新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を 基 …synthesized the 7-iodo-Trp...
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2017年3月11日 受理* 豊田理研スカラー 静岡大学学術院工学領域化学バイオ工学系列
新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を基盤とする新たな中分子創薬戦略の開拓
新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を
基盤とする新たな中分子創薬戦略の開拓
佐 藤 浩 平*
Development of Middle Molecular Strategy Based on Efficient Synthesis of Novel Cyclic Peptide Backbone
Kohei Sato*
Streptide, isolated from Streptococcus thermophilus, possesses a unique post-translational modification
involving a covalent bond between the side chains of lysine and tryptophan. Such a cyclic mode of peptides might be useful for a peptide-based drug template. We envisioned that Xaa-Trp crosslinking would be constructed through a site-selective C–H functionalization with a 7-iodo-Trp derivative. In this study, we synthesized the 7-iodo-Trp derivative applicable to Fmoc-based solid-phase peptide synthesis. We also demonstrated that 7-iodoindole can react with a dipeptide through site-selective C–H functionalization.
1.緒言
微生物は多様な構造を有する二次代謝産物を産生し、医農薬などの生物活性分子として社会に多大な貢献をしてきた。
なかでも環状ペプチド性化合物は、低分子医薬品にはない多点間相互作用による切れ味鋭い生物活性と、環状化による活
性コンホメーション固定化や生体内安定性の向上といった特性を併せ持つ高機能分子として認識されている。ペプチドの
環化様式として炭素–炭素結合を介した環状ペプチドが天然に見出されており、化学的安定性の高さから創薬テンプレートとして期待されるが、その構築には煩雑な合成手法を要する。このため、生物活性ペプチドの高機能化を指向した環化
手法としての利用は大きく制限される。 近年、新たな環化様式として Lys の β 位炭素と Trp の側鎖インドール環 7位炭素が共有結合した新奇環状構造(Lys-Trpクロスリンク)を有する天然由来環状ペプチド streptideが同定された(図1)1。Streptideは細菌間コミュニケーション機構であるクオラムセンシングにより発
現が亢進するペプチドとして Streptococcus thermophilusから単離され、その生物機能に関心が集まっている 2。しかし、streptide生物機能に関する報告は現在までになく、特異な環化様式である Lys-Trp クロスリンク構造が生物機能、生体内安定性などの特性に与える影響に関する
知見も皆無である。そこで本研究では、streptide機能解明と Lys-Trpクロスリンク型環状ペプチドの創薬テンプレートとしての可能性を検証
するため、Xaa-Trp クロスリンク型環状ペプチド合成手法確立を目指すこととした。
2.7-ヨード Trpを利用するクロスカップリング反応を基盤とした Xaa-Trpクロスリンク構築
Yuらは Pd触媒存在下ヨードアレーンを作用させると、ペプチド N末端 β位選択的に芳香環が導入されることを報告している 3。そこで 7-ヨード Trpを配列中に含むペプチド鎖を基質として、分子内で上記クロスカップリング反応が進行すれば Xaa-Trp型クロスリンクの一般的合成手法になると考え検討を開始した(図2)。 まず 7-ヨードインドールをモデル基質としてジペプチド 2 との分子間クロスカップリングを検討したが、クロスカップリング生成物は得られなかった。そこでインドール環窒素原子を Ts基で保護したところ反応の進行が確認された(図3A)。7-ヨードインドール骨格を用いてもペプチドとのクロスカップリング反応の進行が認められたため、続いて 7-ヨ
図 1.新奇環状ペプチド streptide
新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を 基盤とする新たな中分子創薬戦略の開拓
*佐 藤 浩 平*
Development of Middle Molecular Strategy Based on Efficient Synthesis of Novel Cyclic Peptide Backbone
*kohei saTo*
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2017年3月11日 受理* 豊田理研スカラー 静岡大学学術院工学領域化学バイオ工学系列
新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を基盤とする新たな中分子創薬戦略の開拓
新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を
基盤とする新たな中分子創薬戦略の開拓
佐 藤 浩 平*
Development of Middle Molecular Strategy Based on Efficient Synthesis of Novel Cyclic Peptide Backbone
Kohei Sato*
Streptide, isolated from Streptococcus thermophilus, possesses a unique post-translational modification
involving a covalent bond between the side chains of lysine and tryptophan. Such a cyclic mode of peptides might be useful for a peptide-based drug template. We envisioned that Xaa-Trp crosslinking would be constructed through a site-selective C–H functionalization with a 7-iodo-Trp derivative. In this study, we synthesized the 7-iodo-Trp derivative applicable to Fmoc-based solid-phase peptide synthesis. We also demonstrated that 7-iodoindole can react with a dipeptide through site-selective C–H functionalization.
