売されました。

年が明けて 4 月には、その第二弾、

ビルダグリプチンが薬価収載され、

続いてアログリプチンもまもなく

正式承認される予定です。

 また、DPP-4 阻害薬とともに

「インクレチン関連薬」と呼ばれ

る GLP-1 アナログ製剤も同様に、

リラグルチドが既に正式承認され

薬価収載を待つばかりとなってい

ます。これに続いてエキセナチド

が承認待ちの状態で、そのほかに

も開発の最終段階にある新薬が多

数あり、しばらくはインクレチン

関連薬のラッシュです。

 インクレチン関連薬と言えば、

血糖依存性にインスリン分泌を促

すために低血糖の不安が少ないこ

とや、インスリン分泌過剰を来さ

ず体重増加がみられないこと、ま

た、GLP-1 アナログ製剤では体重

減少作用も認められ、さらには食

欲抑制作用や動物実験レベルなが

ら膵β細胞増加作用といった、従

来の糖尿病用薬にない多面的な作

用が注目され、その登場が期待さ

れていました。

 とくに、欧米人に比べて環境因

子による軽度の負荷によりインス

リン分泌能が低下しやすい日本人

では、糖尿病発症後初期からイン

クレチン関連薬を使うことが、欧

米人以上に理にかなった方法だと

の考え方もあります。

 一方で、近年日本で増えている

糖尿病患者の多くはインスリン抵

抗性を基盤に軽度の糖代謝異常を

呈している、いわゆる“メタボ型

糖尿病”であり、動脈硬化性の合

併症を抑制するという観点からは、

インスリン分泌を増やすインクレ

チン関連薬は必ずしも第一選択で

ないとの声も聞かれます。

 病態に則してオーダーメード

であることが大切な糖尿病治療。

インクレチン関連薬を手にした

今、そのメリットを生かすために、

個々の患者さんの病態を正しく把

握することが一層重要になったと

言えそうです。

SEASONAL POST

シーズナルポスト Vol.2 No.12010年5月1日発行

監 修・企 画 協 力:糖尿病治療研究会提 供:科研製薬株式会社企画・編集・発行:糖尿病ネットワーク編集部(創新社)

2010年5月作成CLPD126-10E-20-SO1

インクレチン関連薬が続々と。膵保護作用などに期待集まる

Column