1.緒言
微生物は多様な構造を有する二次代謝産物を産生し、医農薬などの生物活性分子として社会に多大な貢献をしてきた。
なかでも環状ペプチド性化合物は、低分子医薬品にはない多点間相互作用による切れ味鋭い生物活性と、環状化による活
性コンホメーション固定化や生体内安定性の向上といった特性を併せ持つ高機能分子として認識されている。ペプチドの
環化様式として炭素–炭素結合を介した環状ペプチドが天然に見出されており、化学的安定性の高さから創薬テンプレートとして期待されるが、その構築には煩雑な合成手法を要する。このため、生物活性ペプチドの高機能化を指向した環化
手法としての利用は大きく制限される。 近年、新たな環化様式として Lys の β 位炭素と Trp の側鎖インドール環 7位炭素が共有結合した新奇環状構造(Lys-Trpクロスリンク)を有する天然由来環状ペプチド streptideが同定された(図1)1。Streptideは細菌間コミュニケーション機構であるクオラムセンシングにより発
現が亢進するペプチドとして Streptococcus thermophilusから単離され、その生物機能に関心が集まっている 2。しかし、streptide生物機能に関する報告は現在までになく、特異な環化様式である Lys-Trp クロスリンク構造が生物機能、生体内安定性などの特性に与える影響に関する
知見も皆無である。そこで本研究では、streptide機能解明と Lys-Trpクロスリンク型環状ペプチドの創薬テンプレートとしての可能性を検証
するため、Xaa-Trp クロスリンク型環状ペプチド合成手法確立を目指すこととした。
2.7-ヨード Trpを利用するクロスカップリング反応を基盤とした Xaa-Trpクロスリンク構築
Yuらは Pd触媒存在下ヨードアレーンを作用させると、ペプチド N末端 β位選択的に芳香環が導入されることを報告している 3。そこで 7-ヨード Trpを配列中に含むペプチド鎖を基質として、分子内で上記クロスカップリング反応が進行すれば Xaa-Trp型クロスリンクの一般的合成手法になると考え検討を開始した(図2)。 まず 7-ヨードインドールをモデル基質としてジペプチド 2 との分子間クロスカップリングを検討したが、クロスカップリング生成物は得られなかった。そこでインドール環窒素原子を Ts基で保護したところ反応の進行が確認された(図3A)。7-ヨードインドール骨格を用いてもペプチドとのクロスカップリング反応の進行が認められたため、続いて 7-ヨ
図 1.新奇環状ペプチド streptide
新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を 基盤とする新たな中分子創薬戦略の開拓
*佐 藤 浩 平*
Development of Middle Molecular Strategy Based on Efficient Synthesis of Novel Cyclic Peptide Backbone
*kohei saTo*
191新奇環状ペプチド骨格の高効率的構築手法創出を基盤とする新たな中分子創薬戦略の開拓
ード Trp誘導体の合成に着手した。 Boc-Trp-OMe(4)を出発原料として、側
鎖インドール環 7 位をホウ素化した後に酸化銅存在下 NaI を空気雰囲気下作用させ 7位ヨウ素化体 6を得た 4。続いて側鎖インド
ール窒素原子の保護を試みた。当初 Ts基の導入を試みたものの保護体を効率的に得る
ことは困難であった。種々条件検討の結果、
α-アミノ基上保護基を Trt 基に変換した後に、NaHおよび MsClを作用させることで Ms保護体 8が収率 70%で得られることが明らかとなった。最後に Trt基の除去とメチルエステルの加水分解を経た後、生じたアミノ基を Fmoc基で保護することでペプチド固相合成に適用可能な 7-ヨード Trp誘導体 9を合成することに成功した。
3.結言
以上のように、7-ヨードインドールによるペプチドとの分子間クロスカプリングが進行することを確認した。また、Xaa-Trp クロスリンク型環状ペプチド構築を指向し、7-ヨード Trp 誘導体の合成を達成した。今後、本誘導体をペプチド固相合成に適用し Xaa-Trpクロスリンク型環状ペプチドの合成に取り組む。
末筆ではありますが、本研究は公益財団法人豊田理化学研究所の豊田理研スカラー助成によって遂行されたものであり、
この紙面をお借りいたしまして感謝申し上げます。
REFERENCES (1)Sharmma, K. R.; Bushin, L. B.; Seyedsayamdost, M. R. Nature Chem. 2015, 7, 431.
(2)Ibrahim, M.; Guillot, A.; Wessner, F.; Algaron, F.; Besset, C.; Courtin, P.; Gardan, R.; Monnet, V. J. Bacteriol. 2007,
189, 8844.
(3)Gong, W.; Zhang, G.; Liu, T.; Giri, R.; Yu, J.-Q. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 16940.
(4)Loach, R. P.; Fenton, O. S.; Amaike, K.; Siegel, D. S.; Ozkal, E.; Movassaghi, M. J. Org. Chem. 2014, 79, 11254.
図 2.Xaa-Trpクロスリンク構築法
図 3.A) 7-ヨウドインドール誘導体とジペプチドのクロスカップリング反応,B) 7-ヨウド Trp誘導体の合成
以上のように、7-ヨードインドールによるペプチドとの分子間クロスカップリングが進行することを確認した。また、
Xaa-Trpクロスリンク型環状ペプチド構築を指向し、7-ヨードTrp誘導体の合成を達成した。今後、本誘導体をペプチド
固相合成に適用しXaa-Trpクロスリンク型環状ペプチドの合成に取り組む。